説明

オスペミフェンの新しい経口薬剤

【課題】オスペミフェンを含む改良された薬剤であって、薬剤の吸収が本質的に増加し、血漿レベルでの可変性が実質的に減少する薬剤を提供する。
【解決手段】本発明は、構造式(I)の治療的活性化合物、あるいはその幾何異性体、立体異性体、薬剤的に許容される塩、エステルまたは代謝産物を、薬剤的に許容できるキャリアと共に含む、液体または半固体の経口薬剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性成分としてオスペミフェン(ospemifene)または密接に関連する化合物を含む液体または半固体の経口薬剤に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景を説明するためにここに使用される刊行物およびその他の文献は、特に実施に関するさらなる詳細を提供する場合、参考文献によって組み込まれる。
【0003】
「SERM」(選択的エストロゲン受容体モジュレーター)は、エストロゲン様の特性および抗エストロゲン様の特性の双方を有する(非特許文献1)。その効果は、骨においてエストロゲン様効果を有し、子宮および肝臓において部分的にエストロゲン様の効果を有し、そして乳癌において純然たる抗エストロゲン様効果を有するタモキシフェンおよびトレミフェンの場合のように、組織特異的であり得る。ラロキシフェンおよびドロロキシフェンは、それらの抗エストロゲン特性が優勢であることを除いてタモキシフェンおよびトレミフェンと同様である。公開された情報に基づくと、多くのSERMは、更年期の症状を抑えるよりもそれを引き起こす可能性が高い。しかしながら、それらには、初老の女性においてほかの重要な利益がある。つまり、それらは総コレステロールおよびLDLコレステロールを減少させ、したがって心臓血管系疾患の危険性を減らし、さらにそれらは閉経後の女性において、骨粗鬆症を予防し、乳癌の成長を阻害し得る。また、ほとんど純粋な抗エストロゲン類も開発中である。
【0004】
オスペミフェンは構造式(I)の化合物のZ-異性体であり、
【化1】

【0005】
エストロゲン作用薬および拮抗薬として知られるトレミフェンの主な代謝産物の1つである(非特許文献2;特許文献1および特許文献2)。この化合物はまた、(デアミノヒドロキシ)トレミフェンと称され、コードFC-1271aとしても知られる。オスペミフェンは、典型的なホルモン試験において、比較的弱いエストロゲンおよび抗エストロゲン作用を有する(非特許文献2)。それは実験モデルおよびヒトのボランティアの双方において、抗骨粗鬆症作用を有し、総コレステロールおよびLDLコレステロール濃度を減少させる(特許文献1および特許文献2)。それはまた、動物乳癌モデルの乳癌発生の初期段階において抗腫瘍活性を有する。オスペミフェンは、健康な女性における更年期症状において有益な効果を有すると示される最初のSERMである。閉経後の女性における特定の更年期障害、すなわち膣の乾燥および性的機能不全の治療のためのオスペミフェンの使用が、特許文献3に開示されている。特許文献4には、女性、特に閉経期または閉経後の女性における、萎縮症の抑制および萎縮症関連疾患の治療または予防のためのオスペミフェンの使用が記載されている。
【特許文献1】国際公開第96/07402号パンフレット
【特許文献2】国際公開第97/32574号パンフレット
【特許文献3】国際公開第02/07718号パンフレット
【特許文献4】国際公開第03/103649号パンフレット
【非特許文献1】Kauffman RF, Bryant HU. Selective estrogen receptor modulators, Drug News Perspect 8:531-539, 1995
【非特許文献2】Kangas L. Biochemical and pharmacological effects of toremifene metabolites. Cancer Chemother Pharmacol 27:8-12, 1990
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、オスペミフェンを含む改良された薬剤であって、薬剤の吸収が本質的に増加し、血漿レベルでの可変性が実質的に減少する薬剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は、構造式(I)の治療的活性化合物、またはその幾何異性体、立体異性体、薬剤的に許容される塩、エステルまたは代謝産物を、薬剤的に許容できるキャリアと共に含む液体または半固体の経口薬剤に関する。
【化2】

【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、60mgの錠剤(丸)、2つの硬ゼラチン30mgカプセル(三角)または溶液(星印)として投与される60mgのオスペミフェンの単回投与後の時間に対するオスペミフェンの血清濃度を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
「液体の製剤」という用語は、特に、溶液、液体中に固体粒子が分散した懸濁液、液体中に液滴が分散したエマルジョン、またはシロップを称する。
【0010】
「半固体の薬剤」という用語は、特に、ゲルおよびペーストを称する。
【0011】
ある好ましい実施の形態によれば、液体の薬剤は、単一のキャリアまたは複数のキャリアの混合物である適切なキャリア中の化合物Iの溶液である。構造式Iの化合物は、水中で非常に低い溶解性を有する。したがって、キャリアは、好ましくは1つ以上の新油性の成分を含む。生物学的利用能を高めるために、鉱油のような消化しにくいオイルではなく、トリグリセリド、ジグリセリド、脂肪酸、リン脂質等のような消化しやすい脂質を使用することが好ましい(Porter and Charman,2001)。有用なキャリアまたはその成分の特定のグループは、コラン誘導体でもよい。米国特許第4,117,121号明細書には、コレステロールレベルを下げ、胆汁流を増加するために有用なコラン誘導体のグループが開示されている。しかしながら、生物学的利用能を高める成分は、上記のものに限定されない。
【0012】
別の好ましい実施の形態によれば、液体薬剤は、液体中の化合物Iの微細な固体粒子の懸濁液である。液体は、親油性または親水性の液体または複数の液体の混合物でよい。上記の液体はまた、溶解成分を含んでもよい。分散した薬化合物の粒子サイズを小さくすることにより、消化および薬の放出に利用できる表面積が増加する。好ましくは、薬剤物質の少なくとも90%が150マイクロメートル未満の粒子サイズを有し、薬剤物質の50%が25マイクロメートル未満の粒子サイズを有する。特に好ましくは、薬剤物質の90%が50μメートル未満の粒子サイズを有し、薬剤物質の50%が15マイクロメートル未満の粒子サイズを有する。
【0013】
第三の好ましい実施の形態によれば、液体製剤はエマルジョンである。化合物Iの水溶性は非常に低いので、エマルジョンは、好ましくは水相中の親油相(例えば親油性の液体中の化合物Iの溶液)の分散である(水中油エマルジョン)。エマルジョンは、安定剤(界面活性剤)、乳化剤および増粘剤のような追加の成分を含んでもよい。特に好ましい実施の形態によれば、エマルジョンはマイクロエマルジョンまたはナノエマルジョンである。マイクロおよびナノエマルジョンは、従来のエマルジョンと異なり、等方性で、透明で熱力学的に安定である。分散した液滴の平均サイズは、マイクロエマルジョン中で通常約10000nm以下であり、ナノエマルジョン中で100nm以下である。
【0014】
第四の好ましい実施の形態によれば、液体製剤はシロップである。
【0015】
半固体の経口薬剤の典型例はゲルおよびペーストである。ゲルは、ゼラチンまたは多糖のようなゲル化剤を、化合物Iを含む溶液、懸濁液またはエマルジョンに加えることにより産生される。ある好ましい実施の形態によれば、ゲルは、欧州特許第760651号明細書にしたがってマイクロエマルジョンにゲル化剤を加えることによって産生される。
【0016】
溶液、エマルジョンおよび懸濁液のような液体製剤を多回投与のために大きいボトルにパックすることができるが、薬剤をカプセルのような1単位の投与形態にパックすることが好ましい。その様なカプセル製剤は、ソフトゲルカプセルと称される。ソフトゼラチンカプセル(またはソフトゲルカプセル)は、ゼラチンの殻のような一体形の外殻の内部の液体または半固体のマトリクスで構成される。薬剤化合物自体は、カプセル充填マトリクス中の溶液、懸濁液またはエマルジョンでもよい。充填マトリクスの特徴は、親水性(例えばポリエチレングリコール)または親油性(例えばトリグリセリド植物油)、または親水性および親油性成分の混合物でもよい。
【0017】
充填マトリクスの形成において近年著しい進歩がなされている。例として、カプセル中に予め濃縮物として被包された薬のマイクロエマルジョンまたはナノエマルジョンが挙げられる。これは、充填マトリクスが濃縮されたマイクロまたはナノエマルジョン、すなわち、疎水性の薬、少量の親水性の液体および界面活性剤を含有する親油性の液体の混合物であることを意味する。経口投与後、マイクロエマルジョンは胃腸液中で希釈される。あるいは、マトリクスは、内容物、すなわち薬、脂質または脂質混合物および1つ以上の界面活性剤のみを含んでもよい。内容物は、投与により、胃腸液中で自然にマイクロエマルジョン(またはナノエマルジョン)を生じる。
【0018】
ソフトゲルカプセルは、例えば、ゼラチン、水および可塑剤から構成される。これは、透明でも不透明でもよく、所望であれば有色および味付でもよい。製品中の水分活性が低いので、防腐剤は必要ではない。ソフトゲルは、腸溶耐性または除放性の物質でコーティングされてもよい。
【0019】
実質的には任意の形状のソフトゲルを作成できるが、楕円形または長楕円形の形状が、経口投与のために通常選択される。
【0020】
本発明による改良された薬剤は、特に閉経期または閉経後の女性の治療に有用である。しかしながら、本発明による方法は、この年齢群の女性に限定されるものではない。
【0021】
「代謝産物」という用語は、すでに見つかっている、または今後見出されるあらゆる(デアミノヒドロキシ)トレミフェン代謝産物を包含するものと理解されるべきである。このような代謝産物の例としては、Kangas(1990)の9頁に記載されている酸化代謝産物(TORE VI、TORE VII、TORE XVIII、TORE VIII、TORE XIII)、特にTORE VIおよびTORE XVIII、並びにこの化合物の他の代謝産物が挙げられる。
【化3】

【0022】
化合物(I)の異性体の混合物の使用も本発明に含まれる。
【0023】
化合物(I)は好ましくはオスペミフェンである。
【0024】
本発明による改良された薬剤は、特に化合物が骨粗鬆症の治療または予防あるいは皮膚萎縮症、または上皮または粘膜の萎縮症に関連する症状の治療または予防に使用される場合に、オスペミフェンの任意の用途において有用である。
【0025】
オスペミフェンの投与により抑制できる萎縮症の特定の形態は、泌尿生殖器萎縮症である。泌尿生殖器萎縮症に関連する症状は、2つのサブグループに分けられる:泌尿器の症状および膣の症状。泌尿器の症状の例は、排尿障害、排尿困難、血尿、頻尿、切迫感覚、尿路感染、尿路炎症、夜間多尿、尿失禁、急迫性尿失禁および尿漏れ失禁である。膣の症状の例は、炎症、そう痒、灼熱痛、マラドラス分泌(maladorous discharge)、感染、帯下、外陰そう痒、圧迫感および性交後出血である。
【0026】
以前のデータによれば、オスペミフェンの最適な臨床投与量は、1日量で25mgより多く100mgより少ないと考えられる。特に好ましい1日量は、30〜90mgであることが示されている。より多い投与量(1日に100および200mg)では、オスペミフェンは、タモキシフェンおよびトレミフェンとより類似した特性を示す。本発明の方法により高められた生物学的利用能により、以前に推奨されていたよりも少ない投与量で同じ治療効果を達成できると考えられる。
【0027】
本発明は、下記の非制限的な実施例においてより詳細に開示される。
【実施例】
【0028】
錠剤、硬ゼラチンカプセルおよび溶液として投与されるオスペミフェンの生物学的利用能を評価するために、臨床試験を行った。
【0029】
18〜38歳の健康な男性の白人(n=23)に、下記の3つの異なる試験を行った:a)それぞれ30mgのオスペミフェンを含有する2つの硬ゼラチンカプセル;b)60mgのオスペミフェンを含有する1つの錠剤;またはc)60mgのオスペミフェンを含有する溶液3.7g。c)において、溶媒はエタノール−PEG−プロピレングリコール(2.7:1:2.5)の混合物であった。試験は、少なくとも1週間続く休薬期間を間に挟んで行った。血清オスペミフェン濃度を測定するための血液サンプルを、投与後いくつかの時点で各試験中に採取した。光化学活性化後の蛍光検出により、逆相HPLCを使用して血清オスペミフェン濃度を測定した。
【0030】
結果は図1に示され、2つの30mgの硬ゼラチンカプセル(三角)、60mgの錠剤(丸)または60mgのオスペミフェンを含有する溶液(星印)として与えられる60mgのオスペミフェンの単回経口投与量の投与後の時間に対するオスペミフェンの血清濃度が記載される。ピーク濃度は、それぞれ280および277ng/mLと非常に類似する錠剤および硬カプセルの投与後よりも、溶液の投与後に非常に高かった(700ng/mL)。したがって、AUC値は、錠剤および硬カプセルのAUC値(約2000ng h/mL)と比較して、溶液の投与後に実質的により高かった(約3000ng h/mL)。したがって、溶液からのオスペミフェンの吸収は、錠剤および硬カプセルからよりもずっと早く、生物学的利用能はずっと高いと結論することができる。さらに、薬物動態学的パラメータの可変性は減少した。
【0031】
本発明の方法は、ごく少数のみがここに開示される、様々の実施の形態で組み込まれてもよいことが理解されるであろう。他の実施の形態が存在し、本発明の精神から逸脱しないことは、当業者にとって明らかであろう。したがって、記載された実施の形態は、例であって、限定的なものとして解釈されるべきではない。
【参考文献】
【0032】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式(I)の治療的活性化合物、あるいはその幾何異性体、立体異性体、薬剤的に許容される塩、エステルまたは代謝産物を、薬剤的に許容できるキャリアと共に含むことを特徴とする液体または半固体の経口薬剤。
【化1】

【請求項2】
前記化合物(I)がオスペミフェン(ospemifene)であることを特徴とする請求項1記載の薬剤。
【請求項3】
前記薬剤が溶液であることを特徴とする請求項1記載の薬剤。
【請求項4】
前記薬剤が懸濁液であることを特徴とする請求項1記載の薬剤。
【請求項5】
前記薬剤がエマルジョンであることを特徴とする請求項1記載の薬剤。
【請求項6】
前記エマルジョンがマイクロエマルジョンまたはナノエマルジョンであることを特徴とする請求項5記載の薬剤。
【請求項7】
前記薬剤がシロップであることを特徴とする請求項1記載の薬剤。
【請求項8】
前記薬剤がゲルであることを特徴とする請求項1記載の薬剤。
【請求項9】
前記薬剤がペーストであることを特徴とする請求項1記載の薬剤。
【請求項10】
前記薬剤が1単位の投与形態にパックされることを特徴とする請求項1記載の薬剤。
【請求項11】
前記投与形態がソフトカプセルに包まれた薬剤であることを特徴とする請求項10記載の薬剤。
【請求項12】
前記キャリアが胆汁流促進剤であることを特徴とする請求項1記載の薬剤。

【図1】
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【公開番号】特開2012−149094(P2012−149094A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−105131(P2012−105131)
【出願日】平成24年5月2日(2012.5.2)
【分割の表示】特願2007−512233(P2007−512233)の分割
【原出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(506277524)ホルモス メディカル リミテッド (9)
【氏名又は名称原語表記】HORMOS MEDICAL LTD.
【Fターム(参考)】