説明

オルガノジシロキサンの製造方法

【課題】一般式(1)で表されるオルガノジシロキサンを高選択的に製造する方法を提供する。
(CHSiOSi(CH (1)
(LおよびLは互いに異なる一価の有機基である)
【解決手段】
下記(i)〜(iv)の工程を含むオルガノジシロキサンの製造方法。
(i):(A)1, 1, 3, 3-テトラメチルジシロキサン及び(B)炭素−炭素二重結合を有する有機化合物を(C)ヒドロシリル化反応触媒の存在下で付加反応させる工程(成分(B)/成分(A)のモル比は0.05〜0.4) (ii):未反応の成分(A)を減圧下で留去する工程 (iii):工程(ii)で精製した付加反応生成物と(D)炭素−炭素二重結合を有する有機化合物(成分(B)であるものを除く)を付加反応させる工程(成分(B)/成分(D)のモル比は0.85〜0.95) (iv):工程(iii)で得た付加反応生成物から低沸分を減圧下で留去し、必要に応じて脱保護させる工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は下記一般式(1)で表される、分子中に互いに異なるケイ素原子に結合した異なる2つの官能基を有するオルガノジシロキサンを高選択的に製造する方法に関する。
【化1】

(式中、LおよびLは互いに異なる一価の有機基である)
【背景技術】
【0002】
長鎖アルキル基、カルボキシル基、ポリオキシアルキレン基、エポキシ基、カルビノール等の官能基を分子鎖の片末端のみに有するポリオルガノシロキサンは公知であり、分子鎖末端にケイ素原子結合水素原子(Si−H)を有するポリオルガノシロキサンと炭素−炭素二重結合を有するオレフィン、不飽和カルボン酸シリルエステル、分子鎖末端に炭素−炭素二重結合を有する不飽和エポキシ化合物、不飽和アルコール化合物を、ヒドロシリル化反応触媒の存在下に付加反応させ、必要に応じてさらに加水分解して、片末端変性シリコーンを製造する方法も良く知られている所である(例えば、非特許文献1)。また、両末端カルボキシ官能性シリコーンの付加反応による製造方法も公知である(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、ポリオキシアルキレン変性シリコーン類の製造方法において、付加反応後に系中に残存する未反応のオキシアルキレン基を除去する手段として高温・減圧下で低沸分を除去する製造方法も公知(例えば、特許文献2)である。しかし、分子鎖末端に2つのケイ素原子結合水素原子(Si−H)を有するポリシロキサンの片末端のみを変性後、さらに他の末端に高選択的に異種の官能基を導入する目的で低沸分を除去することは記載も示唆もされていない。また、片末端を修飾することにより、他のポリシロキサン類に比してその沸点が大きく上昇するというオルガノジシロキサンの特性を利用して、副生成物を効率的に留去することは記載も示唆もされていない。
【0004】
一方、シロキサン類の中でも、シロキサンの重合度が2であるジシロキサンは、化粧料原料として公知である(例えば、特許文献3)。特許文献3の製造例2には、H(CHSiOSi(CHHで表される1, 1, 3, 3−テトラメチルジシロキサン0.1モルと1−オクテン0.2モルを、ヒドロシリル化反応触媒の存在下に付加反応させ、分子中に2つのオクチル基を有する対称ジシロキサンである1, 1, 3, 3−テトラメチル−1,3−ジオクチルジシロキサンを製造することが記載されている。
【0005】
また、特許文献4には、1, 1, 3, 3−テトラメチルジシロキサンと不飽和カルボン酸シリルエステルを反応させて、加水分解することによりカルボキシヒドロカルビル基で置換したカルボキシル変性ジシロキサンの製造について記載されている。さらに、該特許文献4には、ポリシロキサン類の利用できるSi−H基の少なくとも1個を不飽和カルボン酸シリルエステルを反応させ、他のSi−H部位をオレフィン系化合物と反応させてカルボキシヒドロカルビル基と長鎖アルキル基を1分子中に導入する製法が記載されている。
【0006】
しかしながら、本発明者らは、分子中に互いに異なるケイ素原子に結合した異なった2つの官能基を有するオルガノジシロキサンを、1, 1, 3, 3−テトラメチルジシロキサンを原料として、通常の付加反応により合成しようとすると、得られた変性オルガノジシロキサンの純度および表面改質特性が不十分であることに気が付いた。すなわち、1, 1, 3, 3−テトラメチルジシロキサンは分子中に2つのSi−H部位を有し、1, 1, 3, 3−テトラメチルジシロキサン 1モルに対して、2種の異なる不飽和結合を有する有機化合物を各1モル添加して付加反応させた場合、分子の両末端に同種官能基が導入された対称なオルガノジシロキサン分子と両末端に異種官能基が導入された非対称なオルガノジシロキサン分子の混合物である低純度のオルガノジシロキサンしか得ることはできない。
【0007】
また、1, 1, 3, 3−テトラメチルジシロキサン 1モルに対して、導入したい不飽和結合を有する有機化合物の一方を先に1モル添加して付加反応させた場合であっても、平衡反応により、片末端だけに官能基が導入されたオルガノジシロキサン分子、分子の両末端に同種官能基が導入された対称なオルガノジシロキサン分子および未反応の1, 1, 3, 3−テトラメチルジシロキサンが系中に残存する。このため、1段階目の反応後に、さらに導入したい不飽和結合を有する有機化合物を添加して付加反応させた場合であっても、純度が90%以下の非対称なオルガノジシロキサン分子しか得ることはできない。
【0008】
これら公知の方法により得られたオルガノジシロキサンを化粧品原料、表面改質剤または表面改質剤原料として用いた場合、該オルガノジシロキサンはその純度が不十分であるため、油剤への分散性や処理表面への撥水性付与等の表面改質特性が満足できるものではなかった。
【0009】
【非特許文献1】シリコーンハンドブック(日刊工業新聞社、伊藤邦雄 著、p.163-170)
【特許文献1】特開平4−226135公報
【特許文献2】特開平9−95536号公報
【特許文献3】特開平3−264510号公報
【特許文献4】特開昭61−223031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、一般式(1)で表される、分子中に互いに異なるケイ素原子に結合した異なった2つの官能基を有することを特徴とするオルガノジシロキサンを高選択的に製造する方法を提供するものである。
【化2】

(式中、LおよびLは互いに異なる一価の有機基である)
特に、本発明は、一般式(5)で表される、分子中に互いに異なるケイ素原子に結合した異なった2つの官能基を有することを特徴とするカルボキシ官能性オルガノジシロキサンを高選択的に製造する方法を提供するものである。
【化3】

(式中、RはC2p+1で表される直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、pは4〜48の整数であり、qは0〜20の整数である。)
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは鋭意検討した結果、下記(i)〜(iv)および必要に応じて(v)の工程を含むオルガノジシロキサンの製造方法により前記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
(i):下記成分(A)及び成分(B)を成分(C)の存在下で付加反応させる工程(ただし、該混合物中の成分(B)/成分(A)のモル比は0.05〜0.4の範囲であり、成分(C)は成分(A)と成分(B)の付加反応を促進するのに有効な量)
(A)1, 1, 3, 3−テトラメチルジシロキサン
(B)1分子中に1の炭素−炭素二重結合を有する有機化合物
(C)ヒドロシリル化反応触媒
(ii):工程(i)で得た付加反応生成物から未反応の成分(A)を減圧下で留去する工程
(iii):工程(ii)で精製した付加反応生成物と下記成分(D)を混合して、付加反応させる工程(ただし、成分(D)の使用量は工程(i)における成分(B)/成分(D)のモル比が0.85〜0.95の範囲となる量である。)
(D)1分子中に1の炭素−炭素二重結合を有する有機化合物(成分(B)であるものを除く)
(iv):工程(iii)で得た付加反応生成物から低沸分を減圧下で留去する工程。
(v):前記の工程(iv)で精製した付加反応生成物を必要に応じて加水分解または脱保護させる工程。
【0012】
すなわち、本発明は、
「〔1〕 一般式(1)で表されるオルガノジシロキサンの製造方法であって、下記(i)〜(iv)の工程を含むもの。
【化4】

(式中、LおよびLは互いに異なる一価の有機基である)
(i):下記成分(A)及び成分(B)を成分(C)の存在下で付加反応させる工程(ただし、該混合物中の成分(B)/成分(A)のモル比は0.05〜0.4の範囲であり、成分(C)は成分(A)と成分(B)の付加反応を促進するのに有効な量)
(A)1, 1, 3, 3−テトラメチルジシロキサン
(B)1分子中に1の炭素−炭素二重結合を有する有機化合物
(C)ヒドロシリル化反応触媒
(ii):工程(i)で得た付加反応生成物から未反応の成分(A)を減圧下で留去する工程
(iii):工程(ii)で精製した付加反応生成物と下記成分(D)を混合して、付加反応させる工程(ただし、成分(D)の使用量は工程(i)における成分(B)/成分(D)のモル比が0.85〜0.95の範囲となる量である)
(D)1分子中に1の炭素−炭素二重結合を有する有機化合物(成分(B)であるものを除く)
(iv):工程(iii)で得た付加反応生成物から低沸分を減圧下で留去する工程。
〔2〕 一般式(1)で表されるオルガノジシロキサンの製造方法であって、下記(i)〜(v)の工程を含むもの。
【化5】

(式中、LおよびLは互いに異なる一価の有機基である)
(i):下記成分(A)及び成分(B)を成分(C)の存在下で付加反応させる工程(ただし、該混合物中の成分(B)/成分(A)のモル比は0.05〜0.4の範囲であり、成分(C)は成分(A)と成分(B)の付加反応を促進するのに有効な量)
(A)1, 1, 3, 3−テトラメチルジシロキサン
(B)1分子中に1の炭素−炭素二重結合を有する有機化合物
(C)ヒドロシリル化反応触媒
(ii):工程(i)で得た付加反応生成物から未反応の成分(A)を減圧下で留去する工程
(iii):工程(ii)で精製した付加反応生成物と下記成分(D)を混合して、付加反応させる工程(ただし、成分(D)の使用量は工程(i)における成分(B)/成分(D)のモル比が0.85〜0.95の範囲となる量である)
(D)1分子中に1の炭素−炭素二重結合を有する有機化合物(成分(B)であるものを除く)
(iv):工程(iii)で得た付加反応生成物から低沸分を減圧下で留去する工程。
(v):工程(iv)で精製した付加反応生成物を加水分解または脱保護させる工程。
〔3〕 成分(B)および成分(D)が、それぞれ下記一般式(2)または下記一般式(3)で表されるα−オレフィン末端を有する有機化合物から選択される、互いに異なる1の有機化合物である〔1〕または〔2〕に記載のオルガノジシロキサンの製造方法。
CH=CH―R (2)
(式中、RはC2p+1で表される直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、pは4以上の整数である。)
CH=CH―R (3)
(式中、Rはアリール基、有機酸官能基、有機酸のシラン誘導体官能基、ポリオキシアルキレン基、アミノ基、アミノアルキル基、パーフルオロオキシアルキレン基、アミド基、アルコキシ基、水酸基から選択される1種類以上の置換基を含有する一価炭化水素基である。)
〔4〕 成分(B)が下記一般式(2)で表される炭素原子数6〜50のα−オレフィン化合物であり、
CH=CH―R (2)
(式中、RはC2p+1で表される直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、pは4〜48の整数である。)
成分(D)が下記一般式(3)で表されるα−オレフィン末端を有する有機化合物である〔1〕または〔2〕に記載のオルガノジシロキサンの製造方法。
CH=CH―R (3)
(式中、Rはアリール基、有機酸官能基、有機酸のシラン誘導体官能基、ポリオキシアルキレン基、アミノ基、アミノアルキル基、パーフルオロオキシアルキレン基、アミド基、アルコキシ基、水酸基から選択される1種類以上の置換基を含有する一価炭化水素基である。)
〔5〕 成分(B)が下記一般式(2)で表される分岐鎖状もしくは直鎖状の炭素原子数6〜50のα−オレフィン化合物であり、
CH=CH―R (2)
(式中、RはC2p+1で表される直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、pは4〜48の整数である。)
成分(D)が下記構造式で表されるα−オレフィン末端を有する有機化合物から選択される1の有機化合物である〔1〕または〔2〕に記載のオルガノジシロキサンの製造方法。
CH=CH−(C2q)−C
CH=CH−(C2q)−COOH,
CH=CH−(C2q)−COOSiR
CH=CH−(C2q)−O(CO)(CO)CH
CH=CH−(C2q)−O(CO)(CO)H,
CH=CH−(C2q)−NH
CH=CH−(C2q)−NH−(CH−NH
CH=CH−(C2q)−CONH−R,
CH=CH−(C2q)−OCHCH(OH)CH
CH=CH−(C2q)−OCHCHOH,
CH=CH−(C2q)−OC2r+1
CH=CH−(C2q)−OH
(式中、Rは脂肪族不飽和結合を有しない一価炭化水素基であり、n,mはn+mが1〜50となる整数であり、rは1〜10の整数であり、qは0〜20の整数である)
〔6〕 成分(B)が下記一般式(2)で表される分岐鎖状もしくは直鎖状の炭素原子数6〜50のα−オレフィン化合物であり、
CH=CH―R (2)
(式中、RはC2p+1で表される直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、pは4〜48の整数である)
成分(D)が一般式(4)で表されるα−オレフィン末端を有するオルガノアシロキシシランである〔1〕または〔2〕に記載のオルガノジシロキサンの製造方法。
CH=CH−(C2q)−COOSiR (4)
(式中、Rは脂肪族不飽和結合を有しない一価炭化水素基であり、qは0〜20の整数である)
〔7〕 工程(ii)および工程(iv)において、減圧下で留去する際に、温度40〜180℃,圧力0.1〜100mmHgの条件下で減圧留去操作を行って、未反応の成分(A)または低沸分を留去することを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載のオルガノジシロキサンの製造方法。
〔8〕 一般式(1)で表されるオルガノジシロキサンが、下式(5)で表されるカルボキシ官能性オルガノジシロキサンであり、
【化6】

(式中、RはC2p+1で表される直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、pは4〜48の整数であり、qは0〜20の整数である。)
成分(B)が一般式(2)で表される分岐鎖状もしくは直鎖状の炭素原子数6〜50のα−オレフィン化合物であり、
CH=CH―R (2)
(式中、RはC2p+1で表される直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、pは4〜48の整数である。)
成分(D)が一般式(4)で表されるα−オレフィン末端を有するオルガノアシロキシシランである〔2〕に記載のオルガノジシロキサンの製造方法。
CH=CH−(C2q)−COOSiR (4)
(式中、Rは脂肪族不飽和結合を有しない一価炭化水素基であり、qは0〜20の整数である。)。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法により、一般式(1)で表される、分子中に互いに異なるケイ素原子に結合した異なった2つの官能基を有するオルガノジシロキサンを、その純度が90%以上で、高選択的に製造することができる。
【化7】

(式中、LおよびLは互いに異なる一価の有機基である)
特に、本発明の製造方法により、一般式(5)で表される、分子中に互いに異なるケイ素原子に結合した異なった2つの官能基を有することを特徴とするカルボキシ官能性オルガノジシロキサンを、その純度が90%以上で、高選択的に製造することができる。
【化8】

(式中、RはC2p+1で表される直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、pは4〜48の整数であり、qは0〜20の整数である。)
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は一般式(1)で表される、分子中に互いに異なるケイ素原子に結合した異なる2つの官能基を有するオルガノジシロキサンを高選択的に製造する方法に関するものであり、特には、一般式(5)で表される、分子中に互いに異なるケイ素原子に結合した異なった2つの官能基を有することを特徴とするカルボキシ官能性オルガノジシロキサンを高選択的に製造する方法に関する。
【化9】

(式中、LおよびLは互いに異なる一価の有機基である)
【化10】

(式中、RはC2p+1で表される直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、pは4〜48の整数であり、qは0〜20の整数である。)
【0015】
かかる製造方法は、分子中に2つのSi−H部位を有する1, 1, 3, 3−テトラメチルジシロキサンを原料として、ヒドロシリル化反応触媒の存在下における付加反応により、異なる2種類の官能基を分子中に有するオルガノジシロキサンの製造方法であり、具体的には、下記(i)〜(iv)および必要に応じて(v)の工程を含むものである。(v)の工程は、目的とするオルガノジシロキサンを(i)〜(iv)の工程で製造することができ、官能基を導入後のオルガノジシロキサンを加水分解または脱保護する必要がなければ、不要な工程だからである。また、前記の工程(iv)でオルガノジシロキサンを得られた後に、工程(v)における加水分解または脱保護の結果、分子中に互いに異なるケイ素原子に結合した同一の2つの官能基を有するオルガノジシロキサンが得られる場合、本発明の目的に反する。
【0016】
(i):下記成分(A)及び成分(B)を成分(C)の存在下で付加反応させる工程(ただし、該混合物中の成分(B)/成分(A)のモル比は0.05〜0.4の範囲であり、成分(C)は成分(A)と成分(B)の付加反応を促進するのに有効な量)
(A)H(CHSiOSi(CHHで表される1, 1, 3, 3−テトラメチルジシロキサン
(B)1分子中に1の炭素−炭素二重結合を有する有機化合物
(C)ヒドロシリル化反応触媒
(ii):工程(i)で得た付加反応生成物から未反応の成分(A)を減圧下で留去する工程
(iii):工程(ii)で精製した付加反応生成物と下記成分(D)を混合して、付加反応させる工程(ただし、成分(D)の使用量は工程(i)における成分(B)/成分(D)のモル比が0.85〜0.95の範囲となる量である)
(D)1分子中に1の炭素−炭素二重結合を有する有機化合物(成分(B)であるものを除く)
(iv):工程(iii)で得た付加反応生成物から低沸分を減圧下で留去する工程。
(v):前記の工程(iv)で精製した付加反応生成物を必要に応じて加水分解または脱保護させる工程。
【0017】
本発明の製造方法は、他のポリシロキサン類に比して低分子量かつ低沸点である1, 1, 3, 3−テトラメチルジシロキサンに1の官能基を付加反応により導入することにより、修飾後のオルガノジシロキサンの沸点が原料の沸点より上昇し、公知の減圧留去等の手段を用いて、系中から未反応の1, 1, 3, 3−テトラメチルジシロキサンを容易かつ効率よく留去できるというジシロキサン類の特性を利用するものである。従って、シロキサンの重合度が3を超えるようなオルガノポリシロキサンを製造する方法として、必ずしも好適ではない。
【0018】
本発明の工程(i)は、下記成分(A)及び成分(B)を成分(C)の存在下で付加反応させる工程である。
(A)1, 1, 3, 3−テトラメチルジシロキサン
(B)1分子中に1の炭素−炭素二重結合を有する有機化合物
(C)ヒドロシリル化反応触媒
該工程は、本発明の目的である異なる2種類の官能基を分子中に有するオルガノジシロキサンを得るための中間体として、系中に1, 1, 3, 3−テトラメチルジシロキサンの1のSi−H部位のみ官能基が導入された、下記一般式(1')で表されるオルガノハイドロジェンジシロキサンを主生成物として得るための工程である。両末端に官能基が導入された下記一般式(1'')で表される対称構造を有するオルガノジシロキサンが大量に副生するのを避けるために、成分(A)は成分(B)に対して過剰量が存在していることが必要である。
【化11】

(式中、Lは一価の有機基である。)
【化12】

(式中、Lは互いに同一の一価の有機基である)
【0019】
具体的には、本発明の本発明の工程(i)において、成分(B)/成分(A)のモル比は、0.05〜0.4の範囲にあることが必要である。該モル比は0.1〜0.3の範囲であることが好ましく、0.15〜0.25の範囲にあることがより好ましく、0.19〜0.21が最も好ましい。該モル比が前記下限未満では、未反応の成分(A)が大量に系中に残存して、後の工程(ii)で減圧留去することが困難になり、前記上限を超えると、下記一般式(1'')で表される対称構造を有するオルガノジシロキサンが系中に大量に副生して、後の工程(ii)または工程(iv)でも留去することができず、本発明の目的である選択的なオルガノジシロキサンの製造という目的が損なわれる。
【0020】
成分(A)は、H(CHSiOSi(CHHで表される1, 1, 3, 3−テトラメチルジシロキサンであり、公知の方法(例えば、特開昭49−124032に記載の方法等)により合成することが出来る。
【0021】
成分(B)は、1分子中に1の炭素−炭素二重結合を有する有機化合物であり、1, 1, 3, 3−テトラメチルジシロキサンの1のSi−H部位と成分(C)の存在下で付加反応することにより、オルガノジシロキサンの官能基として導入される。該官能基は、下記一般式(1')においてジシロキサンに導入された有機基Lであり、かかる有機基Lを有するオルガノハイドロジェンジシロキサンは、原料である1, 1, 3, 3−テトラメチルジシロキサンより沸点が高いため、工程(ii)において、未反応の成分(A)と共に留去されることなく系中に残る。
【化13】

(式中、Lは一価の有機基である。)
成分(B)は、炭素−炭素二重結合を有する有機化合物であれば特に制限されるものではないが、該成分の炭素−炭素二重結合は分子鎖末端にあることが好ましく、下記一般式(2)で表される炭素原子数6以上のα−オレフィン化合物または下記一般式(3)で表されるα−オレフィン末端を有する有機化合物が好ましく例示される。
【0022】
CH=CH―R (2)
式中、RはC2p+1で表される直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、pは4以上の整数であり、4〜48の範囲の整数であることが好ましく、特には8〜25の範囲の整数であることが好ましい。また、一般式(2)で表される炭素原子数6以上のα−オレフィン化合物は分岐鎖状もしくは直鎖状であるが、直鎖状であることが特に好ましい。かかる炭素原子数6以上のα−オレフィン化合物は具体的には、1−ヘキセン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン等の炭素原子数6〜50のα−オレフィンが好ましく例示される。
【0023】
CH=CH―R (3)
式中、Rはアリール基、有機酸官能基、有機酸のシラン誘導体官能基、ポリオキシアルキレン基、アミノ基、アミノアルキル基、パーフルオロオキシアルキレン基、アミド基、アルコキシ基、水酸基から選択される1種類以上の置換基を含有する一価炭化水素基である。このような一般式(3)で表されるα−オレフィン末端を有する有機化合物はより具体的には、下記式で表される一群の有機官能基が例示できる。
CH=CH−(C2q)−C
CH=CH−(C2q)−COOH,
CH=CH−(C2q)−COOSiR
CH=CH−(C2q)−O(CO)(CO)CH
CH=CH−(C2q)−O(CO)(CO)H,
CH=CH−(C2q)−NH
CH=CH−(C2q)−NH−(CH−NH
CH=CH−(C2q)−CONH−R,
CH=CH−(C2q)−OCHCH(OH)CH
CH=CH−(C2q)−OCHCHOH,
CH=CH−(C2q)−OC2r+1
CH=CH−(C2q)−OH
式中、Rは脂肪族不飽和結合を有しない一価炭化水素基であり、アルキル基とアリール基が代表的であり、アラルキル基も例示される。アルキル基の具体例として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、デシル基が挙げられ、アリール基の具体例としてフェニル基、トリル基が挙げられ、アラルキル基の具体例としてベンジル基、フェネチル基が挙げられる。アルキル基の炭素原子数は1〜12が好ましく、アリール基とアラルキル基の炭素原子数は6〜8が好ましい。かかるRはメチル基またはフェニル基が一般的である。n,mはn+mが1〜50の範囲である整数であり、rは1〜10の整数であり、qは0〜20の整数であることが好ましい。
【0024】
後の工程(ii)で、付加反応後のオルガノハイドロジェンジシロキサンを収率良く回収するためには、工程(i)で使用する成分(B)は炭素原子数6以上の有機化合物であることが好ましく、一般式(2)で表される分岐鎖状もしくは直鎖状の炭素原子数6〜50のα−オレフィン化合物であることが特に好ましい。かかる成分(B)を用いることにより、工程(i)における主生成物である一般式(1')で表されるオルガノハイドロジェンジシロキサンの沸点が、原料である成分(A)の沸点より上昇して、成分(A)のみを効率良く留去することが容易になるためである。
【0025】
特に、工程(i)において、成分(B)である一般式(2)で表される炭素原子数6〜50のα−オレフィン化合物と成分(A)を、成分(C)の存在下に付加反応させることにより、一般式(5')で表されるオルガノハイドロジェンジシロキサンを主生成物として含む付加反応生成物を得ることができる。
【化14】

(式中、RはC2p+1で表される直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、pは4〜48の整数である)
【0026】
成分(C)はヒドロシリル化反応触媒であり、工程(i)においては、成分(A)および成分(B)の付加反応を促進するための触媒であり、工程(ii)において系から留去されないため、工程(iii)において、工程(i)で得られたオルガノハイドロジェンジシロキサンと成分(D)の付加反応を促進するための触媒としても機能する。該成分(C)は白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒が例示され、好ましくは、白金系触媒である。この白金系触媒としては、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、白金のオレフィン錯体、白金のケトン錯体、白金のビニルシロキサン錯体、四塩化白金、白金微粉末、アルミナまたはシリカの担体に固体状白金を担持させたもの、白金黒、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体、白金のカルボニル錯体、これらの白金系触媒を含むメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコーン樹脂等の熱可塑性有機樹脂粉末が例示され、好ましくは、白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体または塩化白金酸である。
【0027】
さらに、これらのヒドロシリル化触媒は、非反応性の有機溶媒に分散させて系中に添加することが好ましい。好ましくは、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤に分散させ、系中に滴下することが好ましい。最も好ましくは、白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液を系中に滴下して使用することが出来る。なお、滴下に要する時間は、反応のスケールによって異なるが、急激な反応を防止する見地から、0.5時間〜5時間かけて一定量ずつ滴下することが好ましい。成分(C)の添加量は触媒の有効量であれば特に限定されないが、成分(B)の質量に対して成分(C)中の触媒金属が重量単位で0.1〜1,000ppmの範囲以内となるような量であることが好ましく、特に、0.5〜100ppmの範囲以内となる量であることが好ましい。
【0028】
前記の工程(i)では、目的とするオルガノジシロキサンの種類に応じて、有機溶媒を使用してもしなくもよい。有機溶剤を使用する場合には、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;ジオキサン、THF等のエーテル系溶剤;脂肪族炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、塩素化炭化水素系溶剤を用いることが好ましい。また、本発明の工程(i)では、反応温度、反応時間は限定されないが、通常、50〜150℃の範囲以内であり、反応時間は0.5時間〜5時間が好ましい。
【0029】
本発明の工程(ii)は、前記の工程(i)で得た付加反応生成物から未反応の成分(A)を減圧下で留去する工程であり、工程(i)で成分(A)と成分(B)の付加反応により得られたオルガノハイドロジェンジシロキサンを精製する工程である。本工程で未反応の成分(A)を系から留去することにより、後の工程(iii)で、副反応を極力回避することができる。該付加反応生成物は段落0018に記載の通り、主生成物として一般式(1')で表されるオルガノハイドロジェンジシロキサンを含有しており、該オルガノハイドロジェンジシロキサンは未反応の成分(A)より沸点が高く、未反応の成分(A)を減圧留去することで容易に精製することができる。なお、工程(i)において、一般式(1'')で表される対称な構造を有するオルガノジシロキサンが副生している場合、該オルガノジシロキサンは工程(ii)または工程(iv)において、減圧下で留去することが困難であり、副生成物として系中に残存するため、最終的に得られるオルガノジシロキサンの純度が低下する。従って、本発明において高選択的に一般式(1)で表されるオルガノジシロキサンを製造する場合には、段落0019に記載の通り、工程(i)において、成分(B)と成分(A)を適切なモル比で反応させることが必要である。
【0030】
工程(ii)の減圧留去条件は、反応のスケールによって異なるが、温度40〜180℃,圧力0.1〜100mmHgの条件下で減圧留去操作を行うことが好ましい。工程(ii)後も成分(C)の触媒活性が安定に維持され、工程(iii)で効率よく付加反応が進行するための好適な減圧留去条件は、温度50〜120℃、圧力1〜30mmHgである。また、工程(ii)の減圧留去操作の後、残存する未反応の成分(A)の含有量を1,000ppm(重量単位)以下であることが特に好ましい。また、減圧留去に使用される減圧蒸留装置は、薄膜蒸留装置,エバポレーター,高度真空ポンプが好ましい。さらに、工程(ii)の減圧留去の操作は、反応スケールおよび温度・圧力の条件に応じて1回の操作であっても、繰り返し減圧留去操作を行って未反応の成分(A)を留去するものであっても良い。なお、減圧留去操作に要する時間は、通常、1〜10時間である。
【0031】
本発明の工程(iii)は、工程(i)の付加反応により得られた一般式(1')で表されるオルガノハイドロジェンジシロキサンと成分(D)を、工程(ii)の後も系中に残留する成分(C)の存在下で付加反応させることにより、一般式(1)で表されるオルガノジシロキサンを生成する工程である。本発明は、分子中に互いに異なるケイ素原子に結合した異なる2つの官能基を有するオルガノジシロキサンの製造方法であり、成分(D)は、工程(i)で使用する成分(B)とは異なる有機化合物であることが必要である。
【0032】
工程(iii)で使用する成分(D)の使用量は、成分(B)に対して小過剰量である。工程(iii)の後、未反応の成分(D)は工程(iv)である程度減圧留去可能であるからである。具体的には工程(i)における成分(B)/成分(D)のモル比が0.85〜0.95であることが必要であり、成分(D)が高沸点の有機化合物である場合には、0.89〜0.92であることが好ましい。該モル比が前記上限を超えると、工程(i)の付加反応により得られた一般式(1')で表されるオルガノハイドロジェンジシロキサンと反応させる成分(D)の量が不十分となり、工程(iii)後も一般式(1')で表されるオルガノハイドロジェンジシロキサンが系中に残存する。また、モル比が前記下限未満では未反応の成分(D)が系中に大量に残存し、特に成分(D)として高沸点の有機化合物を用いた場合に、本発明の目的である選択的なオルガノジシロキサンの製造という目的が損なわれるからである。
【0033】
なお、工程(iv)で低沸分を減圧留去するため、異なる2成分に由来する異なる二つの官能基を工程(i)および工程(iii)でそれぞれ付加反応によりジシロキサンに導入してオルガノジシロキサンを得ようとする場合、工程(i)において使用する成分(B)はより高沸点、すなわち減圧留去しにくい有機化合物を使用して全量を付加反応させ、工程(iii)ではより低沸点の成分、すなわち減圧留去しやすい有機化合物を成分(D)として前記の小過剰量を使用して付加反応させることが好ましい。未反応の成分(D)を工程(iv)で他の低沸分と共に減圧留去することが、得られるオルガノジシロキサンの純度の点からより有利だからである。
【0034】
成分(D)は、成分(B)と同一ではなく、1分子中に1の炭素−炭素二重結合を有する有機化合物であり、工程(i)の付加反応により得られた一般式(1')で表されるオルガノハイドロジェンジシロキサンのSi−H部位と成分(C)の存在下で付加反応することにより、オルガノジシロキサンの官能基として導入される。該官能基は、下記一般式(1)においてジシロキサンに導入された有機基Lであり、成分(B)と成分(D)に異なる有機化合物を用いることにより、有機基Lと有機基Lは互いに異なる官能基となり、本発明の目的である、分子中に互いに異なるケイ素原子に結合した異なる2つの官能基を有するオルガノジシロキサンを製造することができるものである。
【化15】

(式中、LおよびLは互いに異なる一価の有機基である)
【0035】
工程(iii)で使用する成分(D)は、工程(i)で使用する成分(B)と同一の有機化合物でない限り、成分(B)と同様に炭素−炭素二重結合を有する有機化合物であれば特に制限されるものではない。すなわち、該成分(D)として本発明の製造方法において使用できる炭素−炭素二重結合を有する有機化合物は、成分(B)の詳細な説明で挙げた一般式(2)で表される炭素原子数6以上のα−オレフィン化合物または一般式(3)で表されるα−オレフィン末端を有する有機化合物が好ましく例示される。本発明の製造方法において、成分(D)は成分(B)より低沸点の有機化合物を用いることが、得られるオルガノジシロキサンの純度の見地からより好ましい。
【0036】
工程(iv)は、工程(iii)で得た付加反応生成物から低沸分を減圧下で留去する工程であり、主として、未反応の成分(D)を低沸分として系中から留去して、工程(iii)で生成した分子中に互いに異なるケイ素原子に結合した異なる2つの官能基を有するオルガノジシロキサンを精製する目的で行なう操作である。
【0037】
工程(iv)の減圧留去条件は、工程(ii)同様、反応のスケールによって異なるが、温度100〜250℃,圧力0.1〜100mmHgの条件下で低沸分の減圧留去を行うことが好ましく、温度120〜180℃,圧力0.1〜10mmHgの条件下で低沸分の減圧留去を行うことが特に好ましい。また、減圧留去操作の後、残存する低沸分の含有量が1,000ppm(重量単位)以下であることが特に好ましい。減圧留去に使用される減圧蒸留装置は、薄膜蒸留装置,エバポレーター,高度真空ポンプが好ましい。さらに、工程(iv)の減圧留去の操作は、反応スケールおよび温度・圧力の条件に応じて1回の操作であっても、繰り返し減圧留去を行って低沸分を留去するものであっても良い。なお、減圧留去操作に要する時間は、通常、2〜10時間である。
【0038】
工程(i)〜工程(iv)の操作により、一般式(1)で表される、分子中に互いに異なるケイ素原子に結合した異なる2つの官能基を有するオルガノジシロキサンを高選択的に製造することができる。
【化16】

(式中、LおよびLは互いに異なる一価の有機基である)
【0039】
工程(i)〜工程(iv)の操作により得られたオルガノジシロキサンが1以上の加水分解性基を有する場合、例えば、上記の一般式(1)において、LまたはLがオルガノシリル基で末端封鎖されている官能基のような加水分解性の官能基を有する場合には、必要に応じて該オルガノジシロキサンを加水分解または脱保護して、所望の官能基を回復させることもできる(工程(v))。なお、前記の工程(iv)でオルガノジシロキサンを得られた後に、工程(v)における加水分解または脱保護の結果、対称な構造を有するオルガノジシロキサンが得られる場合は本発明の目的に反する。例えば、一般式(1)で表されるオルガノジシロキサンの官能基Lがカルボキシ官能性基(例えば、−COOH)であり、LがLのシラン誘導体官能基(例えば、−COOSi(CH)であるような場合に、工程(v)における加水分解または脱保護を行なうと、結果として両末端に同一の2つの官能基を有するオルガノジシロキサンが得られるような場合である。
【0040】
工程(v)における加水分解操作は特に制限されるものではないが、オルガノジシロキサンに含まれる加水分解性基1モルあたり少なくとも1モルの水を使用して、50℃〜100℃、好ましくは70〜90℃の温度条件で、水と加水分解性基を有するオルガノジシロキサンの混合物を機械力を用いて混合攪拌することが一般的である。反応完了に要する時間は反応のスケールや、加水分解性基の反応性に依存するが、典型的には1〜6時間である。
【0041】
工程(v)における脱保護操作は特に制限されるものではないが、ジシロキサンに導入した官能基の保護基がトリオルガノシリル基(RSi−で表される基であり、Rは置換または非置換の一価炭化水素基であり、好ましくはアルキル基またはアリール基であり、より好ましくはメチル基またはフェニル基である)である場合、加アルコール分解によって脱離させ、それまで該トリオルガノシリル基によって保護していた基を脱保護して所望の官能基を顕出させることができる。加アルコール分解による脱保護操作は、オルガノジシロキサンに含まれる保護基1モルあたり少なくとも1モルのメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アミルアルコール、フェノール等の1価のアルコール、エチレングコール、グリセリン等の多価アルコールからなる群から選択される1種類以上のアルコール類を使用して、50℃〜100℃、好ましくは70〜90℃の温度条件で加熱還流しながらアルコキシシランとともに生成する水、アルコール類を減圧留去する方法または水共沸溶媒添加等の手段により、アルコキシシランとともに生成する水の除去を行なうことが好ましい。また、公知の水吸着剤としてゼオライト(モレキュラーシーブズ)、シリカゲル、活性アルミナなどを用いることができ、水共沸溶媒としては、ベンゼン、トルエン、塩化メチレン、クロロホルム、1,4−ジオキサンなどが好ましい。
副生生物の留去操作を含め該脱保護反応完了に要する時間は反応のスケールや、保護基の反応性に依存するが、典型的には1〜6時間である。
【0042】
なお、本発明の製造方法において、最も好適に製造することができるのは、一般式(5)で表されるカルボキシ官能性オルガノジシロキサンであり、該オルガノジシロキサンの含有率が90%以上の高選択的な製造が可能である。具体的な該オルガノジシロキサンの含有率は成分(B)または成分(C)の種類、工程(ii)または工程(iii)の減圧留去の条件により異なるが、成分(B)として一般式(2)で表される分岐鎖状もしくは直鎖状の炭素原子数6〜50のα−オレフィン化合物を用いた場合、該オルガノジシロキサンの含有率が90〜99%、好適には93〜96%の高選択的な製造が可能である。
【化17】

(式中、RはC2p+1で表される直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、pは4〜48の整数であり、qは0〜20の範囲である数)
【0043】
一般式(5)で表されるカルボキシ官能性オルガノジシロキサンは以下に示す反応により好適に製造される。
【化18】

【0044】
一般式(5)で表されるカルボキシ官能性オルガノジシロキサンは、工程(i)において、成分(B)として一般式(2)で表される分岐鎖状もしくは直鎖状の炭素原子数6以上、好ましくは炭素原子数6〜50のα−オレフィン化合物を用いて一般式(5')で表されるオルガノハイドロジェンジシロキサンを含む付加反応生成物を得た後、前記の工程(ii)で未反応の成分(A)を減圧留去後に、工程(iii)において、成分(D)として、一般式(4)で表されるα−オレフィン末端を有するオルガノアシロキシシランを用いて、成分(C)の存在下に付加反応させることが好ましい。
CH=CH−(C2q)−COOSiR (4)
式中、Rは脂肪族不飽和結合を有しない一価炭化水素基であり、アルキル基とアリール基が代表的であり、アラルキル基も例示される。アルキル基の具体例として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、デシル基が挙げられ、アリール基の具体例としてフェニル基、トリル基が挙げられ、アラルキル基の具体例としてベンジル基、フェネチル基が挙げられる。アルキル基の炭素原子数は1〜12が好ましく、アリール基とアラルキル基の炭素原子数は6〜8が好ましい。かかるRはメチル基またはフェニル基が一般的である。qは0〜20の整数である。
これにより、工程(iii)において、一般式(5'')で表されるシリルカルボキシ官能性オルガノジシロキサンを含む付加反応生成物を製造することができる。
【化19】

該付加反応生成物は前記の工程(iv)で低沸分を減圧留去することにより精製され、さらに、工程(v)において加水分解または加アルコール反応等により脱保護後、副生成物を加熱還流しながら減圧留去することにより、シリル基で封鎖されたカルボキシル基を顕出して、下式(5)で表されるカルボキシ官能性オルガノジシロキサンを製造することができるものである。
【化20】

(式中、RはC2p+1で表される直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、pは4〜48の整数であり、qは0〜20の整数である。)
【0045】
本発明の製造方法により、副生成物を効率的に留去することにより得られた高純度のオルガノジシロキサン、特に一般式(5)で表されるカルボキシ官能性オルガノジシロキサンは、一般的な製造方法により得られたカルボキシ官能性オルガノジシロキサンに比して高純度であり、油剤への分散性や処理表面への撥水性付与等の表面改質特性に優れるものである。
【実施例】
【0046】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
[オルガノジシロキサンの同定方法と純度]
実施例中、反応生成物のガスクロマトグラフィーおよびマススペクトルをGCMS-QP5050A(島津製作所製)を用いて測定することにより、反応生成物を同定した。また、GC-14B(島津製作所製)を用いた反応生成物のガスクロマトグラフィーの測定結果から、それぞれのピーク面積比を比較することにより、得られたオルガノジシロキサンの純度を算出した。
【0047】
[油剤への溶解性]
実施例及び比較例により得られた各化合物と、下記油剤1〜5から選択される1種類を、重量比1:1でスクリュー管にて混合振とうし、混合後の外観を以下の評価基準で目視により判断することにより、各化合物の油剤への溶解性を評価した。

油剤1:デカメチルシクロペンタシロキサン
油剤2:ジメチルポリシロキサン(25℃における粘度200mPa・s)
油剤3:トリー2−エチルヘキサン酸グリセリル
油剤4:流動パラフィン
油剤5:エタノール

(油剤への溶解性の評価基準)
○:均一溶解
△:一部白濁
×:不溶または分離
【0048】
[撥水性]
ガラス板上に実施例及び比較例により得られた各化合物を塗布することにより、均一な塗膜を形成させた。この塗膜上に水を一滴たらして、滴下から1分後、25℃における水の接触角をFACE自動接触角計(CA−V150型、協和界面科学社製)を用いて測定し、以下の基準により各化合物の撥水性を評価した。

(撥水性の評価基準)
○:110度以上
△:105度以上110度未満
×:105度未満
【0049】
[実施例1]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、1, 1, 3, 3-テトラメチルジシロキサン2164.0g(16.2モル)を仕込み、1-ヘキセン272.8g(3.23モル)と白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液0.24gを70℃で2時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間エージングした後、真空ポンプを用いて圧力;5mmHg、温度;80℃の減圧条件下で過剰の1, 1, 3, 3-テトラメチルジシロキサンを減圧留去した。この減圧留去操作に要した時間は2時間であった。この反応混合物にウンデシレン酸トリメチルシリル908.8g(3.55モル)を85℃で滴下し、テトラメチルジシロキサン中のケイ素原子結合水素原子(Si-H)を完全に反応させた。反応終了後、真空ポンプを用いて圧力;5mmHg、温度;160℃の減圧条件下で低沸分を減圧留去した。この減圧留去操作に要した時間は5時間であった。留去後、メタノールを加え、2時間の加熱還流後、低沸分を減圧除去し、下記平均構造式で表されるカルボキシ官能性オルガノジシロキサン(化合物1)1335.0g得た。ガスクロマトグラフィーによる分析の結果、該カルボキシ官能性オルガノジシロキサンの純度は94.5%であった。
【化21】

【0050】
[実施例2]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、1, 1, 3, 3-テトラメチルジシロキサン596.3g(4.45モル)を仕込み、1-ドデセン150.0g(0.89モル)と白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液0.07gを70℃で2時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間のエージング後、真空ポンプを用いて圧力;5mmHg、温度;80℃の減圧条件下で過剰の1, 1, 3, 3-テトラメチルジシロキサンを減圧留去した。この減圧留去操作に要した時間は2時間であった。この反応混合物にウンデシレン酸トリメチルシリル250.6g(0.979モル)を85℃で滴下し、テトラメチルジシロキサン中のケイ素原子結合水素原子(Si-H)を完全に反応させた。反応終了後、真空ポンプを用いて圧力;5mmHg、温度;160℃の減圧条件下で低沸分を減圧留去した。この減圧留去操作に要した時間は5時間であった。留去後、メタノールを加え、2時間の加熱還流後、低沸分を減圧除去し、下記平均構造式で表されるカルボキシ官能性オルガノジシロキサン(化合物2)375.4gを得た。ガスクロマトグラフィーによる分析の結果、該カルボキシ官能性オルガノジシロキサンの純度は94.0%であった。
【化22】

【0051】
[実施例3]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、1, 1, 3, 3-テトラメチルジシロキサン1527.6g(11.4モル)を仕込み、1-オクタデセン574.6g(2.28モル)と白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液0.21gを70℃で2時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間エージングした後、真空ポンプを用いて圧力;5mmHg、温度;80℃の減圧条件下で過剰の1, 1, 3, 3-テトラメチルジシロキサンを減圧留去した。この減圧留去操作に要した時間は2時間であった。この反応混合物にウンデシレン酸トリメチルシリル642.0g(2.51モル)を85℃で滴下し、テトラメチルジシロキサン中のケイ素原子結合水素原子(Si-H)を完全に反応させた。反応終了後、真空ポンプを用いて圧力;5mmHg、温度;160℃の減圧条件下で低沸分を減圧留去した。この減圧留去操作に要した時間は5時間であった。留去後、メタノールを加え、2時間の加熱還流後、低沸分を減圧除去し、下記平均構造式で表されるカルボキシ官能性オルガノジシロキサン(化合物3)1234.6gを得た。ガスクロマトグラフィーによる分析の結果、該カルボキシ官能性オルガノジシロキサンの純度は94.7%であった。
【化23】

【0052】
[実施例4]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、1, 1, 3, 3-テトラメチルジシロキサン1695.1g(12.65モル)を仕込み、1-テトラデセン574.6g(2.53モル)と白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液0.22gを70℃で2時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間エージングした後、真空ポンプを用いて圧力;5mmHg、温度;80℃の減圧条件下で過剰の1, 1, 3, 3-テトラメチルジシロキサンを減圧留去した。この減圧留去操作に要した時間は2時間であった。この反応混合物にウンデシレン酸トリメチルシリル711.7g(2.78モル)を85℃で滴下し、テトラメチルジシロキサン中のケイ素原子結合水素原子(Si-H)を完全に反応させた。反応終了後、真空ポンプを用いて圧力;5mmHg、温度;160℃の減圧条件下で低沸分を減圧留去した。この減圧留去操作に要した時間は5時間であった。留去後、エタノールを加え、2時間の加熱還流後、低沸分を減圧除去し、下記平均構造式で表されるカルボキシ官能性オルガノジシロキサン(化合物4)1304.2gを得た。ガスクロマトグラフィーによる分析の結果、該カルボキシ官能性オルガノジシロキサンの純度は94.5%であった。
【化24】

【0053】
[比較例1]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、1, 1, 3, 3-テトラメチルジシロキサン271.8g(3.23モル)を仕込み、1-ヘキセン272.8g(3.23モル)、ウンデシレン酸トリメチルシリル908.8g(3.55モル)と白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液0.14gを70℃で2時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間エージングした後、真空ポンプを用いて圧力;5mmHg、温度;160℃の減圧条件下で低沸分を減圧留去した。この減圧留去操作に要した時間は5時間であった。留去後、メタノールを加え、2時間の加熱還流後、低沸分を減圧除去し、オルガノジシロキサンの混合物(化合物5) 1235.0gを得た。ガスクロマトグラフィーによる分析の結果、該オルガノジシロキサンの混合物は平均構造式(C-1)で表される両末端アルキル官能性オルガノジシロキサン、平均構造式(C-2)で表される両末端カルボキシ官能性オルガノジシロキサンを各々25.0%含有しており、平均構造式(C-3)で表されるカルボキシ官能性オルガノジシロキサンの純度は50.0%であった。
【化25】

【0054】
[比較例2]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、1, 1, 3, 3-テトラメチルジシロキサン100.0g(0.75モル)を仕込み、1-ヘキセン31.6g(0.38モル)と白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液0.013gを70℃で2時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間エージングした後、真空ポンプを用いて圧力;5mmHg、温度;80℃の減圧条件下で過剰の1, 1, 3, 3-テトラメチルジシロキサンを減圧留去した。この減圧留去操作に要した時間は2時間であった。この反応混合物にウンデシレン酸トリメチルシリル114,9g(0.46モル)を85℃で滴下し、テトラメチルジシロキサン中のケイ素原子結合水素原子(Si-H)を完全に反応させた。反応終了後、真空ポンプを用いて圧力;5mmHg、温度;160℃の減圧条件下で低沸分を減圧留去した。この減圧留去操作に要した時間は5時間であった。留去後、エタノールを加え、2時間の加熱還流後、低沸分を減圧除去し、下記平均構造式で表されるカルボキシ官能性オルガノジシロキサンを含む混合物(化合物6)145.0gを得た。ガスクロマトグラフィーによる分析の結果、該カルボキシ官能性オルガノジシロキサンの純度は88.0%であった。
【化26】

【0055】
[参考例]
実施例1〜4および比較例1,2の製造方法により得られた化合物1〜6について、カルボキシ官能性オルガノジシロキサンの純度と、各油剤への溶解性および撥水性の評価結果を表1に示す。本発明にかかる化合物1〜4は、全てカルボキシ官能性オルガノジシロキサンの純度が90%以上であり、低純度の化合物5または化合物6に比して、その油剤への溶解性および撥水性に優れるものであった。
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の製造方法を用いることにより、従来公知の製造方法を用いて製造されたオルガノジシロキサンに比して、副生成物の含有量が格段に少ない、高純度のオルガノジシロキサンを製造することができるという利点がある。特に、本発明の製造方法を用いて得られた分子中に炭素原子数6〜50のアルキル基及びカルボキシ官能性基を有するカルボキシ官能性オルガノジシロキサンは、化粧品原料、表面改質剤または表面改質剤原料として用いた場合、一般的な製造方法により得られたオルガノジシロキサンに比して、その油剤との相溶性、処理表面への撥水性付与等の表面改質特性が著しく改善されるという利点がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるオルガノジシロキサンの製造方法であって、下記(i)〜(iv)の工程を含むもの。
【化1】

(式中、LおよびLは互いに異なる一価の有機基である)
(i):下記成分(A)及び成分(B)を成分(C)の存在下で付加反応させる工程(ただし、該混合物中の成分(B)/成分(A)のモル比は0.05〜0.4の範囲であり、成分(C)は成分(A)と成分(B)の付加反応を促進するのに有効な量)
(A)1, 1, 3, 3−テトラメチルジシロキサン
(B)1分子中に1の炭素−炭素二重結合を有する有機化合物
(C)ヒドロシリル化反応触媒
(ii):工程(i)で得た付加反応生成物から未反応の成分(A)を減圧下で留去する工程
(iii):工程(ii)で精製した付加反応生成物と下記成分(D)を混合して、付加反応させる工程(ただし、成分(D)の使用量は工程(i)における成分(B)/成分(D)のモル比が0.85〜0.95の範囲となる量)
(D)1分子中に1の炭素−炭素二重結合を有する有機化合物(成分(B)であるものを除く)
(iv):工程(iii)で得た付加反応生成物から低沸分を減圧下で留去する工程。
【請求項2】
一般式(1)で表されるオルガノジシロキサンの製造方法であって、下記(i)〜(v)の工程を含むもの。
【化2】

(式中、LおよびLは互いに異なる一価の有機基である)
(i):下記成分(A)及び成分(B)を成分(C)の存在下で付加反応させる工程(ただし、該混合物中の成分(B)/成分(A)のモル比は0.05〜0.4の範囲であり、成分(C)は成分(A)と成分(B)の付加反応を促進するのに有効な量)
(A)1, 1, 3, 3−テトラメチルジシロキサン
(B)1分子中に1の炭素−炭素二重結合を有する有機化合物
(C)ヒドロシリル化反応触媒
(ii):工程(i)で得た付加反応生成物から未反応の成分(A)を減圧下で留去する工程
(iii):工程(ii)で精製した付加反応生成物と下記成分(D)を混合して、付加反応させる工程(ただし、成分(D)の使用量は工程(i)における成分(B)/成分(D)のモル比が0.85〜0.95の範囲となる量である)
(D)1分子中に1の炭素−炭素二重結合を有する有機化合物(成分(B)であるものを除く)
(iv):工程(iii)で得た付加反応生成物から低沸分を減圧下で留去する工程。
(v):工程(iv)で精製した付加反応生成物を加水分解または脱保護させる工程。
【請求項3】
成分(B)および成分(D)が、それぞれ下記一般式(2)または下記一般式(3)で表されるα−オレフィン末端を有する有機化合物から選択される、互いに異なる1の有機化合物である請求項1または請求項2に記載のオルガノジシロキサンの製造方法。
CH=CH―R (2)
(式中、RはC2p+1で表される直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、pは4以上の整数である。)
CH=CH―R (3)
(式中、Rはアリール基、有機酸官能基、有機酸のシラン誘導体官能基、ポリオキシアルキレン基、アミノ基、アミノアルキル基、パーフルオロオキシアルキレン基、アミド基、アルコキシ基、水酸基から選択される1種類以上の置換基を含有する一価炭化水素基である。)
【請求項4】
成分(B)が下記一般式(2)で表される炭素原子数6〜50のα−オレフィン化合物であり、
CH=CH―R (2)
(式中、RはC2p+1で表される直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、pは4〜48の整数である。)
成分(D)が下記一般式(3)で表されるα−オレフィン末端を有する有機化合物である請求項1または請求項2に記載のオルガノジシロキサンの製造方法。
CH=CH―R (3)
(式中、Rはアリール基、有機酸官能基、有機酸のシラン誘導体官能基、ポリオキシアルキレン基、アミノ基、アミノアルキル基、パーフルオロオキシアルキレン基、アミド基、アルコキシ基、水酸基から選択される1種類以上の置換基を含有する一価炭化水素基である。)
【請求項5】
成分(B)が下記一般式(2)で表される分岐鎖状もしくは直鎖状の炭素原子数6〜50のα−オレフィン化合物であり、
CH=CH―R (2)
(式中、RはC2p+1で表される直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、pは4〜48の整数である。)
成分(D)が下記構造式で表されるα−オレフィン末端を有する有機化合物から選択される1の有機化合物である請求項1または請求項2に記載のオルガノジシロキサンの製造方法。
CH=CH−(C2q)−C
CH=CH−(C2q)−COOH,
CH=CH−(C2q)−COOSiR
CH=CH−(C2q)−O(CO)(CO)CH
CH=CH−(C2q)−O(CO)(CO)H,
CH=CH−(C2q)−NH
CH=CH−(C2q)−NH−(CH−NH
CH=CH−(C2q)−CONH−R,
CH=CH−(C2q)−OCHCH(OH)CH
CH=CH−(C2q)−OCHCHOH,
CH=CH−(C2q)−OC2r+1
CH=CH−(C2q)−OH
(式中、Rは脂肪族不飽和結合を有しない一価炭化水素基であり、n,mはn+mが1〜50となる整数であり、rは1〜10の整数であり、qは0〜20の整数である)
【請求項6】
成分(B)が下記一般式(2)で表される分岐鎖状もしくは直鎖状の炭素原子数6〜50のα−オレフィン化合物であり、
CH=CH―R (2)
(式中、RはC2p+1で表される直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、pは4〜48の整数である)
成分(D)が一般式(4)で表されるα−オレフィン末端を有するオルガノアシロキシシランである請求項1または請求項2に記載のオルガノジシロキサンの製造方法。
CH=CH−(C2q)−COOSiR (4)
(式中、Rは脂肪族不飽和結合を有しない一価炭化水素基であり、qは0〜20の整数である)
【請求項7】
工程(ii)および工程(iv)において、減圧下で留去する際に、温度40〜180℃,圧力0.1〜100mmHgの条件下で減圧留去操作を行って、未反応の成分(A)または低沸分を留去することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のオルガノジシロキサンの製造方法。
【請求項8】
一般式(1)で表されるオルガノジシロキサンが、下式(5)で表されるカルボキシ官能性オルガノジシロキサンであり、
【化3】

(式中、RはC2p+1で表される直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、pは4〜48の整数であり、qは0〜20の整数である。)
成分(B)が一般式(2)で表される分岐鎖状もしくは直鎖状の炭素原子数6〜50のα−オレフィン化合物であり、
CH=CH―R (2)
(式中、RはC2p+1で表される直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であり、pは4〜48の整数である。)
成分(D)が一般式(4)で表されるα−オレフィン末端を有するオルガノアシロキシシランである請求項2に記載のオルガノジシロキサンの製造方法。
CH=CH−(C2q)−COOSiR (4)
(式中、Rは脂肪族不飽和結合を有しない一価炭化水素基であり、qは0〜20の整数である。)

【公開番号】特開2008−105965(P2008−105965A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−288255(P2006−288255)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】