説明

オレフィン系重合体組成物の製造方法

【課題】オレフィン系重合体中に無機フィラーを微細に分散させて剛性に優れた無機フィラー含有樹脂組成物の製造方法を提供すること。
【解決手段】非膨潤性の層状無機化合物を溶媒に分散させた後、オレフィン系重合体と混合することにより得られるものであるオレフィン系重合体組成物の製造方法、および混合時の溶媒と非膨潤性無機化合物の重量比が一定の範囲内であることにより得られるものであるオレフィン系重合体組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン系重合体組成物の製造方法に関し、更に詳しくは、非膨潤性の層状無機化合物を溶媒に含浸させた後オレフィン重合体で希釈したオレフィン重合体組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリプロピレン等のオレフィン系重合体に粘土鉱物等の層状無機化合物を添加することで、重合体の機械的物性を改良する方法が試みられている。例えば
有機化した層状珪酸塩を溶剤で膨潤分散させたものとポリオレフィン樹脂を溶融混練することで、層状珪酸塩をポリマー中に分散する方法(特許文献1)、有機化された層状無機化合物を有機溶媒で膨潤させ、それを樹脂組成物と混練する方法(特許文献2)などがあげられ、有機化された層状無機化合物を使うことが一般的である。
また、非有機化層状珪酸塩を樹脂中に分散させる方法として、ポリアミド酸の溶解液と、非有機化層状珪酸塩の水分散液とを混合する方法がある(特許文献3)。また、非有機化層状珪酸塩とビニルアルコール重合体との混合物へ水を導入し、混練する方法(特許文献4)も挙げられる。しかしいずれも、層状珪酸塩は膨潤性であることが望ましく、層状珪酸塩の層間に水などの溶媒が入り込むことで層間隔が広がり、層状珪酸塩が分散することを利用している。
【0003】
一方で、非膨潤性の層状無機化合物は樹脂中に高分散しづらいと考えられているため、これまで通常のマクロなフィラーとして用いられるタルクを除き、あまり使用されることはなかった。タルクは、一般的に樹脂の剛性を向上させるために用いられている。
【特許文献1】特開平9−183910
【特許文献2】特開平8−302062
【特許文献3】特開平9−208822
【特許文献4】特開平10−158412
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、層状無機化合物を有機化する工程はコストがかかり、工業的に困難である。また、非有機化層状珪酸塩を膨潤させる方法は、層状珪酸塩を膨潤させるために大量の溶媒を必要とするためコストがかかり、且つ処理後の溶媒を除く工程が必要となり非実用的である。また、オレフィン系重合体に対しては、オレフィン系重合体の重合に通常用いられる配位アニオン重合用触媒に対し、層状珪酸塩を膨潤させる水等が触媒毒となるため、オレフィン系重合体には実質上使用できない。タルクは、一般に良く用いられているが、樹脂中で微分散しないため、大量に用いる必要があり、組成物の密度が大きくなり、成形品の重量が重くなるという欠点がある。
【0005】
本発明は前記課題を解決するためになされたもので、オレフィン系重合体中に無機フィラーを微細に分散させて剛性に優れた無機フィラー含有樹脂組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、非膨潤性の層状無機化合物を溶媒に含浸させた後、オレフィン系重合体と混合することを特徴とするオレフィン系重合体組成物の製造方法を要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、層状無機化合物が樹脂中に高分散したオレフィン系重合体組成物を得ることができ、それにより、オレフィン系重合体の曲げ弾性率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下本発明を、実施するための最良の形態により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の形態に限定されるものではない。
1.非膨潤性の層状無機化合物
(1)非膨潤性の定義
層状無機化合物が膨潤性を有する場合は、水等の溶媒と共存した際に層間に溶媒分子を取り込んで膨張する。膨張の程度は其々の層状無機化合物で異なっており、溶媒分子が1層だけ取り込む場合もあれば、10層以上にわたって取り込む場合もある。これらとは対称的に、溶媒分子が層間に取り込まれず膨潤しないものは、非膨潤性層状化合物と呼ばれている。
【0009】
(2)層状無機化合物
層状無機化合物は特には限定されないが、通常層状珪酸塩を用いる。
層状珪酸塩は、珪素あるいはアルミニウムを4個の酸素が囲んだ四面体が、3つの頂点を隣接する四面体と共有することによって二次元的に広がった四面体シート、およびマグネシウム、アルミニウム等を6個の酸素ないしはOHが囲んだ八面体の二次元的な広がりから
なる八面体シートを主な構成要素とする化合物で、天然品としては雲母族である白雲母、黒雲母、イライト、セリサイト等、スメクタイト族のモンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト等、カオリン鉱物のカオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト等、またバーミキュライト、緑泥石鉱物(クロライト)のクリノクロア、シャモサイト、ニマイト、ペナンタイト、スドータイト、クッケアイト、ドンバサイト等、その他タルク、蛇紋石などが存在し、合成品としては合成雲母、合成ヘクトライト、合成サポナイト、合成テニオライト等が挙げられる。
【0010】
本発明において用いられる層状珪酸塩は、非膨潤性の層状珪酸塩が好ましく、具体的には白雲母、黒雲母、イライト、緑泥石、カオリナイトが特に好ましい。
(3)物性
層状珪酸塩は、一層の厚みが1nm程度、平均アスペクト比が20〜200程度の薄片
状結晶がイオン結合によって結合し層状構造をとっている。本発明におけるその粒子径はレーザー回折・散乱法による粒度分布測定装置によって測定した体積平均粒径がおよそ50μm以下である粒子が好ましく、10μm以下である粒子が更に好ましく、3μm以下である粒子が最も好ましい。
【0011】
2.溶媒
(1)溶媒として使用できるもの
溶媒は特に限定されず、非極性溶媒でも、極性溶媒でもよい。極性溶媒の中ではプロトン性極性溶媒でも非プロトン性極性溶媒でも良い。非極性溶媒としてはキシレン、シクロヘキセン、ベンゼン、ヘキサンなどが挙げられる。極性溶媒としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのプロトン性極性溶媒、ピリジン、アセトン、N,N―ジメチルホルムアミド、ア
セトニトリル、ジメチルスルホキシド、プロピレンカーボネートなどの非プロトン性極性溶媒などが挙げられる。これらの溶媒はそれぞれ単独に使用してもよく、混合して用いてもよい。
【0012】
(2)双極子モーメント
分子の正電荷と負電荷の中心が一致しない時に分子は双極子を持ち、電荷をq、電荷中
心間の距離をrとすると、両電荷中心を結ぶベクトル量 μ=qrが双極子モーメントと
して定義されている。溶媒分子の双極子モーメントの数値は具体的には例えば「新版溶剤ポケットブック」(有機合成化学協会編)に記載されている。
溶媒は、その溶媒分子の双極子モーメントが1.0以上であることが好ましく、1.5以上がより好ましい。また、3.5以下が好ましく、3.0以下がより好ましい。
【0013】
これらの双極子モーメントを有する溶媒としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、蟻酸、酢酸、アセトン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、エチルアセテート、ジエチルエーテル、ピリジンなどが挙げられ、特に水、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、ピリジンが好ましい。
(3)その他
なお、処理に用いる溶媒は、ポリオレフィン重合体組成物からある程度まで除去することが可能である。よって処理に用いる溶媒の沸点は溶融混練温度よりも低いことが好ましい。
【0014】
3.溶媒含浸処理方法
層状無機化合物に溶媒を含浸させる方法としては、過剰量の溶媒に分散させた後、過剰の溶媒を除去しても良く、また層状無機化合物に溶媒を必要量添加し、含浸させても良い。
【0015】
(1)分散条件
層状無機化合物を溶媒中に分散させる方法としては、溶媒/層状無機化合物の重量比が1/2以上であることが好ましく、1/1以上であることがより好ましい。また10/1以下であることが好ましく、2/1以下であることがより好ましい。
【0016】
層状無機化合物が溶媒と全体的になじむ量が最低量であり、それ以下の量だと十分に層状無機化合物が分散されず、また過剰量の溶媒を用いてもコスト面で不利になる。層状無機化合物を溶媒に混合する工程は、一回で混合しても複数回に分けて混合しても良い。また、混合する順序は層状無機化合物に溶媒を入れても、溶媒に層状無機化合物を入れてもどちらでも同じ効果が得られる。混合方法は、特に限定されないが、通常公知の混合攪拌装置、振動式撹拌機、リボンブレンダー等が用いられる。
【0017】
(2)溶媒除去
溶媒処理後の層状無機化合物分散液から溶媒を除去する方法としては、通常室温から100℃の温度範囲で、大気中で自然乾燥する方法、真空乾燥機、エバポレーターで溶媒を除去する方法などが挙げられるが、いずれの手法で溶媒を除去しても同様の効果が得られる。これら過剰な溶媒を除去した後、あるいは溶媒を層状無機化合物に添加した後、オレフィン系重合体と混練する前の層状無機化合物に含まれる溶媒量は、重量比で溶媒/層状無機化合物が1/10000以上であることが好ましく、3/10000以上であることが更に好ましい。また、溶媒/層状無機化合物が3/1000以下であることが好ましく、1/1000以下であることが更に好ましい。
【0018】
実際に層状無機化合物に含まれる溶媒量は、TPD−MSによって測定することが可能である。実際の測定は、溶媒中に層状無機化合物を分散させた後上記記載の方法で過剰な溶媒を除去し、昇温速度10℃/minで室温から600℃まで昇温した際に層状無機化合物から発生する溶媒量で規定することができる。
4.オレフィン系重合体
オレフィン系重合体は特に限定されず、その使用目的に応じ、適宜選択すればよい。
【0019】
(1)物性
オレフィン系重合体は、一般的には分子量が重量平均分子量で2,000以上であるのが好ましく、5,000以上であることがより好ましく、10,000以上であることが特に好ましい。また1,000,000以下であることが好ましく、800,000以下であることがより好ましく、600,000以下であることが特に好ましい。
【0020】
(2)種類
これらのオレフィン系重合体は、単独重合体でも共重合体でもよく、2種類以上の重合体の混合物でもよく、目的に応じて適宜選択すればよい。具体的には、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の炭素数2〜8程度のα−オレフィンの単独重合体、それらのα−オレフィンと、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−オクタデセン等の炭素数2〜18程度の他のα−オレフィン等との二元或いは三元の共重合体等、具体的には、例えば、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状高密度ポリエチレン等のエチレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−ヘプテン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体等のエチレン系樹脂、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体等のプロピレン系樹脂、1−ブテン単独重合体、1−ブテン−エチレン共重合体、1−ブテン−プロピレン共重合体等の1−ブテン系樹脂、及び4−メチル−1−ペンテン単独重合体、4−メチル−1−ペンテン−エチレン共重合体等の4−メチル−1−ペンテン系樹脂等の樹脂、並びに、エチレンと他のα−オレフィンとの共重合体、1−ブテンと他のα−オレフィンとの共重合体、及び更に、例えば1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、1,4−オクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ブチリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロペニル−2−ノルボルネン等の非共役ジエンとの二元或いは三元の共重合体等、具体的には、例えばエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ブテン−非共役ジエン共重合体等のオレフィン系ゴム等が挙げられ、これらのオレフィン系重合体は2種以上が併用されていてもよい。これらの中でも、エチレン単独重合体樹脂、プロピレン単独重合体樹脂が好ましく、プロピレン単独重合体樹脂が特に好ましい。
【0021】
(3)変性
オレフィン系重合体は変性していてもよく、また変性オレフィン系重合体と非変性オレフィン系重合体を混合しても良い。ここで変性オレフィン系重合体とは、官能基を有するオレフィン系重合体を意味し、官能基を有するオレフィン系重合体は、オレフィン系重合体の主鎖中に官能基を有するものであってもよいし、オレフィン系重合体の主鎖に側鎖として、直接に或いは2価の基を介して結合した官能基を有するものであってもよいが、オレフィン系重合体の主鎖に側鎖として2価の基を介して官能基を有するものが特に好ましい。ここで、変性オレフィン系重合体の前駆体としてのオレフィン系重合体としては、具体的には、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の炭素数2〜8程度のα−オレフィンの単独重合体、それらのα−オレフィンと、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−オクタデセン等の炭素数2〜18程度の他のα−オレフィン等との二元或いは三元の共重合体等、具体的には、例えば、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状高密度ポリエチレン等のエチレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン
−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−ヘプテン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体等のエチレン系樹脂、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体等のプロピレン系樹脂、1−ブテン単独重合体、1−ブテン−エチレン共重合体、1−ブテン−プロピレン共重合体等の1−ブテン系樹脂、及び4−メチル−1−ペンテン単独重合体、4−メチル−1−ペンテン−エチレン共重合体等の4−メチル−1−ペンテン系樹脂等の樹脂、並びに、エチレンと他のα−オレフィンとの共重合体、1−ブテンと他のα−オレフィンとの共重合体、及び更に、例えば1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、1,4−オクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ブチリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロペニル−2−ノルボルネン等の非共役ジエンとの二元或いは三元の共重合体等、具体的には、例えばエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ブテン−非共役ジエン共重合体等のオレフィン系ゴム等が挙げられ、これらのオレフィン系重合体は2種以上が併用されていてもよい。これらの中でも、エチレン単独重合体樹脂、プロピレン単独重合体樹脂が好ましく、プロピレン単独重合体樹脂が特に好ましい。
【0022】
又、変性オレフィン系重合体の官能基としては、アニオン又はカチオンを形成し得るか、分極性の基であることが好ましく、アニオン又はカチオンを形成し得る基が特に好ましい。アニオンを形成し得る基は、層状珪酸塩の層間のカチオンとの相互作用により、又、カチオンを形成し得る基は、層状珪酸塩の層アニオンとの相互作用により、層状珪酸塩の層間にインターカレートし易く、層状珪酸塩の層剥離を助長し得る。そのアニオンを形成し得る基としては、酸素原子含有基、硫黄原子含有基、燐原子含有基、ハロゲン原子含有基等が、又、そのカチオンを形成し得る基としては、窒素原子含有基等がそれぞれ挙げられる。
【0023】
それらの官能基として、具体的には、例えば、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、水酸基、エポキシ基、アミド基、アンモニウム基、ニトリル基、アミノ基、イミド基、イソシアネート基、アセチル基、チオール基、エーテル基、チオエーテル基、スルホン基、ホスホン基、ニトロ基、ウレタン基、ハロゲン原子等が挙げられ、これらの官能基は2種以上を有していてもよい。これらの中でカルボキシル基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、水酸基、アンモニウム基、アミノ基、イミド基、イソシアネート基が好ましく、アンモニウム基が更に好ましい。又、オレフィン系重合体の主鎖に側鎖として2価の基を介してこれらの官能基を有する場合における2価の基としては、特に限定されるものではないが、例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等の炭素数1〜20程度の直鎖状、分岐状、環状の脂肪族炭化水素基、フェニレン基、ナフチレン基等の芳香族炭化水素基、メチレンオキシ基、エチレンオキシ基、トリメチレンオキシ基、テトラメチレンオキシ基等アルキリデンオキシ基等が挙げられる。
【0024】
尚、その官能基の量としては、ポリオレフィン系重合体の一分子当たりの平均当量として、好ましくは0.1当量以上、より好ましくは0.2当量以上、特に好ましくは0.4当量以上であって、好ましくは10当量以下、より好ましくは5当量以下、特に好ましくは1当量以下である。官能基の量が前記範囲未満では、変性オレフィン系重合体が層状珪酸塩の層間に挿入し難い傾向となり、一方、前記範囲超過では、得られる変性オレフィン系重合体組成物をマスターバッチとしてオレフィン系重合体で希釈してオレフィン系重合体組成物として用いる際、非変性オレフィン系重合体と相溶しなくなる。
【0025】
又、前駆体としての前記オレフィン系重合体を、官能基を有する変性オレフィン系重合体とするには、α−オレフィンと、必要に応じて保護基で保護された官能基を有するエチレン性不飽和単量体とを共重合させた後、保護基を脱離させる方法、又は、オレフィン系重合体に、官能基を有するエチレン性不飽和単量体をグラフト反応させる方法、或いは官能基含有化合物を反応させる方法等の慣用のいずれの方法も採り得る。
さらに主鎖中に官能基を導入する方法としては、3官能性以上の多官能性モノマーをポリオレフィンとラジカル反応等で反応させ、多官能性モノマーにより2本のポリオレフィン分子鎖を結合することによって得られる。
【0026】
その中で、α一オレフィンと、官能基を有するエチレン性不飽和単量体とを共重合させる方法、及び、オレフィン系重合体に、官能基を有するエチレン性不飽和単量体をグラフト反応させる方法におけるエチレン性不飽和単量体としては、具体的には、例えば、官能基としてのカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体としては、(メタ)アクリル酸〔尚、ここで、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」又は/及び「メタクリル」を意味
するものとする。〕、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等が、又、カルボン酸無水物基を有するエチレン性不飽和単量体としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が、又、カルボン酸エステル基を有するエチレン性不飽和単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等が、又、水酸基を有するエチレン性不飽和単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシメチル−3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,2−ジヒドロキシメチルー3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が、又、エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体としては、グリシジル(メタ)アクリレート、プロピルグリシジルマレエート、ブチルグリシジルマレエート、プロピルグリシジルフマレート、ブチルグリシジルフマレート等が、又、アミド基を有するエチレン性不飽和単量体としては、(メタ)アクリルアミド等が、又、ニトリル基を有するエチレン性不飽和単量体としては、(メタ)アクリロニトリル等が、又、アミノ基を有するエチレン性不飽和単量体としては、アミノエチル(メタ)アクリレート等が、又、イミド基を有するエチレン性不飽和単量体としては、マレイン酸イミド等が、又、イソシアネート基を有するエチレン性不飽和単量体としては、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、ビニルイソシアネート、イソプロペニルイソシアネート等が、又、アセチル基を有するエチレン性不飽和単量体としては、酢酸ビニル等が、それぞれ挙げられる。
【0027】
又、官能基としてのアンモニウム基、チオール基、エーテル基、チオエーテル基、スルホン基、ホスホン基、ニトロ基、ウレタン基、ハロゲン原子等については、公知の方法で、オレフィン系重合体の主鎖に直接に付加して変性することができる。
尚、前記官能基を有するエチレン性不飽和単量体のグラフト反応は、例えば、ラジカル発生剤の存在下に、オレフィン系重合体の溶融状態で行う溶融グラフト法、及び、有機溶媒による溶液状態で行う溶液グラフト法等の慣用のいずれであってもよい。
【0028】
その際、用いられるラジカル発生剤としては、具体的には、例えばジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t
−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3,1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)
ベンゼン等のジアルキルパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−
ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン−3等のパーオキシエステル類、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ヒドロパーオキシ)ヘキサン等のヒドロパーオキサイド類、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類等の有機過酸化物類、又は、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(イソブチ
ルアミド)ジハライド、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル
)プロピオンアミド〕、アゾジ−t−ブタン等のアゾ化合物類等が挙げられ、これらのラジカル発生剤は2種以上が併用されてもよい。
【0029】
又、その溶融法においては、一軸又は二軸押出機等の混練機、横型二軸多円板装置等の横型二軸攪拌機、ダブルヘリカルリボン攪拌機等の縦型攪拌機等を用いて、前記オレフィン系重合体と、該オレフィン系重合体100重量部に対して、前記エチレン性不飽和単量体を通常0.005重量部以上、好ましくは0.1重量部以上、かつ20重量部以下、好ましくは10重量部以下と、前記ラジカル発生剤を通常0.001重量部以上、好ましくは0.01重量部以上、かつ、10重量部以下、好ましくは5重量部以下とを、通常100℃以上、300℃以下、好ましくは200℃程度の温度で前記オレフィン系重合体を溶融させて、通常0.5〜10分間程度の時間でグラフト反応を実施する。又、その溶液法においては、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族系溶媒に、前記オレフィン系重合体と、該オレフィン系重合体100重量部に対して、前記エチレン性不飽和単量体を通常0.1重量部以上、好ましくは3重量部以上、かつ100重量部以下、好ましくは350重量部以下と、前記ラジカル発生剤を通常0.5重量部以上、好ましくは1重量部以上、かつ50重量部以下、好ましくは30重量部以下を加え、通常80〜140℃程度の温度で前記オレフィン系重合体を溶解させて、通常2〜8時間程度の時間でグラフト反応を実施する。
【0030】
尚、本発明における官能基を有する変性オレフィン系重合体としては、変性オレフィン系重合体組成物として、層間にカチオン性無機化合物を含有する層状珪酸塩の層間において架橋を形成し、ひいては層間の劈開を妨げることを抑制するためには、変性オレフィン系重合体における前記官能基がオレフィン系重合体分子中に局在化して存在するのが好ましく、又、分子末端若しくは末端近傍に官能基を有するのが好ましく、分子末端の炭素原子から5個目の炭素原子までのいずれかの炭素原子に官能基を有するものであるのが特に好ましい。
【0031】
官能基を有するエチレン性不飽和単量体の前記グラフト反応において、用いるエチレン性不飽和単量体の量を低減化することにより、分子の両末端或いは片末端に官能基を有せしめたり、ラジカル発生剤を2種以上用いて2種以上の官能基を結合せしめたり、或いは、Macromolecules,2002,35,9352に記載の方法に従い、官能基を有するエチレン性不飽和単量体をオレフィン系重合体の末端に共重合させて、末端に官能基を有せしめる方法や、末端に水酸基を有するオレフィン系重合体を得る方法として、アイソタクチックポリプロピレンを空気中、143℃で8時間加熱して酸化させ、得られた酸化ポリプロピレンを窒素気流下で水素化ジイソブチルアルミニウムと共に80℃で8時間攪拌する方法や、ビニル基を有するオレフィン系重合体と、遷移金属化合物及び水素化棚素塩とを、配位性溶媒と炭化水素溶媒との混合溶媒中で混合する方法等も採り得る。
【0032】
尚、以上の変性オレフィン系重合体は、分子量が重量平均分子量で2,000以上が好ましく、5,000以上がより好ましく、10,000以上であることが特に好ましい。
また、1,000,000以下が好ましく、500,000以下が更に好ましく、200,000以下であることが特に好ましい。Mw/Mnは特に限定されないが、通常1以上、好ましくは2以上であって、通常20以下、好ましくは10以下、より好ましくは7以下である。アイソタクチックペンタッド分率は特に限定されないが、通常0.85以上、好ましくは0.9以上、より好ましくは0.95以上、更に好ましくは0.98以上であって、1.0以下、好ましくは0.995以下である。アイソタクチックペンタッド分率が高いほど、一般に成形体の剛性や耐熱性が向上する。
【0033】
前記溶媒処理した層状珪酸塩と、官能基を有する前記変性オレフィン系重合体とを含有する本発明の変性オレフィン系重合体組成物は、両者を必要に応じて用いられる添加剤等と共に、タンブラーブレンダー、リボンブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等により均一に混合した後、一軸又は二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、ブラベンダー等により溶融混練することにより調製される。その際の混練条件としては、好ましくは100℃程度以上、より好ましくは150℃程度以上、かつ300℃程度以下、より好ましくは250℃程度以下の温度で、好ましくは0.5〜30分程度の時間が採られる。または、層間にカチオン性無機化合物を含有する前記層状珪酸塩と、官能基を有する前記変性オレフィン系重合体を均一に粉体混合した後、単に静置で熱処理することによっても調製することができる。その際の熱処理条件としては、100℃程度以上、より好ましくは150℃程度以上、かつ300℃程度以下、より好ましくは250℃程度以下の温度で、好ましくは0.5〜180分程度の時間が採られる。
【0034】
又、変性オレフィン系重合体組成物における両者の含有割合は、両者の合計量に対して、前記層状珪酸塩の割合の下限が5重量%であることが好ましく、10重量%であることが更に好ましく、15重量%であることが特に好ましい。また、前記層状珪酸塩の割合の上限が95重量%であることが好ましく、85重量%であることが更に好ましく、75重量%であることが特に好ましい。一方、前記変性オレフィン系重合体の割合の下限が5重量%であることが好ましく、15重量%であることが更に好ましく、25重量%であることが特に好ましい。また、前記層状珪酸塩の割合の上限が95重量%であることが好ましく、90重量%であることが更に好ましく、85重量%であることが特に好ましい。前記層状珪酸塩の含有割合が前記範囲未満で前記変性オレフィン系重合体が前記範囲超過では、マスターバッチとしての機能を失うこととなり、一方、前記層状珪酸塩が前記範囲超過で前記変性オレフィン系重合体が前記範囲未満では、変性オレフィン系重合体中に層状珪酸塩が均質且つ微細に層剥離した状態で分散しづらくなる傾向となる。
【0035】
本発明の変性オレフィン系重合体組成物は、これをそのまま成形材料として用いることもできるが、この変性オレフィン系重合体組成物をマスターバッチとして、官能基を有さないオレフィン系重合体で希釈してオレフィン系重合体組成物となし、それを成形材料として用いるのが好ましい。
そのオレフィン系重合体としては、前記変性オレフィン系重合体の前駆体として挙げたオレフィン系重合体と同様のものが挙げられるが、ここでのオレフィン系重合体としては、分子量が重量平均分子量で2,000以上であることが好ましく、5,000以上であることがより好ましく、10,000以上であることが特に好ましい。また1,000,000以下であることが好ましく、800,000以下であることがより好ましく、600,000以下であることが特に好ましい。
【0036】
又、前記変性オレフィン系重合体組成物とオレフィン系重合体との配合割合としては、得られるオレフィン系重合体組成物の全量に対する層状珪酸塩の含有割合が0.5重量%以上となることが好ましく、1重量%以上となることがより好ましく、2重量%以上となることが特に好ましい。また、50重量%以下となることが好ましく、45重量%の範囲となることがよりに好ましく、40重量%以下となるようにするのが特に好ましい。層状
珪酸塩の含有割合が前記範囲未満では、オレフィン系重合体組成物として層状珪酸塩配合による諸物性の改善という所期の目的を十分に発現し得ない傾向となり、一方、前記範囲超過では、オレフィン系重合体組成物としての成形加工性が悪化し、脆くなる傾向となる
(4)組成
尚、本発明のオレフィン系重合体組成物には、必要に応じて、通常用いられる各種の添加剤、例えば酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、造核剤、中和剤、滑剤、ブロッキング防止剤、分散剤、流動性改良剤、離型剤、難燃剤、発泡剤、着色剤、前記層状珪酸塩以外の充填材等が添加されていてもよい。
【0037】
5.溶媒を含浸させた層状無機化合物とオレフィン系重合体との混合
(1)混合割合
溶媒を含浸させた層状無機化合物とオレフィン系重合体との混合割合は、層状珪酸塩/オレフィン系重合体が、重量比で0.5/99.5以上であることが好ましく、1/99以上であることがより好ましい。また、50/50以下であることが好ましく、40/60以下であることがより好ましい。層状無機化合物が少なすぎてはフィラーとしての剛性向上効果が小さく、逆に多すぎると成形性・衝撃強度の低下等の問題が生じる。
【0038】
(2)混合方法
混合回数は、一回で混合しても数回に分けて分散しても良い。また、混合する順番は溶媒を含浸させた層状無機化合物にオレフィン系重合体を入れても、重合体に溶媒を含浸させた層状無機化合物を入れてもどちらでも良い。
層状無機化合物とオレフィン系重合体との混合には、溶融混練が最適である。混練は具体的に単軸または多軸の押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、ロール、ブラベンダー等を使用することにより可能である。混練条件としては、回転数は5-300rpmが好ましく、100−300rpmがより好ましい。混練温度は、好
ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上でかつ300℃以下、より好ましくは250℃以下である。処理時間は0.5−60分程度が好ましい。
【0039】
6.オレフィン系重合体組成物
(1)組成
前記オレフィン系重合体組成物は、得られるオレフィン系重合体組成物の全量に対する層状珪酸塩の含有割合が0.5重量%以上となることが好ましく、1重量%以上となることがより好ましく、2重量%以上となることが特に好ましい。また、50重量%以下となることが好ましく、45重量%の範囲となることがよりに好ましく、40重量%以下となるようにするのが特に好ましい。層状珪酸塩の含有割合が前記範囲未満では、オレフィン系重合体組成物として層状珪酸塩配合による諸物性の改善という所期の目的を十分に発現し得ない傾向となり、一方、前記範囲超過では、オレフィン系重合体組成物としての成形加工性が悪化し、脆くなる傾向となる。
【0040】
(2)物性(作用効果)
また、前記オレフィン系重合体組成物は、層状無機化合物に予め溶媒含浸処理を施すことでオレフィン系重合体内での分散性が良くなり、その結果曲げ弾性率が層状無機化合物を混合する前のオレフィン系重合体に対して1.4倍以上向上した。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1〜6
クロライト(入来カオリン社製「C−1」)2gに、表1に記載の各溶媒を重量比で2.5倍加えてスパチュラで攪拌混合し、クロライトを溶媒に分散させた後100℃(ジメ
チルスルホキシド使用時は120℃)で1時間真空乾燥して溶媒を除去した。実施例2で、エタノール処理後真空乾燥したクロライト中に含まれる溶媒量をTPD−MSにより測定したところ、エタノール/クロライトの重量比は6/10000であった。溶媒処理後のクロライトと、プロピレン単独重合体(日本ポリプロ社製「MA1B」)38g、酸化防止剤としてテトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン (チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「I
rganox1010」)0.02g、ジ−t−ブチルフェニルフォスファイト (チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「Irgafos168」)0.02g、及びハイドロ
タルサイト(協和化学工業社製「DHT−4A」)0.012gをそれぞれ混合した後、ラボプラストミル(東洋精機社製)により、160℃、150rpmで4分間溶融混練し、オレフィン系重合体組成物を得た。
【0042】
上記オレフィン系重合体組成物を、溶融プレスにより230℃で5分予熱した後、9.8MPaの圧力で更に5分加圧することにより成形片を作製し、曲げ試験による弾性率(FM)を測定した。成形及び測定は、JIS K7171に準拠し、長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの試験片を作製し、23℃、50%RHの環境下、支点間距離64mmとした3点曲げ試験により測定した。結果を表1に示した。
【0043】
比較例1
層状珪酸塩を含まないプロピレン単独重合体の曲げ弾性率を、実施例1と同様に測定した。弾性率1900MPaであった。
比較例2
溶媒処理工程を含まないクロライトを使用し、実施例1と同様に曲げ弾性率を測定した。弾性率は2390MPaであった。
【0044】
【表1】

【0045】
実施例7〜9
以下の表2に記載の溶媒(双極子モーメントが1.0−3.5の範囲外)を用い、実施例1と同様の方法でオレフィン系重合体を製造した。曲げ弾性率を以下の表に示した。
【0046】
【表2】

【0047】
比較例3
膨潤性の層状無機化合物であるモンモリロナイトで、分散処理の有無を対比した。
層状無機化合物としてモンモリロナイト(クニミネ工業社製「クニピアF」)と以下の表に示す溶媒を用いて、実施例1と同様の方法により、オレフィン系重合体組成物を製造し、剛性を評価した。結果を表3に示した。
【0048】
【表3】

【0049】
クロライトに見られるような溶媒処理による剛性向上効果はモンモリロナイトには見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明で得られるオレフィン系重合体組成物は、オレフィン系重合体中での層状無機化合物の分散性が向上していることから、剛性等の機械的性質、耐熱性、透明性等に優れており、物性の改善という所期の目的を十分に発現し得た成形材料として利用することができる。具体的には、一般的に用いられる成形法、慣用の圧縮成形法、射出成形法、中空成形、押出成形、シート成形法等の一次成形法、熱成形法、発泡成形法等の二次成形等に付すことができる。また、バンパー等の自動車用部品、家電部品、家庭日用品、食品等の包装用資材、建築資材、土木資材、水産資材、その他一般工業資材等に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非膨潤性の層状無機化合物を溶媒に含浸させた後、オレフィン系重合体と混合することを特徴とするオレフィン系重合体組成物の製造方法。
【請求項2】
オレフィン系重合体と混合する溶媒を含浸させた層状無機化合物の、溶媒/層状無機化合物の重量比が1/10000以上、2/1以下であることを特徴とする、請求項1に記載のオレフィン系重合体組成物。
【請求項3】
オレフィン系重合体と混合する溶媒を含浸させた層状無機化合物の、溶媒/層状無機化合物の重量比が1/10000以上、3/1000以下であることを特徴とする、請求項1に記載のオレフィン系重合組成物。
【請求項4】
層状無機化合物が層状珪酸塩である請求項1または3に記載のオレフィン系重合体組成物の製造方法。
【請求項5】
溶媒が、双極子モーメント1.0以上3.5以下の溶媒である請求項1ないし4に記載のオレフィン重合体組成物の製造方法。
【請求項6】
オレフィン系重合体がプロピレン系重合体である請求項1ないし5に記載のオレフィン重合体組成物の製造方法。

【公開番号】特開2008−81605(P2008−81605A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−263464(P2006−263464)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】