説明

オプティカル・コヒーレンス・トモグラフィー装置及び断層像の撮影方法

【課題】 僅かな数の光検出器を備えただけで、断層像の高速撮影を可能とするOCT装置を提供すること。
【解決手段】 所定の波長帯域を有する広帯域光パルスを広帯域光パルス生成ユニットと、前記広帯域光パルスを分波して、波長帯域が前記所定の波長帯域より狭い複数の狭帯域光パルスを発生し、夫々の前記狭帯域光パルスを異なる時間遅延させた後合波して、中心波長の異なる複数の光パルスからなる光パルス列を生成する光パルス分波遅延合波ユニットとを有すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オプティカル・コヒーレンス・トモグラフィー装置及び断層像の撮影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オプティカル・コヒーレンス・トモグラフィー(Optical Coherence Tomography; OCT)は、光の干渉現象を利用した断層撮影技術であり、網膜の断層撮影等に応用されている。
【0003】
近年、OCTの撮影速度は飛躍的に向上しており、特に、最近開発された、広帯域光を干渉させた後分光する方法によれば、3次元断層像の動画を撮影することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2008/090599
【特許文献2】特開2005−156540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この方法を実施するには、数百個の光検出器が必要であり、断層撮影装置が大型且つ複雑になる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、僅かな数の光検出器を備えただけで、断層像の高速撮影を可能とするOCT装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の観点によれば、所定の波長帯域を有する広帯域光パルスを広帯域光パルス生成ユニットと、前記広帯域光パルスを分波して、波長帯域が前記所定の波長帯域より狭い複数の狭帯域光パルスを発生し、夫々の前記狭帯域光パルスを異なる時間遅延させた後合波して、中心波長の異なる複数の光パルスからなる光パルス列を生成する光パルス分波遅延合波ユニットと、前記光パルス列を、測定光パルス列と参照光パルス列に分岐する光分岐器と前記測定光パルス列を測定対象に照射し、且つ前記測定光パルス列が前記測定対象により後方散乱されて発生した後方散乱光パルス列を補足する光パル照射/補足ユニットと、前記参照光パルス列と前記後方散乱光パルス列を結合して、結合光パルス列を形成する光結合器と、前記結合光パルス列の各光パルスの光強度を測定する光パルス強度測定ユニットと、前記結合光パルス列の各光パルスの波数により、前記強度に対応する測定データをフーリエ変換し、フーリエ変換した前記測定データに基づいて、前記測定対象の断層像を導出する断層像導出ユニットを有するOCT装置が提供される。
【0008】
本発明の第2の観点によれば、中心波長の異なる複数の光パルスからなる光パルス列を分岐して測定光パルス列を形成した後、前記測定光パルス列を測定対象に照射して、前記測定対象の断層像を導出するオプティカル・コヒーレンス・トモグラフィー装置に用いられる光源であって、所定の波長帯域を有する広帯域光パルスを生成する広帯域光パルス生成ユニットと、前記広帯域光パルスを分波して、波長帯域が前記所定の波長帯域より狭い複数の狭帯域光パルスを発生し、夫々の前記狭帯域光パルスを異なる時間遅延させた後合波して、前記光パルス列を生成する光パルス分波遅延合波ユニットとを有するオプティカル・コヒーレンス・トモグラフィー装置用光源が提供される。
【0009】
本発明の第3の観点によれば、所定の波長帯域を有する広帯域光パルスを生成する広帯域光パルス生成ステップと、前記広帯域光パルスを分波して、波長帯域が前記所定の波長帯域より狭い複数の狭帯域光パルスを発生し、夫々の前記狭帯域光パルスを異なる時間遅延させた後合波して、中心波長の異なる複数の光パルスからなる光パルス列を生成する光パルス分波遅延合波ステップと、前記光パルス列を、測定光パルス列と参照光パルス列に分岐する光分岐ステップと、前記測定光パルス列を測定対象に照射し、前記測定光パルス列が前記測定対象により後方散乱されて発生した後方散乱光パルス列を補足する光パルス照射/補足ステップと、前記参照光パルス列と前記後方散乱光パルス列を結合して、結合光パルス列を形成する光結合ステップと、前記結合光パルス列の各光パルスの光強度を測定する光強度測定ステップと、前記結合光パルス列の各光パルスの波数により、測定した前記光強度に対応する測定データをフーリエ変換し、フーリエ変換した前記測定データ及び前記照射位置に基づいて、前記測定対象の断層像を導出する断層像導出ステップとを有する断層像の撮影方法が提供される。
【0010】
本発明の第4の観点によれば、中心波長の異なる複数の光パルスからなる光パルス列を分岐して測定光パルス列を形成した後、前記測定光パルス列を測定対象に照射して、前記測定対象の断層像を導出する断層像の撮影方法に用いられる前記光パルス列の生成方法であって、所定の波長帯域を有する広帯域光パルスを生成する広帯域光パルス生成ステップと、前記広帯域光パルスを分波して、波長帯域が前記所定の波長帯域より狭い複数の狭帯域光パルスを発生し、夫々の前記狭帯域光パルスを異なる時間遅延させた後合波して、前記光パルス列を生成する光パルス分波遅延合波ステップとを有する断層像撮影用の光パルス列の生成方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、僅かな数の光検出器を備えるだけで、断層像の高速撮影を可能とするOCT装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態のOCT装置の構成図である。
【図2】広帯域光パルスの光強度の時間変化を説明する図である。
【図3】光パルス幅Δtに対応する期間内における、広帯域光パルスの瞬間光スペクトルを説明する図である。
【図4】広帯域光パルスの時間分解光スペクトルである。
【図5】実施の形態の光遅延器の構成を説明する概略図である。
【図6】狭帯域光パルス列の時間分解スペクトルである。
【図7】実施の形態のOCT用光源の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。尚、図面が異なっても対応する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0014】
(1)構 成
(i)広帯域光パルス生成ユニット
図1は、本実施の形態のOCT装置2の構成図である。尚、以後特に説明しないが、下記光学装置は、夫々、実線で示す光ファイバーにより光学的に接続されている。
【0015】
図1に示すように、本OCT装置2は、後述する断層像導出ユニット60が発生するトリガに応答して、広帯域光パルス(Broad Band Optical Pulse)5を繰り返し生成する広帯域光パルス生成ユニット4を有している。広帯域光パルス生成ユニット4は、例えば、SLD6(Super Luminescent Diode; SLD)と、このSLD6に電圧パルスを印加して駆動する電圧パルス発生機8(Pulse Generator; PG)8を有している。
【0016】
図2は、広帯域光パルス5の光強度(光パワー)の時間変化を説明する図である。横軸は、時間である。縦軸は、光強度(光強度の瞬間値、以下同様)である。
【0017】
図2に示すように、広帯域光パルス生成ユニット4は、広帯域光パルス5を繰り返し生成する。広帯域光パルス5の時間間隔Tは、例えば、128ns〜5120nsである。また、広帯域光パルス5の持続時間の半値全幅(光強度が、その最大値Pmaxの1/2以上になる時間)、すなわち光パルス幅Δtは、例えば、0.5ns〜5nsである。
【0018】
図3は、光パルス幅Δtに対応する期間(以下、光パルス持続期間と呼ぶ)内における、広帯域光パルス5の瞬間光スペクトル(一の時刻における光スペクトル)を説明する図である。横軸は、波長である。縦軸は、光パワー密度(単位波長当たり光強度)である。
【0019】
図3に示した波長範囲wrは、広帯域光パルス5の光パワー密度が、その最大値の1/2以上になる波長範囲(以下、光パルス波長範囲と呼ぶ)を示している。この光パルス波長範囲wrは、光パルス持続期間内で一定であることが好ましいが、一般的には時間と共に僅かに変化する。本実施の形態では、光パルス持続期間内の全時刻における各光パルス波長範囲wrに共通する波長範囲(すなわち、光パルスの波長帯域)が、所定の波長範囲(例えば、1525nm〜1575nm)になるように、SLD6及びその駆動条件が選択されている。
【0020】
図4は、広帯域光パルス5の時間分解光スペクトル16である。図4に示すように、時間分解光スペクトル16は、時間に対応する時間軸10と、波長に対応する波長軸12と、光パワー密度(単位波長当たり光強度)に対応する光パワー密度軸14を有している。
【0021】
図4に示すように、本実施の形態の広帯域光パルス5は、所定の光パルス幅Δt(例えば、0.5ns〜5.0ns)を有し、略一定の時間間隔T(例えば、128ns〜5120ns)で繰り返し生成される。また、広帯域光パルス5は、十分に広い所定の波長帯域WR(例えば、1525nm〜1575nm)を有している。
【0022】
(ii)光パルス分波遅延合波ユニット
また、本OCT装置2は、広帯域光パルス生成ユニット4が生成した広帯域光パルス5から、中心波長の異なる光パルスからなる光パルス列を、生成する光パルス分波遅延合波ユニット18を有している。
【0023】
本実施の形態の光パルス分波遅延合波ユニット18は、図1に示すように、SLD6により生成され光入射口24に入射した広帯域光パルス5を、光入出射口26から出射させる第1の光サーキュレータ27を有している。ここで、光入射口24は、第1の光サーキュレータ27に属する。
【0024】
また、本光パルス分波遅延合波ユニット18は、第1のサーキュレータ27の光入出射口26から出射し、広帯域光入出射口28に入射した広帯域光パルス5を分波して、複数の狭帯域(narrow band)光パルスを生成し、生成した狭帯域光パルスの夫々を対応する狭帯域光入出射口30から出射する光合分波器32を有している。本実施の形態の光合分波器32は、図1に示すように、アレイ光導波グレーティング(Arrayed Waveguide Grating; AWG)である。このAWGのチャネル数は、例えば256〜1024である。ここで、広帯域光入出射口28及び狭帯域光入出射口30は、光合分波器32に属する。
【0025】
また、光パルス分波遅延合波ユニット18は、光合分波器32の狭帯域光入出射口30から出射した夫々の狭帯域光パルスを、夫々異なる時間遅延させた後、狭帯域光入出射口30に入射させる複数の光遅延器34を有している。
【0026】
図5は、本実施の形態の光遅延器34の構成を説明する概略図である。本実施の形態の光遅延器34は、図5に示すように、例えば金の蒸着膜からなる反射鏡35が一端に形成された光ファイバー36である。そして、光ファイバー36の他端は、AWG32の狭帯域光入出射口30に接続されている。ここで、光ファイバー36の長さは、短いものから順番に、所定の長さ(例えば、略7.5cm〜75cm)の1倍、2倍、3倍・・・である。尚、光ファイバー36の長さ15cmは、1nsの遅延時間に相当する。
【0027】
遅延された狭帯域光パルス22が入射した光合分波器32は、この狭帯域光パルスを合波して光パルス列(以下、狭帯域光パルス列と呼ぶ)を生成し、生成した狭帯域光パルス列を広帯域光入出射口28から出射させる。
【0028】
次に、広帯域光入出射口28から出射した狭帯域光パルス列20が、第1の光サーキュレータ27の光入出射口26に入射し、第1の光サーキュレータ27の光出射口37から出射する。
【0029】
図6は、狭帯域光パルス列20の時間分解光スペクトルである。図6に示すように、本実施の形態の狭帯域光パルス列20の各狭帯域光パルス22は、略一定の光パルス幅Δtnb(例えば、0.5ns〜5.0ns)と、略一定の波長帯域WRnb(例えば、0.05〜0.20nm)を有している。
【0030】
上述したように、狭帯域光パルス22は、広帯域光パルス5を、AWG32により分波して形成する。従って、狭帯域光パルス22の光パルス幅Δtnbは、広帯域光パルス5の光パルス幅Δtと略同じ所定の値である。また、狭帯域光パルス22の光パルス波長帯域WRnbは、AWG32のチャネル幅と略同じ所定の値である。
【0031】
AWC32により形成された各狭帯域光パルス22は、AWG32の狭帯域光入出射口30を略同時に出射し、夫々、光遅延器34により異なる時間D1,D2,D3・・・遅延される。その後、各狭帯域光パルス22は、AWG32の各狭帯域光入出射口30に入射した後合波されて、図6に示すような狭帯域光パルス列20になる。ここで、各狭帯域光パルス22の遅延時間D1,D2,D3・・・は、各狭帯域光パルス22を重ならせない時間(正確には、各狭帯域光パルス22の光パルス持続期間を重ならせない遅延時間)であることが好ましい。すなわち、各狭帯域光パルス22の間隔(=D2−D1,D3−D2・・・)が、狭帯域光パルス22の光パルス幅Δtnb以上であることが好ましい。尚、図6には光パルスが5つだけ示されているが、通常、狭帯域光パルス列20の光パルス数は数百に及ぶ。
【0032】
以上のようにして、光パルス分波遅延合波ユニット18は、波長帯域が広帯域光パルスの波長帯域(所定の波長帯域)より狭い複数の狭帯域光パルス22を発生し、夫々の狭帯域光パルス22を異なる時間遅延させた後合波することにより、中心波長の異なる複数の光パルスからなる光パルス列20を生成する。
【0033】
(iii)光分岐器
また、本OCT装置2は、狭帯域光パルス列20を、測定光パルス列38と参照光パルス列40に分岐する光分岐器(optical splitter)42を有している。ここで、光分岐器42は、例えば方向性結合器である。この光分岐器42の分岐比は、例えば90%(測定光パルス列側)及び10%(参照光パルス列側)である。
【0034】
(iv)光照射/補足ユニット
また、本OCT装置2は、測定光パルス列38が測定対象46により後方散乱されて発生した後方散乱光パルス列48を補足する光照射/補足ユニット50を有している。測定対象46は、例えば、網膜、前眼部、内蔵の内壁等である。
【0035】
ここで、光照射/補足ユニット50は、図1に示すように、光分岐器42により分岐されその光入射口24aに入射した測定光パルス列38を、光入出射口26aから出射させる第2の光サーキュレータ27aを有している。
【0036】
また、光照射/補足ユニット50は、第2のサーキュレータ27aの光入出射口26aから出射した測定光パルス列38を平行光線56に変換するコリメータレンズ52を有している。また、光照射/補足ユニット50は、この平行光線56(測定光パルス列)を偏向するガルバノミラー54と、偏向した平行光線56を集光して測定対象46に照射するフォーカシングレンズ58を有している。ここで、ガルバノミラー54は、後述する断層像導出ユニット60のコンピュータ62の命令に応答して、SLD6が広帯域光パルス5を繰り返し生成する各時点の直前に、集光された平行光線56(測定光パルス列)の照射位置を測定対象46上の直線に沿って移動させる装置である。
【0037】
測定対象46に照射された測定光パルス列は、測定対象46に照射され、その一部が後方散乱されて、後方散乱光パルス列48になる。この後方散乱光パルス列48は、フォーカシングレンズ58に入射し、その後測定光パルス列が進んで来た光路を逆行して、第2の光サーキュレータ27aの光入出射口26aに入射し、第2の光サーキュレータ27aの光出射口37aから出射する。
【0038】
以上のようにして、本照射/補足ユニット50は、測定光パルス列38を測定対象46に照射し、測定光パルス列38が測定対象46により後方散乱されて発生した後方散乱光パルス列48を補足する装置であって、広帯域光パルス5を繰り返し生成する各時点の前に、測定光パルス列の照射位置を移動させる。
【0039】
(v)光遅延ユニット
また、本OCT装置2は、参照光パルス列40の光路の光学長を調整する光遅延ユニット64を有している。
【0040】
図1に示すように、光遅延ユニット64は、光分岐器42に分岐されその光入射口24bに入射した参照光パルス列40を、光入出射口26bから出射させる第3の光サーキュレータ27bを有している。また、光遅延ユニット64は、第3のサーキュレータ27bの光入出射口26bから出射した参照光パルス列を平行光線56bに変換するコリメータレンズ52bを有している。また、光遅延ユニット64は、この平行光線(参照光パルス列)56bを集光して参照ミラー66に照射するフォーカシングレンズ58bを有している。ここで、参照ミラー66は、参照光パルス列の進行方向に移動可能である。
【0041】
参照ミラー66に照射された参照光パルス列は、参照ミラー66により反射され、進行方向を反転させ、フォーカシングレンズ58bに入射する。その後、参照光パルス列は、進行して来た光路を逆行して、第3の光サーキュレータ27bの光入出射口26bに入射し、第3の光サーキュレータ27bの光出射口37bから出射する。
【0042】
ここで、参照ミラー66は、平行光56bの進行方向に移動して、参照光パルス列40の光路(以下、参照光路と呼ぶ)の光学長を、所望の長さに調整する機能を有している。本実施の形態では、参照光パルス列40の光路の光学長が、測定光パルス列38の光路と後方散乱光パルス列48の光路を合わせた光路(以下、測定光路)の光学長に略等しくなるように、参照ミラー66の位置を調整する。
【0043】
(vi)光結合器
また、本OCT装置2は、参照光パルス列40と後方散乱光パルス列48を結合して、結合光パルス列68a,68bを形成する光結合器(optical coupler)70を有している。ここで、光結合器70は、例えば方向性結合器であり、その分岐比は、50%対50%ある。
【0044】
この光結合器70は、その第1の出射口から第1の結合光パルス列68aを出射し、第2の出射口からは第2の結合光パルス列68bを出射する。この第1の結合光パルス列68a及び第2の結合光パルス列68bは、共に、参照光パルス列40と後方散乱光パルス列48の干渉光である。但し、第1の結合光パルス列68a及び第2の結合光パルス列68bでは、波長に対して周期的に変化する各光パルスの光強度の位相がπずれている。
【0045】
すなわち、参照光パルス列40及び後方散乱光パルス列48の各光パルスの強度が一定で、且つその中心波長の大きさの順に各光パルスが光結合器70に到達する場合、第1の結合光パルス列68a及び第2の結合光パルス列68bの各光パルスの強度は、夫々、発生順番を変数とする三角関数になる。そして、この三角関数の位相は、第1の結合光パルス列68aと第2の結合光パルス列68bの間で、πずれている。
【0046】
尚、光分岐器42、光照射/補足ユニット50、光遅延ユニット64、光結合器70、及びこれらの光学装置を接続する光ファイバーは、マッツエンダー干渉計を形成している。そして、上述したように参照光路と測定光路が略等しいので、同じ狭帯域光パルス22に由来する、参照光パルス列の光パルスと後方散乱光パルス列の光パルスが、光結合器70で重ね合わされて干渉する。
【0047】
(vii)光パルス強度測定ユニット
また、本OCT装置2は、結合光パルス列68a,68bの各光パルスの光強度を測定する光パルス強度測定ユニット72を有している。本実施の形態の光パルス強度測定ユニット72は、第1の光検出器74a(例えば、pinフォトダイオード)と、第2の光検出器74b(例えば、pinフォトダイオード)と、これら光検出器74a,74bに接続された差動増幅器76を有している。
【0048】
ここで、第1の光検出器74aは、第1の結合光パルス列68aの光強度を検出し、その出力信号を差動増幅器76のプラス側の入力端子に供給する。一方、第2の光検出器74bは、第2の結合光パルス列68bの光強度を検出し、その出力信号を差動増幅器76のマイナス側の入力端子に供給する。
【0049】
上述したように、結合光パルス列68a,68bの各光パルスの位相はπずれている。従って、差動増幅器76は、各光パルスに含まれている直流成分を除去し振動成分だけを増幅して、下記高速アナログデジタル変換ユニット78に光パルス強度信号94を送信する。尚、上記振動成分は、第1の結合光パルス列68aの光パルスと、第2の結合光パルス列68bの光パルスが干渉して生じる干渉信号である。
【0050】
(viii)断層像導出ユニット
また、本OCT装置2は、結合光パルス列の各光パルスの光強度及び測定光パルス列の照射位置44に基づいて、測定対象46の断層像を導出する断層像導出ユニット60を有している。
【0051】
断層像導出ユニット60は、光パルス強度測定ユニット72の出力信号(以下、光パルス強度信号94と呼ぶ)をアナログデジタル変換(以下、AD変換と呼ぶ)して記録する高速アナログデジタル変換ユニット78(以下、高速AD変換ユニットと呼ぶ)を有している。
【0052】
ここで、高速AD変換ユニット78は、光パルス強度測定ユニット72の出力をAD変換するアナログデジタル変換機(Analog Digital Convertor; 以下、AD変換機と呼ぶ)80と、AD変換機80が変換したデジタル信号を記録するメモリユニット82(例えば、Random Access Memory)を有している。
【0053】
また、断層像導出ユニット60は、電圧パルス発生機8、ガルバノミラー54、及び高速AD変換ユニット78等の動作を制御し、且つ高速AD変換ユニット78が変換したデジタル信号を処理して、測定対象46の断層像を導出するコンピュータ62を有している。
【0054】
このコンピュータ62は、CPU(Central Processing Unit)84と、主記憶装置(例えば、Random Access Memory)86と、OCT装置2の制御プログラムが記録された補助記憶装置88(磁気ディスク等)を有している。
【0055】
コンピュータ62に上記機能を実現させるためには、コンピュータ62を起動し、補助記憶装置88から主記憶装置86に制御プログラムをロードする。その後、CPU84が主記憶装置86中の制御プログラムの指令に応答することにより(すなわち、主記憶装置86内の制御プログラムを実行することで)、他の装置(高速AD変換ユニット78等)を制御し且つ断層像を導出する演算制御装置になる。
【0056】
以上の構成により、断層像導出ユニット78は、結合光パルス列68a,68bの各光パルスの波数により、光パルスの光強度に対応する測定データをフーリエ変換し、フーリエ変換した測定データ及び測定光パルス列38の照射位置44に基づいて、測定対象46の断層像を導出する(下記「(2)動 作」を参照)。
【0057】
(2)動 作
次に、本OCT装置2の動作を説明する。
【0058】
―電子装置の動作―
まず、本OCT装置2を形成する各電子装置の動作を説明する。
【0059】
断層像導出ユニット60のCPU84は、主記憶装置86中の制御プログラムの指令を受け、光照射/補足ユニット50のガルバノミラー54の駆動装置(図示せず)に命令96を送信して、測定光パルス列38の照射位置44を、測定対象上の所望の位置に設定する。
【0060】
次に、CPU84は、主記憶装置86中の制御プログラムの指令を受け、電圧パルス発生機8にトリガ90を送信する。電圧パルス発生機8は、このトリガ90に応答して、トリガ92を高速AD変換ユニット78に送信すると共に、一つの電圧パルスをSLD6に印加する。電圧パルスが印加されたSLD6は、広帯域光パルス5を生成する。
【0061】
一方、高速AD変換ユニット78のAD変換機80は、このトリガ92に応答して、光パルス強度測定ユニット72が出力する光パルス強度信号94のAD変換を開始する。以上により、結合光パルス列68a,68bの最初の光パルスに対応する光パルス強度信号94に同期して、AD変換が開始する。
【0062】
本実施の形態では、このAD変換の周期は、結合光パルス列68a,68bの各光パルスの時間間隔に略一致するように設定されている。また、AD変換機80は、少なくても結合光パルス列68a,68bの光パルスの数と同じ回数、上記AD変換を繰返す。
【0063】
以上の手順により、AD変換機80は、結合光パルス列68a,68bの各光パルスに同期して、光パルス強度信号94をAD変換する。そして、高速AD変換ユニット78は、AD変換した光パルス強度信号94を、メモリユニット82に逐次記録する。
【0064】
上記一連の動作の終了後、CPU84は、主記憶装置86中の制御プログラムの指令を受け、ガルバノミラー54の駆動装置(図示せず)へ命令96を送信する。この命令96に応答して、上記駆動装置は、ガルバノミラー54の姿勢を制御して、測定光パルス列38の照射位置44を、測定対象上の直線に沿って僅かに移動させる。
【0065】
次に、CPU84は、主記憶装置86中の制御プログラムの指令を受け、電圧パルス発生機8へトリガ90を再度送信する。電圧パルス発生機8は、このトリガ90に応答して、再びトリガ92を高速AD変換ユニット78に送信すると共に、電圧パルスをSLD6に印加する。電圧パルスが印加されたSLD6は、広帯域光パルス5を再度生成する。また、高速アナログデジタル変換機78は、トリガ92に応答してAD変換を再開始し、デジタル化した光パルス強度信号94を、メモリユニット82に逐次記録する。
【0066】
本OCT装置2の電子機器は、以上のような、照射位置44の移動、広帯域光パルス5の生成、光パルス強度信号94のAD変換及び記録を、測定対象上の直線に沿って、例えば、数十〜数千回繰り返す。
【0067】
次に、CPU84は、主記憶装置86中の制御プログラムの指令を受け、メモリユニット82内の測定データ(デジタル化した光パルス強度信号)を一括して受信し、主記憶装置86に記録する。
【0068】
次に、CPU84は、主記憶装置86中の制御プログラムの指令を受け、主記憶装置86に記録した測定データを読み出し、受信した上記測定データを結合光パルス列の各光パルスの中心波数によりフーリエ変換する。尚、光パルスの中心波数とは、光パルスの波長帯域の中心波長に対応する波数(=2π/波長)である。
【0069】
次に、コンピュータ62は、主記憶装置86中の制御プログラムの指令を受け、フーリエ変換した上記測定データの絶対値の二乗と測定光パルス列の照射位置に基づいて、測定対象46の断層像を導出する。尚、この演算処理は、特許文献1等に開示されている断層像の導出処理と略同じである。
【0070】
ところで、狭帯域光パルス22のパルス幅Δtは、例えば0.5ns〜5nsである。また、狭帯域光パルス列20に含まれる狭帯域光パルス22の数は、例えば256〜1012個である。従って、一つの照射位置44に測定光パルス列38を照射するために要する時間は、128ns〜5μsである。
【0071】
2次元断層像を形成するには、少なくても100程度の照射位置44に、測定光パルス列を照射することが好ましい。このような測定光パルス列の照射に要する時間は、
12μs(=128ns×100点)〜5ms(=5μs×100点)である。すなわち、本OCT装置2によれば、極めて短い時間で2次元断層像の導出に用いるデータを得ることができる。このような高速測定にも拘わらず、本OCT装置2が備えている光検出器は僅か2つである。このように、本実施の形態によれば、僅かな数の光検出器を備えたOCT装置により、断層像の高速撮影が可能になる。
【0072】
尚、本実施の形態では、第1の結合光パルス列68aの光パルス強度(光パルスの光強度)と第2の結合光パルス列68bの光パルス強度を差動増幅し、差動増幅した光パルス強度をフーリエ変換している。しかし、第1の結合光パルス列68aの光パルス強度(又は、第2の結合光パルス列68bの光パルス強度)だけを一つの光検出器で測定しその後増幅して、測定及び増幅した光パルス強度を直接フーリエ変換してもよい。また、フーリエ変換に用いる、結合光パルス列の各光パルスの波数は、必ずしも中心波数でなくてもよい。但し、フーリエ変換に用いる波数としては、各光パルスの波長帯域WRnb内の波長に対応する波数が好ましい。
【0073】
―光学装置の動作―
次に、本OCT装置2を形成する各光学装置の動作を説明する。
【0074】
まず、広帯域光パルス生成ユニット4のSLD6が、CPU62が送信するトリガ90に応答して、所定の波長帯域を有する広帯域光パルス5を生成する。
【0075】
SLD6により生成され広帯域光パルス5は、第1の光サーキュレータ27の光入射口24に入射し、その光入出射口26から出射する。
【0076】
次に、光入出射口26から出射した広帯域光パルス5は、光合分波器(AWG)32の広帯域光入出射口28に入射し、複数の狭帯域光パルス22に分波されて、対応する狭帯域光入出射口30から夫々出射する。
【0077】
夫々の狭帯域光パルス22は、出射した狭帯域光入出射口30に接続された光遅延器(光ファイバー)34に入射する。光遅延器34に入射した狭帯域光パルス22は、光遅延器34の終端に形成された反射鏡35により反射されて、狭帯域光入出射口30から光合分波器(AWG)32に入射する。この時、各光遅延器(光ファイバー)34の光学長が異なるので、狭帯域光パルス22は夫々異なる時間遅延された後、光合分波器(AWG)32に入射する。
【0078】
光合分波器(AWG)32に入射した狭帯域光パルス22は合波され、狭帯域光パルス列20になり、広帯域光入出射口28から出射する。その後、狭帯域光パルス列は、第1の光サーキュレータ27の光入出射口26に入射し、その後第1の光サーキュレータ27の光出射口37から出射する。
【0079】
次に、狭帯域光パルス列20は光分岐器42に入射し、測定光パルス列38と参照光パルス列40に分岐される。
【0080】
測定光パルス列38は、光照射/補足ユニット50の第2の光サーキュレータ27aの光入射口24aに入射し、その光入出射口26aから出射する。次に、測定光パルス列38は、コリメータレンズ52に入射し、平行光線56に変換される。
【0081】
この平行光線56(測定光パルス列38)は、ガルバノミラー54により偏向される。その後、平行光線56はフォーカシングレンズ58により集光されて、測定対象46に照射される。
【0082】
測定対象46に照射された測定光パルス列38の一部は、測定対象46の内部で後方散乱されて、後方散乱光パルス列48になる。この後方散乱光パルス列48は、フォーカシングレンズ58に入射し、その後測定光パルス列38が進行して来た光路を逆行して、第2の光サーキュレータ27aの光入出射口26aに入射した後、第2の光サーキュレータ27aの光出射口37aから出射する。
【0083】
一方、参照光パルス列40は、光遅延ユニット64の第3の光サーキュレータ27bの光入射口24bに入射し、その後光入出射口26bから出射する。次に、参照光パルス列40は、コリメータレンズ52bに入射し、平行光線56bに変換される。この平行光線56b(参照光パルス列40)は、フォーカシングレンズ58bにより集光されて、参照ミラー66に照射される。
【0084】
参照ミラー66に照射された参照光パルス列40は、参照ミラー66により反射され、進行方向を反転された後、フォーカシングレンズ58bに入射する。その後、参照光パルス列40は、進行して来た光路を逆行して、第3の光サーキュレータ27bの光入出射口26bに入射し、第3の光サーキュレータ27bの光出射口37bから出射する。ここで、参照ミラー66の位置は、測定光パルス列38の光路長と後方散乱光パルス列48の光路長の和が、参照光パルス列40の光路長に略等しくなるように調整されている。
【0085】
その後、測定光パルス列38と参照光パルス列40は、夫々、光結合器70の第1の光入射口及び第2の光入射口に入射する。その後、測定光パルス列38と参照光パルス列40は、光結合器70により結合された後、光結合器70の第1の光出射口及び第2の光出射口から出射する。ここで、光結合器70の第1の光出射口からは、第1の結合光パルス列68aが出射する。一方、光結合器70の第2の光出射口からは、第1の結合光パルス列68aと位相がπ異なる第2の結合光パルス列68bが出射する。
【0086】
次に、第1の結合光パルス列68a及び第2の結合光パルス列68bは、夫々、光パルス強度測定ユニット72の第1の光検出器74a及び第2の光検出器74bに入射する。光検出器74a,74bは、夫々、結合光パルス列68a,68bの各光パルスの光強度に対応する光強度信号94を生成し、AD変換80に送信する。その後の信号処理は、上述した通りである。
【0087】
(3)断層像の撮影方法
次に、本実施の形態の断層像の撮影方法を説明する。最初に、本実施の形態の断層撮影方法で繰り返される干渉データ取得工程を説明する。
【0088】
まず、所定の波長帯域を有する広帯域光パルス5を生成する(図1参照)。
【0089】
次に、この広帯域光パルス5を分波して、波長帯域が上記所定の波長帯域より狭い複数の狭帯域光パルスを発生し、夫々の上記狭帯域光パルスを異なる時間遅延させた後合波して、中心波長の異なる複数の光パルスからなる狭帯域光パルス列20を生成する。
【0090】
次に、狭帯域光パルス列22を、測定光パルス列38と参照光パルス列40に分岐する。その後、測定光パルス列38を測定対象46に照射し、且つ測定光パルス列38が測定対象46により後方散乱されて発生した後方散乱光パルス列48を補足する。
【0091】
次に、上記参照光パルス列40と上記後方散乱光パルス列48を結合して、結合光パルス列68a,68bを形成する。
【0092】
次に、結合光パルス列68a,68bの各光パルスの光強度を測定する。ここで、光パルスの強度測定は、上記「(2)動 作」で説明したように、2つの光検出器により行うことができる。以上により、干渉データ取得工程が終了する。
【0093】
本実施の形態では、測定光パルス列の照射位置44を測定対上の直線に沿って僅かに移動させた後に、上記干渉データ取得工程を実施する工程を、繰り返し実施する。
【0094】
その後、結合光パルス列68a,68bの各光パルスの波数により、結合光パルス列68a,68bの光強度に対応する測定データ(デジタル化した光パルス強度信号94)をフーリエ変換し、フーリエ変換した上記測定データ及び照射位置44に基づいて、測定対象46の断層像を導出する。その後、導出した断層像を、コンピュータ62の出力装置(例えば、表示装置)に出力する。
【0095】
以上の説明から明らかように、本断層層の撮影方法に用いる光検出器は僅か1つ又は2つである。従って、本断層層の撮影方法よれば、僅かな数の光検出器により、断層像の高速撮影が可能になる。
【0096】
(4)OCT用光源および光パルス列の生成方法
図7は、本実施の形態のOCT用光源100の構成を説明する図である。以上の例では、図1に示すように、広帯域光パルス生成ユニット4と光パルス分波遅延合波ユニット18が、光分岐器42等の他の部分(以下、OCT本体部分と呼ぶ)と一体化している。しかし、図7に示しように、広帯域光パルス生成ユニット4と光パルス分波遅延合波ユニット18をOCT本体部分から分離して、これらのユニットからなるOCT用光源100を形成してもよい。
【0097】
本OCT用光源100は、図7に示すように、上述した広帯域光パルス生成ユニット4と光パルス分波遅延合波ユニット18を有している。更に、本OCT用光源100は、第1の光サーキュレータ27の光出射口37から出射する狭帯域光パルス列20が、入射する光コネクタ102を有している。また、本OCT用光源100は、電圧パルス発生機8に供給する第1のトリガ90が入力する第1の電気コネクタ104と、第1のトリガ90に応答して電圧パルス発生機8が生成する第2のトリガ92を出力する第2の電気コネクタ106を有している。
【0098】
以上の構成により、本実施の形態のOCT用光源100は、第1の電気コネクタ104に入力した第1のトリガ90に応答して、断層像撮影用の光パルス列(狭帯域光パルス列20)を生成する。この断層像撮影用の光パルス列は、光コネクタ102に光学的に接続される光ファイバを通して、OCT本体部の光分岐器42に供給される。また、第1のトリガ90は、第1の電気コネクタ104に電気的に接続される電気ケーブを通して、OCT本体部の断層像導出ユニット60から供給される。また、第2のトリガ92は、第2の電気コネクタ106に電気的に接続される電気ケーブを通して、OCT本体部の断層像導出ユニット60に供給される。
【0099】
ここで、本OCT用光源100の動作は、上記OCT装置2における広帯域光パルス生成ユニット4の動作及び光パルス分波遅延合波ユニット18の動作からなる。また、本OCT用光源100において実施される断層像撮影用光パルス列の生成方法は、「(3)断層像の撮影方法」で説明した、広帯域光パルス5を生成するステップと狭帯域光パルス列20を生成するステップからなる。従って、これらの詳しい説明は省略する。
【0100】
本OCT光源によれば、OCT本体部に接続するOCT用光源100の仕様を替えることにより、OCT装置の性能を変えることができる。例えば、SLD6の波長帯域やAWG32のチャネル数が異なるOCT用光源100を用いることにより、断層像の分解能や測定範囲を変えることができる。
【0101】
以上の実施の形態では、光パルス分波遅延合波ユニット18は、光サーキュレータ27と、AWG32と、光ファイバー遅延器34により形成されている。しかし、他の光学部材、例えば、光サーキュレータと、回折格子と、反射鏡により、光パルス分波遅延合波ユニットを形成してもよい。
【0102】
また、以上の例では、光分岐器として、方向性結合器が用いられている。しかし、他の光学部材、例えば、Y分岐導波路や多モード干渉導波路(Multi Mode Interference)を、光分岐器として用いてもよい。
【0103】
また、以上の例では、ガルバノミラーにより、測定光パルス列を走査している。しかし、測定光パルス列の走査は、他の光偏向ユニット、例えばポリゴンスキャナーにより実行してもよい。また、ポリゴンスキャナーとガルバノミラーを組み合わせて使用することにより、測定光パルス列の高速2次元走査が可能になる。これにより、3次元断層像の高速撮影が可能になる。
【0104】
また、以上の例では、広帯域光パルスを繰り返し生成し、測定光パルス列の照射位置44を移動させることにより、2次元断層像導出のためのデータを取得している。しかし、広帯域光パルスを1回だけ生成し、測定光パルス列を測定対象上の一点に照射して得たデータにより、1次元断層像を撮影してもよい。この場合には、広帯域光パルスの生成は繰り返されない。また、広帯域光パルスの生成に合わせて行われる、測定光パルス列の照射位置44の移動は行われない。
【0105】
また、以上の例では、広帯域光パルス生成ユニット4を、SLD6と電圧パルス発生機8により形成している。しかし、他の構成、モードロックレーザと電圧パルス発生機8により、広帯域光パルス生成ユニット4を形成してもよい。
【符号の説明】
【0106】
2・・・OCT装置
4・・・広帯域光パルス生成ユニット
5・・・広帯域光パルス
18・・・遅延合波ユニット
22・・・狭帯域光パルス
32・・・光合分波器
34・・・光遅延器
38・・・測定光パルス列
40・・・参照光パルス列
42・・・光分岐器
48・・・後方散乱光パルス列
50・・・光照射/補足ユニット
60・・・断層像導出ユニット
64・・・光遅延ユニット
68a,68b・・・結合光パルス列
70・・・光結合器
72・・・光パルス強度測定ユニット
78・・・高速アナログデジタル変換ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の波長帯域を有する広帯域光パルスを生成する広帯域光パルス生成ユニットと、
前記広帯域光パルスを分波して、波長帯域が前記所定の波長帯域より狭い複数の狭帯域光パルスを発生し、夫々の前記狭帯域光パルスを異なる時間遅延させた後合波して、中心波長の異なる複数の光パルスからなる光パルス列を生成する光パルス分波遅延合波ユニットと、
前記光パルス列を、測定光パルス列と参照光パルス列に分岐する光分岐器と、
前記測定光パルス列を測定対象に照射し、且つ前記測定光パルス列が前記測定対象により後方散乱されて発生した後方散乱光パルス列を補足する光パルス照射/補足ユニットと、
前記参照光パルス列と前記後方散乱光パルス列を結合して、結合光パルス列を形成する光結合器と、
前記結合光パルス列の各光パルスの光強度を測定する光パルス強度測定ユニットと、
前記結合光パルス列の各光パルスの波数により、前記光強度に対応する測定データをフーリエ変換し、フーリエ変換した前記測定データに基づいて、前記測定対象の断層像を導出する断層像導出ユニットを有する、
オプティカル・コヒーレンス・トモグラフィー装置。
【請求項2】
請求項1に記載のオプティカル・コヒーレンス・トモグラフィー装置において、
前記光パルス分波遅延合波ユニットが、
光入射口に入射した前記広帯域光パルスを、光入出射口から出射する光サーキュレータと、
前記光入出射口から出射し広帯域光入出射口に入射した前記広帯域光パルスを分波して、複数の前記狭帯域光パルスを生成し、生成した前記狭帯域光パルスの夫々を対応する狭帯域光入出射口から出射する光合分波器と、
前記狭帯域光入出射口から出射した夫々の前記狭帯域光パルスを、夫々異なる時間遅延させた後、前記狭帯域光入出射口に入射させる複数の光遅延器とを有し、
前記光合分波器が、前記狭帯域光入出射口から入射した前記狭帯域光パルスを合波して前記光パルス列を生成し、生成した前記光パルス列を前記広帯域光入出射口から出射させ、
前記広帯域光入出射口から出射した前記光パルス列が、前記光入出射口に入射し、前記光サーキュレータの出射口から出射することを、
特徴とするオプティカル・コヒーレンス・トモグラフィー装置。
【請求項3】
請求項2に記載のオプティカル・コヒーレンス・トモグラフィー装置において、
前記光合分波器が、アレイ光導波グレーティングであり、
前記光遅延器が、前記アレイ導波路グレーティングの狭帯域光入出射口に一端が接続され、他端に反射鏡が形成された光ファイバーであることを、
特徴とするオプティカル・コヒーレンス・トモグラフィー装置。
【請求項4】
中心波長の異なる複数の光パルスからなる光パルス列を分岐して測定光パルス列を形成した後、前記測定光パルス列を測定対象に照射して、前記測定対象の断層像を導出するオプティカル・コヒーレンス・トモグラフィー装置に用いられる光源であって、
所定の波長帯域を有する広帯域光パルスを生成する広帯域光パルス生成ユニットと、
前記広帯域光パルスを分波して、波長帯域が前記所定の波長帯域より狭い複数の狭帯域光パルスを発生し、夫々の前記狭帯域光パルスを異なる時間遅延させた後合波して、前記光パルス列を生成する光パルス分波遅延合波ユニットとを有する、
オプティカル・コヒーレンス・トモグラフィー装置用光源。
【請求項5】
所定の波長帯域を有する広帯域光パルスを生成する広帯域光パルス生成ステップと、
前記広帯域光パルスを分波して、波長帯域が前記所定の波長帯域より狭い複数の狭帯域光パルスを発生し、夫々の前記狭帯域光パルスを異なる時間遅延させた後合波して、中心波長の異なる複数の光パルスからなる光パルス列を生成する光パルス分波遅延合波ステップと、
前記光パルス列を、測定光パルス列と参照光パルス列に分岐する光分岐ステップと、
前記測定光パルス列を測定対象に照射し、前記測定光パルス列が前記測定対象により後方散乱されて発生した後方散乱光パルス列を補足する光パルス照射/補足ステップと、
前記参照光パルス列と前記後方散乱光パルス列を結合して、結合光パルス列を形成する光結合ステップと、
前記結合光パルス列の各光パルスの光強度を測定する光強度測定ステップと、
前記結合光パルス列の各光パルスの波数により、測定した前記光強度に対応する測定データをフーリエ変換し、フーリエ変換した前記測定データ及び前記照射位置に基づいて、前記測定対象の断層像を導出する断層像導出ステップとを有する、
断層像の撮影方法。
【請求項6】
中心波長の異なる複数の光パルスからなる光パルス列を分岐して測定光パルス列を形成した後、前記測定光パルス列を測定対象に照射して、前記測定対象の断層像を導出する断層像の撮影方法に用いられる前記光パルス列の生成方法であって、
所定の波長帯域を有する広帯域光パルスを生成する広帯域光パルス生成ステップと、
前記広帯域光パルスを分波して、波長帯域が前記所定の波長帯域より狭い複数の狭帯域光パルスを発生し、夫々の前記狭帯域光パルスを異なる時間遅延させた後合波して、前記光パルス列を生成する光パルス分波遅延合波ステップとを、
有する断層像撮影用の光パルス列の生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−117789(P2011−117789A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274256(P2009−274256)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(598041566)学校法人北里研究所 (180)
【Fターム(参考)】