説明

オゾン除菌装置

【課題】所定の溶存度であるオゾンのマイクロバブルを、水棲動物が飼育されている飼育水槽に直接導入することで、除菌施設の小型化を促し、経済性を向上する。
【解決手段】水棲動物Sの飼育水槽2の飼育水Wにオゾンを含有した気泡Bを導入する。オゾンを発生させるオゾン発生手段3と、オゾン発生手段3で発生させたオゾンを含有した気泡Bを生成するバブル生成手段4と、バブル生成手段4で生成した気泡Bを水棲動物Sが飼育されている飼育水槽2の飼育水Wへ直接導入する直入手段5とを備え、気泡Bは、生成時における中心粒径L1が1μm以上500μm以下であるマイクロバブルMを含み、飼育水W中のオゾンの溶存度Z1が0.05mg/l以上0.50mg/l以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚介類、鯨、ウミガメ等の水棲動物の飼育に使用する飼育水の除菌を行うオゾン除菌装置に関するものである。
尚、本発明において、飼育水とは、養殖事業や飲食店舗で用いられる生簀(飼育水槽)内の水などに限らず、水棲動物の搬送中に用いる水槽容器や、熱帯魚等の観賞魚、水族館などの飼育水槽内の水も含む。
【背景技術】
【0002】
従来、魚類水槽水の浄化方法が知られている。
この浄化方法は、魚類水槽内の海水または海水とほぼ同程度に臭素を添加した真水を水槽から導出し、導出した水槽水にオゾンガスを注入して、次いで、その水槽水を気液分離して未反応オゾンを除去した後、二酸化マンガン触媒濾材に通過させて水槽へ還流させる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−267829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の魚類水槽水の浄化方法は、溶存オゾンが魚類に有害であるとして、水槽内の海水を汲み上げる循環ポンプや、汲み上げ途中でオゾンガスを注入するエジェクタ、汲み上げた海水から未反応オゾンを除去するための濾過装置などを別途設けており、浄化施設の大型化が避けられない。
【0005】
本発明に係るオゾン除菌装置は、このような点に鑑みて、所定の溶存度であるオゾンマイクロバブルを水棲動物が飼育されている飼育水槽に直接導入して飼育水を除菌することで、水棲動物の飼育に支障がないオゾン除菌が可能となると共に、除菌施設の小型化を実現できるオゾン除菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成するために、本発明は、以下の技術的手段を採用した。
本発明に係るオゾン除菌装置は、第1に、水棲動物Sの飼育水槽2の飼育水Wに、オゾンを含有した気泡Bを導入するオゾン除菌装置であって、前記オゾンを発生させるオゾン発生手段3と、このオゾン発生手段3で発生させたオゾンを含有した気泡Bを生成するバブル生成手段4と、このバブル生成手段4で生成した気泡Bを水棲動物Sが飼育されている飼育水槽2の飼育水Wへ直接導入する直入手段5とを備えていて、前記気泡Bは、生成時における中心粒径L1が1μm以上500μm以下であるマイクロバブルMを含み、前記飼育水W中のオゾンの溶存度Z1が0.05mg/l以上0.50mg/l以下であることを特徴とする。
尚、飼育水W中のオゾンの溶存度Z1とは、1リットル(l)の飼育水W中に含まれるオゾンの質量(mg)である。
【0007】
第2に、前記オゾン発生手段3で発生させたオゾンの濃度Z2が0.05mg/l以上0.35mg/l以下であることを特徴とする。
尚、オゾンの濃度Z2とは、オゾンを含有する気体1リットル(l)中に含まれるオゾンの質量(mg)である。
【0008】
第3に、前記気泡Bは、生成時における中心粒径L2が1nm以上500nm以下であるナノバブルNも含んでいることを特徴とする。
【0009】
第4に、前記ナノバブルNの少なくとも一部は、生成時における中心粒径L1が1μm以上50μm以下であるマイクロバブルMが、中心粒径L2が1nm以上200nm以下となるまで収縮して生成されていることを特徴とする。
【0010】
これらの特徴により、オゾンを含有する気泡B(マイクロバブルMを含む)を飼育水W中に導入して、溶存度Z1を0.05mg/l以上0.50mg/l以下とすることで、飼育水槽2中の水棲動物Sに及ぼす害を可及的に低減しながら除菌することができ、オゾンのマイクロバブルMを飼育水槽2に直接導入することが可能となり、飼育水Wを濾過する装置などを別途設ける必要がなくなって、除菌施設のコンパクト化及び構造の簡素化が図られ、設備費用を抑えられる。
これに加えて、オゾンをマイクロバブルMとして飼育水Wに供給するため、ミリオーダーの気泡Bよりも飼育水Wの中にオゾンを長く滞在させることができると共に、飼育水Wが対流することで、オゾンを一様に存在させることも可能となる。
【0011】
また、オゾンの濃度Z2を0.05mg/l以上0.35mg/l以下とすることで、飼育水W中におけるオゾンの溶存度Z1を0.05mg/l以上0.50mg/l以下にすることが可能となる。
【0012】
これに加えて、気泡Bには、中心粒径L2が1nm以上500nm以下であるナノバブルNや、中心粒径L1が1μm以上50μm以下のマイクロバブルMを1nm以上200nm以下となるまで収縮させて生成したナノバブルNが含まれていてもよく、このナノバブルNは、マイクロバブルMより長い期間、飼育水W中で存在することができるため、オゾンによる除菌作用がさらに長期間持続し、オゾン除菌のランニングコストが低減される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るオゾン除菌装置によると、所定の溶存度であるオゾンのマイクロバブルを、水棲動物が飼育されている飼育水槽に直接導入することで、水棲動物の飼育に支障がなく、オゾン除菌及び除菌施設の小型化が両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係るオゾン除菌装置を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態のオゾン除菌装置を示す概要図である。
【図3】第2実施形態のオゾン除菌装置を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係るオゾン除菌装置1の斜視図である。
このオゾン除菌装置1は、養殖場や水族館等で生き物を飼育するための施設に取り付けて使用されるものである。このオゾン除菌装置1は、水棲動物Sを飼育する(生簀や観賞魚用などの)飼育水槽2に取り付けられ、飼育水Wは、海水、汽水または淡水である。
【0016】
尚、本発明における「除菌」とは、オゾン除菌装置1による操作で飼育水W中の雑菌や寄生虫を殺すことだけでなく、オゾンの気泡(オゾンマイクロナノバブル)Bに触れることによって、水棲動物Sの物質代謝が進み、生体内から雑菌等が剥がれやすくなることなども含む。
【0017】
図1に示す例では、この飼育水槽2には、水棲動物Sとして魚(海水魚や淡水魚)が飼育されている。尚、本発明に係る水棲動物Sとは、魚介類、鯨及びウミガメ等の四肢動物だけに限らず、昆布、ワカメなどの海藻類も含む。
図2に示すように、オゾン殺菌装置1は、オゾン(オゾンガスG)を発生するオゾン発生手段3と、オゾン発生手段3で発生したオゾンガスGを含有する気泡(オゾンマイクロナノバブル)Bを生成するバブル生成手段4と、生成したオゾンマイクロナノバブルBを飼育水槽2の飼育水Wへ直接導入する直入手段(バブル直入手段)5とを有している。
【0018】
これに加えて、オゾン殺菌装置1は、飼育水槽2の飼育水Wを汲み上げて前記バブル生成手段4に送るポンプ手段11を備えている。
上述の手段を有したオゾン殺菌装置1は、マイクロバブルMを含む気泡Bの中にオゾンを含有させて飼育水W中に導入することで、オゾンの溶存度Z1を0.05mg/l以上0.50mg/l以下とすることが可能となる。
また、マイクロバブルMの形で直入することによって、それほど高濃度ではないオゾンであっても高い溶解効率で液中に溶け込ませることができ、十分な除菌効果を発揮することが可能となる。
【0019】
オゾンの溶存度Z1を0.05mg/l以上0.50mg/l以下にするのは、0.05mg/l未満の場合、たとえ、マイクロバブルMによってオゾンを溶解しやすくなっていても、飼育水W中の殺菌や残渣の分解をするためにオゾンを十分に溶存させることが出来ないためである。
溶存度Z1を0.50mg/lより高くした場合には、飼育水W中の殺菌や残渣の分解だけにとどまらず、水棲動物Sにも影響を与えるからである。
【0020】
尚、オゾンの溶存度Z1は、好ましくは、0.05mg/l以上0.35mg/l以下、さらに好ましくは、0.10mg/l以上0.25mg/l以下であればよい。
このように、飼育水W中を適切な溶存度Z1とすることで、オゾンの気泡Bを水棲動物Sが存在する飼育水槽2に「直接導入」することが可能となり、飼育水Wを濾過する装置などを別途設ける必要がなくなる。
【0021】
オゾンの溶存度Z1は、マイクロバブルM内に含有させるオゾンの濃度Z2を調整することでコントロールでき、このオゾンの濃度Z2は、後に述べるように、0.05mg/l以上0.35mg/l以下とするとよい。
尚、オゾンの濃度Z2は、好ましくは、0.05mg/l以上0.25mg/l以下、さらに好ましくは、0.10mg/l以上0.25mg/l以下であればよい。
【0022】
ここで、適切な溶存度Z1に保ったまま、飼育水W中でオゾンをさらに長期間持続させるためには、気泡Bの中心粒径Lが重要となる。
上述の気泡B、つまり、オゾンマイクロナノバブルBは、中心粒径L1が1μm以上500μm以下のマイクロバブルMと、中心粒径L2が1nm以上500nm以下のナノバブルNとを含む。
オゾンマイクロナノバブルBは、中心粒径L3が500nmより大きく1μm未満であるマイクロとナノの中間バブルMNを含むものとしてもよい。
【0023】
これらのマイクロバブルMやナノバブルN、中間バブルMNは、通常ほぼ球形であり、中心粒径Lは気泡Bの直径であるが、後に述べる収縮等によって時々刻々さまざまに変形する際には、中心粒径Lとは、マイクロバブルMやナノバブルN等の外接直方体の長さa、幅b、厚さcの3軸平均径(式(1)参照)、3軸調和平均径(式(2)参照)、3軸幾何平均径(式(3)、式(4)参照)となる。
【0024】
【数1】

【数2】

【数3】

【数4】

【0025】
マイクロバブルMは、飼育水Wの中で表面が負電荷に帯電しており、中心粒径Lがミリオーダーの気泡Bよりも同体積当たりの表面積が大きくなり、オゾン等の気体を高い溶解効率で液中に溶け込ませることができる等の特徴を有している。
この他にも、マイクロバブルMの特徴としては、気泡B内部の圧力が高いこと、汚濁物(飼育水槽2内の残渣、雑菌等)の表面に付着し分離させること、長く液中に残存すること等がある。
【0026】
特に、マイクロバブルMが飼育水W中で長時間残存することについて詳しく述べれば、飼育水Wの中において気泡Bは、その大きさによって上昇速度が大きく変わり、例えば、中心粒径Lが3mmのミリバブルは上昇速度が約0.3m/秒であるのに対し、中心粒径Lが100μmのマイクロバブルMは、上昇速度が約0.005m/秒である。
気泡Bの中心粒径Lをミリオーダーからマイクロオーダーにすると、オゾンが飼育水W中に滞在する時間が飛躍的に長くなる。また、マイクロバブルMは互いに合体し難いため、高密度で飼育水W中に存在しやすい。このことからも、オゾンの溶存度Z1を高くすることが容易となっている。
【0027】
中心粒径Lの大きさによって水の単位体積あたりの気泡Bの数が変わるため、溶存度Z1のコントロールも可能である。例えば、マイクロバブルMの中心粒径L1が20μmの場合は水1ml中におよそ60万個の気泡Bが存在可能となる。
【0028】
上述したように、マイクロバブルMの中心粒径L1は、1μm以上500μm以下であるが、好ましくは、1μm以上100μm以下、さらに好ましくは、1μm以上50μm以下である。
特に、中心粒径L1が1μm以上50μm以下のマイクロバブルMは、飼育水W中に導入されると、マイクロバブルMの界面において表面張力が作用するため、そのほとんどが導入後に収縮を開始する。
【0029】
詳しく述べれば、表面張力とは、分子同士が引き合って凝縮しようとする力であり、液滴であれば、球形になろうとする。
これは、飼育水W中のマイクロバブルMであっても、飼育水WとオゾンガスGとの界面に働く表面張力によって球形になろうとすることは同様である。
【0030】
また、界面で働く表面張力は、球形の中心に向かって引き合うように作用するため、マイクロバブルMの内部のオゾンガスGの気圧(内圧)を高めることとなる。
この内圧を高める作用は、マイクロバブルMの中心粒径L1が小さいほど強くなり、マイクロバブルMの内圧は、中心粒径L1に反比例して上昇する。
【0031】
例えば、中心粒径L1が10μmのマイクロバブルMでは、内圧は常圧(1気圧)より0.3気圧上昇し、中心粒径L1が1μmのマイクロバブルMは、内圧は常圧より3.0気圧も上がる。
尚、オゾンガスGは、その圧力が上がれば上がるほど、飼育水W中に溶け込む溶解能力が高くなる。
【0032】
また、特徴として上述したように、マイクロバブルMは、飼育水W中で表面が負電荷に帯電しているが、この帯電によって、マイクロバブルMの表面には、飼育水W中に存在する陽イオンが多く集まる(電荷の濃縮)。
この電荷の濃縮によって、マイクロバブルMの表面でフリーラジカルが発生する。
【0033】
フリーラジカルとは、原子の軌道上に1つの電子(不対電子)を有し、この不対電子が他の分子と電子をやり取りして安定になろうとする水酸基(水酸基ラジカル)などであって、このような水酸基ラジカルが周囲の分子と強く反応し、結果として、汚濁物である飼育水W中の残渣や雑菌などを分解することが可能となる。
さらに、マイクロバブルMの界面に極めて高濃度の電荷が濃縮しているため、気泡球の反対側同士の電荷間に働く静電気的な反発力が働いて、所定の中心粒径Lより気泡Bが縮小することを妨げる。
【0034】
この結果、マイクロバブルMは、生成時における中心粒径L1が1μm以上50μm以下であれば、収縮を開始するものの、1nm以上200nm以下となるまで収縮すると、静電気的な反発力によって収縮が止まり、ナノバブルNが生成される。
このナノバブルNの生成過程において、中心粒径L3が500nmより大きく1μm未満で安定した場合には、中間バブルMNが生成されることとなる。
【0035】
マイクロバブルMの界面上にイオンが集中すると、フリーラジカルの生成以外にも、マイクロバブルMの内部のオゾンガスGを飼育水Wに溶けにくくなり、この溶出し抑制によっても収縮が妨げられ、気泡Bは一時的に安定化する。
ただし、ナノバブルNや中間バブルMNとして安定化した気泡Bは、いつまでも安定ではなく、通常は、数時間ほどでイオンのバランスが崩れて消滅する。
【0036】
そこで、飼育水W中に所定濃度のイオンを予め溶かす(飼育水Wが海水であれば、ナトリウムやカリウム、鉄などの電解質溶液であるため、イオンは必要な濃度で溶けている)ことで、マイクロバブルM界面のイオンの濃度を十分に高くでき、飼育水W中に導入したマイクロバブルMに刺激を与えて縮小するスピードを上げて、イオン類を気泡Bの周囲に極度に濃縮させることで、安定化したナノバブルNや中間バブルMNが生成できる。
また、飼育水W中のマイクロバブルMに衝撃を加えるため、バブル発生手段4内における気泡Bに超音波振動を印加して収縮を開始させる超音波発生手段を備えていてもよい。
【0037】
ナノバブルNや中間バブルMNの生成方法は、超音波振動を印加させる場合だけに限らず、飼育水槽2内の飼育水Wと絶縁した状態で、気泡Bの収縮を開始させる水中放電を行って、強制的に収縮させてもよく、また、気液剪断法などによって生成したマイクロバブルMをさらに強力な旋回剪弾力をかけたり、界面活性剤を添加した液中にオゾンガスGや空気を噴射することで、ナノバブルNを生成してもよい。
【0038】
上述したように、気泡Bは、マイクロバブルMだけでなく、ナノバブルNや中間バブルMNも混在して構成させていることによって、マイクロバブルMによって、オゾンの溶解を助けると同時に、1ヶ月以上、時には数ヶ月間もの長期にわたって存在するナノバブルNなどによって除菌効果が長く持続する。
さらには、ナノバブルNなどによって、水棲動物Sが活性化されることによっても、雑菌や寄生虫が剥離して、除菌されることとなる。
【0039】
以上、マイクロバブルM、ナノバブルNなどの気泡Bについて述べてきたが、オゾン除菌装置1が有するオゾン発生手段3等の手段3〜5、11について述べる。
図2に示す如く、オゾン発生手段3は、紫外線ランプ法、電解法、放電法などを用いてオゾンガスGを発生させるシステムであって、紫外線ランプ法であれば、水銀灯などの短い波長の紫外線の照射システムで構成され、電解法であれば、水中に電解質膜を挟んでおいた両極間に電圧をかけるシステムとなる。
【0040】
放電法によるシステムを詳解すると、オゾン発生手段3は、酸素中で無声放電を行う放電システム3となる。この放電システム3は、酸素中にて一定の間隔をおいた平板状で一対の電極を有し、これらの電極を高誘電率の絶縁体(雲母等)で覆っている。電極間に交流電圧をかけて無声放電を起こし、電極間の酸素分子が解離し他の酸素分子と再結合させて、オゾンガスGを発生させる。
尚、放電システム3は、水銀灯などから照射される紫外線の波長や強度、電極間にかける電圧や原料となる酸素濃度を変更することによって、発生するオゾンガスGの濃度Z2を調節可能である。
【0041】
図2に示すように、バブル生成手段4では、マイクロバブルMを生成する方法として、気液剪断法が用いられる。尚、気液剪断法でなく、細孔(フィルタ)法、加圧溶解法、衝撃波法、超音波法などによって、マイクロバブルMを生成してもよい。
バブル生成手段4は、毎秒400〜600回転する渦流に、オゾンガスGを巻き込み、内面螺旋状のパイプや、ファン等によって切断、粉砕する気液剪断法などによってオゾンガスGをマイクロナノバブル化する。
【0042】
気液剪断法による際のバブル生成手段4は、気泡生成器12であって、この気泡生成器12は、飼育水槽2から飼育水Wを汲み上げる上述のポンプ手段11にホース11aを介して接続されており、液体とオゾンガスGを、螺旋状の内壁面を有した管状体の内部で混合して旋回しながら撹拌されることによって、液体中の気泡が微細化してマイクロバブルMを生成する。尚、オゾンガスGと混合する液体は、図示しない供給配管から流入する海水や淡水などであってもよい。
つまり、気泡生成器12は、気体吸入路12aを介して上述のオゾン発生手段3から供給されるオゾンガスGを、気泡生成器12の液体供給路12bを通って送られた海水等と混合、撹拌させて、オゾンを含有したマイクロバブルMを生成する。
【0043】
図2にて示す如く、バブル直入手段5は、オゾンを含有したマイクロバブルMを、水棲動物Sが実際に飼育されている飼育水槽2内の飼育水Wへ直に噴射して、マイクロバブルMを飼育水W中に直接的に導入させる散気ケース13である。
この散気ケース13は、気泡生成器12の先端部に接続された散気管13aと、この散気管13aを収容するケースボックス13bと、このケースボックス13bの上面に設けられたフィルタ13cとを備えている。
【0044】
散気ケース13は、散気管13aへ気泡生成器12からオゾンのマイクロバブルMが送り込まれ、送り込まれたオゾンのマイクロバブルMが、散気管13aの各孔13dからフィルタ13c越しに、飼育水Wへ放出(直接導入)される。
尚、バブル直入手段5としては、必ずしも散気ケース13を有さずともよく、気泡生成器12の先端から、直接、マイクロバブルMを飼育水W中に導入してもよい。このとき、気泡生成器12は、バブル生成手段4とバブル直入手段5とを兼用することとなる。
【0045】
また、生成時でのマイクロバブルMは、中心粒径L1が1μm以上500μm以下の気泡Bであって、渦流の回転速度や、気泡生成器12の管状体の内径を変えることによって、生成するマイクロバブルMの中心粒径L1は調節可能である。
このマイクロバブルMの中心粒径L1と、オゾン発生手段3で生成されるのでオゾン(オゾンガスG)の濃度Z2とを併せて調整することによって、飼育水W中のオゾンの溶解度Z1が、適切な値にコントロールできる。
【0046】
表1は、マイクロバブルMの中心粒径L1が、1、50、100、500、1000μmである際に、オゾン発生手段3によるオゾンの濃度Z2を、0.001、0.050、0.100、0.200、0.350、0.500mg/lと変化させた場合において、飼育水W中のオゾンの溶解度Z1を示したものである。
【0047】
【表1】

【0048】
表1にて示したように、オゾン発生手段3によるオゾンの濃度Z2が、0.001mg/lであった場合には、マイクロバブルMの中心粒径L1が何れであっても、飼育水W中のオゾンの溶存度Z1は0.05mg/lに満たないため、飼育水Wを十分に除菌できない。
逆に、オゾンの濃度Z2が、0.500mg/lであった場合には、マイクロバブルMの中心粒径L1を問わず、飼育水W中のオゾンの溶存度Z1は0.50mg/lを超えてしまい、飼育水W中の水棲動物Sに影響が出てしまう。
【0049】
従って、オゾン発生手段3で発生させるオゾンの濃度Z2を、0.05mg/l以上0.35mg/l以下とすることによって、オゾンを、マイクロオーダーの気泡BであるマイクロバブルMに含有させて飼育水W中に直接導入すれば、水棲動物Sに支障がない範囲で、飼育水Wの除菌を効果的に行え、しかも、飼育水Wの濾過装置を別途設ける必要もなく、除菌施設のコンパクト化と簡素化が図られ、設備コストを低減できる。
【0050】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定して解釈されるものではない。
〔実施例1〕
オゾンのマイクロバブルM(動的光散乱光度計によって、中心粒径L1が1μm以上500μm以下であると測定された微小な気泡B)を、飼育水W中に直接導入して除菌試験を実施した。
【0051】
この実施例1では、飼育水W中におけるオゾンの溶存度Z1が、0.01、0.05、0.15、0.25、0.35、0.45、0.55mg/lである際に、それぞれのオゾンを含有したマイクロバブルMを飼育水Wへ直入して、大腸菌群や、魚類の一般細菌(病原ウイルス・IHNV、ビルナウイルス、ラブドウイルス、ヘルペスウイルス)を殺滅する。
生きた魚としてマダイを飼育している飼育水槽2で、その飼育水WにオゾンのマイクロバブルMを直接導入し、飼育水Wごと魚介類を洗浄除菌しても斃死するようなことがないか調べた。
【0052】
図1に示されたオゾン除菌装置1は、飼育水槽2として200リットル(l)の養魚水槽を使用し、170リットルの人工海水で平均体長5cmのマダイ稚魚60尾を飼育している。飼育水槽2から飼育水Wを吸い込んだポンプ手段11からバブル生成手段4及びバブル直入手段5を経て、再び飼育水槽2に戻される際の循環流量は3リットル/分とした。
この条件で運転すると、飼育水Wのオゾンの溶存度Z1が自然と上昇するが、オゾン発生手段3によりオゾンの濃度Z2を、バブル生成手段4によりマイクロバブルMの中心粒径L1を調整することによって、溶存度Z1を各数値で一定に保った。
【0053】
表2は、オゾンの溶存度Z1を0.01、0.05、0.15、0.25、0.35、0.45、0.55mg/lに維持した場合におけるマイクロバブルM直入前と、直入後1時間後の大腸菌群数(MPN/100ml)、一般細菌数(CFU/ml)、マダイの様子(斃死状況)を示す。
尚、大腸菌群数の単位におけるMPNとは、Most Probable Numberの略で最確数を表し、一般細菌数の単位におけるCFUとは、Colony Forming Unit の略で、集落形成単位数を表す。
【0054】
【表2】

【0055】
表2にて示されたように、オゾンの溶存度Z1が0.01mg/lである場合には、飼育水W中の大腸菌群、一般細菌の数に大きな変化はなく、逆に1時間経過した際に増えている。
溶存度Z1が0.55mg/lある場合には、水棲動物Sであるマダイ稚魚が弱ったり、斃死した稚魚や共食いで尾びれ等が食いちぎられているなど傷の有るものもあった。
【0056】
しかし、オゾンの溶存度Z1が0.05mg/l以上0.50mg/l以下であれば、飼育水W中の大腸菌群、一般細菌も減らし十分な除菌効果も得られると同時に、マダイ稚魚についても泳ぎの様子などで異常は見られず、水棲動物Sが弱る等の影響や、飼育状態に差し障りはない。
これに加えて、オゾンは、原料が空気中にも存在する酸素であるため安価に生成でき、飼育水W中で雑菌などの細胞膜を破壊する等の除菌反応をした後には、酸素に戻るため残留性がない。
【0057】
また、オゾンを含有したマイクロバブルMは、直入後、飼育水W中にしばらく残存するため(1分以上10分以下)、オゾンによる除菌頻度を下げることが可能となり、経済性が向上する。
さらに、除菌のために水産用医薬品や塩を使用せず、オゾンの使用量も少ないため、環境に対する負荷が小さく、水棲動物Sを食用する人体に対し安全性も高い。
【0058】
マイクロバブルMのオゾンは、飼育水Wの中で滞在する時間が長いことからオゾンが飼育水W中で分解され酸素へと還元されやすく、その結果、オゾンが水面から散逸し難いため、作業者の環境内のオゾン濃度も高くならず、この点からも人体に対する安全性が高い。
そればかりか、溶存度Z1が0.05mg/l以上0.50mg/l以下である場合には、水棲動物Sの成長速度が上がるなど、生育促進にもつながっている。
【0059】
詳しくは、マイクロバブルMによるオゾンの供給によって、水棲生物Sの呼吸系における酸素消費量が増大し、同時に、血流促進が起こることで新陳代謝が活発となり、餌の摂取量も増えることで、除菌だけでなく、成長の促進効果も見られる。
従って、水棲動物Sは、除菌された環境の中で飼育されることで、生育促進が図られるだけではなく、長期間存在するナノバブルNによって、呼吸器系、消化器系、循環器系等が活性化され、新陳代謝が高まり、結果的に、水棲生物Sが増量されることとなる。
【0060】
〔第2実施形態〕
図3は、第2実施形態に係るオゾン除菌装置1を示している。
第2実施形態の特徴は、ナノバブルN又は中間バブルMNの生成効率を上げるアスピレータ14が、オゾン除菌装置1に設けられている点である。
【0061】
このアスピレータ14は、ポンプ手段11のホース11aや気泡生成器12の液体供給路12bの内径よりも細い細管部14aと、この細管部14aよりも下流側で気体吸入路12aに連通する空隙部14bとを有している。
細管部14aによって、流体(飼育水W)の流れの断面積を狭めて流速を増加させ、空隙部14b内の圧力が低くなり、この圧力低下によって、飼育水Wが、細管部14a下端から空隙部14b内へ霧状に吹き出される。
【0062】
空隙部14b内で霧吹き状の飼育水Wは、同じく圧力低下により空隙部14b内に流入したオゾンガスGを引き込み、飼育水W内に、マイクロバブル化したオゾンガスGが発生する。
尚、気体吸入路12aと空隙部14bとの連通口を閉鎖可能な逆止弁を設けてもよい。
この逆止弁は、万一、液体供給路12b内で飼育水Wの流速が下がり、飼育水WがオゾンガスGを引き込むことなく、空隙部14b内へ漏れ出した場合でも、その漏れ出した圧力によって、気体吸入路12aと空隙部14bとの連通口を塞ぎ、気体吸入路12aへの飼育水Wの流入を防ぎ、オゾン発生手段3の故障を防止する。
【0063】
逆止弁は、気体吸入路12aと空隙部14bとの連通口を閉鎖可能であれば、何れの形状でもよいが、例えば、連通口より大きい直径の球状体等が好ましい。
その他のオゾン除菌装置1の構成、作用効果及び仕様態様は、第1実施形態と同様である。
【0064】
〔実施例2〕
実施例1の除菌試験において、オゾンの溶存度Z1が0.25mg/lに維持されるように、アスピレータ14によって生成したマイクロバブルMを1時間直入し、オゾンのナノバブルNや中間バブルMNの生成効率を高めること以外は、実施例1と同様の除菌試験を行った。
表3は、アスピレータ14を用いたマイクロバブルMの直入(バブル直入手段5)の停止から1時間後、12時間後、24時間後、3日後、1週間後、2週間後、4週間後、6週間後の大腸菌群数(MPN/100ml)、一般細菌数(CFU/ml)を、実施例2−1として示す。
【0065】
尚、表3中の実施例2−2とは、比較のために、アスピレータ14を取付けない、つまりナノバブルN等の生成効率を高めない場合におけるマイクロバブルMの直入を停止させてから1時間後、12時間後、24時間後、3日後、1週間後、2週間後、4週間後、6週間後の大腸菌群数、一般細菌数を示す。
【0066】
【表3】

【0067】
表3中の実施例2−2で示されたように、アスピレータ14を用いなかった(つまり、ナノバブルNや中間バブルMNの生成効率を高めなかった)場合であっても、上述したように、マイクロバブルMが自己内圧の上昇によって自然に収縮してナノバブルN等が生成し、このナノバブルN等のうち一部が数時間ほどは飼育水W中に存在するため、マイクロバブルMの直入を停止して1時間後の時点では、大腸菌群、一般細菌の数に大きな増加は見られない。
しかし、マイクロバブルMの直入停止から12時間を過ぎた以降は、時間の経過と共に大腸菌群、一般細菌の数ともに大幅に増加しており、停止後24時間後には、マイクロバブルM直入前の値を越えている。
【0068】
一方、ナノバブルNや中間バブルMNの生成を高効率で行った実施例2−1は、アスピレータ14によるマイクロバブルM直入の停止時で、実施例2−2より大腸菌群、一般細菌の数が既に少なくなっており、ナノバブルN等の生成率向上によって、短時間であっても除菌効果が向上する。
さらには、マイクロバブルM直入の停止から4週間が経っても、大腸菌群、一般細菌の数が大きく増加することはなく、大腸菌群の数がマイクロバブルM直入前の値を初めて越えるのは、マイクロバブルM直入の停止から6週間後であり、ナノバブルN等の高効率化によって、除菌効果が非常に長い間持続している。
【0069】
従って、マイクロバブルMを飼育水Wに直接導入することによって、飼育水槽2中で自然生成されるナノバブルNや中間バブルMNを漏らさず有効利用できるため、除菌効果が1時間ほどは持続し、マイクロバブルMの直入を所定時間おきに行うオゾン除菌装置1の間欠運転が可能となって、オゾン除菌のランニングコストが低減される。
上述の表3に示したように、アスピレータ14を用いない実施例2−2の場合であっても、オゾン除菌装置1を1時間運転すれば、その後1時間は休止させても、大腸菌群、一般細菌の数がマイクロバブルM直入前の値を越えることはない。
【0070】
さらには、実施例2−1のように、アスピレータ14を取付けることで、ナノバブルN、中間バブルMNの生成効率を高めることにより、マイクロバブルMに比べ、飼育水W中の存在期間が飛躍的に長くなり、オゾン除菌装置1の間欠運転の間隔をさらに延ばすことが可能となる。
例えば、約1ヶ月に1度、1時間ほどオゾン除菌装置1を運転させて、アスピレータ14を取付けたマイクロバブルMの直入(ナノバブルN等の生成の高効率化)を行えば、大腸菌群、一般細菌の数を、所定の値以下に抑えることが可能となる。
【0071】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。オゾン殺菌装置1等の各構成又は全体の構造、形状、寸法などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
バブル生成手段4は、上述した気泡生成器12のように、ポンプ手段11からの水圧のみを動力源とするマイクロバブル化させるものに限らず、高圧下でオゾンガスGを海水、淡水等に大量に溶解させた後、減圧することによって再気泡化する加圧減圧法など、動力源を備えた公知のマイクロバブル生成機を用いてもよい。
【0072】
この他、上述したように、ナノバブルN又は中間バブルMNを生成するために、飼育水W中のマイクロバブルMに衝撃を与える放電手段を有していても良い。
この放電手段は、水棲動物Sの飼育水槽2内の飼育水Wと絶縁した領域内に立設された陽極と陰極を有しており、この両極間で2000〜3000Vの電圧をかけて、水中放電を発生させる。
【0073】
このとき、飼育水Wは、上述したように海水であればよいが、淡水又は汽水であっても、鉄、マンガン、カルシウムその他ミネラル類の電解質を加えて飼育水Wの導電度が3mS/cm以上になるように電解質を加えてもよい。
さらに効率的にナノバブルN等を生成させるためには、飼育水Wにおけるオゾンの溶存度Z1が、飽和溶存度の50%以上に達している場合が好ましい。
【0074】
放電手段の水中放電に伴う衝撃波の刺激(物理的刺激)によって、オゾンのマイクロバブルMが急速に縮小され、ナノバブルNや中間バブルMNとなる。
この時にナノバブルN等の界面に存在しているイオンは、縮小速度が急速なため、周囲の水中に逸脱する時間が無く、気泡の縮小に伴って急速に濃縮する。濃縮されたイオンは、ナノバブルN等の内部のオゾンが飼育水W中への自然溶解を阻止するため、安定的に飼育水W中で存在することとなる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、小型化された施設による飼育水の除菌装置だけでなく、水棲動物の成長促進による収穫増産、高効率化、環境や人体に対する影響の低減などを実現した養殖装置にも利用できる。
【符号の説明】
【0076】
1 オゾン除菌装置
2 飼育水槽
3 オゾン発生手段
4 バブル生成手段
5 バブル直入手段(直入手段)
S 水棲動物
W 飼育水
B 気泡(オゾンマイクロナノバブル)
M マイクロバブル
N ナノバブル
L1 マイクロバブルの中心粒径
L2 ナノバブルの中心粒径
Z1 オゾンの溶存度
Z2 オゾンの濃度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水棲動物(S)の飼育水槽(2)の飼育水(W)に、オゾンを含有した気泡(B)を導入するオゾン除菌装置であって、
前記オゾンを発生させるオゾン発生手段(3)と、このオゾン発生手段(3)で発生させたオゾンを含有した気泡(B)を生成するバブル生成手段(4)と、このバブル生成手段(4)で生成した気泡(B)を水棲動物(S)が飼育されている飼育水槽(2)の飼育水(W)へ直接導入する直入手段(5)とを備えていて、
前記気泡(B)は、生成時における中心粒径(L1)が1μm以上500μm以下であるマイクロバブル(M)を含み、
前記飼育水(W)中のオゾンの溶存度(Z1)が0.05mg/l以上0.50mg/l以下であることを特徴とするオゾン除菌装置。
【請求項2】
前記オゾン発生手段(3)で発生させたオゾンの濃度(Z2)が0.05mg/l以上0.35mg/l以下であることを特徴とする請求項1に記載のオゾン除菌装置。
【請求項3】
前記気泡(B)は、生成時における中心粒径(L2)が1nm以上500nm以下であるナノバブル(N)も含んでいることを特徴とする請求項1又は2に記載のオゾン除菌装置。
【請求項4】
前記ナノバブル(N)の少なくとも一部は、生成時における中心粒径(L1)が1μm以上50μm以下であるマイクロバブル(M)が、中心粒径(L2)が1nm以上200nm以下となるまで収縮して生成されていることを特徴とする請求項3に記載のオゾン除菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−106565(P2013−106565A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254471(P2011−254471)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(511283103)株式会社アクルス (1)
【Fターム(参考)】