説明

オレフィン系樹脂組成物および医療用成形体

【課題】透明性、形状復元性及び耐屈曲性に優れる医療用成形体に好適に用いられるオレフィン系樹脂組成物、および当該オレフィン系樹脂組成物を用いた医療用成形体を提供すること
【解決手段】プロピレン単位の含有量が94重量%〜99.5重量%であるプロピレン系共重合体(A)、プロピレン単位の含有量が87重量%〜93重量%であるプロピレン系共重合体成分(B)、密度が890kg/m3以下であるエチレン系共重合体(C)及び造核剤(D)を含有し、(A)、(B)及び(C)の総量を100重量%として、(A)の含有量が55重量%〜90重量%であり、(B)の含有量が8〜40重量%であり、成分(C)の含有量が2〜20重量%であり、(A)、(B)及び(C)の総量を100重量部として、(D)の含有量が0.01重量部〜0.5重量部であるオレフィン系樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン系樹脂組成物、およびそれを用いた医療用成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
輸液セットや輸血セットなどの医療用機器に用いられる医療用成形体、例えば、シリンジ、点滴筒、チューブ、バッグ等に、オレフィン系樹脂を用いることが検討されている。
例えば、特許文献1には、プロピレン−1−ブテン共重合体からなる筒体本体を有する点滴筒が提案されており、特許文献2には、プロピレン−1−ブテン共重合体とエチレン−1−ブテン共重合体とからなる筒体本体を有する点滴筒が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−45360号公報
【特許文献2】特開昭60−92765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のオレフィン系樹脂からなる医療用成形体は、透明性、形状復元性および耐屈曲性において、十分に満足のいくものではなかった。
【0005】
かかる状況のもと、本発明が解決しようとする課題は、透明性、形状復元性及び耐屈曲性に優れる医療用成形体に好適に用いられるオレフィン系樹脂組成物、および当該オレフィン系樹脂組成物を用いた医療用成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)を含有し、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の総量を100重量%として、成分(A)の含有量が55重量%〜90重量%であり、成分(B)の含有量が8重量%〜40重量%であり、成分(C)の含有量が2重量%〜20重量%であり、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の総量を100重量部として、成分(D)の含有量が0.01重量部〜0.5重量部であるオレフィン系樹脂組成物にかかるものである。
成分(A):下記要件(a−1)、(a−2)及び(a−3)を充足するプロピレン系共重合体
(a−1)プロピレン単位の含有量が94重量%〜99.5重量%であること。
(a−2)示差走査熱量計により120℃以上に融解ピーク温度が観測されること。
(a−3)温度230℃及び荷重2.16kgでのメルトマスフローレイトが3g/10分〜50g/10分であること。
成分(B):下記要件(b−1)、(b−2)及び(b−3)を充足するプロピレン系共重合体。
(b−1)プロピレン単位の含有量が87重量%〜93重量%であること。
(b−2)エチレン単位の含有量が7重量%〜13重量%であること。
(b−3)温度230℃及び荷重2.16kgでのメルトマスフローレイトが0.1g/10分〜50g/10分であること。
成分(C):下記要件(c−1)及び(c−2)を充足するエチレン系共重合体。
(c−1)密度が890kg/m3以下であること。
(c−2)温度190℃及び荷重2.16kgでのメルトマスフローレイトが1g/10分〜20g/10分であること。
成分(D):造核剤
【0007】
また、本発明は、上記オレフィン系樹脂組成物を用いた医療用成形体にかかるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、透明性、形状復元性及び耐屈曲性に優れる医療用成形体に好適に用いられるオレフィン系樹脂組成物、および当該オレフィン系樹脂組成物を用いた医療用成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
成分(A)に用いられるプロピレン系共重合体のプロピレン単位の含有量は、当該共重合体中の単量体単位の総量を100重量%として、94重量%〜99.5重量%である。プロピレン単位の含有量は、透明性を高めるために、好ましくは98重量%以下であり、より好ましくは97重量%以下である。また、形状復元性を高めるために、プロピレン単位の含有量は、好ましくは95重量%以上である。当該プロピレン単位の含有量は、13C−NMRスペクトルから求めることができる。
【0010】
成分(A)に用いられるプロピレン系共重合体は、示差走査熱量計により120℃以上に融解ピーク温度が観測される重合体である。形状復元性を高めるために、当該融解ピーク温度は、好ましくは125℃以上であり、より好ましくは130℃以上であり、更に好ましくは135℃以上である。また、当該融解ピーク温度は、好ましくは150℃以下である。
【0011】
成分(A)に用いられるプロピレン系共重合体のメルトマスフローレイトは、3g/10分〜50g/10分である。本発明の樹脂組成物の成形加工性を高めるために、当該メルトマスフローレイトは、好ましくは5g/10分〜40g/10分であり、より好ましくは7g/10分〜30g/10分である。当該メルトマスフローレイトは、JIS K7210(1999)に規定のA法に従って、条件M(試験温度230℃、公称荷重2.16kg)の試験条件で測定される。
【0012】
成分(A)に用いられるプロピレン系共重合体としては、例えば、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体等が挙げられ、好ましくは、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体である。これらのプロピレン系共重合体は、1種で用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0013】
成分(A)に用いられるプロピレン系共重合体の製造方法としては、チーグラー・ナッタ型触媒、メタロセン系触媒等の重合触媒を用いて、プロピレンとエチレンと、必要に応じて他のオレフィンとを共重合する方法があげられる。当該チーグラー・ナッタ型触媒は、チタン含有固体状遷移金属成分と有機金属成分とから調製される触媒であり、チタン、マグネシウムおよびハロゲンを必須成分とする固体状遷移金属成分と、有機金属成分である有機アルミニウム化合物と、任意成分としての電子供与性化合物とから調製される触媒をあげることができる。重合方法としては、スラリー重合法、気相重合法、バルク重合法、溶液重合法があげられる。また、重合方法としては、これらを多段階に組合せた多段重合法であってもよい。成分(A)に用いられるプロピレン系共重合体に、市販の該当品を用いてもよい。
【0014】
成分(B)に用いられるプロピレン系共重合体のプロピレン単位の含有量は、当該共重合体中の単量体単位の総量を100重量%として、87重量%〜93重量%である。プロピレン単位の含有量は、透明性、耐屈曲性を高めるために、好ましくは91重量%以下であり、より好ましくは90重量%以下であり、更に好ましくは89.5重量%以下である。また、透明性、形状復元性を高めるために、プロピレン単位の含有量は、好ましくは87.5重量%以上であり、より好ましくは88重量%以上であり、更に好ましくは88.5重量%以上である。当該プロピレン単位の含有量は、13C−NMRスペクトルから求めることができる。
【0015】
成分(B)に用いられるプロピレン系共重合体のエチレン単位の含有量は、当該共重合体中の単量体単位の総量を100重量%として、7重量%〜13重量%である。エチレン単位の含有量は、透明性、耐屈曲性を高めるために、好ましくは8重量%以上であり、より好ましくは10重量%以上であり、更に好ましくは10.5重量%以上である。また、形状復元性を高めるために、エチレン単位の含有量は、好ましくは12.5重量%以下であり、より好ましくは12重量%以下であり、更に好ましくは11.5重量%以下である。当該エチレン単位の含有量は、13C−NMRスペクトルから求めることができる。
【0016】
成分(B)に用いられるプロピレン系共重合体のメルトマスフローレイトは、0.1g/10分〜50g/10分である。本発明の樹脂組成物の成形加工性を高めるために、当該メルトマスフローレイトは、好ましくは0.5g/10分〜40g/10分であり、より好ましくは1g/10分〜30g/10分である。当該メルトマスフローレイトは、JIS K7210(1999)に規定のA法に従って、条件M(試験温度230℃、公称荷重2.16kg)の試験条件で測定される。
【0017】
成分(B)に用いられるプロピレン系共重合体としては、示差走査熱量計により融解ピーク温度が観測され、最高融解ピーク温度が115℃以下である重合体が好ましい。当該最高融解ピーク温度は、透明性を高めるために、好ましくは115℃以下であり、より好ましくは113℃以下である。また、形状復元性を高めるために、最高融解ピーク温度が50℃以上である重合体が好ましい。ここで、最高融解ピーク温度とは、示差走査熱量計により測定される融解ピーク温度において、温度が最も高い融解ピーク温度を表す。
【0018】
成分(B)に用いられるプロピレン系共重合体として、好ましくは、プロピレン−エチレン共重合体である。成分(B)に用いられるプロピレン系共重合体の製造方法としては、チーグラー・ナッタ型触媒、メタロセン系触媒等の重合触媒を用いて、プロピレンとエチレンと、必要に応じて他のオレフィンとを共重合する方法があげられる。当該チーグラー・ナッタ型触媒は、チタン含有固体状遷移金属成分と有機金属成分とから調製される触媒であり、チタン、マグネシウムおよびハロゲンを必須成分とする固体状遷移金属成分と、有機金属成分である有機アルミニウム化合物と、任意成分としての電子供与性化合物とから調製される触媒をあげることができる。重合方法としては、スラリー重合法、気相重合法、バルク重合法、溶液重合法があげられる。また、重合方法としては、これらを多段階に組合せた多段重合法であってもよい。成分(B)に用いられるプロピレン系共重合体に、市販の該当品を用いてもよい。
【0019】
成分(B)に用いられるプロピレン系共重合体の分子量分布Mw/Mnは、透明性を高めるために好ましくは4以下であり、より好ましくは3.5以下である。また、好ましくは1以上であり、より好ましくは1.5以上である。ここで分子量分布は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)である。重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)にて、o−ジクロロベンゼンを溶媒として測定することができる。
【0020】
成分(C)に用いられるエチレン系共重合体は、エチレン単位を50重量%以上(エチレン系共重合体中の単量体単位の総量を100重量%とする。)含有する共重合体である。エチレン系共重合体としては、エチレンと炭素原子数が3〜20のα−オレフィンとの共重合体をあげることができる。当該α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン等があげられる。α−オレフィンは、好ましくは、炭素原子数4〜10のα−オレフィンであり、より好ましくは、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンであり、より好ましくは、1−ブテン、1−ヘキセンである。
【0021】
成分(C)に用いられるエチレン系共重合体の密度は、耐屈曲性を高めるために、890kg/m3以下である。また、好ましくは855kg/m3以上である。当該密度は、JIS K7112(1999)に規定のA法(水中置換法)に従って測定される。
【0022】
成分(C)に用いられるエチレン系共重合体のメルトマスフローレイトは、1g/10分〜20g/10分である。本発明の樹脂組成物の成形加工性を高めるために、当該メルトマスフローレイトは、好ましくは3g/10分〜15g/10分であり、より好ましくは5g/10分〜15g/10分である。当該メルトマスフローレイトは、JIS K7210(1999)に規定のA法に従って、条件D(試験温度190℃、公称荷重2.16kg)の試験条件で測定される。
【0023】
成分(C)に用いられるエチレン系共重合体の分子量分布は、耐屈曲性を高めるために、好ましくは4以下であり、より好ましくは3.5以下である。また、好ましくは1以上であり、より好ましくは1.5以上である。ここで分子量分布は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)である。重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)にて、o−ジクロロベンゼンを溶媒として測定することができる。
【0024】
成分(C)に用いられるエチレン系共重合体としては、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体があげられる。エチレン系共重合体は、好ましくは、エチレンと炭素原子数が4〜10のα−オレフィンとの共重合体であり、より好ましくは、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体であり、更に好ましくは、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体である。
【0025】
成分(C)に用いられるエチレン系共重合体の製造方法としては、チーグラー・ナッタ型触媒、メタロセン系触媒等の重合触媒を用いて、エチレンと炭素原子数が3以上のα−オレフィンとを共重合する方法があげられる。重合方法としては、スラリー重合法、バルク重合法、溶液重合法があげられる。また、成分(C)に用いられるエチレン系共重合体に、市販の該当品を用いてもよい。
【0026】
成分(D)は造核剤である。造核剤としては、ソルビトール系造核剤、無機系造核剤、有機カルボン酸塩系造核剤、リン酸系エステルナトリウム塩系造核剤が挙げられる。ソルビトール系造核剤としては、ジベンジリデンソルビトール、ビス(p−メチルジベンジリデン)ソルビトール、ビス(p−エチルジベンジリデン)ソルビトール等が挙げられる。無機系造核剤としては、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、アルミナ、シリカ、クレー等が挙げられる。有機カルボン酸塩系造核剤としては、酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、p-t−ブチル安息香酸ナトリウム、フタル酸水素ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、パルミチン酸ナトリウム等が挙げられる。リン酸系エステルナトリウム塩系造核剤としては、リン酸ビス(4−t−ブチルフェニル)ナトリウム、リン酸2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム、リン酸2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム等が挙げられる。これらの造核剤は、2種以上用いてもよい。
【0027】
本発明の樹脂組成物は、成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)を含有する樹脂組成物である。
【0028】
成分(A)、成分(B)及び成分(C)の総量を100重量%として、成分(A)の含有量が55重量%〜90重量%であり、成分(B)の含有量が8重量%〜40重量%であり、成分(C)の含有量が2重量%〜20重量%である。成分(A)の含有量は、形状復元性を高めるために、好ましくは60重量%以上であり、耐屈曲性を高めるために、好ましくは80重量%以下である。成分(B)の含有量は、透明性を高めるために、好ましくは15重量%以上であり、形状復元性を高めるために、好ましくは35重量%以下である。成分(C)の含有量は、耐屈曲性を高めるために、好ましくは5重量%以上であり、透明性を高めるために、好ましくは10重量%以下である。
【0029】
成分(D)の含有量は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の総量を100重量部として、0.01重量部〜0.5重量部であり、透明性を高めるために、好ましくは0.05重量部以上であり、より好ましくは0.07重量部以上である。また、好ましくは0.3重量部以下であり、より好ましくは0.2重量部以下である。
【0030】
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、耐候安定剤、顔料、加工性改良剤、金属石鹸等の添加剤を含有していてもよい。
【0031】
本発明の樹脂組成物の製造方法としては、成分(A)と成分(B)と成分(C)と成分(D)と、必要に応じて他の成分とを、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダー、ロール等の公知の溶融混練機で、190℃〜280℃の温度範囲で溶融混練する方法があげられる。また、溶融混練の前に、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)等を、ヘンシルミキサー、スーパーミキサーブレンダー等の混合機で予備混合してもよい。
【0032】
本発明の樹脂組成物は、公知の成形方法、例えば、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法により、種々の成形体に成形される。
【0033】
本発明の樹脂組成物は、透明性、形状復元性及び耐屈曲性に優れ、医療用成形体に好適に用いられる。医療用成形体としては、点滴筒、シリンジ、カテーテル・チューブ、輸液用バッグ、血液用バッグ、真空採血管、手術用不織布、血液用フィルター、人口臓器類(人工肺、人工肛門など)の部品、試験管、縫合糸、湿布基材、歯科用材料の部品、整形外科用材料の部品、コンタクトレンズのケース、PTP(press through package)の部材、薬剤用包装体、バイアル、目薬容器、薬液容器、キャップなどをあげることができる。
【0034】
本発明の樹脂組成物は、特に点滴筒の筒体本体に好適に用いられる。本発明の樹脂組成物を用いた点滴筒の筒体本体は、輸液の滴下速度の視認性(透明性)、ポンピング操作(点滴筒の筒状本体を指で摘んで圧迫し、次いでその圧迫を解除する操作)での圧迫解除時における筒状本体形状に迅速な形状回復性(形状復元性)およびポンピング操作による筒状本体の耐クレーズ発生性(耐屈曲性)において優れる。
【実施例】
【0035】
物性測定は、下記のとおりに行った。
1.メルトマスフローレイト(MFR)
JIS K7210(1999)に規定のA法に従って、重合体のメルトマスフローレイトを測定した。プロピレン系共重合体の試験条件は条件M(試験温度230℃、公称荷重2.16kg)、エチレン系共重合体の試験条件は条件D(試験温度190℃、公称荷重2.16kg)とした。
2.プロピレン系共重合体のエチレン単位含有量およびプロピレン単位含有量
本発明のプロピレン系重合体成分中のエチレン単位含有量(単位:重量%)は、下記の条件で測定した13C−NMRスペクトルから、Kakugoらの報告(Macromolecules 1982年,第15巻,第1150〜1152頁)に基づいて求めた。プロピレン−エチレン共重合体中のプロピレン単位の含有量の場合、エチレン単位含有量を求めてから、100−エチレン単位含有量を算出し、求めた。
<測定方法>
10mmΦの試験管中で約250mgの(プロピレン−エチレン)共重合体を2.5mlの混合溶媒(オルトジクロロベンゼン/重オルトクロロベンゼン=4/1(容積比))に均一に溶解させて試料を調整し、その試料の13C−NMRスペクトルを下記の条件下で測定した。測定は、Bruker社製AVANCE600を用いて行った。
測定温度:130℃
パルス繰り返し時間:4秒
パルス幅:45°
積算回数:2500回
3.密度(単位:kg/m3
JIS K7112(1999)に規定のA法(水中置換法)に従って、エチレン系重合体の密度を測定した。
4.融解ピーク温度
示差走査熱量計(セイコー電子工業(株)社製DSC220C:入力補償DSC)によって測定を行った。具体的には、状態調整として、試料重合体を室温から200℃まで30℃/分で昇温し、200℃で5分間保持した。次に、5℃/分で−50℃まで降温し、−50℃で5分間保持した後、−50℃から200℃まで5℃/分で昇温し、得られたDSC融解曲線において融解ピークの頂点の温度を融解ピーク温度とした。
5.分子量分布
ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した。測定装置としてはWaters社製150C/GPCを用い、測定溶媒としてはo−ジクロロベンゼンを用い、カラムとしては昭和電工(株)社製Shodex Packed ColumnA−80M(2本)を用い、分子量標準物質としては標準ポリスチレン(東ソー(株)社製、分子量68〜8,400,000)を用い、溶出温度140℃、溶出溶媒流速1.0ml/分の条件で、試料約5mgを5mlのo−ジクロロベンゼンに溶解したものを測定装置に400μl注入し、示差屈折検出器にてポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を測定し、両者の比である分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
【0036】
6.透明性(ヘーズ)
JIS K7105(1981)の規定に従って、厚み1mmのプレス成形シートのヘーズを測定した。ヘーズの値が小さいほど、透明性に優れる。
7.形状復元性(スティフネス)
形状復元性の指標としてJIS K7106に従い、スティフネスを測定した。スティフネスの値が大きいほど、形状復元性に優れる。
8.耐屈曲性
3.5cm×7cm×1mm厚のサンプルを直径12mmの円筒状とし、両端把持した状態で固定チャックに固定し、−30℃低温槽に1時間以上入れて状態調整した後、直線ヘッドストローク175mmとし、1回/秒の速さでゲルボテスター(理学工業(株)社製)により、400°の捻りを加え、同温下で1000回屈曲を加えた。常温に取り出した後、クラック有無を目視にて確認し、割れが認められなかったものを「○」、認められたものを「×」とした。
【0037】
試料
実施例および比較例では、次の試料を使用した。
プロピレン系共重合体
PP1−1:住友化学(株)製 ノーブレン(登録商標)RW140EG (プロピレン−エチレン共重合体、メルトマスフローレイト=6g/10分、プロピレン単位含量=96重量%、融解ピーク温度=142℃)
PP1−2:住友化学(株)製 ノーブレン(登録商標)RW150EG (プロピレン−エチレン共重合体、メルトマスフローレイト=8g/10分、プロピレン単位含量=95.4重量%、融解ピーク温度=138℃)
PP2:エクソンモービルコーポレーシヨン製 VISTAMAXX(登録商標)VM3020 (プロピレン−エチレン共重合体、メルトマスフローレイト=2g/10分、プロピレン単位含量=89重量%、エチレン単位含量=11重量%、融解ピーク温度=70℃、109℃、分子量分布=3.3)
PE1:住友化学(株)製 エクセレン(登録商標)FX408 (エチレン−1−ヘキセン共重合体、メルトマスフローレイト=8g/10分、密度=883kg/m3、分子量分布=3.3)
造核剤1:ADEKA(株)社製 アデカスタブ(登録商標)NA21 (リン酸系エステルナトリウム塩系造核剤)
【0038】
実施例1
成分(A)として70重量部のPP1−1、成分(B)として25重量部のPP2、成分(C)として5重量部のPE1、及び成分(D)として0.1重量部の造核剤1を、20mmφ二軸押出機によって、190℃で混練し、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物は、ここで、PP1−1とPP2とPE1との総量を100重量%として、PP−1の配合量は70重量%、PP2の配合量は25重量%、PE1の配合量は5重量%であり、PP−1、PP2、PE1の総量を100重量部として、造核剤1の配合量は0.1重量部である。
得られた樹脂組成物を230℃でプレス成形して、厚み1mmのプレス成形シートを製造した。当該プレス成形シートの評価結果を表1に示す。
【0039】
実施例2
PP1−1を68重量部、PP2を25重量部、PE1を7重量部とした以外は、実施例1と同様に行った。得られたプレス成形シートの評価結果を表1に示す。
【0040】
実施例3
PP1−1を65重量部、PP2を30重量部、PE1を5重量部とした以外は、実施例1と同様に行った。得られたプレス成形シートの評価結果を表1に示す。
【0041】
比較例1
PP1−1を70重量部、PP2を25重量部、PE1を5重量部とし、造核剤1を用いなかった以外は、実施例1と同様に行った。得られたプレス成形シートの評価結果を表1に示す。
【0042】
比較例2
成分(A)として100重量部のPP1−2及び成分(D)として0.1重量部の造核剤1を、20mmφ二軸押出機によって、190℃で混練し、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を230℃でプレス成形して、厚み1mmのプレス成形シートを製造した。当該プレス成形シートの評価結果を表1に示す。
【0043】
比較例3
成分(A)として90重量部のPP1−2、成分(B)として10重量部のPP2、及び成分(D)として0.1重量部の造核剤1を、20mmφ二軸押出機によって、190℃で混練し、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を230℃でプレス成形して、厚み1mmのプレス成形シートを製造した。当該プレス成形シートの評価結果を表1に示す。
【0044】
比較例4
成分(A)として50重量部のPP1−2、成分(B)として10重量部のPP2、成分(C)として40重量部のPE1、及び成分(D)として0.1重量部の造核剤1を、20mmφ二軸押出機によって、190℃で混練し、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を230℃でプレス成形して、厚み1mmのプレス成形シートを製造した。当該プレス成形シートの評価結果を表1に示す。
【0045】
比較例5
成分(A)として80重量部のPP1−2、成分(C)として20重量部のPE1及び成分(D)として0.1重量部の造核剤1を、20mmφ二軸押出機によって、190℃で混練し、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を230℃でプレス成形して、厚み1mmのプレス成形シートを製造した。当該プレス成形シートの評価結果を表1に示す。
【0046】
比較例6
成分(A)として20重量部のPP1−2、成分(B)として70重量部のPP2、成分(C)として10重量部のPE1、及び成分(D)として0.1重量部の造核剤1を、20mmφ二軸押出機によって、190℃で混練し、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を230℃でプレス成形して、厚み1mmのプレス成形シートを製造した。当該プレス成形シートの評価結果を表1に示す。
【0047】
比較例7
成分(A)として50重量部のPP1−2、成分(B)として40重量部のPP2、成分(C)として10重量部のPE1、及び成分(D)として0.1重量部の造核剤1を、20mmφ二軸押出機によって、190℃で混練し、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を230℃でプレス成形して、厚み1mmのプレス成形シートを製造した。当該プレス成形シートの評価結果を表1に示す。
【0048】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)を含有し、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の総量を100重量%として、成分(A)の含有量が55重量%〜90重量%であり、成分(B)の含有量が8重量%〜40重量%であり、成分(C)の含有量が2重量%〜20重量%であり、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の総量を100重量部として、成分(D)の含有量が0.01重量部〜0.5重量部であるオレフィン系樹脂組成物。
成分(A):下記要件(a−1)、(a−2)及び(a−3)を充足するプロピレン系共重合体
(a−1)プロピレン単位の含有量が94重量%〜99.5重量%であること。
(a−2)示差走査熱量計により120℃以上に融解ピーク温度が観測されること。
(a−3)温度230℃及び荷重2.16kgでのメルトマスフローレイトが3g/10分〜50g/10分であること。
成分(B):下記要件(b−1)、(b−2)及び(b−3)を充足するプロピレン系共重合体。
(b−1)プロピレン単位の含有量が87重量%〜93重量%であること。
(b−2)エチレン単位の含有量が7重量%〜13重量%であること。
(b−3)温度230℃及び荷重2.16kgでのメルトマスフローレイトが0.1g/10分〜50g/10分であること。
成分(C):下記要件(c−1)及び(c−2)を充足するエチレン系共重合体。
(c−1)密度が890kg/m3以下であること。
(c−2)温度190℃及び荷重2.16kgでのメルトマスフローレイトが1g/10分〜20g/10分であること。
成分(D):造核剤
【請求項2】
成分(C)がさらに下記要件(c−3)を充足するエチレン系共重合体である請求項1に記載のオレフィン系樹脂組成物。
(c−3)ゲルパーミエイションクロマトグラフィーで測定される分子量分布Mw/Mnが1以上4以下であること。
【請求項3】
成分(B)がさらに下記要件(b−4)を充足するプロピレン系共重合体である請求項1または2に記載のオレフィン系樹脂組成物。
(b−4)ゲルパーミエイションクロマトグラフィーで測定される分子量分布Mw/Mnが1以上4以下であること。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のオレフィン系樹脂組成物を用いた医療用成形体。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載のオレフィン系樹脂組成物を用いた点滴筒。

【公開番号】特開2013−82828(P2013−82828A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224684(P2011−224684)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】