説明

オットマンを備えた車両用シート

【課題】暗闇でもオットマンの使い勝手を向上させることができるオットマンを備えた車両用シートを提供すること。
【解決手段】車両用シート1は、シートクッション2に着座した乗員の脚載せ可能なオットマン10を備えている。オットマン10には、光を発し可能な発光体36が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートクッションに着座した乗員の脚載せ可能なオットマンを備えた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光を発し可能な発光体(例えば、照明装置)が設けられている車両用シートが既に知られている。ここで、下記特許文献1には、発光体である発光ユニットがシートクッションのフロントカバーの下縁の溝およびサイドカバーの下縁の溝に沿って嵌め込まれている車両用シートが開示されている。これにより、車両用シートに着座した乗員の足を置く足置きスペース(以下、単に「フットスペース」と記す)を照らすことができるため、暗闇での乗降性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−184503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1の技術を、例えば、シートクッションに着座した乗員の脚載せ可能なオットマンを備えた車両用シートに適用したとき、オットマンの動作状態が切り替わっても発光ユニットの照らす範囲は切り替わることがない。すなわち、オットマンの動作状態が切り替わっても、常に、発光ユニットの照らす範囲は同じとなっている。そのため、暗闇では、フットスペースのみ照らされても、オットマンの動作状態を把握し難いことがあった。したがって、例えば、オットマンがシートクッションに着座した乗員の脚載せ可能な状態に切り替わっているときに乗員が乗降すると、乗降する乗員の足がオットマンに接触してしまうことがあった。結果として、暗闇では、オットマンの使い勝手が悪いものとなっていた。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、暗闇でもオットマンの使い勝手を向上させることができるオットマンを備えた車両用シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、シートクッションに着座した乗員の脚載せ可能なオットマンを備えた車両用シートであって、オットマンには、光を発し可能な発光体が設けられていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、発光体から光を発すると、オットマン自身を照らす格好にもなっている。そのため、暗闇でもオットマンの動作状態を把握し易く、例えば、オットマンが足載せ可能な状態に切り替わっているときに乗員が乗降しても、乗降する乗員の足がオットマンに接触してしまうことを抑制できる。したがって、暗闇でのオットマンの使い勝手を向上させることができる。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のオットマンを備えた車両用シートであって、発光体は、オットマンの脚載せ側の面と反対側の面から光を発し可能に設けられていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、オットマンが足載せ可能な状態に切り替わっているときに発光体から光が発せられると、オットマン自身を照らすだけでなく、フットスペース(着座した乗員の足を置く足置きスペース)も照らすことができる。また、このようにフットスペースを照らすことができると、発光体を車室内の間接照明としても使用できる。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1〜2のいずれかに記載のオットマンを備えた車両用シートであって、発光体は、複数設けられており、発光体から発せられる光は、拡散フィルム介して透過されていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、発光体を複数(例えば、5個)設けていても、隣り合う発光体との間に生じる光束のムラを抑制できる。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載のオットマンを備えた車両用シートであって、オットマンは、シートクッションに収納させた収納状態と、シートクッションに着座した乗員の脚載せ可能な足載せ可能状態と、に切り替え可能となっており、オットマンが収納状態にあるとき、発光体から発せられた光をシートクッションの前方のフットスペース側へ向けて反射させる反射板が設けられていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、オットマンが収納状態にあるとき、発光体から発せられた光をフットスペース(着座する乗員の足を置く足置きスペース)側へ向けて反射させることができる。そのため、オットマンが収納状態になっていても、フットスペースを明るくでき、発光体をフットライトとして使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の実施例に係る車両用シートの側面模式図であり、オットマンがシートクッションに収納された収納状態にあるときを示している。
【図2】図2は、図1の照射体の斜視図である。
【図3】図3は、図1の拡散フィルムの組み付け構造を示す斜視図である。
【図4】図4は、図1のIV−IV線断面図である。
【図5】図5は、図1のオットマンがシートクッションに着座した乗員の脚載せ可能な足載せ可能状態に切り替えた状態を示す図である。
【図6】図6は、図1において、LEDランプを点灯させた状態を示す図である。
【図7】図7は、図5において、LEDランプを点灯させた状態を示す図である。
【図8】図8は、乗員が脱いだ靴の全体を殺菌している状態を示す図である。
【図9】図9は、図8は、乗員が脱いだ靴のつま先を集中的に殺菌している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、図1〜9を用いて説明する。なお、以下の説明にあたって、上、下、前、後、左、右とは、上述した図に記載した、上、下、前、後、左、右の方向、すなわち、車両用シート1を基準にしたときの上、下、前、後、左、右の方向を示している。
【0012】
まず、図1〜5を参照して、本発明の実施例に係る車両用シート1の概略構成を説明する。この車両用シート1は、車両フロアFに備えられた3列のシート(1列目のシート、2列目のシート、3列目のシート)のうち、2列目に位置するシートであり、左右に独立した一人掛けのシートである(図1参照)。
【0013】
この車両用シート1は、シートクッション2と、シートバック(図示しない)とから構成されている。以下に、このシートクッション2について詳述していく。なお、シートバックは、公知のものでよいため、その詳細な説明は省略することとする。
【0014】
このシートクッション2には、オットマン10が備えられている。ここで、このオットマン10について詳述すると、このオットマン10は、主として、その骨格を成すオットマンフレーム(図示しない)と、このオットマンフレームに組み付けられクッション性を有するクッション体12から構成されている。このクッション体12には、光を発し可能なLEDランプ36を有する照射ユニット30が設けられている(図2参照)。
【0015】
この記載が、特許請求の範囲に記載の「オットマンには、光を発し可能な発光体が設けられている」に相当する。この照射ユニット30は、基板32と、基板32の一方側の面の四隅に取り付けられた脚34と、基板32の他方側の面の中央に取り付けられたLEDランプ36とから構成されている。
【0016】
そして、照射ユニット30は、LEDランプ36からの光がクッション体12の裏面から発せられるように、その各脚34がオットマンフレームの先端側にビス(図示しない)によって接合されている。この記載が、特許請求の範囲に記載の「発光体は、オットマンの脚載せ側の面と反対側の面から光を発し可能に設けられている」に相当する。この照射ユニット30のLEDランプ36は、車両の電源(図示しない)に対してスイッチ(図示しない)を介して電気的に接続されている。なお、照射ユニット30は、クッション体12の幅方向に沿って5個設けられている(図4参照)。
【0017】
また、オットマンフレームには、5個の照射ユニット30を囲むように略コ字状に形成された架台40がビス(図示しない)によって接合されている(図3参照)。この架台40には、各LEDランプ36から発せられた光を透過させる拡散フィルム(例えば、半透明の薄いフィルム、乳白色の薄い摺りガラス等)42が貼り付けられている。この記載が、特許請求の範囲に記載の「発光体から発せられる光は、拡散フィルム介して透過されている」に相当する。クッション体12は、このように構成されている。
【0018】
このように構成されたクッション体12は、照射ユニット30と架台40と拡散フィルム42と共に、表皮14によってカバーリングされている。そのため、表皮14には、各LEDランプ36から発せられた光を通過させる開口14aが形成されている。オットマン10は、このように構成されている。
【0019】
このように構成されたオットマン10は、シートクッション2のクッションフレーム(図示しない)の前部に左右に対を成すリンク20を介して組み付けられている。このリンク20は、電動モータ(図示しない)に機械的に締結されている。そのため、電動モータを駆動させるとリンク20を作動させることができる。したがって、オットマン10をシートクッション2に収納させた収納状態(図1に示す状態)と、シートクッション2に着座した乗員の脚載せ可能な足載せ可能状態(図5に示す状態)とに切り替えることができる。
【0020】
このように足載せ可能状態に切り替えると、オットマン10は車両フロアFに対して略平行状態となっている。もちろん、収納状態と足載せ可能状態とだけでなく、オットマン10をこれら収納状態と足載せ可能状態との間の任意の状態にも切り替えることができる。なお、この切り替えを行うリンク20は、公知のものでよいため、その詳細な説明は省略することとする。
【0021】
また、シートクッション2には、そのクッションフレームの下部にブラケット52を介して反射板50が設けられている(図1参照)。この反射板50は、オットマン10が収納状態にあるとき、各LEDランプ36から発せられた光を車両用シート1に着座する乗員の足を置く足置きスペースであるフットスペースS側へ向けて反射させることができるように設けられている。シートクッション2は、このように構成されている。
【0022】
このように構成されたシートクッション2とシートバックとから車両用シート1は構成されている。そして、車両用シート1は、スライドレール(図示しない)を介して車両フロアFに組み付けられている。車両用シート1は、このように構成されている。
【0023】
続いて、図6〜7を参照して、車両用シート1の作用を説明する。まず、オットマン10が収納状態にあるときから説明する。オットマン10が収納状態にあるときにスイッチをONすると、各LEDランプ36から発せられた光は、反射板50を照らしていく。すると、この照らした光は反射板50によって反射するため、この反射した光はフットスペースSを照らしていく。そのため、オットマン10が収納状態になっていると、フットスペースSを明るくでき、照射ユニット30をフットライトとして使用できる(図6参照)。
【0024】
次に、オットマン10を収納状態から足載せ可能状態に切り替えたときを説明する。オットマン10を足載せ可能状態に切り替えてスイッチをONすると、各LEDランプ36から発せられた光は、車両フロアFを照らしていく。そのため、オットマン10が足載せ可能状態になっていると、フットスペースSを明るくでき、照射ユニット30を車室内の間接照明としても使用できる(図7参照)。
【0025】
本発明の実施例に係る車両用シート1は、上述したように構成されている。この構成によれば、オットマン10のクッション体12には、光を発し可能な照射ユニット30(LEDランプ36)が設けられている。そのため、照射ユニット30(LEDランプ36)から光を発すると、オットマン10自身を照らす格好にもなっている。したがって、暗闇でもオットマン10の動作状態を把握し易く、例えば、オットマン10が足載せ可能状態に切り替わっているときに乗員が乗降しても、乗降する乗員の足がオットマン10に接触してしまうことを抑制できる。結果として、暗闇でのオットマン10の使い勝手を向上させることができる。
【0026】
また、この構成によれば、照射ユニット30は、LEDランプ36からの光がクッション体12の裏面から発せられるように、その各脚34がオットマンフレームの先端側にビス(図示しない)によって接合されている。そのため、オットマン10が足載せ可能状態に切り替わっているときに各LEDランプ36から光が発せられると、オットマン10自身を照らすだけでなく、フットスペースSも照らすことができる。また、このようにフットスペースSを照らすことができると、照射ユニット30を車室内の間接照明としても使用できる。
【0027】
また、この構成によれば、照射ユニット30(LEDランプ36)は、クッション体12の幅方向に沿って5個設けられている。また、オットマンフレームには、5個の照射ユニット30を囲むように略コ字状に形成された架台40がビス(図示しない)によって接合されている。この架台40には、各LEDランプ36から発せられた光を透過させる拡散フィルム42が貼り付けられている。そのため、照射ユニット30を5個設けていても、隣り合う照射ユニット30との間に生じる光束のムラを抑制できる。
【0028】
また、この構成によれば、シートクッション2には、そのクッションフレームの下部にブラケット52を介して反射板50が設けられている。そのため、オットマン10が収納状態にあるとき、各LEDランプ36から発せられた光を車両用シート1に着座する乗員の足を置く足置きスペースであるフットスペースS側へ向けて反射させることができる。したがって、オットマン10が収納状態になっていても、フットスペースSを明るくでき、照射ユニット30をフットライトとして使用できる。
【0029】
なお、既に説明したように、照射ユニット30は、LEDランプ36からの光がクッション体12の裏面から発せられるように、その各脚34がオットマンフレームの先端側にビス(図示しない)によって接合されている。すなわち、オットマン10の先端側に照射ユニット30(LEDランプ36)が設けられている。
【0030】
このように設けられていると、以下に記す2点の効果を備えることとなる。まず、第1の効果を説明する。オットマン10が収納状態にあると、照射ユニット30と車両フロアFとの距離が近いため、照射ユニット30をフットライトとして使用した場合、車両フロアF面を照らし易い。したがって、フットライトとしての使用性を高めることができる。一方、オットマン10が足載せ可能状態にあると、乗員の足先まで光を届けることができる。
【0031】
次に、第2の効果を説明する。既に説明したように、オットマン10を収納状態と足載せ可能状態との間の任意の状態にも切り替えることができるため、照射ユニット30の車両フロアFからの高さ位置を所望する高さ位置に設定できる。このように高さ位置を設定できると、照射ユニット30のLEDランプ36を使用して乗員の脱いだ靴を殺菌する場合に有効である。例えば、靴全体を殺菌したい場合、車両フロアFのフットスペースSに脱いだ靴を置き、オットマン10を足載せ可能状態にして、LEDランプ36を点灯させればよい(図8参照)。すると、靴全体が照らされるため、靴全体を殺菌できる。
【0032】
一方、靴の一部(例えば、つま先)のみを集中的に殺菌したい場合、車両フロアFのフットスペースSに脱いだ靴を置き、オットマン10のリンク20を作動させて、クッション体12と共に照射ユニット30を靴のつま先に近づけてLEDランプ36を点灯させればよい(図9参照)。すると、靴のつま先が局所的に照らされるため、靴のつま先を集中的に殺菌できる。
【0033】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
実施例では、車両用シートとして、車両(図示しない)に備えられた3列のシート(1列目のシート、2列目のシート、3列目のシート)のうち、2列目に位置するシートを例に説明した。しかし、これに限定されるものでなく、1列目に位置するシート、3列目に位置するシートであっても構わない。
【0034】
また、実施例では、反射板50はクッションフレームの下部に設けられている例を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、オットマン10が収納位置にあるとき、照射ユニット30から光を照射させると、照射させた光をシートクッション2の前方のフットスペースS側へ向けて反射させることができれば、反射板50は車両フロアFに設けられていても構わない。
【0035】
また、実施例では、殺菌する対象物として、乗員の脱いだ靴を例に説明した。しかし、これに限定されるものでなく、殺菌する対象物はどのような物品であっても構わない。
【符号の説明】
【0036】
1 車両用シート
2 シートクッション
10 オットマン
36 LEDランプ(発光体)
42 拡散フィルム
50 反射板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションに着座した乗員の脚載せ可能なオットマンを備えた車両用シートであって、
オットマンには、光を発し可能な発光体が設けられていることを特徴とするオットマンを備えた車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載のオットマンを備えた車両用シートであって、
発光体は、オットマンの脚載せ側の面と反対側の面から光を発し可能に設けられていることを特徴とするオットマンを備えた車両用シート。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれかに記載のオットマンを備えた車両用シートであって、
発光体は、複数設けられており、
発光体から発せられる光は、拡散フィルム介して透過されていることを特徴とするオットマンを備えた車両用シート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のオットマンを備えた車両用シートであって、
オットマンは、シートクッションに収納させた収納状態と、シートクッションに着座した乗員の脚載せ可能な足載せ可能状態と、に切り替え可能となっており、
オットマンが収納状態にあるとき、発光体から発せられた光をシートクッションの前方のフットスペース側へ向けて反射させる反射板が設けられていることを特徴とするオットマンを備えた車両用シート。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−91379(P2013−91379A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233801(P2011−233801)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】