説明

オパール様の遊色効果を呈する薄片状シリカ及びその製造方法

【課題】化粧料等に適したオパール様の遊色効果を呈する薄片状シリカ及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】180〜280nmの非晶質球状シリカ粒子を、ゲル化した非晶質シリカで結合してなり、オパール様の遊色効果を呈する薄片状シリカである。この薄片状シリカは、表面をアルミノ珪酸イオンで被覆した180乃至280nmの非晶質球状シリカ粒子からなるコロイダルシリカと、活性珪酸水溶液とを混合してなる水性シリカ分散液を凍結して、非晶質球状シリカ粒子をゲル化した非晶質シリカで結合してなる薄片状シリカを氷の結晶界面に析出させることで製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オパール様の遊色効果を呈し、化粧料等に適した薄片状シリカ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
天然オパールは、粒子径100乃至300nmの非晶質球状シリカ粒子が緻密に三次元配列した構造を有しており、光の反射・干渉現象を利用して独特な遊色効果を醸し出すことから、宝飾材料として珍重されている。
【0003】
1950年代に天然オパールの構造が公表されると、1960年代には天然オパールと同等の発色と遊色効果を有する合成オパールの開発が次々と行われた。例えば特許文献1には、非晶質球状シリカ粒子の三次元配列の空孔に10nm以下の微細なシリカゾル又は有機バインダーを充填した後、乾燥して強度を高める方法が記載されている。また特許文献2には、非晶質球状シリカ粒子を規則的に三次元配列するとともに該配列によって形成される空孔内にジルコニウムを0.005〜8重量%充填する方法が記載されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法のように、10nm以下の微細なシリカゾルを充填して強度を高める方法では、乾燥時に水の移動とともに微細なシリカゾルが三次元配列構造体の表面に移動して固化するため、均質な構造とならず、優れた遊色効果が得られない。同文献に記載の有機バインダーを充填する方法では、耐薬品性及び耐熱性に優れたものは得られない。特許文献2に記載の方法では、耐薬品性及び耐熱性に優れたものは得られるが、ジルコニウムの充填ではウォーターオパールという青みがかったオパールしか得られない。また、前記の文献や最近の特許文献3でも、非晶質球状シリカ粒子を規則的に三次元配列させる方法は、ガラスやプラスチックの容器基板にシリカ粒子を自然沈積・積層していく方法であって、分散媒中のシリカ粒子の沈降は長い時間を掛けて行われており、合成品とは言っても非常に高価なものになっている。
【0005】
一方、微細なコロイダルシリカ又は活性珪酸水溶液を凍結して薄片状シリカを得る製造方法は、フレーク状シリカの製造方法のひとつとして公知である(非特許文献1)。この方法では、シリカは氷の結晶面間に挟まれた格好で脱水されてフレーク状のゲルとなり、解凍後にはフレーク状シリカとなって沈澱し、容易に固液分離ができる。シリカの粒子径がおおよそ100nm以下であれば、この方法が適用できる。シリカの粒子径がおおよそ100nm以上では、凍結によって形成されたゲルを構成するシリカ粒子の粒子間結合力が弱く、解凍によりコロイド状に戻りやすく薄片状シリカを得ることは難しい。特許文献4には、このような問題を解決する方法として、コロイド溶液を凍結した後、凍結物が解凍しない温度に保持しながら溶媒を除去する方法が記載されている。いわゆる凍結乾燥法である。この方法では溶媒の除去に過大なエネルギーコストがかかり、工業的に不利である。
【0006】
以上の技術とは別に、非特許文献2には、シリカ粒子の表面を、アルミノ珪酸サイトで被覆したコロイダルシリカが記載されている。同文献の記載によれば、このコロイダルシリカは、酸性及び中性域において安定であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許3497367号明細書
【特許文献2】特開昭60−96589号公報
【特許文献3】特開2007−290938号公報
【特許文献4】特開昭62−3003号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】R.K.Iler,”THE CHEMISTRY OF SILICA”A Wiley-Interscience Publication, 23-24
【非特許文献2】R.K.Iler,J. Colloid Interface Sci. 55, 25 (1976)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、化粧料等に適したオパール色を呈する薄片状シリカを提供することにある。また本発明の目的は、そのような薄片状シリカを容易に製造し得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、走査型電子顕微鏡観察による粒子径が180〜280nmの非晶質球状シリカ粒子を、ゲル化した非晶質シリカで結合してなり、オパール様の遊色効果を呈することを特徴とする薄片状シリカを提供するものである。
【0011】
また本発明は、前記の薄片状シリカの好適な製造方法として、
活性珪酸水溶液と、走査型電子顕微鏡観察による粒子径が180乃至280nmのシリカ粒子を含むコロイダルシリカとを混合して水性シリカ分散液を調製し、この水性シリカ分散液を凝固点以下に冷却凍結して薄片状シリカを析出させ、固液分離して薄片状シリカを得ることを特徴とする薄片状シリカの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の薄片状シリカは、その遊色効果を利用して、化粧料、塗料、インキなどの広い用途で使用することができ、製造方法も簡易であるため安価に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1で得られた薄片状シリカの断面を撮ったSEM写真である。(×10000)
【図2】図1の薄片状シリカのSEM写真の倍率を拡大したSEM写真である。(×20000)
【図3】図1の薄片状シリカ粒子の外観を示す低倍率SEM写真である。(×100)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を更に詳細に説明する。本発明の薄片状シリカは、文字どおりその外観が薄片状である。薄片状シリカは、典型的には、その厚さが好ましくは1〜100μm、更に好ましくは5〜50μmである。また薄片の面方向長さは好ましくは10〜1000μm、更に好ましくは100〜500μmである。更に、薄片状シリカは、そのアスペクト比(薄片の面方向長さ/厚さ)が好ましくは5〜100、更に好ましくは10〜50である。薄片状シリカがこのような寸法のものであることで、該薄片状シリカは、化粧料、塗料、インキなどの顔料として好適なものとなる。
【0015】
本発明の薄片状シリカは、オパール様の遊色効果を呈するものである。この遊色効果は、本発明の薄片状シリカにおいて、多数の非晶質球状シリカ粒子が規則的に配列されているとともに、該シリカ粒子間に非晶質シリカが存在することに起因するものである。薄片状シリカに入射した光は、非晶質球状シリカ粒子でブラッグ反射するとともに、該シリカ粒子間に存在する非晶質シリカでもブラッグ反射することで干渉し、オパール様の独特な遊色効果を呈する。
【0016】
なお本発明の薄片状シリカは、その外観からパール顔料(真珠光沢顔料)の範疇に属するとも考えられるが、雲母をベースとし酸化チタンなどの金属酸化物の微細な粒子を被覆した従来型のパール顔料とは構成が異なる。
【0017】
上述したとおり、本発明の薄片状シリカにおいては、多数の非晶質球状シリカ粒子が規則的にかつ緻密に、三次元状に配列されている。この配列は、例えば単純立方構造、面心立方構造、体心立方構造、六方最密構造又はこれらの2種以上の構造が共存している複合構造の配列である。そして、非晶質球状シリカ粒子間に、該シリカ粒子同士を結合する非晶質シリカが存在している。この非晶質シリカは、活性珪酸がゲル化した状態になったものであり、それによって結合機能を発揮している。
【0018】
このゲル化した非晶質シリカが、シリカ粒子を効果的に結合させる観点から、薄片状シリカにおける非晶質球状シリカ粒子/ゲル化した非晶質シリカの質量比は、74/26〜95/5であることが好ましい。六方最密充填した非晶質球状シリカ粒子の間隙を、ゲル化した非晶質シリカが満たすと仮定した場合、非晶質球状シリカ粒子/ゲル化した非晶質シリカの質量比は74/26となる。これよりも質量比が低くなると、ゲル化した非晶質シリカが粒子間の間隙を完全に塞いでしまいオパール様の遊色効果が発現しにくくなることがある。また、質量比が95/5よりも高くなると、ゲル化した非晶質シリカの結合機能が足らないため薄片状シリカが形成されにくくなる。より好ましくは、非晶質球状シリカ粒子/ゲル化した非晶質シリカの質量比は75/25〜85/15である。この範囲では、鮮やかなオパール様の遊色効果が得られる。薄片状シリカにおける非晶質球状シリカ粒子及びゲル化した非晶質シリカの含有量は、球状シリカ粒子の接合部分の面積を10万倍のSEM写真より計測して算出することができる。
【0019】
非晶質球状シリカ粒子は、走査型電子顕微鏡観察による粒子径が180〜280nm、好ましくは200〜280nmのものである。粒子径が180nmに満たない場合には、最密充填構造になりにくく、遊色効果も少ない。一方、粒子径が280nmを超えると、粒子径のそろった球状粒子が得られにくく、また、より高い遊色効果も得られない。
【0020】
非晶質球状シリカ粒子は、上述の粒子径を有するものであればその種類に特に制限はない。特に、アルコキシシランを水酸化アンモニウム触媒で加水分解して得られるコロイダルシリカは、粒子径が極めて均一であり、短時間で合成できるので好ましく使用できる。また、珪酸ナトリウムを原料とした所謂水ガラス法のコロイダルシリカは安価であって好ましく使用できる。これらのコロイダルシリカを用いれば、以下に述べる表面処理を施さなくても、オパール様の遊色効果を呈する薄片状シリカを得ることができる。尤も、表面処理を施した方が、オパール様の遊色効果が一層強くなる。
【0021】
薄片状シリカに含まれる非晶質球状シリカ粒子は、その表面が酸化アルミニウムで処理されていることが好ましい。これによって、シリカ粒子の表面にアルミノ珪酸サイトが形成されるので、薄片状シリカの製造過程において、酸性である活性珪酸水溶液との混合溶液中においてもシリカ粒子は強い負電荷を有し、良好な分散状態を維持するという利点がある。また、この負電荷による粒子間斥力が働くことで、氷の結晶成長に伴って結晶界面に濃縮されたシリカ粒子が氷の結晶面間に密に滑り込んで積層されるという利点もある。更に、薄片状シリカが呈するオパール様の遊色効果が一層際立つという利点もある。
【0022】
なお前記の「酸化アルミニウムで処理」とは、正確には「シリカ粒子表面のシラノール基にアルミン酸イオンを結合させてアルミノ珪酸サイトを形成させる処理」のことである。本明細書では、このことを「酸化アルミニウムで処理」と記載することがある。
【0023】
酸化アルミニウムは、シリカ粒子の表面全域を完全に連続的に被覆していてもよく、あるいは部分的に不連続に被覆していてもよい。酸化アルミニウムの量(被覆率)は、コロイダルシリカの質量に対して0.4〜25%であることが、水酸化アルミニウムの析出を防止しつつ、シリカ粒子の凝集を効果的に防止し得る観点から好ましい。より好ましくは、酸化アルミニウムによる被覆率は、0.7〜4.0%である。この範囲であれば、酸性pH域でもシリカ粒子の分散の安定性を保つのに必要かつ充分な負電荷を、シリカ粒子に与えることができる。
【0024】
シリカ粒子の表面における酸化アルミニウムの被覆率は、添加したアルミニウムのすべてが粒子表面のシラノール基の珪素原子と置き換わると仮定し、下記のように算出される。なお、シリカ粒子の表面積1nm2あたり8個のシラノール基が存在すると仮定する。
被覆率=(添加したアルミニウム原子の数/シリカ粒子表面の全シラノール基数)×100
シリカ粒子表面の全シラノール基数=比表面積(nm2-1)×コロイダルシリカのシリカ重量(g)×8(nm-2
前記の比表面積は、窒素吸着法BET比表面積である。球状シリカ粒子の粒子径は、下式によりBET比表面積の値から算出することができる。このBET比表面積は、窒素吸着法BET比表面積である。
粒子径(nm)=2720/BET比表面積(m2-1
この粒子径はBET径とも呼ばれ、以下でもそのように記載する。BET径は電子顕微鏡法により測定される粒子径よりも、一般に10乃至20%小さい。
【0025】
非晶質シリカ粒子は、コロイダルシリカの表面を酸化アルミニウムで処理した後に、陽イオン交換樹脂に通して脱アルカリして、pHを3付近に調整したコロイダルシリカであることが好ましい。脱アルカリしたシリカ粒子を用いることには、pH2〜4の酸性を呈する活性珪酸溶液との混合液の経時安定性が増し、製造工程中でのゲル化を防止できるという利点がある。
【0026】
薄片状シリカには、上述した非晶質球状シリカ粒子及びゲル化した非晶質シリカの他に、必要に応じて染料、顔料などの着色剤、抗菌抗黴剤、カップリング剤、香料、撥水剤、展着剤、滑剤等を含有させてもよい。これらの成分は、それぞれの用途での機能性改良等を目的として添加されるものである。
【0027】
次に、本発明の薄片状シリカの好ましい製造方法について説明する。本製造方法においては、活性珪酸水溶液と、走査型電子顕微鏡観察による粒子径が180乃至280nmのシリカ粒子を含むコロイダルシリカとを混合して水性シリカ分散液を調製し;この水性シリカ分散液を凝固点以下に冷却凍結して薄片状シリカを析出させ;固液分離して薄片状シリカを得る工程を備えている。
【0028】
活性珪酸水溶液は、珪酸アルカリ水溶液からアルカリ金属を除去して得ることができる。アルカリ金属の除去には、例えばイオン交換樹脂を用いることができる。活性珪酸水溶液における珪酸の濃度は、1〜7質量%、特に3〜5質量%であることが好ましい。
【0029】
活性珪酸水溶液とコロイダルシリカとの水性シリカ分散液は、pHが2〜4であることが好ましい。pHをこの範囲内に設定することで、後述する晶析過程において、氷の結晶界面に濃縮される活性珪酸が縮合しにくくなり、氷の結晶面に沿った珪酸の濃縮及び薄片形成が起こりやすくなる。また、シリカ粒子の表面が酸化アルミニウムで処理されている場合には、アルミニウムが溶出しづらくなる。この混合溶液のpHを前記の範囲内に設定するためには、例えばイオン交換樹脂などを用いてコロイダルシリカからアルカリ金属を除去すればよい。
【0030】
コロイダルシリカと活性珪酸水溶液との混合比は、SiO2換算で74/26〜95/5、特に75/25〜85/15であることが好ましい。
【0031】
得られた水性シリカ分散液は、次いで凝固点以下に冷却され凍結される。この操作によって、非晶質球状シリカ粒子及びゲル化した非晶質シリカを氷の結晶界面に析出(凍結晶析)させる。この場合、シリカ粒子が規則的に三次元状に配列されるとともに、活性珪酸がゲル化することによって非晶質シリカが生成し、該ゲル化した非晶質シリカがシリカ粒子間を強固に結合する。氷の結晶界面での析出に起因して、得られるシリカは薄片状となる。
【0032】
冷却は、水性シリカ分散液の全体が完全に凍結するまで行う。冷却温度は、水性シリカ分散の凝固点にもよるが、一般に−5〜−30℃、特に−10〜−25℃に設定すれば十分である。冷却時間は3〜36時間、特に6〜24時間であることが好ましい。冷却は徐冷が好ましい。水が氷に状態変化する際に潜熱が発生し、冷却の大部分は潜熱に消費されるので、凝固点付近の冷却速度は下がる。凝固点付近にとどまる時間の長いほど氷の結晶は大きく成長することから、形成される薄片状シリカは大きくなり、そのオパール様の遊色効果も鮮やかになる。凝固点付近(例えば凝固点±1℃)にとどまる時間が3〜24時間、特に6〜15時間になるよう冷却時間を調整することが好ましい。徐冷する場合には、水性シリカ分散液の入っている容器の周囲を断熱材で覆って、冷却速度をコントロールすることができる。また、冷却は静置冷却であることが好ましい。
【0033】
このようにして、目的とする薄片状シリカが得られる。この後は、反応系を室温に戻して氷を解凍し、次いで固液分離を行うことで薄片状シリカを回収する。得られた薄片状シリカは、そのオパール様の遊色効果を生かして、例えば化粧料、塗料、インキなどの顔料として好適に用いられる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に限定されるものではない。特に断らない限り「%」は「質量%」を意味する。
【0035】
〔実施例1〕
<コロイダルシリカの酸化アルミニウム処理>
BET径が180nmで、走査型電子顕微鏡観察によるシリカ粒子径が200nmのナトリウムで安定化したコロイダルシリカ(SiO2:46.46%、pH9.93)200gを脱イオン水1800gで希釈した。これに17%硫酸を加えてpH8.4に調整した。これを95℃で1時間攪拌した後、1%アルミン酸ナトリウム溶液(アルミン酸ナトリウム(Al23:37%、Na2O:33%)1gを脱イオン水で希釈して100gにした)10gを添加し、更に95℃で1時間攪拌し、一晩放冷した。これをH型強酸性カチオン交換樹脂(オルガノ(株)製アンバーライトIR120B)0.15Lのカラムに通して脱アルカリして、pH2.9、シリカ濃度6.66%の酸化アルミニウム処理コロイダルシリカ1800gを得た。酸化アルミニウムによる被覆率は、3.9%であった。
【0036】
<活性珪酸水溶液の調製>
脱イオン水2.5kgに3号珪酸ソーダ(SiO2:28.9%、Na2O:9.4%、H2O:61.7%)420gを加えて均一に混合し、シリカ濃度4.0%の希釈珪酸ソーダを調製した。この希釈珪酸ソーダをH型強酸性カチオン交換樹脂(オルガノ(株)製アンバーライトIR120B)1Lのカラムに通して脱アルカリし、シリカ濃度3.68%で、pH3.0の活性珪酸水溶液3kgを得た。
【0037】
<コロイダルシリカと活性珪酸水溶液の混合溶液の凍結晶析>
続いて、前記の酸化アルミニウム処理したコロイダルシリカ70gに、活性珪酸水溶液30gを加えて均一に混合し、水性シリカ分散液を得た。この分散液のpHは2.9であった。この分散液を−20℃の冷凍庫で一晩静置し、冷却凍結した。これを室温解凍してろ過した後、110℃の乾燥機中で乾燥させ、薄片状シリカを得た。この薄片状シリカは、オパール様の遊色効果を呈するものであった。この薄片状シリカを走査型電子顕微鏡(SEM)観察したところ、図1及び図2に示すように、シリカ粒子が密に積層しており、活性珪酸がゲル化することによりシリカ粒子間を強固に結合していることがわかった。また図3に、薄片シリカの外観形状のSEM写真を示した。この薄片状シリカは、非晶質球状シリカ粒子/ゲル化した非晶質シリカの質量比が81/19であった。厚みは約5μmであり、アスペクト比は約40であった。
【0038】
〔実施例2〕
実施例1で得られた酸化アルミニウム処理コロイダルシリカ90gと活性珪酸水溶液10gを均一に混合し、水性シリカ分散液を得た。この分散液のpHは2.9であった。これ以外は、実施例1と同様の操作を行い、薄片状シリカを得た。得られた薄片状シリカは、非晶質球状シリカ粒子/ゲル化した非晶質シリカの重量比が95/5であった。この薄片状シリカにおいては、ゲル化した非晶質シリカが、実施例1よりも少ないので、実施例1と比較して微小な薄片粒子となった。オパール様の遊色効果は実施例1の方が顕著であった。
【0039】
〔実施例3〕
BET径が180nmで、走査型電子顕微鏡観察によるシリカ粒子径が200nmのナトリウムで安定化したコロイダルシリカ(SiO2:46.46%、pH9.93)200gを脱イオン水1800gで希釈した。これに17%硫酸を加えてpH8.2に調整した。これを95℃で1時間攪拌した後、1%アルミン酸ナトリウム溶液(アルミン酸ナトリウム(Al23:37%、Na2O:33%)1gを脱イオン水で希釈して100gにした)1gを添加し、更に95℃で1時間攪拌し、一晩放冷した。これをH型強酸性カチオン交換樹脂(オルガノ(株)製アンバーライトIR120B)0.15Lのカラムに通して脱アルカリして、pH3.1、シリカ濃度5.60%、被覆率0.4%の酸化アルミニウム処理コロイダルシリカ1700gを得た。この酸化アルミニウム処理したコロイダルシリカ70gと、実施例1と同様の活性珪酸水溶液30gを均一に混合し、水性シリカ分散液を得た。この分散液のpHは3.0であった。また、この分散液の凝固点は−0.5℃であった。この分散液を入れたサンプル瓶の周りを断熱材で覆って、−15℃の冷凍庫で24時間静置し凍結晶析した。凍結の際、凝固点±1℃にとどまる時間は15時間であった。これを室温解凍してろ過した後、110℃の乾燥機中で乾燥させ、薄片状シリカを得た。得られた薄片状シリカは、オパール様の遊色効果を呈するものであった。しかし、その効果は実施例1の方が顕著であった。薄片状シリカにおける非晶質球状シリカ粒子/ゲル化した非晶質シリカの質量比は78/22であった。
【0040】
〔実施例4〕
BET径が180nmで、走査型電子顕微鏡観察によるシリカ粒子径が200nmのナトリウムで安定化したコロイダルシリカ(SiO2:46.46%、pH9.93)200gを脱イオン水1800gで希釈した。これに17%硫酸を加えてpH8.3に調整した。これを95℃で1時間攪拌した後、1%アルミン酸ナトリウム溶液(アルミン酸ナトリウム(Al23:37%、Na2O:33%)1gを脱イオン水で希釈して100gにした)50gを添加し、更に95℃で1時間攪拌し、一晩放冷した。これをH型強酸性カチオン交換樹脂(オルガノ(株)製アンバーライトIR120B)0.15Lのカラムに通して脱アルカリし、pH3.4に調製し、シリカ濃度5.24%、被覆率19%の酸化アルミニウム処理コロイダルシリカ1700gを得た。この酸化アルミニウム処理したコロイダルシリカ70gと、実施例1と同様の活性珪酸水溶液30gを均一に混合し、水性シリカ分散液を得た。この分散液のpHは3.5であった。また、この分散液の凝固点は−0.5℃であった。この分散液を入れたサンプル瓶の周りを断熱材で覆って、−15℃の冷凍庫で20時間凍結晶析し、オパール様の遊色効果を呈する薄片状シリカを得た。凍結の際、凝固点±1℃にとどまる時間は8時間であった。この薄片状シリカにおける非晶質球状シリカ粒子/ゲル化した非晶質シリカの質量比は77/23であった。
【0041】
〔実施例5〕
BET径が210nmで、走査型電子顕微鏡観察によるシリカ粒子径が250nmのナトリウムで安定化したコロイダルシリカ(SiO2:40.0%、pH9.95)200gを脱イオン水1800gで希釈した。これに17%硫酸を加えてpH8.3に調製した。これを95℃で1時間攪拌した後、1%アルミン酸ナトリウム溶液(アルミン酸ナトリウム(Al23:37%、Na2O:33%)1gを脱イオン水で希釈して100gにした)5gを添加し、更に95℃で1時間攪拌し、一晩放冷した。これをH型強酸性カチオン交換樹脂(オルガノ(株)製アンバーライトIR120B)0.15Lのカラムに通して脱アルカリし、pH3.0に調製し、シリカ濃度4.60%、被覆率2.6%の酸化アルミニウム処理コロイダルシリカ1700gを得た。この酸化アルミニウム処理したコロイダルシリカ70gと、実施例1と同様の活性珪酸水溶液30gを均一に混合し、水性シリカ分散液を得た。この分散液のpHは3.0であった。また、この分散液の凝固点は−0.5℃であった。この分散液を入れたサンプル瓶の周りを断熱材で覆って、−15℃の冷凍庫で凍結晶析し、オパール様の遊色効果を呈する薄片状シリカを得た。凍結の際、凝固点±1℃にとどまる時間は15時間であった。この薄片状シリカにおける非晶質球状シリカ粒子/ゲル化した非晶質シリカの質量比は74/26であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査型電子顕微鏡観察による粒子径が180〜280nmの非晶質球状シリカ粒子を、ゲル化した非晶質シリカで結合してなり、オパール様の遊色効果を呈することを特徴とする薄片状シリカ。
【請求項2】
非晶質球状シリカ粒子の表面が、酸化アルミニウムで処理されている非晶質球状シリカ粒子である請求項1に記載の薄片状シリカ。
【請求項3】
非晶質球状シリカ粒子の酸化アルミニウムによる被覆率が、0.4〜25%である請求項2に記載の薄片状シリカ。
【請求項4】
ゲル化した非晶質シリカが、珪酸アルカリ水溶液からアルカリ金属を除去して得た活性珪酸水溶液を用いて得られたものである請求項1〜3のいずれかに記載の薄片状シリカ。
【請求項5】
非晶質球状シリカ粒子/ゲル化した非晶質シリカの質量比が74/26〜95/5である請求項1〜4のいずれかに記載の薄片状シリカ。
【請求項6】
請求項1に記載の薄片状シリカの製造方法であって、
活性珪酸水溶液と、走査型電子顕微鏡観察による粒子径が180乃至280nmのシリカ粒子を含むコロイダルシリカとを混合して水性シリカ分散液を調製し、
この水性シリカ分散液を凝固点以下に冷却凍結して薄片状シリカを析出させ、
固液分離して薄片状シリカを得ることを特徴とする薄片状シリカの製造方法。
【請求項7】
珪酸アルカリ水溶液からアルカリ金属を除去して活性珪酸水溶液を得る請求項6記載の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−63481(P2011−63481A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216086(P2009−216086)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000230593)日本化学工業株式会社 (296)
【Fターム(参考)】