説明

オゾン及びカルボニル基含有化合物を検知する方法及び装置

大気サンプル中のオゾン及びカルボニル基含有化合物の存在を検知するための方法と装置とが提供される。大気サンプル中のオゾン及びカルボニル基含有化合物の存在を検知するための方法と装置であって、その方法は、(a)大気サンプルをオゾン反応性吸着剤と接触させ、該大気サンプル中にオゾンが存在する場合には、該オゾンは該オゾン反応性吸着剤と反応しアルデヒド生成物を形成する工程と、(b)工程(a)からの該大気サンプルをさらにカルボニル反応性吸着剤と接触させ、該大気サンプル中にカルボニル基含有化合物が存在する場合には、該カルボニル基含有化合物は該カルボニル反応性吸着剤と反応し第1のヒドラゾン生成物を形成する工程と、(c)溶媒により、該カルボニル反応性吸着剤から該オゾン反応性吸着剤へ溶離させ、工程(a)のいかなるアルデヒド生成物も第2のヒドラゾン生成物を形成する工程と、(d)工程(b)及び工程(c)において形成したヒドラゾン生成物の存在に関して、工程(c)からの該溶離液の分析を行う工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年12月28日に出願された米国仮出願第61/017,377号の利益を主張するものである。上記の出願の全体の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般に、大気サンプル中のオゾン及びカルボニル基含有化合物の存在を検知する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
この節では、本開示に関連する必ずしも先行技術ではない背景情報を提供する。
ホルムアルデヒドやアセトアルデヒド等のカルボニル基含有化合物は、例えば、対流圏でのオゾンによる炭化水素類の酸化や屋内空気中でのオゾンとテルペノイドの反応によって生成する、至る所に存在する汚染物質である。対流圏のオゾンも、また、窒化酸化物、一酸化炭素や揮発性有機化合物を含有する車両排気ガスの光化学反応による変化等の様々な原因によって生成される主要汚染物質である。
【0004】
HauserとBradleyは、氷酢酸中で大気中のオゾンと1,2−ビス−(4−ピリジル)エチレン(BPE)との反応を用いた大気中のオゾン定量のための分光光度法を報告している(Hauser, T.R. and Bradley D.W. Anal. Chem. 1966. 38:1529-1532)。
【0005】
カルボニル類の測定には、2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)が、能動的及び受動的大気サンプリング法で用いられてきた(Uchiyama, S. and Hasegawa, S. Atmos. Environ. 1999. 33:1999-2005)。
【0006】
従来から環境大気中のオゾンを定量する多くの試みが行われてきた。ヨウ化カリウム法は、アルカリ性ヨウ化カリウム溶液にサンプルを捕集し、スルファミン酸で酸性にした後、比色定量法でサンプルを分析する。ただし、アルカリ性ヨウ化カリウム溶液中に捕集したオゾンサンプルは不安定であることが報告されている。さらに、オゾン定量のための亜硝酸塩含浸フィルター法も報告されている。亜硝酸塩は、オゾンにより酸化され、イオンクロマトグラフィーで分析される。この亜硝酸塩原理に基づいて、OSHA法ID−214が、能動的大気サンプリングシステムとして開発された。しかしながら、これらの方法は、他の酸化剤による影響を受けるという欠点を有している。
【0007】
環境大気サンプリングを高湿度で行う場合には、オゾン洗浄器内のヨウ化カリウムが大気中の水分により濡れる可能性が高く、カルボニル基含有化合物がオゾン洗浄器に捕捉される。その上、大気中の水分で溶解されたヨウ化カリウムは、DNPHカートリッジ内へ移動し、反応して未知の化合物を生成する可能性がある。
【0008】
従って、大気サンプル中のオゾンとカルボニル基含有化合物の両方の存在を検知する方法と装置が必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
この節は、本開示の全般的な概要を提供し、開示の全容あるいはその特徴のすべてを総括的に開示するものではない。
大気サンプル中のオゾン及びカルボニル基含有化合物の存在を検知する方法例を提供する。この方法例は、一般に、
(a)大気サンプルをオゾン反応性吸着剤と接触させ、該大気サンプル中にオゾンが存在する場合には、該オゾンは該オゾン反応性吸着剤と反応しアルデヒド生成物を形成する工程と、
(b)該工程(a)からの該大気サンプルをさらにカルボニル反応性吸着剤と接触させ、該大気サンプル中にカルボニル基含有化合物が存在する場合には、該カルボニル基含有化合物は該カルボニル反応性吸着剤と反応し第1のヒドラゾン生成物を形成する工程と、
(c)溶媒により、該カルボニル反応性吸着剤から該オゾン反応性吸着剤へ溶離させ、該工程(a)のいかなるアルデヒド生成物も第2のヒドラゾン生成物を形成する工程と、
(d)該工程(b)及び該工程(c)において形成した又は形成しうるヒドラゾン生成物の存在に関して、該工程(c)からの該溶離液の分析を行う工程と、を含む。
【0010】
大気サンプル中のオゾン及びカルボニル基含有化合物の存在を検知するための別の方法例を提供する。この方法例は、一般に
(a)大気サンプルを装置に吸い込む工程と、
(b)該大気サンプルを、1,2−ビス(4−ピリジル)エチレンで被覆したシリカ粒子を含む第1の床に接触させ、該大気サンプル中に存在するオゾンが該1,2−ビス(4−ピリジル)エチレンと反応しピリジン−4−アルデヒドを形成することにより捕捉される工程と、
(c)該大気サンプルを、2,4−ジニトロフェニルヒドラジンで被覆したシリカ粒子を含む第2の床に接触させ、該大気サンプル中に存在するカルボニル基含有化合物が該2,4-ジニトロフェニルヒドラジンと反応しカルボニル−2,4−ジニトロフェニルヒドラゾンを形成することにより捕捉される工程と、
(d)溶媒により、第2の床から第1の床へ溶離させ、過剰の2,4−ジニトロフェニルヒドラジンが、ピリジン−4−アルデヒドと反応し、ピリジン−4−アルデヒド−2,4−ジニトロフェニルヒドラゾンを形成する工程と、
(e)該工程(c)及び該工程(d)で形成した該カルボニル−2,4−ジニトロフェニルヒドラゾンと該ピリジン−4−アルデヒド−2,4−ジニトロフェニルヒドラゾンの分析を行う工程と、を含む。
【0011】
さらに、大気サンプル中のオゾン及びカルボニル基含有化合物の存在を検知するための装置例を提供する。この装置例は、一般に、筺体と、該筐体を通して大気サンプルを吸い込み、該大気サンプルを第1の開口部から該筐体に入れ、第2の開口部を通して該筺体から出す手段と、該筐体内に配置されたオゾン反応性吸着剤と、該筐体内に配置されたカルボニル反応性吸着剤とを含み、該筐体を通して吸い込まれる該大気サンプルの少なくとも一部が該カルボニル反応性吸着剤よりも前に該オゾン反応性吸着剤と接触するように該オゾン反応性吸着剤及び該カルボニル反応性吸着剤が筺体内に配置されている装置である。
【0012】
大気サンプル中のオゾン及びカルボニル基含有化合物の存在を検知するための装置の別の例も提供する。この装置例は、一般に、第1の作用様式に影響を及ぼす手段及び第2の作用様式に影響を及ぼす手段を含み、第1の作用様式と第2の作用様式が協働して大気サンプル中のオゾン及びカルボニル基含有化合物の存在を検知する。該第1の作用様式は、一般に、
(a)大気サンプルをオゾン反応性吸着剤と接触させ、該大気サンプル中にオゾンが存在する場合には、該オゾンは該オゾン反応性吸着剤と反応しアルデヒド生成物を形成する工程と、
(b)該工程(a)からの該大気サンプルをさらにカルボニル反応性吸着剤と接触させ、該大気サンプル中にカルボニル基含有化合物が存在する場合には、該カルボニル基含有化合物は該カルボニル反応性吸着剤と反応し第1のヒドラゾン生成物を形成する工程とを含む。
また、第2の作用様式は、一般に、
(c)溶媒により、該カルボニル反応性吸着剤から該オゾン反応性吸着剤へ溶離させ、該工程(a)のいかなるアルデヒド生成物も第2のヒドラゾン生成物を形成する工程と、
(d)該工程(b)及び該工程(c)において形成したヒドラゾン生成物の存在に関して、該工程(c)からの溶離液を分析する工程と、を含む。
【0013】
さらに、大気サンプル中のオゾン及びカルボニル基含有化合物の存在を検知するためのキットの例を提供する。該キットの例は、一般に、
(a)大気サンプル中のオゾン及びカルボニル基含有化合物の存在を検知するためのカートリッジと、
(b)該オゾン及び該カルボニル基含有化合物の誘導体をカートリッジから溶離するための溶媒とを含む。
【0014】
別の例として、大気サンプル中のオゾン及びカルボニル基含有化合物の存在を検知するための装置を提供する。この装置例は、一般に、第1の筐体及び第2の筐体と、該第1及び該第2の筐体を通して大気サンプルを吸い込む手段と、該第1の筐体内に配置されたオゾン反応性吸着剤と、該第2の筐体内に配置されたカルボニル反応性吸着剤を含み、該第1及び該第2の筐体を通して吸い込まれる大気サンプルの少なくとも一部が、該カルボニル反応性吸着剤よりも前に該オゾン反応性吸着剤と接触するように、該大気サンプルが該第1の筐体、次いで該第2の筐体を通り吸い込まれる装置である。
【0015】
さらに別の例として、大気サンプル中のオゾン及びカルボニル基含有化合物の存在を検知するための装置を提供する。この装置例は、一般に、オゾン反応性吸着剤及びカルボニル反応性吸着剤を含む。該オゾン反応性吸着剤と該カルボニル反応性吸着剤とを通して大気サンプルを吸い込む手段が提供される。
【0016】
さらに適用可能な分野は、ここに提供された説明から明らかとなろう。この概要の説明及び特定の実施例は例示のみの目的を意図しており、本開示の範囲を限定することは意図していない。
【0017】
ここで説明する図面は、選択された態様の例示のみが目的であり、すべての可能な実施を例示することは意図せず、本開示の範囲を限定することは意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】図1Aは、分かりやすくするために縮尺の表示は省略するが、大気サンプル中のオゾン及びカルボニル基含有化合物の存在を検知するための例示の装置の立面図である。
【図1B】図1Bは図1Aの装置の拡大立面図で、装置の両端の部分から蓋が取り除かれている。
【図1C】図1Cは第2の作用様式で使用されている図1Aの装置の立面図で、装置の両端の部分から蓋が取り除かれている。
【図2A】図2Aは、分かりやすくするために縮尺の表示は省略するが、大気サンプル中のオゾン及びカルボニル基含有化合物の存在の検知のために用いる別の装置例の第1カートリッジの立面図である。
【図2B】図2Bは、分かりやすくするために縮尺の表示は省略するが、大気サンプル中のオゾン及びカルボニル基含有化合物の存在を検知に用いる別の装置例の第2カートリッジの立面図である。
【図2C】図2Cは、第1の作用様式に用いられる図2Aの第1カートリッジと図2Bの第2カートリッジを一緒に示した立面図である。
【図3】図3は、ジメチルスルホキシド(DMSO)とアセトニトリルの混合溶媒に対する25℃におけるピリジン−4−アルデヒドの溶解度を示すグラフ表示である。
【図4】図4は、ピリジン−4−アルデヒド2,4-DNPヒドラゾン及び低級脂肪族アルデヒドDNPヒドラゾンのアセトニトリル溶液(20μmol/L)のUV−可視スペクトルを示すグラフ表示である。
【図5】図5は、ピリジン−4−アルデヒド及びその他のカルボニル2,4-DNPヒドラゾン類のクロマトグラフ溶離曲線を示したグラフ表示である。
【図6】図6は、種々の濃度のリン酸を含む抽出溶液の中でのピリジン−4−アルデヒドとDNPHとの反応の経時変化を示したグラフ表示である。
【図7】図7は、BPEカートリッジ(上図)及びDNPH(下図)の溶離液中のアルデヒド濃度の経時変化を示したグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
幾つかの図面にわたって使用される同一部材には同じ参照符号を付している。
次に、添付図面を参照して、いくつかの実施態様をより詳細に説明する。
実施態様は、本開示が完全であり、かつ、その範囲を当業者に十分に伝える目的で提供される。本開示の態様の理解の徹底を期すために、例えば、具体的な部品、装置や方法等の非常に多くの具体的な詳細説明を行っている。しかし、具体的な詳細説明を用いる必要がなく、実施態様は多くの異なる態様で具現化してもよく、また、いずれも本開示の範囲に限定されるように解釈すべきでないことは、当業者にとっては明らかであろう。幾つかの実施態様においては、周知のプロセス、周知の装置構造体、それに周知の技術については、詳細に記述されていない。
【0020】
本明細書で使用される専門用語は特定の実施態様について説明することだけを目的とし、限定を意図するものではない。本明細書で用いられる単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈によって別の意味で用いることが明示されない限り、同時に複数形も含むことを意図するものである。用語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含んでいる(including)」及び「持っている(having)」は、包含する意味で用いられ、従って、記述した特徴、整数、工程、操作、要素及び/又は部品の存在を規定するが、1つ又は複数のその他の特徴、整数、工程、操作、要素、部品、及び/又はそれらの集合の存在又は追加を排除するものではないということである。本明細書で説明した方法の工程、処理、及び操作は、実行の順序として具体的に特定されていない限りは、説明や図示した特定の順序で必ず実行しなければならないというふうに解釈すべきではない。また、さらなる工程又は別の工程を採用してもよいと理解すべきである。
【0021】
要素又は層が、別の要素又は層に「接する(on)」、「係合される(engage to)」、「接続される(connected to)」又は「連結される(coupled to)」という場合は、別の要素又は層に、直接接して、係合され、接続され、又は、連結されてよく、あるいは、介在する要素や層が存在してもよい。それとは対照的に、要素が、別の要素又は層に「直接接する(directly on)」、「直接に契合する(directly engaged to)」、「直接に接続する(directly connected to)」あるいは「直接に連結する(directly coupled to)」という場合は、介在する要素や層が存在しないかもしれない。要素間の関係の記述に用いる他の用語も同様に解釈されるべきである(例えば、「間に(between)」対「直接間に(directly between)」、「隣接した(adjacent)」対「直接隣接した(directly adjacent)」)。本明細書に用いられる用語「及び/又は(and/or)」は、列挙された一つ以上の関連項目の、すべての組み合わせを含む。
【0022】
第1、第2、第3等の用語は、本明細書においては、種々の要素、部品、領域、層、及び/又は区域を記述するのに用いられるが、これらの要素、部品、領域、層、及び/又は区域は、これらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、ある要素、部品、領域、層あるいは区域を、別の領域、層、又は、区域を区別するためだけに用いてもよい。第1、第2等の用語や、その他の数値用語は、本明細書で使用された場合、文脈により明確に示されない限り、系列や順序を意味することはない。従って、下記で議論される第1の要素、部品、領域、層又は区域は、実施態様の教示から逸脱することなく、第2の要素、部品、領域、層又は区域と称することもできる。
【0023】
図に示されるある要素又は機構の別の要素又は機構に対する関係についての説明では、説明を容易にするために、本明細書において「内側の」、「外側の」、「真下に」、「下方に」、「下部の」、「上方に」、「上部の」等の空間的に相対的な用語を用いた個所がある。空間的に相対的な用語は、図に示された方向に加えて、使用又は動作中の装置の異なる方向を包含するように意図される場合もある。例えば、図の装置が上下逆さにされた場合、他の要素又は機構の「下方に」又は「真下に」あるものとして説明された要素は、他の要素又は機構の「上方に」に向けられることになる。このように、「下方に」という例示的な用語は、上方及び下方の両方の方向を含み得る。この装置は、他の方向に向いていてもよく(90度回転させる、又はその他の方向で)、本明細書で用いられる空間的に相対的な記述子は、それに従って解釈される。
【0024】
本発明の様々な側面において、大気サンプル中のオゾン及びカルボニル基含有化合物の存在を検知するための方法、装置、及びキットが提供される。
本明細書で用いられる用語「カルボニル基含有化合物」は、少なくとも1つのカルボニル基を有する化合物、例えば、アルデヒドやケトンをいう。このような化合物としては、限定的ではないが、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、アクロレイン、プロパナール、2−ブタノン、ブタナール、ベンズアルデヒド、シクロヘキサノン、i−ペンタナール、ペンタナール、o−トルアルデヒド、m−トルアルデヒド、p−トルアルデヒド、ヘキサナール、2,5−ジメチルベンズアルデヒド、ヘプタナール、o−フタルアルデヒド、オクタナール、ノナナール、デカナール等が挙げられる。特定の一態様において、カルボニル基含有化合物は、ホルムアルデヒド、アセトン及び/又はアセトアルデヒドである。
【0025】
本発明で用いられる大気サンプルは、周囲の大気でも、あるいは、車両の排気ガス等の汚染源から集めた空気でもよい。
一実施態様において、大気サンプル中のオゾン及びカルボニル基含有化合物の存在を検知する方法を提供する。この方法例は、一般に
(a)大気サンプルをオゾン反応性吸着剤と接触させ、大気サンプル中にオゾンが存在する場合には、該オゾンは該オゾン反応性吸着剤と反応しアルデヒド生成物を形成する工程と、
(b)工程(a)からの該大気サンプルをさらにカルボニル反応性吸着剤と接触させ、該大気サンプル中にカルボニル基含有化合物が存在する場合には、該カルボニル基含有化合物は該カルボニル反応性吸着剤と反応し第1のヒドラゾン生成物を形成する工程と、
(c)溶媒により、該カルボニル反応性吸着剤から該オゾン反応性吸着剤へ溶離させ、工程(a)のいかなるアルデヒド生成物も第2のヒドラゾン生成物を形成する工程と、
(d)工程(b)及び工程(c)において形成した又は形成しうるヒドラゾン生成物の存在に関して、該工程(c)からの溶離液の分析を行う工程とを含む。
【0026】
大気サンプル中にオゾンが存在すると、オゾン反応性吸着剤は、オゾンを「捕獲」、即ち、オゾンと結合するように作用する。一側面において、オゾン反応性吸着剤は、オゾン反応性化合物が塗布された、あるいは「含浸」された不活性担体である。このような不活性な担体としては、シリカ粒子(シリカゲル等)、アルミナ、スチレン−ジビニルベンゼン(XAD−2)、フロリジル(登録商標)、ガラスビーズ、ガラス繊維フィルター等が挙げられる。さらに、特定の一実施態様において、不活性担体は、シリカである。更に、特定の一実施態様において、シリカは、オクタデシルシリルシリカゲル(C18)等のシリカゲルの形態をしている。
【0027】
一般に、オゾン反応性化合物は、オゾンと反応することができれば、いかなる化合物でもよい。特に、オゾン反応性化合物は、オレフィン含有化合物である。特定の一実施態様においては、オレフィン含有化合物は、電子供与性基が置換した1,2−ジ置換オレフィンである。例えば、オレフィン含有化合物は、限定的ではないが、1,2−ビス(4−ピリジル)エチレン(BPE)、スチルベン、4,4’−ジメトキシスチルベン、1,2−ビス(2−ピリジル)エチレン、4,4’−ジニトロスチルベン、4,4−ジニトロスチルベン−2,2−ジスルホン酸を挙げることができる。オレフィン含有化合物は、オゾンとオレフィン含有化合物のエチレン性二重結合との間でオゾン分解反応を起こし、とりわけ、アルデヒド生成物を生成する。さらに、特定の一実施態様においては、オゾン反応性化合物はBPEであり、形成されるアルデヒド生成物は、ピリジン−4−アルデヒドである。
【0028】
大気サンプルの少なくとも一部がオゾン反応性吸着剤と接触した後、大気サンプルは、次に、カルボニル反応性吸着剤と接触する。もし、カルボニル基含有化合物が大気サンプル中に存在すれば、カルボニル反応性吸着剤は、カルボニル基含有化合物を「捕獲」、即ち、カルボニル基含有化合物と結合するように作用する。一側面において、カルボニル反応性吸着剤は、カルボニル反応性化合物が塗布された、あるいは「含浸」された不活性担体である。そのような不活性担体の例としては、オゾン反応性吸着剤を作製する際に用られる担体が挙げられる。
【0029】
カルボニル反応性化合物は、ケトンやアルデヒド等のカルボニル基と反応することができれば、一般に、いかなる化合物でもよい。カルボニル反応性化合物としては、限定的ではないが、例えば、2,4−ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)、3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾン(MBTH)、O−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンジル)ヒドロキシルアミン、O−ベンジルヒドロキシルアミン、2−ジフェニルアセチル−1,3−インダンジオン−1−ヒドラゾン、5−ジメチルアミノナフタレン−1−スルホヒドラジド(ダンシルヒドラジン)、N−メチル−4−ヒドラジノ−7−ニトロベンゾフラザン、ペンタフルオロフェニルヒドラジン、及び、O−(4−シアノ−2−エトキシベンジル)ヒドロキシアミンが挙げられる。
【0030】
特定の一実施態様において、カルボニル反応性吸着剤は、さらに、リン酸、塩酸、硫酸、又はそれらの組み合わせを含むことができる。例えば、一態様では、カルボニル反応性吸着剤はさらに約15mmolのリン酸を含んでもよい。
【0031】
続いて、大気サンプル中に存在するいかなるカルボニル基含有化合物もカルボニル反応性吸着剤と反応し、第1のヒドラゾン生成物を形成する。特定の一実施態様において、カルボニル反応性吸着剤は、DNPHであり、形成される第1のヒドラゾン生成物は、カルボニル−2,4−ジニトロフェニルヒドラゾン(カルボニル−DNPH)である。さらに、特定の一実施態様において、第1のヒドラゾン生成物の形成が可能なカルボニル基含有化合物としてホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
大気サンプルは、実質的にカルボニル反応性吸着剤よりも前に、オゾン反応性吸着剤と接触するのが理想的である。こうすると、オゾンが大気サンプル中に存在する場合に、オゾン反応性吸着剤に実質的にオゾンは捕獲され、カルボニル基含有化合物の捕獲や検知がオゾンに妨害されることはない。この場合は、このオゾン反応性吸着剤は、「オゾン洗浄器」として機能しているといえる。
【0033】
大気サンプルのオゾン反応性吸着剤及びカルボニル反応性吸着剤との接触に続いて、形成したいかなる生成物も、カルボニル反応性吸着剤から溶媒により溶離、つまり「抽出」され、オゾン反応性吸着剤に送られる。この溶離工程で、カルボニル反応性吸着剤から過剰のDNPHが洗い落とされ、オゾン反応性吸着剤に送られる。もし、オゾンがオゾン反応性吸着剤と反応し、アルデヒド生成物が形成された場合は、過剰のDNPHがこのアルデヒド生成物と反応し、第2のヒドラゾン生成物、すなわち、アルデヒド−2,4−ジニトロフェニルヒドラゾン(アルデヒド−DNPH)を形成する。特定の一例において、もし、ピリジン−4−アルデヒドがオゾン反応性吸着剤中に形成する反応物であり、そして、過剰のDNPHが洗い落とされてオゾン反応性吸着剤に送られる場合は、形成する第2のヒドラゾン生成物はピリジン−4−アルデヒド−2,4−ジニトロフェニルヒドラゾン(ピリジン−4−アルデヒド−DNPH)である。
【0034】
溶離工程で用いられる溶媒は、極性溶媒である。好適な溶媒の例としては、限定的ではないが、アセトニトリル、DMSO、あるいは、アセトニトリルとDMSOとの溶液が挙げられる。特定の一実施態様において、溶媒は、形成するピリジン−4−アルデヒド−DNPHの量に対応して、DMSOを約1%から約99%含有するアセトニトリルの溶液である。なお、さらに、特定の一実施態様において、アセトニトリル溶液は約15%〜約50%のDMSOを含有する。
【0035】
溶離工程の後、溶離液は、カルボニル−DNPH(上記で第1のヒドラゾン生成物と称される)やアルデヒド−DNPH(上記で第2のヒドラゾン生成物と称される)生成物等の、形成したヒドラゾン生成物の存在について分析される。分析は、ヒドラゾン化合物の分離及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)やガスクロマトグラフィー(GC)等によるヒドラゾン生成物の濃度の測定が含まれてもよい。特定の一実施態様においては、本方法の実施中、HPLCは、形成、溶離されるヒドラゾン生成物を分析するために用いられる。そうすることで、オゾン及びホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン等のカルボニル基含有化合物の測定が、一つのHPLC分析だけで可能となる。
【0036】
さらに一つの側面において、大気サンプルは、例えば、空気ポンプ等の積極的に大気サンプルを吸い込む手段により、オゾン反応性吸着剤を通り、続いて、カルボニル反応性吸着剤を通して吸い込まれる。大気の流量は、約24時間の場合の約1ml/分から、約1時間の場合の約2000ml/分であり得る。特定の一実施態様においては、約24時間の場合の約50ml/分から約1時間の場合の約1000ml/分である。オゾン反応性吸着剤及びカルボニル反応性吸着剤を通して大気を吸い込むためのその他の好適な手段を、本開示の範囲内で用いてもよい。
【0037】
なお、さらに、一側面においては、大気サンプル中のオゾン及びカルボニル基含有化合物の存在は装置の中で検知される。例えば、大気サンプル中のオゾン及びカルボニル基含有化合物の存在を検知するための方法を提供する。この方法例は、一般に、
(a)大気サンプルを装置に吸い込む工程と、
(b)該大気サンプルを、1,2−ビス(4−ピリジル)エチレンで被覆したシリカ粒子を含む第1の床に接触させ、大気サンプル中に存在するオゾンが該1,2−ビス(4−ピリジル)エチレンと反応しピリジン−4−アルデヒドを形成することにより捕捉される工程と、
(c)該大気サンプルを、2,4-ジニトロフェニルヒドラジンで被覆したシリカ粒子を含む第2の床に接触させ、該大気サンプル中に存在するカルボニル基含有化合物が該2,4-ジニトロフェニルヒドラジンと反応しカルボニル−2,4−ジニトロフェニルヒドラゾンを形成することにより捕捉される工程と、
(d)溶媒により、第2の床から第1の床へ溶離させ、過剰の2,4-ジニトロフェニルヒドラジンが、ピリジン−4−アルデヒドと反応し、ピリジン−4−アルデヒド−2,4−ジニトロフェニルヒドラゾンを形成する工程と、
(e)該工程(c)及び該工程(d)で形成した該カルボニル2,4-ジニトロフェニルヒドラゾンとピリジン−4−アルデヒド−2,4−ジニトロフェニルヒドラゾンの分析を行う工程とを含む。
【0038】
従って、本発明の別の実施態様において、大気サンプル中のオゾン及びカルボニル基含有化合物の存在を検知するための装置1を提供する。例示の装置1の一般的な構造を図1A〜図1Cに示す。図示した装置1は、一般に、筺体3、この筺体3内に配置されたオゾン反応性吸着剤5、及び筺体3内に配置されたカルボニル反応性吸着剤7を含む。大気サンプルが、第1の開口部9を通し、筺体3に入り、第2の開口部11を通し、筺体3から出て行くように、筺体3を通して大気サンプルを吸い込み、移動する等の手段を提供できる。筺体3を通して吸い込まれる大気サンプルの少なくとも一部がカルボニル反応性吸着剤7よりも前にオゾン反応性吸着剤5と接触するようにオゾン反応性吸着剤5及びカルボニル反応性吸着剤7は筺体3内に配置されている。
【0039】
筺体3はカートリッジ、柱状容器、注射筒等のいかなる不活性な構造でもよい。筐体3は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、及び/又はガラス等のいかなる好適な不活性な材料で作られていてもよい。筐体3は、大気のサンプリングや溶離のために任意の好適な形をとることができる。特定の一実施態様において、筐体3は、円筒型ポリエチレンカートリッジである。さらに、図1Aに示したように、装置1が「待機」状態にある時には、装置1は、1つ又は2つ以上の蓋17を含んでいてもよい。
【0040】
オゾン反応性吸着剤5及びカルボニル反応性吸着剤7については、実質的に上記で説明されている通りである。例えば、吸着剤5及び/又は吸着剤7は、一般に約105μm〜約210μmの粒子径を有し、さらに/又は約150μmの平均粒子径を有する。図示した態様では、吸着剤5及び吸着剤7は共に筐体3内に配置されている。図1A及び図1Bに示されているように、オゾン反応性吸着剤5及びカルボニル反応性吸着剤7は、大気の少なくとも一部がカルボニル反応性吸着剤7よりも前にオゾン反応性吸着剤5と接触するように、筐体3内に配置されている。さらに、特定の一実施態様において、オゾン反応性吸着剤5とカルボニル反応性吸着剤7が、筐体3内にそれぞれ約1:3の比率で存在する。
【0041】
筐体3に大気を吸い込み、移動する等の手段(図示せず)は、空気ポンプ等のような、大気を吸い込み、移動し、導く等のために好適な、いかなる手段でもよい。特定の一実施態様においては、大気サンプルを吸い込む手段は、筐体3の第2の開口部11に付属している。しかしながら、大気サンプルを筐体3に移動する、押しこむ等の手段が、筐体3の第1開口部9に取り付けられていてもよく、本開示の範囲内である。
【0042】
図1Cに示すように、装置1は、さらに、溶媒13を第2の開口部11を経て筐体3に導入する手段と溶離液15を補集する手段を含んでもよい。溶媒13は、実質的に上記に説明した通りである。溶媒13を第2の開口部11を経て筐体3に導入する手段としては、容器、漏斗、瓶、管、大型瓶、フラスコ瓶、グラス、広口瓶、水差し、小瓶等の、好適ないかなる手段でもよい。図1Cには、溶媒13を筺体3に導入する際に用いられる容器17が示されている。さらに、溶離液15を捕集するための方法としては、容器、瓶、管、大型瓶、グラス、広口瓶、水差し、小瓶等の、好適ないかなる手段でもよい。図1Cに、溶離液15を補集する容器19を示す。
【0043】
装置1は、さらに、HPLC、GC等の溶離液を分析するための手段(図示せず)を含んでもよい。
さらに一例として、該装置1は、一般に、第1の作用様式に影響を及ぼす手段及び第2の作用様式に影響を及ぼす手段をも含むことができ、該第1の作用様式と該第2の作用様式が協働して該大気サンプル中のオゾン及びカルボニル基含有化合物の存在を検知する。
【0044】
第1の作用様式(図1B)は、一般に、
(a)大気サンプルをオゾン反応性吸着剤5と接触させ、大気サンプルにオゾンが存在する場合には、オゾンはオゾン反応性吸着剤5と反応しアルデヒド生成物を形成する工程と、
(b)工程(a)からの大気サンプルをさらにカルボニル反応性吸着剤7と接触させ、大気サンプルにカルボニル基含有化合物が存在する場合には、カルボニル基含有化合物は、カルボニル反応性吸着剤7と反応し第1のヒドラゾン生成物を形成する工程とを含む、大気サンプリング様式である。
【0045】
第1の作用様式は、さらに、空気ポンプ等のような、大気を吸い込み、オゾン反応性吸着剤5及びカルボニル反応性吸着剤7へ移動させる等の手段を利用することを含んでもよい。特定の一態様において、装置1がサンプリング様式(第1の作用様式)である場合は、大気を吸い込み、移動する等の手段は、筺体3の第2の開口部11に取り付けられる。
【0046】
第2の作用様式(図1C)は、一般に、
(c)溶媒13により(例えば、容器17等を介し)、カルボニル反応性吸着剤7からオゾン反応性吸着剤5へ溶離させ、第1の作用様式の工程(a)のいかなるアルデヒド生成物も第2のヒドラゾン生成物を形成する工程と
(d)第1の作用様式の工程(b)及び第2の作用様式の工程(c)において形成したヒドラゾン生成物の存在に関してこの第2の作用様式の工程(c)からの溶離液15の分析を行う工程とを含む、溶離または「抽出」様式である。
【0047】
図2A〜図2Cに、大気サンプル中のオゾン及びカルボニル基含有化合物の存在を検知するための別の例示装置101(図2C)を示す。例示装置101は一般に、第1の筐体133及び第2の筐体135を含む。本態様では、オゾン反応性吸着剤105は第1の筐体133内に配置され、カルボニル反応性吸着剤107は第2の筐体135内に配置される。第1の筐体133及び第2の筐体135に大気サンプルを吸い込み、移動したりする手段を提供できる。一例として、第1の筐体133及び第2の筐体135に吸い込まれる大気サンプルの少なくとも一部がカルボニル反応性吸着剤107よりも前にオゾン反応性吸着剤105に接触してもよい。本開示の範囲内で、別の大気の流れが提供されてもよい。
【0048】
筺体133及び135のいずれも、カートリッジ、柱状容器、注射筒等のような任意の不活性な構造でもよい。筺体133及び135のいずれも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、及び/又はガラス等のような任意の好適で不活性な材料で作られていてもよい。筐体133及び筺体135は、大気のサンプリングや溶離のために任意の好適な形をとることができる。特定の一実施態様においては、第1の筐体133及び第2の筐体135の両方が、円筒型ポリエチレンカートリッジを含む。さらに、図2A及び図2Bに示したように、装置101が「待機」状態にある場合は、筐体133及び筺体135の各々は、1つ又は2つ以上の蓋117を含んでいてもよい。
【0049】
この態様のオゾン反応性吸着剤105及びカルボニル反応性吸着剤107は、実質的に上記で説明されている通りである。例えば、吸着剤105及び/又は吸着剤107は、一般に、約105μm〜約210μmの粒子径を有し、さらに/又は約150μmの平均粒子径を有する。それに加え、図示した態様では、オゾン反応性吸着剤105は第1の筐体133内に配置されており、カルボニル反応性吸着剤107は第2の筐体135内に配置されており、それぞれ約1:3の比率で配置されている。吸着剤105及び/又は吸着剤107をその他の比率でも、本開示の範囲内で用いることができる。
【0050】
装置101は、また、一般に、第1の作用様式に影響を及ぼす手段及び第2の作用様式に影響を及ぼす手段をも含み、第1の作用様式と第2の作用様式が協働して大気サンプル中のオゾン及びカルボニル基含有化合物の存在を検知する。
【0051】
第1の作用様式は大気サンプリング様式であり、これは、一般に、
(a)大気サンプルをオゾン反応性吸着剤105と接触させ、該大気サンプルにオゾンが存在する場合には、該オゾンはオゾン反応性吸着剤105と反応しアルデヒド生成物を形成する工程と、
(b)該大気サンプルをカルボニル反応性吸着剤107と接触させ、該大気サンプル中にカルボニル基含有化合物が存在する場合には、該カルボニル基含有化合物はカルボニル反応性吸着剤107と反応し第1のヒドラゾン生成物を形成する工程とを含む。
【0052】
図示した態様の第1の作用様式(例えば、図2C等)において、第1の筐体133は、第2の筐体135に連結される(例えば、図示した態様に示したように、一般に、直列で、第2の筐体135等の上に第1の筐体133が位置する)。図示した態様において、さらに詳細には、第1の筐体133の第2の端部139は、第2の筐体135の第1の端部141に連結する。第1の筐体133と第2の筐体135との連結のために好適なあらゆる手段を用いてよく、例えば、ネジ式結合、即応離脱(quick-release)式結合、押圧嵌合(press-fit)式結合、ファスナー(fastener)等が用いられる。その他の実施態様では、作用様式の実施中には、本明細書で開示した以外の異なった位置に筐体を置いてもよい。さらにその他の実施態様では、筐体を連結する際の使用のために筐体間に介在する管等を備えてもよい。
【0053】
第1の作用様式は、さらに、大気サンプルを装置101に吸い込む、移動する等の手段を利用することを含んでもよい。例えば、その手段は、第1の筐体133(及び、その中のオゾン反応性吸着剤105)、続いて第2の筐体135(及び、その中のカルボニル反応性吸着剤107)に、大気サンプルを吸い込む、移動する、押し込む等をおこなう。こうすると、サンプリング操作中、大気サンプルの少なくとも一部は、第2の筐体135内のカルボニル反応性吸着剤107よりも前に、第1の筐体133内のオゾン反応性吸着剤105と接触する。この手段は、本開示の範囲内で、本明細書の開示とは異なるやり方で、筐体133及び筐体135に、大気サンプルを吸い込み、移動し、押し込む等の働きをしてもよい。大気のサンプルを吸い込む、移動する、導く等の手段は、例えば、空気ポンプ等のような、好適ないかなる手段でもよい。この手段は、例えば、第2の筐体135の第2の端部143(例えば、第2の筐体135の第2の端部143によって定義される開口部等)に連結できる。しかしながら、装置101に大気サンプルを移動する、押し込む等のための手段は、本開示の範囲内で、第1の筐体133の第1の端部137(例えば、第1の筐体133の第1の端部137より定義された開口部等)に取り付けられてもよい。
【0054】
第2の作用様式は、装置1に関連して記述した様式と類似の溶離、すなわち、「抽出」様式である。第2の作用様式は、一般に、
(c)溶媒により、カルボニル反応性吸着剤107からオゾン反応性吸着剤105へ溶離させ、第1の作用様式からの工程(a)のいかなるアルデヒド生成物も第2のヒドラゾン生成物を形成する工程と
(d)ヒドラゾン生成物の存在に関して、この第2の作用様式の工程(c)からの溶離液を分析する工程とを含む。
【0055】
図示した態様の第2の作用様式では、例えば、溶媒は第2の筐体135、次に第1の筐体133を通して溶離を行うことができる。装置101は、溶媒を第2の筐体135に、第2の端部143を経て導入する手段と、溶離液を第1の筐体133の第1の端部137を経て捕集する手段を含んでいてもよい。溶媒は、実質的に上記で説明した通りである。溶媒を第2の筐体135に導入する手段としては、容器、漏斗、瓶、管、大型瓶、フラスコ瓶、グラス、広口瓶、水差し、小瓶等の任意の好適な手段が挙げられる。さらに、第1の筐体133からの溶離液を捕集するための方法としては、容器、瓶、管、大型瓶、グラス、広口瓶、水差し、小瓶等の任意の好適な手段が挙げられる。溶媒は、本開示の範囲内で、装置101の第1の筐体133及び第2の筐体135を重力(例えば、この装置は、一般に第1の筐体133の上方に第2の筐体135が配置される等の可能性がある)やポンプ等によって移動してもよい。
【0056】
装置101は、さらに、HPLC、GC等の溶離液を分析するための手段(図示せず)を含んでもよい。
さらに別の実施態様において、一般に、
(a)大気サンプル中のオゾン及びカルボニル基含有化合物の存在を検知するためのカートリッジと、
(b)オゾン及びカルボニル基含有化合物の誘導体をカートリッジから溶離するための溶媒とを含むキットを提供する。
【0057】
キットの構成要素類は、例えば、一つの容器の中あるいは一つの外装の内部の複数の容器の中に一緒に収納(共収納)するか、または、別々にまとめて、一緒に提供することも、任意にできる(共提供:common presentation)。共収納または共提供の1例として、キットは、第1の容器の中に大気サンプル中のオゾン及びカルボニル基含有化合物の存在を検知するカートリッジを、また、第2の容器の中にオゾンとカルボニル基含有化合物の誘導体をカートリッジから溶離するための溶媒を含んでもよい。例えば、第1の容器は、オゾン反応性吸着剤及びカルボニル反応性吸着剤を含有する単一のカートリッジを含んでもよく、あるいは、第1の容器は、オゾン反応性吸着剤を含有するカートリッジとカルボニル反応性吸着剤を含有する別のカートリッジとを含んでもよい。別の例では、各々のカートリッジと溶媒は、別々に包装されて、互い独立して市販品として利用できるが、本発明に従う使用のために、一緒に市販されるか、一緒に販売促進される。
【実施例】
【0058】
以下の実施例は、単に説明的なものであり、本開示を決して限定するものではない。
実施例1
装置及び試薬
使用したHPLCシステム(島津製作所、京都、日本)は、2台のLC−20AD型ポンプ、SIL−10AC型オートサンプラー及びSPD−M20AD型フォトダイオードアレイ検出器を含んでいた。分析用カラムは、粒子径3μmのAscentis RP−Amideと粒子径5μmのAscentis C18とを充填した長さ150mm×内径4.6mmのステンレス管(Supelco社、ベルフォンテ、ペンシルベニア州、米国)であった。移動相用の混合溶媒は、2mmol/Lの酢酸アンモニウムを含むアセトニトリル/水(40:60v/v)であった。カラム温度は40℃で、注入量は10μLであった。3台の空気ポンプ(100 デュアル型ジーエルサイエンス(株)、埼玉、日本)を大気サンプルの捕集に用いた。
【0059】
HPLC及びサンプル調製に用いる水は、UVランプを搭載したMilli−Q水システム(Millipore社、ベッドフォード、マサチューセッツ州、米国)を用いて、脱イオンし、精製を行った。アセトニトリルは、Riedel-de Haen社(シールゼ−ハノーバー,西ドイツ)製のHPLCグレードであった。2,4-ジニトロフェニルヒドラジン塩酸塩(>98%)は、東京化成(株)(東京、日本)から購入した。リン酸(85%水溶液)、塩酸(37%)、トランス−1,2−ビス(4−ピリジル)エチレン(97%)、ピリジン−4−アルデヒド(4−ピリジンカルボキシアルデヒド,97%)、及び酢酸アンモニウム(99.999%)は、シグマ−アルドリッチ(Sigma-Aldrich)社(セントルイス、ミズリー州、米国)から購入した。レゾリアン(Rezorian)のオゾン洗浄器(3mL/1.5gヨウ化カリウム)は、Supelco社から購入した。シリカゲル(球状、粒子径:105μm〜210μm、平均孔径:120Å)は、AGCエスアイテック(株)(福岡、日本)から購入した。
【0060】
ピリジン−4−アルデヒド−2,4−DNPヒドラゾン塩酸塩誘導体の合成
まず、2,4−ジニトロフェニルヒドラジン塩酸塩(2.3g)をエタノール(400mL)に溶解し、塩酸(5mL)を添加した。次に、ピリジン−4−アルデヒド(3mL)を連続攪拌しながら添加した。数分後、生じた沈殿をろ過で回収し、水(3×500mL)で洗浄し、続いてエタノール(2×500mL)で洗浄した。最後に、洗浄後の沈殿を105℃で3時間乾燥した。
【0061】
DNPHで被覆されたシリカ粒子の調製
シリカゲル(50g)をアセトニトリル(3×500mL)で洗浄した。洗浄後のシリカゲルに、アセトニトリル(500mL)に溶解した2,4−ジニトロフェニルヒドラジン塩酸塩(0.25g)とリン酸(0.5mL)より成る溶液を添加した。混合物を攪拌し、ロータリーエバポレーターを用い、40℃、真空下で溶媒を蒸発、乾燥させた。
【0062】
BPEで被覆されたシリカ粒子の調製
シリカゲル(50g)を水(3×500mL)、メタノール(2×500mL)、そして、アセトニトリル(2×500mL)で洗浄した。洗浄後のシリカゲルに、アセトニトリルに溶解したトランス−1,2−ビス(4−ピリジル)エチレン(BPE、100mg)を連続撹拌しながら添加した。次に、溶媒を、ロータリーエバポレーターを用い、40℃、真空下で蒸発させ、乾燥させた。
【0063】
オゾン及びカルボニル類を捕集するためのBPE/DNPHカートリッジの調製
BPEで被覆したシリカ粒子(90mg)及びDNPHで被覆したシリカ粒子(16mmolのリン酸を含有する260mg)をポリエチレン製カートリッジ(レゾリアン(Rezorian)管、Supelco社製、ベルフォンテ、ペンシルベニア州、米国)に充填し、4℃の冷蔵庫に保管した。図1A〜図1Cは、BPE/DNPHカートリッジの概略図と、オゾンとカルボニル類を測定する手順を示している。
【0064】
大気サンプル捕集
大気サンプルは、カートリッジを通り、BPE床からDNPH床へ、流量が24時間では100mL/分で、あるいは1時間では1000mL/分で、吸い込んだ。大気サンプルのオゾンは、BPEで被覆したシリカ床中に捕獲され、ピリジン−4−アルデヒドを生成した。大気サンプルのカルボニル類は、DNPHで被覆したシリカ床中に捕獲され、カルボニル2,4-DNPヒドラゾン類を生成した。下記のケミストリーが、大気サンプルに存在するオゾンまたはカルボニル基含有化合物を(それぞれ)捕獲するのに使われた。
【0065】
【化1】

【0066】
オゾンは、第1床中のBPEとの反応によって効果的に捕獲されるので、第2床中のDNPH及びカルボニル2,4−DNPヒドラゾン類が、オゾンによって影響されることはなかった。
【0067】
抽出とHPLC分析
大気サンプリングとは逆方向で抽出を行った。BPE/DNPHカートリッジに溶媒を通し、DNPHをBPE床へ洗い落し、そこでDNPHをピリジン−4−アルデヒドと反応させて対応するヒドラゾン誘導体を形成した。BPE/DNPHカートリッジからの溶離液は、オゾンから形成されるピリジン−4−アルデヒドを含む種々のカルボニル類から誘導されるヒドラゾンを含有していた。
【0068】
一般に、カルボニル2,4−DNPヒドラゾン類の溶離液として、アセトニトリルが用いられる。しかしながら、ピリジン−4−アルデヒド2,4−DNPヒドラゾンのアセトニトリルへの溶解性は低い。従って、DMSOをアセトニトリルに添加した。ピリジン−4−アルデヒド2,4−DNPヒドラゾンは比較的高濃度でDMSOに溶解する。図3に、25℃におけるジメチルスルホキシドとアセトニトリルの混合溶媒に対するピリジン−4−アルデヒドの溶解度を示す。
【0069】
ピリジン−4−アルデヒドのアセトニトリルに対する溶解度は、約0.79mmol/Lである。仮に、BPE/DNPHカートリッジ中のBPEがオゾンと完全に反応すると、約0.66mmol/Lのピリジン−4−アルデヒドが形成される。アセトニトリルとDMSOの溶液による抽出は、高い抽出効率を維持するのに役立つ。この研究では、アセトニトリル中に30%のDMSOを含む溶液を溶離液として用いた。
【0070】
ピリジン−4−アルデヒド2,4DNPヒドラゾン誘導体(PA)の紫外可視吸収スペクトルを図4に示す。参照用に、DNPH、ホルムアルデヒド(FA)、アセトアルデヒド(AA)及びアセトン(AC)誘導体の吸収スペクトルも示す。ピリジン−4−アルデヒド−DNPヒドラゾン誘導体のスペクトルプロファイルは、低級脂肪族アルデヒド−DNPヒドラゾン類と類似し、表1に示したように、長波の極大吸収波長(371nm)と大きな吸光度係数(3.4×10L/mol/cm)を示す。
【0071】
【表1】

【0072】
ピリジン−4−アルデヒド及びC〜C−カルボニル−DNPH誘導体に対する分析条件をAscentis RP−Amideカラムを用い調べた。BPE/DNPHカートリッジを用い、2つの大気サンプリングを100mL/分で24時間平行して行った。続いて、これらのBPE/DNPHカートリッジに対し、3mLのDMSO/ACN(30:70v/v)の混合溶媒を用い、1mL/分の流量で抽出操作を行った。24時間後、酢酸アンモニウム(0、0.1、1、2、5、10又は20mmol/L)を含むACN/HO(40:60v/v)の移動相を用いたHPLCで、これらの溶離液を分析した。図5に、大気サンプルから抽出した溶液中と標準溶液中のピリジン−4−アルデヒド(PA)、ホルムアルデヒド(FA)、アセトアルデヒド(AA)、アセトン(AC)2,4−DNPヒドラゾン類のクロマトグラフ溶離曲線を示す。
【0073】
移動相用の混合溶媒は、アセトニトリル/水(40:60v/v)及び2mmol/L酢酸アンモニウムを含有するアセトニトリル/水(40:60v/v)であった。移動相の流量は、1.5mL/分であった。
【0074】
移動相が酢酸アンモニウムを含まない場合、ピリジン−4−アルデヒド2,4−DNPヒドラゾンの吸収ピークは極めて広くなった。酢酸アンモニウムを移動相に添加した場合、吸収ピークは著しく鋭くなった。移動相に酢酸アンモニウムを2mmol/L以上添加しても、さらなるピーク幅の減少は起こらなかった。標準液由来のサンプルの場合は、酢酸アンモニウムを添加してもピーク幅の変化は起こらなかった。
【0075】
ピリジン−4−アルデヒドとDNPHとの反応
種々の濃度のリン酸を含むDNPH−シリカで作られたBPE/DNPHカートリッジを用いて、6つの大気サンプリング(100mL/分で24時間)を平行して行った。これらのBPE/DNPHカートリッジについて、続いて3mLのDMSO/ACN(30:70v/v)を用い、1mL/分の流量で抽出操作を行った。生成したヒドラゾン誘導体混合物は、HPLCによって即座に分析し、さらに25℃で保存したものについて、分析を一定時間毎に繰り返した。図6に0、1.5、3.0、7.5、15あるいは30mmolリン酸を含有する抽出液中のピリジン−4−アルデヒドDNPヒドラゾン濃度の経時変化を示す。
【0076】
抽出溶媒中のリン酸量の増加に従い、反応速度の明らかな上昇が観察された。例外は、抽出溶液が30mmolのリン酸を含有する場合であった。ピリジン−4−アルデヒドとDNPHとの反応は、15mmolリン酸の存在下で、4時間で終了した。この誘導体化反応には、触媒量の酸が必要であり、ヒドラゾン形成が可逆反応であるという事実によって、図6で観察される挙動が説明できる。極めて酸性が強い水溶液(例えば、30mmolリン酸)では、ヒドラゾン誘導体は、加水分解してピリジン−4−アルデヒドとDNPHに戻る。このようにして、低いヒドラゾン濃度における平衡状態が確立される。図6から、DNPH−シリカにおけるリン酸触媒の最適な量は、約15mmolであることが示唆される。
【0077】
別々にBPEとDNPHカートリッジを準備し、直列に接続した。大気サンプルを、1000mL/分で2時間、BPEカートリッジから吸い込み、DNPHカートリッジに送った。捕集後、未使用のDNPHカートリッジをBPEカートリッジに接続し、1mL/分でDMSO/ACN(30:70v/v)でDNPHカートリッジからの抽出を行った。サンプリング用DNPHカートリッジは、直接、1mL/分でDMSO/ACN(30:70v/v)を用いて抽出された。図7にサンプリング用BPE及びDNPHカートリッジからの溶離液中の経時での濃度変化を示す。
【0078】
BPEカートリッジからは、ピリジン−4−アルデヒドのみが検知された。DNPHカートリッジからは、すべての大気中に浮遊するカルボニル類、及びいくらかのピリジン−4−アルデヒドが検知された。このように、すべての大気中に浮遊するカルボニル類(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド及びアセトン)はBPEカートリッジを通り抜け、DNPHカートリッジに捕捉される。オゾンとBPEとの反応により形成されるピリジン−4−アルデヒドはほとんどすべて(97%)がBPEカートリッジに残留し、3%がDNPHカートリッジ中で検知された。
【0079】
環境大気の測定
千葉市の環境大気を、種々のDNPHカートリッジを用い捕集した。これらは、DNPHのみのカートリッジ、KI−オゾン洗浄カートリッジを備えたDNPHカートリッジ及び2床式BPE/DNPHカートリッジ等である。大気は、50mL/分で、24時間サンプリングした。表2には、気候条件と共にオゾンとカルボニル類の測定濃度を一覧表にしている。日本では、6月と7月は雨季なので、非常に高い湿度になる場合が多い。高い湿度の期間(7月4日及び5日、7月12日及び13日、7月17日及び18日、7月19日及び20日)にサンプリングを行ったが、KI−DNPHの一連のサンプリング法で捕集したカルボニル類の濃度が、DNPH、あるいはBPE/DNPHカートリッジで捕集したカルボニル類と比較して低くかった。理論に縛られることはないが、ヨウ化カリウムが大気の湿気でぬれた結果、カルボニル類がオゾン洗浄器に捕獲されたと我々は考えている。その上、溶解したヨウ化カリウムはDNPHカートリッジに移動し、DNPHの黄色は赤みがかった褐色に変化した。低湿度でのサンプリングの期間(6月27日及び28日、6月28日及び29日、7月21日及び22日)中は、DNPHのみのカートリッジで捕集したカルボニル類の濃度が、KI−DNPH組み合わせカートリッジ、あるいはBPE/DNPHカートリッジを用いた結果に比較し、低い結果となった。カルボニル−DNPヒドラゾン類が、KIあるいはBPEオゾン洗浄剤が存在しない場合に分解した可能性が高い。
【0080】
【表2】

【0081】
BPE/DNPHカートリッジを用いることで、大気サンプル中のオゾンとカルボニル基含有化合物の検知が可能である。BPEにその機能があるので、別のオゾン洗浄カートリッジを、必ずしもBPE/DNPHと一緒に用いる必要はない。さらに、大気のサンプリングは、高湿度、低湿度のいずれの条件の下でも、効率的に行うことができる。
【0082】
本明細書に引用したすべての特許及び刊行物は、その全体を参照によって本出願に組み込む。
態様に関する前述の記載は、例示や説明の目的のために提供されたものであり、包括的、あるいは、この発明を制限することを意図するものでもない。特定の態様における個々の要素或いは特徴は、その特定の態様に対して限定されるものではなく、適用できる場合には、互換性のあるものであり、特別な指示や記載がなくとも、選ばれた態様において利用可能なものである。また、それらは色々な方法に変形されることも可能である。そのような変形は、本願発明から逸脱するものとみなされず、すべての変形例は本発明の範囲に含まれるものであることを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気サンプル中のオゾン及びカルボニル基含有化合物の存在を検知する方法であって、
(a)大気サンプルをオゾン反応性吸着剤と接触させ、該大気サンプル中にオゾンが存在する場合には、該オゾンは該オゾン反応性吸着剤と反応しアルデヒド生成物を形成する工程と、
(b)工程(a)からの該大気サンプルをさらにカルボニル反応性吸着剤と接触させ、該大気サンプル中にカルボニル基含有化合物が存在する場合には、該カルボニル基含有化合物は該カルボニル反応性吸着剤と反応し第1のヒドラゾン生成物を形成する工程と、
(c)溶媒により、該カルボニル反応性吸着剤から該オゾン反応性吸着剤へ溶離させ、工程(a)のいかなるアルデヒド生成物も第2のヒドラゾン生成物を形成する工程と、
(d)工程(b)及び工程(c)において形成したヒドラゾン生成物の存在に関して、工程(c)からの該溶離液の分析を行う工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記オゾン反応性吸着剤がオゾン反応性化合物により被覆された不活性担体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記オゾン反応性化合物がオレフィン含有化合物である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記オゾン反応性化合物が1,2−ジ置換オレフィンであって、該1,2−ジ置換オレフィンが電子供与性基で置換されている、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記オゾン反応性化合物が、1,2−ビス(4−ピリジル)エチレン、スチルベン、4,4’−ジメトキシスチルベン、1,2−ビス(2−ピリジル)エチレン、4,4’−ジニトロスチルベン、及び4,4−ジニトロスチルベン−2,2−ジスルホン酸からなる群から選ばれる、請求項2,3,又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記不活性担体が、シリカゲル、フロリジル(登録商標)、アルミナ、スチレン−ジビニルベンゼン、ガラスビーズ、及びガラス繊維フィルターからなる群から選ばれる、請求項2〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記形成したアルデヒド生成物がピリジン−4−アルデヒドである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記カルボニル反応性吸着剤が、2,4−ジニトロフェニルヒドラジン、3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾン、O−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンジル)ヒドロキシルアミン、O−ベンジルヒドロキシルアミン、2−ジフェニルアセチル−1,3−インダンジオン−1−ヒドラゾン、5−ジメチルアミノナフタレン−1−スルホヒドラジド、N−メチル−4−ヒドラジノ−7−ニトロベンゾフラザン、ペンタフルオロフェニルヒドラジン、及びO−(4−シアノ−2−エトキシベンジル)ヒドロキシルアミンからなる群から選ばれるカルボニル反応性化合物により被覆された不活性担体である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記不活性担体が、シリカゲル、フロリジル(登録商標)、アルミナ、スチレン−ジビニルベンゼン、ガラスビーズ、及びガラス繊維フィルターからなる群から選ばれる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記工程(b)の第1のヒドラゾン生成物が、カルボニル−2,4−ジニトロフェニルヒドラゾンである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記カルボニル反応性吸着剤が、さらにリン酸、塩酸、硫酸、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記溶媒が極性溶媒である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記溶媒が、アセトニトリルとDMSOとの溶液を含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記溶媒が、約15%から約50%のDMSOを含むアセトニトリル溶液を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
溶媒による溶離により、過剰のカルボニル反応性化合物をオゾン反応性吸着剤に洗い落とし、該カルボニル反応性化合物を、工程(a)のいずれのアルデヒド生成物と反応させ、第2のヒドラゾン生成物を形成する、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項16】
前記カルボニル反応性化合物が2,4−ジニトロフェニルヒドラジンであり、前記アルデヒド生成物がピリジン−4−アルデヒドであり、かつ、前記第2のヒドラゾン生成物がピリジン−4−アルデヒド2,4−ジニトロフェニルヒドラゾンである、請求項8,9又は15に記載の方法。
【請求項17】
工程(c)からの溶離液の分析が、ヒドラゾン生成物の分離と、工程(b)及び工程(c)で形成したヒドラゾン生成物の濃度の測定とを含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ヒドラゾン生成物を分離し、HPLC及び/又はGCにより、濃度を測定する、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ヒドラゾン生成物が、カルボニル−2,4−ジニトロフェニルヒドラゾン及びピリジン−4−アルデヒド−2,4−ジニトロフェニルヒドラゾンである、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
大気サンプル中のオゾン及びカルボニル基含有化合物の存在が装置の中で検知される、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
大気サンプルが、前記オゾン反応性吸着剤から前記カルボニル反応性吸着剤へ前記装置を通って吸い込まれる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
大気サンプルを、約1ml/分で約24時間から約2000ml/分で約1時間までの流量で、能動的に前記装置を通して吸い込む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
大気サンプルを、約50ml/分で約24時間から約1000ml/分で約1時間までの流量で、能動的に前記装置を通して吸い込む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
大気サンプルが、前記装置を通して、前記オゾン反応性吸着剤から前記カルボニル反応性吸着剤へ移動する、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記オゾン反応性吸着剤及び前記カルボニル反応性吸着剤が、筺体内に配置されている、請求項20又は24に記載の方法。
【請求項26】
前記オゾン反応性吸着剤が前記装置の第1の筺体内に配置され、前記カルボニル反応性吸着剤が前記装置の第2の筺体内に配置されている、請求項20又は24に記載の方法。
【請求項27】
大気サンプル中のオゾン及びカルボニル基含有化合物の存在を検知する方法であって、
(a)大気サンプルを装置に吸い込む工程と、
(b)該大気サンプルを1,2−ビス(4−ピリジル)エチレンで被覆したシリカ粒子を含む第1の床に接触させ、大気サンプル中に存在するオゾンが該1,2−ビス(4−ピリジル)エチレンと反応しピリジン−4−アルデヒドを形成することにより捕捉される工程と、
(c)該大気サンプルを、2,4−ジニトロフェニルヒドラジンで被覆したシリカ粒子を含む第2の床に接触させ、該大気サンプル中に存在するカルボニル基含有化合物が該2,4-ジニトロフェニルヒドラジンと反応しカルボニル−2,4−ジニトロフェニルヒドラゾンを形成することにより捕捉される工程と、
(d)溶媒により、第2の床から第1の床へ溶離させ、過剰の2,4−ジニトロフェニルヒドラジンが、ピリジン−4−アルデヒドと反応し、ピリジン−4−アルデヒド−2,4−ジニトロフェニルヒドラゾンを形成する工程と、
(e)工程(c)及び工程(d)で形成した該カルボニル−2,4−ジニトロフェニルヒドラゾンと該ピリジン−4−アルデヒド−2,4−ジニトロフェニルヒドラゾンの分析を行う工程と、
を含む方法。
【請求項28】
大気サンプル中のオゾン及びカルボニル基含有化合物の存在を検知するための装置であり、
筺体と、
該筐体を通して大気サンプルを吸い込み、該大気サンプルを第1の開口部から該筐体に入れ、第2の開口部を通して該筺体から出す手段と、
該筐体内に配置されたオゾン反応性吸着剤と、
該筐体内に配置されたカルボニル反応性吸着剤とを含み、
該筐体を通して吸い込まれる該大気サンプルの少なくとも一部が該カルボニル反応性吸着剤よりも前に該オゾン反応性吸着剤と接触するように該オゾン反応性吸着剤及び該カルボニル反応性吸着剤が筺体内に配置されている装置。
【請求項29】
大気サンプルを筐体を通じ吸い込む手段が、前記第2の開口部に取り付けられている、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
さらに、溶媒を前記第2の開口部を通して前記筐体に導入する手段を含む、請求項28又は29に記載の装置。
【請求項31】
さらに、溶離液を捕集する手段を含む、請求項28,29又は30に記載の装置。
【請求項32】
さらに、溶離液を分析する手段を含む、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
前記オゾン反応性吸着性が、オゾン反応性化合物で被覆された不活性担体を含む、請求項28〜32のいずれか一項に記載の装置。
【請求項34】
前記オゾン反応性化合物が、オレフィン含有化合物である、請求項33に記載の装置。
【請求項35】
前記オゾン反応性化合物が、1,2−ジ置換オレフィンであって、該1,2−ジ置換オレフィンが電子供与性基で置換されている、請求項33又は34に記載の装置。
【請求項36】
前記オゾン反応性化合物が、1,2−ビス(4−ピリジル)エチレン、スチルベン、4,4’−ジメトキシスチルベン、1,2−ビス(2−ピリジル)エチレン、4,4’−ジニトロスチルベン、及び4,4−ジニトロスチルベン−2,2−ジスルホン酸からなる群から選ばれる、請求項33、34、又は35に記載の装置。
【請求項37】
前記不活性担体が、シリカゲル、フロリジル(登録商標)、アルミナ、スチレン−ジビニルベンゼン、ガラスビーズ、及びガラス繊維フィルターからなる群から選ばれる、請求項33〜36のいずれか一項に記載の装置。
【請求項38】
前記カルボニル反応性吸着剤が、2,4−ジニトロフェニルヒドラジン、3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾン、O−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロベンジル)ヒドロキシルアミン、O−ベンジルヒドロキシルアミン、2−ジフェニルアセチル−1,3−インダンジオン−1−ヒドラゾン、5−ジメチルアミノナフタレン−1−スルホヒドラジド、N−メチル−4−ヒドラジノ−7−ニトロベンゾフラザン、ペンタフルオロフェニルヒドラジン、及びO−(4−シアノ−2−エトキシベンジル)ヒドロキシルアミンからなる群から選ばれるカルボニル反応性化合物により被覆された不活性担体である、請求項28〜37のいずれか一項に記載の装置。
【請求項39】
前記不活性担体が、シリカゲル、フロリジル(登録商標)、アルミナ、スチレン−ジビニルベンゼン、ガラスビーズ、及びガラス繊維フィルターからなる群から選ばれる、請求項38に記載の装置。
【請求項40】
前記カルボニル反応性吸着剤が、さらにリン酸、塩酸、硫酸、又はそれらの組み合わせを含む、請求項28〜39のいずれか一項に記載の装置。
【請求項41】
前記オゾン反応性吸着剤と前記カルボニル反応性吸着剤が、それぞれ、約1:3の比率で存在する、請求項28〜40のいずれか一項に記載の装置。
【請求項42】
大気サンプル中のオゾン及びカルボニル基含有化合物の存在を検知するための装置であって、該装置が、第1の作用様式に影響を及ぼす手段及び第2の作用様式に影響を及ぼす手段を含み、該第1の作用様式と該第2の作用様式が協働して該大気サンプル中のオゾン及びカルボニル基含有化合物の存在を検知し、該第1の作用様式が、
(a)大気サンプルをオゾン反応性吸着剤と接触させ、該大気サンプルにオゾンが存在する場合には、該オゾンは該オゾン反応性吸着剤と反応しアルデヒド生成物を形成する工程と、
(b)工程(a)からの該大気サンプルをさらにカルボニル反応性吸着剤と接触させ、該大気サンプル中にカルボニル基含有化合物が存在する場合には、該カルボニル基含有化合物は該カルボニル反応性吸着剤と反応し第1のヒドラゾン生成物を形成する工程とを含み、
該第2の作用様式が
(c)溶媒により、該カルボニル反応性吸着剤から該オゾン反応性吸着剤へ溶離させ、工程(a)のいかなるアルデヒド生成物も第2のヒドラゾン生成物を形成する工程と、
(d)工程(b)及び工程(c)において形成したヒドラゾン生成物の存在に関して、工程(c)からの溶離液を分析する工程とを含む、装置。
【請求項43】
(a)大気サンプル中のオゾン及びカルボニル基含有化合物の存在を検知するためのカートリッジと、
(b)該オゾン及び該カルボニル基含有化合物の誘導体をカートリッジから溶離するための溶媒とを含むキット。
【請求項44】
大気サンプル中のオゾン及びカルボニル基含有化合物の存在を検知するための2つ以上のカートリッジを含む、請求項43に記載のキット。
【請求項45】
前記カートリッジがオゾン反応性吸着剤とカルボニル反応性吸着剤を含む、請求項43に記載のキット。
【請求項46】
2つ以上のカートリッジを含み、少なくとも一つのカートリッジがオゾン反応性吸着剤を含み、少なくとも一つの別のカートリッジがカルボニル反応性吸着剤を含む、請求項43に記載のキット。
【請求項47】
大気サンプル中のオゾン及びカルボニル基含有化合物の存在を検知するための装置であって、
第1の筐体及び第2の筐体と、
該第1及び該第2の筐体を通して大気サンプルを吸い込む手段と、
該第1の筐体内に配置されたオゾン反応性吸着剤と、
該第2の筐体内に配置されたカルボニル反応性吸着剤を含み、
該第1及び該第2の筐体を通して吸い込まれる該大気サンプルの少なくとも一部が、該カルボニル反応性吸着剤よりも前に該オゾン反応性吸着剤と接触するように、該大気サンプルが該第1の筐体、次いで該第2の筐体を通り吸い込まれる装置。
【請求項48】
大気サンプル中のオゾンとカルボニル基含有化合物の存在を検知する装置であって、
オゾン反応性吸着剤、
カルボニル反応性吸着剤、
大気サンプルを該オゾン反応性吸着剤と該カルボニル反応性吸着剤とを通して吸い込む手段を含む装置。
【請求項49】
さらに、カートリッジを含み、前記オゾン反応性吸着剤及び前記カルボニル反応性吸着剤が該カートリッジ内に配置されている、請求項48に記載の装置。
【請求項50】
さらに、第1カートリッジ及び第2カートリッジを含み、前記オゾン反応性吸着剤が該第1カートリッジ内に配置され、かつ、前記カルボニル反応性吸着剤が該第2カートリッジ内に配置されている、請求項48に記載の装置。
【請求項51】
大気サンプル中のオゾンとカルボニル基含有化合物の存在を検知するための装置の動作中に前記第1カートリッジが前記第2カートリッジに連結されているように構成されている、請求項50に記載の装置。
【請求項52】
大気サンプルの少なくとも一部が、前記カルボニル反応性吸着剤よりも前に前記オゾン反応性吸着剤と接触するように、前記オゾン反応性吸着剤及び前記カルボニル反応性吸着剤を配置している、請求項48〜51のいずれか一項に記載の装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−508883(P2011−508883A)
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540843(P2010−540843)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/088018
【国際公開番号】WO2009/086304
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(598169572)シグマ−アルドリッチ・カンパニー (31)
【氏名又は名称原語表記】Sigma−Aldrich Co.
【Fターム(参考)】