説明

オストメイト用汚物流し

【課題】本発明は、汚物の廃棄・洗浄作業に関する視認性、作業性に優れたオストメイト用汚物流しを提供する。
【解決手段】多目的トイレに備えられるオストメイト用汚物流しであって、下部に封水部を有するボウルと、前記ボウルの上部開口付近の内壁に設けられた水栓と、を備え、前記ボウルの開口縁部は、前記ボウルの内壁面となだらかに連接していること、を特徴とするオストメイト用汚物流しが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工肛門や人工膀胱などの保持者である「オストメイト」と呼ばれる人々が使用する多目的トイレに備えられるオストメイト用汚物流しに関する。
【背景技術】
【0002】
人工肛門や人工膀胱などの保持者であるオストメイトと呼ばれる人々は、身体の腹部に排泄物(以下、汚物という)を溜めておくための袋、いわゆるパウチを装着しており、時折、トイレにおいて溜まった汚物を廃棄したり、パウチの内面、ストーマ(腹部に造設された排泄口)、ストーマ付近の腹部などに付着した汚物を洗い流すなどの作業を行う必要がある。
【0003】
近年、オストメイトと呼ばれる人々が外出先で気兼ねをすることなくこれらの作業を行うことのできる施設(以下、多目的トイレという)の設置が進められている。
この多目的トイレには、大便器とは別に専用のオストメイト用汚物流しが設けられており、オストメイト用汚物流しのボウルの上方には、シャワーユニットを備えた水栓、ボウルに投入された汚物を排出させるためのフラッシュバルブ、液体石鹸供給器などが設けられている(特許文献1を参照)。
【0004】
ここで、オストメイトが汚物を廃棄したり、付着した汚物を洗い流したりする場合には、腹部をボウルに近接させてこれらの作業を行うが、ボウルの上方に水栓などを設けるようにすれば、目の位置と、廃棄・洗浄作業をする位置との間に水栓などが介在することになる。そのため、水栓などにより視線が遮られて作業の視認性が損なわれる場合もあった。
【特許文献1】特開2004−283394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、汚物の廃棄・洗浄作業に関する視認性、作業性に優れ、かつ清掃性、防汚性に優れたオストメイト用汚物流しを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、
多目的トイレに備えられるオストメイト用汚物流しであって、
下部に封水部を有するボウルと、
前記ボウルの上部開口付近の内壁に設けられた水栓と、を備え、
前記ボウルの開口縁部は、前記ボウルの内壁面となだらかに連接していること、を特徴とするオストメイト用汚物流しが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、汚物の廃棄・洗浄作業に関する視認性、作業性に優れ優れ、かつ清掃性、防汚性に優れたオストメイト用汚物流しが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明をする。
図1は、本発明の実施の形態に係るオストメイト用汚物流しを例示するための模式斜視図である。
図1に示すように、オストメイト用汚物流し1には、多目的トイレの壁面または多目的トイレの壁面に設けられたライニング6に設置されるボウル2、ボウル2の上部開口付近の内壁に設けられた水栓3、液体石鹸供給器4、フラッシュバルブの操作部5などが備えられている。
【0009】
図2は、ボウル2を例示するための模式図であり、図2(a)は模式平面図、図2(b)は模式正面図である。
また、図3は、図2(b)におけるA−A矢視断面図である。
ボウル2は、例えば、陶器、合成樹脂、合成樹脂にセラミック材、陶器粉を混入させたものなどからなるものとすることができる。
【0010】
図2、図3に示すように、ボウル2は、汚物の洗浄や投入がしやすいように上面が大きく開口され、前面10にはリップ部8が設けられている。リップ部8は、背の高いオストメイトであってもこのリップ部8に腹部を押し当てて容易に汚物の処理ができるような形状となっている。すなわち、オストメイトが前かがみになり腹部をリップ部8に押し当てた状態で汚物を処理している最中に汚物が漏出しても汚物がボウル2の中に自然に入っていくように、ボウル2の外側に向けて凸状に湾曲した形状となっている。
【0011】
また、リップ部8は、ボウル2の溢れ面を形成している。ここでいう溢れ面とは、ボウル2の排水部9が詰まった時などに、ボウル2の外に汚水が流れ出す面のことである。このような溢れ面が形成されていると、排水部9が詰まるという異常事態が起きても、汚水は溢れ面から外に流れ出すので、他の部分が汚れることを抑制することができる。本実施の形態においては、図3に示すように、ボウル2の上面形状が前面10の方向(オストメイトが作業する側)に向けて下方傾斜をしているため前面10の側にあるリップ部8の高さが上面では一番低くなり、リップ部8が溢れ面となる。そのため、排水部9が詰まるという異常事態が起きても、汚水が多目的トイレの壁面または多目的トイレの壁面に設けられたライニング6側に流れ出ることがなく、多目的トイレの壁面やライニング6などが汚れるのを抑制することができる。
【0012】
また、ボウル2の前面10(オストメイトが作業する側の面)は、下方になるに従いボウル2の背面側(前面10と対向する側の面)に近づくような方向に傾斜をしている。そのため、図3に示すように、ボウル2の下部に空間11が形成されるようになる。そして、この空間11に膝などを入れることで、オストメイトが前かがみになり腹部をリップ部8に押し当てた状態で汚物の廃棄や洗浄などの作業をすることが容易となる。 また、ボウル2の側面12a、側面12bはボウル2の軸線に略平行な平面となっている。そのため、側面12a、側面12bを膝などで抱きかかえるようにして挟むこともできる。そして、側面12a、側面12bを膝などで挟むことができれば、オストメイトが前かがみになり腹部をリップ部8に押し当てた状態で汚物の廃棄や洗浄などの作業をする際の作業の安定性を向上させることができる。
【0013】
図3に示すように、ボウル2の下部には封水部13が設けられている。そして、ボウル2の内部と排水部9とを封水部13を介して連通させることで、悪臭の発生を抑制しつつ汚物の排出ができるようになっている。尚、排水部9は図示しない排水管と接続されており、汚物が外部(例えば、下水管など)に排出できるようになっている。
ボウル2の前面10と対向する側の面には、開口縁部に連接する傾斜面15が設けられている。また、傾斜面15には、水栓3、液体石鹸供給器4、フラッシュバルブの操作部5などを取り付けるための孔14が設けられている。そして、孔14に取り付けられた水栓3、液体石鹸供給器4、フラッシュバルブの操作部5などの上端部分が、オストメイトが作業する側(前面10の側)の上方に向けて突出するようになっている。そのため、水栓3などを操作する際の作業性を向上させることができる。また、水栓3、液体石鹸供給器4などの吐水口をボウル2の内部に位置するようにすることができるので、オストメイトが汚物の廃棄や洗浄などの作業を行う際に汚物がボウル2の外部に飛び散ることを抑制することができる。
【0014】
尚、傾斜面15は必ずしも必要ではなく、水栓3などをボウルの上部開口付近の内壁(例えば、略垂直な内壁)に備えるようにすることもできる。ただし、傾斜面15を設けて、そこに水栓3などを備えるものとすれば、前述したように水栓3などを操作する際の作業性を向上させることができる。
【0015】
また、液体石鹸供給器4、フラッシュバルブの操作部5は、必ずしも傾斜面15に備えられている必要はない。例えば、ボウル2の上方の多目的トイレの壁面やライニング6などに備えるようにすることもできる。ただし、これらを傾斜面15に備えるようにすれば、移動を伴わずともこれらのものに手が届くので、オストメイトにとって使い易いシステムとすることができる。
【0016】
本実施の形態においては、このようにボウル2の背面側の上部開口付近の内壁に水栓3などの装置を備えるようにしているため、オストメイトが行う汚物の廃棄や洗浄などの作業の高さ方向位置と水栓3などの装置の高さ方向位置とを近接させることができる。すなわち、作業位置と作業に用いられる水栓3などの位置とを同一平面に近い状態とすることができる。そのため、オストメイトの目の位置と、廃棄・洗浄作業をする位置との間に水栓3などが介在することを極力抑制することができる。その結果、オストメイトの視線が遮られないので作業の視認性を大幅に向上させることができる。また、作業位置と作業に用いられる水栓3などの位置とが同一平面に近い状態にあるので、水栓3などの装置同士の間の隙間(例えば、水栓3と液体石鹸供給器4との間の隙間、水栓3とフラッシュバルブの操作部5との間の隙間)を通して作業を視認することも容易となる。
【0017】
また、水栓3、液体石鹸供給器4、フラッシュバルブの操作部5などの装置をボウル2に直接設けるようにしているため、オストメイト用汚物流し1の設置スペースを少なくすることもできる。オストメイトが使用をするオストメイト用汚物流し1は、駅のトイレや街の公衆トイレなどのパブリックスペースに設置されることが多い。また、通常のトイレの大便器が設置されるような個室にも設置されることを考慮することが好ましい。このような、パブリックスペースなどでは、比較的狭いスペースしか確保できない場合もあるが、本実施の形態に係るオストメイト用汚物流し1はそのような場所にも設置が可能となる。
【0018】
図4は、比較例に係るボウルを例示するための模式断面図である。
ボウル120上部の開口縁部には、リム部121が設けられ、リム部121の内部にはリム通水路122が設けられている。また、リム部121はボウル120の内部に向けて張り出すようにして設けられ、リム部121の下面121aにはリム通水路122に連通する複数の吐水口121bが設けられている。リム通水路122は図示しない給水口を介して、これも図示しない水タンクなどの給水源と接続されている。そのため、図示しないフラッシュバルブなどを操作することにより、水タンクなどの給水源から水道水などの水がリム通水路122に供給され、吐水口121bからボウル120の内部に向けて吐水されるようになっている。
【0019】
このようなリム部121が設けられたボウル120においては、オストメイトが汚物の廃棄や洗浄などの作業を行う際に、汚物がリム部121の下面121aに付着するおそれがある。この場合、付着した汚物は吐水口121bからの吐水だけでは除去することができず、別途清掃作業をする必要がある。
【0020】
本発明者は検討の結果、リム部121の下面121aのように汚物が付着しやすく、また、除去と清掃がし難い部分を無くすようにすれば、清掃の手間を削減することができ、また、衛生面の観点からも好ましいとの知見を得た。
【0021】
図3に示すように、本発明の実施の形態に係るボウル2にも上部の開口縁部にリム部16が設けられている。ただし、リム部16の内壁面は、ボウル2の内壁面となだらかに連接するようになっている。
ボウル2には、水道水などの水を噴出する噴出口16bが設けられ、噴出口16bには図示しない水タンクなどの給水源が接続されている。また、フラッシュバルブの操作部5を操作することにより、水タンクなどの給水源から水道水などの水が噴出口16bを介して噴出されるようになっている。そして、水道水などの水は、噴出口16bから水平方向に噴出され、噴出された水はボウル2の上縁部分をほぼ一周旋回しながら、ボウル2の壁面などに付着した汚物を封水13の内へ流し込む。すなわち、ボウル2内に噴出された水は旋回流を形成し、ボウル2の壁面などに付着した汚物を除去しつつ封水13の内へ流込む。封水13の中に流れ込んだ汚物はボウル2内に噴出された水とともに排水部9から外部に排出される。
【0022】
本実施の形態におけるリム部16の内壁面は、ボウル2の内壁面となだらかに連接するようになっている。そのため、図4に示したもののように、ボウル2の内部に向けて張り出している部分を有していない。その結果、リム部121の下面121aのように汚物が付着しやすく、また、除去と清掃がし難い部分が存在しない。また、汚物が付着、残留しやすいボウル2の上部には、洗浄と排出のための旋回流を形成させるようにしているので、ボウル2内に付着、残留する汚物を大幅に低減させることができる。そのため、清掃の手間を削減することができ、また、衛生面にも優れたオストメイト用汚物流し1とすることができる。
【0023】
図5は、水栓3を例示するための模式斜視図である。
水栓3には、水道水などの水を吐水させるための吐水ヘッド19と、吐水ヘッド19に接続された可撓性のホース17と、ホース17の収納と引き出しが可能な水栓取り付け部18と、が設けられている。吐水ヘッド19は、水栓取り付け部18からホース17とともに引き出して使用することができ、水道水などの水を所望の位置や向きで吐水させることができる。吐水ヘッド19が水栓取り付け部18に装着されている状態では、水がボウル2内に落下しやすいように、吐水ヘッド19は若干前向きに傾斜して設置されている。
【0024】
そして、吐水ヘッド19を引き出さない状態での吐水方向が、ボウル2の内壁部に向かうようになっている。そのため、吐水ヘッド19が引き出されていない状態で吐水をすれば、ボウル2の内壁が常に洗い流され衛生面に優れたオストメイト用汚物流し1となっている。また、吐水ヘッド19が水栓取り付け部18に装着されているままでもパウチ内などの洗浄がしやすいようにもなっている。また、吐水ヘッド19を引き出すことで、オストメイトが服を脱いでストーマやストーマ周辺を洗浄したり、ボウル2内部を局所的に洗浄したりすることがしやすいようにもなっている。
【0025】
また、水栓3は、いわゆるスイッチ水栓とすることができる。そのため、水栓3のヘッド部20を押すことで吐水をさせることができ、再度ヘッド部20を押すことで吐水を停止させることができる。吐水ヘッド19は、シャワー状の吐水をさせるものとすることができるが、これに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。
また、水洗3の操作部を別途設けるようにすることもできる。例えば、図1に示したフラッシュバルブの操作部5の代わりに、水洗3の操作部を設けるようにすることができる。この場合も、操作部を押すことで吐水をさせることができ、再度操作部を押すことで吐水を停止させるようにすることができる。
【0026】
ホース17が吐水ヘッド19とともに水栓取り付け部18から引き出され、ボウル2の上部開口付近で吐水ヘッド19から吐水をさせる場合において、ホース17の撓んだ部分が封水部13の封水に触れないようなホース17の長さとすることが好ましい。
また、水栓取り付け部18にホース17を収納させやすいようにするため、ホース17の収納(水栓取り付け部18への引き込み)を助長する図示しない付勢手段を設けるようにすることもできる。
【0027】
本実施の形態においては、ボウル2の背面側の上部開口付近に水栓3を設けるようにしているため、オストメイトが行う洗浄作業の位置と水栓取り付け部18の位置とを近接させることができる。そのため、水栓取り付け部18からの吐水ヘッド19の引き出し量を少なくすることができ、その分、引き出されるホース17の長さを短くすることができる。その結果、ホース17のたわみ量をも少なくすることができ、撓んだホース17が封水部13に触れることを防止することができる。
【0028】
尚、図示しない電気温水器を備え水栓3から温水を吐水可能としたり、温水と水道水などの水との混合割合を調整するための調整手段を設けて水栓3から吐水させる水の温度を調整するようにすることもできる。
【0029】
また、水栓3の配管には図示しないバキュームブレーカを設けるようにすることができる。バキュームブレーカは、ボウル2のリップ部8よりも上方に位置するようにして設けられる。そのようにすれば、汚水がバキュームブレーカの空気取り入れ口から侵入したり、吐水ヘッド19を汚物などで汚してしまったような場合でも上流側(水道水側)が汚されるのを抑制することができる。バキュームブレーカとしては、スイング弁を用いたものやダックビルを用いたものなどを採用することができる。
【0030】
図6は、フラッシュバルブを例示するための模式図である。
フラッシュバルブ21は、ボウル2の内壁に付着した汚物などを水圧を利用して一気に洗い流すためのものであり、前述したように、操作部5を操作することにより、水タンクなどの給水源からの水が汚物流し用水配管24を介して噴出口16bからに噴出されるようになっている。
【0031】
また、フラッシュバルブ21の下部(下流側)には、バキュームブレーカ22が設けられており、フラッシュバルブ21の左側部は上流側の水配管23と接続されている。そして、水配管23は図示しない水タンクなどの給水源と接続されている。
【0032】
また、バキュームブレーカ22は、ボウル2のリップ部8よりも上方に位置するようにして設けられている。そのようにすれば、汚水がバキュームブレーカの空気取り入れ口から侵入したり、上流側(水道水側)が汚物などにより汚されたりすることを抑制することができる。バキュームブレーカとしては、スイング弁を用いたものやダックビルを用いたものなどを採用することができる。
液体石鹸供給器4は、少量の液体石鹸を吐出可能とするものであり、図示しない液体石鹸を収容するためのタンクや吐出手段などを備えている。尚、液体石鹸供給器4は、必ずしも必要ではなく省くこともできるが、公衆衛生の観点からは設けられていた方が好ましい。また、液体石鹸供給器4の変わりに、あるいは液体石鹸供給器4とともに、消毒液供給器などを設けるようにすることもできる。
【0033】
また、多目的トイレの壁面または多目的トイレの壁面に設けられたライニング6にトイレットペーパーホルダ7を設けるようにすることもできる。例えば、図1に示すように、ボール部2の側方にトイレットペーパーホルダ7を設けるようにすることができる。
【0034】
また、ストーマ及びその周辺を視認することなどに用いる半固定鏡、衣類をかけるためのフック、荷物や着替えなどを置くための棚や台などを適宜設けるようにすることもできる。
【0035】
次に、オストメイト用汚物流し1の作用について説明をする。
オストメイトは、身体に装着していたパウチを外して、水栓3から吐水される水でこのパウチの内部を洗浄したり、ストーマ及びその周辺を洗浄したりする。この際、図5に示したように、吐水ヘッド19を水栓取り付け部18から引き出して吐水をさせるようにすることができる。
本実施の形態に係るオストメイト用汚物流し1においては、前述したように、ホース17の撓み量を少なくすることができるので、撓んだホース17が封水部13に触れることを防止することができる。そのため、洗浄作業の作業性を向上させることができるのみならず、衛生的でもある。
【0036】
尚、図示しない半固定鏡を用いてストーマ及びその周辺を視認しながら洗浄を行うこともできるし、冬場などにおいては、水栓3から所望の温度の温水を吐水させることもできる。また、液体石鹸供給器4から液体石鹸を出して、手やパウチなどの洗浄を行うこともできる。
【0037】
また、前述したように、吐水ヘッド19を引き出さない状態での吐水方向が、ボウル2の内壁部に向かうようになっている。そのため、吐水ヘッド19が引き出されていない状態で吐水をすれば、ボウル2の内壁が常に洗い流され衛生的である。
【0038】
こうした汚物の廃棄・洗浄作業を行っている最中に、例えば、汚物がストーマから勢い良く飛び出したり、パウチ内やストーマ廻りの汚物の量、状態、洗い方などによって汚物が周囲に飛び散ったりして、不本意にも周辺を汚してしまうことがある。このような場合、例えば、図4に示した比較例のようにボウルの内部に向けて張り出している部分を有しているものとすれば、除去と清掃がし難いリム部121の下面121aに汚物が付着してしまうおそれがある。
【0039】
これに対し、本実施の形態に係るオストメイト用汚物流し1は、ボウル2の内部に向けて張り出している部分を有していないため、張り出している部分の下面に付着、残留するような汚物を無くすことができる。また、汚物が付着、残留しやすいボウル2の上部には、洗浄と排出のための旋回流を形成させるようにしているので、ボウル2内に付着、残留する汚物を大幅に低減させることができる。その結果、清掃の手間を削減することができるのみならず、衛生的でもある。
【0040】
次に、ストーマ及びその周辺を洗った後、トイレットペーパーなどでストーマやその周辺に付いた水を拭き取り、新しいパウチをストーマに装着する。
次に、操作部5を押し、フラッシュバルブ21を作動させてボウル2の内壁面を洗い流すとともに、排水部9を介して汚物をボウル2の外部に一気に排出させる。この際、吐水ヘッド19からも吐水をさせてボウル2の内壁を洗い流すようにすることもできるし、吐水ヘッド19を水栓取り付け部18から引き出して吐水をさせることで、ボウル2の各所などを洗浄することもできる。
【0041】
本実施の形態に係るオストメイト用汚物流し1においては、洗浄などの作業位置と作業に用いられる水栓3などの位置とを同一平面に近い状態とすることができる。そのため、オストメイトの目の位置と、廃棄・洗浄作業をする位置との間に水栓3などが介在することを極力抑制することができる。その結果、オストメイトの視線が遮られないので作業の視認性を大幅に向上させることができる。また、作業位置と作業に用いられる水栓3などの位置とが同一平面に近い状態にあるので、水栓3などの装置同士の間の隙間(例えば、水栓3と液体石鹸供給器4との間の隙間、水栓3とフラッシュバルブの操作部5との間の隙間)を通して作業を視認することも容易となる。
また、これら一連の作業において必要となるもの、例えば、水栓3、液体石鹸供給器4、フラッシュバルブ21の操作部5がボウル2に直接設けられている。また、トイレットペーパーホルダー7などもボウル2に近接させるようにして設けられている。そのため、移動を伴わずとも各装置に手が届くので、オストメイトにとって使い易いシステムとなっている。また、オストメイト用汚物流し1の設置スペースを少なくすることもできる。
また、本実施の形態に係るボウル2は、そのリップ部8がボウル2の外側に向けて凸状に湾曲した形状をしている。そのため、背の高いオストメイトであってもリップ部8に腹部を押し当てやすく、容易に汚物の廃棄や洗浄をすることができる。
【0042】
また、ボウル2の前面10(オストメイトが作業する側の面)は、下方になるに従いボウル2の背面側(前面10対向する側の面)に近づくような方向に傾斜をしている。この傾斜により形成される空間11に膝などを入れることで、オストメイトが前かがみになり腹部をリップ部8に押し当てた状態での汚物の廃棄や洗浄が容易となる。
【0043】
また、ボウル2の側面12a、側面12bはボウル2の軸線に略平行な平面となっている。そのため、側面12a、側面12bを膝などで挟むことができ、オストメイトが前かがみになり腹部をリップ部8に押し当てた状態での汚物の廃棄や洗浄作業の安定性を図ることができる。
【0044】
以上、本発明の実施の形態について説明をした。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。
【0045】
前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
【0046】
例えば、オストメイト用汚物流し1に設けられる各要素などの形状、寸法、材質、配置などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【0047】
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態に係るオストメイト用汚物流しを例示するための模式斜視図である。
【図2】ボウルを例示するための模式図である。
【図3】図2におけるA−A矢視断面図である。
【図4】比較例に係るボウルを例示するための模式断面図である。
【図5】水栓を例示するための模式斜視図である。
【図6】フラッシュバルブを例示するための模式図である。
【符号の説明】
【0049】
1 オストメイト用汚物流し、2 ボウル、3 水栓、4 液体石鹸供給器、5 操作部、7 トイレットペーパーホルダー、8 リップ部、9 排水部、10 前面、11 空間、12a 側面、12b 側面、13 封水部、15 傾斜面、16 リム部、16b 噴出口、17 ホース、18 水栓取り付け部、19 吐水ヘッド、20 ヘッド部、21 フラッシュバルブ、22 バキュームブレーカ、23 水配管、24 汚物流し用水配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多目的トイレに備えられるオストメイト用汚物流しであって、
下部に封水部を有するボウルと、
前記ボウルの上部開口付近の内壁に設けられた水栓と、を備え、
前記ボウルの開口縁部は、前記ボウルの内壁面となだらかに連接していること、を特徴とするオストメイト用汚物流し。
【請求項2】
前記ボウルの前記前面と対向する側の面には、開口縁部に連接する傾斜面が設けられ、
前記傾斜面には前記水栓を取り付けるための孔が設けられていること、を特徴とする請求項1に記載のオストメイト用汚物流し。
【請求項3】
前記水栓は、吐水ヘッドと、
前記吐水ヘッドに接続された可撓性のホースと、
前記ホースが収納される水栓取り付け部と、を備え、
前記ホースが前記吐水ヘッドとともに前記水栓取り付け部から引き出され、前記ボウルの上部開口付近で前記吐水ヘッドから吐水をさせる場合において、前記ホースは、前記封水部の封水に触れない長さであること、を特徴とする請求項1または請求項2に記載のオストメイト用汚物流し。
【請求項4】
前記ボウルの前面は、下方になるに従い前記前面と対向する側の面に近づくように傾斜していること、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のオストメイト用汚物流し。
【請求項5】
前記ボウルの側面は、前記ボウルの軸線に略平行な平面であること、を特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のオストメイト用汚物流し。
【請求項6】
前記傾斜面には、前記ボウル内に水を噴出させるフラッシュバルブの操作部が設けられていること、を特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のオストメイト用汚物流し。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−18187(P2009−18187A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−239265(P2008−239265)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【分割の表示】特願2007−129906(P2007−129906)の分割
【原出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】