オレフィンブロック組成物のコーン染色糸
破断繊維の減少および実質的に均一な色を含め、所望の性質がバランス良く組み合わさった改良型コーン染色糸が、今や発見された。こうしたコーン染色糸は、1本または複数の弾性繊維および硬質繊維を含み、前記弾性繊維は、少なくとも1種のエチレンオレフィンブロックポリマーと少なくとも1種の架橋剤との反応生成物を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
米国特許実務のために、2007年1月16日出願の米国仮出願第60/885207号の内容全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、オレフィンブロックポリマーのコーン染色糸に関する。
【背景技術】
【0003】
コーン染色は、コーンに巻き付けてある糸の染色に使用されるバッチ法である。コーンは、コーン染色機中に配置し、そこで精練し、染色し、高温洗浄し、次いで低温洗浄する。この方法では、糸は、流れの相対的に高い温度および圧力に曝されることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
弾性コア繊維が硬質繊維に包まれたコーン染色糸は、流れの相対的に高い温度および圧力のために該弾性繊維が破断するので、製造が困難であることが判明した。したがって、得られるコーン染色糸には、弱いまたは破断した繊維が多数存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
破断繊維の減少および実質的に均一な色を含め、所望の性質がバランス良く組み合わさった改良型コーン染色糸が、今や発見された。こうしたコーン染色糸は、1本または複数の弾性繊維および硬質繊維を含み、弾性繊維は、少なくとも1種のエチレンオレフィンブロックポリマーと少なくとも1種の架橋剤との反応生成物を含み、前記エチレンオレフィンブロックポリマーが、架橋の前に以下の特性の1つまたは複数を特徴とするエチレン/α−オレフィンインターポリマーである。即ち、該インターポリマーは、
(a)約1.7から約3.5のMw/Mn、℃単位の少なくとも1つの融点Tm、およびg/cm3単位の密度dを有し、Tmおよびdの数値が次式の相関関係:
Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)2
に対応し、または
(b)約1.7から約3.5のMw/Mnを有し、J/g単位の融解熱ΔH、および最高DSCピークと最高CRYSTAFピークとの温度差として定義される℃単位のデルタ量ΔTを特徴とし、ΔTおよびΔHの数値が次式の相関関係:
0より大きく、130J/gまでのΔHに対して、ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81、
130J/gより大きいΔHに対して、ΔT≧48℃
であり、該CRYSTAFピークは、累積ポリマーの少なくとも5%を用いて決定され、該ポリマーの5%未満が特定可能なCRYSTAFピークを有する場合、該CRYSTAF温度は30℃であり、または
(c)エチレン/α−オレフィンインターポリマーの圧縮成形フィルムを用いて測定した、歪み率300%および1サイクルでの%単位の弾性回復率Reを特徴とし、g/cm3単位の密度dを有し、エチレン/α−オレフィンインターポリマーが架橋相を実質的に含有しない場合に、Reおよびdの数値が次式の相関関係:
Re>1481−1629(d)
を満足し、または
(d)TREFを用いて分別した際、40℃〜130℃の間で溶出する分子分画であって、同じ温度間で溶出する匹敵ランダムエチレンインターポリマーの分画と比べ、少なくとも5%高いコモノマーモル含量を有することを特徴とする分子分画を有し、但し、匹敵ランダムエチレンインターポリマーは、同じコモノマー(複数も)と、前記エチレン/α−オレフィンインターポリマーのものから10%以内にあるメルトインデックス、密度、およびポリマー全体に対するコモノマーモル含量とを有し、または
(e)G’(25℃)対G’(100℃)の比が約1:1から約10:1である、25℃での貯蔵弾性率G’(25℃)および100℃での貯蔵弾性率G’(100℃)を特徴とし、または
(f)TREFを用いて分別した際、40℃〜130℃の間で溶出する少なくとも1つの分子分画であって、少なくとも0.5で約1までのブロック指数、および約1.3より大きい分子量分布Mw/Mnを有することを特徴とする分子分画、または
(g)0より大きく、約1までの平均ブロック指数、および約1.3より大きい分子量分布Mw/Mn。
【0006】
エチレン/α−オレフィンインターポリマーの上記特性(1)〜(7)は、何らかの相当程度の架橋、即ち架橋の前のエチレン/α−オレフィンインターポリマーに関して示している。本発明に有用なエチレン/α−オレフィンインターポリマーは、通常、所望の性質を得る程度まで架橋される。架橋前に測定した特性(1)〜(7)を使用するとは、該インターポリマーを架橋する必要がないと示唆することを意味するのではなく、相当程度に架橋していない該インターポリマーに関して、その特性を測定することを意味するに過ぎない。架橋は、特定のポリマーおよび架橋度に応じて、こうした性質のそれぞれを変化させることもあれば、変化させないこともある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】従来のランダムコポリマー(円で表示)およびチーグラー・ナッタコポリマー(三角で表示)と比較した際の、本発明のポリマー(菱形で表示)に対する融点/密度の相関関係を示す図である。
【図2】各種ポリマーに対するDSC溶融エンタルピーの関数としてのデルタDSC−CRYSTAFのプロットを示す図である。菱形はランダムエチレン/オクテンコポリマーを表し、四角はポリマー例1〜4を表し、三角はポリマー例5〜9を表し、円はポリマー例10〜19を表す。「X」記号はポリマー例A*〜F*を表す。
【図3】本発明のインターポリマー(四角および円で表示)ならびに従来のコポリマー(各種AFFINITY(商標)ポリマー(The Dow Chemical Companyから入手可能)である、三角で表示)から作製した無配向フィルムに関して、弾性回復率に対する密度の効果を示す図である。四角は本発明のエチレン/ブテンコポリマーを表し、円は本発明のエチレン/オクテンコポリマーを表す。
【図4】実施例5のポリマー(円で表示)ならびに比較ポリマーEおよびF(「X」記号で表示)に関して、TREF分別したエチレン/1−オクテンコポリマー分画のオクテン含量を、分画のTREF溶出温度に対してプロットした図である。菱形は従来のランダムエチレン/オクテンコポリマーを表す。
【図5】実施例5のポリマー(曲線1)および比較F(曲線2)に関して、TREF分別したエチレン/1−オクテンコポリマー分画のオクテン含量を、分画のTREF溶出温度に対してプロットした図である。四角は実施例F*を表し、三角は実施例5を表す。
【図6】比較のエチレン/1−オクテンコポリマー(曲線2)およびプロピレン/エチレンコポリマー(曲線3)、ならびに異なる量の連鎖シャトリング剤(chain shuttling agent)で作製された本発明のエチレン/1−オクテンブロックコポリマー2種(曲線1)に関して、温度の関数として貯蔵弾性率の対数をグラフ化した図である。
【図7】幾つかの既知ポリマーと比較した際の、本発明の幾つかのポリマー(菱形で表示)に関するTMA(1mm)対曲げ弾性率のプロットを示す図である。三角は各種Dow VERSIFY(商標)ポリマー(The Dow Chemical Companyから入手可能)を表し、円は各種のランダムエチレン/スチレンコポリマーを表し、四角は各種Dow AFFINITY(商標)ポリマー(The Dow Chemical Companyから入手可能)を表す。
【図8】各種CSY試料に対してコーン染色後の残留繊維テナシティを示す図である。
【図9】オレフィンブロックポリマーに関する電子線照射量対架橋率(%)のプロットを示す図である。
【図10】実施例31で使用した蒸気処理条件を示す図である。
【図11】実施例31のFST試験の結果を示す図である。
【図12】実施例32に対して、全ての層に亘って平均したΔE値、および最外層(表面層)、最内層(コア層)間のΔEを示す図である。
【図13】実施例32の平均ΔEの計算に使用した、ΔL*、Δa*およびΔb*の各平均値のプロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一般定義
「繊維」とは、長さ対直径比が約10より大きい材料を意味する。繊維は、通常その直径に従って分類される。フィラメント繊維は、フィラメント当たり約15デニール超、通常は約30デニール超の個々の繊維直径を有するものと一般に定義される。細デニール繊維は、一般に、フィラメント当たり約15デニール未満の直径を有する繊維を指す。
【0009】
「フィラメント繊維」または「モノフィラメント繊維」とは、確定した長さの不連続な材料ストランド(即ち、所定長さの断片に切断された、または別の方法で分割されたストランド)である「ステープル繊維」とは反対に、不確定な(即ち、予め決まっていない)長さの連続的な材料ストランドを意味する。
【0010】
「弾性」とは、繊維が、1回目の引張り後に伸びた長さの少なくとも約50%回復し、4回目の引張り後には100%の歪み(その長さの2倍となる)まで回復することになることを意味する。弾性は、繊維の「永久歪み」によっても表現することができる。永久歪みは、弾性の逆である。繊維は、特定の点まで延伸され、その後、延伸前の元の位置まで解放され、次いで再び延伸される。繊維が荷重を引張り始める点を永久歪み率(%)と呼称する。「弾性材料」は、当技術分野では「エラストマー」および「エラストマー性」とも称する。弾性材料(ときには弾性物品と称する)には、コポリマー自体、ならびにそれだけに限らないが、繊維、フィルム、細片、テープ、リボン、シート、被膜、成形物などの形態のコポリマーも含まれる。好ましい弾性材料は繊維である。弾性材料は、硬化もしくは非硬化、照射もしくは非照射、および/または架橋もしくは非架橋のいずれにも処理することができる。
【0011】
「非弾性材料」とは、上記定義のような弾性を示さない材料、例えば繊維を意味する。
【0012】
「ホモフィル(homofil)繊維」とは、単一のポリマー領域またはドメインを有し、(複合繊維のように)他の異なるポリマー領域を全く有していない繊維を意味する。
【0013】
「複合繊維」とは、2種以上の異なるポリマー領域またはドメインを有する繊維を意味する。複合繊維は、コンジュゲート繊維または多成分繊維としても知られている。2種以上の成分は同じポリマーを含んでもよいが、ポリマーは、通常相互に異なっている。該ポリマーは、複合繊維の断面全体の実質的に異なる帯域に配置され、通常、複合繊維の長さに沿って連続的に延在している。複合繊維の構成は、例えば、鞘/芯配置(一方のポリマーが他方に囲まれている)、並行配置、パイ状配置、または「海島」配置でもよい。複合繊維は、米国特許第6225243号、第6140442号、第5382400号、第5336552号および第5108820号に更に記載されている。
【0014】
「糸」とは、織物または編み物および他の物品の製造に使用できる、撚ったまたは別の方法で絡ませたフィラメントの連続長を意味する。糸は、被覆することもしないこともできる。カバードヤーンは、別の繊維または材料、通常は綿や羊毛などの天然繊維の外皮内に少なくとも一部が包まれた糸である。
【0015】
「ポリマー」とは、同種、異種に関わらずモノマーの重合により調製されるポリマー化合物を意味する。「ポリマー」という総称は、用語「ホモポリマー」、「コポリマー」、「ターポリマー」ならびに「インターポリマー」を包含する。
【0016】
「インターポリマー」とは、異なる少なくとも2種のモノマーの重合により調製されるポリマーを意味する。「インターポリマー」という総称には、用語「コポリマー」(異なる2種のモノマーから調製されるポリマーを指すために、通常使用される)、ならびに用語「ターポリマー」(異なる3種のモノマーから調製されるポリマーを指すために、通常使用される)が含まれる。それは、4種以上のモノマーの重合により作製されるポリマーも包含する。
【0017】
「エチレン/α−オレフィンインターポリマー」とは、エチレンおよび3個以上の炭素原子を有するα−オレフィンを含むポリマーを一般に指す。好ましくは、エチレンが、ポリマー全体の過半のモル分率を占める、即ち、エチレンが、ポリマー全体の少なくとも約50モル%を占める。より好ましくは、エチレンが、ポリマー全体の少なくとも約60モル%、少なくとも約70モル%、または少なくとも約80モル%を占め、ポリマー全体の実質的な残部には、好ましくは、3個以上の炭素原子を有するα−オレフィンである少なくとも1種の他のコモノマーが含まれる。多くのエチレン/オクテンコポリマーの場合、好ましい組成物は、ポリマー全体の約80モル%より大きいエチレン含量、およびポリマー全体の約10〜約15、好ましくは約15〜約20モル%のオクテン含量を含む。幾つかの実施形態では、エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、低収率もしくは少量で、または化学プロセスの副生物として生成するものを含めない。エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、1種または複数のポリマーとブレンドすることができるが、生成したままのエチレン/α−オレフィンインターポリマーは、実質的に純粋であり、重合プロセスの反応生成物の主成分を含むことが多い。
【0018】
エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、化学的または物理的性質が異なる2種以上の重合済みモノマー単位の複数のブロックまたはセグメントを特徴とする重合済み形態で、エチレンおよび1種または複数の共重合性α−オレフィンコモノマーを含む。即ち、エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、ブロックインターポリマー、好ましくはマルチブロックのインターポリマーまたはコポリマーである。用語「インターポリマー」および「コポリマー」は、本明細書では互換的に使用される。幾つかの実施形態では、マルチブロックコポリマーは、次式により表すことができ、
(AB)n
式中、nは、少なくとも1、好ましくは2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100またはそれより大などの1より大きい整数であり、Aはハードブロックまたはセグメントを表し、Bはソフトブロックまたはセグメントを表す。好ましくは、AおよびBは、実質的に分岐してまたは実質的に星形にとは反対に、実質的に線状に連結されている。他の実施形態では、AブロックおよびBブロックは、ポリマー鎖に沿ってランダムに分布している。他の実施形態では、ブロックコポリマーは、以下のような構造を有していない。
AAA−−−AA−BBB−−−BB
【0019】
更に他の実施形態では、ブロックコポリマーは、通常、異なるコモノマー(複数も)を含む第3型のブロックを有していない。更に他の実施形態では、ブロックAおよびブロックB各々は、そのブロック内に実質的にランダムに分布するモノマーまたはコモノマーを有している。言い換えれば、ブロックAもブロックBも、そのブロックの残部と実施的に組成が異なる、先端部セグメントのような個別組成のサブセグメント(またはサブブロック)を2個以上含んでいない。
【0020】
マルチブロックポリマーは、様々な量の「ハード」および「ソフト」セグメントを通常含む。「ハード」セグメントとは、エチレンが、ポリマーの重量に基づいて約95重量%より多い、好ましくは約98重量%より多い量で存在する、重合済み単位のブロックを指す。言い換えれば、ハードセグメント中のコモノマー含量(エチレン以外のモノマーの含量)は、ポリマーの重量に基づいて約5重量%より少ない、好ましくは約2重量%より少ない。幾つかの実施形態では、ハードセグメントは、全てがまたは実質的に全てがエチレンを含む。他方、「ソフト」セグメントとは、コモノマー含量(エチレン以外のモノマーの含量)が、ポリマーの重量に基づいて約5重量%より多い、好ましくは約8重量%より多い、約10重量%より多い、または約15重量%より多い、重合済み単位のブロックを指す。幾つかの実施形態では、ソフトセグメント中のコモノマー含量は、約20重量%より多い、約25重量%より多い、約30重量%より多い、約35重量%より多い、約40重量%より多い、約45重量%より多い、約50重量%より多い、または約60重量%より多いこともある。
【0021】
ソフトセグメントは、ブロックインターポリマー中に、ブロックインターポリマーの全重量に対して約1重量%〜約99重量%、好ましくは、ブロックインターポリマーの全重量に対して約5重量%〜約95重量%、約10重量%〜約90重量%、約15重量%〜約85重量%、約20量%〜約80重量%、約25量%〜約75重量%、約30重量%〜約70重量%、約35重量%〜約65重量%、約40重量%〜約60重量%、または約45重量%〜約55重量%、しばしば存在し得る。逆に、ハードセグメントは同様な範囲で存在し得る。ソフトセグメントの重量%およびハードセグメントの重量%は、DSCまたはNMRから得たデータに基づいて計算することができる。このよう方法および計算は、Colin L. P. Shan, Lonnie Hazlitt, et. al.の氏名で2006年3月15日に出願され、Dow Global Technologies Inc.に譲渡されており、開示内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる、名称「Ethylene/α-Olefins Block Interpolymers」の同時出願した米国特許出願第11/376835号、代理人整理番号385063999558に開示されている。
【0022】
用語「結晶性」とは、それを用いる場合、示差走査熱量測定(DSC)または同等技法で決定した際、一次転移点または結晶融点(Tm)を有するポリマーを指す。この用語は、「半結晶性」という用語と互換的に使用し得る。用語「非晶性」とは、示差走査熱量測定(DSC)または同等技法で決定した際、結晶融点を欠いたポリマーを指す。
【0023】
用語「マルチブロックコポリマー」または「セグメント化コポリマー」とは、好ましくは線状に結合した、化学的に異なる2個以上の領域またはセグメント(「ブロック」と称する)を含むポリマー、即ち、側鎖結合やグラフト化ではなく、重合済みエチレン官能基に関して末端間で結合している、化学的に差別化された単位を含むポリマーを指す。好ましい実施形態では、ブロック同士は、その中に組み入れられているコモノマーの量もしくは種類、密度、結晶性の量、当該組成のポリマーに起因する結晶子のサイズ、立体規則性の種類もしくは程度(アイソタクチックもしくはシンジオタクチック)、位置規則性もしくは位置不規則性、長鎖分岐もしくは高分岐を含む分岐の量、均質性、または他の任意の化学的もしくは物理的性質が異なる。マルチブロックコポリマーは、コポリマーの特異なプロセス製法による、両方の多分散指数(PDIもしくはMw/Mn)の特異な分布、ブロック長分布、および/またはブロック数分布を特徴とする。より具体的には、連続法で製造した場合、該ポリマーは、望ましくは1.7〜2.9、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.8〜2.2、最も好ましくは1.8〜2.1のPDIを有する。バッチ法またはセミバッチ法で製造した場合、該ポリマーは、1.0〜2.9、好ましくは1.3〜2.5、より好ましくは1.4〜2.0、最も好ましくは1.4〜1.8のPDIを有する。
【0024】
以下の説明では、本明細書に開示される全ての数字は、それに関して「約」または「およその」という単語が使用されているか否かに関わらず、近似値である。そうした数字は、1%、2%、5%、またはときには10〜20%変化し得る。下限RLおよび上限RUの数値範囲が開示されるときは常に、この範囲内に入る任意の数字が具体的に開示される。特に、この範囲内の以下の数字:R=RL+k*(RU−RL)が具体的に開示され、式中kは、増分1%の1%〜100%に亘る変数である、即ちkは、1%、2%、3%、4%、5%、・・・50%、51%、52%、・・・95%、96%、97%、98%、99%または100%である。その上、上記で規定する2つのR数が画定する任意の数値範囲も、具体的に開示される。
【0025】
エチレン/α−オレフィンインターポリマー
本発明の実施形態で使用されるエチレン/α−オレフィンインターポリマー(「本発明のインターポリマー」または「本発明のポリマー」とも称する)は、化学的または物理的性質が異なる2種以上の重合済みモノマー単位の複数のブロックまたはセグメント(ブロックインターポリマー)、好ましくはマルチブロックコポリマーを特徴とする重合済み形態で、エチレンおよび1種または複数の共重合性α−オレフィンコモノマーを含む。該エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、以下に記載する態様の1つまたは複数を特徴とする。
【0026】
一態様では、本発明の実施形態で使用されるエチレン/α−オレフィンインターポリマーは、約1.7から約3.5のMw/Mn、および℃単位の少なくとも1つの融点Tm、およびg/cm3単位の密度dを有し、前記変数の数値が次式の相関関係:
Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)2、好ましくは
Tm≧−6288.1+13141(d)−6720.3(d)2、より好ましくは
Tm≧858.91−1825.3(d)+1112.8(d)2
に対応する。
【0027】
このような融点/密度の相関関係は、図1に例示されている。融点が密度の減少と共に減少するエチレン/α−オレフィンの従来のランダムコポリマーと異なり、本発明のインターポリマー(菱形で表示)は、特に密度が約0.87g/cc〜約0.95g/ccの間にあるとき、密度に実質的に依存しない融点を示す。例えば、密度が約0.875g/cc〜約0.945g/ccに亘るとき、このようなポリマーの融点は約110℃〜約130℃の範囲にある。幾つかの実施形態では、密度が約0.875g/cc〜約0.945g/ccに亘るとき、このようなポリマーの融点は約115℃〜約125℃の範囲にある。
【0028】
別の態様では、該エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、重合済みの形態で、エチレンおよび1種または複数のα−オレフィンを含み、示差走査熱量測定(「DSC」)の最高ピークに対する温度マイナス結晶化分析分別(Crystallization Analysis Fractionation)(「CRYSTAF」)の最高ピークに対する温度として定義される℃単位のΔT、およびJ/g単位の融解熱ΔHを特徴とし、ΔTおよびΔHが、130J/gまでのΔHに対して次式の相関関係:
ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81、好ましくは
ΔT≧−0.1299(ΔH)+64.38、より好ましくは
ΔT≧−0.1299(ΔH)+65.95
を満足する。その上、ΔTは、130J/gより大きいΔHに対して、48℃以上である。
該CRYSTAFピークは、累積ポリマーの少なくとも5%を用いて決定され(即ち、このピークは累積ポリマーの少なくとも5%を代表しなければならない)、該ポリマーの5%未満が特定可能なCRYSTAFピークを有する場合、該CRYSTAF温度は30℃であり、ΔHはJ/g単位の融解熱の数値である。より好ましくは、最高CRYSTAFピークが累積ポリマーの少なくとも10%を含有する。図2は、本発明のポリマーならびに比較例のプロットしたデータを示す。積分ピーク面積およびピーク温度は、機器メーカーが供給したコンピュータ処理描図プログラムによって計算される。比較のランダムエチレンオクテンポリマーに対して示した斜線は、等式ΔT=−0.1299(ΔH)+62.81に対応する。
【0029】
更に別の態様では、該エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、昇温溶出分別(Temperature Rising Elution Fractionation)(「TREF」)を用いて分別した際、40℃〜130℃の間で溶出する分子分画であって、同じ温度間で溶出する匹敵ランダムエチレンインターポリマーの分画と比べ、好ましくは少なくとも5%高い、より好ましくは少なくとも10%高いコモノマーモル含量を有することを特徴とする分子分画を有し、但し、匹敵ランダムエチレンインターポリマーは、同じコモノマー(複数も)を含有し、該エチレン/α−オレフィンインターポリマーのものから10%以内にあるメルトインデックス、密度、およびポリマー全体に対するコモノマーモル含量を有する。好ましくは、該匹敵インターポリマーのMw/Mnも、該ブロックインターポリマーのMw/Mnの10%以内にあり、および/または該匹敵インターポリマーは、該ブロックインターポリマーの全コモノマー含量の10重量%以内にあるその含量を有する。
【0030】
更に別の態様では、該エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、エチレン/α−オレフィンインターポリマーの圧縮成形フィルムに関して測定した、歪み率300%および1サイクルでの%単位の弾性回復率Reを特徴とし、g/cm3単位の密度dを有し、エチレン/α−オレフィンインターポリマーが架橋相を実質的に含有しない場合に、Reおよびdの数値が次式の相関関係:
Re>1481−1629(d)、好ましくは
Re≧1491−1629(d)、より好ましくは
Re≧1501−1629(d)、一層より好ましくは
Re≧1511−1629(d)
を満足する。
【0031】
図3は、ある種の本発明のインターポリマーおよび従来のランダムコポリマーから作製した無配向フィルムに関して、弾性回復率に対する密度の効果を示す。同じ密度の場合、本発明のインターポリマーの方が実質的に高い弾性回復率を有する。
【0032】
幾つかの実施形態では、該エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、11cm/分のクロスヘッド移動速度で、10MPa超の引張り強度、好ましくは引張り強度≧11MPa、より好ましくは引張り強度≧13MPa、および/または破断伸びとして少なくとも600%、より好ましくは少なくとも700%、非常に好ましくは少なくとも800%、最も非常に好ましくは少なくとも900%を有する。
【0033】
他の実施形態では、該エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、(1)貯蔵弾性率比G’(25℃)/G’(100℃)として1〜50、好ましくは1〜20、より1〜10、および/または(2)70℃圧縮永久歪みとして80%未満、好ましくは70%未満、殊のほか60%未満、50%未満、もしくは40%未満で0%までの圧縮永久歪みを有する。
【0034】
更に他の実施形態では、該エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、80%未満、70%未満、60%未満または50%未満の70℃圧縮永久歪みを有する。好ましくは、該インターポリマーの70℃圧縮永久歪みは、40%未満、30%未満、20%未満であり、約0%まで低下することもある。
【0035】
幾つかの実施形態では、該エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、85J/g未満の融解熱、および/またはペレットブロッキング強度として100ポンド/平方フィート(4800Pa)以下、好ましくは50lb/ft2(2400Pa)以下、殊のほか5lb/ft2(240Pa)以下、更に0lb/ft2(0Pa)ほどの低値を有する。
【0036】
他の実施形態では、該エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、重合済みの形態で、少なくとも50モル%のエチレンを含み、70℃圧縮永久歪みとして80%未満、好ましくは70%未満または60%未満、最も好ましくは40〜50%未満、更に0%近くまでの低値を有する。
【0037】
幾つかの実施形態では、該マルチブロックコポリマーは、ポアッソン分布ではなくシュルツ−フローリー分布に合致するPDIを有する。該コポリマーは、更に、多分散ブロック分布、多分散ブロックサイズ分布の両方を有し、最確のブロック長分布を有するものと特徴付けられる。好ましいマルチブロックコポリマーは、末端ブロックを含め4個以上のブロックまたはセグメントを含有するものである。より好ましくは、該コポリマーは、末端ブロックを含め、少なくとも5個、10個または20個のブロックまたはセグメントを含む。
【0038】
コモノマー含量は、適切な任意の技法を用いて測定し得るが、核磁気共鳴(「NMR」)分光法に基づく技法が好ましい。その上、相対的に広幅のTREF曲線を有するポリマーまたはポリマーブレンドの場合、該ポリマーは、TREFを用いて、各々が10℃以下の溶出温度範囲を有する分画に最初に分別されるのが望ましい。即ち、各溶出分画は、10℃以下の回収温度ウィンドウを有する。この技法を用いると、前記のブロックインターポリマーは、匹敵インターポリマーの対応する分画よりコモノマーモル含量が高い、少なくとも1つのそのような分画を有する。
【0039】
別の態様では、本発明のポリマーは、重合済み形態で、好ましくは、エチレンおよび1種または複数の共重合性コモノマーを含むオレフィンインターポリマーであって、化学的または物理的性質が異なる2種以上の重合済みモノマー単位の複数のブロック(即ち、少なくとも2個のブロック)またはセグメント(ブロックインターポリマー)、最も好ましくはマルチブロックコポリマーを特徴とし、前記のブロックインターポリマーが、40℃〜130℃の間で溶出する(しかし、個々の分画の回収および/または単離をせずに)ピーク(しかし、単なる分子分画ではない)を有するオレフィンインターポリマーであって、前記ピークが、赤外分光法により、全幅/半値(FWHM)面積計算を用いて展開したときに推定したコモノマー含量を有し、同じ溶出温度において全幅/半値(FWHM)面積計算を用いて展開した、匹敵ランダムエチレンインターポリマーのピークの平均コモノマーモル含量より高い、好ましくは少なくとも5%高い、より好ましくは少なくとも10%高い、その平均モル含量を有することを特徴とし、但し、匹敵ランダムエチレンインターポリマーは、同じコモノマー(複数も)を有し、前記エチレン/α−オレフィンインターポリマーのものから10%以内にあるメルトインデックス、密度、およびポリマー全体に対するコモノマーモル含量を有する。好ましくは、該匹敵インターポリマーのMw/Mnも、該ブロックインターポリマーのMw/Mnの10%以内にあり、および/または該匹敵インターポリマーは、該ブロックインターポリマーの全コモノマー含量の10重量%以内にあるその含量を有する。全幅/半値(FWHM)計算は、ATREF赤外検出器から得たメチル対メチレン応答面積比[CH3/CH2]に基づき、その際、最高ピーク(最大ピーク)を基底線から特定し、次いでFWHM面積を決定する。ATREFピークを用いて測定した分布の場合、FWHM面積は、そのピーク高さを2で割り、次いで基底線に対して水平であり、ATREF曲線の左部および右部と交差する線を引くことにより、ATREFピークの左側および右側に決めた各点であるT1およびT2の間の曲線下面積と定義される。コモノマー含量に対する較正曲線は、ランダムエチレン/α−オレフィンコポリマーを用い、NMRからのコモノマー含量をTREFピークのFWHM面積比に対してプロットして作成される。この赤外法では、較正曲線は、対象とする同じコモノマー種に対して作成される。本発明のポリマーのTREFピークのコモノマー含量は、TREFピークのFWHMのメチル対メチレン面積比[CH3/CH2]を用いて、この較正曲線を参照することにより決定することができる。
【0040】
コモノマー含量は、適切な任意の技法を用いて測定し得るが、核磁気共鳴(NMR)分光法に基づく技法が好ましい。この技法を用いると、前記のブロックインターポリマーは、対応する匹敵インターポリマーより高いコモノマーモル含量を有する。
【0041】
エチレンおよび1−オクテンのインターポリマーの場合、好ましくは、そのブロックインターポリマーでは、40〜130℃の間で溶出するTREF分画のコモノマー含量が、(−0.2013)T+20.07の量以上、より好ましくは(−0.2013)T+21.07の量以上であり、式中Tは、比較するTREF分画の溶出ピーク温度を℃単位で測定した数値である。
【0042】
図4は、エチレンおよび1−オクテンのブロックインターポリマーの実施形態を図示するが、図中、匹敵エチレン/1−オクテンインターポリマー(ランダムコポリマー)数種のコモノマー含量対TREF溶出温度のプロットは、(−0.2013)T+20.07を表す線(実線)に合致している。等式(−0.2013)T+21.07に対する線は、点線で描かれている。本発明のブロックエチレン/1−オクテンインターポリマー(マルチブロックコポリマー)数種の分画に対しても、コモノマー含量が描かれている。ブロックインターポリマーの全分画が、同等の溶出温度においていずれの線より有意に高い1−オクテン含量を有する。この結果は、本発明のインターポリマーに特徴的であり、結晶性、非晶性を併有するポリマー鎖内の差別化ブロックの存在によると考えられる。
【0043】
図5は、以下に考察する実施例5および比較Fに対して、ポリマー分画のTREF曲線およびコモノマー含量を図示している。40〜130℃、好ましくは60℃〜95℃で溶出する両ポリマーのピークは、3つの部分に分別され、各部分が10℃未満の温度範囲に亘って溶出する。実施例5の実データは三角で表されている。異なるコモノマーを含有するインターポリマーのために適当な較正曲線を構築し、同じモノマーの比較インターポリマー、好ましくは、メタロセンまたは他の均一触媒組成物を用いて作製したランダムコポリマーから得たTREF値に合致させた線を、比較に使用し得ることは、当業者には理解することができる。本発明のインターポリマーは、較正曲線から決定した同一TREF溶出温度における値より大きい、好ましくは少なくとも5%大きい、より好ましくは少なくとも10%大きいコモノマーモル含量を特徴とする。
【0044】
上記の態様および本明細書に記載の性質に加えて、本発明のポリマーは、1つまたは複数の付加的性質を特徴とすることができる。一態様では、本発明のポリマーは、重合済み形態で、好ましくは、エチレンおよび1種または複数の共重合性コモノマーを含むオレフィンインターポリマーであって、化学的または物理的性質が異なる2種以上の重合済みモノマー単位の複数のブロックまたはセグメント(ブロックインターポリマー)、最も好ましくはマルチブロックコポリマーを特徴とし、前記のブロックインターポリマーが、TREF増分を用いて分別した際、40℃〜130℃の間で溶出する分子分画を有するオレフィンインターポリマーであって、前記分画が、同じ温度間で溶出する匹敵ランダムエチレンインターポリマーの分画のコモノマーモル含量より高い、好ましくは少なくとも5%高い、より好ましくは少なくとも10、15、20または25%高い、そのモル含量を有することを特徴とし、但し、匹敵ランダムエチレンインターポリマーは、同じコモノマー(複数も)を含み、好ましくはそれが同じコモノマー(複数も)であり、該ブロックインターポリマーのものから10%以内にあるメルトインデックス、密度、およびポリマー全体に対するコモノマーモル含量を有する。好ましくは、該匹敵インターポリマーのMw/Mnも、該ブロックインターポリマーのMw/Mnの10%以内にあり、および/または該匹敵インターポリマーは、該ブロックインターポリマーの全コモノマー含量の10重量%以内にあるその含量を有する。
【0045】
好ましくは、上記インターポリマーは、エチレンおよび少なくとも1種のα−オレフィンのインターポリマー、殊のほか、約0.855〜約0.935g/cm3の全ポリマー密度を有するインターポリマーであり、約1モル%超のコモノマーを有するポリマーの場合、より殊のほか、そのブロックインターポリマーでは、40〜130℃の間で溶出するTREF分画のコモノマー含量が、(−0.1356)T+13.89の量以上、より好ましくは(−0.1356)T+14.93の量以上、最も好ましくは(−0.2013)T+21.07の量以上であり、式中Tは、比較するTREF分画のATREF溶出ピーク温度を℃単位で測定した数値である。
【0046】
好ましくは、エチレンおよび少なくとも1種のα−オレフィンの上記インターポリマー、殊のほか、約0.855〜約0.935g/cm3の全ポリマー密度を有するインターポリマーの場合、より殊のほか、約1モル%超のコモノマーを有するポリマーの場合、そのブロックインターポリマーでは、40〜130℃の間で溶出するTREF分画のコモノマー含量が、(−0.2013)T+20.07の量以上、より好ましくは(−0.2013)T+21.07の量以上であり、式中Tは、比較するTREF分画の溶出ピーク温度を℃単位で測定した数値である。
【0047】
更に別の態様では、本発明のポリマーは、重合済み形態で、好ましくは、エチレンおよび1種または複数の共重合性コモノマーを含むオレフィンインターポリマーであって、化学的または物理的性質が異なる2種以上の重合済みモノマー単位の複数のブロックまたはセグメント(ブロックインターポリマー)、最も好ましくはマルチブロックコポリマーを特徴とし、前記のブロックインターポリマーが、TREF増分を用いて分別した際、40℃〜130℃の間で溶出する分子分画を有するオレフィンインターポリマーであって、少なくとも約6モル%のコモノマー含量を有するあらゆる分画が、約100℃より高い融点を有することを特徴とする。約3モル%〜約6モル%のコモノマー含量を有する分画の場合、あらゆる分画が、約110℃以上のDSC融点を有する。より好ましくは、少なくとも1モル%のコモノマーを有する前記のポリマー分画は、次の等式:
Tm≧(−5.5926)(分画中のモル%コモノマー)+135.90
に一致するDSC融点を有する。
【0048】
更に別の態様では、本発明のポリマーは、重合済み形態で、好ましくは、エチレンおよび1種または複数の共重合性コモノマーを含むオレフィンインターポリマーであって、化学的または物理的性質が異なる2種以上の重合済みモノマー単位の複数のブロックまたはセグメント(ブロックインターポリマー)、最も好ましくはマルチブロックコポリマーを特徴とし、前記のブロックインターポリマーが、TREF増分を用いて分別した際、40℃〜130℃の間で溶出する分子分画を有するオレフィンインターポリマーであって、約76℃以上のATREF溶出温度を有するあらゆる分画が、DSCで測定したとき、次の等式:
融解熱(J/g)≦(3.1718)(℃単位のATREF溶出温度)−136.58
に一致する溶融エンタルピー(融解熱)を有することを特徴とする。
【0049】
本発明のブロックインターポリマーは、TREF増分を用いて分別した際、40℃〜130℃の間で溶出する分子分画を有し、40℃と約76℃未満の間のATREF溶出温度を有するあらゆる分画が、DSCで測定したとき、次の等式:
融解熱(J/g)≦(1.1312)(℃単位のATREF溶出温度)+22.97
に一致する溶融エンタルピー(融解熱)を有することを特徴とする。
【0050】
赤外検出器によるATREFピークのコモノマー組成測定
TREFピークのコモノマー組成は、Polymer Char, Valencia, Spain (http://www.polymerchar.com/) から入手できるIR4赤外検出器を用いて測定することができる。
【0051】
該検出器の「組成モード」は、2800〜3000cm−1の領域にある固定された狭帯域赤外フィルターである、測定センサー(CH2)および組成センサー(CH3)を装備している。測定センサーは、ポリマー上のメチレン(CH2)炭素(溶液中のポリマー濃度に直接関係する)を検出するのに対し、組成センサーは、ポリマーのメチル(CH3)基を検出する。組成シグナル(CH3)割る測定シグナル(CH2)の数学的比率は、溶液中の測定ポリマーのコモノマー含量に敏感であり、その応答は、エチレン・α−オレフィンコポリマーの既知標準品で較正される。
【0052】
該検出器は、ATREF計測器と共に使用した場合、TREF過程中における溶出ポリマーの濃度(CH2)および組成(CH3)の両シグナル応答を与える。ポリマー特異的較正は、既知のコモノマー含量の各ポリマーについて、CH3対CH2の面積比を測定する(好ましくはNMRで測定される)ことにより、創生することができる。ポリマーのATREFピークのコモノマー含量は、CH3およびCH2個々の応答の面積比に参照較正を適用することにより、推定することができる(即ち、面積比CH3/CH2対コモノマー含量)。
【0053】
ピークの面積は、TREFクロマトグラムの個々のシグナル応答を積分するために適当な基底線を適用した後、全幅/半値(FWHM)計算を用いて計算することができる。全幅/半値計算は、ATREF赤外検出器から得るメチル対メチレン応答面積比[CH3/CH2]に基づいており、その際最高ピーク(最大ピーク)を基底線から特定し、次いでFWHM面積を決定する。ATREFピークを用いて測定した分布の場合、FWHM面積は、そのピーク高さを2で割り、次いで基底線に対して水平であり、ATREF曲線の左部および右部と交差する線を引くことにより、ATREFピークの左側および右側に決めた各点であるT1およびT2の間の曲線下面積と定義される。
【0054】
このATREF赤外法においてポリマーのコモノマー含量を測定するための赤外分光法の適用は、原理的には以下の参考文献に記載のようなGPC/FTIRシステムの適用に類似している。該参考文献は、Markovich, Ronald P.; Hazlitt, Lonnie G.; Smith, Linley; "Development of gel-permeation chromatography-Fourier transform infrared spectroscopy for characterization of ethylene-based polyolefin copolymers", Polymeric Material Science and Engineering (1991), 65, 98-100およびDeslauriers, P.J.; Rohlfing, D.C.; Shieh, E.T.; "Quantifying short chain branching microstructures in ethylene-1-olefin copolymers using size exclusion chromatography and Fourier transform infrared spectroscopy (SEC-FTIR)", Polymer (2002), 43, 59-170であり、双方の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0055】
他の実施形態では、本発明のエチレン/α−オレフィンインターポリマーは、0より大きく、約1.0までである平均ブロック指数ABI、および約1.3より大きい分子量分布Mw/Mnを特徴とする。平均ブロック指数ABIは、分取TREFにおいて5℃の増分を用いて20℃および110℃から得られるポリマー分画各々に対するブロック指数(「BI」)の重量平均である、即ち
ABI=Σ(wiBIi)
であり、式中BIiは、分取TREFで得られる、本発明のエチレン/α−オレフィンインターポリマーの第i分画に対するブロック指数であり、wiは、第i分画の重量パーセントである。
【0056】
各ポリマー分画について、BIは、以下の2等式の一方で定義され(両式とも同じBI値を与える):
【0057】
【数1】
式中、Txは、第i分画に対する分取ATREF溶出温度(好ましくはケルビン単位で表示)であり、Pxは、上記のようにNMRまたはIRで測定できる、第i分画のエチレンモル分率である。PABは、NMRまたはIRでやはり測定できる、エチレン/α−オレフィンインターポリマー全体(分別前)のエチレンモル分率である。TAおよびPAは、純粋な「ハードセグメント」(該インターポリマーの結晶セグメントを指す)のATREF溶出温度およびエチレンモル分率である。一次近似として、TA値およびPA値は、「ハードセグメント」に対する実際値が利用できない場合、高密度ポリエチレンホモポリマーのそうした値に設定される。本明細書で行う計算については、TAは372°K、PAは1である。
【0058】
TABは、同じ組成であり、PABのエチレンモル分率を有するランダムコポリマーのATREF温度である。TABは、次の等式から計算することができ:
LnPAB=α/TAB+β
式中、αおよびβは、既知のランダムエチレンコポリマー多数を用いた較正により決定できる2つの定数である。αおよびβは、計測器毎に変化し得ることに留意されたい。その上、対象とするポリマー組成物を用い、その各分画とも同様な分子量の範囲で独自の較正曲線を創出する必要があろう。若干の分子量効果が存在する。較正曲線が同様な分子量の範囲から得られれば、このような効果は本質的に無視できよう。幾つかの実施形態では、ランダムエチレンコポリマーは、以下の相関関係:
LnP=−237.83/TATREF+0.639
を満足する。
【0059】
TXOは、同じ組成であり、PXのエチレンモル分率を有するランダムコポリマーのATREF温度である。TXOは、LnPX=α/TXO+βから計算することができる。反対に、PXOは、同じ組成であり、TXのATREF温度を有するランダムコポリマーのエチレンモル分率であり、LnPXO=α/TX+βから計算することができる。
【0060】
各分取TREF分画のブロック指数(BI)が得られてしまえば、ポリマー全体の重量平均ブロック指数ABIを計算することができる。幾つかの実施形態では、ABIは、0より大きいが、約0.3より小さい、または約0.1〜約0.3である。他の実施形態では、ABIは、約0.3より大きく、約1.0までである。好ましくは、ABIは、約0.4〜約0.7、約0.5〜約0.7、または約0.6〜約0.9の範囲に入るべきである。幾つかの実施形態では、ABIは、約0.3〜約0.9、約0.3〜約0.8、または約0.3〜約0.7、約0.3〜約0.6、約0.3〜約0.5、または約0.3〜約0.4の範囲に入る。他の実施形態では、ABIは、約0.4〜約1.0、約0.5〜約1.0、または約0.6〜約1.0、約0.7〜約1.0、約0.8〜約1.0、または約0.9〜約1.0の範囲に入る。
【0061】
本発明のエチレン/α−オレフィンインターポリマーの別の特性は、本発明のエチレン/α−オレフィンインターポリマーが、分取TREFから得ることができ、約0.1より大きく、約1.0までのブロック指数、および約1.3より大きい分子量分布Mw/Mnを有する、少なくとも1つのポリマー分画を含むことである。幾つかの実施形態では、該ポリマー分画は、約0.6より大きく約1.0まで、約0.7より大きく約1.0まで、約0.8より大きく約1.0まで、または約0.9より大きく約1.0までのブロック指数を有する。他の実施形態では、該ポリマー分画は、約0.1より大きく約1.0まで、約0.2より大きく約1.0まで、約0.3より大きく約1.0まで、約0.4より大きく約1.0まで、または約0.4より大きく約1.0までのブロック指数を有する。更に他の実施形態では、該ポリマー分画は、約0.1より大きく約0.5まで、約0.2より大きく約0.5まで、約0.3より大きく約0.5まで、または約0.4より大きく約0.5までのブロック指数を有する。更に他の実施形態では、該ポリマー分画は、約0.2より大きく約0.9まで、約0.3より大きく約0.8まで、約0.4より大きく約0.7まで、または約0.5より大きく約0.6までのブロック指数を有する。
【0062】
エチレンおよびα−オレフィンのコポリマーの場合、本発明のポリマーは、好ましくは(1)少なくとも1.3、より好ましくは少なくとも1.5、少なくとも1.7、もしくは少なくとも2.0、最も好ましくは少なくとも2.6、最大値5.0まで、より好ましくは最大値3.5まで、殊のほか最大値2.7までのPDI、(2)80J/g以下の融解熱、(3)少なくとも50重量%のエチレン含量、(4)−25℃未満、より好ましくは−30℃未満のガラス転移温度、および/または(5)唯一のTmを有する。
【0063】
更に、本発明のポリマーは、単独で、または本明細書に開示する他の任意の性質と組み合わさって、log(G’)が、温度100℃で400kPa以上、好ましくは1.0MPa以上となるように、貯蔵弾性率G’を有することができる。その上、本発明のポリマーは、ブロックコポリマーに特徴的であり、オレフィンポリマー、特にエチレンおよび1種または複数のC3〜8脂環式α−オレフィンではこれまで知られてない相対的に平坦な貯蔵弾性率(図6に例示)を、0〜100℃の範囲の温度の関数として有する。(この文脈における用語「相対的に平坦な」とは、logG’(パスカル単位)が、50〜100℃の間、好ましくは0〜100℃の間で1桁未満だけ減少することを意味する)。
【0064】
本発明のインターポリマーは、少なくとも90℃における熱機械分析の侵入度が1mm、ならびに曲げ弾性率が3kpsi(20MPa)〜13kpsi(90MPa)であることを更に特徴とし得る。あるいは、本発明のインターポリマーは、少なくとも104℃における熱機械分析の侵入度として1mm、ならびに曲げ弾性率として少なくとも3kpsi(20MPa)を有することができる。該ポリマーは、90mm3未満の耐摩耗性(または体積損失)を有すると特徴付けし得る。図7は、他の既知ポリマーと比較した場合の本発明のポリマーに対する、TMA(1mm)対曲げ弾性率を示す。本発明のポリマーは、他のポリマーより有意に良好な柔軟性−耐熱性バランスを有している。
【0065】
それに加え、該エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、0.01〜2000g/10分、好ましくは0.01〜1000g/10分、より好ましくは0.01〜500g/10分、殊のほか0.01〜100g/10分のメルトインデックスI2を有することができる。ある種の実施形態では、該エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、0.01〜10g/10分、0.5〜50g/10分、1〜30g/10分、1〜6g/10分、または0.3〜10g/10分のメルトインデックスI2を有している。ある種の実施形態では、該エチレン/α−オレフィンポリマーのメルトインデックスは、1g/10分、3g/10分、または5g/10分である。
【0066】
該ポリマーは、1000g/モル〜5000000g/モル、好ましくは1000g/モル〜1000000g/モル、より好ましくは10000g/モル〜500000g/モル、殊のほか10000g/モル〜300000g/モルの分子量Mwを有することができる。本発明のポリマーの密度は、0.80〜0.99g/cm3、好ましくはエチレン含有ポリマーの場合、0.85g/cm3〜0.97g/cm3とすることができる。ある種の実施形態では、該エチレン/α−オレフィンポリマーの密度は、0.860〜0.925g/cm3、または0.867〜0.910g/cm3の範囲にある。
【0067】
該ポリマーを作製する方法は、以下の特許出願:2004年3月17日出願の米国仮出願第60/553906号、2005年3月17日出願の米国仮出願第60/662937号、2005年3月17日出願の米国仮出願第60/662939号、2005年3月17日出願の米国仮出願第60/662938号、2005年3月17日出願のPCT出願第PCT/US2005/008916号、2005年3月17日出願のPCT出願第PCT/US2005/008915号、および2005年3月17日出願のPCT出願第PCT/US2005/008917号に開示されており、こうした出願全ては、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。例えば、そのような一方法は、エチレンと、場合によりエチレン以外の1種または複数の付加重合性モノマーとを、付加重合条件下で触媒組成物と接触させるステップであって、該触媒組成物が、
(A)高いコモノマー取込み指数を有する第1のオレフィン重合触媒、
(B)触媒(A)のコモノマー取込み指数の90%未満、好ましくは50%未満、最も好ましくは5%未満のコモノマー取込み指数を有する第2のオレフィン重合触媒、および
(C)連鎖シャトリング剤
の組合せから生じる混合物または反応生成物
を含む、ステップを含む。
【0068】
代表的な触媒および連鎖シャトリング剤は、以下の通りである。
【0069】
触媒(A1)は、国際公開第03/40195号、2003米国特許第0204017号、2003年5月2日出願の米国出願第10/429024号、および国際公開第04/24740号の教示に従って調製される、[N−(2,6−ジ(1−メチルエチル)フェニル)アミド)(2−イソプロピルフェニル)(α−ナフタレン−2−ジイル(6−ピリジン−2−ジイル)メタン)]ハフニウムジメチルである。
【0070】
【化1】
【0071】
触媒(A2)は、国際公開第03/40195号、2003米国特許第0204017号、2003年5月2日出願の米国出願第10/429024号、および国際公開第04/24740号の教示に従って調製される、[N−(2,6−ジ(1−メチルエチル)フェニル)アミド)(2−メチルフェニル)(1,2−フェニレン−(6−ピリジン−2−ジイル)メタン)]ハフニウムジメチルである。
【0072】
【化2】
【0073】
触媒(A3)は、ビス[N,N’’’−(2,4,6−トリ(メチルフェニル)アミド)エチレンジアミン]ハフニウムジベンジルである。
【0074】
【化3】
【0075】
触媒(A4)は、米国出願第2004/0010103号の教示に実質的に従って調製される、ビス((2−オキソイル−3−(ジベンゾ−1H−ピロール−1−イル)−5−(メチル)フェニル)−2−フェノキシメチル)シクロヘキサン−1,2−ジイルジルコニウム(IV)ジベンジルである。
【0076】
【化4】
【0077】
触媒(B1)は、1,2−ビス−(3,5−ジ−t−ブチルフェニレン)(1−(N−(1−メチルエチル)イミノ)メチル)(2−オキソイル)ジルコニウムジベンジルである。
【0078】
【化5】
【0079】
触媒(B2)は、1,2−ビス−(3,5−ジ−t−ブチルフェニレン)(1−(N−(2−メチルシクロヘキシル)イミノ)メチル)(2−オキソイル)ジルコニウムジベンジルである。
【0080】
【化6】
【0081】
触媒(C1)は、米国特許第6268444号の技法に実質的に従って調製される、(t−ブチルアミド)ジメチル(3−N−ピロリル−1,2,3,3a,7a−η−インデン−1−イル)シランチタニウムジメチルである。
【0082】
【化7】
【0083】
触媒(C2)は、米国出願第2003/004286号の教示に実質的に従って調製される、(t−ブチルアミド)ジ(4−メチルフェニル)(2−メチル−1,2,3,3a,7a−η−インデン−1−イル)シランチタニウムジメチルである。
【0084】
【化8】
【0085】
触媒(C3)は、米国出願第2003/004286号の教示に実質的に従って調製される、(t−ブチルアミド)ジ(4−メチルフェニル)(2−メチル−1,2,3,3a,8a−η−s−インダセン−1−イル)シランチタニウムジメチルである。
【0086】
【化9】
【0087】
触媒(D1)は、Sigma-Aldrichから入手できる、二塩化ビス(ジメチルジシロキサン)(インデン−1−イル)ジルコニウムである。
【0088】
【化10】
【0089】
シャトリング剤:使用されるシャトリング剤には、ジエチル亜鉛、ジ(i−ブチル)亜鉛、ジ(n−ヘキシル)亜鉛、トリエチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリエチルガリウム、i−ブチルアルミニウムビス(ジメチル(t−ブチル)シロキサン)、i−ブチルアルミニウムビス(ジ(トリメチルシリル)アミド)、n−オクチルアルミニウムジ(ピリジン−2−メトキシド)、ビス(n−オクタデシル)i−ブチルアルミニウム、i−ブチルアルミニウムビス(ジ(n−ペンチル)アミド)、n−オクチルアルミニウムビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシド、n−オクチルアルミニウムジ(エチル(1−ナフチル)アミド)、エチルアルミニウムビス(t−ブチルジメチルシロキシド)、エチルアルミニウムジ(ビス(トリメチルシリル)アミド)、エチルアルミニウムビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミド)、n−オクチルアルミニウムビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミド)、n−オクチルアルミニウムビス(ジメチル(t−ブチル)シロキシド、エチル亜鉛(2,6−ジフェニルフェノキシド)およびエチル亜鉛(t−ブトキシド)が挙げられる。
【0090】
好ましくは、前記の方法は、相互変換ができない複数触媒を用いて、2種以上のモノマー、より殊のほかエチレンおよびC3〜20オレフィンまたはシクロオレフィン、最も殊のほかエチレンおよびC4〜20α−オレフィンのブロックコポリマー、殊のほかマルチブロックコポリマー、好ましくは線状マルチブロックコポリマーを形成するための連続溶液法の形態を取る。即ち、該触媒同士は化学的に異なる。連続溶液重合の条件下、この方法は、高いモノマー転換率でのモノマー混合物の重合に理想的に適している。こうした重合条件下、連鎖シャトリング剤から触媒への往復は、連鎖成長と比べ有利になり、マルチブロックコポリマー、殊のほか線状マルチブロックコポリマーが、高い効率で形成される。
【0091】
本発明のインターポリマーは、従来のランダムコポリマー、物理的なポリマーブレンド、および逐次モノマー付加、流動触媒、アニオン性またはカチオン性リビング重合の各技法を介して調製したブロックコポリマーから差別化し得る。特に、結晶性または弾性率が同等な、同じモノマーおよびモノマー含量のランダムコポリマーと比較して、本発明のインターポリマーは、融点により測定した場合の良好な(高い)耐熱性、高いTMA侵入温度、高い高温引張り強度、および/または動的機械分析で決定した場合の高い高温捻れ貯蔵弾性率を有する。同じモノマーおよびモノマー含量を含有するランダムコポリマーと比較して、本発明のインターポリマーは、特に高温での低い永久圧縮歪み、低い応力緩和、高いクリープ抵抗、高い引裂き強度、高いブロッキング耐性、高い結晶化(固化)温度による迅速なセットアップ、高い回復性(特に高温で)、良好な耐摩耗性、高い収縮力、ならびにオイルおよび充填剤の良好な受容性を有する。
【0092】
本発明のインターポリマーは、独特な結晶化・分岐分布相関性も示す。即ち、本発明のインターポリマーは、同じモノマーおよびモノマー量を含有するランダムコポリマー、または全体密度が同等である、高密度ポリマーとより低密度のポリマーとのブレンドなどの物理的ポリマーブレンドと殊のほか比較した場合、融解熱の関数としてCRYSTAFおよびDSCを用いて測定した最高ピーク温度間に、相対的に大きな差を有する。本発明のインターポリマーのこの独特な特徴は、ポリマー骨格内のブロックにおけるコモノマーの独特な分布によると考えられる。特に、本発明のインターポリマーは、コモノマー含量の異なる交互ブロック(ホモポリマーブロックを含めて)を含み得る。本発明のインターポリマーは、密度またはコモノマー含量の異なるポリマーブロックの個数および/またはブロックサイズにおける分布も含み得るが、それはシュルツ−フローリー型分布である。それに加え、本発明のインターポリマーは、ポリマーの密度、弾性率およびモルフォロジーに実質的に依存しない、独特なピーク融点・結晶化温度プロファイルも有する。好ましい実施形態では、該ポリマーの微結晶規則性は、1.7未満、または1.5未満で1.3未満までさえのPDI値でも、ランダムまたはブロックコポリマーと識別できる特徴的な球状晶およびラメラを示す。
【0093】
その上、本発明のインターポリマーは、ブロック性の程度またはレベルに影響する技法を用いて調製し得る。即ち、ポリマーのブロックまたはセグメント各々のコモノマー量および長さは、触媒およびシャトリング剤の比率および種類、ならびに重合温度および他の重合変数を制御することにより、変化させることができる。この現象の驚くべき有益性は、ブロック性の程度が増加するにつれ、生成ポリマーの光学特性、引裂き強度および高温回復特性が改善するという発見である。特に、ポリマー中の平均ブロック数が増加するにつれ、ヘイズが減少する一方、透明度、引裂き強度および高温回復特性が増加する。所望の連鎖移動能(低レベルの連鎖停止を伴う高率のシャトリング)を有する、シャトリング剤および触媒の組合せを選択することにより、他種のポリマー停止が効果的に抑制される。したがって、本発明の実施形態によるエチレン/α−オレフィンコモノマー混合物の重合において、何らかのβヒドリド脱離が認められるにしても殆ど起こらず、生成する結晶性ブロックは、高度に、または実質的に完全に線状であり、殆どまたは全く長鎖分岐を有していない。
【0094】
高結晶性の連鎖末端を有するポリマーは、本発明の実施形態に従って選択的に調製することができる。エラストマー用途では、非晶性ブロックを末端とするポリマーの相対量の低下は、結晶領域に対する分子間希釈効果を低下させる。この結果は、水素または他の連鎖停止剤に対して適当な応答を示す、連鎖シャトリング剤および触媒を選択することにより得ることができる。具体的には、高結晶性のポリマーを生成する触媒が、より低結晶性のポリマーセグメントの生成(コモノマーのより高い取込み、位置エラーまたはアタクチックポリマー形成などにより)を担う触媒より、連鎖停止を受け易い(水素の使用などにより)ならば、高結晶性ポリマーセグメントがポリマー末端部を選択的に占めることになろう。生成した末端基が結晶性であるだけでなく、停止した際、高結晶性ポリマー形成の触媒部位が、ポリマー形成の再開にもう一度利用できる。そのため、初回形成ポリマーは、別の高結晶性ポリマーセグメントである。したがって、生成するマルチブロックコポリマーの両末端は、選択的に高結晶性である。
【0095】
本発明の実施形態で使用されるエチレン・α−オレフィンインターポリマーは、好ましくは、エチレンと少なくとも1種のC3〜C20α−オレフィンとのインターポリマーである。エチレンとC3〜C20α−オレフィンとのコポリマーが、殊のほか好ましい。該インターポリマーは、C4〜C18ジオレフィンおよび/またはアルケニルベンゼンを更に含んでもよい。エチレンとの重合に有用な適切な不飽和コモノマーには、例えば、エチレン性不飽和モノマー、共役または非共役ジエン、ポリエン、アルケニルベンゼンなどが挙げられる。このようなコモノマーの例には、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのC3〜C20α−オレフィンが含まれる。1−ブテンおよび1−オクテンが、殊のほか好ましい。他の適切なモノマーには、スチレン、ハロ置換またはアルキル置換スチレン、ビニルベンゾシクロブタン、1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンおよびナフテン類(例えば、シクロペンテン、シクロヘキセンおよびシクロオクテン)が含まれる。
【0096】
エチレン/α−オレフィンインターポリマーは好ましいポリマーではあるが、他のエチレン/オレフィンポリマーも使用し得る。本明細書で使用する場合のオレフィンとは、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する一群の不飽和炭化水素系化合物を指す。触媒の選択に応じて、本発明の実施形態では任意のオレフィンを使用し得る。好ましくは、適切なオレフィンは、ビニル不飽和基を含有するC3〜C20脂肪族および芳香族化合物、ならびにシクロブテン、シクロペンテン、ジシクロペンタジエン、およびそれだけに限らないが、C1〜C20ヒドロカルビルまたはシクロヒドロカルビル基で5位および6位で置換されているノルボルネンを含めたノルボルネンなどの環式化合物である。このようなオレフィンの混合物、ならびにこのようなオレフィンのC4〜C40ジオレフィン化合物との混合物も含まれる。
【0097】
オレフィンモノマーの例には、それだけに限らないが、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、および1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4,6−ジメチル−1−ヘプテン、4−ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン、ノルボルナジエン、エチリデンノルボルネン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、シクロオクテン、それだけに限らないが1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエンを含めたC4〜C40ジエン、他のC4〜C40α−オレフィンなどが含まれる。ある種の実施形態では、α−オレフィンは、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンまたはそれらの混合物である。ビニル基を含有する任意の炭化水素を本発明の実施形態において使用し得るが、モノマーの分子量が高くなりすぎると、モノマー入手性、コスト、および生成ポリマーからの未反応モノマーの便利な除去性が、より大きな問題となり得る。
【0098】
本明細書に記載の重合法は、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレンなどを含めたモノビニリデン芳香族モノマーを含有するオレフィンポリマーの製造に、良く適合している。特に、エチレンおよびスチレンを含むインターポリマーは、本明細書における教示に従うことにより調製することができる。場合により、エチレン、スチレンおよびC3〜C20α−オレフィンを含み、C4〜C20ジエンを含んでもよく、改善された性質を有するコポリマーを調製することができる。
【0099】
適切な非共役ジエンモノマーには、6〜15個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖または環状炭化水素ジエンがなり得る。適切な非共役ジエンの例には、それだけに限らないが、1,4−ヘキサジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエンなどの直鎖非環状ジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、3,7−ジメチル−1,7−オクタジエン、ならびにジヒドロミリセンおよびジヒドロオシネンの混合異性体などの分岐鎖非環状ジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,4−シクロヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエン、1,5−シクロドデカジエンなどの単環脂環式ジエン、およびテトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン、ビシクロ−(2,2,1)−ヘプタ−2,5−ジエンなどの多環脂環式縮合環および架橋環のジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB)、5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−(4−シクロペンテニル)−2−ノルボルネン、5−シクロヘキシリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネンおよびノルボルナジエンなどのアルケニル、アルキリデン、シクロアルケニルおよびシクロアルキリデンノルボルネンが挙げられる。EPDMの調製に通常使用されるジエンのうち、特に好ましいジエンは、1,4−ヘキサジエン(HD)、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、5−ビニリデン−2−ノルボルネン(VNB)、5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB)、およびジシクロペンタジエン(DCPD)である。殊のほか好ましいジエンは、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)および1,4−ヘキサジエン(HD)である。
【0100】
本発明の実施形態に従って作製できる所望のポリマーの1部類は、エチレン、C3〜C20α−オレフィン、殊のほかプロピレン、および場合により1種または複数のジエンモノマーのエラストマーインターポリマーである。本発明のこの実施形態で使用するための好ましいα−オレフィンは、式CH2=CHR*で指定され、式中R*は、1〜12炭素原子の直鎖または分岐アルキル基である。適切なα−オレフィンの例には、それだけに限らないが、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンおよび1−オクテンが挙げられる。特に好ましいα−オレフィンはプロピレンである。プロピレン系ポリマーは、当技術分野では、一般にEPまたはEPDMポリマーと呼称される。このようなポリマー、殊のほかマルチブロックEPDM型ポリマーの調製に使用するための適切なジエンには、4〜20炭素を含む共役または非共役、直鎖または分岐鎖、環状または多環状のジエンが挙げられる。好ましいジエンには、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエンおよび5−ブチリデン−2−ノルボルネンが挙げられる。特に好ましいジエンは5−エチリデン−2−ノルボルネンである。
【0101】
ジエン含有ポリマーは、ジエン(皆無を含める)およびα−オレフィン(皆無を含める)をより多量またはより少量含有する交互性のセグメントまたはブロックを含むので、その後のポリマー特性を失わずにジエンおよびα−オレフィンの合計量を減少させ得る。即ち、ジエンおよびα−オレフィンモノマーは、ポリマー全体に均一またはランダムに取り込まれるのではなく、ポリマーブロックの1種に選択的に取り込まれるので、そうしたモノマーはより効率的に利用され、その後でポリマーの架橋密度をより良好に制御することができる。このような架橋性エラストマーおよびその硬化生成物は、引張り強度の増加および弾性回復の向上を含む有利な特性を有する。
【0102】
幾つかの実施形態では、異なる量のコモノマーを取り込む2種の触媒で作製される本発明のインターポリマーは、それにより形成されるブロックの重量比として95:5〜5:95を有する。該エラストマーポリマーは、ポリマーの全重量に対して、20〜90%のエチレン含量、0.1〜10%のジエン含量、および10〜80%のα−オレフィン含量を有するのが望ましい。更に好ましくは、該マルチブロックエラストマーポリマーは、ポリマーの全重量に対して、60〜90%のエチレン含量、0.1〜10%のジエン含量、および10〜40%のα−オレフィン含量を有する。好ましいポリマーは、10000〜約2500000、好ましくは20000〜500000、より好ましくは20000〜350000の重量平均分子量(Mw)、および3.5未満、より好ましくは3.0未満の多分散度、および1〜250のムーニー粘度(ML(1−4)125℃)を有する高分子量ポリマーである。より好ましくは、このようなポリマーは、65〜75%のエチレン含量、0〜6%のジエン含量、および20〜35%のα−オレフィン含量を有する。
【0103】
該エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、ポリマー構造中に少なくとも1種の官能基を取り込むことにより、官能化することができる。例示的な官能基には、例えば、エチレン不飽和性の単官能および二官能カルボン酸、エチレン不飽和性の単官能および二官能カルボン酸無水物、それらの塩およびそれらのエステルを挙げ得る。このような官能基は、エチレン/α−オレフィンインターポリマーにグラフトしてもよく、またはそれをエチレンおよび場合により追加されるコモノマーと共重合することにより、エチレン、官能性コモノマー、および場合により他のコモノマー(複数も)からなるインターポリマーを形成してもよい。ポリエチレン上に官能基をグラフトする手段は、例えば、米国特許第4762890号、第4927888号および第4950541号に記載されており、こうした特許の開示内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。特に有用な1つの官能基はリンゴ酸無水物である。
【0104】
官能性インターポリマー中に存在する官能基の量は、変化することができる。該官能基は、コポリマー型官能化インターポリマー中に、通常、少なくとも約1.0重量%、好ましくは少なくとも約5重量%、より好ましくは少なくとも約7重量%の量で存在することができる。該官能基は、コポリマー型官能化インターポリマー中に、通常、約40重量%未満、好ましくは約30重量%未満、より好ましくは約25重量%未満の量で存在することになろう。
【0105】
試験方法
以下の実施例では、以下の分析技法が使用されている。
【0106】
試料1〜4およびA〜Cに対するGPC法
160℃に設定した加熱針を備えた自動液操作ロボットを用いて、300ppmイオノールで安定化した十分な1,2,4−トリクロロベンゼンを各乾燥ポリマー試料に添加し、30mg/mLの最終濃度を得る。小さなガラス撹拌棒を各チューブ中に入れ、試料を250rpmで回転する加熱オービタルシェーカー上で160℃、2時間加熱する。次いで、その濃厚ポリマー溶液を、自動液操作ロボットおよび160℃に設定した加熱針を用いて1mg/mlに希釈する。
【0107】
Symyx Rapid GPCシステムを用いて、各試料に対する分子量データを決定する。流量2.0ml/分に設定したGilson 350ポンプを用いて、移動相としての300ppmイオノールで安定化したヘリウムパージ済み1,2−ジクロロベンゼンを、直列配置し、160℃に加熱した、Plgel 10マイクロメーター(μm)Mixed Bの300mm×7.5mmカラム3本中で圧送する。Polymer Labs ELS 1000検出器を、250℃に設定したエバポレーター、165℃に設定したネブライザー、および60〜80psi(400〜600kPa)N2の圧力で1.8SLMに設定した窒素流量と共に使用する。ポリマー試料を160℃に加熱し、各試料を、液操作ロボットおよび加熱針を用いて250μlループ中に注入する。2本の切換えループおよび重複注入を用いたポリマー試料の連続分析を使用する。試料データを収集し、Symyx Epoch(商標)ソフトウェアを用いて分析する。ピークを手操作で積分し、分子量情報は、ポリスチレン標準較正曲線に対して補正せずに報告している。
【0108】
標準的CRYSTAF法
分岐分布は、PolymerChar, Valencia, Spainから市販されているCRYSTAF 200ユニットを用いた結晶化分析分別(CRYSTAF)により決定される。試料を160℃で1時間、1,2,4−トリクロロベンゼン中に溶解し(0.66mg/mL)、95℃で45分間安定化させる。サンプリング温度は、冷却速度0.2℃/分で95〜30℃の範囲である。赤外検出器を用いて、ポリマー溶液の濃度を測定する。累積溶解濃度は、温度を下げながらポリマーが結晶化するときに測定する。累積プロファイルの解析微分が、ポリマーの短鎖分岐分布を反映する。
【0109】
CRYSTAFピークの温度および面積は、CRYSTAFソフトウェア(バージョン2001.b, PolymerChar, Valencia, Spain)中に含まれるピーク分析モジュールにより特定される。CRYSTAFピーク発見ルーチンは、dW/dT曲線中の最大値としてピーク温度を特定し、その微分曲線中の特定ピークの両側にある正の最大変曲点間に、その面積を特定する。CRYSTAF曲線を計算するために、好ましい処理パラメーターは、温度限界が70℃、スムージングパラメーターが、温度限界を超えると0.1、温度限界未満では0.3である。
【0110】
標準的DSC法(試料1〜4およびA〜Cは除外)
示差走査熱量測定の結果は、RCS付属冷却装置およびオートサンプラーを備えたTAIモデルQ1000 DSCを用いて決定する。窒素パージガスは、流量50ml/分を使用する。試料は、プレスして薄膜にし、プレス中で約175℃で溶融した後、室温(25℃)に空冷する。次いで、材料3〜10mgを直径6mmの円板に切り出し、正確に秤量し、軽いアルミニウムパン(約50mg)中に入れた後、クリンプして閉じる。試料の熱挙動を以下の温度プロファイルを用いて調べる。試料を180℃まで急速に加熱し、3分間等温に保つことにより、以前の熱履歴を全て除く。次いで、試料を10℃/分の冷却速度で−40℃まで冷却し、3分間、−40℃に保つ。次いで、試料を10℃/分の加熱速度で150℃まで加熱する。冷却曲線および第2の加熱曲線を記録する。
【0111】
−30℃と溶融終点との間に引いた直線ベースラインに対して、DSC溶融ピークを熱流量(W/g)の最大値として測定する。融解熱は、直線ベースラインを用いて−30℃と溶融終点との間の溶融曲線下面積として測定される。
【0112】
GPC法(試料1〜4およびA〜Cは除外)
ゲル透過クロマトグラフィー装置は、Polymer Laboratories Model PL-210またはPolymer Laboratories Model PL-220の計測器からなる。カラム区画および回転台区画は、140℃で操作する。Polymer Laboratories10ミクロンMixed-Bカラム3本を使用する。溶媒は1,2,4−トリクロロベンゼンである。試料は、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)200ppmを含有する溶媒50ml中のポリマー0.1gの濃度に調製する。試料は、160℃で2時間、軽く撹拌することにより調製する。使用する注入体積は100μlであり、流量は1.0ml/分である。
【0113】
GPCカラムセットの較正は、分子量範囲が580〜8400000であり、6種の「カクテル」混合物中に配備され、個々の分子量間の隔たりが少なくとも10である、21種の狭域分子量分布ポリスチレン標準を用いて行う。該標準は、Polymer Laboratories (Shropshire, UK)から購入される。ポリスチレン標準は、1000000以上の分子量に対して溶媒50ml中に0.025g、および1000000未満の分子量に対して溶媒50ml中に0.05gに調製する。ポリスチレン標準は、80℃で30分間、静かに撹拌しながら溶解される。狭域標準混合物は、最高分子量成分から最初に、減少していく順に移動させて、分解を最小限に抑える。ポリスチレン標準ピーク分子量は、次式(Williams and Ward, J. Polym. Sci., Polym. Let., 6, 621 (1968)に記載のような):M(ポリエチレン)=0.431(M(ポリスチレン))を用いてポリエチレン分子量に変換される。
【0114】
ポリエチレン換算分子量の計算は、Viscotek TriSECソフトウェアバージョン3.0を用いて行う。
【0115】
永久歪み
永久歪みは、ASTM D395に従って測定する。試料は、厚さ3.2mm、2.0mmおよび0.25mmで直径25.4mmの円板を、合計厚さが12.7mmに達するまで重ねることにより調製される。円板は、ホットプレスで成形した12.7cm×12.7cmの圧縮成形プラークから以下の条件下で切り出す:0圧力を190℃、3分の後、86MPaを190℃、2分、その後86MPaの冷却流水によるプレス内部の冷却。
【0116】
密度
密度測定用の試料は、ASTM D1928に従って調製される。測定は、ASTM D792、方法Bを用いて、試料の圧縮から1時間以内に行う。
【0117】
曲げ/割線弾性率/貯蔵弾性率
試料は、ASTM D1928を用いて圧縮成形される。曲げ弾性率および2%割線弾性率は、ASTM D−790に従って測定する。貯蔵弾性率は、ASTM D5026−01または同等技法に従って測定する。
【0118】
光学特性
厚さ0.4mmのフィルムを、ホットプレス(Carver Model #4095-4PR1001R)を用いて圧縮成形する。ペレットをポリテトラフルオロエチレンのシート間に配置し、55psi(380kPa)で190℃、3分間後、1.3MPaで3分間、その後2.6MPaで3分間加熱する。フィルムを、冷却流水と共にプレス中で1.3MPaで1分間、冷却する。圧縮成形フィルムは、光学測定、引張り挙動、回復性および応力緩和に対して使用する。
【0119】
透明度は、ASTM D1746に規定されるように、BYK Gardnerヘイズガードを用いて測定する。
【0120】
45°光沢は、ASTM D−2457に規定されるように、BYK Gardner Glossmeter Microgloss 45°を用いて測定する。
【0121】
内部ヘイズは、ASTM D1003手順Aに基づいてBYK Gardnerヘイズガードを用いて測定する。表面の傷を除くために、フィルム表面に鉱油を塗布する。
【0122】
機械特性−引張り、ヒステリシスおよび引裂き
一軸引張りにおける応力−歪み挙動は、ASTM D1708の微小引張り検体を用いて測定する。Instronを用いて、試料を21℃で500%/分で延伸する。引張り強度および破断伸びは、5検体の平均値から報告される。
【0123】
100%および300%ヒステリシスは、Instron(商標)計測器と共にASTM D1708の微小引張り検体を用いて、100%および300%歪みへのサイクル荷重から決定される。試料には、21℃で3サイクル、267%/分で荷重を掛け、その後除く。300%および80℃でのサイクル実験は、環境チャンバーを用いて行う。80℃実験では、試験前に、試料を試験温度で45分間平衡化させておく。21℃、300%歪みのサイクル実験では、1回目の荷重除去サイクルからの150%歪みにおける収縮応力を記録する。全ての実験に対する回復率(%)は、1回目の荷重除去サイクルから、荷重が基準値に戻ったときの歪みを用いて計算する。回復率(%)は、
【0124】
【数2】
と定義され、式中εfは、サイクル荷重に応じた歪みであり、εsは、荷重が1回目の荷重除去サイクル中に基準値に戻ったときの歪みである。
【0125】
応力緩和は、環境チャンバーを備えたInstron(商標)計測器を用いて、50%歪みおよび37℃で12時間、測定される。標準寸法の形状は、76mm×25mm×0.4mmであった。環境チャンバー中で37℃、45分間平衡化させた後、試料を333%/分で50%歪みまで延伸した。応力を時間の関数として12時間記録した。12時間後の応力緩和率(%)は、次式を用いて計算した。
【0126】
【数3】
式中、L0は、0時での50%歪みにおける荷重であり、L12は、12時間後の50%歪みにおける荷重である。
【0127】
引張りノッチ付き引裂き実験は、Instron(商標)計測器を用いて、密度0.88g/cc以下の試料に関して実施する。形状は、検体長さの半分位で試料中に2mmノッチを切り込んだ、76mm×13mm×0.4mmの標準寸法片からなる。試料を21℃、508mm/分で破断するまで延伸する。引裂きエネルギーは、最大荷重時の歪みまでの応力−伸び曲線下面積として計算される。少なくとも3検体の平均値を報告する。
【0128】
TMA
熱機械分析(侵入温度)は、180℃、成形圧10MPaで5分間成形した後、空気急冷した、直径30mm×厚さ3.3mmの圧縮成形円板に関して行う。使用した計測器は、Perkin-Elmerから入手できるTMA 7商標品である。試験では、半径1.5mmの先端を有するプローブ(P/N N519-0416)を、1Nの力で試料円板の表面に押し付ける。温度を25℃から5℃/分で上げる。プローブ侵入距離を温度の関数として測定する。プローブが試料中に1mm侵入したとき、実験を終了する。
【0129】
DMA
動的機械分析(DMA)は、180℃、圧力10MPaで5分間ホットプレス中で成形した後、プレス中90℃/分で水冷した圧縮成形円板に関して測定する。試験は、捻り試験用の二重カンチレバー固定具を備えたARES制御歪みレオメーター(TA instruments)を用いて行う。
【0130】
1.5mmのプラークをプレスし、寸法32×12mmのバーに切断する。その試料を10mm(グリップ間隔ΔL)隔たった固定具間の両端でクランプ締めし、−100℃〜200℃の連続的温度ステップ(5℃/ステップ)に曝す。各温度で捻れ弾性率G’を角周波数10rad/sで測定するが、トルクが十分であり、測定が線形領域に留まることを保証するために、歪み振幅を0.1%〜4%の間に維持する。
【0131】
熱膨張が起こったときの試料のたるみを防止するために、10gの初期静的力を維持する(自動引張りモード)。その結果、グリップ間隔ΔLは、温度と共に、特にポリマー試料の融点または軟化点を超えると増加する。試験は、最大温度時、または固定具間のギャップが65mmに達したときに停止する。
【0132】
メルトインデックス
メルトインデックスまたはI2は、ASTM D1238、190℃/2.16kgの条件に従って測定する。メルトインデックスまたはI10は、ASTM D1238、190℃/10kgの条件にも従って測定する。
【0133】
ATREF
分析昇温溶出分別(ATREF)法分析は、米国特許第4798081号およびWilde, L.; Ryle, T.R.; Knobeloch, D.C.; Peat, I.R.; Determination of Branching Distributions in Polyethylene and Ethylene Copolymers, J. Polym. Sci., 20, 441-455 (1982)に記載の方法に従って行われるが、それらの全体は参照により本明細書に組み込まれる。分析対象の組成物をトリクロロベンゼン中に溶解し、不活性支持体(ステンレス鋼ショット)を含有するカラム中で、0.1℃/分の冷却速度で20℃まで温度を緩やかに下げることにより、結晶化させる。カラムは赤外検出器を備えている。次いで、1.5℃/分の速度で20℃から120℃まで溶出溶媒(トリクロロベンゼン)の温度を緩やかに上げることによって、カラムから結晶化ポリマー試料を溶出することにより、ATREFクロマトグラム曲線を生成する。
【0134】
13C NMR分析
10mmのNMRチューブ中で、試料0.4gにテトラクロロエタン−d2/オルトジクロロベンゼンの50/50混合物約3gを添加することにより、試料を調製する。チューブおよびその内容物を150℃に加熱することにより、試料を溶解し、均一化する。データは、13C共鳴周波数100.5MHzに相当するJEOL Eclipse(商標)400MHz分光計またはVarian Unity Plus(商標)400MHz分光計を用いて収集する。データは、パルス繰返し遅れ6秒で、1データファイル当たり積算4000回を用いて収集する。定量分析に対して最小限のシグナル対ノイズ比を実現するために、複数のデータファイルを合算する。スペクトル幅は、32Kデータポイントの最小ファイルサイズで25000Hzである。試料は、10mmの広幅プローブ中130℃で分析する。コモノマーの取込み量は、その全体が参照により本明細書に組み込まれるRandallのトライアッド法(Randall, J.C.; JMS-Rev. Macromol. Chem. Phys., C29, 201-317 (1989))を用いて決定される。
【0135】
TREFによるポリマー分別
大規模なTREF分別は、1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)2リットル中ポリマー15〜20gを160℃で4時間撹拌することで溶解することにより、実施する。ポリマー溶液は、30〜40メッシュ(600〜425μm)の球形の工業品質ガラスビーズ(Potters Industries, HC 30 Box 20, Brownwood, TX, 76801から入手可能)と、直径0.028インチ(0.7mm)のステンレス鋼カットワイヤーショット(Pellets, Inc. 63 Industrial Drive, North Tonawanda, NY, 14120から入手可能)との60:40(v:v)混合物を充填した、3インチ×4フィート(7.6cm×12cm)の鋼鉄カラム上に15psig(100kPa)の窒素で圧送する。そのカラムを、160℃に初期設定した温度制御オイルジャケット中に浸漬する。カラムを先ず125℃に急冷し、次いで1分当たり0.04℃で20℃まで徐冷し、1時間保持する。1分当たり0.167℃で温度を上げながら、新たなTCBを約65ml/分で導入する。
【0136】
分取TREFカラムからの溶出液、各々約2000ml分を、16ステーションの加熱フラクションコレクターに収集する。各分画中のポリマーを、ポリマー溶液が約50〜100ml残存するまで、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮する。濃縮溶液を終夜放置した後、過剰のメタノールを添加し、ろ過し、濯ぎ洗いをする(最後の濯ぎ洗いを含め、メタノール約300〜500ml)。ろ過ステップは、5.0μmポリテトラフルオロエチレン被覆ろ紙(Osmonics Inc.から入手可能なCat# Z50WP04750)を用いて、真空補助3位置ろ過ステーション上で行う。ろ過した分画は、真空オーブン中60℃で終夜乾燥し、化学天秤で秤量した後、更に試験をする。
【0137】
溶融強度
溶融強度(MS)は、入口角約45度で、直径2.1mmの20:1ダイを取り付けたキャピラリーレオメーターを使用して測定する。試料を190℃、10分間平衡化した後、速度1インチ/分(2.54cm/分)でピストンを移動させる。標準試験温度は190℃である。ダイの下方100mmに配置した1組の加速ニップへ加速度2.4mm/sec2で、試料を一軸延伸する。所要の張力をニップロールの巻取り速度の関数として記録する。試験中に到達した最大張力を溶融強度と定義する。引取共振を示すポリマーメルトの場合には、引取共振開始前の張力を溶融強度とした。溶融強度はセンチニュートン(「cN」)単位で記録する。
【0138】
触媒
用語「終夜」は、使用する場合、約16〜18時間の期間を指し、用語「室温」とは20〜25℃の温度を指し、用語「混合アルカン」とは、ExxonMobil Chemical Companyから商品名Isopar E(登録商標)の名で入手できるC6〜9脂肪族炭化水素の市販混合物を指す。本明細書におけるある化合物の名称がその構造表示に一致しない場合、構造表示に従うものとする。全ての金属錯体の合成および全てのスクリーニング実験の準備は、ドライボックス技法を用いて乾燥窒素雰囲気中で実施した。使用した全ての溶媒は、HPLC等級であり、使用前に乾燥した。
【0139】
MMAOとは、Akzo-Noble Corporationから市販されているトリイソブチルアルミニウム修飾メチルアルモキサンである、修飾メチルアルモキサンを指す。
【0140】
触媒(B1)の調製は以下のように行う。
a)(1−メチルエチル)(2−ヒドロキシ−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)メチルイミンの調製
3,5−ジ−t−ブチルサリチルアルデヒド(3.00g)をイソプロピルアミン10mLへ添加する。溶液は急速に鮮黄色になる。常温で3時間撹拌した後、揮発性物質を真空下で除去すると、鮮黄色結晶性固体(97%収率)を産生する。
b)1,2−ビス−(3,5−ジ−t−ブチルフェニレン)(1−(N−(1−メチルエチル)イミノ)メチル)(2−オキソイル)ジルコニウムジベンジルの調製
トルエン5mL中の(1−メチルエチル)(2−ヒドロキシ−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)イミン(605mg、2.2mmol)の溶液を、トルエン50mL中のZr(CH2Ph)4(500mg、1.1mmol)の溶液に徐々に添加する。生成した暗黄色溶液を30分間撹拌する。溶媒を減圧下で除去すると、所望の生成物を赤褐色固体として産生する。
【0141】
触媒(B2)の調製は以下のように行う。
a)(1−(2−メチルシクロヘキシル)エチル)(2−オキソイル−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)イミンの調製
2−メチルシクロヘキシルアミン(8.44mL、64.0mmol)をメタノール(90mL)中に溶解し、ジ−t−ブチルサリカルデヒド(10.00g、42.67mmol)を添加する。反応混合物を3時間撹拌し、次いで−25℃へ12時間冷却する。生成した黄色固体沈殿をろ過で集め、冷メタノール(2×15mL)で洗浄した後、減圧下で乾燥する。収率は、黄色固体11.17gである。1H NMRは、異性体混合物としての所望の生成物に一致する。
b)ビス−(1−(2−メチルシクロヘキシル)エチル)(2−オキソイル−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)イミノ)ジルコニウムジベンジルの調製
トルエン200mL中の(1−(2−メチルシクロヘキシル)エチル)(2−オキソイル−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)イミン(7.63g、23.2mmol)の溶液を、トルエン600mL中のZr(CH2Ph)4(5.28g、11.6mmol)の溶液に徐々に添加する。生成した暗黄色溶液を25℃で1時間撹拌する。その溶液をトルエン680mLで更に希釈すると、濃度0.00783Mの溶液が得られる。
【0142】
共触媒1 米国特許第59199883号の実施例2に実質的に開示されているように、長鎖トリアルキルアミン(Akzo-Nobel, Inc. から入手できるArmeen(商標)M2HT)HClおよびLi[B(C6F5)4]の反応により調製される、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのメチルジ(C14〜18アルキル)アンモニウム塩の混合物(以後、アルメーニウムボレート)。
【0143】
共触媒2 米国特許第6395671号の実施例16に従って調製される、ビス(トリス(ペンタフルオロフェニル)−アルマン)−2−ウンデシルイミダゾリドの混合C14〜18アルキルジメチルアンモニウム塩。
【0144】
シャトリング剤 使用するシャトリング剤には、ジエチル亜鉛(DEZ、SA1)、ジ(i−ブチル)亜鉛(SA2)、ジ(n−ヘキシル)亜鉛(SA3)、トリエチルアルミナム(TEA、SA4)、トリオクチルアルミナム(SA5)、トリエチルガリウム(SA6)、i−ブチルアルミナムビス(ジメチル(t−ブチル)シロキサン)(SA7)、i−ブチルアルミナムビス(ジ(トリメチルシリル)アミド)(SA8)、n−オクチルアルミナムジ(ピリジン−2−メトキシド)(SA9)、ビス(n−オクタデシル)i−ブチルアルミナム(SA10)、i−ブチルアルミナムビス(ジ(n−ペンチル)アミド)(SA11)、n−オクチルアルミナムビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシド)(SA12)、n−オクチルアルミナムジ(エチル(1−ナフチル)アミド)(SA13)、エチルアルミナムビス(t−ブチルジメチルシロキシド)(SA14)、エチルアルミナムジ(ビス(トリメチルシリル)アミド)(SA15)、エチルアルミナムビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミド)(SA16)、n−オクチルアルミナムビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミド)(SA17)、n−オクチルアルミナムビス(ジメチル(t−ブチル)シロキシド(SA18)、エチル亜鉛(2,6−ジフェニルフェノキシド)(SA19)およびエチル亜鉛(t−ブトキシド)(SA20)が挙げられる。
【0145】
実施例1〜4、比較例A〜C
ハイスループット並行重合の一般条件
重合は、Symyx Technologies, Inc.から入手できるハイスループット並行重合反応器(PPR)を用いて行い、米国特許第6248540号、第6030917号、第6362309号、第6306658号および第6316663号に実質的に従って操作する。エチレン共重合は、130℃および200psi(1.4MPa)でエチレンと共に行い、必要に応じて、使用する全触媒に対して共触媒1を1.2当量(MMAOが存在するときは1.1当量)使用する。一連の重合は、予備秤量ガラス管を取り付けた6×8列の個々の反応セル48個からなる、並行圧力反応器(PPR)中で行う。各反応セルにおける使用体積は、6000μLである。各セルは、個々の撹拌パドルで撹拌しながら、温度および圧力が制御される。モノマーガスおよびクエンチガスは、PPR装置中に直接、経管的に導入し、自動弁で制御する。液体試薬は、ロボット操作でシリンジにより各反応セルに添加し、液溜め溶媒は混合アルカンである。添加の順序は、混合アルカン溶媒(4ml)、エチレン、1−オクテンコモノマー(1ml)、共触媒1または共触媒1/MMAO混合物、シャトリング剤、および触媒または触媒混合物である。共触媒1およびMMAOの混合物、または触媒2種の混合物を使用する場合、こうした試薬は、反応器に添加する直前、小型バイアル中で予備混合する。実験においてある試薬を省略する場合、それ以外は、上記の添加順序を維持する。重合は、約1〜2分間、所定のエチレン消費量に達するまで行う。COでクエンチした後、反応器を冷却し、ガラス管から排出させる。その管を遠心/真空乾燥装置に移し、60℃で12時間乾燥させる。乾燥ポリマーを含んだその管を秤量し、この重量と風袋重量との差がポリマーの正味収量となる。結果は、表1に収載されている。表1および本願の他所では、比較化合物を星印(*)で示す。
【0146】
実施例1〜4は、DEZが存在するときは、非常に狭いMWDで、実質的に単峰性のコポリマーの形成、およびDEZが存在しないときは、双峰性で広い分子量分布の生成物(別々に生成したポリマーの混合物)の形成により証明されるように、本発明による線状ブロックコポリマーの合成を示す。触媒(A1)が、触媒(B1)より多量のオクテンを取り込むことが知られているという事実のために、本発明の生成コポリマーの異なるブロックまたはセグメントは、分岐または密度に基づいて識別可能である。
【0147】
【表1】
【0148】
本発明に従って製造したポリマーは、相対的に狭い多分散性(Mw/Mn)、およびシャトリング剤の非存在下で調製したポリマーより、大きなブロックコポリマー含量(トリマー、テトラマーまたはそれより大きい)を有することを認識し得る。
【0149】
表1のポリマーに対するデータの更なる特徴付けは、図を参照することにより決定される。より具体的には、DSCおよびATREFの結果は以下のことを示す。
【0150】
実施例1のポリマーに対するDSC曲線は、115.7℃の融点(Tm)と158.1J/gの融解熱とを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積52.9%の最高ピークを34.5℃に示す。DSCのTmとTcrystafとの差は、81.2℃である。
【0151】
実施例2のポリマーに対するDSC曲線は、109.7℃の融点(Tm)と214.0J/gの融解熱とを有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積57.0%の最高ピークを46.2℃に示す。DSCのTmとTcrystafとの差は、63.5℃である。
【0152】
実施例3のポリマーに対するDSC曲線は、120.7℃の融点(Tm)と160.1J/gの融解熱とを有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積71.8%の最高ピークを66.1℃に示す。DSCのTmとTcrystafとの差は、54.6℃である。
【0153】
実施例4のポリマーに対するDSC曲線は、104.5℃の融点(Tm)と170.7J/gの融解熱とを有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積18.2%の最高ピークを30℃に示す。DSCのTmとTcrystafとの差は、74.5℃である。
【0154】
比較例Aに対するDSC曲線は、90.0℃の融点(Tm)と86.7J/gの融解熱とを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積29.4%の最高ピークを48.5℃に示す。こうした値は共に、密度が低い樹脂に合致する。DSCのTmとTcrystafとの差は、41.8℃である。
【0155】
比較例Bに対するDSC曲線は、129.8℃の融点(Tm)と237.0J/gの融解熱とを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積83.7%の最高ピークを82.4℃に示す。こうした値は共に、密度が高い樹脂に合致する。DSCのTmとTcrystafとの差は、47.4℃である。
【0156】
比較例Cに対するDSC曲線は、125.3℃の融点(Tm)と143.0J/gの融解熱とを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積34.7%の最高ピークを81.8℃に、ならびにより低結晶性のピークを52.4℃に示す。2ピークに分離したことは、高結晶性および低結晶性のポリマーの存在に合致する。DSCのTmとTcrystafとの差は、43.5℃である。
【0157】
実施例5〜19、比較例D〜F、連続溶液重合、触媒A1/B2+DEZ
連続溶液重合は、内部撹拌機を備えたコンピュータ制御オートクレーブ反応器中で実施される。精製済み混合アルカン溶媒(ExxonMobil Chemical Companyから入手できるIsopar(商標)E)、2.70lbs/時(1.22kg/時)のエチレン、1−オクテン、および水素(使用する場合)は、温度制御用ジャケットおよび内部熱電対を備えた3.8L反応器に供給される。反応器に対する溶媒供給量は、質量流量調整器で測定する。可変速ダイヤフラムポンプが、溶媒流量および反応器に対する圧力を制御する。ポンプからの排出時、触媒および共触媒1の各注入ラインならびに反応器の撹拌機にフラッシュ流を供給するために、サイドストリームを採る。こうした流れは、Micro-Motion質量流量計で測定され、制御弁により、またはニードル弁の手動調節により制御される。残りの溶媒は、1−オクテン、エチレンおよび水素(使用する場合)と合わせて反応器に供給される。質量流量調整器を用いて、必要な場合、反応器に水素を送出する。溶媒/モノマー溶液の温度は、反応器に入る前に、熱交換器の使用により制御される。このストリームは、反応器の底部に入る。触媒成分溶液は、ポンプおよび質量流量計を用いて計量され、触媒フラッシュ溶媒と合わせて反応器の底部に導入される。反応器は、満液状態で500psig(3.45MPa)で激しく撹拌しながら操作する。生成物は、反応器の頂部にある出口ラインを経て取り出される。反応器からの出口ラインは全て、蒸気が追跡しており、断熱されている。重合は、何らかの安定剤または他の添加剤と共に少量の水を出口ラインの中に添加し、その混合物をスタティックミキサーに通すことにより、停止させる。次いで、揮発分除去の前に、生成物ストリームを熱交換器に通すことにより加熱する。ポリマー生成物は、揮発分除去式押出機および水冷ペレタイザーを用いた押出しにより回収される。プロセスの詳細および結果は、表2に収載されている。選定したポリマー特性は、表3に示されている。
【0158】
【表2】
【0159】
【表3】
【0160】
生成するポリマーを、既述の実施例の場合のようにDSCおよびATREFで試験する。結果は以下の通りである。
【0161】
実施例5のポリマーに対するDSC曲線は、119.6℃の融点(Tm)と60.0J/gの融解熱とを有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積59.5%の最高ピークを47.6℃に示す。DSCのTmとTcrystafとのデルタは、72.0℃である。
【0162】
実施例6のポリマーに対するDSC曲線は、115.2℃の融点(Tm)と60.4J/gの融解熱とを有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積62.7%の最高ピークを44.2℃に示す。DSCのTmとTcrystafとのデルタは、71.0℃である。
【0163】
実施例7のポリマーに対するDSC曲線は、121.3℃の融点と69.1J/gの融解熱とを有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積29.4%の最高ピークを49.2℃に示す。DSCのTmとTcrystafとのデルタは、72.1℃である。
【0164】
実施例8のポリマーに対するDSC曲線は、123.5℃の融点(Tm)と67.9J/gの融解熱とを有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積12.7%の最高ピークを80.1℃に示す。DSCのTmとTcrystafとのデルタは、43.4℃である。
【0165】
実施例9のポリマーに対するDSC曲線は、124.6℃の融点(Tm)と73.5J/gの融解熱とを有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積16.0%の最高ピークを80.8℃に示す。DSCのTmとTcrystafとのデルタは、43.8℃である。
【0166】
実施例10のポリマーに対するDSC曲線は、115.6℃の融点(Tm)と60.7J/gの融解熱とを有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積52.4%の最高ピークを40.9℃に示す。DSCのTmとTcrystafとのデルタは、74.7℃である。
【0167】
実施例11のポリマーに対するDSC曲線は、113.6℃の融点(Tm)と70.4J/gの融解熱とを有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積25.2%の最高ピークを39.6℃に示す。DSCのTmとTcrystafとのデルタは、74.1℃である。
【0168】
実施例12のポリマーに対するDSC曲線は、113.2℃の融点(Tm)と48.9J/gの融解熱とを有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、30℃以上にピークを示さない。(したがって、更なる計算をするためのTcrystafを30℃に設定する)。DSCのTmとTcrystafとのデルタは、83.2℃である。
【0169】
実施例13のポリマーに対するDSC曲線は、114.4℃の融点(Tm)と49.4J/gの融解熱とを有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積7.7%の最高ピークを33.8℃に示す。DSCのTmとTcrystafとのデルタは、84.4℃である。
【0170】
実施例14のポリマーに対するDSC曲線は、120.8℃の融点(Tm)と127.9J/gの融解熱とを有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積92.2%の最高ピークを72.9℃に示す。DSCのTmとTcrystafとのデルタは、47.9℃である。
【0171】
実施例15のポリマーに対するDSC曲線は、114.3℃の融点(Tm)と36.2J/gの融解熱とを有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積9.8%の最高ピークを32.3℃に示す。DSCのTmとTcrystafとのデルタは、82.0℃である。
【0172】
実施例16のポリマーに対するDSC曲線は、116.6℃の融点(Tm)と44.9J/gの融解熱とを有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積65.0%の最高ピークを48.0℃に示す。DSCのTmとTcrystafとのデルタは、68.6℃である。
【0173】
実施例17のポリマーに対するDSC曲線は、116.0℃の融点(Tm)と47.0J/gの融解熱とを有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積56.8%の最高ピークを43.1℃に示す。DSCのTmとTcrystafとのデルタは、72.9℃である。
【0174】
実施例18のポリマーに対するDSC曲線は、120.5℃の融点(Tm)と141.8J/gの融解熱とを有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積94.0%の最高ピークを70.0℃に示す。DSCのTmとTcrystafとのデルタは、50.5℃である。
【0175】
実施例19のポリマーに対するDSC曲線は、124.8℃の融点(Tm)と174.8J/gの融解熱とを有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積87.9%の最高ピークを79.9℃に示す。DSCのTmとTcrystafとのデルタは、45.0℃である。
【0176】
比較例Dのポリマーに対するDSC曲線は、37.3℃の融点(Tm)と31.6J/gの融解熱とを示す。対応するCRYSTAF曲線は、30℃以上にピークを示さない。こうした値は共に、密度が低い樹脂に合致する。DSCのTmとTcrystafとのデルタは、7.3℃である。
【0177】
比較例Eのポリマーに対するDSC曲線は、124.0℃の融点(Tm)と179.3J/gの融解熱とを有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積94.6%の最高ピークを79.3℃に示す。こうした値は共に、密度が高い樹脂に合致する。DSCのTmとTcrystafとのデルタは、44.6℃である。
【0178】
比較例Fのポリマーに対するDSC曲線は、124.8℃の融点(Tm)と90.4J/gの融解熱とを有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積19.5%の最高ピークを77.6℃に示す。2ピークに分離したことは、高結晶性および低結晶性の両ポリマーの存在に合致する。DSCのTmとTcrystafとのデルタは、47.2℃である。
【0179】
物理特性の試験
ポリマー試料を、TMA温度試験、ペレットブロッキング強度、高温回収性、高温永久圧縮歪み、および貯蔵弾性率比G’(25℃)/G’(100℃)で証明されるような高温耐性特性などの物理特性について評価する。こうした試験には、数種の市販ポリマーが含まれている。即ち、比較例G*は、実質的に線状のエチレン/1−オクテンコポリマー(AFFINITY(登録商標)、The Dow Chemical Companyから入手可能)であり、比較例H*は、エラストマー性で、実質的に線状のエチレン/1−オクテンコポリマー(AFFINITY(登録商標)EG8100、The Dow Chemical Companyから入手可能)であり、比較例Iは、実質的に線状のエチレン/1−オクテンコポリマー(AFFINITY(登録商標)PL1840、The Dow Chemical Companyから入手可能)であり、比較例Jは、水素化スチレン/ブタジエン/スチレントリブロックコポリマー(KRATON(商標)G1652、KRATON Polymersから入手可能)であり、比較例Kは、熱可塑性加硫物(TPV、分散した架橋エラストマーを含有するポリオレフィンブレンド)である。結果は、表4に提示されている。
【0180】
【表4】
【0181】
表4では、比較例F(触媒A1およびB1を用いた同時重合から生じた2種のポリマーの物理的ブレンドである)が約70℃の1mm侵入温度を有する一方、実施例5〜9は、100℃以上の1mm侵入温度を有する。更に、実施例10〜19は全て、85℃超の1mm侵入温度を有し、大多数は、90℃超または100℃超さえの1mm TMA温度を有する。このことは、新規なポリマーが、物理的ブレンドと比較して、より高温でより良好な寸法安定性を有することを示している。比較例J(市販SEBS)は、約107℃の良好な1mm TMA温度を有するが、約100%の非常に悪い(高温70℃での)永久圧縮歪みを有し、高温(80℃)での300%歪み回復中に回復することもできなかった(試料が破断した)。したがって、例示したポリマーは、市販されている一部の高性能熱可塑性エラストマーでさえ利用できない特性の独特な組合せを有している。
【0182】
同様に、表4は、本発明のポリマーに対して6以下の低い(良好な)貯蔵弾性率比G’(25℃)/G’(100℃)を示すが、物理的ブレンド(比較例F)は貯蔵弾性率比9を有し、類似密度のランダムエチレン/オクテンコポリマー(比較例G)は1桁大きい貯蔵弾性率比(89)を有する。ポリマーの貯蔵弾性率比は、できる限り1に近いことが望ましい。このようなポリマーは、温度に相対的に影響されないと見込まれ、このようなポリマーから作製した加工品は、広い温度範囲に亘って有用に使用することができる。低い貯蔵弾性率比および温度非依存性というこの特徴は、粘着剤配合物などのエラストマー用途において特に有用である。
【0183】
表4のデータは、本発明のポリマーが、改良されたペレットブロッキング強度を有することも示している。特に、実施例5は、0MPaのペレットブロッキング強度を有し、これは、相当なブロッキングを示す比較例FおよびGと比較して、試験条件下で自由に流れることを意味する。大きなブロッキング強度を有するポリマーのバルク輸送は、貯蔵または輸送時に製品の凝集または相互接着を起こし、取扱い特性が悪くなる恐れがあるので、ブロッキング強度は重要である。
【0184】
本発明のポリマーの高温(70℃)永久圧縮歪みは、概して良好であり、一般に約80%未満、好ましくは約70%未満、殊のほか約60%未満を意味する。対照的に、比較例F、G、HおよびJは全て、100%(全く回復性がないことを示す、可能な最大値)の70℃永久圧縮歪みを有する。良好な高温永久圧縮歪み(低い数値)は、ガスケット、窓枠、O−リングなどの用途に殊のほか必要とされる。
【0185】
【表5】
【0186】
表5は、新規なポリマーならびに各種の比較ポリマーの常温における機械特性に対する結果を示す。本発明のポリマーは、ISO4649に従って試験したとき、非常に良好な耐摩耗性を有し、一般に、約90mm3未満、好ましくは約80mm3未満、殊のほか約50mm3未満の体積減少を示す。この試験では、数字が大きいほど、体積減少が大きく、したがって耐摩耗性が低下する。
【0187】
引張りノッチ付き引裂き強度で測定した際の本発明のポリマーの引裂き強度は、表5に示すように一般に1000mJ以上である。本発明のポリマーの引裂き強度は、3000mJもの大きさ、または5000mJもの大きさにもなり得る。比較ポリマーは、一般に750mJ以下の引裂き強度を有する。
【0188】
表5は、本発明のポリマーが、比較試料の幾つかより良好な150%歪み収縮応力を有する(より高い収縮応力値で示される)ことも示している。比較実施例F、GおよびHが、400kPa以下の150%歪み収縮応力値を有する一方、本発明のポリマーは、500kPa(実施例11)から約1100kPa(実施例17)にもなる150%歪み収縮応力値を有する。150%超の収縮応力値を有するポリマーは、弾性の繊維および布帛、殊のほか不織布などの弾性用途にとって極めて有用となろう。他の用途には、タブおよび弾性バンドなどの、オムツ、衛生品および医療衣類のベルトの用途が含まれる。
【0189】
表5は、応力緩和(50%歪み時)も、例えば比較例Gと比較して、本発明のポリマーでは改善(減少)していることも示している。応力緩和の減少は、体温での長期間に亘る弾性保持が望ましいオムツや他の衣類などの用途において、該ポリマーがその力をより良好に保持していることを意味する。
【0190】
光学試験
【0191】
【表6】
【0192】
表6に報告した光学特性は、実質的に配向性のない圧縮成形フィルムに基づいている。ポリマーの光学特性は、重合に用いる連鎖シャトリング剤の量的変化から生じる結晶子サイズの変化により、広範囲に亘って変化し得る。
【0193】
マルチブロックコポリマーの抽出
実施例5、7および比較例Eのポリマーに関する抽出試験を行う。その実験では、ポリマー試料をガラスフリット処理抽出円筒中に量り込み、熊川式抽出器に嵌め込む。試料入り抽出器を窒素でパージし、500mL丸底フラスコにジエチルエーテル350mLを投入する。次いで、フラスコを抽出器に取り付ける。撹拌しながらエーテルを加熱する。エーテルが円筒中に凝縮し始める時間を観察し、窒素下で24時間抽出を進行させる。この段階で、加熱を停止し、溶液を冷却させる。抽出器中に残存するエーテルは、完全にフラスコに戻る。フラスコ中のエーテルを常温で真空下に蒸発させ、生成した固形分を窒素でパージして乾燥させる。連続的なヘキサン洗浄液により、残渣を秤量済みボトルへ完全に移す。次いで、合わせたヘキサン洗浄液を新たな窒素パージにより蒸発させ、残渣を真空下、40℃で終夜乾燥させる。抽出器中の残存エーテルは、窒素でパージして完全に乾燥させる。
【0194】
次いで、ヘキサン350mLを投入した清浄な第2の丸底フラスコを抽出器に連結する。ヘキサンを撹拌しながら加熱還流し、円筒中にヘキサンの凝縮を初めて認めてから24時間、還流を維持する。次いで、加熱を停止し、フラスコを冷却させる。抽出器中に残存するヘキサンは、完全にフラスコに戻る。ヘキサンを常温で真空下に蒸発・除去し、連続的なヘキサン洗浄液を用いて、フラスコ中に残る残渣を秤量済みボトルへ完全に移す。フラスコ中のヘキサンを窒素パージで蒸発させ、残渣を40℃で終夜、真空乾燥する。
【0195】
抽出後、円筒中に残存するポリマー試料を円筒から秤量済みボトルへ移し、40℃で終夜、真空乾燥する。結果を表7に収載している。
【0196】
【表7】
【0197】
追加のポリマー実施例19A〜J、連続溶液重合、触媒A1/B2+DEZ
実施例19A〜Iに対して
連続溶液重合を混合良好なコンピュータ制御反応器中で実施する。精製済み混合アルカン溶媒(ExxonMobil, Inc. から入手できるIsopar(商標)E)、エチレン、1−オクテン、および水素(使用する場合)を合わせ、27ガロン反応器に供給する。反応器への供給量は、質量流量調整器で測定する。供給ストリームの温度は、反応器に入る前に、グリコール冷却熱交換器の使用により制御する。触媒成分溶液は、ポンプおよび質量流量計を用いて計量する。反応器は、満液状態で約550psigの圧力で操作する。反応器から排出する際、水および添加剤をポリマー溶液中に注入する。水が触媒を加水分解し、重合反応を停止させる。次いで、反応器排出溶液を2段階の揮発分除去に備えて加熱する。溶媒および未反応モノマーを揮発分除去プロセス中に除く。ポリマーメルトをダイへポンプ移送した後、水中でのペレット切断を行う。
【0198】
実施例19Jに対して
連続溶液重合を、内部撹拌機を備えたコンピュータ制御オートクレーブ反応器中で実施する。精製済み混合アルカン溶媒(ExxonMobil Chemical Companyから入手できるIsopar(商標)E)、2.70lbs/時(1.22kg/時)のエチレン、1−オクテン、および水素(使用する場合)を、温度制御用ジャケットおよび内部熱電対を備えた3.8L反応器に供給する。反応器に対する溶媒供給量は、質量流量調整器で測定する。可変速ダイヤフラムポンプが、溶媒流量および反応器に対する圧力を制御する。ポンプからの排出時、触媒および共触媒の各注入ラインならびに反応器の撹拌機にフラッシュ流を供給するために、サイドストリームを採る。こうした流れは、Micro-Motion質量流量計で測定し、制御弁により、またはニードル弁の手動調節により制御する。残りの溶媒は、1−オクテン、エチレンおよび水素(使用する場合)と合わせて反応器に供給する。質量流量調整器を用いて、必要な場合、反応器に水素を送出する。溶媒/モノマー溶液の温度は、反応器に入る前に、熱交換器の使用により制御する。このストリームは、反応器の底部に入る。触媒成分溶液は、ポンプおよび質量流量計を用いて計量し、触媒フラッシュ溶媒と合わせて反応器の底部に導入する。反応器は、満液状態で500psig(3.45MPa)で激しく撹拌しながら操作する。生成物は、反応器の頂部にある出口ラインを経て取り出す。反応器からの出口ラインは全て、蒸気が追跡しており、断熱されている。重合は、何らかの安定剤または他の添加剤と共に少量の水を出口ラインの中に添加し、その混合物をスタティックミキサーに通すことにより、停止させる。次いで、揮発分除去の前に、生成物ストリームを熱交換器に通すことにより加熱する。ポリマー生成物は、揮発分除去式押出機および水冷ペレタイザーを用いた押出しにより回収する。
【0199】
プロセスの詳細および結果は、表8に収載している。選定したポリマー特性は、表9A〜Cに示している。
【0200】
表9Bでは、本発明の実施例19Fおよび19Gが、500%伸びの後、およそ65〜70%歪みの低い即時永久歪みを示す。
【0201】
【表8】
【0202】
【表9】
【0203】
【表10】
【0204】
【表11】
【0205】
実施例20および21
実施例20および21のエチレン/α−オレフィンインターポリマーを、下記の表11に示す重合条件を用いて、上記の実施例19A〜Iと実質的に同様に作製した。こうしたポリマーは、表10に示す特性を示した。表10は、ポリマーへの添加剤も全て示している。
【0206】
【表12】
【0207】
Irganox 1010は、テトラキスメチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)メタンである。Irganox 1076は、オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネートである。Irgafosは、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトである。Chimasorb 2020は、2,3,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの1,6−ヘキサンジアミン、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ポリマーの、N−ブチル−1−ブタナミンおよびN−ブチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジナミンとの反応生成物である。
【0208】
【表13】
【0209】
本発明のコーン染色糸に適切な繊維
本発明のコーン染色糸に適切な繊維は、通常1種または複数の弾性繊維を含み、その弾性繊維は、少なくとも1種のエチレンオレフィンブロックポリマーと適切な少なくとも1種の架橋剤との反応生成物を含む。該繊維は、好ましくはフィラメント繊維である。本明細書で使用する場合、「架橋剤」とは、繊維の1本もしくは複数、好ましくは大多数を架橋する任意の手段である。したがって、架橋剤は、化合物でもよいが必ずしもそうとは限らない。本明細書で使用する場合の架橋剤は、電子ビーム照射、β線照射、γ線照射、コロナ照射、シラン、過酸化物、アリル化合物およびUV照射も包含し、架橋触媒を伴う場合も伴わない場合もある。米国特許第6803014号および第6667351号は、本発明の実施形態に使用できる電子ビーム照射法を開示している。通常、その布帛が染色できるような量の十分な繊維が架橋される。この量は、使用する特定のポリマーおよび所望の性質に応じて変化する。しかし、幾つかの実施形態では、架橋ポリマーの%は、実施例30に記載の方法に従って形成したゲルに対する重量%で測定した場合、少なくとも約5%、好ましくは少なくとも約10、より好ましくは少なくとも約15重量%から、多くとも約75、好ましくは多くとも65、好ましくは多くとも約50%、より好ましくは多くとも約40%である。
【0210】
該繊維は、ASTM D2653−01(第1繊維破断試験における伸び)によれば、フィラメント破断伸びとして通常、約200%超、好ましくは約210%超、好ましくは約220%超、好ましくは約230%超、好ましくは約240%超、好ましくは約250%超、好ましくは約260%超、好ましくは約270%超、好ましくは約280%超を有し、600%にも達する場合がある。本発明の繊維は、ASTM D2731−01(仕上り繊維形態での特定された伸びにおいて力の掛かった状態)によれば、(1)200%伸びにおける荷重/100%伸びにおける荷重の比率として、約1.5以上、好ましくは約1.6以上、好ましくは約1.7以上、好ましくは約1.8以上、好ましくは約1.9以上、好ましくは約2.0以上、好ましくは約2.1以上、好ましくは約2.2以上、好ましくは約2.3以上、好ましくは約2.4以上を有することを更に特徴とし、4まで達する場合もある。
【0211】
当該ポリオレフィンは、適切な任意のエチレンオレフィンブロックポリマーから選択し得る。特に好ましいオレフィンブロックポリマーはエチレン/α−オレフィンインターポリマーであり、そのエチレン/α−オレフィンインターポリマーは、架橋前に以下の特性の1種または複数を有する。
(1)0より大きく、約1までの平均ブロック指数、および約1.3より大きい分子量分布Mw/Mn、または
(2)TREFを用いて分別した際、40℃〜130℃の間で溶出する少なくとも1つの分子分画であって、少なくとも0.5で約1までのブロック指数を有することを特徴とする分子分画、または
(3)約1.7から約3.5のMw/Mn、℃単位の少なくとも1つの融点Tm、およびg/cm3単位の密度dであり、Tmおよびdの数値が次式の相関関係:
Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)2
に対応し、または
(4)約1.7から約3.5のMw/Mnであり、J/g単位の融解熱ΔH、および最高DSCピークと最高CRYSTAFピークとの温度差として定義される℃単位のデルタ量ΔTを特徴とし、ΔTおよびΔHの数値が次式の相関関係:
0より大きく、130J/gまでのΔHに対して、ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81、
130J/gより大きいΔHに対して、ΔT≧48℃
を有し、該CRYSTAFピークは、累積ポリマーの少なくとも5%を用いて決定され、該ポリマーの5%未満が特定可能なCRYSTAFピークを有する場合、該CRYSTAF温度が30℃であり、または
(5)エチレン/α−オレフィンインターポリマーの圧縮成形フィルムを用いて測定した、歪み率300%および1サイクルでの%単位の弾性回復率Reであり、g/cm3単位の密度dを有し、エチレン/α−オレフィンインターポリマーが架橋相を実質的に含有しない場合に、Reおよびdの数値が次式の相関関係:
Re>1481−1629(d)
を満足し、または
(6)TREFを用いて分別した際、40℃〜130℃の間で溶出する分子分画であって、同じ温度間で溶出する匹敵ランダムエチレンインターポリマーの分画と比べ、少なくとも5%高いコモノマーモル含量を有することを特徴とする分子分画であり、但し、匹敵ランダムエチレンインターポリマーは、同じコモノマー(複数も)と、該エチレン/α−オレフィンインターポリマーのものから10%以内にあるメルトインデックス、密度、およびコモノマーモル含量とを有し、または
(7)G’(25℃)対G’(100℃)の比が約1:1から約9:1の範囲にある、25℃での貯蔵弾性率G’(25℃)および100℃での貯蔵弾性率G’(100℃)。
【0212】
該繊維は、所望の用途に応じて、所望の任意のサイズおよび断面形状に作製してもよい。多くの用途については、ほぼ丸い断面が、摩擦が減少するために望ましい。しかし、三つ葉形または平坦(即ち、「リボン」状)形などの他の形状も、使用することができる。デニールは、繊維の長さ9000m当たりの繊維のグラム数と定義される繊維製品用語である。好ましいデニールサイズは、布帛の種類および所望の用途に依存する。この糸の弾性繊維では、大多数の繊維が、通常、少なくとも約1、好ましくは少なくとも約20、好ましくは少なくとも約50から、大きくとも約180、好ましくは大きくとも約150、好ましくは大きくとも約100デニール、好ましくは大きくとも約80デニールのデニールを有する。
【0213】
用途に応じて、該繊維は、ステープル繊維またはバインダー繊維を含む適切な任意の形態を取り得る。典型的な例には、ホモフィル繊維または複合繊維を含み得る。複合繊維の場合、芯鞘構造、海島構造、並列構造、マトリックス・フィブリル構造または分割パイ状構造を取り得る。有利には、従来の繊維形成法を用いて前記繊維を作製し得る。このような方法には、例えば米国特許第4340563号、第4663220号、第4668566号、第4322027号および第4413110号に記載の方法が挙げられる。
【0214】
組成に応じて、該繊維は、加工を容易にし、他の繊維と同様に、またはそれより良好にスプールから巻き出すように作製し得る。通常の繊維は、断面が丸い場合、基材ポリマーの過剰な応力緩和のために、満足できる巻出し性能を示すことがしばしばできない。この応力緩和は、スプールの古さに比例し、そのために、スプールの表面に接しているフィラメントが、その表面上でグリップを失い、弛んだフィラメントストランドとなる。後に、従来繊維を収容しているこのようなスプールをMemminger-IRO製ポジティブ給糸装置のロール上に載せ、工業的速度、即ち100〜300回転/分へと回転し始めると、弛んだ繊維は、スプール表面の側方へ投げ出され、遂にはスプールの縁部から外れる。この故障は、従来繊維が、そのパッケージの肩部または縁部から滑り離れる傾向を示すもので、巻出しプロセスを撹乱し、遂には機械を停止させる脱線の名で知られている。上記の繊維は、同程度またははるかに目立たない程度の脱線(derail)で済ますことができ、したがって処理量の増加も恐らくは可能になる。
【0215】
該繊維の別の利点は、布帛の傷および弾性フィラメントまたは繊維の破断などの欠陥が、従来繊維と比較して同等となり、または減少し得ることである。
【0216】
添加剤
成形もしくは加工操作中の後戻り的劣化から保護するため、および/またはグラフト化もしくは架橋の程度の制御を改善する(即ち、過度のゲル化を抑制する)ために、酸化防止剤、例えば、Ciba Geigy Corp.が製造するIRGAFOS(登録商標)168、IRGANOX (登録商標)1010、IRGANOX(登録商標)3790およびCHIMASSORB(登録商標)944をエチレンポリマーに添加してもよい。プロセス内添加剤、例えばステアリン酸カルシウム、水、フッ素ポリマーなども、残留触媒の不活性化および/または加工性の改善などの目的に、使用してもよい。TINUVIN(登録商標)770(Ciba-Geigy製)は、光安定剤として使用することができる。
【0217】
該コポリマーは、充填することも、充填せずに済ますこともできる。充填する場合には、充填剤の存在量が、高温で耐熱性、弾性のいずれかに悪影響を及ぼしそうな量を超えてはならない。存在させる場合、充填剤の量は、通常、コポリマーの全重量(または、コポリマーと他の1種もしくは複数のポリマーとのブレンドであれば、ブレンドの全重量)に対して0.01〜80wt%の間である。代表的な充填剤には、カオリン粘土、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、シリカおよび炭酸カルシウムが挙げられる。充填剤が存在する好ましい実施形態では、充填剤は、それがなければ架橋反応を充填剤が妨害せざるを得ないと思われる何らかの傾向を、防止または遅延させると見込まれる物質でコーティングされる。ステアリン酸は、このような充填剤コーティング剤を例示している。
【0218】
繊維の摩擦係数を減らすために、各種の紡糸仕上げ用配合物として、繊維油分散金属石鹸(例えば、米国特許第3039895号または第6652599号を参照されたい)、界面活性剤入り基油(例えば、米国特許公開第2003/0024052号を参照されたい)、およびポリアルキルシロキサン(例えば、米国特許第3296063号または第4999120号を参照されたい)などを使用することができる。米国特許出願第10/933721号(米国特許公開第2005/0142360)は、やはり使用できる紡糸仕上げ用組成物を開示している。
【0219】
コアスパンヤーン
一実施形態では、コアとして上記のエチレン/α−オレフィンインターポリマー繊維および被覆材として硬質繊維を含むコアスパンヤーン(CSY)が、調製される。硬質繊維は、天然、合成のいずれでもよい。硬質繊維は、ステープル、フィラメントのいずれでもよい。例示的な硬質繊維には、綿、絹、亜麻、竹、羊毛、テンセル、ビスコース、コーン、再生コーン、PLA、乳タンパク質、大豆、海草、PES、PTT、PA、ポリプロピレン、ポリエステル、アラミド、パラアラミドおよびそれらの混紡が挙げられる。一実施形態では、該硬質繊維は、主に純粋な綿または純粋な絹である。
【0220】
コアスピニング(ステープル)以外に、他の紡績法も使用でき、それだけに限らないが、サイロスパン方式(ステープル)、シングルカバリング(ステープルもしくは連続)、ダブルカバリング(ステープルもしくは連続)またはエアカバリング(連続フィラメント)が挙げられる。一実施形態では、糸はコアスパンまたはサイロスパンである。バイストレッチ、一方向ストレッチ(緯糸ストレッチ)のいずれも、本明細書では想定している。
【0221】
コーン染色糸の繊維破断を制限することを望むのであれば、残留テナシティとして少なくとも約13、好ましくは少なくとも約15、より好ましくは少なくとも約18cNを有する弾性繊維を使用することが、しばしば有用である。このようにして、実施例28の酸エッチング試験で測定した場合、弾性繊維の約5%未満、好ましくは約3%未満、より好ましくは約1%未満しか破断しないコーン染色糸を製造できることがしばしばある。それに加え、本発明の糸は、二次クリープ(growth)対延伸比として0.5未満、好ましくは0.4未満、好ましくは0.35未満、好ましくは0.3未満、好ましくは0.25未満、好ましくは0.2未満、好ましくは0.15未満、好ましくは0.1未満、好ましくは0.05未満をしばしば示す。
【0222】
コーン染色糸中のポリマー量は、ポリマー、用途および所望の特性に応じて変化する。コーン染色糸は、通常、エチレン/α−オレフィンインターポリマーを少なくとも約1、好ましくは少なくとも約2、好ましくは少なくとも約5、好ましくは少なくとも約7重量%含む。この染色糸は、通常、エチレン/α−オレフィンインターポリマーを約50未満、好ましくは約40未満、好ましくは約30未満、好ましくは約20未満、より好ましくは約10重量%未満含む。該エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、繊維形態を取り得、適切な別のポリマー、例えば、ランダムエチレンコポリマー、HDPE、LLDPE、LDPE、ULDPE、ポリプロピレンのホモポリマー、コポリマーなどのポリオレフィン、プラストマーおよびエラストマー、ラストール、ポリアミドなどとブレンドしてもよい。
【0223】
該繊維のエチレン/α−オレフィンインターポリマーは、任意の密度を有し得るが、通常は少なくとも約0.85、好ましくは少なくとも約0.865g/cm3である(ASTM D792)。それに対応して、その密度は、通常約0.93未満、好ましくは約0.92g/cm3未満である(ASTM D792)。該繊維のエチレン/α−オレフィンインターポリマーは、約0.1〜約10g/10分の未架橋メルトインデックスを特徴とする。架橋が望ましければ、架橋ポリマーの%は、形成したゲルに対する重量%で測定した場合、少なくとも10%、好ましくは少なくとも約20、より好ましくは少なくとも約25重量%から、多くとも約90、好ましくは多くとも約75であることがしばしばある。
【0224】
コーン染色糸の硬質繊維は、その糸の大半を占めることがしばしばある。このような場合、硬質繊維は、布帛に対する重量%で、少なくとも約50、好ましくは少なくとも約60、好ましくは少なくとも約70、好ましくは少なくとも約80、ときには90〜95をも占めることが好ましい。
【0225】
エチレン/α−オレフィンインターポリマー、その他の材料、または両者は、繊維の形態を取り得る。好ましいサイズは、デニールで少なくとも約1、好ましくは少なくとも約20、好ましくは少なくとも約50から、大きくとも約180、好ましくは大きくとも約150、好ましくは大きくとも約100、好ましくは大きくとも約80デニールまでを包含する。
【0226】
染色
コーン染色の前に、オレフィンブロックポリマー繊維をコア部材とし、硬質ヤーンを有するコアスパンヤーンを作製すべきである。これの実現方法は肝要ではない。その一法は、例えば、精紡して各々約100gのコップにすることによる。次いで、糸コップを80〜120℃で約15〜30分、蒸気処理し、複数サイクル繰り返すこともある。室温でのコンディショニングの後、蒸気処理済みCSYコップをソフトコーンに巻き戻してもよい。ソフトコーンは、適正な巻取り速度と共に、クレードルにおける相対的に低い圧力と糸に対する相対的に最小量の張力とを用いることにより、低いコーン密度のコップからしばしば作製し得る。
【0227】
コーンのサイズおよび密度は、多くの要因に応じてしばしば変化する。コーン密度は、通常、好ましくは0.1〜0.5g/cm3、より好ましくは0.25〜0.44g/cm3である。0.1g/cm3超の密度は、染色中により安定なコーン状態を促進することが時々あろう。0.5g/cm3未満のコーン密度は、精練および染色中に過度の収縮を時々防止することにより、染料溶液の十分な通過を保証し、コーン全体に亘る不均一な染色を回避し、沸騰水収縮が過度にならないように維持することになろう。
【0228】
コーンのサイズは、好ましくは0.6〜1.5kg、より好ましくは0.7〜1.2kgである。0.6kg未満のコーンは、取扱い作業が多過ぎ、染色容器容量の利用率が過少なため、時々不経済となろう。1.5kgより大きいコーンは、過度のコーン収縮を時々起こすと見込まれ、弾性繊維の高い収縮力のためにその管構造を潰す恐れがあろう。
【0229】
コーン染色プロセスは、一般に3段階、精練、染色/洗浄(高温洗浄の後、低温洗浄)、および乾燥からなる。以下の染色条件は、オレフィンブロックポリマー/綿のCSYコーンの反応性染料による染色に有用であることが判明した。精練工程は、アルカリ浴中、90℃、20分間糸を加熱することに始まり、その後95℃、20分間、高温洗浄をする。この工程は、50℃、20分間の高温洗浄で終了してもよい。オレフィンブロックポリマー/綿のCSYから作製したコーンは、室温から始まる4℃/分の加熱勾配で、70℃、90分間、反応性染料で染色する。染色後、溶液をその機械から排出させる。コーンは、各々100℃、20分間を2回、高温洗浄し、その後20分間、低温洗浄する。次いで、コーンを約80℃〜100℃のオーブン中で乾燥する。乾燥済みコーンは、織機での使用に適したコーンに巻き戻す。処理条件は、適用する装置および化学品に従って変更することができ、有用な範囲は以下の通りである。アルカリ精練処理は約70℃〜105℃の間で実施でき、染色工程は60℃〜105℃の間の温度で実施でき、染色後処理は、50℃〜100℃の間で行うことができ、および/または柔軟剤の添加を加えてもよい。本発明にとっては肝要ではないが、前記の各段階は、業界慣行で通常受け容れられ、適用されている、シャツ地織物用途の綿含有糸に対する代表的処理条件である。
【0230】
染色工程中、全体的な水圧は、通常1バールから15バール、好ましくは1.7〜3.2バールに維持される。コーンを挟む差圧量は、通常0.1〜10バール、好ましくは0.2〜2.0バール、より好ましくは0.5〜1.2バールに維持すべきである。差圧の範囲は、当業者に知られているように、処理され、所望される糸の品質に関係している。
【0231】
生成したコーン染色糸は、色がしばしば非常に均一である。例えば、所与の染色コーンについて、色均一性の平均デルタE(試料と特定した色標準との色差)は、しばしば約0.4未満である。それに加え、所与の染色コーンについて、表面からコアまでの色均一性の平均デルタEは、約1.0未満、好ましくは約0.8未満、より好ましくは約0.5未満、より好ましくは約0.4未満、より好ましくは約0.3未満から、ほぼ0の低さとなることがしばしばある。染色に関する更なる一般的情報については、Fundamentals of Dyeing and Printing, by Garry Mock, North Carolina State University 2002, ISBN 9780000033871を参照してもよい。
実施例
【0232】
実施例22−架橋度がより高い弾性エチレン/α−オレフィンインターポリマーの繊維
実施例20の弾性エチレン/α−オレフィンインターポリマーを用いて、断面がほぼ丸い40デニールのモノフィラメント繊維を作製した。繊維の作製前に、以下の添加剤:PDMSO(ポリジメチルシロキサン)7000ppm、CYANOX 1790(1,3,5−トリス−(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン3000ppm、およびCHIMASORB 944、ポリ−[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ]−s−トリアジン−2,4−ジイル][2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]3000ppm、ならびにTiO20.5重量%をポリマーに添加した。円直径0.8mmのダイ形状、紡糸温度299℃、巻取り機速度650m/分、紡糸仕上げ剤2%、常温延伸6%、およびスプール重量150gを用いて、繊維を製造した。次いで、架橋剤として総量176.4kGyの照射を用いて、繊維を架橋した。
【0233】
実施例23−架橋度がより低い弾性エチレン/α−オレフィンインターポリマーの繊維
実施例20の弾性エチレン/α−オレフィンインターポリマーを用いて、断面がほぼ丸い40デニールのモノフィラメント繊維を作製した。繊維の作製前に、以下の添加剤:PDMSO(ポリジメチルシロキサン)7000ppm、CYANOX 1790(1,3,5−トリス−(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン3000ppm、およびCHIMASORB 944、ポリ−[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ]−s−トリアジン−2,4−ジイル][2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]3000ppm、ならびにTiO20.5重量%をポリマーに添加した。円直径0.8mmのダイ形状、紡糸温度299℃、巻取り機速度1000m/分、紡糸仕上げ剤2%、常温延伸2%、およびスプール重量150gを用いて、繊維を製造した。次いで、架橋剤として総量70.4kGyの照射を用いて、繊維を架橋した。
【0234】
比較実施例24−ランダムコポリマーの繊維
エチレン−オクテン(EO)ランダムコポリマーを用いて、断面がほぼ丸い40デニールのモノフィラメント繊維を作製した。ランダムEOは、メルトインデックス3g/10分、密度0.875g/cm3、および実施例20と類似の添加剤を有することを特徴とする。繊維の作製前に、以下の添加剤:PDMSO(ポリジメチルシロキサン)7000ppm、CYANOX 1790(1,3,5−トリス−(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン3000ppm、およびCHIMASORB 944、ポリ−[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ]−s−トリアジン−2,4−ジイル][2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]3000ppm、TiO20.5重量%をポリマーに添加した。円直径0.8mmのダイ形状、紡糸温度299℃、巻取り機速度1000m/分、紡糸仕上げ剤2%、常温延伸6%、およびスプール重量150gを用いて、繊維を製造した。次いで、架橋剤として176.4kGyの照射を用いて、繊維を架橋した。
【0235】
実施例25−コアスパンヤーンの作製
綿コアスパンヤーン(CSY)の試料3種を作製した。1種にはコア部材として実施例22の繊維、もう1種にはコア部材として実施例23の繊維、もう1種にはコア部材として比較実施例24の繊維を用いて作製した。コア部材は、Pinter精紡機を用いて糸コップに各々コアスピニングをした。綿スライバーの計測値は400テックスであり、適用した牽伸率は、3種のCSY試料各々に対して3.8であった。使用したトラベラーは、Braecker製の8番であり、フロントローラーのショア硬度は65であった。トラベラーおよびフロントローラーハーネスの設定は、両スライバーに対して同一であった。糸の最終繊度は85Nmであった。糸コップは、95℃、15分間蒸気処理し、2サイクル繰り返した。室温でコンディショニングした後、蒸気処理済みCSYコップをおよそ1.1kgのソフトコーンに巻き戻した。コップから低コーン密度のソフトコーンを作製するために、クレードルにおける低圧、糸の最小張力設定、および適正な巻取り速度を用いた。コーン密度は、比較実施例24の繊維を用いて作製したCSYに対して0.41g/cc、実施例22の繊維を用いて作製したCSYに対して0.39g/cc、実施例23の繊維を用いて作製したCSYに対して0.42g/ccであった。
【0236】
実施例26−コーン染色
実施例25で作製した3種のCSY試料を各々コーン染色した。コーン染色プロセスは、Mathis Labコーン染色機を用いて行い、精練、染色、および高温洗浄後の低温洗浄の3段階からなっていた。精練工程は、アルカリ浴中、90℃、20分間糸を加熱することに始まり、その後95℃、20分間、高温洗浄をする。この工程は、50℃、20分間の高温洗浄で終了した。次いで、3種のコーンを、室温から始まる4℃/分の加熱勾配で、70℃、90分間、反応性染料で染色した。染色後、溶液をその機械から排出させた。コーンは、各々100℃、20分間を2回、高温洗浄し、その後20分間、低温洗浄した。3種のコーンを90℃のオーブン中で終夜乾燥した。乾燥済みコーンは、織機での使用に適したコーンに巻き戻した。
【0237】
実施例27−コーン染色後の残留繊維テナシティ
コーン染色後の3種の異なる繊維(実施例22〜24)各々に対する残留テナシティを調べた。実施例26の3種のCSY試料をコーン染色後に回収した。3種の綿CSY試料の各々から、繊維を注意深く手操作で剥離させた。残留テナシティの結果を図8に表示してある。比較実施例24の繊維と比較して、実施例22および23の繊維では、コーン染色後の残留繊維テナシティが有意に改善されたことが明白であり、これは、コーン染色後の繊維破断の減少にプラスの影響を与えよう。何ら理論に拘ることは望まないが、実施例22および23が優れた残留テナシティを示す原因は、以下の1つまたは複数、即ち、高温での引張り強度の増加、耐摩耗性の増加、および/または押込抵抗の増加であったと考えられる。
【0238】
実施例28−CSYにおける繊維破断
実施例26の3種のCSY試料を、酸エッチングを用いた繊維破断について評価した。3種のCSY試料各々を、6メッシュの裏当てスクリーンと共に12”×12”のステンレス製200メッシュワイヤースクリーン上に巻き付けた。60ループができるまで、各CSY試料を各ワイヤーの回りに巻き付けた(上側および裏当てで1つの巻き付け)。スクリーン上の繊維全体は、ほぼ50メートルになろう。糸を巻き付けたスクリーンを硫酸浴中に24時間浸漬した。酸エッチングの後、糸付きスクリーンをその浴から取り出し、水で2回濯ぎ洗いをした。次いで、曝し済み繊維の破断数を数えた。3種の試料における破断数の結果を表12に示す。実施例22および23の繊維で行ったCSYに対する酸エッチングでは、全く破断がなかった。しかし、比較実施例24の繊維で行ったCSYに対する酸エッチングでは、破断が全面的であった。
【0239】
【表14】
【0240】
実施例29−織物における繊維破断
実施例26の3種のCSY試料を用いて、繊維破断の試験用に3種の生機織物試料を作製した。3種のCSY試料の織糸密度は、横糸方向だけに30本/cmであった。3種の生機の各々を、ステンレス鋼(SS)メッシュスクリーン上にSSフレームを用いて固定し、開放区域(約9”×8”)を硫酸液滴で展開した。3種の生機を24時間エッチングした。必要に応じて酸液滴を追加した。織物を水で2回濯ぎ洗いした。織物の繊維破断は、水中で、水から引上げ直後、および乾燥後に目視で判定した。実施例22および23の繊維から作製した生機では、水中、水から引上げ直後、乾燥後のいずれでも、繊維破断が全く見出されなかった。比較実施例24の繊維から作製した生機では、水中または水から引上げ直後では、繊維破断が全く見出されなかった。しかし、乾燥後では、比較実施例24の繊維から作製した生機は、多くの繊維破断を示した。
【0241】
実施例30−繊維架橋量の変化
実施例20の弾性エチレン/α−オレフィンインターポリマーを用いて、断面がほぼ丸い40デニールのモノフィラメント繊維を作製した。繊維の作製前に、以下の添加剤:PDMSO(ポリジメチルシロキサン)7000ppm、CYANOX 1790(1,3,5−トリス−(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン3000ppm、およびCHIMASORB 944、ポリ−[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ]−s−トリアジン−2,4−ジイル][2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]3000ppm、ならびにTiO20.5重量%をポリマーに添加した。円直径0.8mmのダイ形状、紡糸温度299℃、巻取り機速度650m/分、紡糸仕上げ剤2%、常温延伸6%、およびスプール重量150gを用いて、繊維を製造した。次いで、架橋剤として様々な量の照射を用いて、繊維を架橋した。
【0242】
ゲル含量対照射量を図9に示す。ゲル含量は、ほぼ25mgの繊維試料を有効数字4桁の精度まで秤量することにより、決定した。次いで、試料をキシレン7mlと、栓付き2ドラムバイアル中で合わせる。バイアルを15分毎に倒立混合(即ち、バイアルを逆さにする)しながら、125℃〜135℃で90分間加熱することにより、非架橋ポリマーを本質的に全て抽出する。バイアルが約25℃に冷えたら、キシレンをゲルからデカントする。新たなキシレンの少量でゲルをバイアル中で濯ぎ洗いする。濯ぎ洗い済みゲルを風袋計量済み秤量パンに移す。風袋計量済みのそのゲル入り皿を125℃、30分間真空乾燥し、キシレンを蒸発させて除く。乾燥済みゲルを含むパンを化学天秤で秤量する。ゲル含量を、抽出ゲル重量および元の繊維重量に基づいて計算する。図9は、電子ビーム線量が増加するにつれ、架橋量(ゲル含量)も増加することを示している。架橋量と電子ビーム線量との精密な相関関係が、所与のポリマーの特性、例えば分子量またはメルトインデックスの影響を受け得ることは、当業者であれば理解されよう。
【0243】
実施例31−デルタPの測定
弾性CSYは、高温でのポリマー緩和のために、コーン染色プロセス中にかなり収縮することがある。染色プロセス中の弾性繊維CSYの収縮は、コーンの収縮を起こし得る。その結果、染色中のコーンの密度が増加し、コーンの透過性が減少し、コーンを挟む差圧(ΔP)が増加することになろう。コーンを挟む高ΔPに伴う不都合な効果は、幾多も有り得るもので、高ΔPは、染色容器中の警報装置を始動させる恐れがあり、繊維に高い応力を掛け、そのため表面損傷および潜在的な繊維破断を起こす恐れがあり、コーン中に不均一な液流動を発生し、コーン全体の不均一な色分布を起こす恐れもある。したがって、コーン染色中の差圧を約1.0バールに制御すれば、最良の染色品質がしばしば実現されよう(1.4バールが、典型的なコーン染色機で警報が始動すると見込まれるレベルであることが多いことに留意されたい)。オレフィンブロックポリマーは、コーン密度、コーンを挟む差圧、その他などのコーン染色の操作パラメーターに、甚大な効果を及ぼすことのできる有利な収縮力を有する。
【0244】
収縮挙動は、実施例22の繊維を含むCSYと実施例23の繊維を含むCSYとを、蒸気処理後の糸の緩和を目視検査することにより比較して、定性的に決定した。コーン染色試験に用いた蒸気処理条件を図10に示す。各々95℃、9分間の蒸気処理2サイクルを利用して、コップ上のCSYを緩和させた。蒸気処理後、各試料のコップから糸1本を抜き取り、放置により完全に緩和して、小さなループを形成するようにした。緩和CSYは、カールや小さなループを欠いた相当な直線性を示すはずである。部分緩和CSYでは、多くのカールやループが示されよう。この目視検査を用いて、コーン染色プロセスにおけるCSYの性能を定性的に予測し得る。いずれの試料も完全には緩和せず、実施例22の繊維を含むCSYは、他方のCSYほど緩和しなかった。PET/綿オレフィンブロックポリマー繊維を含むCSYの緩和挙動も、完全には緩和しなかった。しかし、実施例23の繊維を含むCSYは、実施例22の繊維を含むCSYより緩和が大きいように見えた。
【0245】
蒸気処理工程をシミュレートするために、昇温に応答した際のCSYの収縮力を測定する第2の実験を行った。第2の実験の目的は、実施例22の繊維を含むCSYおよび実施例23の繊維を含むCSYを含めた綿40dCSYの選択した生機試料に、FST試験法を適用することであった。FST試験法では、収縮量およびCSYの収縮で発生した力を決定する。計測器は、加熱速度が調節できる2個の横型オーブンからなる。それは、収縮張力を検出するロードセル、および試料の収縮率を検出するエンコーダーも有する。この試験の選定した生機CSY試料は、蒸気処理工程をシミュレートするために、加熱速度4℃/分でFSTにより試験した。
【0246】
FST法では、収縮力を厳密には測定し得ないが、異なるCSY相互の定性的比較がなされよう。FST試験の結果は、図11に時間(28分まで)および温度(140℃まで)に対してプロットされている。FSTデータから幾つかの所見を以下のように述べることができる。
【0247】
95℃、18分間の蒸気処理により、両CSYに対して有意量の収縮力が阻止された。蒸気処理中のCSY収縮力を完全に阻止するためには、目標温度で収縮力が0に到達すべきである。このプロットから、CSYに対して、この目標温度を110℃まで上げるべきであると判定することができる。この所見は、オレフィンブロックポリマーの裸弾性繊維の代わりに、綿CSYに関してなされた。蒸気処理工程中の硬質カバーヤーンとオレフィンブロックポリマー弾性繊維との相互作用は、CSYに関するFST試験に固有であったので、この所見は、コーン染色におけるオレフィンブロックポリマーのCSY性能を予測する際、一助となり得る。このデータは、コーン密度、コーンサイズなどの他のパラメーターを制御すれば、オレフィンブロックポリマー繊維の40デニール綿CSYを95℃で蒸気処理することにより、首尾よいコーン染色が可能になり得ることを示唆している。
【0248】
上記の実施例26に使用したコーンサイズは、およそ1.1kgであった。コーンサイズの大型化は、一般にこのプロセスにおいてΔPの増加を起こすが、経済性は向上し得る。綿コーン染色プロセス中に、コーンは、精練/高温洗浄段階(90℃)でも第2高温洗浄段階(100℃)でもなく、温度が70℃の染色段階で最高のΔPを受けた。このことから、CSYまたはコーンの最大収縮は、加熱段階ではなく、冷却段階で起こった可能性が示唆される。綿染色については、実施例23の40デニール繊維のCSYは1.2バールのΔPを発生した。このことは、ゲル量がより少ないオレフィンブロックポリマーの40デニール繊維が、ΔPに関しては、ゲル量を60%以上含有するランダムエチレンポリマー繊維と同程度に、コーン染色において機能し得ることを示唆している。PET/綿コーン染色については、40デニールオレフィンブロック繊維は、1.4バールの警報レベル閾値より僅かに低い1.3バールのΔP最大値を発生した。オレフィンブロックポリマー/ポリプロピレン(PP)ブレンドの40デニール繊維は、綿、PET/綿双方の染色プロセスにおいて、全試作CSYのうち最低値のΔPを発生し、その値は、綿コーン染色では1.1バールであり、PET/綿コーン染色では1.2バールであった。オレフィンブロックポリマー繊維中にPP副成分をブレンドすることは、高度に伸長したPP相がその温度では収縮しないので、コーン染色中にコーンの収縮を減少させるとの仮定が立てられる。したがって、オレフィンブロックポリマーと少量のPPとをブレンドすることは、ΔPから見れば、CSYコーン染色の改善にも役立ち得る。
【0249】
PET/綿コーン染色中では、PET繊維を染色する第1プロセス段階で最大ΔPに達した。PET染色で用いる高温(130℃)は、オレフィンブロックポリマー繊維を緩和させ、オレフィンブロックポリマーCSYの収縮能の大部分を阻止するはずである。その直接的結果として、綿繊維を染色する第2プロセス段階では、非常に低いΔPが報告された。
【0250】
低架橋線量(70KGy)を併用した40デニールオレフィンブロックポリマー系繊維は、コーン染色中に有利なΔPレベルを示した。低ΔPは、繊維に低い応力を掛け、したがって破断を減少させると思われるので、コーン染色中には最も望ましい。低ΔPは、コーン全体の均一な流動および色分布を生じる上でも、時々役立ち得る。
【0251】
実施例32−色均一性の測定
色均一性を測定するために、重量約1.1kgの染色済みコーンを6個の小型コーンに巻き戻し、元コーンの半径に沿った色の深みを確かめた。分光計(CIELAB系)を用いて、コーン試料のa*値、b*値およびL*値を検出し、何らかの顕著な差を確かめるために、第1小型コーン(または表面層)と比較した。CIELAB系では、試料と特定色(標準)との許容色差ΔEを一般に用いて、消費者製品の色均一性または色整合を調べる。特に繊維製品および衣料業界では、着色品の合否許容差は、ΔEで約1.0〜1.5内に入ることと、一般に受け容れられている。色織物作製時の細綿糸については、許容性範囲は、内外色同等性に対するΔE0.3〜0.5から、ロット間変動に対するΔE1.0〜1.5まで、色の濃さ、用途(単色または色織物)、および他の要因に応じて変化することができる。ΔEは、次式のように計算され、
ΔE=√(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2
式中、L*=明度、a*=赤味〜緑味、b*=黄味〜青味;ΔL*=L*(試料)−L*(標準)、正のΔL*は、試料が標準より明るいことを意味し、負のΔL*は、試料が標準より暗いことを意味する;Δa*=a*(試料)−a*(標準)、正のΔa*は、試料が標準より赤味が強いことを意味し、負のΔa*は、試料が標準より緑味が強いことを意味する;Δb*=b*(試料)−b*(標準)、正のΔb*は、試料が標準より黄味が強いことを意味し、負のΔb*は、試料が標準より青味が強いことを意味する。
【0252】
各大型コーンを6〜7個の小型コーンに巻き戻した後、色の読取を行った。各試料の第1層の色を基準点とした。各試料に対して、全ての層に亘り平均したΔE値、および最外層(表面層)と最内層(コア層)とのΔEを表12に示す。実施例23の繊維を含むCSYでは、平均ΔEおよび表面・コア間のΔEが、共に1.0未満であったことが認められる。実施例22の繊維を含むCSYは、1より大きいΔEを有していた。しかし、こうしたコーンは全て、青く染色されたため、Δb*が色均一性分析で最も重要な属性である。平均ΔEの計算に使用したΔL*、Δa*およびΔb*の平均値も、図13にプロットしてある。色不均一性の主要素は、基準層に対する明度の差ΔL*であると考えられる。Δb*の差は、通常かなり小さかった。コーン密度およびコーンサイズを最適に調節することにより、色均一性は、更に改善できると考えられる。
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
米国特許実務のために、2007年1月16日出願の米国仮出願第60/885207号の内容全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、オレフィンブロックポリマーのコーン染色糸に関する。
【背景技術】
【0003】
コーン染色は、コーンに巻き付けてある糸の染色に使用されるバッチ法である。コーンは、コーン染色機中に配置し、そこで精練し、染色し、高温洗浄し、次いで低温洗浄する。この方法では、糸は、流れの相対的に高い温度および圧力に曝されることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
弾性コア繊維が硬質繊維に包まれたコーン染色糸は、流れの相対的に高い温度および圧力のために該弾性繊維が破断するので、製造が困難であることが判明した。したがって、得られるコーン染色糸には、弱いまたは破断した繊維が多数存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
破断繊維の減少および実質的に均一な色を含め、所望の性質がバランス良く組み合わさった改良型コーン染色糸が、今や発見された。こうしたコーン染色糸は、1本または複数の弾性繊維および硬質繊維を含み、弾性繊維は、少なくとも1種のエチレンオレフィンブロックポリマーと少なくとも1種の架橋剤との反応生成物を含み、前記エチレンオレフィンブロックポリマーが、架橋の前に以下の特性の1つまたは複数を特徴とするエチレン/α−オレフィンインターポリマーである。即ち、該インターポリマーは、
(a)約1.7から約3.5のMw/Mn、℃単位の少なくとも1つの融点Tm、およびg/cm3単位の密度dを有し、Tmおよびdの数値が次式の相関関係:
Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)2
に対応し、または
(b)約1.7から約3.5のMw/Mnを有し、J/g単位の融解熱ΔH、および最高DSCピークと最高CRYSTAFピークとの温度差として定義される℃単位のデルタ量ΔTを特徴とし、ΔTおよびΔHの数値が次式の相関関係:
0より大きく、130J/gまでのΔHに対して、ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81、
130J/gより大きいΔHに対して、ΔT≧48℃
であり、該CRYSTAFピークは、累積ポリマーの少なくとも5%を用いて決定され、該ポリマーの5%未満が特定可能なCRYSTAFピークを有する場合、該CRYSTAF温度は30℃であり、または
(c)エチレン/α−オレフィンインターポリマーの圧縮成形フィルムを用いて測定した、歪み率300%および1サイクルでの%単位の弾性回復率Reを特徴とし、g/cm3単位の密度dを有し、エチレン/α−オレフィンインターポリマーが架橋相を実質的に含有しない場合に、Reおよびdの数値が次式の相関関係:
Re>1481−1629(d)
を満足し、または
(d)TREFを用いて分別した際、40℃〜130℃の間で溶出する分子分画であって、同じ温度間で溶出する匹敵ランダムエチレンインターポリマーの分画と比べ、少なくとも5%高いコモノマーモル含量を有することを特徴とする分子分画を有し、但し、匹敵ランダムエチレンインターポリマーは、同じコモノマー(複数も)と、前記エチレン/α−オレフィンインターポリマーのものから10%以内にあるメルトインデックス、密度、およびポリマー全体に対するコモノマーモル含量とを有し、または
(e)G’(25℃)対G’(100℃)の比が約1:1から約10:1である、25℃での貯蔵弾性率G’(25℃)および100℃での貯蔵弾性率G’(100℃)を特徴とし、または
(f)TREFを用いて分別した際、40℃〜130℃の間で溶出する少なくとも1つの分子分画であって、少なくとも0.5で約1までのブロック指数、および約1.3より大きい分子量分布Mw/Mnを有することを特徴とする分子分画、または
(g)0より大きく、約1までの平均ブロック指数、および約1.3より大きい分子量分布Mw/Mn。
【0006】
エチレン/α−オレフィンインターポリマーの上記特性(1)〜(7)は、何らかの相当程度の架橋、即ち架橋の前のエチレン/α−オレフィンインターポリマーに関して示している。本発明に有用なエチレン/α−オレフィンインターポリマーは、通常、所望の性質を得る程度まで架橋される。架橋前に測定した特性(1)〜(7)を使用するとは、該インターポリマーを架橋する必要がないと示唆することを意味するのではなく、相当程度に架橋していない該インターポリマーに関して、その特性を測定することを意味するに過ぎない。架橋は、特定のポリマーおよび架橋度に応じて、こうした性質のそれぞれを変化させることもあれば、変化させないこともある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】従来のランダムコポリマー(円で表示)およびチーグラー・ナッタコポリマー(三角で表示)と比較した際の、本発明のポリマー(菱形で表示)に対する融点/密度の相関関係を示す図である。
【図2】各種ポリマーに対するDSC溶融エンタルピーの関数としてのデルタDSC−CRYSTAFのプロットを示す図である。菱形はランダムエチレン/オクテンコポリマーを表し、四角はポリマー例1〜4を表し、三角はポリマー例5〜9を表し、円はポリマー例10〜19を表す。「X」記号はポリマー例A*〜F*を表す。
【図3】本発明のインターポリマー(四角および円で表示)ならびに従来のコポリマー(各種AFFINITY(商標)ポリマー(The Dow Chemical Companyから入手可能)である、三角で表示)から作製した無配向フィルムに関して、弾性回復率に対する密度の効果を示す図である。四角は本発明のエチレン/ブテンコポリマーを表し、円は本発明のエチレン/オクテンコポリマーを表す。
【図4】実施例5のポリマー(円で表示)ならびに比較ポリマーEおよびF(「X」記号で表示)に関して、TREF分別したエチレン/1−オクテンコポリマー分画のオクテン含量を、分画のTREF溶出温度に対してプロットした図である。菱形は従来のランダムエチレン/オクテンコポリマーを表す。
【図5】実施例5のポリマー(曲線1)および比較F(曲線2)に関して、TREF分別したエチレン/1−オクテンコポリマー分画のオクテン含量を、分画のTREF溶出温度に対してプロットした図である。四角は実施例F*を表し、三角は実施例5を表す。
【図6】比較のエチレン/1−オクテンコポリマー(曲線2)およびプロピレン/エチレンコポリマー(曲線3)、ならびに異なる量の連鎖シャトリング剤(chain shuttling agent)で作製された本発明のエチレン/1−オクテンブロックコポリマー2種(曲線1)に関して、温度の関数として貯蔵弾性率の対数をグラフ化した図である。
【図7】幾つかの既知ポリマーと比較した際の、本発明の幾つかのポリマー(菱形で表示)に関するTMA(1mm)対曲げ弾性率のプロットを示す図である。三角は各種Dow VERSIFY(商標)ポリマー(The Dow Chemical Companyから入手可能)を表し、円は各種のランダムエチレン/スチレンコポリマーを表し、四角は各種Dow AFFINITY(商標)ポリマー(The Dow Chemical Companyから入手可能)を表す。
【図8】各種CSY試料に対してコーン染色後の残留繊維テナシティを示す図である。
【図9】オレフィンブロックポリマーに関する電子線照射量対架橋率(%)のプロットを示す図である。
【図10】実施例31で使用した蒸気処理条件を示す図である。
【図11】実施例31のFST試験の結果を示す図である。
【図12】実施例32に対して、全ての層に亘って平均したΔE値、および最外層(表面層)、最内層(コア層)間のΔEを示す図である。
【図13】実施例32の平均ΔEの計算に使用した、ΔL*、Δa*およびΔb*の各平均値のプロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一般定義
「繊維」とは、長さ対直径比が約10より大きい材料を意味する。繊維は、通常その直径に従って分類される。フィラメント繊維は、フィラメント当たり約15デニール超、通常は約30デニール超の個々の繊維直径を有するものと一般に定義される。細デニール繊維は、一般に、フィラメント当たり約15デニール未満の直径を有する繊維を指す。
【0009】
「フィラメント繊維」または「モノフィラメント繊維」とは、確定した長さの不連続な材料ストランド(即ち、所定長さの断片に切断された、または別の方法で分割されたストランド)である「ステープル繊維」とは反対に、不確定な(即ち、予め決まっていない)長さの連続的な材料ストランドを意味する。
【0010】
「弾性」とは、繊維が、1回目の引張り後に伸びた長さの少なくとも約50%回復し、4回目の引張り後には100%の歪み(その長さの2倍となる)まで回復することになることを意味する。弾性は、繊維の「永久歪み」によっても表現することができる。永久歪みは、弾性の逆である。繊維は、特定の点まで延伸され、その後、延伸前の元の位置まで解放され、次いで再び延伸される。繊維が荷重を引張り始める点を永久歪み率(%)と呼称する。「弾性材料」は、当技術分野では「エラストマー」および「エラストマー性」とも称する。弾性材料(ときには弾性物品と称する)には、コポリマー自体、ならびにそれだけに限らないが、繊維、フィルム、細片、テープ、リボン、シート、被膜、成形物などの形態のコポリマーも含まれる。好ましい弾性材料は繊維である。弾性材料は、硬化もしくは非硬化、照射もしくは非照射、および/または架橋もしくは非架橋のいずれにも処理することができる。
【0011】
「非弾性材料」とは、上記定義のような弾性を示さない材料、例えば繊維を意味する。
【0012】
「ホモフィル(homofil)繊維」とは、単一のポリマー領域またはドメインを有し、(複合繊維のように)他の異なるポリマー領域を全く有していない繊維を意味する。
【0013】
「複合繊維」とは、2種以上の異なるポリマー領域またはドメインを有する繊維を意味する。複合繊維は、コンジュゲート繊維または多成分繊維としても知られている。2種以上の成分は同じポリマーを含んでもよいが、ポリマーは、通常相互に異なっている。該ポリマーは、複合繊維の断面全体の実質的に異なる帯域に配置され、通常、複合繊維の長さに沿って連続的に延在している。複合繊維の構成は、例えば、鞘/芯配置(一方のポリマーが他方に囲まれている)、並行配置、パイ状配置、または「海島」配置でもよい。複合繊維は、米国特許第6225243号、第6140442号、第5382400号、第5336552号および第5108820号に更に記載されている。
【0014】
「糸」とは、織物または編み物および他の物品の製造に使用できる、撚ったまたは別の方法で絡ませたフィラメントの連続長を意味する。糸は、被覆することもしないこともできる。カバードヤーンは、別の繊維または材料、通常は綿や羊毛などの天然繊維の外皮内に少なくとも一部が包まれた糸である。
【0015】
「ポリマー」とは、同種、異種に関わらずモノマーの重合により調製されるポリマー化合物を意味する。「ポリマー」という総称は、用語「ホモポリマー」、「コポリマー」、「ターポリマー」ならびに「インターポリマー」を包含する。
【0016】
「インターポリマー」とは、異なる少なくとも2種のモノマーの重合により調製されるポリマーを意味する。「インターポリマー」という総称には、用語「コポリマー」(異なる2種のモノマーから調製されるポリマーを指すために、通常使用される)、ならびに用語「ターポリマー」(異なる3種のモノマーから調製されるポリマーを指すために、通常使用される)が含まれる。それは、4種以上のモノマーの重合により作製されるポリマーも包含する。
【0017】
「エチレン/α−オレフィンインターポリマー」とは、エチレンおよび3個以上の炭素原子を有するα−オレフィンを含むポリマーを一般に指す。好ましくは、エチレンが、ポリマー全体の過半のモル分率を占める、即ち、エチレンが、ポリマー全体の少なくとも約50モル%を占める。より好ましくは、エチレンが、ポリマー全体の少なくとも約60モル%、少なくとも約70モル%、または少なくとも約80モル%を占め、ポリマー全体の実質的な残部には、好ましくは、3個以上の炭素原子を有するα−オレフィンである少なくとも1種の他のコモノマーが含まれる。多くのエチレン/オクテンコポリマーの場合、好ましい組成物は、ポリマー全体の約80モル%より大きいエチレン含量、およびポリマー全体の約10〜約15、好ましくは約15〜約20モル%のオクテン含量を含む。幾つかの実施形態では、エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、低収率もしくは少量で、または化学プロセスの副生物として生成するものを含めない。エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、1種または複数のポリマーとブレンドすることができるが、生成したままのエチレン/α−オレフィンインターポリマーは、実質的に純粋であり、重合プロセスの反応生成物の主成分を含むことが多い。
【0018】
エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、化学的または物理的性質が異なる2種以上の重合済みモノマー単位の複数のブロックまたはセグメントを特徴とする重合済み形態で、エチレンおよび1種または複数の共重合性α−オレフィンコモノマーを含む。即ち、エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、ブロックインターポリマー、好ましくはマルチブロックのインターポリマーまたはコポリマーである。用語「インターポリマー」および「コポリマー」は、本明細書では互換的に使用される。幾つかの実施形態では、マルチブロックコポリマーは、次式により表すことができ、
(AB)n
式中、nは、少なくとも1、好ましくは2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100またはそれより大などの1より大きい整数であり、Aはハードブロックまたはセグメントを表し、Bはソフトブロックまたはセグメントを表す。好ましくは、AおよびBは、実質的に分岐してまたは実質的に星形にとは反対に、実質的に線状に連結されている。他の実施形態では、AブロックおよびBブロックは、ポリマー鎖に沿ってランダムに分布している。他の実施形態では、ブロックコポリマーは、以下のような構造を有していない。
AAA−−−AA−BBB−−−BB
【0019】
更に他の実施形態では、ブロックコポリマーは、通常、異なるコモノマー(複数も)を含む第3型のブロックを有していない。更に他の実施形態では、ブロックAおよびブロックB各々は、そのブロック内に実質的にランダムに分布するモノマーまたはコモノマーを有している。言い換えれば、ブロックAもブロックBも、そのブロックの残部と実施的に組成が異なる、先端部セグメントのような個別組成のサブセグメント(またはサブブロック)を2個以上含んでいない。
【0020】
マルチブロックポリマーは、様々な量の「ハード」および「ソフト」セグメントを通常含む。「ハード」セグメントとは、エチレンが、ポリマーの重量に基づいて約95重量%より多い、好ましくは約98重量%より多い量で存在する、重合済み単位のブロックを指す。言い換えれば、ハードセグメント中のコモノマー含量(エチレン以外のモノマーの含量)は、ポリマーの重量に基づいて約5重量%より少ない、好ましくは約2重量%より少ない。幾つかの実施形態では、ハードセグメントは、全てがまたは実質的に全てがエチレンを含む。他方、「ソフト」セグメントとは、コモノマー含量(エチレン以外のモノマーの含量)が、ポリマーの重量に基づいて約5重量%より多い、好ましくは約8重量%より多い、約10重量%より多い、または約15重量%より多い、重合済み単位のブロックを指す。幾つかの実施形態では、ソフトセグメント中のコモノマー含量は、約20重量%より多い、約25重量%より多い、約30重量%より多い、約35重量%より多い、約40重量%より多い、約45重量%より多い、約50重量%より多い、または約60重量%より多いこともある。
【0021】
ソフトセグメントは、ブロックインターポリマー中に、ブロックインターポリマーの全重量に対して約1重量%〜約99重量%、好ましくは、ブロックインターポリマーの全重量に対して約5重量%〜約95重量%、約10重量%〜約90重量%、約15重量%〜約85重量%、約20量%〜約80重量%、約25量%〜約75重量%、約30重量%〜約70重量%、約35重量%〜約65重量%、約40重量%〜約60重量%、または約45重量%〜約55重量%、しばしば存在し得る。逆に、ハードセグメントは同様な範囲で存在し得る。ソフトセグメントの重量%およびハードセグメントの重量%は、DSCまたはNMRから得たデータに基づいて計算することができる。このよう方法および計算は、Colin L. P. Shan, Lonnie Hazlitt, et. al.の氏名で2006年3月15日に出願され、Dow Global Technologies Inc.に譲渡されており、開示内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる、名称「Ethylene/α-Olefins Block Interpolymers」の同時出願した米国特許出願第11/376835号、代理人整理番号385063999558に開示されている。
【0022】
用語「結晶性」とは、それを用いる場合、示差走査熱量測定(DSC)または同等技法で決定した際、一次転移点または結晶融点(Tm)を有するポリマーを指す。この用語は、「半結晶性」という用語と互換的に使用し得る。用語「非晶性」とは、示差走査熱量測定(DSC)または同等技法で決定した際、結晶融点を欠いたポリマーを指す。
【0023】
用語「マルチブロックコポリマー」または「セグメント化コポリマー」とは、好ましくは線状に結合した、化学的に異なる2個以上の領域またはセグメント(「ブロック」と称する)を含むポリマー、即ち、側鎖結合やグラフト化ではなく、重合済みエチレン官能基に関して末端間で結合している、化学的に差別化された単位を含むポリマーを指す。好ましい実施形態では、ブロック同士は、その中に組み入れられているコモノマーの量もしくは種類、密度、結晶性の量、当該組成のポリマーに起因する結晶子のサイズ、立体規則性の種類もしくは程度(アイソタクチックもしくはシンジオタクチック)、位置規則性もしくは位置不規則性、長鎖分岐もしくは高分岐を含む分岐の量、均質性、または他の任意の化学的もしくは物理的性質が異なる。マルチブロックコポリマーは、コポリマーの特異なプロセス製法による、両方の多分散指数(PDIもしくはMw/Mn)の特異な分布、ブロック長分布、および/またはブロック数分布を特徴とする。より具体的には、連続法で製造した場合、該ポリマーは、望ましくは1.7〜2.9、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.8〜2.2、最も好ましくは1.8〜2.1のPDIを有する。バッチ法またはセミバッチ法で製造した場合、該ポリマーは、1.0〜2.9、好ましくは1.3〜2.5、より好ましくは1.4〜2.0、最も好ましくは1.4〜1.8のPDIを有する。
【0024】
以下の説明では、本明細書に開示される全ての数字は、それに関して「約」または「およその」という単語が使用されているか否かに関わらず、近似値である。そうした数字は、1%、2%、5%、またはときには10〜20%変化し得る。下限RLおよび上限RUの数値範囲が開示されるときは常に、この範囲内に入る任意の数字が具体的に開示される。特に、この範囲内の以下の数字:R=RL+k*(RU−RL)が具体的に開示され、式中kは、増分1%の1%〜100%に亘る変数である、即ちkは、1%、2%、3%、4%、5%、・・・50%、51%、52%、・・・95%、96%、97%、98%、99%または100%である。その上、上記で規定する2つのR数が画定する任意の数値範囲も、具体的に開示される。
【0025】
エチレン/α−オレフィンインターポリマー
本発明の実施形態で使用されるエチレン/α−オレフィンインターポリマー(「本発明のインターポリマー」または「本発明のポリマー」とも称する)は、化学的または物理的性質が異なる2種以上の重合済みモノマー単位の複数のブロックまたはセグメント(ブロックインターポリマー)、好ましくはマルチブロックコポリマーを特徴とする重合済み形態で、エチレンおよび1種または複数の共重合性α−オレフィンコモノマーを含む。該エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、以下に記載する態様の1つまたは複数を特徴とする。
【0026】
一態様では、本発明の実施形態で使用されるエチレン/α−オレフィンインターポリマーは、約1.7から約3.5のMw/Mn、および℃単位の少なくとも1つの融点Tm、およびg/cm3単位の密度dを有し、前記変数の数値が次式の相関関係:
Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)2、好ましくは
Tm≧−6288.1+13141(d)−6720.3(d)2、より好ましくは
Tm≧858.91−1825.3(d)+1112.8(d)2
に対応する。
【0027】
このような融点/密度の相関関係は、図1に例示されている。融点が密度の減少と共に減少するエチレン/α−オレフィンの従来のランダムコポリマーと異なり、本発明のインターポリマー(菱形で表示)は、特に密度が約0.87g/cc〜約0.95g/ccの間にあるとき、密度に実質的に依存しない融点を示す。例えば、密度が約0.875g/cc〜約0.945g/ccに亘るとき、このようなポリマーの融点は約110℃〜約130℃の範囲にある。幾つかの実施形態では、密度が約0.875g/cc〜約0.945g/ccに亘るとき、このようなポリマーの融点は約115℃〜約125℃の範囲にある。
【0028】
別の態様では、該エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、重合済みの形態で、エチレンおよび1種または複数のα−オレフィンを含み、示差走査熱量測定(「DSC」)の最高ピークに対する温度マイナス結晶化分析分別(Crystallization Analysis Fractionation)(「CRYSTAF」)の最高ピークに対する温度として定義される℃単位のΔT、およびJ/g単位の融解熱ΔHを特徴とし、ΔTおよびΔHが、130J/gまでのΔHに対して次式の相関関係:
ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81、好ましくは
ΔT≧−0.1299(ΔH)+64.38、より好ましくは
ΔT≧−0.1299(ΔH)+65.95
を満足する。その上、ΔTは、130J/gより大きいΔHに対して、48℃以上である。
該CRYSTAFピークは、累積ポリマーの少なくとも5%を用いて決定され(即ち、このピークは累積ポリマーの少なくとも5%を代表しなければならない)、該ポリマーの5%未満が特定可能なCRYSTAFピークを有する場合、該CRYSTAF温度は30℃であり、ΔHはJ/g単位の融解熱の数値である。より好ましくは、最高CRYSTAFピークが累積ポリマーの少なくとも10%を含有する。図2は、本発明のポリマーならびに比較例のプロットしたデータを示す。積分ピーク面積およびピーク温度は、機器メーカーが供給したコンピュータ処理描図プログラムによって計算される。比較のランダムエチレンオクテンポリマーに対して示した斜線は、等式ΔT=−0.1299(ΔH)+62.81に対応する。
【0029】
更に別の態様では、該エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、昇温溶出分別(Temperature Rising Elution Fractionation)(「TREF」)を用いて分別した際、40℃〜130℃の間で溶出する分子分画であって、同じ温度間で溶出する匹敵ランダムエチレンインターポリマーの分画と比べ、好ましくは少なくとも5%高い、より好ましくは少なくとも10%高いコモノマーモル含量を有することを特徴とする分子分画を有し、但し、匹敵ランダムエチレンインターポリマーは、同じコモノマー(複数も)を含有し、該エチレン/α−オレフィンインターポリマーのものから10%以内にあるメルトインデックス、密度、およびポリマー全体に対するコモノマーモル含量を有する。好ましくは、該匹敵インターポリマーのMw/Mnも、該ブロックインターポリマーのMw/Mnの10%以内にあり、および/または該匹敵インターポリマーは、該ブロックインターポリマーの全コモノマー含量の10重量%以内にあるその含量を有する。
【0030】
更に別の態様では、該エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、エチレン/α−オレフィンインターポリマーの圧縮成形フィルムに関して測定した、歪み率300%および1サイクルでの%単位の弾性回復率Reを特徴とし、g/cm3単位の密度dを有し、エチレン/α−オレフィンインターポリマーが架橋相を実質的に含有しない場合に、Reおよびdの数値が次式の相関関係:
Re>1481−1629(d)、好ましくは
Re≧1491−1629(d)、より好ましくは
Re≧1501−1629(d)、一層より好ましくは
Re≧1511−1629(d)
を満足する。
【0031】
図3は、ある種の本発明のインターポリマーおよび従来のランダムコポリマーから作製した無配向フィルムに関して、弾性回復率に対する密度の効果を示す。同じ密度の場合、本発明のインターポリマーの方が実質的に高い弾性回復率を有する。
【0032】
幾つかの実施形態では、該エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、11cm/分のクロスヘッド移動速度で、10MPa超の引張り強度、好ましくは引張り強度≧11MPa、より好ましくは引張り強度≧13MPa、および/または破断伸びとして少なくとも600%、より好ましくは少なくとも700%、非常に好ましくは少なくとも800%、最も非常に好ましくは少なくとも900%を有する。
【0033】
他の実施形態では、該エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、(1)貯蔵弾性率比G’(25℃)/G’(100℃)として1〜50、好ましくは1〜20、より1〜10、および/または(2)70℃圧縮永久歪みとして80%未満、好ましくは70%未満、殊のほか60%未満、50%未満、もしくは40%未満で0%までの圧縮永久歪みを有する。
【0034】
更に他の実施形態では、該エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、80%未満、70%未満、60%未満または50%未満の70℃圧縮永久歪みを有する。好ましくは、該インターポリマーの70℃圧縮永久歪みは、40%未満、30%未満、20%未満であり、約0%まで低下することもある。
【0035】
幾つかの実施形態では、該エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、85J/g未満の融解熱、および/またはペレットブロッキング強度として100ポンド/平方フィート(4800Pa)以下、好ましくは50lb/ft2(2400Pa)以下、殊のほか5lb/ft2(240Pa)以下、更に0lb/ft2(0Pa)ほどの低値を有する。
【0036】
他の実施形態では、該エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、重合済みの形態で、少なくとも50モル%のエチレンを含み、70℃圧縮永久歪みとして80%未満、好ましくは70%未満または60%未満、最も好ましくは40〜50%未満、更に0%近くまでの低値を有する。
【0037】
幾つかの実施形態では、該マルチブロックコポリマーは、ポアッソン分布ではなくシュルツ−フローリー分布に合致するPDIを有する。該コポリマーは、更に、多分散ブロック分布、多分散ブロックサイズ分布の両方を有し、最確のブロック長分布を有するものと特徴付けられる。好ましいマルチブロックコポリマーは、末端ブロックを含め4個以上のブロックまたはセグメントを含有するものである。より好ましくは、該コポリマーは、末端ブロックを含め、少なくとも5個、10個または20個のブロックまたはセグメントを含む。
【0038】
コモノマー含量は、適切な任意の技法を用いて測定し得るが、核磁気共鳴(「NMR」)分光法に基づく技法が好ましい。その上、相対的に広幅のTREF曲線を有するポリマーまたはポリマーブレンドの場合、該ポリマーは、TREFを用いて、各々が10℃以下の溶出温度範囲を有する分画に最初に分別されるのが望ましい。即ち、各溶出分画は、10℃以下の回収温度ウィンドウを有する。この技法を用いると、前記のブロックインターポリマーは、匹敵インターポリマーの対応する分画よりコモノマーモル含量が高い、少なくとも1つのそのような分画を有する。
【0039】
別の態様では、本発明のポリマーは、重合済み形態で、好ましくは、エチレンおよび1種または複数の共重合性コモノマーを含むオレフィンインターポリマーであって、化学的または物理的性質が異なる2種以上の重合済みモノマー単位の複数のブロック(即ち、少なくとも2個のブロック)またはセグメント(ブロックインターポリマー)、最も好ましくはマルチブロックコポリマーを特徴とし、前記のブロックインターポリマーが、40℃〜130℃の間で溶出する(しかし、個々の分画の回収および/または単離をせずに)ピーク(しかし、単なる分子分画ではない)を有するオレフィンインターポリマーであって、前記ピークが、赤外分光法により、全幅/半値(FWHM)面積計算を用いて展開したときに推定したコモノマー含量を有し、同じ溶出温度において全幅/半値(FWHM)面積計算を用いて展開した、匹敵ランダムエチレンインターポリマーのピークの平均コモノマーモル含量より高い、好ましくは少なくとも5%高い、より好ましくは少なくとも10%高い、その平均モル含量を有することを特徴とし、但し、匹敵ランダムエチレンインターポリマーは、同じコモノマー(複数も)を有し、前記エチレン/α−オレフィンインターポリマーのものから10%以内にあるメルトインデックス、密度、およびポリマー全体に対するコモノマーモル含量を有する。好ましくは、該匹敵インターポリマーのMw/Mnも、該ブロックインターポリマーのMw/Mnの10%以内にあり、および/または該匹敵インターポリマーは、該ブロックインターポリマーの全コモノマー含量の10重量%以内にあるその含量を有する。全幅/半値(FWHM)計算は、ATREF赤外検出器から得たメチル対メチレン応答面積比[CH3/CH2]に基づき、その際、最高ピーク(最大ピーク)を基底線から特定し、次いでFWHM面積を決定する。ATREFピークを用いて測定した分布の場合、FWHM面積は、そのピーク高さを2で割り、次いで基底線に対して水平であり、ATREF曲線の左部および右部と交差する線を引くことにより、ATREFピークの左側および右側に決めた各点であるT1およびT2の間の曲線下面積と定義される。コモノマー含量に対する較正曲線は、ランダムエチレン/α−オレフィンコポリマーを用い、NMRからのコモノマー含量をTREFピークのFWHM面積比に対してプロットして作成される。この赤外法では、較正曲線は、対象とする同じコモノマー種に対して作成される。本発明のポリマーのTREFピークのコモノマー含量は、TREFピークのFWHMのメチル対メチレン面積比[CH3/CH2]を用いて、この較正曲線を参照することにより決定することができる。
【0040】
コモノマー含量は、適切な任意の技法を用いて測定し得るが、核磁気共鳴(NMR)分光法に基づく技法が好ましい。この技法を用いると、前記のブロックインターポリマーは、対応する匹敵インターポリマーより高いコモノマーモル含量を有する。
【0041】
エチレンおよび1−オクテンのインターポリマーの場合、好ましくは、そのブロックインターポリマーでは、40〜130℃の間で溶出するTREF分画のコモノマー含量が、(−0.2013)T+20.07の量以上、より好ましくは(−0.2013)T+21.07の量以上であり、式中Tは、比較するTREF分画の溶出ピーク温度を℃単位で測定した数値である。
【0042】
図4は、エチレンおよび1−オクテンのブロックインターポリマーの実施形態を図示するが、図中、匹敵エチレン/1−オクテンインターポリマー(ランダムコポリマー)数種のコモノマー含量対TREF溶出温度のプロットは、(−0.2013)T+20.07を表す線(実線)に合致している。等式(−0.2013)T+21.07に対する線は、点線で描かれている。本発明のブロックエチレン/1−オクテンインターポリマー(マルチブロックコポリマー)数種の分画に対しても、コモノマー含量が描かれている。ブロックインターポリマーの全分画が、同等の溶出温度においていずれの線より有意に高い1−オクテン含量を有する。この結果は、本発明のインターポリマーに特徴的であり、結晶性、非晶性を併有するポリマー鎖内の差別化ブロックの存在によると考えられる。
【0043】
図5は、以下に考察する実施例5および比較Fに対して、ポリマー分画のTREF曲線およびコモノマー含量を図示している。40〜130℃、好ましくは60℃〜95℃で溶出する両ポリマーのピークは、3つの部分に分別され、各部分が10℃未満の温度範囲に亘って溶出する。実施例5の実データは三角で表されている。異なるコモノマーを含有するインターポリマーのために適当な較正曲線を構築し、同じモノマーの比較インターポリマー、好ましくは、メタロセンまたは他の均一触媒組成物を用いて作製したランダムコポリマーから得たTREF値に合致させた線を、比較に使用し得ることは、当業者には理解することができる。本発明のインターポリマーは、較正曲線から決定した同一TREF溶出温度における値より大きい、好ましくは少なくとも5%大きい、より好ましくは少なくとも10%大きいコモノマーモル含量を特徴とする。
【0044】
上記の態様および本明細書に記載の性質に加えて、本発明のポリマーは、1つまたは複数の付加的性質を特徴とすることができる。一態様では、本発明のポリマーは、重合済み形態で、好ましくは、エチレンおよび1種または複数の共重合性コモノマーを含むオレフィンインターポリマーであって、化学的または物理的性質が異なる2種以上の重合済みモノマー単位の複数のブロックまたはセグメント(ブロックインターポリマー)、最も好ましくはマルチブロックコポリマーを特徴とし、前記のブロックインターポリマーが、TREF増分を用いて分別した際、40℃〜130℃の間で溶出する分子分画を有するオレフィンインターポリマーであって、前記分画が、同じ温度間で溶出する匹敵ランダムエチレンインターポリマーの分画のコモノマーモル含量より高い、好ましくは少なくとも5%高い、より好ましくは少なくとも10、15、20または25%高い、そのモル含量を有することを特徴とし、但し、匹敵ランダムエチレンインターポリマーは、同じコモノマー(複数も)を含み、好ましくはそれが同じコモノマー(複数も)であり、該ブロックインターポリマーのものから10%以内にあるメルトインデックス、密度、およびポリマー全体に対するコモノマーモル含量を有する。好ましくは、該匹敵インターポリマーのMw/Mnも、該ブロックインターポリマーのMw/Mnの10%以内にあり、および/または該匹敵インターポリマーは、該ブロックインターポリマーの全コモノマー含量の10重量%以内にあるその含量を有する。
【0045】
好ましくは、上記インターポリマーは、エチレンおよび少なくとも1種のα−オレフィンのインターポリマー、殊のほか、約0.855〜約0.935g/cm3の全ポリマー密度を有するインターポリマーであり、約1モル%超のコモノマーを有するポリマーの場合、より殊のほか、そのブロックインターポリマーでは、40〜130℃の間で溶出するTREF分画のコモノマー含量が、(−0.1356)T+13.89の量以上、より好ましくは(−0.1356)T+14.93の量以上、最も好ましくは(−0.2013)T+21.07の量以上であり、式中Tは、比較するTREF分画のATREF溶出ピーク温度を℃単位で測定した数値である。
【0046】
好ましくは、エチレンおよび少なくとも1種のα−オレフィンの上記インターポリマー、殊のほか、約0.855〜約0.935g/cm3の全ポリマー密度を有するインターポリマーの場合、より殊のほか、約1モル%超のコモノマーを有するポリマーの場合、そのブロックインターポリマーでは、40〜130℃の間で溶出するTREF分画のコモノマー含量が、(−0.2013)T+20.07の量以上、より好ましくは(−0.2013)T+21.07の量以上であり、式中Tは、比較するTREF分画の溶出ピーク温度を℃単位で測定した数値である。
【0047】
更に別の態様では、本発明のポリマーは、重合済み形態で、好ましくは、エチレンおよび1種または複数の共重合性コモノマーを含むオレフィンインターポリマーであって、化学的または物理的性質が異なる2種以上の重合済みモノマー単位の複数のブロックまたはセグメント(ブロックインターポリマー)、最も好ましくはマルチブロックコポリマーを特徴とし、前記のブロックインターポリマーが、TREF増分を用いて分別した際、40℃〜130℃の間で溶出する分子分画を有するオレフィンインターポリマーであって、少なくとも約6モル%のコモノマー含量を有するあらゆる分画が、約100℃より高い融点を有することを特徴とする。約3モル%〜約6モル%のコモノマー含量を有する分画の場合、あらゆる分画が、約110℃以上のDSC融点を有する。より好ましくは、少なくとも1モル%のコモノマーを有する前記のポリマー分画は、次の等式:
Tm≧(−5.5926)(分画中のモル%コモノマー)+135.90
に一致するDSC融点を有する。
【0048】
更に別の態様では、本発明のポリマーは、重合済み形態で、好ましくは、エチレンおよび1種または複数の共重合性コモノマーを含むオレフィンインターポリマーであって、化学的または物理的性質が異なる2種以上の重合済みモノマー単位の複数のブロックまたはセグメント(ブロックインターポリマー)、最も好ましくはマルチブロックコポリマーを特徴とし、前記のブロックインターポリマーが、TREF増分を用いて分別した際、40℃〜130℃の間で溶出する分子分画を有するオレフィンインターポリマーであって、約76℃以上のATREF溶出温度を有するあらゆる分画が、DSCで測定したとき、次の等式:
融解熱(J/g)≦(3.1718)(℃単位のATREF溶出温度)−136.58
に一致する溶融エンタルピー(融解熱)を有することを特徴とする。
【0049】
本発明のブロックインターポリマーは、TREF増分を用いて分別した際、40℃〜130℃の間で溶出する分子分画を有し、40℃と約76℃未満の間のATREF溶出温度を有するあらゆる分画が、DSCで測定したとき、次の等式:
融解熱(J/g)≦(1.1312)(℃単位のATREF溶出温度)+22.97
に一致する溶融エンタルピー(融解熱)を有することを特徴とする。
【0050】
赤外検出器によるATREFピークのコモノマー組成測定
TREFピークのコモノマー組成は、Polymer Char, Valencia, Spain (http://www.polymerchar.com/) から入手できるIR4赤外検出器を用いて測定することができる。
【0051】
該検出器の「組成モード」は、2800〜3000cm−1の領域にある固定された狭帯域赤外フィルターである、測定センサー(CH2)および組成センサー(CH3)を装備している。測定センサーは、ポリマー上のメチレン(CH2)炭素(溶液中のポリマー濃度に直接関係する)を検出するのに対し、組成センサーは、ポリマーのメチル(CH3)基を検出する。組成シグナル(CH3)割る測定シグナル(CH2)の数学的比率は、溶液中の測定ポリマーのコモノマー含量に敏感であり、その応答は、エチレン・α−オレフィンコポリマーの既知標準品で較正される。
【0052】
該検出器は、ATREF計測器と共に使用した場合、TREF過程中における溶出ポリマーの濃度(CH2)および組成(CH3)の両シグナル応答を与える。ポリマー特異的較正は、既知のコモノマー含量の各ポリマーについて、CH3対CH2の面積比を測定する(好ましくはNMRで測定される)ことにより、創生することができる。ポリマーのATREFピークのコモノマー含量は、CH3およびCH2個々の応答の面積比に参照較正を適用することにより、推定することができる(即ち、面積比CH3/CH2対コモノマー含量)。
【0053】
ピークの面積は、TREFクロマトグラムの個々のシグナル応答を積分するために適当な基底線を適用した後、全幅/半値(FWHM)計算を用いて計算することができる。全幅/半値計算は、ATREF赤外検出器から得るメチル対メチレン応答面積比[CH3/CH2]に基づいており、その際最高ピーク(最大ピーク)を基底線から特定し、次いでFWHM面積を決定する。ATREFピークを用いて測定した分布の場合、FWHM面積は、そのピーク高さを2で割り、次いで基底線に対して水平であり、ATREF曲線の左部および右部と交差する線を引くことにより、ATREFピークの左側および右側に決めた各点であるT1およびT2の間の曲線下面積と定義される。
【0054】
このATREF赤外法においてポリマーのコモノマー含量を測定するための赤外分光法の適用は、原理的には以下の参考文献に記載のようなGPC/FTIRシステムの適用に類似している。該参考文献は、Markovich, Ronald P.; Hazlitt, Lonnie G.; Smith, Linley; "Development of gel-permeation chromatography-Fourier transform infrared spectroscopy for characterization of ethylene-based polyolefin copolymers", Polymeric Material Science and Engineering (1991), 65, 98-100およびDeslauriers, P.J.; Rohlfing, D.C.; Shieh, E.T.; "Quantifying short chain branching microstructures in ethylene-1-olefin copolymers using size exclusion chromatography and Fourier transform infrared spectroscopy (SEC-FTIR)", Polymer (2002), 43, 59-170であり、双方の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0055】
他の実施形態では、本発明のエチレン/α−オレフィンインターポリマーは、0より大きく、約1.0までである平均ブロック指数ABI、および約1.3より大きい分子量分布Mw/Mnを特徴とする。平均ブロック指数ABIは、分取TREFにおいて5℃の増分を用いて20℃および110℃から得られるポリマー分画各々に対するブロック指数(「BI」)の重量平均である、即ち
ABI=Σ(wiBIi)
であり、式中BIiは、分取TREFで得られる、本発明のエチレン/α−オレフィンインターポリマーの第i分画に対するブロック指数であり、wiは、第i分画の重量パーセントである。
【0056】
各ポリマー分画について、BIは、以下の2等式の一方で定義され(両式とも同じBI値を与える):
【0057】
【数1】
式中、Txは、第i分画に対する分取ATREF溶出温度(好ましくはケルビン単位で表示)であり、Pxは、上記のようにNMRまたはIRで測定できる、第i分画のエチレンモル分率である。PABは、NMRまたはIRでやはり測定できる、エチレン/α−オレフィンインターポリマー全体(分別前)のエチレンモル分率である。TAおよびPAは、純粋な「ハードセグメント」(該インターポリマーの結晶セグメントを指す)のATREF溶出温度およびエチレンモル分率である。一次近似として、TA値およびPA値は、「ハードセグメント」に対する実際値が利用できない場合、高密度ポリエチレンホモポリマーのそうした値に設定される。本明細書で行う計算については、TAは372°K、PAは1である。
【0058】
TABは、同じ組成であり、PABのエチレンモル分率を有するランダムコポリマーのATREF温度である。TABは、次の等式から計算することができ:
LnPAB=α/TAB+β
式中、αおよびβは、既知のランダムエチレンコポリマー多数を用いた較正により決定できる2つの定数である。αおよびβは、計測器毎に変化し得ることに留意されたい。その上、対象とするポリマー組成物を用い、その各分画とも同様な分子量の範囲で独自の較正曲線を創出する必要があろう。若干の分子量効果が存在する。較正曲線が同様な分子量の範囲から得られれば、このような効果は本質的に無視できよう。幾つかの実施形態では、ランダムエチレンコポリマーは、以下の相関関係:
LnP=−237.83/TATREF+0.639
を満足する。
【0059】
TXOは、同じ組成であり、PXのエチレンモル分率を有するランダムコポリマーのATREF温度である。TXOは、LnPX=α/TXO+βから計算することができる。反対に、PXOは、同じ組成であり、TXのATREF温度を有するランダムコポリマーのエチレンモル分率であり、LnPXO=α/TX+βから計算することができる。
【0060】
各分取TREF分画のブロック指数(BI)が得られてしまえば、ポリマー全体の重量平均ブロック指数ABIを計算することができる。幾つかの実施形態では、ABIは、0より大きいが、約0.3より小さい、または約0.1〜約0.3である。他の実施形態では、ABIは、約0.3より大きく、約1.0までである。好ましくは、ABIは、約0.4〜約0.7、約0.5〜約0.7、または約0.6〜約0.9の範囲に入るべきである。幾つかの実施形態では、ABIは、約0.3〜約0.9、約0.3〜約0.8、または約0.3〜約0.7、約0.3〜約0.6、約0.3〜約0.5、または約0.3〜約0.4の範囲に入る。他の実施形態では、ABIは、約0.4〜約1.0、約0.5〜約1.0、または約0.6〜約1.0、約0.7〜約1.0、約0.8〜約1.0、または約0.9〜約1.0の範囲に入る。
【0061】
本発明のエチレン/α−オレフィンインターポリマーの別の特性は、本発明のエチレン/α−オレフィンインターポリマーが、分取TREFから得ることができ、約0.1より大きく、約1.0までのブロック指数、および約1.3より大きい分子量分布Mw/Mnを有する、少なくとも1つのポリマー分画を含むことである。幾つかの実施形態では、該ポリマー分画は、約0.6より大きく約1.0まで、約0.7より大きく約1.0まで、約0.8より大きく約1.0まで、または約0.9より大きく約1.0までのブロック指数を有する。他の実施形態では、該ポリマー分画は、約0.1より大きく約1.0まで、約0.2より大きく約1.0まで、約0.3より大きく約1.0まで、約0.4より大きく約1.0まで、または約0.4より大きく約1.0までのブロック指数を有する。更に他の実施形態では、該ポリマー分画は、約0.1より大きく約0.5まで、約0.2より大きく約0.5まで、約0.3より大きく約0.5まで、または約0.4より大きく約0.5までのブロック指数を有する。更に他の実施形態では、該ポリマー分画は、約0.2より大きく約0.9まで、約0.3より大きく約0.8まで、約0.4より大きく約0.7まで、または約0.5より大きく約0.6までのブロック指数を有する。
【0062】
エチレンおよびα−オレフィンのコポリマーの場合、本発明のポリマーは、好ましくは(1)少なくとも1.3、より好ましくは少なくとも1.5、少なくとも1.7、もしくは少なくとも2.0、最も好ましくは少なくとも2.6、最大値5.0まで、より好ましくは最大値3.5まで、殊のほか最大値2.7までのPDI、(2)80J/g以下の融解熱、(3)少なくとも50重量%のエチレン含量、(4)−25℃未満、より好ましくは−30℃未満のガラス転移温度、および/または(5)唯一のTmを有する。
【0063】
更に、本発明のポリマーは、単独で、または本明細書に開示する他の任意の性質と組み合わさって、log(G’)が、温度100℃で400kPa以上、好ましくは1.0MPa以上となるように、貯蔵弾性率G’を有することができる。その上、本発明のポリマーは、ブロックコポリマーに特徴的であり、オレフィンポリマー、特にエチレンおよび1種または複数のC3〜8脂環式α−オレフィンではこれまで知られてない相対的に平坦な貯蔵弾性率(図6に例示)を、0〜100℃の範囲の温度の関数として有する。(この文脈における用語「相対的に平坦な」とは、logG’(パスカル単位)が、50〜100℃の間、好ましくは0〜100℃の間で1桁未満だけ減少することを意味する)。
【0064】
本発明のインターポリマーは、少なくとも90℃における熱機械分析の侵入度が1mm、ならびに曲げ弾性率が3kpsi(20MPa)〜13kpsi(90MPa)であることを更に特徴とし得る。あるいは、本発明のインターポリマーは、少なくとも104℃における熱機械分析の侵入度として1mm、ならびに曲げ弾性率として少なくとも3kpsi(20MPa)を有することができる。該ポリマーは、90mm3未満の耐摩耗性(または体積損失)を有すると特徴付けし得る。図7は、他の既知ポリマーと比較した場合の本発明のポリマーに対する、TMA(1mm)対曲げ弾性率を示す。本発明のポリマーは、他のポリマーより有意に良好な柔軟性−耐熱性バランスを有している。
【0065】
それに加え、該エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、0.01〜2000g/10分、好ましくは0.01〜1000g/10分、より好ましくは0.01〜500g/10分、殊のほか0.01〜100g/10分のメルトインデックスI2を有することができる。ある種の実施形態では、該エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、0.01〜10g/10分、0.5〜50g/10分、1〜30g/10分、1〜6g/10分、または0.3〜10g/10分のメルトインデックスI2を有している。ある種の実施形態では、該エチレン/α−オレフィンポリマーのメルトインデックスは、1g/10分、3g/10分、または5g/10分である。
【0066】
該ポリマーは、1000g/モル〜5000000g/モル、好ましくは1000g/モル〜1000000g/モル、より好ましくは10000g/モル〜500000g/モル、殊のほか10000g/モル〜300000g/モルの分子量Mwを有することができる。本発明のポリマーの密度は、0.80〜0.99g/cm3、好ましくはエチレン含有ポリマーの場合、0.85g/cm3〜0.97g/cm3とすることができる。ある種の実施形態では、該エチレン/α−オレフィンポリマーの密度は、0.860〜0.925g/cm3、または0.867〜0.910g/cm3の範囲にある。
【0067】
該ポリマーを作製する方法は、以下の特許出願:2004年3月17日出願の米国仮出願第60/553906号、2005年3月17日出願の米国仮出願第60/662937号、2005年3月17日出願の米国仮出願第60/662939号、2005年3月17日出願の米国仮出願第60/662938号、2005年3月17日出願のPCT出願第PCT/US2005/008916号、2005年3月17日出願のPCT出願第PCT/US2005/008915号、および2005年3月17日出願のPCT出願第PCT/US2005/008917号に開示されており、こうした出願全ては、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。例えば、そのような一方法は、エチレンと、場合によりエチレン以外の1種または複数の付加重合性モノマーとを、付加重合条件下で触媒組成物と接触させるステップであって、該触媒組成物が、
(A)高いコモノマー取込み指数を有する第1のオレフィン重合触媒、
(B)触媒(A)のコモノマー取込み指数の90%未満、好ましくは50%未満、最も好ましくは5%未満のコモノマー取込み指数を有する第2のオレフィン重合触媒、および
(C)連鎖シャトリング剤
の組合せから生じる混合物または反応生成物
を含む、ステップを含む。
【0068】
代表的な触媒および連鎖シャトリング剤は、以下の通りである。
【0069】
触媒(A1)は、国際公開第03/40195号、2003米国特許第0204017号、2003年5月2日出願の米国出願第10/429024号、および国際公開第04/24740号の教示に従って調製される、[N−(2,6−ジ(1−メチルエチル)フェニル)アミド)(2−イソプロピルフェニル)(α−ナフタレン−2−ジイル(6−ピリジン−2−ジイル)メタン)]ハフニウムジメチルである。
【0070】
【化1】
【0071】
触媒(A2)は、国際公開第03/40195号、2003米国特許第0204017号、2003年5月2日出願の米国出願第10/429024号、および国際公開第04/24740号の教示に従って調製される、[N−(2,6−ジ(1−メチルエチル)フェニル)アミド)(2−メチルフェニル)(1,2−フェニレン−(6−ピリジン−2−ジイル)メタン)]ハフニウムジメチルである。
【0072】
【化2】
【0073】
触媒(A3)は、ビス[N,N’’’−(2,4,6−トリ(メチルフェニル)アミド)エチレンジアミン]ハフニウムジベンジルである。
【0074】
【化3】
【0075】
触媒(A4)は、米国出願第2004/0010103号の教示に実質的に従って調製される、ビス((2−オキソイル−3−(ジベンゾ−1H−ピロール−1−イル)−5−(メチル)フェニル)−2−フェノキシメチル)シクロヘキサン−1,2−ジイルジルコニウム(IV)ジベンジルである。
【0076】
【化4】
【0077】
触媒(B1)は、1,2−ビス−(3,5−ジ−t−ブチルフェニレン)(1−(N−(1−メチルエチル)イミノ)メチル)(2−オキソイル)ジルコニウムジベンジルである。
【0078】
【化5】
【0079】
触媒(B2)は、1,2−ビス−(3,5−ジ−t−ブチルフェニレン)(1−(N−(2−メチルシクロヘキシル)イミノ)メチル)(2−オキソイル)ジルコニウムジベンジルである。
【0080】
【化6】
【0081】
触媒(C1)は、米国特許第6268444号の技法に実質的に従って調製される、(t−ブチルアミド)ジメチル(3−N−ピロリル−1,2,3,3a,7a−η−インデン−1−イル)シランチタニウムジメチルである。
【0082】
【化7】
【0083】
触媒(C2)は、米国出願第2003/004286号の教示に実質的に従って調製される、(t−ブチルアミド)ジ(4−メチルフェニル)(2−メチル−1,2,3,3a,7a−η−インデン−1−イル)シランチタニウムジメチルである。
【0084】
【化8】
【0085】
触媒(C3)は、米国出願第2003/004286号の教示に実質的に従って調製される、(t−ブチルアミド)ジ(4−メチルフェニル)(2−メチル−1,2,3,3a,8a−η−s−インダセン−1−イル)シランチタニウムジメチルである。
【0086】
【化9】
【0087】
触媒(D1)は、Sigma-Aldrichから入手できる、二塩化ビス(ジメチルジシロキサン)(インデン−1−イル)ジルコニウムである。
【0088】
【化10】
【0089】
シャトリング剤:使用されるシャトリング剤には、ジエチル亜鉛、ジ(i−ブチル)亜鉛、ジ(n−ヘキシル)亜鉛、トリエチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリエチルガリウム、i−ブチルアルミニウムビス(ジメチル(t−ブチル)シロキサン)、i−ブチルアルミニウムビス(ジ(トリメチルシリル)アミド)、n−オクチルアルミニウムジ(ピリジン−2−メトキシド)、ビス(n−オクタデシル)i−ブチルアルミニウム、i−ブチルアルミニウムビス(ジ(n−ペンチル)アミド)、n−オクチルアルミニウムビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシド、n−オクチルアルミニウムジ(エチル(1−ナフチル)アミド)、エチルアルミニウムビス(t−ブチルジメチルシロキシド)、エチルアルミニウムジ(ビス(トリメチルシリル)アミド)、エチルアルミニウムビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミド)、n−オクチルアルミニウムビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミド)、n−オクチルアルミニウムビス(ジメチル(t−ブチル)シロキシド、エチル亜鉛(2,6−ジフェニルフェノキシド)およびエチル亜鉛(t−ブトキシド)が挙げられる。
【0090】
好ましくは、前記の方法は、相互変換ができない複数触媒を用いて、2種以上のモノマー、より殊のほかエチレンおよびC3〜20オレフィンまたはシクロオレフィン、最も殊のほかエチレンおよびC4〜20α−オレフィンのブロックコポリマー、殊のほかマルチブロックコポリマー、好ましくは線状マルチブロックコポリマーを形成するための連続溶液法の形態を取る。即ち、該触媒同士は化学的に異なる。連続溶液重合の条件下、この方法は、高いモノマー転換率でのモノマー混合物の重合に理想的に適している。こうした重合条件下、連鎖シャトリング剤から触媒への往復は、連鎖成長と比べ有利になり、マルチブロックコポリマー、殊のほか線状マルチブロックコポリマーが、高い効率で形成される。
【0091】
本発明のインターポリマーは、従来のランダムコポリマー、物理的なポリマーブレンド、および逐次モノマー付加、流動触媒、アニオン性またはカチオン性リビング重合の各技法を介して調製したブロックコポリマーから差別化し得る。特に、結晶性または弾性率が同等な、同じモノマーおよびモノマー含量のランダムコポリマーと比較して、本発明のインターポリマーは、融点により測定した場合の良好な(高い)耐熱性、高いTMA侵入温度、高い高温引張り強度、および/または動的機械分析で決定した場合の高い高温捻れ貯蔵弾性率を有する。同じモノマーおよびモノマー含量を含有するランダムコポリマーと比較して、本発明のインターポリマーは、特に高温での低い永久圧縮歪み、低い応力緩和、高いクリープ抵抗、高い引裂き強度、高いブロッキング耐性、高い結晶化(固化)温度による迅速なセットアップ、高い回復性(特に高温で)、良好な耐摩耗性、高い収縮力、ならびにオイルおよび充填剤の良好な受容性を有する。
【0092】
本発明のインターポリマーは、独特な結晶化・分岐分布相関性も示す。即ち、本発明のインターポリマーは、同じモノマーおよびモノマー量を含有するランダムコポリマー、または全体密度が同等である、高密度ポリマーとより低密度のポリマーとのブレンドなどの物理的ポリマーブレンドと殊のほか比較した場合、融解熱の関数としてCRYSTAFおよびDSCを用いて測定した最高ピーク温度間に、相対的に大きな差を有する。本発明のインターポリマーのこの独特な特徴は、ポリマー骨格内のブロックにおけるコモノマーの独特な分布によると考えられる。特に、本発明のインターポリマーは、コモノマー含量の異なる交互ブロック(ホモポリマーブロックを含めて)を含み得る。本発明のインターポリマーは、密度またはコモノマー含量の異なるポリマーブロックの個数および/またはブロックサイズにおける分布も含み得るが、それはシュルツ−フローリー型分布である。それに加え、本発明のインターポリマーは、ポリマーの密度、弾性率およびモルフォロジーに実質的に依存しない、独特なピーク融点・結晶化温度プロファイルも有する。好ましい実施形態では、該ポリマーの微結晶規則性は、1.7未満、または1.5未満で1.3未満までさえのPDI値でも、ランダムまたはブロックコポリマーと識別できる特徴的な球状晶およびラメラを示す。
【0093】
その上、本発明のインターポリマーは、ブロック性の程度またはレベルに影響する技法を用いて調製し得る。即ち、ポリマーのブロックまたはセグメント各々のコモノマー量および長さは、触媒およびシャトリング剤の比率および種類、ならびに重合温度および他の重合変数を制御することにより、変化させることができる。この現象の驚くべき有益性は、ブロック性の程度が増加するにつれ、生成ポリマーの光学特性、引裂き強度および高温回復特性が改善するという発見である。特に、ポリマー中の平均ブロック数が増加するにつれ、ヘイズが減少する一方、透明度、引裂き強度および高温回復特性が増加する。所望の連鎖移動能(低レベルの連鎖停止を伴う高率のシャトリング)を有する、シャトリング剤および触媒の組合せを選択することにより、他種のポリマー停止が効果的に抑制される。したがって、本発明の実施形態によるエチレン/α−オレフィンコモノマー混合物の重合において、何らかのβヒドリド脱離が認められるにしても殆ど起こらず、生成する結晶性ブロックは、高度に、または実質的に完全に線状であり、殆どまたは全く長鎖分岐を有していない。
【0094】
高結晶性の連鎖末端を有するポリマーは、本発明の実施形態に従って選択的に調製することができる。エラストマー用途では、非晶性ブロックを末端とするポリマーの相対量の低下は、結晶領域に対する分子間希釈効果を低下させる。この結果は、水素または他の連鎖停止剤に対して適当な応答を示す、連鎖シャトリング剤および触媒を選択することにより得ることができる。具体的には、高結晶性のポリマーを生成する触媒が、より低結晶性のポリマーセグメントの生成(コモノマーのより高い取込み、位置エラーまたはアタクチックポリマー形成などにより)を担う触媒より、連鎖停止を受け易い(水素の使用などにより)ならば、高結晶性ポリマーセグメントがポリマー末端部を選択的に占めることになろう。生成した末端基が結晶性であるだけでなく、停止した際、高結晶性ポリマー形成の触媒部位が、ポリマー形成の再開にもう一度利用できる。そのため、初回形成ポリマーは、別の高結晶性ポリマーセグメントである。したがって、生成するマルチブロックコポリマーの両末端は、選択的に高結晶性である。
【0095】
本発明の実施形態で使用されるエチレン・α−オレフィンインターポリマーは、好ましくは、エチレンと少なくとも1種のC3〜C20α−オレフィンとのインターポリマーである。エチレンとC3〜C20α−オレフィンとのコポリマーが、殊のほか好ましい。該インターポリマーは、C4〜C18ジオレフィンおよび/またはアルケニルベンゼンを更に含んでもよい。エチレンとの重合に有用な適切な不飽和コモノマーには、例えば、エチレン性不飽和モノマー、共役または非共役ジエン、ポリエン、アルケニルベンゼンなどが挙げられる。このようなコモノマーの例には、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのC3〜C20α−オレフィンが含まれる。1−ブテンおよび1−オクテンが、殊のほか好ましい。他の適切なモノマーには、スチレン、ハロ置換またはアルキル置換スチレン、ビニルベンゾシクロブタン、1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンおよびナフテン類(例えば、シクロペンテン、シクロヘキセンおよびシクロオクテン)が含まれる。
【0096】
エチレン/α−オレフィンインターポリマーは好ましいポリマーではあるが、他のエチレン/オレフィンポリマーも使用し得る。本明細書で使用する場合のオレフィンとは、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する一群の不飽和炭化水素系化合物を指す。触媒の選択に応じて、本発明の実施形態では任意のオレフィンを使用し得る。好ましくは、適切なオレフィンは、ビニル不飽和基を含有するC3〜C20脂肪族および芳香族化合物、ならびにシクロブテン、シクロペンテン、ジシクロペンタジエン、およびそれだけに限らないが、C1〜C20ヒドロカルビルまたはシクロヒドロカルビル基で5位および6位で置換されているノルボルネンを含めたノルボルネンなどの環式化合物である。このようなオレフィンの混合物、ならびにこのようなオレフィンのC4〜C40ジオレフィン化合物との混合物も含まれる。
【0097】
オレフィンモノマーの例には、それだけに限らないが、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、および1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4,6−ジメチル−1−ヘプテン、4−ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン、ノルボルナジエン、エチリデンノルボルネン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、シクロオクテン、それだけに限らないが1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエンを含めたC4〜C40ジエン、他のC4〜C40α−オレフィンなどが含まれる。ある種の実施形態では、α−オレフィンは、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンまたはそれらの混合物である。ビニル基を含有する任意の炭化水素を本発明の実施形態において使用し得るが、モノマーの分子量が高くなりすぎると、モノマー入手性、コスト、および生成ポリマーからの未反応モノマーの便利な除去性が、より大きな問題となり得る。
【0098】
本明細書に記載の重合法は、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレンなどを含めたモノビニリデン芳香族モノマーを含有するオレフィンポリマーの製造に、良く適合している。特に、エチレンおよびスチレンを含むインターポリマーは、本明細書における教示に従うことにより調製することができる。場合により、エチレン、スチレンおよびC3〜C20α−オレフィンを含み、C4〜C20ジエンを含んでもよく、改善された性質を有するコポリマーを調製することができる。
【0099】
適切な非共役ジエンモノマーには、6〜15個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖または環状炭化水素ジエンがなり得る。適切な非共役ジエンの例には、それだけに限らないが、1,4−ヘキサジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエンなどの直鎖非環状ジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、3,7−ジメチル−1,7−オクタジエン、ならびにジヒドロミリセンおよびジヒドロオシネンの混合異性体などの分岐鎖非環状ジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,4−シクロヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエン、1,5−シクロドデカジエンなどの単環脂環式ジエン、およびテトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン、ビシクロ−(2,2,1)−ヘプタ−2,5−ジエンなどの多環脂環式縮合環および架橋環のジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB)、5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−(4−シクロペンテニル)−2−ノルボルネン、5−シクロヘキシリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネンおよびノルボルナジエンなどのアルケニル、アルキリデン、シクロアルケニルおよびシクロアルキリデンノルボルネンが挙げられる。EPDMの調製に通常使用されるジエンのうち、特に好ましいジエンは、1,4−ヘキサジエン(HD)、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、5−ビニリデン−2−ノルボルネン(VNB)、5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB)、およびジシクロペンタジエン(DCPD)である。殊のほか好ましいジエンは、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)および1,4−ヘキサジエン(HD)である。
【0100】
本発明の実施形態に従って作製できる所望のポリマーの1部類は、エチレン、C3〜C20α−オレフィン、殊のほかプロピレン、および場合により1種または複数のジエンモノマーのエラストマーインターポリマーである。本発明のこの実施形態で使用するための好ましいα−オレフィンは、式CH2=CHR*で指定され、式中R*は、1〜12炭素原子の直鎖または分岐アルキル基である。適切なα−オレフィンの例には、それだけに限らないが、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンおよび1−オクテンが挙げられる。特に好ましいα−オレフィンはプロピレンである。プロピレン系ポリマーは、当技術分野では、一般にEPまたはEPDMポリマーと呼称される。このようなポリマー、殊のほかマルチブロックEPDM型ポリマーの調製に使用するための適切なジエンには、4〜20炭素を含む共役または非共役、直鎖または分岐鎖、環状または多環状のジエンが挙げられる。好ましいジエンには、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエンおよび5−ブチリデン−2−ノルボルネンが挙げられる。特に好ましいジエンは5−エチリデン−2−ノルボルネンである。
【0101】
ジエン含有ポリマーは、ジエン(皆無を含める)およびα−オレフィン(皆無を含める)をより多量またはより少量含有する交互性のセグメントまたはブロックを含むので、その後のポリマー特性を失わずにジエンおよびα−オレフィンの合計量を減少させ得る。即ち、ジエンおよびα−オレフィンモノマーは、ポリマー全体に均一またはランダムに取り込まれるのではなく、ポリマーブロックの1種に選択的に取り込まれるので、そうしたモノマーはより効率的に利用され、その後でポリマーの架橋密度をより良好に制御することができる。このような架橋性エラストマーおよびその硬化生成物は、引張り強度の増加および弾性回復の向上を含む有利な特性を有する。
【0102】
幾つかの実施形態では、異なる量のコモノマーを取り込む2種の触媒で作製される本発明のインターポリマーは、それにより形成されるブロックの重量比として95:5〜5:95を有する。該エラストマーポリマーは、ポリマーの全重量に対して、20〜90%のエチレン含量、0.1〜10%のジエン含量、および10〜80%のα−オレフィン含量を有するのが望ましい。更に好ましくは、該マルチブロックエラストマーポリマーは、ポリマーの全重量に対して、60〜90%のエチレン含量、0.1〜10%のジエン含量、および10〜40%のα−オレフィン含量を有する。好ましいポリマーは、10000〜約2500000、好ましくは20000〜500000、より好ましくは20000〜350000の重量平均分子量(Mw)、および3.5未満、より好ましくは3.0未満の多分散度、および1〜250のムーニー粘度(ML(1−4)125℃)を有する高分子量ポリマーである。より好ましくは、このようなポリマーは、65〜75%のエチレン含量、0〜6%のジエン含量、および20〜35%のα−オレフィン含量を有する。
【0103】
該エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、ポリマー構造中に少なくとも1種の官能基を取り込むことにより、官能化することができる。例示的な官能基には、例えば、エチレン不飽和性の単官能および二官能カルボン酸、エチレン不飽和性の単官能および二官能カルボン酸無水物、それらの塩およびそれらのエステルを挙げ得る。このような官能基は、エチレン/α−オレフィンインターポリマーにグラフトしてもよく、またはそれをエチレンおよび場合により追加されるコモノマーと共重合することにより、エチレン、官能性コモノマー、および場合により他のコモノマー(複数も)からなるインターポリマーを形成してもよい。ポリエチレン上に官能基をグラフトする手段は、例えば、米国特許第4762890号、第4927888号および第4950541号に記載されており、こうした特許の開示内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。特に有用な1つの官能基はリンゴ酸無水物である。
【0104】
官能性インターポリマー中に存在する官能基の量は、変化することができる。該官能基は、コポリマー型官能化インターポリマー中に、通常、少なくとも約1.0重量%、好ましくは少なくとも約5重量%、より好ましくは少なくとも約7重量%の量で存在することができる。該官能基は、コポリマー型官能化インターポリマー中に、通常、約40重量%未満、好ましくは約30重量%未満、より好ましくは約25重量%未満の量で存在することになろう。
【0105】
試験方法
以下の実施例では、以下の分析技法が使用されている。
【0106】
試料1〜4およびA〜Cに対するGPC法
160℃に設定した加熱針を備えた自動液操作ロボットを用いて、300ppmイオノールで安定化した十分な1,2,4−トリクロロベンゼンを各乾燥ポリマー試料に添加し、30mg/mLの最終濃度を得る。小さなガラス撹拌棒を各チューブ中に入れ、試料を250rpmで回転する加熱オービタルシェーカー上で160℃、2時間加熱する。次いで、その濃厚ポリマー溶液を、自動液操作ロボットおよび160℃に設定した加熱針を用いて1mg/mlに希釈する。
【0107】
Symyx Rapid GPCシステムを用いて、各試料に対する分子量データを決定する。流量2.0ml/分に設定したGilson 350ポンプを用いて、移動相としての300ppmイオノールで安定化したヘリウムパージ済み1,2−ジクロロベンゼンを、直列配置し、160℃に加熱した、Plgel 10マイクロメーター(μm)Mixed Bの300mm×7.5mmカラム3本中で圧送する。Polymer Labs ELS 1000検出器を、250℃に設定したエバポレーター、165℃に設定したネブライザー、および60〜80psi(400〜600kPa)N2の圧力で1.8SLMに設定した窒素流量と共に使用する。ポリマー試料を160℃に加熱し、各試料を、液操作ロボットおよび加熱針を用いて250μlループ中に注入する。2本の切換えループおよび重複注入を用いたポリマー試料の連続分析を使用する。試料データを収集し、Symyx Epoch(商標)ソフトウェアを用いて分析する。ピークを手操作で積分し、分子量情報は、ポリスチレン標準較正曲線に対して補正せずに報告している。
【0108】
標準的CRYSTAF法
分岐分布は、PolymerChar, Valencia, Spainから市販されているCRYSTAF 200ユニットを用いた結晶化分析分別(CRYSTAF)により決定される。試料を160℃で1時間、1,2,4−トリクロロベンゼン中に溶解し(0.66mg/mL)、95℃で45分間安定化させる。サンプリング温度は、冷却速度0.2℃/分で95〜30℃の範囲である。赤外検出器を用いて、ポリマー溶液の濃度を測定する。累積溶解濃度は、温度を下げながらポリマーが結晶化するときに測定する。累積プロファイルの解析微分が、ポリマーの短鎖分岐分布を反映する。
【0109】
CRYSTAFピークの温度および面積は、CRYSTAFソフトウェア(バージョン2001.b, PolymerChar, Valencia, Spain)中に含まれるピーク分析モジュールにより特定される。CRYSTAFピーク発見ルーチンは、dW/dT曲線中の最大値としてピーク温度を特定し、その微分曲線中の特定ピークの両側にある正の最大変曲点間に、その面積を特定する。CRYSTAF曲線を計算するために、好ましい処理パラメーターは、温度限界が70℃、スムージングパラメーターが、温度限界を超えると0.1、温度限界未満では0.3である。
【0110】
標準的DSC法(試料1〜4およびA〜Cは除外)
示差走査熱量測定の結果は、RCS付属冷却装置およびオートサンプラーを備えたTAIモデルQ1000 DSCを用いて決定する。窒素パージガスは、流量50ml/分を使用する。試料は、プレスして薄膜にし、プレス中で約175℃で溶融した後、室温(25℃)に空冷する。次いで、材料3〜10mgを直径6mmの円板に切り出し、正確に秤量し、軽いアルミニウムパン(約50mg)中に入れた後、クリンプして閉じる。試料の熱挙動を以下の温度プロファイルを用いて調べる。試料を180℃まで急速に加熱し、3分間等温に保つことにより、以前の熱履歴を全て除く。次いで、試料を10℃/分の冷却速度で−40℃まで冷却し、3分間、−40℃に保つ。次いで、試料を10℃/分の加熱速度で150℃まで加熱する。冷却曲線および第2の加熱曲線を記録する。
【0111】
−30℃と溶融終点との間に引いた直線ベースラインに対して、DSC溶融ピークを熱流量(W/g)の最大値として測定する。融解熱は、直線ベースラインを用いて−30℃と溶融終点との間の溶融曲線下面積として測定される。
【0112】
GPC法(試料1〜4およびA〜Cは除外)
ゲル透過クロマトグラフィー装置は、Polymer Laboratories Model PL-210またはPolymer Laboratories Model PL-220の計測器からなる。カラム区画および回転台区画は、140℃で操作する。Polymer Laboratories10ミクロンMixed-Bカラム3本を使用する。溶媒は1,2,4−トリクロロベンゼンである。試料は、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)200ppmを含有する溶媒50ml中のポリマー0.1gの濃度に調製する。試料は、160℃で2時間、軽く撹拌することにより調製する。使用する注入体積は100μlであり、流量は1.0ml/分である。
【0113】
GPCカラムセットの較正は、分子量範囲が580〜8400000であり、6種の「カクテル」混合物中に配備され、個々の分子量間の隔たりが少なくとも10である、21種の狭域分子量分布ポリスチレン標準を用いて行う。該標準は、Polymer Laboratories (Shropshire, UK)から購入される。ポリスチレン標準は、1000000以上の分子量に対して溶媒50ml中に0.025g、および1000000未満の分子量に対して溶媒50ml中に0.05gに調製する。ポリスチレン標準は、80℃で30分間、静かに撹拌しながら溶解される。狭域標準混合物は、最高分子量成分から最初に、減少していく順に移動させて、分解を最小限に抑える。ポリスチレン標準ピーク分子量は、次式(Williams and Ward, J. Polym. Sci., Polym. Let., 6, 621 (1968)に記載のような):M(ポリエチレン)=0.431(M(ポリスチレン))を用いてポリエチレン分子量に変換される。
【0114】
ポリエチレン換算分子量の計算は、Viscotek TriSECソフトウェアバージョン3.0を用いて行う。
【0115】
永久歪み
永久歪みは、ASTM D395に従って測定する。試料は、厚さ3.2mm、2.0mmおよび0.25mmで直径25.4mmの円板を、合計厚さが12.7mmに達するまで重ねることにより調製される。円板は、ホットプレスで成形した12.7cm×12.7cmの圧縮成形プラークから以下の条件下で切り出す:0圧力を190℃、3分の後、86MPaを190℃、2分、その後86MPaの冷却流水によるプレス内部の冷却。
【0116】
密度
密度測定用の試料は、ASTM D1928に従って調製される。測定は、ASTM D792、方法Bを用いて、試料の圧縮から1時間以内に行う。
【0117】
曲げ/割線弾性率/貯蔵弾性率
試料は、ASTM D1928を用いて圧縮成形される。曲げ弾性率および2%割線弾性率は、ASTM D−790に従って測定する。貯蔵弾性率は、ASTM D5026−01または同等技法に従って測定する。
【0118】
光学特性
厚さ0.4mmのフィルムを、ホットプレス(Carver Model #4095-4PR1001R)を用いて圧縮成形する。ペレットをポリテトラフルオロエチレンのシート間に配置し、55psi(380kPa)で190℃、3分間後、1.3MPaで3分間、その後2.6MPaで3分間加熱する。フィルムを、冷却流水と共にプレス中で1.3MPaで1分間、冷却する。圧縮成形フィルムは、光学測定、引張り挙動、回復性および応力緩和に対して使用する。
【0119】
透明度は、ASTM D1746に規定されるように、BYK Gardnerヘイズガードを用いて測定する。
【0120】
45°光沢は、ASTM D−2457に規定されるように、BYK Gardner Glossmeter Microgloss 45°を用いて測定する。
【0121】
内部ヘイズは、ASTM D1003手順Aに基づいてBYK Gardnerヘイズガードを用いて測定する。表面の傷を除くために、フィルム表面に鉱油を塗布する。
【0122】
機械特性−引張り、ヒステリシスおよび引裂き
一軸引張りにおける応力−歪み挙動は、ASTM D1708の微小引張り検体を用いて測定する。Instronを用いて、試料を21℃で500%/分で延伸する。引張り強度および破断伸びは、5検体の平均値から報告される。
【0123】
100%および300%ヒステリシスは、Instron(商標)計測器と共にASTM D1708の微小引張り検体を用いて、100%および300%歪みへのサイクル荷重から決定される。試料には、21℃で3サイクル、267%/分で荷重を掛け、その後除く。300%および80℃でのサイクル実験は、環境チャンバーを用いて行う。80℃実験では、試験前に、試料を試験温度で45分間平衡化させておく。21℃、300%歪みのサイクル実験では、1回目の荷重除去サイクルからの150%歪みにおける収縮応力を記録する。全ての実験に対する回復率(%)は、1回目の荷重除去サイクルから、荷重が基準値に戻ったときの歪みを用いて計算する。回復率(%)は、
【0124】
【数2】
と定義され、式中εfは、サイクル荷重に応じた歪みであり、εsは、荷重が1回目の荷重除去サイクル中に基準値に戻ったときの歪みである。
【0125】
応力緩和は、環境チャンバーを備えたInstron(商標)計測器を用いて、50%歪みおよび37℃で12時間、測定される。標準寸法の形状は、76mm×25mm×0.4mmであった。環境チャンバー中で37℃、45分間平衡化させた後、試料を333%/分で50%歪みまで延伸した。応力を時間の関数として12時間記録した。12時間後の応力緩和率(%)は、次式を用いて計算した。
【0126】
【数3】
式中、L0は、0時での50%歪みにおける荷重であり、L12は、12時間後の50%歪みにおける荷重である。
【0127】
引張りノッチ付き引裂き実験は、Instron(商標)計測器を用いて、密度0.88g/cc以下の試料に関して実施する。形状は、検体長さの半分位で試料中に2mmノッチを切り込んだ、76mm×13mm×0.4mmの標準寸法片からなる。試料を21℃、508mm/分で破断するまで延伸する。引裂きエネルギーは、最大荷重時の歪みまでの応力−伸び曲線下面積として計算される。少なくとも3検体の平均値を報告する。
【0128】
TMA
熱機械分析(侵入温度)は、180℃、成形圧10MPaで5分間成形した後、空気急冷した、直径30mm×厚さ3.3mmの圧縮成形円板に関して行う。使用した計測器は、Perkin-Elmerから入手できるTMA 7商標品である。試験では、半径1.5mmの先端を有するプローブ(P/N N519-0416)を、1Nの力で試料円板の表面に押し付ける。温度を25℃から5℃/分で上げる。プローブ侵入距離を温度の関数として測定する。プローブが試料中に1mm侵入したとき、実験を終了する。
【0129】
DMA
動的機械分析(DMA)は、180℃、圧力10MPaで5分間ホットプレス中で成形した後、プレス中90℃/分で水冷した圧縮成形円板に関して測定する。試験は、捻り試験用の二重カンチレバー固定具を備えたARES制御歪みレオメーター(TA instruments)を用いて行う。
【0130】
1.5mmのプラークをプレスし、寸法32×12mmのバーに切断する。その試料を10mm(グリップ間隔ΔL)隔たった固定具間の両端でクランプ締めし、−100℃〜200℃の連続的温度ステップ(5℃/ステップ)に曝す。各温度で捻れ弾性率G’を角周波数10rad/sで測定するが、トルクが十分であり、測定が線形領域に留まることを保証するために、歪み振幅を0.1%〜4%の間に維持する。
【0131】
熱膨張が起こったときの試料のたるみを防止するために、10gの初期静的力を維持する(自動引張りモード)。その結果、グリップ間隔ΔLは、温度と共に、特にポリマー試料の融点または軟化点を超えると増加する。試験は、最大温度時、または固定具間のギャップが65mmに達したときに停止する。
【0132】
メルトインデックス
メルトインデックスまたはI2は、ASTM D1238、190℃/2.16kgの条件に従って測定する。メルトインデックスまたはI10は、ASTM D1238、190℃/10kgの条件にも従って測定する。
【0133】
ATREF
分析昇温溶出分別(ATREF)法分析は、米国特許第4798081号およびWilde, L.; Ryle, T.R.; Knobeloch, D.C.; Peat, I.R.; Determination of Branching Distributions in Polyethylene and Ethylene Copolymers, J. Polym. Sci., 20, 441-455 (1982)に記載の方法に従って行われるが、それらの全体は参照により本明細書に組み込まれる。分析対象の組成物をトリクロロベンゼン中に溶解し、不活性支持体(ステンレス鋼ショット)を含有するカラム中で、0.1℃/分の冷却速度で20℃まで温度を緩やかに下げることにより、結晶化させる。カラムは赤外検出器を備えている。次いで、1.5℃/分の速度で20℃から120℃まで溶出溶媒(トリクロロベンゼン)の温度を緩やかに上げることによって、カラムから結晶化ポリマー試料を溶出することにより、ATREFクロマトグラム曲線を生成する。
【0134】
13C NMR分析
10mmのNMRチューブ中で、試料0.4gにテトラクロロエタン−d2/オルトジクロロベンゼンの50/50混合物約3gを添加することにより、試料を調製する。チューブおよびその内容物を150℃に加熱することにより、試料を溶解し、均一化する。データは、13C共鳴周波数100.5MHzに相当するJEOL Eclipse(商標)400MHz分光計またはVarian Unity Plus(商標)400MHz分光計を用いて収集する。データは、パルス繰返し遅れ6秒で、1データファイル当たり積算4000回を用いて収集する。定量分析に対して最小限のシグナル対ノイズ比を実現するために、複数のデータファイルを合算する。スペクトル幅は、32Kデータポイントの最小ファイルサイズで25000Hzである。試料は、10mmの広幅プローブ中130℃で分析する。コモノマーの取込み量は、その全体が参照により本明細書に組み込まれるRandallのトライアッド法(Randall, J.C.; JMS-Rev. Macromol. Chem. Phys., C29, 201-317 (1989))を用いて決定される。
【0135】
TREFによるポリマー分別
大規模なTREF分別は、1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)2リットル中ポリマー15〜20gを160℃で4時間撹拌することで溶解することにより、実施する。ポリマー溶液は、30〜40メッシュ(600〜425μm)の球形の工業品質ガラスビーズ(Potters Industries, HC 30 Box 20, Brownwood, TX, 76801から入手可能)と、直径0.028インチ(0.7mm)のステンレス鋼カットワイヤーショット(Pellets, Inc. 63 Industrial Drive, North Tonawanda, NY, 14120から入手可能)との60:40(v:v)混合物を充填した、3インチ×4フィート(7.6cm×12cm)の鋼鉄カラム上に15psig(100kPa)の窒素で圧送する。そのカラムを、160℃に初期設定した温度制御オイルジャケット中に浸漬する。カラムを先ず125℃に急冷し、次いで1分当たり0.04℃で20℃まで徐冷し、1時間保持する。1分当たり0.167℃で温度を上げながら、新たなTCBを約65ml/分で導入する。
【0136】
分取TREFカラムからの溶出液、各々約2000ml分を、16ステーションの加熱フラクションコレクターに収集する。各分画中のポリマーを、ポリマー溶液が約50〜100ml残存するまで、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮する。濃縮溶液を終夜放置した後、過剰のメタノールを添加し、ろ過し、濯ぎ洗いをする(最後の濯ぎ洗いを含め、メタノール約300〜500ml)。ろ過ステップは、5.0μmポリテトラフルオロエチレン被覆ろ紙(Osmonics Inc.から入手可能なCat# Z50WP04750)を用いて、真空補助3位置ろ過ステーション上で行う。ろ過した分画は、真空オーブン中60℃で終夜乾燥し、化学天秤で秤量した後、更に試験をする。
【0137】
溶融強度
溶融強度(MS)は、入口角約45度で、直径2.1mmの20:1ダイを取り付けたキャピラリーレオメーターを使用して測定する。試料を190℃、10分間平衡化した後、速度1インチ/分(2.54cm/分)でピストンを移動させる。標準試験温度は190℃である。ダイの下方100mmに配置した1組の加速ニップへ加速度2.4mm/sec2で、試料を一軸延伸する。所要の張力をニップロールの巻取り速度の関数として記録する。試験中に到達した最大張力を溶融強度と定義する。引取共振を示すポリマーメルトの場合には、引取共振開始前の張力を溶融強度とした。溶融強度はセンチニュートン(「cN」)単位で記録する。
【0138】
触媒
用語「終夜」は、使用する場合、約16〜18時間の期間を指し、用語「室温」とは20〜25℃の温度を指し、用語「混合アルカン」とは、ExxonMobil Chemical Companyから商品名Isopar E(登録商標)の名で入手できるC6〜9脂肪族炭化水素の市販混合物を指す。本明細書におけるある化合物の名称がその構造表示に一致しない場合、構造表示に従うものとする。全ての金属錯体の合成および全てのスクリーニング実験の準備は、ドライボックス技法を用いて乾燥窒素雰囲気中で実施した。使用した全ての溶媒は、HPLC等級であり、使用前に乾燥した。
【0139】
MMAOとは、Akzo-Noble Corporationから市販されているトリイソブチルアルミニウム修飾メチルアルモキサンである、修飾メチルアルモキサンを指す。
【0140】
触媒(B1)の調製は以下のように行う。
a)(1−メチルエチル)(2−ヒドロキシ−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)メチルイミンの調製
3,5−ジ−t−ブチルサリチルアルデヒド(3.00g)をイソプロピルアミン10mLへ添加する。溶液は急速に鮮黄色になる。常温で3時間撹拌した後、揮発性物質を真空下で除去すると、鮮黄色結晶性固体(97%収率)を産生する。
b)1,2−ビス−(3,5−ジ−t−ブチルフェニレン)(1−(N−(1−メチルエチル)イミノ)メチル)(2−オキソイル)ジルコニウムジベンジルの調製
トルエン5mL中の(1−メチルエチル)(2−ヒドロキシ−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)イミン(605mg、2.2mmol)の溶液を、トルエン50mL中のZr(CH2Ph)4(500mg、1.1mmol)の溶液に徐々に添加する。生成した暗黄色溶液を30分間撹拌する。溶媒を減圧下で除去すると、所望の生成物を赤褐色固体として産生する。
【0141】
触媒(B2)の調製は以下のように行う。
a)(1−(2−メチルシクロヘキシル)エチル)(2−オキソイル−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)イミンの調製
2−メチルシクロヘキシルアミン(8.44mL、64.0mmol)をメタノール(90mL)中に溶解し、ジ−t−ブチルサリカルデヒド(10.00g、42.67mmol)を添加する。反応混合物を3時間撹拌し、次いで−25℃へ12時間冷却する。生成した黄色固体沈殿をろ過で集め、冷メタノール(2×15mL)で洗浄した後、減圧下で乾燥する。収率は、黄色固体11.17gである。1H NMRは、異性体混合物としての所望の生成物に一致する。
b)ビス−(1−(2−メチルシクロヘキシル)エチル)(2−オキソイル−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)イミノ)ジルコニウムジベンジルの調製
トルエン200mL中の(1−(2−メチルシクロヘキシル)エチル)(2−オキソイル−3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)イミン(7.63g、23.2mmol)の溶液を、トルエン600mL中のZr(CH2Ph)4(5.28g、11.6mmol)の溶液に徐々に添加する。生成した暗黄色溶液を25℃で1時間撹拌する。その溶液をトルエン680mLで更に希釈すると、濃度0.00783Mの溶液が得られる。
【0142】
共触媒1 米国特許第59199883号の実施例2に実質的に開示されているように、長鎖トリアルキルアミン(Akzo-Nobel, Inc. から入手できるArmeen(商標)M2HT)HClおよびLi[B(C6F5)4]の反応により調製される、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのメチルジ(C14〜18アルキル)アンモニウム塩の混合物(以後、アルメーニウムボレート)。
【0143】
共触媒2 米国特許第6395671号の実施例16に従って調製される、ビス(トリス(ペンタフルオロフェニル)−アルマン)−2−ウンデシルイミダゾリドの混合C14〜18アルキルジメチルアンモニウム塩。
【0144】
シャトリング剤 使用するシャトリング剤には、ジエチル亜鉛(DEZ、SA1)、ジ(i−ブチル)亜鉛(SA2)、ジ(n−ヘキシル)亜鉛(SA3)、トリエチルアルミナム(TEA、SA4)、トリオクチルアルミナム(SA5)、トリエチルガリウム(SA6)、i−ブチルアルミナムビス(ジメチル(t−ブチル)シロキサン)(SA7)、i−ブチルアルミナムビス(ジ(トリメチルシリル)アミド)(SA8)、n−オクチルアルミナムジ(ピリジン−2−メトキシド)(SA9)、ビス(n−オクタデシル)i−ブチルアルミナム(SA10)、i−ブチルアルミナムビス(ジ(n−ペンチル)アミド)(SA11)、n−オクチルアルミナムビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシド)(SA12)、n−オクチルアルミナムジ(エチル(1−ナフチル)アミド)(SA13)、エチルアルミナムビス(t−ブチルジメチルシロキシド)(SA14)、エチルアルミナムジ(ビス(トリメチルシリル)アミド)(SA15)、エチルアルミナムビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミド)(SA16)、n−オクチルアルミナムビス(2,3,6,7−ジベンゾ−1−アザシクロヘプタンアミド)(SA17)、n−オクチルアルミナムビス(ジメチル(t−ブチル)シロキシド(SA18)、エチル亜鉛(2,6−ジフェニルフェノキシド)(SA19)およびエチル亜鉛(t−ブトキシド)(SA20)が挙げられる。
【0145】
実施例1〜4、比較例A〜C
ハイスループット並行重合の一般条件
重合は、Symyx Technologies, Inc.から入手できるハイスループット並行重合反応器(PPR)を用いて行い、米国特許第6248540号、第6030917号、第6362309号、第6306658号および第6316663号に実質的に従って操作する。エチレン共重合は、130℃および200psi(1.4MPa)でエチレンと共に行い、必要に応じて、使用する全触媒に対して共触媒1を1.2当量(MMAOが存在するときは1.1当量)使用する。一連の重合は、予備秤量ガラス管を取り付けた6×8列の個々の反応セル48個からなる、並行圧力反応器(PPR)中で行う。各反応セルにおける使用体積は、6000μLである。各セルは、個々の撹拌パドルで撹拌しながら、温度および圧力が制御される。モノマーガスおよびクエンチガスは、PPR装置中に直接、経管的に導入し、自動弁で制御する。液体試薬は、ロボット操作でシリンジにより各反応セルに添加し、液溜め溶媒は混合アルカンである。添加の順序は、混合アルカン溶媒(4ml)、エチレン、1−オクテンコモノマー(1ml)、共触媒1または共触媒1/MMAO混合物、シャトリング剤、および触媒または触媒混合物である。共触媒1およびMMAOの混合物、または触媒2種の混合物を使用する場合、こうした試薬は、反応器に添加する直前、小型バイアル中で予備混合する。実験においてある試薬を省略する場合、それ以外は、上記の添加順序を維持する。重合は、約1〜2分間、所定のエチレン消費量に達するまで行う。COでクエンチした後、反応器を冷却し、ガラス管から排出させる。その管を遠心/真空乾燥装置に移し、60℃で12時間乾燥させる。乾燥ポリマーを含んだその管を秤量し、この重量と風袋重量との差がポリマーの正味収量となる。結果は、表1に収載されている。表1および本願の他所では、比較化合物を星印(*)で示す。
【0146】
実施例1〜4は、DEZが存在するときは、非常に狭いMWDで、実質的に単峰性のコポリマーの形成、およびDEZが存在しないときは、双峰性で広い分子量分布の生成物(別々に生成したポリマーの混合物)の形成により証明されるように、本発明による線状ブロックコポリマーの合成を示す。触媒(A1)が、触媒(B1)より多量のオクテンを取り込むことが知られているという事実のために、本発明の生成コポリマーの異なるブロックまたはセグメントは、分岐または密度に基づいて識別可能である。
【0147】
【表1】
【0148】
本発明に従って製造したポリマーは、相対的に狭い多分散性(Mw/Mn)、およびシャトリング剤の非存在下で調製したポリマーより、大きなブロックコポリマー含量(トリマー、テトラマーまたはそれより大きい)を有することを認識し得る。
【0149】
表1のポリマーに対するデータの更なる特徴付けは、図を参照することにより決定される。より具体的には、DSCおよびATREFの結果は以下のことを示す。
【0150】
実施例1のポリマーに対するDSC曲線は、115.7℃の融点(Tm)と158.1J/gの融解熱とを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積52.9%の最高ピークを34.5℃に示す。DSCのTmとTcrystafとの差は、81.2℃である。
【0151】
実施例2のポリマーに対するDSC曲線は、109.7℃の融点(Tm)と214.0J/gの融解熱とを有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積57.0%の最高ピークを46.2℃に示す。DSCのTmとTcrystafとの差は、63.5℃である。
【0152】
実施例3のポリマーに対するDSC曲線は、120.7℃の融点(Tm)と160.1J/gの融解熱とを有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積71.8%の最高ピークを66.1℃に示す。DSCのTmとTcrystafとの差は、54.6℃である。
【0153】
実施例4のポリマーに対するDSC曲線は、104.5℃の融点(Tm)と170.7J/gの融解熱とを有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積18.2%の最高ピークを30℃に示す。DSCのTmとTcrystafとの差は、74.5℃である。
【0154】
比較例Aに対するDSC曲線は、90.0℃の融点(Tm)と86.7J/gの融解熱とを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積29.4%の最高ピークを48.5℃に示す。こうした値は共に、密度が低い樹脂に合致する。DSCのTmとTcrystafとの差は、41.8℃である。
【0155】
比較例Bに対するDSC曲線は、129.8℃の融点(Tm)と237.0J/gの融解熱とを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積83.7%の最高ピークを82.4℃に示す。こうした値は共に、密度が高い樹脂に合致する。DSCのTmとTcrystafとの差は、47.4℃である。
【0156】
比較例Cに対するDSC曲線は、125.3℃の融点(Tm)と143.0J/gの融解熱とを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積34.7%の最高ピークを81.8℃に、ならびにより低結晶性のピークを52.4℃に示す。2ピークに分離したことは、高結晶性および低結晶性のポリマーの存在に合致する。DSCのTmとTcrystafとの差は、43.5℃である。
【0157】
実施例5〜19、比較例D〜F、連続溶液重合、触媒A1/B2+DEZ
連続溶液重合は、内部撹拌機を備えたコンピュータ制御オートクレーブ反応器中で実施される。精製済み混合アルカン溶媒(ExxonMobil Chemical Companyから入手できるIsopar(商標)E)、2.70lbs/時(1.22kg/時)のエチレン、1−オクテン、および水素(使用する場合)は、温度制御用ジャケットおよび内部熱電対を備えた3.8L反応器に供給される。反応器に対する溶媒供給量は、質量流量調整器で測定する。可変速ダイヤフラムポンプが、溶媒流量および反応器に対する圧力を制御する。ポンプからの排出時、触媒および共触媒1の各注入ラインならびに反応器の撹拌機にフラッシュ流を供給するために、サイドストリームを採る。こうした流れは、Micro-Motion質量流量計で測定され、制御弁により、またはニードル弁の手動調節により制御される。残りの溶媒は、1−オクテン、エチレンおよび水素(使用する場合)と合わせて反応器に供給される。質量流量調整器を用いて、必要な場合、反応器に水素を送出する。溶媒/モノマー溶液の温度は、反応器に入る前に、熱交換器の使用により制御される。このストリームは、反応器の底部に入る。触媒成分溶液は、ポンプおよび質量流量計を用いて計量され、触媒フラッシュ溶媒と合わせて反応器の底部に導入される。反応器は、満液状態で500psig(3.45MPa)で激しく撹拌しながら操作する。生成物は、反応器の頂部にある出口ラインを経て取り出される。反応器からの出口ラインは全て、蒸気が追跡しており、断熱されている。重合は、何らかの安定剤または他の添加剤と共に少量の水を出口ラインの中に添加し、その混合物をスタティックミキサーに通すことにより、停止させる。次いで、揮発分除去の前に、生成物ストリームを熱交換器に通すことにより加熱する。ポリマー生成物は、揮発分除去式押出機および水冷ペレタイザーを用いた押出しにより回収される。プロセスの詳細および結果は、表2に収載されている。選定したポリマー特性は、表3に示されている。
【0158】
【表2】
【0159】
【表3】
【0160】
生成するポリマーを、既述の実施例の場合のようにDSCおよびATREFで試験する。結果は以下の通りである。
【0161】
実施例5のポリマーに対するDSC曲線は、119.6℃の融点(Tm)と60.0J/gの融解熱とを有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積59.5%の最高ピークを47.6℃に示す。DSCのTmとTcrystafとのデルタは、72.0℃である。
【0162】
実施例6のポリマーに対するDSC曲線は、115.2℃の融点(Tm)と60.4J/gの融解熱とを有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積62.7%の最高ピークを44.2℃に示す。DSCのTmとTcrystafとのデルタは、71.0℃である。
【0163】
実施例7のポリマーに対するDSC曲線は、121.3℃の融点と69.1J/gの融解熱とを有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積29.4%の最高ピークを49.2℃に示す。DSCのTmとTcrystafとのデルタは、72.1℃である。
【0164】
実施例8のポリマーに対するDSC曲線は、123.5℃の融点(Tm)と67.9J/gの融解熱とを有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積12.7%の最高ピークを80.1℃に示す。DSCのTmとTcrystafとのデルタは、43.4℃である。
【0165】
実施例9のポリマーに対するDSC曲線は、124.6℃の融点(Tm)と73.5J/gの融解熱とを有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積16.0%の最高ピークを80.8℃に示す。DSCのTmとTcrystafとのデルタは、43.8℃である。
【0166】
実施例10のポリマーに対するDSC曲線は、115.6℃の融点(Tm)と60.7J/gの融解熱とを有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積52.4%の最高ピークを40.9℃に示す。DSCのTmとTcrystafとのデルタは、74.7℃である。
【0167】
実施例11のポリマーに対するDSC曲線は、113.6℃の融点(Tm)と70.4J/gの融解熱とを有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積25.2%の最高ピークを39.6℃に示す。DSCのTmとTcrystafとのデルタは、74.1℃である。
【0168】
実施例12のポリマーに対するDSC曲線は、113.2℃の融点(Tm)と48.9J/gの融解熱とを有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、30℃以上にピークを示さない。(したがって、更なる計算をするためのTcrystafを30℃に設定する)。DSCのTmとTcrystafとのデルタは、83.2℃である。
【0169】
実施例13のポリマーに対するDSC曲線は、114.4℃の融点(Tm)と49.4J/gの融解熱とを有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積7.7%の最高ピークを33.8℃に示す。DSCのTmとTcrystafとのデルタは、84.4℃である。
【0170】
実施例14のポリマーに対するDSC曲線は、120.8℃の融点(Tm)と127.9J/gの融解熱とを有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積92.2%の最高ピークを72.9℃に示す。DSCのTmとTcrystafとのデルタは、47.9℃である。
【0171】
実施例15のポリマーに対するDSC曲線は、114.3℃の融点(Tm)と36.2J/gの融解熱とを有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積9.8%の最高ピークを32.3℃に示す。DSCのTmとTcrystafとのデルタは、82.0℃である。
【0172】
実施例16のポリマーに対するDSC曲線は、116.6℃の融点(Tm)と44.9J/gの融解熱とを有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積65.0%の最高ピークを48.0℃に示す。DSCのTmとTcrystafとのデルタは、68.6℃である。
【0173】
実施例17のポリマーに対するDSC曲線は、116.0℃の融点(Tm)と47.0J/gの融解熱とを有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積56.8%の最高ピークを43.1℃に示す。DSCのTmとTcrystafとのデルタは、72.9℃である。
【0174】
実施例18のポリマーに対するDSC曲線は、120.5℃の融点(Tm)と141.8J/gの融解熱とを有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積94.0%の最高ピークを70.0℃に示す。DSCのTmとTcrystafとのデルタは、50.5℃である。
【0175】
実施例19のポリマーに対するDSC曲線は、124.8℃の融点(Tm)と174.8J/gの融解熱とを有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積87.9%の最高ピークを79.9℃に示す。DSCのTmとTcrystafとのデルタは、45.0℃である。
【0176】
比較例Dのポリマーに対するDSC曲線は、37.3℃の融点(Tm)と31.6J/gの融解熱とを示す。対応するCRYSTAF曲線は、30℃以上にピークを示さない。こうした値は共に、密度が低い樹脂に合致する。DSCのTmとTcrystafとのデルタは、7.3℃である。
【0177】
比較例Eのポリマーに対するDSC曲線は、124.0℃の融点(Tm)と179.3J/gの融解熱とを有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積94.6%の最高ピークを79.3℃に示す。こうした値は共に、密度が高い樹脂に合致する。DSCのTmとTcrystafとのデルタは、44.6℃である。
【0178】
比較例Fのポリマーに対するDSC曲線は、124.8℃の融点(Tm)と90.4J/gの融解熱とを有するピークを示す。対応するCRYSTAF曲線は、ピーク面積19.5%の最高ピークを77.6℃に示す。2ピークに分離したことは、高結晶性および低結晶性の両ポリマーの存在に合致する。DSCのTmとTcrystafとのデルタは、47.2℃である。
【0179】
物理特性の試験
ポリマー試料を、TMA温度試験、ペレットブロッキング強度、高温回収性、高温永久圧縮歪み、および貯蔵弾性率比G’(25℃)/G’(100℃)で証明されるような高温耐性特性などの物理特性について評価する。こうした試験には、数種の市販ポリマーが含まれている。即ち、比較例G*は、実質的に線状のエチレン/1−オクテンコポリマー(AFFINITY(登録商標)、The Dow Chemical Companyから入手可能)であり、比較例H*は、エラストマー性で、実質的に線状のエチレン/1−オクテンコポリマー(AFFINITY(登録商標)EG8100、The Dow Chemical Companyから入手可能)であり、比較例Iは、実質的に線状のエチレン/1−オクテンコポリマー(AFFINITY(登録商標)PL1840、The Dow Chemical Companyから入手可能)であり、比較例Jは、水素化スチレン/ブタジエン/スチレントリブロックコポリマー(KRATON(商標)G1652、KRATON Polymersから入手可能)であり、比較例Kは、熱可塑性加硫物(TPV、分散した架橋エラストマーを含有するポリオレフィンブレンド)である。結果は、表4に提示されている。
【0180】
【表4】
【0181】
表4では、比較例F(触媒A1およびB1を用いた同時重合から生じた2種のポリマーの物理的ブレンドである)が約70℃の1mm侵入温度を有する一方、実施例5〜9は、100℃以上の1mm侵入温度を有する。更に、実施例10〜19は全て、85℃超の1mm侵入温度を有し、大多数は、90℃超または100℃超さえの1mm TMA温度を有する。このことは、新規なポリマーが、物理的ブレンドと比較して、より高温でより良好な寸法安定性を有することを示している。比較例J(市販SEBS)は、約107℃の良好な1mm TMA温度を有するが、約100%の非常に悪い(高温70℃での)永久圧縮歪みを有し、高温(80℃)での300%歪み回復中に回復することもできなかった(試料が破断した)。したがって、例示したポリマーは、市販されている一部の高性能熱可塑性エラストマーでさえ利用できない特性の独特な組合せを有している。
【0182】
同様に、表4は、本発明のポリマーに対して6以下の低い(良好な)貯蔵弾性率比G’(25℃)/G’(100℃)を示すが、物理的ブレンド(比較例F)は貯蔵弾性率比9を有し、類似密度のランダムエチレン/オクテンコポリマー(比較例G)は1桁大きい貯蔵弾性率比(89)を有する。ポリマーの貯蔵弾性率比は、できる限り1に近いことが望ましい。このようなポリマーは、温度に相対的に影響されないと見込まれ、このようなポリマーから作製した加工品は、広い温度範囲に亘って有用に使用することができる。低い貯蔵弾性率比および温度非依存性というこの特徴は、粘着剤配合物などのエラストマー用途において特に有用である。
【0183】
表4のデータは、本発明のポリマーが、改良されたペレットブロッキング強度を有することも示している。特に、実施例5は、0MPaのペレットブロッキング強度を有し、これは、相当なブロッキングを示す比較例FおよびGと比較して、試験条件下で自由に流れることを意味する。大きなブロッキング強度を有するポリマーのバルク輸送は、貯蔵または輸送時に製品の凝集または相互接着を起こし、取扱い特性が悪くなる恐れがあるので、ブロッキング強度は重要である。
【0184】
本発明のポリマーの高温(70℃)永久圧縮歪みは、概して良好であり、一般に約80%未満、好ましくは約70%未満、殊のほか約60%未満を意味する。対照的に、比較例F、G、HおよびJは全て、100%(全く回復性がないことを示す、可能な最大値)の70℃永久圧縮歪みを有する。良好な高温永久圧縮歪み(低い数値)は、ガスケット、窓枠、O−リングなどの用途に殊のほか必要とされる。
【0185】
【表5】
【0186】
表5は、新規なポリマーならびに各種の比較ポリマーの常温における機械特性に対する結果を示す。本発明のポリマーは、ISO4649に従って試験したとき、非常に良好な耐摩耗性を有し、一般に、約90mm3未満、好ましくは約80mm3未満、殊のほか約50mm3未満の体積減少を示す。この試験では、数字が大きいほど、体積減少が大きく、したがって耐摩耗性が低下する。
【0187】
引張りノッチ付き引裂き強度で測定した際の本発明のポリマーの引裂き強度は、表5に示すように一般に1000mJ以上である。本発明のポリマーの引裂き強度は、3000mJもの大きさ、または5000mJもの大きさにもなり得る。比較ポリマーは、一般に750mJ以下の引裂き強度を有する。
【0188】
表5は、本発明のポリマーが、比較試料の幾つかより良好な150%歪み収縮応力を有する(より高い収縮応力値で示される)ことも示している。比較実施例F、GおよびHが、400kPa以下の150%歪み収縮応力値を有する一方、本発明のポリマーは、500kPa(実施例11)から約1100kPa(実施例17)にもなる150%歪み収縮応力値を有する。150%超の収縮応力値を有するポリマーは、弾性の繊維および布帛、殊のほか不織布などの弾性用途にとって極めて有用となろう。他の用途には、タブおよび弾性バンドなどの、オムツ、衛生品および医療衣類のベルトの用途が含まれる。
【0189】
表5は、応力緩和(50%歪み時)も、例えば比較例Gと比較して、本発明のポリマーでは改善(減少)していることも示している。応力緩和の減少は、体温での長期間に亘る弾性保持が望ましいオムツや他の衣類などの用途において、該ポリマーがその力をより良好に保持していることを意味する。
【0190】
光学試験
【0191】
【表6】
【0192】
表6に報告した光学特性は、実質的に配向性のない圧縮成形フィルムに基づいている。ポリマーの光学特性は、重合に用いる連鎖シャトリング剤の量的変化から生じる結晶子サイズの変化により、広範囲に亘って変化し得る。
【0193】
マルチブロックコポリマーの抽出
実施例5、7および比較例Eのポリマーに関する抽出試験を行う。その実験では、ポリマー試料をガラスフリット処理抽出円筒中に量り込み、熊川式抽出器に嵌め込む。試料入り抽出器を窒素でパージし、500mL丸底フラスコにジエチルエーテル350mLを投入する。次いで、フラスコを抽出器に取り付ける。撹拌しながらエーテルを加熱する。エーテルが円筒中に凝縮し始める時間を観察し、窒素下で24時間抽出を進行させる。この段階で、加熱を停止し、溶液を冷却させる。抽出器中に残存するエーテルは、完全にフラスコに戻る。フラスコ中のエーテルを常温で真空下に蒸発させ、生成した固形分を窒素でパージして乾燥させる。連続的なヘキサン洗浄液により、残渣を秤量済みボトルへ完全に移す。次いで、合わせたヘキサン洗浄液を新たな窒素パージにより蒸発させ、残渣を真空下、40℃で終夜乾燥させる。抽出器中の残存エーテルは、窒素でパージして完全に乾燥させる。
【0194】
次いで、ヘキサン350mLを投入した清浄な第2の丸底フラスコを抽出器に連結する。ヘキサンを撹拌しながら加熱還流し、円筒中にヘキサンの凝縮を初めて認めてから24時間、還流を維持する。次いで、加熱を停止し、フラスコを冷却させる。抽出器中に残存するヘキサンは、完全にフラスコに戻る。ヘキサンを常温で真空下に蒸発・除去し、連続的なヘキサン洗浄液を用いて、フラスコ中に残る残渣を秤量済みボトルへ完全に移す。フラスコ中のヘキサンを窒素パージで蒸発させ、残渣を40℃で終夜、真空乾燥する。
【0195】
抽出後、円筒中に残存するポリマー試料を円筒から秤量済みボトルへ移し、40℃で終夜、真空乾燥する。結果を表7に収載している。
【0196】
【表7】
【0197】
追加のポリマー実施例19A〜J、連続溶液重合、触媒A1/B2+DEZ
実施例19A〜Iに対して
連続溶液重合を混合良好なコンピュータ制御反応器中で実施する。精製済み混合アルカン溶媒(ExxonMobil, Inc. から入手できるIsopar(商標)E)、エチレン、1−オクテン、および水素(使用する場合)を合わせ、27ガロン反応器に供給する。反応器への供給量は、質量流量調整器で測定する。供給ストリームの温度は、反応器に入る前に、グリコール冷却熱交換器の使用により制御する。触媒成分溶液は、ポンプおよび質量流量計を用いて計量する。反応器は、満液状態で約550psigの圧力で操作する。反応器から排出する際、水および添加剤をポリマー溶液中に注入する。水が触媒を加水分解し、重合反応を停止させる。次いで、反応器排出溶液を2段階の揮発分除去に備えて加熱する。溶媒および未反応モノマーを揮発分除去プロセス中に除く。ポリマーメルトをダイへポンプ移送した後、水中でのペレット切断を行う。
【0198】
実施例19Jに対して
連続溶液重合を、内部撹拌機を備えたコンピュータ制御オートクレーブ反応器中で実施する。精製済み混合アルカン溶媒(ExxonMobil Chemical Companyから入手できるIsopar(商標)E)、2.70lbs/時(1.22kg/時)のエチレン、1−オクテン、および水素(使用する場合)を、温度制御用ジャケットおよび内部熱電対を備えた3.8L反応器に供給する。反応器に対する溶媒供給量は、質量流量調整器で測定する。可変速ダイヤフラムポンプが、溶媒流量および反応器に対する圧力を制御する。ポンプからの排出時、触媒および共触媒の各注入ラインならびに反応器の撹拌機にフラッシュ流を供給するために、サイドストリームを採る。こうした流れは、Micro-Motion質量流量計で測定し、制御弁により、またはニードル弁の手動調節により制御する。残りの溶媒は、1−オクテン、エチレンおよび水素(使用する場合)と合わせて反応器に供給する。質量流量調整器を用いて、必要な場合、反応器に水素を送出する。溶媒/モノマー溶液の温度は、反応器に入る前に、熱交換器の使用により制御する。このストリームは、反応器の底部に入る。触媒成分溶液は、ポンプおよび質量流量計を用いて計量し、触媒フラッシュ溶媒と合わせて反応器の底部に導入する。反応器は、満液状態で500psig(3.45MPa)で激しく撹拌しながら操作する。生成物は、反応器の頂部にある出口ラインを経て取り出す。反応器からの出口ラインは全て、蒸気が追跡しており、断熱されている。重合は、何らかの安定剤または他の添加剤と共に少量の水を出口ラインの中に添加し、その混合物をスタティックミキサーに通すことにより、停止させる。次いで、揮発分除去の前に、生成物ストリームを熱交換器に通すことにより加熱する。ポリマー生成物は、揮発分除去式押出機および水冷ペレタイザーを用いた押出しにより回収する。
【0199】
プロセスの詳細および結果は、表8に収載している。選定したポリマー特性は、表9A〜Cに示している。
【0200】
表9Bでは、本発明の実施例19Fおよび19Gが、500%伸びの後、およそ65〜70%歪みの低い即時永久歪みを示す。
【0201】
【表8】
【0202】
【表9】
【0203】
【表10】
【0204】
【表11】
【0205】
実施例20および21
実施例20および21のエチレン/α−オレフィンインターポリマーを、下記の表11に示す重合条件を用いて、上記の実施例19A〜Iと実質的に同様に作製した。こうしたポリマーは、表10に示す特性を示した。表10は、ポリマーへの添加剤も全て示している。
【0206】
【表12】
【0207】
Irganox 1010は、テトラキスメチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)メタンである。Irganox 1076は、オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネートである。Irgafosは、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトである。Chimasorb 2020は、2,3,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの1,6−ヘキサンジアミン、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ポリマーの、N−ブチル−1−ブタナミンおよびN−ブチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジナミンとの反応生成物である。
【0208】
【表13】
【0209】
本発明のコーン染色糸に適切な繊維
本発明のコーン染色糸に適切な繊維は、通常1種または複数の弾性繊維を含み、その弾性繊維は、少なくとも1種のエチレンオレフィンブロックポリマーと適切な少なくとも1種の架橋剤との反応生成物を含む。該繊維は、好ましくはフィラメント繊維である。本明細書で使用する場合、「架橋剤」とは、繊維の1本もしくは複数、好ましくは大多数を架橋する任意の手段である。したがって、架橋剤は、化合物でもよいが必ずしもそうとは限らない。本明細書で使用する場合の架橋剤は、電子ビーム照射、β線照射、γ線照射、コロナ照射、シラン、過酸化物、アリル化合物およびUV照射も包含し、架橋触媒を伴う場合も伴わない場合もある。米国特許第6803014号および第6667351号は、本発明の実施形態に使用できる電子ビーム照射法を開示している。通常、その布帛が染色できるような量の十分な繊維が架橋される。この量は、使用する特定のポリマーおよび所望の性質に応じて変化する。しかし、幾つかの実施形態では、架橋ポリマーの%は、実施例30に記載の方法に従って形成したゲルに対する重量%で測定した場合、少なくとも約5%、好ましくは少なくとも約10、より好ましくは少なくとも約15重量%から、多くとも約75、好ましくは多くとも65、好ましくは多くとも約50%、より好ましくは多くとも約40%である。
【0210】
該繊維は、ASTM D2653−01(第1繊維破断試験における伸び)によれば、フィラメント破断伸びとして通常、約200%超、好ましくは約210%超、好ましくは約220%超、好ましくは約230%超、好ましくは約240%超、好ましくは約250%超、好ましくは約260%超、好ましくは約270%超、好ましくは約280%超を有し、600%にも達する場合がある。本発明の繊維は、ASTM D2731−01(仕上り繊維形態での特定された伸びにおいて力の掛かった状態)によれば、(1)200%伸びにおける荷重/100%伸びにおける荷重の比率として、約1.5以上、好ましくは約1.6以上、好ましくは約1.7以上、好ましくは約1.8以上、好ましくは約1.9以上、好ましくは約2.0以上、好ましくは約2.1以上、好ましくは約2.2以上、好ましくは約2.3以上、好ましくは約2.4以上を有することを更に特徴とし、4まで達する場合もある。
【0211】
当該ポリオレフィンは、適切な任意のエチレンオレフィンブロックポリマーから選択し得る。特に好ましいオレフィンブロックポリマーはエチレン/α−オレフィンインターポリマーであり、そのエチレン/α−オレフィンインターポリマーは、架橋前に以下の特性の1種または複数を有する。
(1)0より大きく、約1までの平均ブロック指数、および約1.3より大きい分子量分布Mw/Mn、または
(2)TREFを用いて分別した際、40℃〜130℃の間で溶出する少なくとも1つの分子分画であって、少なくとも0.5で約1までのブロック指数を有することを特徴とする分子分画、または
(3)約1.7から約3.5のMw/Mn、℃単位の少なくとも1つの融点Tm、およびg/cm3単位の密度dであり、Tmおよびdの数値が次式の相関関係:
Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)2
に対応し、または
(4)約1.7から約3.5のMw/Mnであり、J/g単位の融解熱ΔH、および最高DSCピークと最高CRYSTAFピークとの温度差として定義される℃単位のデルタ量ΔTを特徴とし、ΔTおよびΔHの数値が次式の相関関係:
0より大きく、130J/gまでのΔHに対して、ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81、
130J/gより大きいΔHに対して、ΔT≧48℃
を有し、該CRYSTAFピークは、累積ポリマーの少なくとも5%を用いて決定され、該ポリマーの5%未満が特定可能なCRYSTAFピークを有する場合、該CRYSTAF温度が30℃であり、または
(5)エチレン/α−オレフィンインターポリマーの圧縮成形フィルムを用いて測定した、歪み率300%および1サイクルでの%単位の弾性回復率Reであり、g/cm3単位の密度dを有し、エチレン/α−オレフィンインターポリマーが架橋相を実質的に含有しない場合に、Reおよびdの数値が次式の相関関係:
Re>1481−1629(d)
を満足し、または
(6)TREFを用いて分別した際、40℃〜130℃の間で溶出する分子分画であって、同じ温度間で溶出する匹敵ランダムエチレンインターポリマーの分画と比べ、少なくとも5%高いコモノマーモル含量を有することを特徴とする分子分画であり、但し、匹敵ランダムエチレンインターポリマーは、同じコモノマー(複数も)と、該エチレン/α−オレフィンインターポリマーのものから10%以内にあるメルトインデックス、密度、およびコモノマーモル含量とを有し、または
(7)G’(25℃)対G’(100℃)の比が約1:1から約9:1の範囲にある、25℃での貯蔵弾性率G’(25℃)および100℃での貯蔵弾性率G’(100℃)。
【0212】
該繊維は、所望の用途に応じて、所望の任意のサイズおよび断面形状に作製してもよい。多くの用途については、ほぼ丸い断面が、摩擦が減少するために望ましい。しかし、三つ葉形または平坦(即ち、「リボン」状)形などの他の形状も、使用することができる。デニールは、繊維の長さ9000m当たりの繊維のグラム数と定義される繊維製品用語である。好ましいデニールサイズは、布帛の種類および所望の用途に依存する。この糸の弾性繊維では、大多数の繊維が、通常、少なくとも約1、好ましくは少なくとも約20、好ましくは少なくとも約50から、大きくとも約180、好ましくは大きくとも約150、好ましくは大きくとも約100デニール、好ましくは大きくとも約80デニールのデニールを有する。
【0213】
用途に応じて、該繊維は、ステープル繊維またはバインダー繊維を含む適切な任意の形態を取り得る。典型的な例には、ホモフィル繊維または複合繊維を含み得る。複合繊維の場合、芯鞘構造、海島構造、並列構造、マトリックス・フィブリル構造または分割パイ状構造を取り得る。有利には、従来の繊維形成法を用いて前記繊維を作製し得る。このような方法には、例えば米国特許第4340563号、第4663220号、第4668566号、第4322027号および第4413110号に記載の方法が挙げられる。
【0214】
組成に応じて、該繊維は、加工を容易にし、他の繊維と同様に、またはそれより良好にスプールから巻き出すように作製し得る。通常の繊維は、断面が丸い場合、基材ポリマーの過剰な応力緩和のために、満足できる巻出し性能を示すことがしばしばできない。この応力緩和は、スプールの古さに比例し、そのために、スプールの表面に接しているフィラメントが、その表面上でグリップを失い、弛んだフィラメントストランドとなる。後に、従来繊維を収容しているこのようなスプールをMemminger-IRO製ポジティブ給糸装置のロール上に載せ、工業的速度、即ち100〜300回転/分へと回転し始めると、弛んだ繊維は、スプール表面の側方へ投げ出され、遂にはスプールの縁部から外れる。この故障は、従来繊維が、そのパッケージの肩部または縁部から滑り離れる傾向を示すもので、巻出しプロセスを撹乱し、遂には機械を停止させる脱線の名で知られている。上記の繊維は、同程度またははるかに目立たない程度の脱線(derail)で済ますことができ、したがって処理量の増加も恐らくは可能になる。
【0215】
該繊維の別の利点は、布帛の傷および弾性フィラメントまたは繊維の破断などの欠陥が、従来繊維と比較して同等となり、または減少し得ることである。
【0216】
添加剤
成形もしくは加工操作中の後戻り的劣化から保護するため、および/またはグラフト化もしくは架橋の程度の制御を改善する(即ち、過度のゲル化を抑制する)ために、酸化防止剤、例えば、Ciba Geigy Corp.が製造するIRGAFOS(登録商標)168、IRGANOX (登録商標)1010、IRGANOX(登録商標)3790およびCHIMASSORB(登録商標)944をエチレンポリマーに添加してもよい。プロセス内添加剤、例えばステアリン酸カルシウム、水、フッ素ポリマーなども、残留触媒の不活性化および/または加工性の改善などの目的に、使用してもよい。TINUVIN(登録商標)770(Ciba-Geigy製)は、光安定剤として使用することができる。
【0217】
該コポリマーは、充填することも、充填せずに済ますこともできる。充填する場合には、充填剤の存在量が、高温で耐熱性、弾性のいずれかに悪影響を及ぼしそうな量を超えてはならない。存在させる場合、充填剤の量は、通常、コポリマーの全重量(または、コポリマーと他の1種もしくは複数のポリマーとのブレンドであれば、ブレンドの全重量)に対して0.01〜80wt%の間である。代表的な充填剤には、カオリン粘土、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、シリカおよび炭酸カルシウムが挙げられる。充填剤が存在する好ましい実施形態では、充填剤は、それがなければ架橋反応を充填剤が妨害せざるを得ないと思われる何らかの傾向を、防止または遅延させると見込まれる物質でコーティングされる。ステアリン酸は、このような充填剤コーティング剤を例示している。
【0218】
繊維の摩擦係数を減らすために、各種の紡糸仕上げ用配合物として、繊維油分散金属石鹸(例えば、米国特許第3039895号または第6652599号を参照されたい)、界面活性剤入り基油(例えば、米国特許公開第2003/0024052号を参照されたい)、およびポリアルキルシロキサン(例えば、米国特許第3296063号または第4999120号を参照されたい)などを使用することができる。米国特許出願第10/933721号(米国特許公開第2005/0142360)は、やはり使用できる紡糸仕上げ用組成物を開示している。
【0219】
コアスパンヤーン
一実施形態では、コアとして上記のエチレン/α−オレフィンインターポリマー繊維および被覆材として硬質繊維を含むコアスパンヤーン(CSY)が、調製される。硬質繊維は、天然、合成のいずれでもよい。硬質繊維は、ステープル、フィラメントのいずれでもよい。例示的な硬質繊維には、綿、絹、亜麻、竹、羊毛、テンセル、ビスコース、コーン、再生コーン、PLA、乳タンパク質、大豆、海草、PES、PTT、PA、ポリプロピレン、ポリエステル、アラミド、パラアラミドおよびそれらの混紡が挙げられる。一実施形態では、該硬質繊維は、主に純粋な綿または純粋な絹である。
【0220】
コアスピニング(ステープル)以外に、他の紡績法も使用でき、それだけに限らないが、サイロスパン方式(ステープル)、シングルカバリング(ステープルもしくは連続)、ダブルカバリング(ステープルもしくは連続)またはエアカバリング(連続フィラメント)が挙げられる。一実施形態では、糸はコアスパンまたはサイロスパンである。バイストレッチ、一方向ストレッチ(緯糸ストレッチ)のいずれも、本明細書では想定している。
【0221】
コーン染色糸の繊維破断を制限することを望むのであれば、残留テナシティとして少なくとも約13、好ましくは少なくとも約15、より好ましくは少なくとも約18cNを有する弾性繊維を使用することが、しばしば有用である。このようにして、実施例28の酸エッチング試験で測定した場合、弾性繊維の約5%未満、好ましくは約3%未満、より好ましくは約1%未満しか破断しないコーン染色糸を製造できることがしばしばある。それに加え、本発明の糸は、二次クリープ(growth)対延伸比として0.5未満、好ましくは0.4未満、好ましくは0.35未満、好ましくは0.3未満、好ましくは0.25未満、好ましくは0.2未満、好ましくは0.15未満、好ましくは0.1未満、好ましくは0.05未満をしばしば示す。
【0222】
コーン染色糸中のポリマー量は、ポリマー、用途および所望の特性に応じて変化する。コーン染色糸は、通常、エチレン/α−オレフィンインターポリマーを少なくとも約1、好ましくは少なくとも約2、好ましくは少なくとも約5、好ましくは少なくとも約7重量%含む。この染色糸は、通常、エチレン/α−オレフィンインターポリマーを約50未満、好ましくは約40未満、好ましくは約30未満、好ましくは約20未満、より好ましくは約10重量%未満含む。該エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、繊維形態を取り得、適切な別のポリマー、例えば、ランダムエチレンコポリマー、HDPE、LLDPE、LDPE、ULDPE、ポリプロピレンのホモポリマー、コポリマーなどのポリオレフィン、プラストマーおよびエラストマー、ラストール、ポリアミドなどとブレンドしてもよい。
【0223】
該繊維のエチレン/α−オレフィンインターポリマーは、任意の密度を有し得るが、通常は少なくとも約0.85、好ましくは少なくとも約0.865g/cm3である(ASTM D792)。それに対応して、その密度は、通常約0.93未満、好ましくは約0.92g/cm3未満である(ASTM D792)。該繊維のエチレン/α−オレフィンインターポリマーは、約0.1〜約10g/10分の未架橋メルトインデックスを特徴とする。架橋が望ましければ、架橋ポリマーの%は、形成したゲルに対する重量%で測定した場合、少なくとも10%、好ましくは少なくとも約20、より好ましくは少なくとも約25重量%から、多くとも約90、好ましくは多くとも約75であることがしばしばある。
【0224】
コーン染色糸の硬質繊維は、その糸の大半を占めることがしばしばある。このような場合、硬質繊維は、布帛に対する重量%で、少なくとも約50、好ましくは少なくとも約60、好ましくは少なくとも約70、好ましくは少なくとも約80、ときには90〜95をも占めることが好ましい。
【0225】
エチレン/α−オレフィンインターポリマー、その他の材料、または両者は、繊維の形態を取り得る。好ましいサイズは、デニールで少なくとも約1、好ましくは少なくとも約20、好ましくは少なくとも約50から、大きくとも約180、好ましくは大きくとも約150、好ましくは大きくとも約100、好ましくは大きくとも約80デニールまでを包含する。
【0226】
染色
コーン染色の前に、オレフィンブロックポリマー繊維をコア部材とし、硬質ヤーンを有するコアスパンヤーンを作製すべきである。これの実現方法は肝要ではない。その一法は、例えば、精紡して各々約100gのコップにすることによる。次いで、糸コップを80〜120℃で約15〜30分、蒸気処理し、複数サイクル繰り返すこともある。室温でのコンディショニングの後、蒸気処理済みCSYコップをソフトコーンに巻き戻してもよい。ソフトコーンは、適正な巻取り速度と共に、クレードルにおける相対的に低い圧力と糸に対する相対的に最小量の張力とを用いることにより、低いコーン密度のコップからしばしば作製し得る。
【0227】
コーンのサイズおよび密度は、多くの要因に応じてしばしば変化する。コーン密度は、通常、好ましくは0.1〜0.5g/cm3、より好ましくは0.25〜0.44g/cm3である。0.1g/cm3超の密度は、染色中により安定なコーン状態を促進することが時々あろう。0.5g/cm3未満のコーン密度は、精練および染色中に過度の収縮を時々防止することにより、染料溶液の十分な通過を保証し、コーン全体に亘る不均一な染色を回避し、沸騰水収縮が過度にならないように維持することになろう。
【0228】
コーンのサイズは、好ましくは0.6〜1.5kg、より好ましくは0.7〜1.2kgである。0.6kg未満のコーンは、取扱い作業が多過ぎ、染色容器容量の利用率が過少なため、時々不経済となろう。1.5kgより大きいコーンは、過度のコーン収縮を時々起こすと見込まれ、弾性繊維の高い収縮力のためにその管構造を潰す恐れがあろう。
【0229】
コーン染色プロセスは、一般に3段階、精練、染色/洗浄(高温洗浄の後、低温洗浄)、および乾燥からなる。以下の染色条件は、オレフィンブロックポリマー/綿のCSYコーンの反応性染料による染色に有用であることが判明した。精練工程は、アルカリ浴中、90℃、20分間糸を加熱することに始まり、その後95℃、20分間、高温洗浄をする。この工程は、50℃、20分間の高温洗浄で終了してもよい。オレフィンブロックポリマー/綿のCSYから作製したコーンは、室温から始まる4℃/分の加熱勾配で、70℃、90分間、反応性染料で染色する。染色後、溶液をその機械から排出させる。コーンは、各々100℃、20分間を2回、高温洗浄し、その後20分間、低温洗浄する。次いで、コーンを約80℃〜100℃のオーブン中で乾燥する。乾燥済みコーンは、織機での使用に適したコーンに巻き戻す。処理条件は、適用する装置および化学品に従って変更することができ、有用な範囲は以下の通りである。アルカリ精練処理は約70℃〜105℃の間で実施でき、染色工程は60℃〜105℃の間の温度で実施でき、染色後処理は、50℃〜100℃の間で行うことができ、および/または柔軟剤の添加を加えてもよい。本発明にとっては肝要ではないが、前記の各段階は、業界慣行で通常受け容れられ、適用されている、シャツ地織物用途の綿含有糸に対する代表的処理条件である。
【0230】
染色工程中、全体的な水圧は、通常1バールから15バール、好ましくは1.7〜3.2バールに維持される。コーンを挟む差圧量は、通常0.1〜10バール、好ましくは0.2〜2.0バール、より好ましくは0.5〜1.2バールに維持すべきである。差圧の範囲は、当業者に知られているように、処理され、所望される糸の品質に関係している。
【0231】
生成したコーン染色糸は、色がしばしば非常に均一である。例えば、所与の染色コーンについて、色均一性の平均デルタE(試料と特定した色標準との色差)は、しばしば約0.4未満である。それに加え、所与の染色コーンについて、表面からコアまでの色均一性の平均デルタEは、約1.0未満、好ましくは約0.8未満、より好ましくは約0.5未満、より好ましくは約0.4未満、より好ましくは約0.3未満から、ほぼ0の低さとなることがしばしばある。染色に関する更なる一般的情報については、Fundamentals of Dyeing and Printing, by Garry Mock, North Carolina State University 2002, ISBN 9780000033871を参照してもよい。
実施例
【0232】
実施例22−架橋度がより高い弾性エチレン/α−オレフィンインターポリマーの繊維
実施例20の弾性エチレン/α−オレフィンインターポリマーを用いて、断面がほぼ丸い40デニールのモノフィラメント繊維を作製した。繊維の作製前に、以下の添加剤:PDMSO(ポリジメチルシロキサン)7000ppm、CYANOX 1790(1,3,5−トリス−(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン3000ppm、およびCHIMASORB 944、ポリ−[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ]−s−トリアジン−2,4−ジイル][2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]3000ppm、ならびにTiO20.5重量%をポリマーに添加した。円直径0.8mmのダイ形状、紡糸温度299℃、巻取り機速度650m/分、紡糸仕上げ剤2%、常温延伸6%、およびスプール重量150gを用いて、繊維を製造した。次いで、架橋剤として総量176.4kGyの照射を用いて、繊維を架橋した。
【0233】
実施例23−架橋度がより低い弾性エチレン/α−オレフィンインターポリマーの繊維
実施例20の弾性エチレン/α−オレフィンインターポリマーを用いて、断面がほぼ丸い40デニールのモノフィラメント繊維を作製した。繊維の作製前に、以下の添加剤:PDMSO(ポリジメチルシロキサン)7000ppm、CYANOX 1790(1,3,5−トリス−(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン3000ppm、およびCHIMASORB 944、ポリ−[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ]−s−トリアジン−2,4−ジイル][2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]3000ppm、ならびにTiO20.5重量%をポリマーに添加した。円直径0.8mmのダイ形状、紡糸温度299℃、巻取り機速度1000m/分、紡糸仕上げ剤2%、常温延伸2%、およびスプール重量150gを用いて、繊維を製造した。次いで、架橋剤として総量70.4kGyの照射を用いて、繊維を架橋した。
【0234】
比較実施例24−ランダムコポリマーの繊維
エチレン−オクテン(EO)ランダムコポリマーを用いて、断面がほぼ丸い40デニールのモノフィラメント繊維を作製した。ランダムEOは、メルトインデックス3g/10分、密度0.875g/cm3、および実施例20と類似の添加剤を有することを特徴とする。繊維の作製前に、以下の添加剤:PDMSO(ポリジメチルシロキサン)7000ppm、CYANOX 1790(1,3,5−トリス−(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン3000ppm、およびCHIMASORB 944、ポリ−[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ]−s−トリアジン−2,4−ジイル][2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]3000ppm、TiO20.5重量%をポリマーに添加した。円直径0.8mmのダイ形状、紡糸温度299℃、巻取り機速度1000m/分、紡糸仕上げ剤2%、常温延伸6%、およびスプール重量150gを用いて、繊維を製造した。次いで、架橋剤として176.4kGyの照射を用いて、繊維を架橋した。
【0235】
実施例25−コアスパンヤーンの作製
綿コアスパンヤーン(CSY)の試料3種を作製した。1種にはコア部材として実施例22の繊維、もう1種にはコア部材として実施例23の繊維、もう1種にはコア部材として比較実施例24の繊維を用いて作製した。コア部材は、Pinter精紡機を用いて糸コップに各々コアスピニングをした。綿スライバーの計測値は400テックスであり、適用した牽伸率は、3種のCSY試料各々に対して3.8であった。使用したトラベラーは、Braecker製の8番であり、フロントローラーのショア硬度は65であった。トラベラーおよびフロントローラーハーネスの設定は、両スライバーに対して同一であった。糸の最終繊度は85Nmであった。糸コップは、95℃、15分間蒸気処理し、2サイクル繰り返した。室温でコンディショニングした後、蒸気処理済みCSYコップをおよそ1.1kgのソフトコーンに巻き戻した。コップから低コーン密度のソフトコーンを作製するために、クレードルにおける低圧、糸の最小張力設定、および適正な巻取り速度を用いた。コーン密度は、比較実施例24の繊維を用いて作製したCSYに対して0.41g/cc、実施例22の繊維を用いて作製したCSYに対して0.39g/cc、実施例23の繊維を用いて作製したCSYに対して0.42g/ccであった。
【0236】
実施例26−コーン染色
実施例25で作製した3種のCSY試料を各々コーン染色した。コーン染色プロセスは、Mathis Labコーン染色機を用いて行い、精練、染色、および高温洗浄後の低温洗浄の3段階からなっていた。精練工程は、アルカリ浴中、90℃、20分間糸を加熱することに始まり、その後95℃、20分間、高温洗浄をする。この工程は、50℃、20分間の高温洗浄で終了した。次いで、3種のコーンを、室温から始まる4℃/分の加熱勾配で、70℃、90分間、反応性染料で染色した。染色後、溶液をその機械から排出させた。コーンは、各々100℃、20分間を2回、高温洗浄し、その後20分間、低温洗浄した。3種のコーンを90℃のオーブン中で終夜乾燥した。乾燥済みコーンは、織機での使用に適したコーンに巻き戻した。
【0237】
実施例27−コーン染色後の残留繊維テナシティ
コーン染色後の3種の異なる繊維(実施例22〜24)各々に対する残留テナシティを調べた。実施例26の3種のCSY試料をコーン染色後に回収した。3種の綿CSY試料の各々から、繊維を注意深く手操作で剥離させた。残留テナシティの結果を図8に表示してある。比較実施例24の繊維と比較して、実施例22および23の繊維では、コーン染色後の残留繊維テナシティが有意に改善されたことが明白であり、これは、コーン染色後の繊維破断の減少にプラスの影響を与えよう。何ら理論に拘ることは望まないが、実施例22および23が優れた残留テナシティを示す原因は、以下の1つまたは複数、即ち、高温での引張り強度の増加、耐摩耗性の増加、および/または押込抵抗の増加であったと考えられる。
【0238】
実施例28−CSYにおける繊維破断
実施例26の3種のCSY試料を、酸エッチングを用いた繊維破断について評価した。3種のCSY試料各々を、6メッシュの裏当てスクリーンと共に12”×12”のステンレス製200メッシュワイヤースクリーン上に巻き付けた。60ループができるまで、各CSY試料を各ワイヤーの回りに巻き付けた(上側および裏当てで1つの巻き付け)。スクリーン上の繊維全体は、ほぼ50メートルになろう。糸を巻き付けたスクリーンを硫酸浴中に24時間浸漬した。酸エッチングの後、糸付きスクリーンをその浴から取り出し、水で2回濯ぎ洗いをした。次いで、曝し済み繊維の破断数を数えた。3種の試料における破断数の結果を表12に示す。実施例22および23の繊維で行ったCSYに対する酸エッチングでは、全く破断がなかった。しかし、比較実施例24の繊維で行ったCSYに対する酸エッチングでは、破断が全面的であった。
【0239】
【表14】
【0240】
実施例29−織物における繊維破断
実施例26の3種のCSY試料を用いて、繊維破断の試験用に3種の生機織物試料を作製した。3種のCSY試料の織糸密度は、横糸方向だけに30本/cmであった。3種の生機の各々を、ステンレス鋼(SS)メッシュスクリーン上にSSフレームを用いて固定し、開放区域(約9”×8”)を硫酸液滴で展開した。3種の生機を24時間エッチングした。必要に応じて酸液滴を追加した。織物を水で2回濯ぎ洗いした。織物の繊維破断は、水中で、水から引上げ直後、および乾燥後に目視で判定した。実施例22および23の繊維から作製した生機では、水中、水から引上げ直後、乾燥後のいずれでも、繊維破断が全く見出されなかった。比較実施例24の繊維から作製した生機では、水中または水から引上げ直後では、繊維破断が全く見出されなかった。しかし、乾燥後では、比較実施例24の繊維から作製した生機は、多くの繊維破断を示した。
【0241】
実施例30−繊維架橋量の変化
実施例20の弾性エチレン/α−オレフィンインターポリマーを用いて、断面がほぼ丸い40デニールのモノフィラメント繊維を作製した。繊維の作製前に、以下の添加剤:PDMSO(ポリジメチルシロキサン)7000ppm、CYANOX 1790(1,3,5−トリス−(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン3000ppm、およびCHIMASORB 944、ポリ−[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ]−s−トリアジン−2,4−ジイル][2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]3000ppm、ならびにTiO20.5重量%をポリマーに添加した。円直径0.8mmのダイ形状、紡糸温度299℃、巻取り機速度650m/分、紡糸仕上げ剤2%、常温延伸6%、およびスプール重量150gを用いて、繊維を製造した。次いで、架橋剤として様々な量の照射を用いて、繊維を架橋した。
【0242】
ゲル含量対照射量を図9に示す。ゲル含量は、ほぼ25mgの繊維試料を有効数字4桁の精度まで秤量することにより、決定した。次いで、試料をキシレン7mlと、栓付き2ドラムバイアル中で合わせる。バイアルを15分毎に倒立混合(即ち、バイアルを逆さにする)しながら、125℃〜135℃で90分間加熱することにより、非架橋ポリマーを本質的に全て抽出する。バイアルが約25℃に冷えたら、キシレンをゲルからデカントする。新たなキシレンの少量でゲルをバイアル中で濯ぎ洗いする。濯ぎ洗い済みゲルを風袋計量済み秤量パンに移す。風袋計量済みのそのゲル入り皿を125℃、30分間真空乾燥し、キシレンを蒸発させて除く。乾燥済みゲルを含むパンを化学天秤で秤量する。ゲル含量を、抽出ゲル重量および元の繊維重量に基づいて計算する。図9は、電子ビーム線量が増加するにつれ、架橋量(ゲル含量)も増加することを示している。架橋量と電子ビーム線量との精密な相関関係が、所与のポリマーの特性、例えば分子量またはメルトインデックスの影響を受け得ることは、当業者であれば理解されよう。
【0243】
実施例31−デルタPの測定
弾性CSYは、高温でのポリマー緩和のために、コーン染色プロセス中にかなり収縮することがある。染色プロセス中の弾性繊維CSYの収縮は、コーンの収縮を起こし得る。その結果、染色中のコーンの密度が増加し、コーンの透過性が減少し、コーンを挟む差圧(ΔP)が増加することになろう。コーンを挟む高ΔPに伴う不都合な効果は、幾多も有り得るもので、高ΔPは、染色容器中の警報装置を始動させる恐れがあり、繊維に高い応力を掛け、そのため表面損傷および潜在的な繊維破断を起こす恐れがあり、コーン中に不均一な液流動を発生し、コーン全体の不均一な色分布を起こす恐れもある。したがって、コーン染色中の差圧を約1.0バールに制御すれば、最良の染色品質がしばしば実現されよう(1.4バールが、典型的なコーン染色機で警報が始動すると見込まれるレベルであることが多いことに留意されたい)。オレフィンブロックポリマーは、コーン密度、コーンを挟む差圧、その他などのコーン染色の操作パラメーターに、甚大な効果を及ぼすことのできる有利な収縮力を有する。
【0244】
収縮挙動は、実施例22の繊維を含むCSYと実施例23の繊維を含むCSYとを、蒸気処理後の糸の緩和を目視検査することにより比較して、定性的に決定した。コーン染色試験に用いた蒸気処理条件を図10に示す。各々95℃、9分間の蒸気処理2サイクルを利用して、コップ上のCSYを緩和させた。蒸気処理後、各試料のコップから糸1本を抜き取り、放置により完全に緩和して、小さなループを形成するようにした。緩和CSYは、カールや小さなループを欠いた相当な直線性を示すはずである。部分緩和CSYでは、多くのカールやループが示されよう。この目視検査を用いて、コーン染色プロセスにおけるCSYの性能を定性的に予測し得る。いずれの試料も完全には緩和せず、実施例22の繊維を含むCSYは、他方のCSYほど緩和しなかった。PET/綿オレフィンブロックポリマー繊維を含むCSYの緩和挙動も、完全には緩和しなかった。しかし、実施例23の繊維を含むCSYは、実施例22の繊維を含むCSYより緩和が大きいように見えた。
【0245】
蒸気処理工程をシミュレートするために、昇温に応答した際のCSYの収縮力を測定する第2の実験を行った。第2の実験の目的は、実施例22の繊維を含むCSYおよび実施例23の繊維を含むCSYを含めた綿40dCSYの選択した生機試料に、FST試験法を適用することであった。FST試験法では、収縮量およびCSYの収縮で発生した力を決定する。計測器は、加熱速度が調節できる2個の横型オーブンからなる。それは、収縮張力を検出するロードセル、および試料の収縮率を検出するエンコーダーも有する。この試験の選定した生機CSY試料は、蒸気処理工程をシミュレートするために、加熱速度4℃/分でFSTにより試験した。
【0246】
FST法では、収縮力を厳密には測定し得ないが、異なるCSY相互の定性的比較がなされよう。FST試験の結果は、図11に時間(28分まで)および温度(140℃まで)に対してプロットされている。FSTデータから幾つかの所見を以下のように述べることができる。
【0247】
95℃、18分間の蒸気処理により、両CSYに対して有意量の収縮力が阻止された。蒸気処理中のCSY収縮力を完全に阻止するためには、目標温度で収縮力が0に到達すべきである。このプロットから、CSYに対して、この目標温度を110℃まで上げるべきであると判定することができる。この所見は、オレフィンブロックポリマーの裸弾性繊維の代わりに、綿CSYに関してなされた。蒸気処理工程中の硬質カバーヤーンとオレフィンブロックポリマー弾性繊維との相互作用は、CSYに関するFST試験に固有であったので、この所見は、コーン染色におけるオレフィンブロックポリマーのCSY性能を予測する際、一助となり得る。このデータは、コーン密度、コーンサイズなどの他のパラメーターを制御すれば、オレフィンブロックポリマー繊維の40デニール綿CSYを95℃で蒸気処理することにより、首尾よいコーン染色が可能になり得ることを示唆している。
【0248】
上記の実施例26に使用したコーンサイズは、およそ1.1kgであった。コーンサイズの大型化は、一般にこのプロセスにおいてΔPの増加を起こすが、経済性は向上し得る。綿コーン染色プロセス中に、コーンは、精練/高温洗浄段階(90℃)でも第2高温洗浄段階(100℃)でもなく、温度が70℃の染色段階で最高のΔPを受けた。このことから、CSYまたはコーンの最大収縮は、加熱段階ではなく、冷却段階で起こった可能性が示唆される。綿染色については、実施例23の40デニール繊維のCSYは1.2バールのΔPを発生した。このことは、ゲル量がより少ないオレフィンブロックポリマーの40デニール繊維が、ΔPに関しては、ゲル量を60%以上含有するランダムエチレンポリマー繊維と同程度に、コーン染色において機能し得ることを示唆している。PET/綿コーン染色については、40デニールオレフィンブロック繊維は、1.4バールの警報レベル閾値より僅かに低い1.3バールのΔP最大値を発生した。オレフィンブロックポリマー/ポリプロピレン(PP)ブレンドの40デニール繊維は、綿、PET/綿双方の染色プロセスにおいて、全試作CSYのうち最低値のΔPを発生し、その値は、綿コーン染色では1.1バールであり、PET/綿コーン染色では1.2バールであった。オレフィンブロックポリマー繊維中にPP副成分をブレンドすることは、高度に伸長したPP相がその温度では収縮しないので、コーン染色中にコーンの収縮を減少させるとの仮定が立てられる。したがって、オレフィンブロックポリマーと少量のPPとをブレンドすることは、ΔPから見れば、CSYコーン染色の改善にも役立ち得る。
【0249】
PET/綿コーン染色中では、PET繊維を染色する第1プロセス段階で最大ΔPに達した。PET染色で用いる高温(130℃)は、オレフィンブロックポリマー繊維を緩和させ、オレフィンブロックポリマーCSYの収縮能の大部分を阻止するはずである。その直接的結果として、綿繊維を染色する第2プロセス段階では、非常に低いΔPが報告された。
【0250】
低架橋線量(70KGy)を併用した40デニールオレフィンブロックポリマー系繊維は、コーン染色中に有利なΔPレベルを示した。低ΔPは、繊維に低い応力を掛け、したがって破断を減少させると思われるので、コーン染色中には最も望ましい。低ΔPは、コーン全体の均一な流動および色分布を生じる上でも、時々役立ち得る。
【0251】
実施例32−色均一性の測定
色均一性を測定するために、重量約1.1kgの染色済みコーンを6個の小型コーンに巻き戻し、元コーンの半径に沿った色の深みを確かめた。分光計(CIELAB系)を用いて、コーン試料のa*値、b*値およびL*値を検出し、何らかの顕著な差を確かめるために、第1小型コーン(または表面層)と比較した。CIELAB系では、試料と特定色(標準)との許容色差ΔEを一般に用いて、消費者製品の色均一性または色整合を調べる。特に繊維製品および衣料業界では、着色品の合否許容差は、ΔEで約1.0〜1.5内に入ることと、一般に受け容れられている。色織物作製時の細綿糸については、許容性範囲は、内外色同等性に対するΔE0.3〜0.5から、ロット間変動に対するΔE1.0〜1.5まで、色の濃さ、用途(単色または色織物)、および他の要因に応じて変化することができる。ΔEは、次式のように計算され、
ΔE=√(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2
式中、L*=明度、a*=赤味〜緑味、b*=黄味〜青味;ΔL*=L*(試料)−L*(標準)、正のΔL*は、試料が標準より明るいことを意味し、負のΔL*は、試料が標準より暗いことを意味する;Δa*=a*(試料)−a*(標準)、正のΔa*は、試料が標準より赤味が強いことを意味し、負のΔa*は、試料が標準より緑味が強いことを意味する;Δb*=b*(試料)−b*(標準)、正のΔb*は、試料が標準より黄味が強いことを意味し、負のΔb*は、試料が標準より青味が強いことを意味する。
【0252】
各大型コーンを6〜7個の小型コーンに巻き戻した後、色の読取を行った。各試料の第1層の色を基準点とした。各試料に対して、全ての層に亘り平均したΔE値、および最外層(表面層)と最内層(コア層)とのΔEを表12に示す。実施例23の繊維を含むCSYでは、平均ΔEおよび表面・コア間のΔEが、共に1.0未満であったことが認められる。実施例22の繊維を含むCSYは、1より大きいΔEを有していた。しかし、こうしたコーンは全て、青く染色されたため、Δb*が色均一性分析で最も重要な属性である。平均ΔEの計算に使用したΔL*、Δa*およびΔb*の平均値も、図13にプロットしてある。色不均一性の主要素は、基準層に対する明度の差ΔL*であると考えられる。Δb*の差は、通常かなり小さかった。コーン密度およびコーンサイズを最適に調節することにより、色均一性は、更に改善できると考えられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本または複数の弾性繊維および硬質繊維を含むコーン染色糸であって、前記弾性繊維は、少なくとも1種のエチレンオレフィンブロックポリマーと少なくとも1種の架橋剤との反応生成物を含み、前記エチレンオレフィンブロックポリマーが、架橋の前に以下の特性:
(a)約1.7から約3.5のMw/Mn、℃単位の少なくとも1つの融点Tm、およびg/cm3単位の密度dを有し、Tmおよびdの数値が次式の相関関係:
Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)2
に対応し、または
(b)約1.7から約3.5のMw/Mnを有しており、J/g単位の融解熱ΔH、および最高DSCピークと最高CRYSTAFピークとの温度差として定義される℃単位のデルタ量ΔTを特徴とし、ΔTおよびΔHの数値が次式の相関関係:
0より大きく、130J/gまでのΔHに対して、ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81、
130J/gより大きいΔHに対して、ΔT≧48℃
を有し、前記CRYSTAFピークは、累積ポリマーの少なくとも5%を用いて決定され、前記ポリマーの5%未満が特定可能なCRYSTAFピークを有する場合、前記CRYSTAF温度が30℃であり、または
(c)該エチレン/α−オレフィンインターポリマーの圧縮成形フィルムを用いて測定した、歪み率300%および1サイクルでの%単位の弾性回復率Reを特徴とし、g/cm3単位の密度dを有しており、前記エチレン/α−オレフィンインターポリマーが架橋相を実質的に含有しない場合に、Reおよびdの数値が次式の相関関係:
Re>1481−1629(d)
を満足し、または
(d)TREFを用いて分別した際、40℃〜130℃の間で溶出する分子分画であって、同じ温度間で溶出する匹敵ランダムエチレンインターポリマーの分画と比べ、少なくとも5%高いコモノマーモル含量を有することを特徴とする分子分画を有し、但し、前記匹敵ランダムエチレンインターポリマーは、同じコモノマー(複数も)と、前記エチレン/α−オレフィンインターポリマーのものから10%以内にあるメルトインデックス、密度、およびポリマー全体に対するコモノマーモル含量とを有し、または
(e)G’(25℃)対G’(100℃)の比が約1:1から約10:1である、25℃での貯蔵弾性率G’(25℃)および100℃での貯蔵弾性率G’(100℃)を特徴とし、または
(f)TREFを用いて分別した際、40℃〜130℃の間で溶出する少なくとも1つの分子分画であって、少なくとも0.5で約1までのブロック指数、および約1.3より大きい分子量分布Mw/Mnを有することを特徴とする分子分画、または
(g)0より大きく、約1.0までの平均ブロック指数、および約1.3より大きい分子量分布Mw/Mn、
の1つまたは複数を特徴とするエチレン/α−オレフィンインターポリマーである、コーン染色糸。
【請求項2】
前記硬質繊維がステープルまたはフィラメントである、請求項1に記載のコーン染色糸。
【請求項3】
前記硬質繊維が天然品または合成品である、請求項1に記載のコーン染色糸。
【請求項4】
前記硬質繊維が綿、絹、亜麻、竹、羊毛、テンセル、ビスコース、コーン、再生コーン、PLA、乳タンパク質、大豆、海草、PES、PTT、PA、ポリプロピレン、ポリエステル、アラミド、パラアラミドおよびそれらの混紡である、請求項1に記載のコーン染色糸。
【請求項5】
前記糸が、コアとして弾性繊維および被覆材として硬質繊維を含むコアスパンヤーンである、請求項1に記載のコーン染色糸。
【請求項6】
前記糸が、シングルカバードヤーン、ダブルカバードヤーンまたはエアカバードヤーンである、請求項5に記載のユアスパンヤーン。
【請求項7】
前記糸がサイロスパンヤーンである、請求項1に記載のコーン染色糸。
【請求項8】
前記弾性繊維の残留テナシティが少なくとも約13cNである、請求項1に記載のコーン染色糸。
【請求項9】
前記弾性繊維の残留テナシティが少なくとも約15cNである、請求項1に記載のコーン染色糸。
【請求項10】
前記弾性繊維の残留テナシティが少なくとも約18cNである、請求項1に記載のコーン染色糸。
【請求項11】
酸エッチングで測定した場合、前記弾性繊維の約5%未満が破断する、請求項1に記載のコーン染色糸。
【請求項12】
酸エッチングで測定した場合、前記弾性繊維の約3%未満が破断する、請求項1に記載のコーン染色糸。
【請求項13】
酸エッチングで測定した場合、前記弾性繊維の約1%未満が破断する、請求項1に記載のコーン染色糸。
【請求項14】
所与の染色コーンについて、色均一性の平均デルタEが約0.4より大きい、請求項1に記載のコーン染色糸。
【請求項15】
所与の染色コーンについて、表面からコアまでの色均一性の平均デルタEが約0.4より大きい、請求項1に記載のコーン染色糸。
【請求項16】
前記弾性繊維が、前記糸の約2〜約30重量%を占める、請求項1に記載のコーン染色糸。
【請求項17】
前記糸が、ポリエステル、ナイロンまたはそれらの混合物を更に含む、請求項1に記載のコーン染色糸。
【請求項18】
前記硬質繊維が、前記糸の少なくとも約80重量%を占める、請求項1に記載のコーン染色糸。
【請求項19】
前記エチレン/α−オレフィンインターポリマーが別のポリマーとブレンドされている、請求項1に記載のコーン染色糸。
【請求項20】
前記エチレン/α−オレフィンインターポリマーが、約0.865〜約0.92g/cm3の密度(ASTM D792)および約0.1〜約10g/10分の未架橋メルトインデックスを特徴とする、請求項1に記載のコーン染色糸。
【請求項21】
前記弾性繊維の過半が、約1デニールから約180デニールのデニールを有する、請求項1に記載のコーン染色糸。
【請求項22】
前記染色糸が0.25未満の二次クリープ対延伸比を示す、請求項1に記載のコアスパンヤーン。
【請求項23】
1本または複数の弾性ポリマー繊維を含むコアスパンヤーンをコーン染色し、精錬、染色および乾燥を含むプロセスにおいて、前記弾性ポリマー繊維として、少なくとも1種のエチレンオレフィンブロックポリマーと少なくとも1種の架橋剤との反応生成物を使用し、前記エチレンオレフィンブロックポリマーが、架橋の前に以下の特性:
(a)約1.7から約3.5のMw/Mn、℃単位の少なくとも1つの融点Tm、およびg/cm3単位の密度dを有し、Tmおよびdの数値が次式の相関関係:
Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)2
に対応し、または
(b)約1.7から約3.5のMw/Mnを有しており、J/g単位の融解熱ΔH、および最高DSCピークと最高CRYSTAFピークとの温度差として定義される℃単位のデルタ量ΔTを特徴とし、ΔTおよびΔHの数値が次式の相関関係:
0より大きく、130J/gまでのΔHに対して、ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81、
130J/gより大きいΔHに対して、ΔT≧48℃
を有し、前記CRYSTAFピークは、累積ポリマーの少なくとも5%を用いて決定され、前記ポリマーの5%未満が特定可能なCRYSTAFピークを有する場合、前記CRYSTAF温度が30℃であり、または
(c)前記エチレン/α−オレフィンインターポリマーの圧縮成形フィルムを用いて測定した、歪み率300%および1サイクルでの%単位の弾性回復率Reを特徴とし、g/cm3単位の密度dを有しており、前記エチレン/α−オレフィンインターポリマーが架橋相を実質的に含有しない場合に、Reおよびdの数値が次式の相関関係:
Re>1481−1629(d)
を満足し、または
(d)TREFを用いて分別した際、40℃〜130℃の間で溶出する分子分画であって、同じ温度間で溶出する匹敵ランダムエチレンインターポリマーの分画と比べ、少なくとも5%高いコモノマーモル含量を有することを特徴とする分子分画を有し、但し、前記匹敵ランダムエチレンインターポリマーは、同じコモノマー(複数も)と、前記エチレン/α−オレフィンインターポリマーのものから10%以内にあるメルトインデックス、密度、およびポリマー全体に対するコモノマーモル含量とを有し、または
(e)G’(25℃)対G’(100℃)の比が約1:1から約10:1である、25℃での貯蔵弾性率G’(25℃)および100℃での貯蔵弾性率G’(100℃)を特徴とし、または
(f)TREFを用いて分別した際、40℃〜130℃の間で溶出する少なくとも1つの分子分画であって、少なくとも0.5で約1までのブロック指数、および約1.3より大きい分子量分布Mw/Mnを有することを特徴とする分子分画、または
(g)0より大きく、約1.0までの平均ブロック指数、および約1.3より大きい分子量分布Mw/Mn、
の1つまたは複数を特徴とするエチレン/α−オレフィンインターポリマーである、プロセス改良。
【請求項1】
1本または複数の弾性繊維および硬質繊維を含むコーン染色糸であって、前記弾性繊維は、少なくとも1種のエチレンオレフィンブロックポリマーと少なくとも1種の架橋剤との反応生成物を含み、前記エチレンオレフィンブロックポリマーが、架橋の前に以下の特性:
(a)約1.7から約3.5のMw/Mn、℃単位の少なくとも1つの融点Tm、およびg/cm3単位の密度dを有し、Tmおよびdの数値が次式の相関関係:
Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)2
に対応し、または
(b)約1.7から約3.5のMw/Mnを有しており、J/g単位の融解熱ΔH、および最高DSCピークと最高CRYSTAFピークとの温度差として定義される℃単位のデルタ量ΔTを特徴とし、ΔTおよびΔHの数値が次式の相関関係:
0より大きく、130J/gまでのΔHに対して、ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81、
130J/gより大きいΔHに対して、ΔT≧48℃
を有し、前記CRYSTAFピークは、累積ポリマーの少なくとも5%を用いて決定され、前記ポリマーの5%未満が特定可能なCRYSTAFピークを有する場合、前記CRYSTAF温度が30℃であり、または
(c)該エチレン/α−オレフィンインターポリマーの圧縮成形フィルムを用いて測定した、歪み率300%および1サイクルでの%単位の弾性回復率Reを特徴とし、g/cm3単位の密度dを有しており、前記エチレン/α−オレフィンインターポリマーが架橋相を実質的に含有しない場合に、Reおよびdの数値が次式の相関関係:
Re>1481−1629(d)
を満足し、または
(d)TREFを用いて分別した際、40℃〜130℃の間で溶出する分子分画であって、同じ温度間で溶出する匹敵ランダムエチレンインターポリマーの分画と比べ、少なくとも5%高いコモノマーモル含量を有することを特徴とする分子分画を有し、但し、前記匹敵ランダムエチレンインターポリマーは、同じコモノマー(複数も)と、前記エチレン/α−オレフィンインターポリマーのものから10%以内にあるメルトインデックス、密度、およびポリマー全体に対するコモノマーモル含量とを有し、または
(e)G’(25℃)対G’(100℃)の比が約1:1から約10:1である、25℃での貯蔵弾性率G’(25℃)および100℃での貯蔵弾性率G’(100℃)を特徴とし、または
(f)TREFを用いて分別した際、40℃〜130℃の間で溶出する少なくとも1つの分子分画であって、少なくとも0.5で約1までのブロック指数、および約1.3より大きい分子量分布Mw/Mnを有することを特徴とする分子分画、または
(g)0より大きく、約1.0までの平均ブロック指数、および約1.3より大きい分子量分布Mw/Mn、
の1つまたは複数を特徴とするエチレン/α−オレフィンインターポリマーである、コーン染色糸。
【請求項2】
前記硬質繊維がステープルまたはフィラメントである、請求項1に記載のコーン染色糸。
【請求項3】
前記硬質繊維が天然品または合成品である、請求項1に記載のコーン染色糸。
【請求項4】
前記硬質繊維が綿、絹、亜麻、竹、羊毛、テンセル、ビスコース、コーン、再生コーン、PLA、乳タンパク質、大豆、海草、PES、PTT、PA、ポリプロピレン、ポリエステル、アラミド、パラアラミドおよびそれらの混紡である、請求項1に記載のコーン染色糸。
【請求項5】
前記糸が、コアとして弾性繊維および被覆材として硬質繊維を含むコアスパンヤーンである、請求項1に記載のコーン染色糸。
【請求項6】
前記糸が、シングルカバードヤーン、ダブルカバードヤーンまたはエアカバードヤーンである、請求項5に記載のユアスパンヤーン。
【請求項7】
前記糸がサイロスパンヤーンである、請求項1に記載のコーン染色糸。
【請求項8】
前記弾性繊維の残留テナシティが少なくとも約13cNである、請求項1に記載のコーン染色糸。
【請求項9】
前記弾性繊維の残留テナシティが少なくとも約15cNである、請求項1に記載のコーン染色糸。
【請求項10】
前記弾性繊維の残留テナシティが少なくとも約18cNである、請求項1に記載のコーン染色糸。
【請求項11】
酸エッチングで測定した場合、前記弾性繊維の約5%未満が破断する、請求項1に記載のコーン染色糸。
【請求項12】
酸エッチングで測定した場合、前記弾性繊維の約3%未満が破断する、請求項1に記載のコーン染色糸。
【請求項13】
酸エッチングで測定した場合、前記弾性繊維の約1%未満が破断する、請求項1に記載のコーン染色糸。
【請求項14】
所与の染色コーンについて、色均一性の平均デルタEが約0.4より大きい、請求項1に記載のコーン染色糸。
【請求項15】
所与の染色コーンについて、表面からコアまでの色均一性の平均デルタEが約0.4より大きい、請求項1に記載のコーン染色糸。
【請求項16】
前記弾性繊維が、前記糸の約2〜約30重量%を占める、請求項1に記載のコーン染色糸。
【請求項17】
前記糸が、ポリエステル、ナイロンまたはそれらの混合物を更に含む、請求項1に記載のコーン染色糸。
【請求項18】
前記硬質繊維が、前記糸の少なくとも約80重量%を占める、請求項1に記載のコーン染色糸。
【請求項19】
前記エチレン/α−オレフィンインターポリマーが別のポリマーとブレンドされている、請求項1に記載のコーン染色糸。
【請求項20】
前記エチレン/α−オレフィンインターポリマーが、約0.865〜約0.92g/cm3の密度(ASTM D792)および約0.1〜約10g/10分の未架橋メルトインデックスを特徴とする、請求項1に記載のコーン染色糸。
【請求項21】
前記弾性繊維の過半が、約1デニールから約180デニールのデニールを有する、請求項1に記載のコーン染色糸。
【請求項22】
前記染色糸が0.25未満の二次クリープ対延伸比を示す、請求項1に記載のコアスパンヤーン。
【請求項23】
1本または複数の弾性ポリマー繊維を含むコアスパンヤーンをコーン染色し、精錬、染色および乾燥を含むプロセスにおいて、前記弾性ポリマー繊維として、少なくとも1種のエチレンオレフィンブロックポリマーと少なくとも1種の架橋剤との反応生成物を使用し、前記エチレンオレフィンブロックポリマーが、架橋の前に以下の特性:
(a)約1.7から約3.5のMw/Mn、℃単位の少なくとも1つの融点Tm、およびg/cm3単位の密度dを有し、Tmおよびdの数値が次式の相関関係:
Tm>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)2
に対応し、または
(b)約1.7から約3.5のMw/Mnを有しており、J/g単位の融解熱ΔH、および最高DSCピークと最高CRYSTAFピークとの温度差として定義される℃単位のデルタ量ΔTを特徴とし、ΔTおよびΔHの数値が次式の相関関係:
0より大きく、130J/gまでのΔHに対して、ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81、
130J/gより大きいΔHに対して、ΔT≧48℃
を有し、前記CRYSTAFピークは、累積ポリマーの少なくとも5%を用いて決定され、前記ポリマーの5%未満が特定可能なCRYSTAFピークを有する場合、前記CRYSTAF温度が30℃であり、または
(c)前記エチレン/α−オレフィンインターポリマーの圧縮成形フィルムを用いて測定した、歪み率300%および1サイクルでの%単位の弾性回復率Reを特徴とし、g/cm3単位の密度dを有しており、前記エチレン/α−オレフィンインターポリマーが架橋相を実質的に含有しない場合に、Reおよびdの数値が次式の相関関係:
Re>1481−1629(d)
を満足し、または
(d)TREFを用いて分別した際、40℃〜130℃の間で溶出する分子分画であって、同じ温度間で溶出する匹敵ランダムエチレンインターポリマーの分画と比べ、少なくとも5%高いコモノマーモル含量を有することを特徴とする分子分画を有し、但し、前記匹敵ランダムエチレンインターポリマーは、同じコモノマー(複数も)と、前記エチレン/α−オレフィンインターポリマーのものから10%以内にあるメルトインデックス、密度、およびポリマー全体に対するコモノマーモル含量とを有し、または
(e)G’(25℃)対G’(100℃)の比が約1:1から約10:1である、25℃での貯蔵弾性率G’(25℃)および100℃での貯蔵弾性率G’(100℃)を特徴とし、または
(f)TREFを用いて分別した際、40℃〜130℃の間で溶出する少なくとも1つの分子分画であって、少なくとも0.5で約1までのブロック指数、および約1.3より大きい分子量分布Mw/Mnを有することを特徴とする分子分画、または
(g)0より大きく、約1.0までの平均ブロック指数、および約1.3より大きい分子量分布Mw/Mn、
の1つまたは複数を特徴とするエチレン/α−オレフィンインターポリマーである、プロセス改良。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2010−516910(P2010−516910A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546492(P2009−546492)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/051149
【国際公開番号】WO2008/089224
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/051149
【国際公開番号】WO2008/089224
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】
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