説明

オルガノシリコーンレジンエマルジョン組成物及び該組成物の被膜が形成された物品

【課題】 環境上の問題がなく、耐水性及び耐候性が良好で、安定性の良好なオルガノシリコーンレジンエマルジョン組成物、及びこの被膜を有する物品を提供する。
【解決手段】 (A)組成式:[RSiO3/2m[R2SiO]n(Rは同一又は異種の炭素数1〜20の1価有機基、mは0.2〜1.0、nは0〜0.8)で示されるオルガノシリコーンレジン:100質量部、
(B)SP値が8.0〜11.0である水混和性有機溶剤:2〜50質量部、
(C)乳化剤:1〜50質量部、
(D)水:25〜2,000質量部
を含有してなり、(B)成分以外の有機溶剤を実質的に含有しないことを特徴とするオルガノシリコーンレジンエマルジョン組成物、及び基材表面にこの組成物の被膜が形成された物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物、建材等の外装用塗料等として好適に用いられるシリコーンレジンのエマルジョン組成物及びその被膜を有する物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境汚染及び安全な作業環境確保の観点から、塗料あるいはコーティング剤分野において、有機溶剤から水系へと分散媒の変更が求められている。この要求に基づき、アクリル樹脂に代表されるラジカル重合性ビニルモノマーを乳化重合したエマルジョン系塗料が、優れた被膜形成性及び耐薬品性の良さからコーティング剤の基本材料として幅広く採用されている。しかしながら、この種の塗料は本質的に耐水性及び耐候性に劣るといった欠点を有している。
【0003】
一方、シラン化合物を加水分解、縮合して得られるシリコーンレジンは、高硬度で耐候性、耐水性、耐熱性、撥水性に優れた被膜を形成する能力があるため、コーティング剤として注目されている。しかしながら、シリコーンレジンをモノマーからエマルジョン中で重合する乳化重合法は製造方法が確立されていない。このため、トルエンやキシレンといった有機溶剤系で製造されたシリコーンレジン溶液をそのまま乳化する方法が一般的である。
【0004】
しかしながら、このような有機溶剤含有シリコーンレジンエマルジョンは安定性が劣るといった問題があった。更に、トルエンやキシレンといった有機溶剤は環境問題から使用を抑制する必要がある。
【0005】
なお、本発明に関連する公知文献としては、下記のものがある。
【特許文献1】特開平6−172649号公報
【特許文献2】特開平7−247434号公報
【特許文献3】特開平7−316432号公報
【特許文献4】特開2000−63756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、環境上の問題がなく、耐水性及び耐候性が良好で、安定性の良好なオルガノシリコーンレジンエマルジョン組成物、及び該組成物の被膜を有する物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、(A)組成式:[RSiO3/2m[R2SiO]n(ここで、Rは同一又は異種の炭素数1〜20の1価有機基であり、mは0.2〜1.0、nは0〜0.8である。)で示されるオルガノシリコーンレジン:100質量部、(B)SP値が8.0〜11.0である水混和性有機溶剤:2〜50質量部、(C)乳化剤:1〜50質量部及び(D)水:25〜2,000質量部を含有してなり、(B)成分以外の有機溶剤を実質的に含有しないオルガノシリコーンレジンエマルジョン組成物が、環境上の問題がなく、安定性が良好なものであり、この組成物の被膜を有する物品は、耐水性及び耐候性が良好であることを見出し、本発明をなすに至った。
【0008】
従って、本発明は、
(A)組成式:[RSiO3/2m[R2SiO]n(ここで、Rは同一又は異種の炭素数1〜20の1価有機基であり、mは0.2〜1.0、nは0〜0.8である。)で示されるオルガノシリコーンレジン:100質量部、
(B)SP値が8.0〜11.0である水混和性有機溶剤:2〜50質量部、
(C)乳化剤:1〜50質量部、
(D)水:25〜2,000質量部
を含有してなり、(B)成分以外の有機溶剤を実質的に含有しないことを特徴とするオルガノシリコーンレジンエマルジョン組成物、及びこのオルガノシリコーンレジンエマルジョン組成物の被膜が形成された物品を提供する。
【0009】
なお、本発明において、「(B)成分以外の有機溶剤を実質的に含有しない」とは、(B)成分以外の有機溶剤を全く含まない場合はもちろんのこと、実質的に(B)成分以外の有機溶剤を含有しない場合、すなわち、安定性に影響がなく、環境上問題のない程度の微量の(B)成分以外の有機溶剤が含まれる場合をも包含するものである。具体的には、全有機溶剤中に(B)成分以外の有機溶剤が、3質量%以下、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下程度含まれていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐候性の良好な高硬度被膜を有するシリコーンレジンの安定なエマルジョンを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のオルガノシリコーンレジンエマルジョン組成物は、
(A)組成式:[RSiO3/2m[R2SiO]nで示されるオルガノシリコーンレジン、
(B)SP値が8.0〜11.0である水混和性有機溶剤、
(C)乳化剤、
(D)水
を含有してなり、(B)成分以外の有機溶剤を実質的に含有しないものである。
【0012】
(A)成分であるオルガノシリコーンレジンは、組成式:[RSiO3/2m[R2SiO]n(ここで、Rは同一又は異種の炭素数1〜20の1価有機基であり、mは0.2〜1.0、nは0〜0.8である。)で示されるものである。
【0013】
ここで、Rは同一又は異種の炭素数1〜20の1価有機基であり、具体的には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどのアルキル基、フェニル、トリル、ナフチルなどのアリール基、ビニル、アリルなどのアルケニル基、あるいはこれらの有機基構造中の水素原子の一部をハロゲン原子や、アミノ、アクリロキシ、メタクリロキシ、エポキシ、メルカプト、カルボキシル等の極性基含有の有機基で置換したものなどが挙げられる。本発明においては、Rの30モル%以上がメチル基、10モル%以上がフェニル基であることが望ましい。
【0014】
シリコーンレジン中の[RSiO3/2]単位のモル比率(m)は0.2〜1.0であり、好ましくは0.3〜1.0であり、より好ましくは0.4〜1.0である。0.2より小さい場合には被膜硬度が軟らかくなり、耐久性が低下してしまう。
また、シリコーンレジン中の[R2SiO]単位のモル比率(n)は0〜0.8であり、好ましくは0〜0.7であり、より好ましくは0〜0.6である。0.8より大きい場合には被膜硬度が軟らかくなり、耐久性が低下してしまう。
【0015】
このようなオルガノシリコーンレジンは、公知の方法で製造することが可能である。例えば、該当する単位のクロロシランやアルコキシシランを加水分解、縮合反応することにより得ることができる。なお、これらオルガノシリコーンレジンは、[RSiO3/2]単位の含有率が高い場合には固体状であること、あるいは縮合反応性が高い場合にはゲル化しやすいことから、通常はトルエンやキシレンといった有機溶剤に希釈された状態で取り扱われるが、本発明においては、このような有機溶剤を(B)成分である水混和性有機溶剤溶液に置き換えて使用するか、オルガノシリコーンレジン製造時の溶剤として使用する必要がある。
また、本発明の(A)成分中に硬化性を損なわない範囲で[R3SiO1/2]単位(Rは上記の通り)及び/又は[SiO2]単位を微量含んでも構わない。この場合、m+nは0.8〜1.0、特に0.9〜1.0であることが好ましく、m+n=1.0でない場合、残部は[R3SiO1/2]、[SiO2]単位であり、それらの総計が1.0となるものである。
【0016】
(B)成分であるSP値が8.0〜11.0である水混和性有機溶剤は、(A)成分であるオルガノシリコーンレジンを乳化する際に流動性を持たせるために使用されるものであり、SP値(溶解度パラメーター)が8.0〜11.0であり、水混和性である必要がある。
【0017】
SP値が8.0より小さい場合にはオルガノシリコーンレジンを均一溶解することができず、11.0より大きい場合には乳化した際のエマルジョンの安定性が低下してしまうことから、8.0〜11.0である必要がある。好ましくは8.5〜10.5である。
【0018】
また、この有機溶剤は水混和性である必要があり、水混和性がない場合には乳化した際のエマルジョンの安定性が低下してしまう。水混和性としては20℃における水100gへの溶解度が1g以上のものであり、好ましくは3g以上である。
【0019】
このような水混和性有機溶剤としては、アルコール系化合物、ケトン系化合物、エステル系化合物、エーテル系化合物などがあるが、これらの中でもアルキレンオキシド単位を有する化合物が好ましい。具体的には、セロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルメチルカルビトール、カルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトール、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸カルビトール、酢酸ブチルカルビトールなどが示される。中でも通常塗料の造膜助剤として用いられるブチルセロソルブ、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が好ましい。
【0020】
(B)成分の添加量としては、(A)成分100質量部に対して2〜50質量部であるが、2質量部より少ないとオルガノシリコーンレジン溶液の粘度が高く、エマルジョン化が困難であり、50質量部より多くても特性上問題はないが、使用時における環境への揮散を考慮すると多すぎることは好ましくない。好ましくは3〜40質量部であり、より好ましくは5〜30質量部である。
【0021】
なお、上記水混和性有機溶剤により希釈されたオルガノシリコーンレジン溶液の粘度は、25℃において500〜100,000mPa・s、特に1,000〜50,000mPa・sであることが好ましい。なお、粘度は回転粘度計により測定することができる。
【0022】
(C)成分である乳化剤は、オルガノシリコーンレジンの水混和性有機溶剤溶液を水中へ乳化分散させるためのものであれば特に制限はないが、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等のアニオン系界面活性剤、第4級アンモニウム塩、アルキルアミン酢酸塩等のカチオン系界面活性剤、アルキルベタイン、アルキルイミダゾリン等の両性界面活性剤等を挙げることができる。
【0023】
中でも安定性の面から、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルのようなノニオン系界面活性剤が好ましい。
【0024】
これらの具体例としては、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンプロピレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンプロピレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルなどが挙げられる。これらの乳化剤を単独あるいは2種以上を併用して使用することができる。
【0025】
(C)成分の添加量としては、(A)成分100質量部に対して1〜50質量部である必要があるが、1質量部より少ないとエマルジョン化が困難であり、50質量部より多いと被膜の硬度や透明性、基材との密着性が低下してしまう。好ましくは2〜30質量部、より好ましくは3〜20質量部である。
【0026】
本発明のオルガノシリコーンレジンエマルジョン組成物は、(D)成分として水が配合され、上述したオルガノシリコーンレジンの水混和性有機溶剤溶液と乳化剤と水とを混合し、常法に準じて乳化分散させることにより調製することができる。
【0027】
この場合、(D)成分の水の含有量は、(A)成分100質量部に対して25〜2,000質量部であり、50〜1,000質量部であることが好ましい。
【0028】
また、得られたエマルジョン組成物の不揮発分(固形分)は、5〜80質量%、特に10〜70質量%であることが好ましい。
【0029】
更に、得られたエマルジョンの平均粒径は、50〜1,000nm、特に100〜800nmであることが好ましい。なお、本発明において、平均粒径はコールター社製、粒度分布測定装置N4Plusにより測定することができる。
【0030】
本発明のオルガノシリコーンレジンエマルジョン組成物は、オルガノシリコーンレジン中に残存するヒドロキシル基やアルコキシ基が水及び(B)成分の溶剤を除去する際の加熱により架橋硬化可能であるが、硬化速度を加速する、あるいはより低温での硬化を可能にする目的で必要に応じて縮合触媒を使用時に添加してもよい。縮合触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ナトリウムメチラート、カリウムメチラート、n−ヘキシルアミン、トリブチルアミンなどが挙げられる。これら縮合触媒の添加量は、(A)成分100質量部に対して0.01〜5質量部、特に0.1〜3質量部であることが好ましい。
【0031】
また、本発明においては、上記オルガノシリコーンレジンエマルジョン組成物と、アクリル樹脂エマルジョンやウレタン樹脂エマルジョン等とを併用することも可能である。この場合、混合物中に上記オルガノシリコーンレジンエマルジョン組成物中の(A)成分が10〜90質量%の割合となるように配合することが好ましい。
【0032】
本発明のオルガノシリコーンレジンエマルジョン組成物は、金属、セラミック系無機材料、ガラス、木材、紙製品、プラスチック等の透明又は不透明な基材表面に塗布し、室温あるいは加熱するなどして硬化させることにより硬化保護被膜を形成することができる。この硬化保護被膜は、高硬度で可撓性に富み、接着性、耐候性も良好であり、更に撥水性も付与することができるので、金属、セラミック、木材等の外装建材の下地処理剤、トップコート剤等の塗料、プレコートメタル等の金属表面の保護コート剤、電子写真用キャリアの帯電調節コート剤、あるいは接着剤等に適している。
【0033】
基材が金属の場合、鉄、ステンレス製建築構造材やアルミサッシ建材等の表面保護あるいは防食処理コーティング等の下地処理、自動車あるいは電化製品用の電着塗装用コーティング、又は電子写真用キャリアに使用される磁性粉の表面保護コーティングに好適に使用することができる。
【0034】
基材がプラスチックの場合、プラスチック板、磁気あるいは感熱性記録用フィルム、包装用フィルム、ビニルクロス等の表面保護コーティング、あるいは機能付与用バインダーとして好適に使用することができる。
【0035】
基材が木材あるいは紙製品の場合、合板の表面保護コーティング、感熱記録用の表面保護、印刷表面に処理する耐水性付与コーティング等に適用できる。また、撥水性も有しているので合成皮革等の表面保護被膜としても適用することができる。耐水性印刷インキ用の水溶性バインダーとしても適用することができる。
【0036】
基材が無機材料の場合、モルタル、コンクリート、あるいはセメント製の外装用壁材又は窯業パネル、ALC板、サイジングボード、石膏ボード、レンガ、ガラス、陶磁器、人工大理石等の表面保護コーティング、表面処理用塗料として適用することができる。
【0037】
また、接着剤のベースポリマーとしても使用することができ、他の有機樹脂又はシランカップリング剤等を添加することにより、異種の基材間の接着に有効な接着剤を得ることができる。
【0038】
本発明のオルガノシリコーンレジンエマルジョン組成物の基材への塗布方法としては、浸漬法、スプレー法、ロールコート法、はけ塗り法等、従来公知の各種塗装法が可能である。また、オルガノシリコーンレジンエマルジョン組成物の塗布量は特に制限されないが、通常、乾燥後の被膜厚さが0.1〜1,000μm、特に1〜100μmとなる量である。
【0039】
未硬化のまま保護被膜的に使用する場合、塗装後の基材を室温下に放置し、水分及び(B)成分の溶剤を揮発させるだけでよい。室温硬化で架橋を進め、高硬度被膜とする場合には、縮合触媒を添加したエマルジョン組成物が塗装された基材を室温下に0.1〜30日放置すれば良好な硬化被膜が得られる。また、加熱硬化で架橋を進め、高硬度被膜とする場合には、無触媒あるいは縮合触媒を添加したエマルジョン組成物で塗装した基材を50〜300℃の温度範囲に0.5分〜200時間維持することにより達成される。
【実施例】
【0040】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は質量%を示し、粘度はBM型回転粘度計により測定した25℃における値である。
【0041】
[実施例1]
減圧装置つき蒸留装置に[(CH3)SiO3/20.65[(C65)SiO3/20.35で示されるオルガノシリコーンレジンの50%キシレン溶液1kgと、ブチルセロソルブアセテート(SP値8.9)125gを入れ、60℃/20mmHgの条件でキシレンを留去した。3時間後にガスクロマトグラフィー測定を行った結果、キシレン含有量は0.1%、ブチルセロソルブアセテート含有量は19.8%であった。このオルガノシリコーンレジンのブチルセロソルブアセテート溶液の不揮発分は80.1%、粘度は6,100mPa・sであった。
このオルガノシリコーンレジンのブチルセロソルブアセテート溶液(シリコーンレジン/ブチルセロソルブアセテート=80.1/19.8質量比)500g、乳化剤としてノイゲンXL40(第一工業製薬:ポリオキシアルキレンデシルエーテル、HLB10.5)25g、ノイゲンXL400(第一工業製薬:ポリオキシアルキレンデシルエーテル、HLB18.4)25g、ニューコール291M(日本乳化剤:アルキルスルホコハク酸ソーダ75%液)5g及びイオン交換水445gを、ホモディスパーを用いて乳化を行い、青白色なエマルジョンAを得た。このものの平均粒径をコールター社製粒度分布測定装置N4Plusで測定したところ210nmであり、室温1ヶ月後も分離はみられなかった。
【0042】
[実施例2]
減圧装置つき蒸留装置に[(CH3)SiO3/20.15[(C65)SiO3/20.35[(CH32SiO]0.30[(C652SiO]0.20で示されるオルガノシリコーンレジンの50%トルエン溶液1kgとブチルセロソルブアセテート(SP値8.9)125gを入れ、60℃/30mmHgの条件でトルエンを留去した。3時間後にガスクロマトグラフィー測定を行った結果、トルエン含有量は0%、ブチルセロソルブアセテート含有量は19.9%であった。このオルガノシリコーンレジンのブチルセロソルブアセテート溶液の不揮発分は80.1%、粘度は6,500mPa・sであった。
このオルガノシリコーンレジンのブチルセロソルブアセテート溶液(シリコーンレジン/ブチルセロソルブアセテート=80.1/19.9質量比)500g、乳化剤としてノイゲンXL40(第一工業製薬:ポリオキシアルキレンデシルエーテル、HLB10.5)25g、ノイゲンXL400(第一工業製薬:ポリオキシアルキレンデシルエーテル、HLB18.4)25g、ニューコール291M(日本乳化剤:アルキルスルホコハク酸ソーダ75%液)5g及びイオン交換水445gを、ホモディスパーを用いて乳化を行い、青白色なエマルジョンBを得た。このものの平均粒径をコールター社製粒度分布測定装置N4Plusで測定したところ250nmであり、室温1ヶ月後も分離はみられなかった。
【0043】
[実施例3]
減圧装置つき蒸留装置に[(CH3)SiO3/20.65[(C65)SiO3/20.35で示されるオルガノシリコーンレジンの50%キシレン溶液1kgとブチルセロソルブ(SP値8.9)125gを入れ、60℃/20mmHgの条件でキシレンを留去した。3時間後にガスクロマトグラフィー測定を行った結果、キシレン含有量は0.3%、ブチルセロソルブ含有量は19.5%であった。このオルガノシリコーンレジンのブチルセロソルブ溶液の不揮発分は80.2%、粘度は6,900mPa・sであった。
このオルガノシリコーンレジンのブチルセロソルブ溶液(シリコーンレジン/ブチルセロソルブ=80.2/19.5質量比)500g、乳化剤としてノイゲンXL40(第一工業製薬:ポリオキシアルキレンデシルエーテル、HLB10.5)25g、ノイゲンXL400(第一工業製薬:ポリオキシアルキレンデシルエーテル、HLB18.4)25g、ニューコール291M(日本乳化剤:アルキルスルホコハク酸ソーダ75%液)5g及びイオン交換水445gを、ホモディスパーを用いて乳化を行い、青白色なエマルジョンCを得た。このものの平均粒径をコールター社製粒度分布測定装置N4Plusで測定したところ230nmであり、室温1ヶ月後も分離はみられなかった。
【0044】
[比較例1]
減圧装置つき蒸留装置に[(CH3)SiO3/20.65[(C65)SiO3/20.35で示されるオルガノシリコーンレジンの50%キシレン(SP値8.8)溶液1kgを入れ、60℃/40mmHgの条件でキシレンを留去し、濃縮した。3時間後に不揮発分測定を行った結果、キシレン含有量は20.1%であった。このオルガノシリコーンレジンのキシレン溶液の不揮発分は79.9%、粘度は5,700mPa・sであった。
このオルガノシリコーンレジンのキシレン溶液(シリコーンレジン/キシレン=79.9/20.1質量比)500g、乳化剤としてノイゲンXL40(第一工業製薬:ポリオキシアルキレンデシルエーテル、HLB10.5)25g、ノイゲンXL400(第一工業製薬:ポリオキシアルキレンデシルエーテル、HLB18.4)25g、ニューコール291M(日本乳化剤:アルキルスルホコハク酸ソーダ75%液)5g及びイオン交換水445gを、ホモディスパーを用いて乳化を行い、白色なエマルジョンDを得た。このものの平均粒径をコールター社製粒度分布測定装置N4Plusで測定したところ620nmであり、室温3日後に分離した。
【0045】
[比較例2]
減圧装置つき蒸留装置に[(CH3)SiO3/20.15[(C65)SiO3/20.35[(CH32SiO]0.30[(C652SiO]0.20で示されるオルガノシリコーンレジンの50%トルエン溶液1kgとn−ブタノール(SP値11.4)800gを入れ、50℃/50mmHgの条件でトルエン、n−ブタノールを留去した。4時間後にガスクロマトグラフィー測定を行った結果、トルエン含有量は3.4%、n−ブタノール含有量は18.6%であった。このオルガノシリコーンレジンのブタノール溶液の不揮発分は78.0%、粘度は4,600mPa・sであった。
このオルガノシリコーンレジンのブタノール溶液(シリコーンレジン/ブタノール=78.0/18.6質量比)500g、乳化剤としてノイゲンXL40(第一工業製薬:ポリオキシアルキレンデシルエーテル、HLB10.5)25g、ノイゲンXL400(第一工業製薬:ポリオキシアルキレンデシルエーテル、HLB18.4)25g、ニューコール291M(日本乳化剤:アルキルスルホコハク酸ソーダ75%液)5g及びイオン交換水445gを、ホモディスパーを用いて乳化を行い、白色なエマルジョンEを得たが、数時間後には分離した。
【0046】
[実施例4〜7、比較例3]
上記実施例1及び2で得られたエマルジョンA及びエマルジョンBの硬化被膜の評価を以下の手順で行った。表1に示す組成の配合物を表面が清浄な磨き鋼板に硬化後の膜厚が約20μmになるように塗工し、表1に示す条件で硬化させた。硬化被膜について目視での透明性、JIS K5600に準ずる引っかき硬度(鉛筆法)の測定、セロハンテープを使用する付着性(クロスカット法)試験及びサンシャイン・ロングライフ・ウェザーメーターを用いて1,000時間照射後の被膜の耐候性を確認した。
【0047】
【表1】

【0048】
(アクリルエマルジョンF)旭化成ケミカルズ製:ポリデュレックスG620
(透明性の評価基準)○:無色透明、△:半透明、×:白濁
(耐候性の評価基準)○:性状変化、着色なし、△:接着不良、わずかに黄変、×:剥離、黄変
【0049】
[実施例8]
減圧装置つき蒸留装置に[(CH3)SiO3/20.75[(CH32SiO]0.25で示されるオルガノシリコーンレジンの50%トルエン溶液1kgと、ブチルセロソロブアセテート(SP値8.9)25gを入れ、60℃/30mmHgの条件でトルエンを留去した。3時間後にガスクロマトグラフィー測定を行った結果、トルエン含有量は0%、ブチルセロソロブアセテート含有量は4.9%であった。このオルガノシリコーンレジンのブチルセロソロブアセテート溶液の不揮発分は95.1%、粘度は176,000mPa・sであった。
このオルガノシリコーンレジンのブチルセロソロブアセテート溶液(シリコーンレジン/ブチルセロソロブアセテート=95.1/4.9質量比)500g、乳化剤としてノイゲンXL40(第一工業製薬:ポリオキシアルキレンデシルエーテル、HLB10.5)25g、ノイゲンXL400(第一工業製薬:ポリオキシアルキレンデシルエーテル、HLB18.4)25g、ニューコール291M(日本乳化剤:アルキルスルホコハク酸ソーダ75%液)5g及びイオン交換水445gを、ホモディスパーを用いて乳化を行い、白色なエマルジョンGを得た。このものの平均粒径をコールター社製粒度分布測定装置N4Plusで測定したところ340nmであり、室温1ヶ月後も分離はみられなかった。
【0050】
[実施例9]
減圧装置つき蒸留装置に[(CH3)SiO3/20.4[(CH32SiO]0.6で示されるオルガノシリコーンレジンの50%トルエン溶液1kgと、ブチルセロソロブアセテート(SP値8.9)12gを入れ、60℃/30mmHgの条件でトルエンを留去した。3時間後にガスクロマトグラフィー測定を行った結果、トルエン含有量は0%、ブチルセロソロブアセテート含有量は2.4%であった。このオルガノシリコーンレジンのブチルセロソロブアセテート溶液の不揮発分は97.6%、粘度は136,000mPa・sであった。
このオルガノシリコーンレジンのブチルセロソロブアセテート溶液(シリコーンレジン/ブチルセロソロブアセテート=97.6/2.4質量比)500g、乳化剤としてノイゲンXL40(第一工業製薬:ポリオキシアルキレンデシルエーテル、HLB10.5)25g、ノイゲンXL400(第一工業製薬:ポリオキシアルキレンデシルエーテル、HLB18.4)25g、ニューコール291M(日本乳化剤:アルキルスルホコハク酸ソーダ75%液)5g及びイオン交換水445gを、ホモディスパーを用いて乳化を行い、白色なエマルジョンHを得た。このものの平均粒径をコールター社製粒度分布測定装置N4Plusで測定したところ360nmであり、室温1ヶ月後も分離はみられなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)組成式:[RSiO3/2m[R2SiO]n(ここで、Rは同一又は異種の炭素数1〜20の1価有機基であり、mは0.2〜1.0、nは0〜0.8である。)で示されるオルガノシリコーンレジン:100質量部、
(B)SP値が8.0〜11.0である水混和性有機溶剤:2〜50質量部、
(C)乳化剤:1〜50質量部、
(D)水:25〜2,000質量部
を含有してなり、(B)成分以外の有機溶剤を実質的に含有しないことを特徴とするオルガノシリコーンレジンエマルジョン組成物。
【請求項2】
(B)SP値が8.0〜11.0である水混和性有機溶剤が、アルキレンオキシド単位を有する化合物である請求項1記載のオルガノシリコーンレジンエマルジョン組成物。
【請求項3】
SP値が8.0〜11.0である水混和性有機溶剤が、ブチルセロソルブ、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである請求項1又は2記載のオルガノシリコーンレジンエマルジョン組成物。
【請求項4】
基材表面に請求項1,2又は3記載のオルガノシリコーンレジンエマルジョン組成物の被膜が形成された物品。

【公開番号】特開2006−225629(P2006−225629A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−186264(P2005−186264)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】