説明

オフセットインキ組成物および印刷物

【課題】インキの流動性および経時安定性ならびに印刷時の乾燥性および印刷機上での安定性に優れたオフセットインキ組成物および印刷物の提供。
【解決手段】バインダー樹脂、顔料および溶剤成分として特定の植物油類を含有するオフセットインキ組成物において、植物油類が、植物油類全体に対して、50〜100重量%の下記で表される化合物を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、書籍、書籍、チラシ、カタログ等の印刷に使用されるオフセットインキ組成物に関し、さらに詳しくは、従来よりもインキの流動性および経時安定性ならびに印刷時の乾燥性および印刷機上での安定性に優れた環境負荷の少ない酸化重合型オフセットインキ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オフセットインキは、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性アルキッド樹脂、石油樹脂変性フェノール樹脂などの合成樹脂と、アマニ油、桐油、大豆油などの植物油、鉱物油、合成油、必要に応じてインキの乾燥被膜に可撓性や柔軟性を付与するために可塑剤やワックスコンパンドなどの添加剤と、顔料や染料の着色剤および溶剤からなっており、これらのインキに使用される溶剤は、上記成分の溶解分散性や印刷適性から主に芳香族系溶剤が使用されていた(特許文献1、2)。
【0003】
しかしながら、近年、上記の鉱物油などの油類や芳香族系溶剤を主体としたインキは、その製造や印刷時、および印刷物において残留溶剤などの揮発蒸気の臭気が強いという問題がある。従って、作業環境や大気汚染などの環境衛生面から、揮発蒸気の臭気が極めて低く、また、作業環境や大気汚染などの環境負荷が少ない植物油や非芳香族系溶剤を主体としたインキに置き換わっている(特許文献1、2)。
【0004】
すなわち、特許文献3と特許文献4にロジン変性フェノール樹脂と植物油エステルを溶剤主成分とし、従来のインキに比べて大幅にVOC成分を削減し、かつ高速セット性を備えた印刷インキ組成物が提案されているが、乾燥性に関しては不十分である。
【0005】
特許文献5では、ロジン変性フェノール樹脂、米ぬか油と脂肪酸モノエステルを主原料
とし、従来のインキに比べ大幅にVOC成分を削減し臭気が少なくゴム部材の変質又は劣
化が少なく、かつ良好な機上安定性を備えた印刷インキが提案されているが、これも乾燥性に関しては不十分である。
【0006】
特許文献6では、ヨウ素価を100以上に調整した米ぬか油を用いたオフセットインキ
について提案されているが、乾燥性・機上安定性が不十分である。
さらに、近年、大豆油などの農作物がバイオエタノール原料に転用される様になり、大豆油の価格の高騰や、安定した供給量の確保が懸念されている。一方、世界規模でのCO排出量削減の急激な動きで、脱石化素材・VOCのインキ成分からの排除を目的とした考え方が普及しつつあった。しかも、輸送燃料に対しても同様の考え方が適用される。
【0007】
輸送マイレージ、即ち原料や製品などの生産・製造地と消費地との距離を短縮すること
でCO排出量を削減していくという観点では、インキ製造地から近いところでインキの
原料を調達することで、CO排出量の削減に貢献できる。
【0008】
しかしながら、植物油成分として用いられている大豆油は北米・南米で収穫された大豆を海外で搾油したものが輸入されているのが主であり、輸送マイレージが悪く環境に好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−249385号公報
【特許文献2】特開2005−290084号公報
【特許文献3】特開2002−69354号公報
【特許文献4】特開2002−155227号公報
【特許文献5】特開2005−330317号公報
【特許文献6】特開2003−96375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、地球環境に配慮しつつ、インキの流動性および経時安定性ならびに印刷時の乾燥性および印刷機上での安定性に優れたオフセットインキ組成物およびそれを用いた印刷物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために誠意研究した結果、バインダー樹脂、植物油類および顔料を含有するオフセットインキ組成物において、特定の植物油を含有するオフセットインキ組成物が、流動性および経時安定性ならびに印刷時の乾燥性および印刷機上での安定性に優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、バインダー樹脂、顔料および溶剤成分として植物油類を含有する酸化重合型オフセット印刷インキ組成物において、前記植物油類が、植物油類全体に対して50〜100重量%の一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする酸化重合型オフセットインキ組成物に関するものである。

一般式(1)
【化1】

【0013】
さらに、本発明は、一般式(1)で表される化合物のヨウ素価が30〜100(mg/100mg)であることを特徴とする上記の酸化重合型オフセットインキ組成物に関するものである。
【0014】
また、本発明は、一般式(2)〜(4)で表される化合物を、さらに含有することを特徴とする上記の酸化重合型オフセットインキ組成物に関するものである。

一般式(2)
【化2】


一般式(3)
【化3】


一般式(4)
【化4】

【0015】
さらに、本発明は、一般式(5)で表される化合物を、インキ全重量に対して、さらに0.01〜1.0重量%含有することを特徴とする上記の酸化重合型オフセットインキ組成物に関するものである。

一般式(5)
【化5】

【0016】
また、本発明は、一般式(2)〜(5)で表される化合物が、一般式(1)で表される化合物と一般式(6)で表される化合物とをアルカリ触媒中で反応させてなることを特徴とする上記の酸化重合型オフセットインキ組成物に関するものである。

一般式(6)
【化6】

【0017】
さらに本発明は、バインダー樹脂が、
酸価5〜30(mgKOH/g)であり、
環球法による軟化点が120〜300℃
および
重量平均分子量10000〜100000
であるロジン変性フェノール樹脂であることを特徴とする上記の酸化重合型オフセットインキ組成物に関するものである。
【0018】
また、本発明は、さらに、
アニリン点75〜95℃
および
沸点260〜350℃
である石油系溶剤
を含有することを特徴とする上記の酸化重合型オフセットインキ組成物に関するものである。
【0019】
さらに、本発明は、上記の酸化重合型オフセットインキ組成物を基材上に印刷してなる印刷物に関するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明が、提供する酸化重合型オフセットインキ組成物は、書籍、書籍、チラシ、カタログ等の印刷において、インキの流動性および経時安定性ならびに印刷時の乾燥性および印刷機上での安定性に優れ、しかも、環境負荷が少ない。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
【0022】
本発明で用いられる一般式(1)で表される化合物は、(R1+R2+R3)の全量に対して、二重結合を2つ有する炭素数18の不飽和炭化水素基のモル比率が5〜15%が良く、好ましくは10〜15%が良い。さらに、二重結合を3つ有する炭素数18の不飽和炭化水素基のモル比率が1.0%以下がより好ましく、0.7%以下が良く、さらに好ましくは、0.5%以下であることが望ましく、できれば含まれない方が良い。すなわち、一般式(1)で表される化合物は、二重結合の割合が特定のものが好ましい。
【0023】
また、一般式(1)で表される化合物の含有量は、植物油類全体に対して、50〜100重量%が良く、さらに好ましくは70〜100重量%が良く、80〜100重量%が良い。さらに、酸化重合型オフセットインキ組成物全量に対しては、10〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%、さらに好ましくは20〜30重量%含有されていることが望ましい。一般式(1)で表される化合物の含有量が、酸化重合型オフセットインキ組成物全量に対して10重量%よりも少ないと、印刷機上でのインキの安定性が劣り、インキの増粘、流動性の低下を招く。一般式(1)で表される化合物の含有量が、酸化重合型オフセットインキ組成物全量に対して50重量%よりも多いと、乾燥性が劣り、印刷機上での擦れや印刷紙面結束後ブロッキング等を招き、印刷物としての品質が劣る結果となる。
【0024】
また、二重結合を2つ有する炭素数18の不飽和炭化水素基の比率が5%未満であるとインキ乾燥後の印刷物の耐摩擦性や光沢が劣り、15%より多いと、保存容器内でのインキの経時安定性が劣るため好ましくない。また、三重結合を1つ有する炭素数18の不飽和炭化水素基が存在すると保存容器内でのインキの経時安定性が著しく劣るためなるべく少なくした方が好ましくない(好適なのは、含有量0重量%である。)。
【0025】
本発明において、植物油類としては、植物油および植物油由来の化合物があげられるが、化合物として例えばグリセリンと脂肪酸とのトリグリセリドにおいて、少なくとも1つの脂肪酸が炭素−炭素不飽和結合を少なくとも1つ有する脂肪酸であるトリグリセリドと、それらのトリグリセリドから飽和または不飽和アルコールとをエステル反応させてなる脂肪酸モノエステル、あるいは植物油の脂肪酸とモノアルコールを直接エステル反応させた脂肪酸モノエステル、エーテル類が挙げられる。
【0026】
本発明で用いられる一般式(1)で表される化合物を典型的に入手する方法は、パーム油として入手すればよいが、他の植物油等を精製して、一般式(1)になるように加工しても良い。
【0027】
本発明では、必要に応じて例えばアサ実油、アマニ油、エノ油、オイチシカ油、オリーブ油、カカオ油、カポック油、カヤ油、カラシ油、キョウニン油、キリ油、ククイ油、クルミ油、ケシ油、ゴマ油、サフラワー油、ダイコン種油、大豆油、大風子油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ニガー油、ヌカ油、パーム油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ヘントウ油、松種子油、綿実油、ヤシ油、落花生油、脱水ヒマシ油等の植物油由来のものや、それらの熱重合油及び酸素吹き込み重合油等を併用することもでき、これらを単独あるいは2種類以上組み合わせて併用して用いることもできるが、好ましくはオフセットインキ組成物全量に対して20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下の含有率にすることが望ましい。10重量%以上併用させると、保存容器内でのインキの経時安定性が劣るため好ましくない。
【0028】
本発明において、一般式(1)で表されるような好適な植物油を挙げるとすれば、そのヨウ素価が30〜100(mg/100mg)である植物油が好ましく、さらにヨウ素価が40〜100(mg/100mg)の植物油がより好ましい。ヨウ素価の範囲を限定することで、インキ皮膜の酸化重合による乾燥性を高めることができ、特に熱風乾燥機を用いない枚葉印刷方式には有効である。
【0029】
本発明において、一般式(2)〜(5)の脂肪酸エステルとしては、好ましくは炭素数14〜18の飽和または不飽和脂肪酸と炭素数1〜8の直鎖または分岐のモノアルコールから構成される動植物油由来の脂肪酸エステルであり、パーム油メチルエステル、パーム油ブチルエステル、パーム油イソヘキシルエステル、大豆油メチルエステル、大豆油ブチルエステル、大豆油イソヘキシルエステル、などが例示される。炭素数14未満の飽和または不飽和脂肪酸からなる脂肪酸エステルでは溶解力が高すぎ、ブランケットやゴムローラと言った印刷資材への悪影響が懸念され、また炭素数18より大きい飽和または不飽和脂肪酸もしくは炭素数9以上のモノアルコールからなる脂肪酸エステルでは、溶解力が不足する。
【0030】
本発明に使用できるバインダー樹脂としては、例えばフェノール系樹脂(フェノール系樹脂、ロジン、硬化ロジン、重合ロジンなどのロジン類を用いたロジン変性フェノール系樹脂など)、マレイン酸系樹脂(ロジン変性マレイン酸系樹脂、ロジンエステル系樹脂など)、アルキド樹脂または変性アルキド樹脂、石油樹脂などが挙げられ、それらは任意に単独または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0031】
特に、好適に本発明で用いられるバインダー樹脂としては、酸価が5〜30(mgKOH/g)であり、重量平均分子量10000〜100000、好ましくは20000〜80000、かつ環球法による軟化点が120〜300℃、好ましくは、120〜280℃であるロジン変性フェノール樹脂であることが望ましい。
重量平均分子量が10000以下ではインキの粘弾性が低下し、100000以上ではインキの流動性、光沢が劣る。
【0032】
本発明におけるロジン変性フェノール樹脂は、樹脂酸であるロジン、アルキルフェノー
ルとホルマリンの縮合体であるレゾール並びに多価アルコールを反応する事によって得ら
れ、必要に応じてマレイン酸等の第3成分が添加される事もある。ロジンとレゾールの配
合比率は樹脂の物性を制御する重要な要因の一つである。本発明に関するロジン変性フェ
ノール樹脂のロジンの配合比率は60重量%以上かつ70重量%以下が望ましく、好まし
くは62重量%以上かつ67重量%以下である。60重量%を下回る比率ではレゾールの
アルキル基が過多になる結果、樹脂の溶剤に対する溶解性が過剰になり目的であるインキ
の高粘度を達成するのが困難になり、70重量%を超える比率では、レゾールのアルキル
基が少なくなり、樹脂の溶剤に対する溶解性が悪すぎるので、インキから溶剤が分離する
虞が生じる。
【0033】
また、本発明に用いられる石油系溶剤は、芳香族炭化水素の含有量が1重量%以下の原油由来の溶剤(石油系溶剤)であり、沸点が260〜350℃、好ましくは280℃〜340℃の範囲にあるものがよい。石油系溶剤の沸点が260℃未満の場合には、印刷機上でのインキの溶剤蒸発が多くなり、インキの流動性の劣化により、インキがローラー、ブランケット、版等への転移性が悪くなり好ましくない。また、併用する石油系溶剤の沸点が350℃を越える場合には、インキの乾燥性が劣るため好ましくない。本発明に用いられる石油系溶剤は必要に応じて、インキ全量の5〜20重量%、好ましくは7〜18重量%含有するのが望ましい。
【0034】
さらに、石油系溶剤は、アニリン点75℃〜95℃が、適当である。アニリン点が75℃未満の場合には、樹脂を溶解させる能力が高すぎる為インキ粘度が低くなりすぎ、地汚れ耐性が充分でなくなる。またアニリン点が95℃を超える場合には、樹脂を溶解させる能力が低すぎる為、インキ粘度が高くなりすぎ、インキ流動性も乏しくなり、ローラー、版、ブランケットへのインキの堆積が起こりやすくなる為、好ましく無い。
【0035】
また、本発明に用いられる顔料としては、任意の無機及び有機顔料が使用できる。無機
顔料としては、黄鉛、亜鉛黄、紺青、硫酸バリウム、カドミウムレッド、酸化チタン、亜
鉛華、弁柄、アルミナホワイト、炭酸カルシウム、群青、カーボンブラック、グラファイ
ト、アルミニウム粉などがあげられ、有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、キ
ナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系などオフセットインキに用いられる顔
料が相当する。有機顔料に関しては、例えば、銅フタロシアニン系顔料(C.I.Pig
ment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、C.I.Pigment Green 7、36)、モノアゾ系顔料(C.I.Pigment Red 3、4、5、23、48:1、48:2、48:3、48:4、49:1、49:2、53:1、57:1)、ジスアゾ系顔料(C.I.Pigment Yellow12、13、14、17、83)、アントラキノン系顔料(C.I.Pigment Red 177)、キナクリドン系顔料(C.I.Pigment Red 122、C.I.PigmentViolet 19)、ジオキサジン系顔料(C.I.Pigment Violet 23)などがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
さらに、本発明のオフセットインキ組成物には、必要に応じて ゲル化剤、顔料分散剤、金属ドライヤー、乾燥抑制剤、酸化防止剤、耐摩擦向上剤、裏移り防止剤、非イオン系海面活性剤、多価アルコール等の添加剤を便宜使用することができる。
本発明において、ドライヤーとしては、酸化重合を促進する酸化重合触媒であり、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソペンタン酸、ヘキサン酸、2−エチル酪酸、ナフテン酸、オクチル酸、ノナン酸、デカン酸、2-エチルヘキサン酸、イソオクタン酸、イソノナン酸、ラウリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、ネオデカン酸、バーサチック酸、セカノイック酸、トール油脂肪酸、亜麻仁油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ジメチルヘキサノイック酸、3,5,5,−トリメチルヘキサノイック酸、ジメチルオクタノイック酸、などの有機カルボン酸の金属塩、例えばカルシウム、コバルト、鉛、鉄、マンガン、亜鉛、ジルコニウム、塩などの公知公用の化合物が使用可能であり、印刷インキ表面及び内部硬化を促進するために、これらの複数を適宜併用して使用することもできる。
【0037】
また、酸化防止剤としては、酸化重合反応に対して阻害効果を有する重合禁止剤であり、ハイドロキノン、2−メチルハイドロキノン、2−tert−ブチルハイドロキノン等に代表されるハイドロキノン誘導体、2,6−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン等に代表されるフェノール誘導体、アスコルビン酸、トコフェロール等に代表される抗酸化作用を有するビタミン化合物類などを示し、それらは任意に単独または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
また、補助剤としては、耐摩擦剤、ブロッキング防止剤、スベリ剤、顔料分散剤、カルナバワックス、木ろう、ラノリンワックス、モンタンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの天然ワックス、フィッシャートロプシュ合成ワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリテトラフロオロエチレンワックス、ポリアミドワックスなどの合成ワックス、シリコーン添加剤、レベリング剤などを適宜しようすることができる。
【0039】
オフセットインキ組成物において、各成分の割合は、顔料が5〜30重量%、バインダー樹脂が20〜50重量%、植物油類が20〜50重量%、石油系溶剤が0〜20重量%、ドライヤーが0〜3重量%、酸化防止剤が0〜4重量%、その他添加剤が0〜10重量%であり、総量が100重量%となることが好ましい。
【0040】
本発明のオフセットインキ組成物は、コーンプレート粘度計で25℃、シェアレート100/sにおける粘度が100.0Pa・s以下が好ましく、1.0Pa・s〜90.0Pa・sが更に好ましい。粘度が上記数値より大きくなると、流動性、転移性が低下するためローラーに供給されるインキの安定性が乏しくなり印刷作業性に障害が出てくると共に、紙に転写されたインキのレベリング性が低下するため光沢劣化等の品質障害が出る為好ましくない。また粘度と共にインキのタック値も上昇するため、紙剥け、紙離れ不良などが発生しやすくなり、紙粉がブランケットに堆積することによって転写不良など安定した印刷作業性が確保できない為好ましくない。
【0041】
本発明のオフセットインキ組成物は、平版印刷に用いられるが、その思想を逸脱しない範囲で、ロールコーター、ナイフコーターなどの塗工方法、またはグラビア印刷、凸版印刷、シルクスクリーン印刷などの印刷方法にも適用可能である。
【0042】
なお、本発明において、重量平均分子量は、東ソー(株)製ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(HLC−8020。以下GPCと称す。)で測定した。検量線は標準ポリスチレンサンプルにより作成した。溶離液はテトラヒドロフランを、カラムにはTSKgel SuperHM−M(東ソー(株)製)3本を用いた。測定は流速0.6ml/分、注入量10μl、カラム温度40℃で行った。
さらに、本発明において、特に断らない限り、「分子量」とは、重量平均分子量を示す。
【実施例】
【0043】
次に具体例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、本発明において「部」は「重量部」、「%」は「重量%」を表す。
【0044】
(フェノール樹脂製造例1)
撹拌機、冷却器、温度計をつけた4つ口フラスコにP−オクチルフェノール1000部、35%ホルマリン850部、93%水酸化ナトリウム60部、トルエン1000部を加えて、90℃で6時間反応させたる。その後6N塩酸125部、水道水1000部の塩酸溶液を添加し、撹拌、静置し、上層部を取り出し、不揮発分49%のレゾールタイプフェノール樹脂のトルエン溶液2000部を得て、これをレゾール液Yとした。
【0045】
(ロジン変性フェノール樹脂の製造例1)
撹拌機、水分分離器付き冷却器、温度計をつけた4つ口フラスコに、ガムロジン1000部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら200℃で溶解し、レゾール液Y1360部を添加し、トルエンを除去しながら230℃で4時間反応させた後、グリセリン100部を仕込み、250〜260℃で酸価25以下になるまでエステル化して、重量平均分子量28000、酸価21.7、軟化点170℃のロジン変性フェノール樹脂A(以下、樹脂Aと称す)を得た。
【0046】
(ロジン変性フェノール樹脂の製造例2)
撹拌機、水分分離器付き冷却器、温度計をつけた4つ口フラスコに、ガムロジン1000部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら200℃で溶解し、レゾール液Y1490部を添加し、トルエンを除去しながら230℃で4時間反応させた後、グリセリン115部を仕込み、250〜260℃で酸価25以下になるまでエステル化して、重量平均分子量60000、酸価19.5、軟化点180℃のロジン変性フェノール樹脂B(以下、樹脂Bと称す)を得た。
【0047】
(ロジン変性フェノール樹脂の製造例3)
撹拌機、水分分離器付き冷却器、温度計をつけた4つ口フラスコに、ガムロジン1000部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら200℃で溶解し、レゾール液Y1370部を添加し、トルエンを除去しながら230℃で4時間反応させた後、グリセリン130部を仕込み、250〜260℃で酸価25以下になるまでエステル化して、重量平均分子量140000、酸価18.5、軟化点190℃のロジン変性フェノール樹脂C(以下、樹脂Cと称す)を得た。
【0048】
(ワニス製造例1)
撹拌機、リービッヒ冷却管、温度計付4つ口フラスコに樹脂A(重量平均分子量28000、酸価21.7、軟化点170℃)43部、植物油D(一般式(1)で表される化合物の割合が98重量%、一般式(1)で表される化合物中の(R1+R2+R3)の全量に対して、炭素数16の飽和炭化水素基のモル比率が30〜50%であり、二重結合を2つ有する炭素数18の不飽和炭化水素のモル比率が5〜15%であり、さらに、二重結合を3つ有する炭素数18の不飽和炭化水素のモル比率が1.0%以下)56部、ALCH(川研ファインケミカル(株)製ゲル化剤)1部を仕込み、190℃に昇温、同温で1時間攪拌した後放冷してワニス1を得た。
【0049】
(ワニス製造例2〜213、比較例用ワニス製造例1〜7)
表1〜7の組成に基づいて、ワニス製造例1と同等のワニス製造方法により、ワニス2〜213を得た。また、表1〜7中のC14〜C18は、一般式(1)で表される化合物の含有割合を示す。また、C18:2は、一般式(1)で表される化合物中の(R1+R2+R3)の全量に対して二重結合を2つ有する炭素数18の不飽和炭化水素のモル比率を示し、C18:3は、二重結合を3つ有する炭素数18の不飽和炭化水素のモル比率を示す。
なお、表中、AFソルベント5号は、新日本石油(株)製である。

【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

【0054】
【表5】

【0055】
【表6】

【0056】
【表7】



【0057】
(ベースインキおよびインキの製造)
LIONOL BLUE FG7330(東洋インキ製造(株)製)を17部、ワニス1を70部、計87部を3本ロール上に仕込み、60℃の3本ロールで2回練肉したところ、顔料粒子は7.5μm以下に分散され、ベースインキ1を得た。
次いでベースインキ1に対して、AFソルベント5号6.3部、ワックスコンパウンド(東洋インキ製造(株)製 ニュー耐摩擦コンパウンド)5部、金属ドライヤー(東洋インキ製造(株)製MKドライヤー)1.5部、乾燥抑制剤(東洋インキ製造(株)製 乾燥抑制剤CP)0.2部を添加し、実施例1のインキを約100重量部得た。
【0058】
上記と同等のベースインキ作製方法にて、表8〜13に示す配合にてベースインキを作製し、同等に表に示すAFソルベント5号、植物油D、ワックスコンパウンド、金属ドライヤー、乾燥抑制剤を添加して実施例2〜213、比較例1〜7のインキを約100部得た。
【0059】
【表8】

【0060】
【表9】

【0061】
【表10】

【0062】
【表11】

【0063】
【表12】

【0064】
【表13】

【0065】
(評価結果)
上記実施例1〜213及び比較例1〜7の枚葉インキにおける、流動性、乾燥性、機上安定性、経時安定性について評価を実施し、結果をそれぞれ表8〜13に示した。
【0066】
<流動性の測定方法>
インキ2.1ccを半球状の容器にセットし、40℃で1時間間静置させた後、60°に傾けた傾斜板の上にインキを垂らし、10分間で流れた長さを測定し、以下の評価基準に基づいて評価を行った。
(評価基準)
◎:80mm以上
○:70mm以上、80mm未満
△:50mm以上、70mm未満
×:50mm未満
【0067】
<乾燥性の測定方法>
インキをRIテスター(株式会社明製作所製)にてコート紙に展色し、展色面に硫酸紙を重ね、朝陽乾燥試験機にて乾燥時間を測定した。乾燥時間は硫酸紙にインキが付着しなくなった時間とし、以下の評価基準に基づいて評価を行った。
(評価基準)
◎:6時間未満
○:6時間以上、8時間未満
△:8時間以上、10時間未満
×:10時間以上
【0068】
<機上安定性の測定方法>
インキを75μmのアプリケーターでガラス板上に展色したのち、40℃湿度52%の条件下で30分ごとに指触で乾燥時間を調査した。乾燥時間は指にインキが付着しなくなった時間とし、以下の評価基準に基づいて評価を行った。
(評価基準)
◎:12時間以上
○:10時間以上、12時間未満
△:6時間以上、10時間未満
×:6時間未満
【0069】
<経時安定性の測定方法>
HAAKE Rheostress600(Thermo ELECTRON CORPORATION社製)により、25℃、シェアレート117/sでのインキ粘度(Pa・s)を測定した。その後、密閉容器に入れて窒素パージし蓋を閉め、90℃のオーブンで1週間保管した。1週間後にオーブンから取り出し、再度インキ粘度を測定した。オーブン保管前後のインキ粘度差を求め、以下の評価基準に基づいて評価を行った。粘度変化量が少ない程、経時安定性に優れていることを示す。
(評価基準)
◎:10Pa・s未満
○:10Pa・s以上、15Pa・s未満
△:15Pa・s以上、20Pa・s未満
×:20Pa・s以上
【0070】
表8〜13の結果より、流動性、乾燥性、機上安定性、経時安定性の全てがバランス良く、優れているものは、実施例であることが分かった。
またリスロン426枚葉印刷機(株式会社小森コーポレーション製)を用いて以下の条件で実施例のオフセットインキ組成物の印刷テストを行った結果、問題なく印刷でき、良好な印刷物が得られた。
【0071】
(印刷条件)
版:平版用CTP版 HP−F(富士フィルムグラフィックシステムズ株式会社製)
湿し水:アクワユニティC 2.0%(東洋インキ製造株式会社製)
用紙:アート紙(三菱製紙社製)
印刷速度:8000枚/時

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂、顔料および溶剤成分として植物油類を含有するオフセット印刷インキ組成物において、
前記植物油類が、植物油類全体に対して50〜100重量%の一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする酸化重合型オフセットインキ組成物。

一般式(1)
【化1】

【請求項2】
一般式(1)で表される化合物のヨウ素価が30〜100(mg/100mg)であることを特徴とする請求項1記載の酸化重合型オフセットインキ組成物。
【請求項3】
一般式(2)〜(4)で表される化合物を一種類以上、さらに含有することを特徴とする請求項1または2に記載の酸化重合型オフセットインキ組成物。

一般式(2)
【化2】

R1−OCO−R4

一般式(3)
【化3】

R2−OCO−R4

一般式(4)
【化4】

R3−OCO−R4
(一般式(2)〜(4)において、R4は、炭素数1〜8の直鎖型飽和炭化水素基 または分岐型飽和炭化水素基を表す。)

【請求項4】
一般式(5)で表される化合物を、インキ全重量に対して、さらに0.01〜1.0重量%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の酸化重合型オフセットインキ組成物。

一般式(5)
【化5】

CH−OCOR1

CH−OH

CH−OH
(一般式(5)において、R1は、C14〜C18の飽和炭化水素基または三重結合を有さない不飽和炭化水素基を表す。)

【請求項5】
一般式(2)〜(5)で表される化合物が、一般式(1)で表される化合物と一般式(6)で表される化合物とをアルカリ触媒中で反応させてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の酸化重合型オフセットインキ組成物。

一般式(6)
【化6】

R4−OH
(一般式(6)において、R4は、炭素数1〜8の直鎖型飽和炭化水素基または分岐型飽和炭化水素基を表す。)

【請求項6】
バインダー樹脂が、
酸価5〜30(mgKOH/g)、
環球法による軟化点120〜300℃
および
重量平均分子量10000〜100000
であるロジン変性フェノール樹脂であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の酸化重合型オフセットインキ組成物。
【請求項7】
さらに、
アニリン点75〜95℃
および
沸点260〜350℃
である石油系溶剤
を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の酸化重合型オフセットインキ組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の酸化重合型オフセットインキ組成物を基材上に印刷してなる印刷物。

【公開番号】特開2011−144315(P2011−144315A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8117(P2010−8117)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】