説明

オプション用コネクタのワイヤハーネス搭載構造

【課題】ワイヤハーネスに搭載するオプション用コネクタを粘着テープを用いることなく安定保持でき、使い捨て状態としても異音発生の要因にならず、オプション部品側の相手方コネクタと嵌合される場合にはワイヤハーネスから簡単に取り出せるようにする。
【解決手段】互いに貼り合わせると融着する自己融着層を一面に設けたクッションシートを用い、該クッションシートの一端側に非折返部を残して折り返し、前記自己融着層を上下対向させた袋を設け、該袋内に前記コネクタを収容すると共に該コネクタの周囲の上下自己融着層を重ねて固着し、該コネクタに接続した電線端末を前記非折返部上に位置させ、前記コネクタが相手方コネクタに嵌合される場合は前記クッションシートを取り除く構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオプション用コネクタのワイヤハーネス搭載構造に関し、詳しくは、自動車等の車両に配索されるワイヤハーネスの電線端末に接続したオプション用コネクタをワイヤハーネスの外周面に搭載し、使い捨てとして搭載状態とする場合およびオプション部品側相手方コネクタと嵌合する場合のいずれにも好適に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等に配索されるワイヤハーネスには、オプション部品用のコネクタを端末に接続している電線が予め組み込まれ、このオプション用コネクタはワイヤハーネスの外周面に搭載され、オプション部品が搭載されない場合には使い捨て状態となってワイヤハーネスの外周面に残存される一方、オプション部品が搭載される場合には該オプション部品側の相手方コネクタと嵌合接続される。
【0003】
従来、図6(A)に示すように、オプション用のコネクタ100をワイヤハーネス101の外周面に搭載し、コネクタ100と接続する電線102を粘着テープ103でワイヤハーネス101に巻き付けて取り付けている。この場合、コネクタ100には粘着テープ103を巻き付けていないため、コネクタ100をワイヤハーネス101から離して相手方コネクタと嵌合する時にコネクタ100に付着する粘着テープを取り除く作業が不要となる利点がある。しかしながら、コネクタ100が使い捨てとされてワイヤハーネス101上に残る場合、コネクタ100が安定せずに周辺部材と接触し異音発生の要因になりやすい問題がある。
【0004】
前記図6(A)の問題を解消するため、図6(B)に示すように、コネクタ100とワイヤハーネス101とに粘着テープ103を巻き付けてコネクタ100をワイヤハーネス101上にしっかりと固定する場合もある。
しかしながら、前記のように、オプション部品の搭載時には、粘着テープ103を切断してコネクタ100とワイヤハーネス101との固着を解く必要がある。その際、コネクタ100の外周面に粘着テープ103が固着しているため、粘着テープ103の切り端を完全に取り除く細かい作業が必要となる。かつ、粘着テープ103を除去しても粘着剤がコネクタの外面に残存して相手方コネクタに内嵌する時に抵抗となって嵌合不良となる懸念もある。さらに、切断した粘着テープがワイヤハーネス101側の外周面に残り、完成車の見栄えが悪化したり、周辺の高温部品や可動部等に付着して基本性能を阻害する恐れもある。
【0005】
前記した問題を解消するため、本出願人は特開2000−4525号公報において、図7(A)(B)に示すように、粘着テープ103でコネクタ100の電線接続側と反対側をワイヤハーネス101の幹線と共に巻き付け、コネクタ100の使用時にはコネクタ100に接続した電線102を矢印方向に引っ張り、図7(B)に示すように、粘着テープ103の巻付部分からコネクタ100を引き抜き、粘着テープ103の巻付部分をワイヤハーネス101の幹線側に残すようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−4525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記図7に示す特許文献1のコネクタの固定構造とした場合、粘着テープ103の巻付力(テンション)の影響が強く、コネクタ100を巻付部分から引き抜く力が安定せず、強い力で引っ張ると、電線102の端末の端子がコネクタ100の係止部から外れて電線102のみが引き出されたり、前記端子に変形が発生する恐れもあり、コネクタ引き抜き作業が困難となる。かつ、、前記のように、粘着テープ103の一面に塗布された粘着剤がコネクタ100の外面に残存し、相手方コネクタに内嵌して嵌合する時に抵抗となり半嵌合状態になる恐れもある。よって、該特許文献1のコネクタの固定構造を改良する余地がある。一方、弱い力で巻き付けておくと、コネクタ100が粘着テープ103でワイヤハーネスに安定して固定されない。よって、コネクタ100が使い捨て状態となってワイヤハーネス101の外周面に保持される場合、走行振動等でコネクタ100が粘着テープ103の巻付部分から抜け出て異音発生の要因となる恐れがある。
【0008】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、ワイヤハーネスの外周面に搭載されるオプション用のコネクタが、粘着テープでワイヤハーネスと固着しなくとも、ワイヤハーネス外周面に安定保持されて使い捨て状態で異音発生の要因にならず、一方、オプション部品側の相手方コネクタと嵌合される場合にはワイヤハーネスから簡単に取り出されるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、車両に配索されるワイヤハーネスから引き出される電線端末に接続されるオプション用のコネクタを前記ワイヤハーネスの外周面に搭載しており、
互いに貼り合わせると融着する自己融着層を一面に設けたクッションシートを用い、該クッションシートの一端側に非折返部を残して折り返し、前記自己融着層を上下対向させた袋を設け、該袋内に前記コネクタを収容すると共に該コネクタの周囲の上下自己融着層を重ねて固着し、該コネクタに接続した電線端末を前記非折返部上に位置させ、
前記コネクタが相手方コネクタに嵌合される場合は前記クッションシートを取り除く構成としているオプション用コネクタのワイヤハーネス搭載構造を提供している。
【0010】
前記自己融着層を一面に設けたクッションシートは、例えば、発泡ウレタンシート、ブチルゴムシート、あるいは不織布シートからなるクッション性を有する基材の一面に、粘着材を使用しない自己融着材を積層一体化したもの、または厚肉のブチルゴムシートの一面に自己融着層を一体的に設けたものからなる。該自己融着材としては、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム等からなる自己融着材等が挙げられる。
【0011】
前記自己融着層は互いに重ねた状態では強固に固着されるが、他者に対しては粘着しない機能を有す。よって、コネクタを収容した袋の周縁およびコネクタの回りの袋の上下面の自己融着層は互いに重ねるだけで固着でき、コネクタを袋内に移動不可に収容保持して、保護することができる。該コネクタが相手方コネクタと嵌合される迄または使い捨てとなりワイヤハーネスの外面に搭載を続けるいずれの状態においても、クッションシートでコネクタを覆っているため、周辺の部材との干渉からコネクタを保護できる。さらに、使い捨てでワイヤハーネスに搭載しておく場合も、振動や周辺部材との干渉で発生する音をクッションシートで吸収し、異音発生の低減、防止できる。
【0012】
一方、袋内に収容するコネクタの外面に袋内面の自己融着層が接するが、自己融着層は粘着剤を使用していないため、コネクタ外面に粘着剤が固着しない。よって、コネクタをオプション部品側の相手方コネクタと嵌合接続するために袋から取り出す場合、自己融着層を重ねて固着している袋を切断するだけ、またはコネクタに接続した電線を引っ張るだけで、コネクタを袋から簡単に取り出すことができる。かつ、取り出されたコネクタの外面に粘着剤が残存しないため、相手方コネクタに内嵌する時に抵抗とならず嵌合精度を高めることができる。さらに、該コネクタに接続した電線、該コネクタを搭載するワイヤハーネスの外面にも、クッションシートを除去後に粘着剤が残存しない。
【0013】
前記クッションシートの自己融着層側に前記電線端末のコネクタを乗せた状態で前記折り返しで袋が形成され、該袋のコネクタの周囲の上下自己融着層が重ねられて固着している。
クッションシートにコネクタ収容用の袋を予め形成しておき、該袋にコネクタを挿入すると作業性が良くなるが、袋の上下内面を自己融着層としているため、コネクタ挿入前に上下内面が不用意に接触して固着される恐れがある。よって、前記のように、コネクタを展開状態のクッションシート上に乗せてから一端側を折り返して袋を形成し、袋の上下内面を互いに重ねあわせている。該作業が簡単であるため作業能率を低下させる要因にはならない。
【0014】
前記コネクタを収容したクッションシートと、該クッションシートを搭載するワイヤハーネスの幹線の外周を粘着テープで巻き付けてもよい。
【0015】
該構成とすると、オプション部品が車両に搭載されず、前記コネクタが使い捨てコネクタとなってワイヤハーネス上に搭載された状態となる場合に、粘着テープでクッションシートと共にコネクタを移動不可に安定保持することができる。
一方、オプション部品が搭載され、前記コネクタを相手方コネクタと嵌合するためにクッションシートの袋から取り出す場合、切除するクッションシートに粘着テープが粘着して取り除かれ、コネクタに残存することは無い。
【発明の効果】
【0016】
前記のように、本発明のオプション用のコネクタのワイヤハーネス搭載構造では、自己融着層を備えたクッションシートに設ける袋内にコネクタを収容する構成としているため、コネクタの外面に被覆するシートが固着しないと共に粘着剤も残存せず、クッションシートを取り除いてコネクタを相手方コネクタと嵌合する作業が容易にできる。また、オプション部品が搭載されずオプション用のコネクタが使い捨てとなってワイヤハーネス上に搭載され続ける場合にも、クッションシートの袋内でコネクタの周縁の上下自己融着層を重ねて固着することでコネクタを袋内に移動不可に保持できる。かつ、周辺の部材にクッションシートが接触して、コネクタを保護できると共に異音発生を防止できる。このクッションシートの保護機能は、ワイヤハーネス製造時から自動車組立ラインに搬送し、組立ラインで自動車に組みつける期間に発生する周辺部材からの保護と、完成車における走行振動等により発生する周辺部材との干渉に対する保護の両方で機能する。さらに、完成車において走行振動によりコネクタが振動するのもクッションシートで低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】(A)はコネクタをクッションシートで外装している状態の斜視図、(B)は(A)のB部分の拡大図、(C)は(A)のC−C線断面図である。
【図3】(A)(B)はワイヤハーネス上へのコネクタ搭載工程を示す図面である。
【図4】(A)(B)はクッションシートの袋内のコネクタの収容状態を示す図面である。
【図5】第2実施形態の斜視図である。
【図6】(A)(B)は従来例を示す斜視図である。
【図7】(A)(B)は他の従来例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図4に本発明の第1実施形態を示す。
自動車に配索するワイヤハーネス1には多数の電線2を結束した幹線3から、オプション用のコネクタ5を端末に接続した枝線4が分岐して引き出され、該コネクタ5は自己融着型のクッションシート10を用いてワイヤハーネス1の幹線3の外周面に搭載されている。
【0019】
前記クッションシート10は、本実施形態では、図2(B)に示すように、発泡ウレタンシートを基材とした基層11の表面にエチレンプロピレンゴムシートからなる自己融着材を自己融着層12として積層一体化した構成からなる。
【0020】
前記クッションシート10は、図3(A)に示すように展開状態で長方形状とし、自己融着層12を上面側とした状態で、枝線4の端末のコネクタ5をクッションシート10の上面に乗せ、図3(B)に示すように、枝線4の搭載側の長さ方向の一端側に非折返部10aを残して残部10bを2点鎖線10Lを屈折線として2つ折りで折り返してコネクタ5に被せ、該コネクタ5を収容する袋15を設けている。図2(C)に示すように、袋15の上下内面に配置される自己融着層12aと12bを、その周縁およびコネクタ5の周囲で重ね合わせて固着している。
【0021】
クッションシート10の大きさは、図3(B)に示すように、形成する袋15の長さLおよび幅Wが前記コネクタ5を内部に収容できる大きさとなるように、コネクタ5の大きさに合わせて、クッションシート材から切り出している。
なお、クッションシート10に設ける袋15の大きさはコネクタ5の外形に厳密に対応させる必要はなく、例えば大と小の2種類または大、中、小の3種類程度の袋15を有するクッションシート10を用意しておけばよい。これは、図4(A)(B)に示すように、袋15内にコネクタ5を挿入した状態で、コネクタ5を囲む周囲の上下の自己融着層12aと12bを重ねて固着する部分Sを自由に調節するだけで、コネクタ5を袋15内で移動不可に保持できることによる。よって、クッションシート10の無駄を無くすことができる。
【0022】
前記のように、ワイヤハーネス1の組付完成状態で、コネクタ5をクッションシート10の袋15内に収容保持して、ワイヤハーネス1の幹線3の外周面に搭載している。この状態としたコネクタ5はクッションシート10の袋15内に移動不可に保持される。よって、自動車組立ラインに搬送して自動車に組みつけるまでの期間に周辺部材からコネクタ5を保護することができる。
【0023】
自動車にワイヤハーネスがを配索した後に、オプション部品が自動車に搭載されて、コネクタ5がオプション部品側の相手方コネクタと嵌合される時、クッションシート10の袋15を切除またはコネクタ5に接続した枝線4を引っ張って袋15の挿入側の固着部を引き裂いて、袋15からコネクタ5を簡単に引き出すことができる。
【0024】
袋15から引き出されたコネクタ5の外面には、クッションシート10の自己融着層12は融着していない。よって、粘着テープを巻き付けた場合に生じる粘着剤の残渣もなく、相手方コネクタとの嵌合に支障を生じない。また、クッションシート10の非折返部10aの自己融着層12上に配置していた枝線4の外面にも自己融着層12は融着せず、さらに、クッションシート10はワイヤハーネスの幹線3の外周面に搭載しているだけで粘着テープ等で固着していないため、クッションシート10自体もワイヤハーネス1から簡単かつ確実に除去することができる。
【0025】
一方、オプション部品が搭載されず、コネクタ5が使い捨てされる場合は、クッションシート10の袋15内にコネクタ5を収容した状態でワイヤハーネスの幹線3に搭載されたままとなる。この場合も、袋15は上下内面の自己融着層12aと12bを貼り合わせて固着しているため、コネクタ5が袋15から飛び出すことはなく安定保持される。さらに、車両内で周辺部品が干渉する場合、クッションシート10が接触し衝突音の発生を防止でき、かつ、コネクタ5の振動による振動音をクッションシート10が吸収し異音の発生も低減防止できる。
【0026】
図5に第2実施形態を示す。
第2実施形態では、オプション部品が車両に搭載されず、オプション用のコネクタ5が使い捨てとなることが決定している場合、クッションシート10の袋15内にコネクタ5を収容した状態で、該袋15の外周面からワイヤハーネス1の幹線3の外周面にかけて粘着テープ20を巻き付けている。
【0027】
なお、図5に示すように粘着テープ20でクッションシート10を幹線3と巻き付けた状態としていた場合にも、後からオプション部品が搭載され、クッションシート10の袋15内のコネクタ5を取り出す必要が発生する場合がある。この場合もオプション部品が搭載されるまで、粘着テープを巻き付けることによりクッションシートの上からコネクタを押さえて、そのコネクタの取り付け位置や取り付け方向等のバラツキを小さくでき、コネクタを安定保持できる。かつ、オプション部品とコネクタ5とを接続する時に粘着テープ20を切断するだけで、クッションシート10をワイヤハーネス幹線3から離脱できる。離脱したクッションシート10の袋15を切除してコネクタ5を取り出すことができ、かつ、粘着テープ20はコネクタ5に残らない。
【符号の説明】
【0028】
1 ワイヤハーネス
3 幹線
4 枝線
5 オプション用のコネクタ
10 クッションシート
10a 非折返部
11 基層
12、12a、12b 自己融着層
15 袋
20 粘着テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に配索されるワイヤハーネスから引き出される電線端末に接続されるオプション用のコネクタを前記ワイヤハーネスの外周面に搭載しており、
互いに貼り合わせると融着する自己融着層を一面に設けたクッションシートを用い、該クッションシートの一端側に非折返部を残して折り返し、前記自己融着層を上下対向させた袋を設け、該袋内に前記コネクタを収容すると共に該コネクタの周囲の上下自己融着層を重ねて固着し、該コネクタに接続した電線端末を前記非折返部上に位置させ、
前記コネクタが相手方コネクタに嵌合される場合は前記クッションシートを取り除く構成としているオプション用コネクタのワイヤハーネス搭載構造。
【請求項2】
前記クッションシートの自己融着層側に前記電線端末のコネクタを乗せた状態で前記折り返しで袋が形成され、該袋のコネクタの周囲の上下自己融着層が重ねられて固着されている請求項1に記載のオプション用コネクタのワイヤハーネス搭載構造。
【請求項3】
前記コネクタを袋内に収容したクッションシートと、該クッションシートを搭載するワイヤハーネスの幹線の外周を粘着テープで巻き付けている請求項1または請求項2に記載のオプション用コネクタのワイヤハーネス搭載構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−9464(P2013−9464A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138845(P2011−138845)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】