オンチップ温度制御型液体クロマトグラフィー方法およびデバイス
液体クロマトグラフィー装置が、基板上に液体クロマトグラフィー分離カラムを含み、分離カラムは、基板上のヒータに結合される。チップベース温度制御型液体クロマトグラフィーデバイスが、基板、熱的分離ゾーン、および熱的分離ゾーンによって基板から熱的に分離された分離カラムを含む。冷却素子を含むチップベース液体クロマトグラフィー装置が提供される。温度勾配液体クロマトグラフィーシステムが、チップベース温度制御型液体クロマトグラフィーデバイス、流体カップリング、および電気インタフェースを含む。また、チップベース温度勾配液体クロマトグラフィーデバイスの製造方法および使用方法が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、「On-Chip Temperature Controlled Liquid Chromatography Methods and Devices」という発明の名称の、2004年2月17日に出願された米国仮特許出願第60/545,727号(CalTech Ref.No.:CIT-4046P)の優先権を主張し、同出願は、その全体を参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
政府支援の記述
本発明は、ある局面において、ニューロモルフィック・システムズ・エンジニアリングセンター(CNSE:Center for Neuromorphic Systems Engineering)のNSF契約番号第EEC-9402726号に従って一部資金提供を受けており、連邦政府は、本発明に対して一定の権利を有し得ることを本明細書に表示する。
【背景技術】
【0003】
背景
液体クトマトグラフィー(LC:liquid chromatography)は、分子分離に強力な分析ツールである。温度変動は、液体クロマトグラフィーにおいて重要なパラメータとなり得る(例えば、T.Greibrokk,T.Andersen,Journal of Separation Science,24,899-909,2001;T.Greibrokk,Analytical Chemistry,74(13),374A-378A,2002(非特許文献1)参照)。温度は、保持因子、検体溶解性、拡散性、および移動相粘性など、LCのいくつかの物理パラメータに影響を及ぼし得る。しかしながら、従来のクロマトグラフィーカラムの大きなサイズに関連する半径方向の温度勾配により、温度制御は、速度が遅く、実施するのが難しい。
【0004】
クロマトグラフィーカラムの小型化に向けた最近の傾向により、温度制御の研究が盛んになった(V.R.Meyer,「Practical High-Performance Liquid Chromatography」,John Wiley&Sons,1999,310-311(非特許文献2))。例えば、温度制御型の分離カラムが、ガスクロマトグラフィー用に微細加工された(2003年12月23日に発行されたManginellらの米国特許第6,666,907号(特許文献1)、2003年12月16日に発行されたKottenstetteらの同第6,663,697号(特許文献2)、2005年1月4日に発行されたWiseらの同第6,838,640号(特許文献3))。しかしながら、液体クロマトグラフィー用のオンチップ温度制御型システムを開発することが強く望まれている。LCは、高圧の点からより深刻な工学的問題をもたらす。さらに、特に、シリコンの高熱伝導性の点から、チップ上の温度勾配の発生および制御が問題となり、良好な加熱冷却システムを含む良好な熱管理システムが必要とされている。また、連続処理ステップを用いて共通の基板上にデバイスコンポーネントが作製された良好な集積回路システムが必要とされている。
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,666,907号
【特許文献2】米国特許第6,663,697号
【特許文献3】米国特許第6,838,640号
【非特許文献1】T.Greibrokk,T.Andersen,Journal of Separation Science,24,899-909,2001;T.Greibrokk,Analytical Chemistry,74(13),374A-378A,2002
【特許文献2】V.R.Meyer,「Practical High-Performance Liquid Chromatography」,John Wiley&Sons,1999,310-311
【発明の開示】
【0006】
概要
本発明は、様々な態様において、一般に、クロマトグラフィーに関し、特に、高圧クロマトグラフィーおよび液体クロマトグラフィーに関する。オンチップ温度制御型液体クロマトグラフィーシステム、このシステムの製造方法、このシステムの使用方法が提供される。
【0007】
本発明の1つの態様は、基板上に液体クロマトグラフィー分離カラムを含み、このカラムが基板上のヒータに結合された、液体クロマトグラフィー装置である。ヒータは、分離中、カラム温度を制御できる。ヒータに適用する電流は変更でき、それに応じて、カラム温度を変更できる。液体クロマトグラフィーに適したカラムの耐圧強度は、例えば、0〜約1,000psi、または0〜約5,000psiであり得る。カラムは、少なくとも第1および第2のポリマー材料層を互いに接して含み得るもので、第1の層は、第2の層を通り抜ける。カラムは、基板に固定されたポリマー層を含み得る。これらの工学的設計により、耐圧強度を高め、強度を増すことができる。
【0008】
本発明の別の態様は、基板と、熱的分離ゾーンと、熱的分離ゾーンによって基板から熱的に分離された分離カラムとを含むチップベース温度制御型液体クロマトグラフィーデバイスである。1つの態様において、熱的分離された分離カラムは、シリコンアイランド上にあり、シリコンアイランドは、熱伝導率が低い構造体によって支持される。熱的分離ゾーンにより、電力消費量を低減でき、デバイスが複数の温度ゾーンを有することができるようになる。
【0009】
本発明の別の態様は、動作中にフィードバック制御を与える温度センサを含む、チップベース液体クロマトグラフィーデバイスである。1つの特定の態様において、ヒータが温度センサとして使え、ヒータに電流を流し、電圧降下をモニタリングすることによって、温度を決定することができる。別の態様において、温度センサは、チップ上に集積され、フィードバック制御を与えるようにカラムに結合され得る。
【0010】
本発明の別の態様は、基板上の液体クロマトグラフィー分離カラムと、例えば、温度制御用の電熱冷却素子などの冷却素子とを含むチップベースの液体クロマトグラフィー装置である。冷却素子は、基板上のペルチェ(Peltier)素子であってもよく、冷却できるようにカラムに結合され得る。または、冷却素子は、チップに熱的に結合されたオフチップペルチェ素子である。
【0011】
また、本発明により、チップベース温度勾配液体クロマトグラフィーデバイスの製造方法が提供される。この方法は、基板上にポリマー材料を堆積しパターニングすることによって、液体クロマトグラフィー分離カラムを形成することと、金属層を堆積しパターニングすることによって、ヒータを形成することとを伴う。異なる需要に見合う異なる工学的構造を表す2つのタイプの製造プロセスフロー、いわゆる、本明細書ではバージョンIおよびバージョンIIを開示する。
【0012】
本発明の別の態様は、チップベース温度制御型液体クロマトグラフィーデバイスと、デバイスの流体カップリングと、電気的インタフェースとを含む、液体クロマトグラフィー装置である。
【0013】
最後に、本発明により、電力入力を調節することによって温度を制御することを含む、チップベース温度制御型LC分離デバイスの使用方法が提供される。温度を制御することで、液体クロマトグラフィー分離が最適化される。いくつかの態様において、温度を制御することは、分離用の空間的または時間的温度勾配を使用することを含む。
【0014】
本発明の利点は、液体クロマトグラフィー分離におけるより良好で高性能な熱管理を含む。
【0015】
発明を実施するための最良の形態
本発明により、オンチップ温度制御型液体クロマトグラフィー、その製造方法、およびその使用方法に関する種々の態様が提供される。
【0016】
「On-Chip Temperature Controlled Liquid Chromatography Methods and Devices」という発明の名称の、2004年2月17日に出願された、本願の優先出願である米国仮特許出願第60/545,727号(CalTech Ref.No.:CIT-4046P)は、参照により、図面を含む本明細書に組み入れられる。
【0017】
以下の関連特許出願は、本発明を理解し実施するのに有益であり得る。
(i)2004年8月11日に出願された、Taiらによる「IC-processed Polymer Nano-liquid Chromatography System」という発明の名称の米国特許出願第10/917,257号(CIT-3936)であり、同出願は、2003年8月20日に出願された米国仮特許出願第60/496,964号の優先権を主張し、同出願はその全体を参照により本明細書に組み入れられる。
(ii)2003年3月18日に出願された、Taiらによる「A Method for Integrating Micro-and Nanoparticles Into MEMS and Apparatus Including the Same」という発明の名称の米国特許出願第10/391,122号(CIT-3619)であり、同出願は、2002年3月19日に出願された米国仮特許出願第60/366,019号の優先権を主張し、同出願はその全体を参照により本明細書に組み入れられる。
(iii)2004年7月9日に出願された、Taiらによる「Integrated LC-ESI on a Chip」という発明の名称の米国仮特許出願第60/586,576号(CIT-4151P)であり、同出願はその全体を参照により本明細書に組み入れられる。
(iv)2004年7月28日に出願された、Taiらによる「Modular Microfluidic Packaging System」という発明の名称の米国仮特許出願第60/592,588号(CIT-4166P)であり、同出願はその全体を参照により本明細書に組み入れられる。
【0018】
また、以下の技術文献も、本発明を理解し実施するのに有益であり得る。(i)Shih et al.「On-Chip Temperature Gradient Liquid Chromatography」,IEEE MEMS 2005,Miami pp.782-785、同文献はその全体を参照により本明細書に組み入れられる。(ii)He et al.「Ion Liquid Chromatography On-A-Chip with Beads-Packed Parylene Column」,IEEE MEMS 2004,Maastricht,The Netherlands,pp.212-215、同文献はその全体を参照により本明細書に組み入れられる。
【0019】
本発明を実施する際に使用するさらなる背景は、以下に見受けられる。例えば、(i)Panagiotopoulos et al.,J.of Chromatography,vol.920,2001,pp.13-22;(ii)Andersen et al.,J.of Separation Science,vol.26,2003,pp.1133-1140;(iii)Lee et al.,Polymer,vol.40,1999,pp.7227-7231;(iv)Chang et al.,American Laboratory,vol.34,2002,pp.39;(v)Molander et al.,The Analyst,vol.128,2003,pp.1341-1345、これらの文献はその全体を参照により本明細書に組み入れられる;(vi)Madou,Fundamentals of Microfabrication,The Science of Miniaturization,2nd Ed.,CRC Press,2002、マイクロマシンおよびマイクロ流体に関する記述を含む;(vii)Kovacs,Micromachined Transducers SourceBook,McGraw Hill,1998、マイクロマシンおよびマイクロ流体に関する記述を含む;および(viii)Koch,Evans,Brunnschweiler,Microfluidic Technology and Applications,Research Studies Press,2000,クロマトグラフィーに関する記述を含む。
【0020】
ヒータ
1つの態様において、本発明により、ヒータに結合されるか、またはヒータと一体化された基板上の分離カラムが提供される。(図1)ヒータは、分離中、カラム温度を制御し得る。ヒータに適用される電流が変化すると、カラム温度は、それに応じて変化する。電流は、オフチップ電子機器またはオンチップ集積回路によって供給され得る。分離カラムは、流体アクセスを与えるために、入口および出口を有する。少なくとも1つまたは複数の検出器が、基板上に一体化され得る。正確な温度プログラミングは、このデバイスによって達成され得る。
【0021】
好ましい態様において、カラムには、逆相HPLC用のC18コーティングされた溶融シリカビーズなど、分離ベッドとしてビーズが詰められる。例えば、2003年3月18日に出願され、「A Method for Integrating Micro- and Nanoparticles Into MEMS and Apparatus Including the Same」という発明の名称の、Taiらによる米国特許出願第10/391,122号(CIT-3619)であり、2002年3月19日に出願された米国仮特許出願第60/366,019号の優先権を主張する同特許出願に、微細加工された構造体に粒子を詰めることについて記載されており、これらの出願はその全体を参照により本明細書に組み入れられる。別の好ましい態様において、カラムは、構造材料として、例えば、パリレンまたはポリイミドなどのポリマーを使用したマイクロマシン処理によって形成され得る。
【0022】
基板は、例えば、シリコンまたはガラスであり得る。
【0023】
ヒータは、多数の異なる材料を含み得る。好ましい態様において、ヒータは、例えば、金属またはポリシリコンである。ヒータは、熱伝達が効率的であり十分であるように、カラムと接触させても、近接させてもよい。
【0024】
さらに、ヒータを有するオンチップLCデバイスが、多大な耐圧強度を達成し得る。例えば、このようなデバイス上のカラム内圧が、最大5,000psiに達成し得る。本明細書に記載する例において、デバイスは、少なくとも600psiのカラム内圧に耐性可能である(いわゆる、耐圧強度)。
【0025】
熱的分離
本発明の別の態様は、基板と、熱的分離ゾーンまたはキャビティと、熱的分離ゾーンまたはキャビティによって基板から熱的に分離された分離カラムとを含む、チップベース制御型液体クロマトグラフィーデバイスである。「熱的分離ゾーン」および「熱的分離キャビティ」という用語は、本出願において互いに交換可能に使用される。熱的分離ゾーンは、他のデバイスコンポーネントと一体化され得る。熱的分離ゾーンにより、電力消費量を低減でき、高速かつ正確に温度調節できるようになる。図2および図3は、空気が充填された熱的分離キャビティによって基板から熱的に分離され、バルクまたは表面マイクロマシン処理によって作り出されたカラムの主要部分をそれぞれ示す。または、熱的分離キャビティには、オイルや適切なポリマーなどの低熱伝導率(例えば、1W/(m・K未満))の媒体が充填され得る。例えば、Shackelford,Introduction to Materials Science for Engineers,4th Ed.,pages 327-328に、材料の熱伝導率が記載されている。熱的分離キャビティの表面マイクロマシン処理が、BrF3またはXeF2気相エッチングによって実行され得る。熱的分離キャビティのバルクマイクロマシン処理は、DRIEまたはKOHエッチングによって達成され得る。熱的分離キャビティはまた、表面およびバルクマイクロマシン処理の組み合わせによって形成され得る。
【0026】
本発明の別の態様において(図4)、カラムは、シリコンアイランド上にあり、アイランドは、パリレンなどの低熱伝導率(1W/(m・K未満))の構造体によって支持される。構造体は、ビームや膜であり得る。図9は、150μm幅のスルーウェハエアギャップによって取り囲まれたシリコンアイランドを示す。
【0027】
熱的分離キャビティにより、デバイス上に複数の温度ゾーンが得られる。例えば、カラムは、第1の温度であり得、検出器は、第2の温度であり得、熱的分離キャビティは、温度を異なる状態に保ち得る。流体経路および電気経路は、熱的分離ゾーンを交差し、他のゾーンに到達し得る。
【0028】
温度センサ
さらなる別の態様において、本発明は、動作中にフィードバック制御を与える温度センサを含むチップベース温度制御型液体クロマトグラフィーデバイスである。例えば、その全体を参照により本明細書に組み入れられた、Taiらの「Microelectromechanical System Sensor Assembly」という発明の名称の米国特許第6,526,823号を参照されたい。また、同様に参照により本明細書に組み入れられた、2004年9月30日に公開され、「Integrated Surface-Machined Micro Flow Controller Method and Apparatus」という発明の名称の、Taiらの米国特許出願公開第2004/0188648号を参照されたい。センサは、例えば、電気化学センサであり得る。1つの態様において、ヒータは、温度センサとしても使える。ヒータの温度は、ヒータに電流を流し、電圧降下をモニタリングすることによって決定され得る。この情報に基づいて、適用電流は、所望の温度プロファイルに応じて調節され得る。システムは、所与の温度勾配プロファイルおよび所与の流速に適した電流プロファイルを見い出すように較正され得る。例えば、E.MengおよびY.C.Tai,Technical Digest,The 12th International Conference on Solid-State Sensors,Actuators and Microsystems Transducers 2003、Boston,USA,pp.686-689に、温度センサとしてのオンチップヒータの使用が記載されており、同文献はその全体を参照により本明細書に組み入れられる。別の態様において、温度センサは、チップ上に一体化され、フィードバック制御を与えるようにカラムに結合され得る。
【0029】
冷却
本発明の別の態様は、冷却素子を含むチップベース液体クロマトグラフィー装置である。冷却素子の一例は、熱電素子である。冷却素子は、基板および他のデバイスコンポーネントに一体化され得る。冷却素子は、基板上のペルチェ素子であってもよく、冷却できるようにカラムに結合され得る。または、冷却素子は、チップに熱的に結合されたオフチップペルチェ素子であり得る。
【0030】
バージョンIおよびバージョンIIデバイス;製造方法
また、本発明により、オンチップ温度勾配液体クロマトグラフィーデバイスの製造方法が提供される。例えば、基板上にポリマー材料を堆積しパターニングすることによって、分離カラムが形成され得、カラム上に金属層を堆積しパターニングすることによって、ヒータが形成され得る。2つの一般的なタイプのデバイス、すなわち、バージョンIおよびIIについてさらに詳細に記載するが、本発明は、これらの2つのバージョンに限定されるわけではない。異なるタイプのデバイスは、異なる分離基準を満たすために作製され得る。例えば、耐圧強度の重要なパラメータを制御できる。
【0031】
2つの詳細なプロセスフローが提供される(図5および図8)。図5に示した第1のプロセスフロー(バージョンIデバイスプロセスフローとも呼ばれる)において、基板上に酸化物が成長され、基板の正面上の酸化物は、パターニングされ得る。次いで、基板上に金属層が堆積され、パターニングされ得る。金属層組成の選択は、特に限定されるわけではない。例えば、金属層は、例えば、Al、Cr、Ti、Au、Pt、またはこれらの組み合わせであり得る。次に、ウェハの背面上の酸化物は、パターニングされ得、ウェハの背面上に深堀り反応性エッチングが実行され得る。
【0032】
次いで、ウェハの正面に、ポリマー材料層が堆積され、パターニングされ得る。好ましい態様において、ポリマー材料は、パリレンであり得る。次いで、ウェハの正面に、犠牲層が堆積され、パターニングされ得る。フォトレジストが、犠牲層の1つの例である。次に、ウェハの正面に、深堀り反応性イオンエッチングが実行され得る。
【0033】
次いで、ウェハの正面に、第2のポリマー材料層、好ましくは、パリレンが堆積され、パターニングされ得る。貫通孔を開口するために、ウェハの背面に、深堀り反応性イオンエッチングが実行され得る。好ましくは、XeF2を使用して、正面エッチが実行され得る。
【0034】
最後に、第3のポリマー材料層、好ましくは、パリレンが堆積され得る。ダイシング後、流体チャネル内の犠牲層が除去され得、ポリマー材料は、シャドーマスクを用いてパターニングされ得る。
【0035】
大きな耐圧強度を達成するために、いくつかのカラム構造体を使用できる。図6に示すように、第2のパリレン層は、第1のパリレン層を通り抜け、高圧下で第1/第2のパリレンインタフェースを液体が貫通することを回避し得る。このデザインの耐圧強度は、例えば、最大180psiまでに達し得る。流入する液体は、規則的な線形フロー速度(〜1mm/sec)で500μmカラム長さ内で平衡温度まで加熱され得る。
【0036】
図7は、この方法により作製されたデバイスを示す。左側の入口は、5μmシリカビーズを詰めた後のカラムを示し、中央の入口は、内蔵ヒータおよびカラム支持体を有する自立カラムを示し、右側の入口は、一体化された電気化学センサである。
【0037】
図8に、第2のプロセスフロー(バージョンIIデバイスプロセスフローとも呼ぶ)を示す。一体化された電気化学センサおよび分布ヒータを有するシリコン基板に対して下方に、ポリマーカラムが固定され得る。
【0038】
第1に、基板上で酸化物が成長され、次いで、ウェハの正面上でリフトオフプロセスによって、金属膜が堆積されパターニングされ得る。次に、正面の酸化物がパターニングされ、次いで、ウェハの背面上の酸化物がパターニングされ、ウェハの背面で、深堀り反応性イオンエッチングが実行され得る。
【0039】
第2に、ウェハの正面で、犠牲層、好ましくは、フォトレジストが堆積されパターニングされ、ウェハの正面に、深堀り反応性イオンエッチングが実行され得る。
【0040】
第3に、ウェハの正面に、パリレンなどのポリマー材料が堆積されパターニングされ得る。
【0041】
第4に、貫通孔を開口するために、ウェハの背面上に、深堀り反応性イオンエッチングが実行され得る。ダイシング後、流体チャネル内の犠牲層は除去され得る。
【0042】
このように固定したカラム構造体は、少なくとも600psiのカラム内圧に耐性するように示された(Q.He et al.,IEEE MEMS 2004,Maastricht,The Netherlands,pp.212-215)。システム準備中にジグクランピングおよびワイヤボンディング応力に耐性であるために、クロスギャップのパリレン膜およびパリレンステッチ構造によって、チップの完全性が高められ得る。図9は、例えば、150μm幅のスルーウェハエアギャップおよびシリコンアイランド(中央部分)を有するバージョンIIのデバイスを示す。図10は、バージョンIIのデバイスの詳細図を示し、破線の矩形は、エアギャップによって取り囲まれたシリコンアイランドエリアを規定し、細い白線は、シリコンアイランドをチップの残りにクロスリンクするパリレンステッチであり、HPLCカラム間に、分布ヒータが伸びて通っている。
【0043】
耐圧強度は、一般に、最小限で液体クロマトグラフィーが許容できる程度に十分に高いものであり、例えば、0〜約1,000psi、または0〜約5,000psiであり得る。耐圧強度のさらなる適切な範囲は、例えば、約100psi〜約500psi、または約500psi〜約1,000psi、または約1,000psi〜約2,500psi、または約2,500psi〜約5,000psiを含む。別の適切な範囲は、液体クロマトグラフィーに与えるのに十分なものから約180psiである。別の適切な範囲は、液体クロマトグラフィーに与えるのに十分なものから約600psiである。コストおよび熱的管理の必要性のタイプなどの他の要因と均衡を保ちながら、所望の耐圧強度を選択でき、それに応じてデバイスを設計できる。
【0044】
パッケージ化された温度勾配HPLCシステム
また、本発明により、パッケージ化された温度勾配HPLCシステムが提供される。図13は、このシステムの1つの態様を示す。ジグは、耐化学性が強く簡単に機械加工できる、PEEK材料や同様のプラスチック材料などのプラスチックから作ることができる。PEEKジグの開口を通して、流体チュービングおよびフィッティングを装置に差し込み得る。ジグとHPLCチップとの間の境界に漏れ止めを施すために、外径が1.5mmのOリングを使用し得る。Oリングに対してチップをしっかりと締め付けるとともに、ワイヤボンディグによってチップへの電気的接続を与えるために、PCBを使用し得る。チップ冷却が必要な場合、PCBの上部に、ペルチェ冷却器のような熱電素子などの冷却素子を配置し得る。本発明は、2004年7月28日に出願された、Taiらによる「Modular Microfluidic Packaging System」という発明の名称の米国仮特許出願第60/592,588号(CIT 4166P)(その全体を参照により本明細書に組み入れられる)において記載されたマイクロ流体パッケージングシステムの一部として機能し得る。
【0045】
オンチップ温度勾配LCシステムの使用
また、本発明により、分離を最適化するための温度勾配の使用方法が提供される。温度勾配は、時間的または空間的なものであり得る。基本的な温度勾配液体クロマトグラフィー動作の場合、一定の温度勾配が使用され得る。図15は、例えば、時間の経過とともに線形に増大するチップへの電力入力を示す。所定のカラム温度および溶媒勾配溶離を用いて、分離が実行され得る。温度の影響に非常に感応性があるが、溶媒の変化には感応性がない分離の場合、分離は、温度勾配および定組成溶離に基づくものであり得る。最も困難な分離の場合、温度勾配と溶媒勾配の組み合わせが使用され得る。
【0046】
応用
本発明は、逆相クロマトグラフィー、順相クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、およびアフィニティークロマトグラフィーなどの異なるタイプの液体クロマトグラフィーを実行するために使用し得る。
【0047】
本発明を利用できる可能性のある応用は、広範囲のターゲット検体をモニタリングし記録することを含むが、これらに限定されるものではない。例えば、本発明は、海洋、河川、送水路、家庭の水を分析するために利用され得る。また、本発明は、食品品質のモニタリングや、尿、血液、および唾液を含むが、これらに限定されるものではない体液分析に使用され得る。
【0048】
本発明は、非制限的な実施例によりさらに記載される(例えば、いくつかのシミュレーションを含む、図9、図10、図11、図12、図14、図15、図16、および図17を参照。
【0049】
実施例:バージョンIおよびバージョンIIデバイスの電力消費量
図14は、温度勾配HPLCシステムに組み込まれたバージョンIおよびバージョンIIデバイスの温度に応じた電力消費量を示す。バージョンIデバイスの電力消費量は、空気にさらされる加熱面積がより小さいため、かなり低くなる。
【0050】
実施例:応力下にあるバージョンII分離カラムの性能テスト
10μmのパリレンカラム壁が、降伏や破壊なしに高圧に耐え得るようにするために、FEMLABモデリングパッケージを用いて、カラムに200psiの均一の圧力荷重の下でパリレン膜の応力分布について検討した(図11)。最大応力は、カラム内面の角の周囲で起こり、59MPaのパリレン降伏応力より小さい50MPaである(C.Y.Shih et al.,Microsystem Technologies,10(5),407-411,2004)。これは、200psiの下で動作するとき、パリレンカラム壁には、顕著なプラスチック変形がないことを示す。
【0051】
実施例:バージョンII分離カラムにおける移動相溶媒の予熱
高品質の温度勾配液体クロマトグラフィーの1つの重要な要因は、移動相溶媒の予熱である。言い換えれば、移動相溶媒は、HPLCカラムに入る前に、所望の温度まで加熱されなければならない。FEMLABシミュレーション結果(図12)に基づくと、水性溶媒が、HPLCカラムに入る前に、液体アクセスチャネル内での熱伝導によって(本発明の流速範囲内で)、平衡温度まで加熱されることが分かった。したがって、溶媒の予熱は、図8のプロセスフローにより作製されたデバイスを使用して達成される。線流速4.242mm/secおよび平衡温度100℃を用いて、シミュレーションを実行した。
【0052】
実施例:温度勾配HPLCの分離性能テスト
温度勾配HPLCシステムの分離性能をテストするために、混合アミノ酸の試料を分離した。最初に、電気活性状態になるように、アミノ酸試料を誘導した(B.W.Boyd et al.,Analytical Chemistry,72(4),865-871)。次に、誘導アミノ酸のサイクリックボルタンメトリー(CV:cyclic voltammetry)を実行した。図16は、ピーク電流電位が決定され、電気化学センシング電位として使用され得る場合の誘導アミノ酸の典型的なCVを示す。
【0053】
このアミノ酸分離テストに、バージョンIIデバイスを使用した。pH値が6.5で、流速が2μL/minの水性リン酸緩衝液を、分離移動相として使用した。カラム温度は、分離テスト中、3.6C/minの傾きで、25Cから65Cに(電源出力は0Vから64Vに)上昇した。図17は、アミノ酸の結果的に良好なオンチップ温度勾配分離および検出を示す。図17のクロマトグラムを得るために、10分間、2μL/minで、リン酸緩衝液にある25mM誘導アミノ酸でカラムをフラッシングすることで、試料荷重を行った。次いで、温度勾配を適用する前に、10分間、純粋なリン酸緩衝液でカラムをフラッシングした。アミノ酸のオンチップ温度勾配分離および検出を実証した。
【0054】
本明細書で挙げた全ての文献は、その全体を参照により本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】オンチップ温度制御型液体クロマトグラフィー分離カラムを示す。
【図2】表面マイクロマシン処理された熱的分離キャビティ/ゾーンを有するチップ示す。入口は、懸濁したカラムおよびヒータの拡大図を示す。
【図3】バルクマイクロマシン処理された熱的分離キャビティ/ゾーンを有するチップを示す。
【図4】熱的分離キャビティを有するシリコンアイランドを有するチップを示す。
【図5】バージョンIデバイスのプロセスフローを示す。
【図6】バージョンIデバイスの断面図を示す。
【図7】バージョンIデバイスの詳細を示す。
【図8】バージョンIIデバイスのプロセスフローを示す。
【図9】バージョンIIデバイスの詳細を示す。
【図10】バージョンIIデバイスの詳細図を示す。
【図11】バージョンIIデバイスの応力分布を示す。
【図12】バージョンIIデバイスの液体アクセスチャネルの周囲における溶媒予備加熱シミュレーションを示す。
【図13】温度勾配HPLCシステムのテストパッケージングを示す。
【図14】バージョンIおよびバージョンIIデバイスの電力消費量の温度依存性を示す。
【図15】オンチップの一定の温度勾配を発生する電力および電圧の入力プロファイルを示す。
【図16】23℃での誘導アミノ酸の典型的なサイクリックボルタンメトリーを示す。
【図17】バージョンIIのHPLCシステムを使用して得られた誘導アミノ酸の温度勾配クロマトグラムを示す。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、「On-Chip Temperature Controlled Liquid Chromatography Methods and Devices」という発明の名称の、2004年2月17日に出願された米国仮特許出願第60/545,727号(CalTech Ref.No.:CIT-4046P)の優先権を主張し、同出願は、その全体を参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
政府支援の記述
本発明は、ある局面において、ニューロモルフィック・システムズ・エンジニアリングセンター(CNSE:Center for Neuromorphic Systems Engineering)のNSF契約番号第EEC-9402726号に従って一部資金提供を受けており、連邦政府は、本発明に対して一定の権利を有し得ることを本明細書に表示する。
【背景技術】
【0003】
背景
液体クトマトグラフィー(LC:liquid chromatography)は、分子分離に強力な分析ツールである。温度変動は、液体クロマトグラフィーにおいて重要なパラメータとなり得る(例えば、T.Greibrokk,T.Andersen,Journal of Separation Science,24,899-909,2001;T.Greibrokk,Analytical Chemistry,74(13),374A-378A,2002(非特許文献1)参照)。温度は、保持因子、検体溶解性、拡散性、および移動相粘性など、LCのいくつかの物理パラメータに影響を及ぼし得る。しかしながら、従来のクロマトグラフィーカラムの大きなサイズに関連する半径方向の温度勾配により、温度制御は、速度が遅く、実施するのが難しい。
【0004】
クロマトグラフィーカラムの小型化に向けた最近の傾向により、温度制御の研究が盛んになった(V.R.Meyer,「Practical High-Performance Liquid Chromatography」,John Wiley&Sons,1999,310-311(非特許文献2))。例えば、温度制御型の分離カラムが、ガスクロマトグラフィー用に微細加工された(2003年12月23日に発行されたManginellらの米国特許第6,666,907号(特許文献1)、2003年12月16日に発行されたKottenstetteらの同第6,663,697号(特許文献2)、2005年1月4日に発行されたWiseらの同第6,838,640号(特許文献3))。しかしながら、液体クロマトグラフィー用のオンチップ温度制御型システムを開発することが強く望まれている。LCは、高圧の点からより深刻な工学的問題をもたらす。さらに、特に、シリコンの高熱伝導性の点から、チップ上の温度勾配の発生および制御が問題となり、良好な加熱冷却システムを含む良好な熱管理システムが必要とされている。また、連続処理ステップを用いて共通の基板上にデバイスコンポーネントが作製された良好な集積回路システムが必要とされている。
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,666,907号
【特許文献2】米国特許第6,663,697号
【特許文献3】米国特許第6,838,640号
【非特許文献1】T.Greibrokk,T.Andersen,Journal of Separation Science,24,899-909,2001;T.Greibrokk,Analytical Chemistry,74(13),374A-378A,2002
【特許文献2】V.R.Meyer,「Practical High-Performance Liquid Chromatography」,John Wiley&Sons,1999,310-311
【発明の開示】
【0006】
概要
本発明は、様々な態様において、一般に、クロマトグラフィーに関し、特に、高圧クロマトグラフィーおよび液体クロマトグラフィーに関する。オンチップ温度制御型液体クロマトグラフィーシステム、このシステムの製造方法、このシステムの使用方法が提供される。
【0007】
本発明の1つの態様は、基板上に液体クロマトグラフィー分離カラムを含み、このカラムが基板上のヒータに結合された、液体クロマトグラフィー装置である。ヒータは、分離中、カラム温度を制御できる。ヒータに適用する電流は変更でき、それに応じて、カラム温度を変更できる。液体クロマトグラフィーに適したカラムの耐圧強度は、例えば、0〜約1,000psi、または0〜約5,000psiであり得る。カラムは、少なくとも第1および第2のポリマー材料層を互いに接して含み得るもので、第1の層は、第2の層を通り抜ける。カラムは、基板に固定されたポリマー層を含み得る。これらの工学的設計により、耐圧強度を高め、強度を増すことができる。
【0008】
本発明の別の態様は、基板と、熱的分離ゾーンと、熱的分離ゾーンによって基板から熱的に分離された分離カラムとを含むチップベース温度制御型液体クロマトグラフィーデバイスである。1つの態様において、熱的分離された分離カラムは、シリコンアイランド上にあり、シリコンアイランドは、熱伝導率が低い構造体によって支持される。熱的分離ゾーンにより、電力消費量を低減でき、デバイスが複数の温度ゾーンを有することができるようになる。
【0009】
本発明の別の態様は、動作中にフィードバック制御を与える温度センサを含む、チップベース液体クロマトグラフィーデバイスである。1つの特定の態様において、ヒータが温度センサとして使え、ヒータに電流を流し、電圧降下をモニタリングすることによって、温度を決定することができる。別の態様において、温度センサは、チップ上に集積され、フィードバック制御を与えるようにカラムに結合され得る。
【0010】
本発明の別の態様は、基板上の液体クロマトグラフィー分離カラムと、例えば、温度制御用の電熱冷却素子などの冷却素子とを含むチップベースの液体クロマトグラフィー装置である。冷却素子は、基板上のペルチェ(Peltier)素子であってもよく、冷却できるようにカラムに結合され得る。または、冷却素子は、チップに熱的に結合されたオフチップペルチェ素子である。
【0011】
また、本発明により、チップベース温度勾配液体クロマトグラフィーデバイスの製造方法が提供される。この方法は、基板上にポリマー材料を堆積しパターニングすることによって、液体クロマトグラフィー分離カラムを形成することと、金属層を堆積しパターニングすることによって、ヒータを形成することとを伴う。異なる需要に見合う異なる工学的構造を表す2つのタイプの製造プロセスフロー、いわゆる、本明細書ではバージョンIおよびバージョンIIを開示する。
【0012】
本発明の別の態様は、チップベース温度制御型液体クロマトグラフィーデバイスと、デバイスの流体カップリングと、電気的インタフェースとを含む、液体クロマトグラフィー装置である。
【0013】
最後に、本発明により、電力入力を調節することによって温度を制御することを含む、チップベース温度制御型LC分離デバイスの使用方法が提供される。温度を制御することで、液体クロマトグラフィー分離が最適化される。いくつかの態様において、温度を制御することは、分離用の空間的または時間的温度勾配を使用することを含む。
【0014】
本発明の利点は、液体クロマトグラフィー分離におけるより良好で高性能な熱管理を含む。
【0015】
発明を実施するための最良の形態
本発明により、オンチップ温度制御型液体クロマトグラフィー、その製造方法、およびその使用方法に関する種々の態様が提供される。
【0016】
「On-Chip Temperature Controlled Liquid Chromatography Methods and Devices」という発明の名称の、2004年2月17日に出願された、本願の優先出願である米国仮特許出願第60/545,727号(CalTech Ref.No.:CIT-4046P)は、参照により、図面を含む本明細書に組み入れられる。
【0017】
以下の関連特許出願は、本発明を理解し実施するのに有益であり得る。
(i)2004年8月11日に出願された、Taiらによる「IC-processed Polymer Nano-liquid Chromatography System」という発明の名称の米国特許出願第10/917,257号(CIT-3936)であり、同出願は、2003年8月20日に出願された米国仮特許出願第60/496,964号の優先権を主張し、同出願はその全体を参照により本明細書に組み入れられる。
(ii)2003年3月18日に出願された、Taiらによる「A Method for Integrating Micro-and Nanoparticles Into MEMS and Apparatus Including the Same」という発明の名称の米国特許出願第10/391,122号(CIT-3619)であり、同出願は、2002年3月19日に出願された米国仮特許出願第60/366,019号の優先権を主張し、同出願はその全体を参照により本明細書に組み入れられる。
(iii)2004年7月9日に出願された、Taiらによる「Integrated LC-ESI on a Chip」という発明の名称の米国仮特許出願第60/586,576号(CIT-4151P)であり、同出願はその全体を参照により本明細書に組み入れられる。
(iv)2004年7月28日に出願された、Taiらによる「Modular Microfluidic Packaging System」という発明の名称の米国仮特許出願第60/592,588号(CIT-4166P)であり、同出願はその全体を参照により本明細書に組み入れられる。
【0018】
また、以下の技術文献も、本発明を理解し実施するのに有益であり得る。(i)Shih et al.「On-Chip Temperature Gradient Liquid Chromatography」,IEEE MEMS 2005,Miami pp.782-785、同文献はその全体を参照により本明細書に組み入れられる。(ii)He et al.「Ion Liquid Chromatography On-A-Chip with Beads-Packed Parylene Column」,IEEE MEMS 2004,Maastricht,The Netherlands,pp.212-215、同文献はその全体を参照により本明細書に組み入れられる。
【0019】
本発明を実施する際に使用するさらなる背景は、以下に見受けられる。例えば、(i)Panagiotopoulos et al.,J.of Chromatography,vol.920,2001,pp.13-22;(ii)Andersen et al.,J.of Separation Science,vol.26,2003,pp.1133-1140;(iii)Lee et al.,Polymer,vol.40,1999,pp.7227-7231;(iv)Chang et al.,American Laboratory,vol.34,2002,pp.39;(v)Molander et al.,The Analyst,vol.128,2003,pp.1341-1345、これらの文献はその全体を参照により本明細書に組み入れられる;(vi)Madou,Fundamentals of Microfabrication,The Science of Miniaturization,2nd Ed.,CRC Press,2002、マイクロマシンおよびマイクロ流体に関する記述を含む;(vii)Kovacs,Micromachined Transducers SourceBook,McGraw Hill,1998、マイクロマシンおよびマイクロ流体に関する記述を含む;および(viii)Koch,Evans,Brunnschweiler,Microfluidic Technology and Applications,Research Studies Press,2000,クロマトグラフィーに関する記述を含む。
【0020】
ヒータ
1つの態様において、本発明により、ヒータに結合されるか、またはヒータと一体化された基板上の分離カラムが提供される。(図1)ヒータは、分離中、カラム温度を制御し得る。ヒータに適用される電流が変化すると、カラム温度は、それに応じて変化する。電流は、オフチップ電子機器またはオンチップ集積回路によって供給され得る。分離カラムは、流体アクセスを与えるために、入口および出口を有する。少なくとも1つまたは複数の検出器が、基板上に一体化され得る。正確な温度プログラミングは、このデバイスによって達成され得る。
【0021】
好ましい態様において、カラムには、逆相HPLC用のC18コーティングされた溶融シリカビーズなど、分離ベッドとしてビーズが詰められる。例えば、2003年3月18日に出願され、「A Method for Integrating Micro- and Nanoparticles Into MEMS and Apparatus Including the Same」という発明の名称の、Taiらによる米国特許出願第10/391,122号(CIT-3619)であり、2002年3月19日に出願された米国仮特許出願第60/366,019号の優先権を主張する同特許出願に、微細加工された構造体に粒子を詰めることについて記載されており、これらの出願はその全体を参照により本明細書に組み入れられる。別の好ましい態様において、カラムは、構造材料として、例えば、パリレンまたはポリイミドなどのポリマーを使用したマイクロマシン処理によって形成され得る。
【0022】
基板は、例えば、シリコンまたはガラスであり得る。
【0023】
ヒータは、多数の異なる材料を含み得る。好ましい態様において、ヒータは、例えば、金属またはポリシリコンである。ヒータは、熱伝達が効率的であり十分であるように、カラムと接触させても、近接させてもよい。
【0024】
さらに、ヒータを有するオンチップLCデバイスが、多大な耐圧強度を達成し得る。例えば、このようなデバイス上のカラム内圧が、最大5,000psiに達成し得る。本明細書に記載する例において、デバイスは、少なくとも600psiのカラム内圧に耐性可能である(いわゆる、耐圧強度)。
【0025】
熱的分離
本発明の別の態様は、基板と、熱的分離ゾーンまたはキャビティと、熱的分離ゾーンまたはキャビティによって基板から熱的に分離された分離カラムとを含む、チップベース制御型液体クロマトグラフィーデバイスである。「熱的分離ゾーン」および「熱的分離キャビティ」という用語は、本出願において互いに交換可能に使用される。熱的分離ゾーンは、他のデバイスコンポーネントと一体化され得る。熱的分離ゾーンにより、電力消費量を低減でき、高速かつ正確に温度調節できるようになる。図2および図3は、空気が充填された熱的分離キャビティによって基板から熱的に分離され、バルクまたは表面マイクロマシン処理によって作り出されたカラムの主要部分をそれぞれ示す。または、熱的分離キャビティには、オイルや適切なポリマーなどの低熱伝導率(例えば、1W/(m・K未満))の媒体が充填され得る。例えば、Shackelford,Introduction to Materials Science for Engineers,4th Ed.,pages 327-328に、材料の熱伝導率が記載されている。熱的分離キャビティの表面マイクロマシン処理が、BrF3またはXeF2気相エッチングによって実行され得る。熱的分離キャビティのバルクマイクロマシン処理は、DRIEまたはKOHエッチングによって達成され得る。熱的分離キャビティはまた、表面およびバルクマイクロマシン処理の組み合わせによって形成され得る。
【0026】
本発明の別の態様において(図4)、カラムは、シリコンアイランド上にあり、アイランドは、パリレンなどの低熱伝導率(1W/(m・K未満))の構造体によって支持される。構造体は、ビームや膜であり得る。図9は、150μm幅のスルーウェハエアギャップによって取り囲まれたシリコンアイランドを示す。
【0027】
熱的分離キャビティにより、デバイス上に複数の温度ゾーンが得られる。例えば、カラムは、第1の温度であり得、検出器は、第2の温度であり得、熱的分離キャビティは、温度を異なる状態に保ち得る。流体経路および電気経路は、熱的分離ゾーンを交差し、他のゾーンに到達し得る。
【0028】
温度センサ
さらなる別の態様において、本発明は、動作中にフィードバック制御を与える温度センサを含むチップベース温度制御型液体クロマトグラフィーデバイスである。例えば、その全体を参照により本明細書に組み入れられた、Taiらの「Microelectromechanical System Sensor Assembly」という発明の名称の米国特許第6,526,823号を参照されたい。また、同様に参照により本明細書に組み入れられた、2004年9月30日に公開され、「Integrated Surface-Machined Micro Flow Controller Method and Apparatus」という発明の名称の、Taiらの米国特許出願公開第2004/0188648号を参照されたい。センサは、例えば、電気化学センサであり得る。1つの態様において、ヒータは、温度センサとしても使える。ヒータの温度は、ヒータに電流を流し、電圧降下をモニタリングすることによって決定され得る。この情報に基づいて、適用電流は、所望の温度プロファイルに応じて調節され得る。システムは、所与の温度勾配プロファイルおよび所与の流速に適した電流プロファイルを見い出すように較正され得る。例えば、E.MengおよびY.C.Tai,Technical Digest,The 12th International Conference on Solid-State Sensors,Actuators and Microsystems Transducers 2003、Boston,USA,pp.686-689に、温度センサとしてのオンチップヒータの使用が記載されており、同文献はその全体を参照により本明細書に組み入れられる。別の態様において、温度センサは、チップ上に一体化され、フィードバック制御を与えるようにカラムに結合され得る。
【0029】
冷却
本発明の別の態様は、冷却素子を含むチップベース液体クロマトグラフィー装置である。冷却素子の一例は、熱電素子である。冷却素子は、基板および他のデバイスコンポーネントに一体化され得る。冷却素子は、基板上のペルチェ素子であってもよく、冷却できるようにカラムに結合され得る。または、冷却素子は、チップに熱的に結合されたオフチップペルチェ素子であり得る。
【0030】
バージョンIおよびバージョンIIデバイス;製造方法
また、本発明により、オンチップ温度勾配液体クロマトグラフィーデバイスの製造方法が提供される。例えば、基板上にポリマー材料を堆積しパターニングすることによって、分離カラムが形成され得、カラム上に金属層を堆積しパターニングすることによって、ヒータが形成され得る。2つの一般的なタイプのデバイス、すなわち、バージョンIおよびIIについてさらに詳細に記載するが、本発明は、これらの2つのバージョンに限定されるわけではない。異なるタイプのデバイスは、異なる分離基準を満たすために作製され得る。例えば、耐圧強度の重要なパラメータを制御できる。
【0031】
2つの詳細なプロセスフローが提供される(図5および図8)。図5に示した第1のプロセスフロー(バージョンIデバイスプロセスフローとも呼ばれる)において、基板上に酸化物が成長され、基板の正面上の酸化物は、パターニングされ得る。次いで、基板上に金属層が堆積され、パターニングされ得る。金属層組成の選択は、特に限定されるわけではない。例えば、金属層は、例えば、Al、Cr、Ti、Au、Pt、またはこれらの組み合わせであり得る。次に、ウェハの背面上の酸化物は、パターニングされ得、ウェハの背面上に深堀り反応性エッチングが実行され得る。
【0032】
次いで、ウェハの正面に、ポリマー材料層が堆積され、パターニングされ得る。好ましい態様において、ポリマー材料は、パリレンであり得る。次いで、ウェハの正面に、犠牲層が堆積され、パターニングされ得る。フォトレジストが、犠牲層の1つの例である。次に、ウェハの正面に、深堀り反応性イオンエッチングが実行され得る。
【0033】
次いで、ウェハの正面に、第2のポリマー材料層、好ましくは、パリレンが堆積され、パターニングされ得る。貫通孔を開口するために、ウェハの背面に、深堀り反応性イオンエッチングが実行され得る。好ましくは、XeF2を使用して、正面エッチが実行され得る。
【0034】
最後に、第3のポリマー材料層、好ましくは、パリレンが堆積され得る。ダイシング後、流体チャネル内の犠牲層が除去され得、ポリマー材料は、シャドーマスクを用いてパターニングされ得る。
【0035】
大きな耐圧強度を達成するために、いくつかのカラム構造体を使用できる。図6に示すように、第2のパリレン層は、第1のパリレン層を通り抜け、高圧下で第1/第2のパリレンインタフェースを液体が貫通することを回避し得る。このデザインの耐圧強度は、例えば、最大180psiまでに達し得る。流入する液体は、規則的な線形フロー速度(〜1mm/sec)で500μmカラム長さ内で平衡温度まで加熱され得る。
【0036】
図7は、この方法により作製されたデバイスを示す。左側の入口は、5μmシリカビーズを詰めた後のカラムを示し、中央の入口は、内蔵ヒータおよびカラム支持体を有する自立カラムを示し、右側の入口は、一体化された電気化学センサである。
【0037】
図8に、第2のプロセスフロー(バージョンIIデバイスプロセスフローとも呼ぶ)を示す。一体化された電気化学センサおよび分布ヒータを有するシリコン基板に対して下方に、ポリマーカラムが固定され得る。
【0038】
第1に、基板上で酸化物が成長され、次いで、ウェハの正面上でリフトオフプロセスによって、金属膜が堆積されパターニングされ得る。次に、正面の酸化物がパターニングされ、次いで、ウェハの背面上の酸化物がパターニングされ、ウェハの背面で、深堀り反応性イオンエッチングが実行され得る。
【0039】
第2に、ウェハの正面で、犠牲層、好ましくは、フォトレジストが堆積されパターニングされ、ウェハの正面に、深堀り反応性イオンエッチングが実行され得る。
【0040】
第3に、ウェハの正面に、パリレンなどのポリマー材料が堆積されパターニングされ得る。
【0041】
第4に、貫通孔を開口するために、ウェハの背面上に、深堀り反応性イオンエッチングが実行され得る。ダイシング後、流体チャネル内の犠牲層は除去され得る。
【0042】
このように固定したカラム構造体は、少なくとも600psiのカラム内圧に耐性するように示された(Q.He et al.,IEEE MEMS 2004,Maastricht,The Netherlands,pp.212-215)。システム準備中にジグクランピングおよびワイヤボンディング応力に耐性であるために、クロスギャップのパリレン膜およびパリレンステッチ構造によって、チップの完全性が高められ得る。図9は、例えば、150μm幅のスルーウェハエアギャップおよびシリコンアイランド(中央部分)を有するバージョンIIのデバイスを示す。図10は、バージョンIIのデバイスの詳細図を示し、破線の矩形は、エアギャップによって取り囲まれたシリコンアイランドエリアを規定し、細い白線は、シリコンアイランドをチップの残りにクロスリンクするパリレンステッチであり、HPLCカラム間に、分布ヒータが伸びて通っている。
【0043】
耐圧強度は、一般に、最小限で液体クロマトグラフィーが許容できる程度に十分に高いものであり、例えば、0〜約1,000psi、または0〜約5,000psiであり得る。耐圧強度のさらなる適切な範囲は、例えば、約100psi〜約500psi、または約500psi〜約1,000psi、または約1,000psi〜約2,500psi、または約2,500psi〜約5,000psiを含む。別の適切な範囲は、液体クロマトグラフィーに与えるのに十分なものから約180psiである。別の適切な範囲は、液体クロマトグラフィーに与えるのに十分なものから約600psiである。コストおよび熱的管理の必要性のタイプなどの他の要因と均衡を保ちながら、所望の耐圧強度を選択でき、それに応じてデバイスを設計できる。
【0044】
パッケージ化された温度勾配HPLCシステム
また、本発明により、パッケージ化された温度勾配HPLCシステムが提供される。図13は、このシステムの1つの態様を示す。ジグは、耐化学性が強く簡単に機械加工できる、PEEK材料や同様のプラスチック材料などのプラスチックから作ることができる。PEEKジグの開口を通して、流体チュービングおよびフィッティングを装置に差し込み得る。ジグとHPLCチップとの間の境界に漏れ止めを施すために、外径が1.5mmのOリングを使用し得る。Oリングに対してチップをしっかりと締め付けるとともに、ワイヤボンディグによってチップへの電気的接続を与えるために、PCBを使用し得る。チップ冷却が必要な場合、PCBの上部に、ペルチェ冷却器のような熱電素子などの冷却素子を配置し得る。本発明は、2004年7月28日に出願された、Taiらによる「Modular Microfluidic Packaging System」という発明の名称の米国仮特許出願第60/592,588号(CIT 4166P)(その全体を参照により本明細書に組み入れられる)において記載されたマイクロ流体パッケージングシステムの一部として機能し得る。
【0045】
オンチップ温度勾配LCシステムの使用
また、本発明により、分離を最適化するための温度勾配の使用方法が提供される。温度勾配は、時間的または空間的なものであり得る。基本的な温度勾配液体クロマトグラフィー動作の場合、一定の温度勾配が使用され得る。図15は、例えば、時間の経過とともに線形に増大するチップへの電力入力を示す。所定のカラム温度および溶媒勾配溶離を用いて、分離が実行され得る。温度の影響に非常に感応性があるが、溶媒の変化には感応性がない分離の場合、分離は、温度勾配および定組成溶離に基づくものであり得る。最も困難な分離の場合、温度勾配と溶媒勾配の組み合わせが使用され得る。
【0046】
応用
本発明は、逆相クロマトグラフィー、順相クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、およびアフィニティークロマトグラフィーなどの異なるタイプの液体クロマトグラフィーを実行するために使用し得る。
【0047】
本発明を利用できる可能性のある応用は、広範囲のターゲット検体をモニタリングし記録することを含むが、これらに限定されるものではない。例えば、本発明は、海洋、河川、送水路、家庭の水を分析するために利用され得る。また、本発明は、食品品質のモニタリングや、尿、血液、および唾液を含むが、これらに限定されるものではない体液分析に使用され得る。
【0048】
本発明は、非制限的な実施例によりさらに記載される(例えば、いくつかのシミュレーションを含む、図9、図10、図11、図12、図14、図15、図16、および図17を参照。
【0049】
実施例:バージョンIおよびバージョンIIデバイスの電力消費量
図14は、温度勾配HPLCシステムに組み込まれたバージョンIおよびバージョンIIデバイスの温度に応じた電力消費量を示す。バージョンIデバイスの電力消費量は、空気にさらされる加熱面積がより小さいため、かなり低くなる。
【0050】
実施例:応力下にあるバージョンII分離カラムの性能テスト
10μmのパリレンカラム壁が、降伏や破壊なしに高圧に耐え得るようにするために、FEMLABモデリングパッケージを用いて、カラムに200psiの均一の圧力荷重の下でパリレン膜の応力分布について検討した(図11)。最大応力は、カラム内面の角の周囲で起こり、59MPaのパリレン降伏応力より小さい50MPaである(C.Y.Shih et al.,Microsystem Technologies,10(5),407-411,2004)。これは、200psiの下で動作するとき、パリレンカラム壁には、顕著なプラスチック変形がないことを示す。
【0051】
実施例:バージョンII分離カラムにおける移動相溶媒の予熱
高品質の温度勾配液体クロマトグラフィーの1つの重要な要因は、移動相溶媒の予熱である。言い換えれば、移動相溶媒は、HPLCカラムに入る前に、所望の温度まで加熱されなければならない。FEMLABシミュレーション結果(図12)に基づくと、水性溶媒が、HPLCカラムに入る前に、液体アクセスチャネル内での熱伝導によって(本発明の流速範囲内で)、平衡温度まで加熱されることが分かった。したがって、溶媒の予熱は、図8のプロセスフローにより作製されたデバイスを使用して達成される。線流速4.242mm/secおよび平衡温度100℃を用いて、シミュレーションを実行した。
【0052】
実施例:温度勾配HPLCの分離性能テスト
温度勾配HPLCシステムの分離性能をテストするために、混合アミノ酸の試料を分離した。最初に、電気活性状態になるように、アミノ酸試料を誘導した(B.W.Boyd et al.,Analytical Chemistry,72(4),865-871)。次に、誘導アミノ酸のサイクリックボルタンメトリー(CV:cyclic voltammetry)を実行した。図16は、ピーク電流電位が決定され、電気化学センシング電位として使用され得る場合の誘導アミノ酸の典型的なCVを示す。
【0053】
このアミノ酸分離テストに、バージョンIIデバイスを使用した。pH値が6.5で、流速が2μL/minの水性リン酸緩衝液を、分離移動相として使用した。カラム温度は、分離テスト中、3.6C/minの傾きで、25Cから65Cに(電源出力は0Vから64Vに)上昇した。図17は、アミノ酸の結果的に良好なオンチップ温度勾配分離および検出を示す。図17のクロマトグラムを得るために、10分間、2μL/minで、リン酸緩衝液にある25mM誘導アミノ酸でカラムをフラッシングすることで、試料荷重を行った。次いで、温度勾配を適用する前に、10分間、純粋なリン酸緩衝液でカラムをフラッシングした。アミノ酸のオンチップ温度勾配分離および検出を実証した。
【0054】
本明細書で挙げた全ての文献は、その全体を参照により本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】オンチップ温度制御型液体クロマトグラフィー分離カラムを示す。
【図2】表面マイクロマシン処理された熱的分離キャビティ/ゾーンを有するチップ示す。入口は、懸濁したカラムおよびヒータの拡大図を示す。
【図3】バルクマイクロマシン処理された熱的分離キャビティ/ゾーンを有するチップを示す。
【図4】熱的分離キャビティを有するシリコンアイランドを有するチップを示す。
【図5】バージョンIデバイスのプロセスフローを示す。
【図6】バージョンIデバイスの断面図を示す。
【図7】バージョンIデバイスの詳細を示す。
【図8】バージョンIIデバイスのプロセスフローを示す。
【図9】バージョンIIデバイスの詳細を示す。
【図10】バージョンIIデバイスの詳細図を示す。
【図11】バージョンIIデバイスの応力分布を示す。
【図12】バージョンIIデバイスの液体アクセスチャネルの周囲における溶媒予備加熱シミュレーションを示す。
【図13】温度勾配HPLCシステムのテストパッケージングを示す。
【図14】バージョンIおよびバージョンIIデバイスの電力消費量の温度依存性を示す。
【図15】オンチップの一定の温度勾配を発生する電力および電圧の入力プロファイルを示す。
【図16】23℃での誘導アミノ酸の典型的なサイクリックボルタンメトリーを示す。
【図17】バージョンIIのHPLCシステムを使用して得られた誘導アミノ酸の温度勾配クロマトグラムを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に液体クロマトグラフィー分離カラムを含み、カラムが基板上のヒータに結合される、液体クロマトグラフィー装置。
【請求項2】
基板が、シリコンである、請求項1記載の装置。
【請求項3】
ヒータが、金属ヒータまたはポリシリコンヒータである、請求項1記載の装置。
【請求項4】
カラムが、ポリマー材料を含む、請求項1記載の装置。
【請求項5】
カラムが、パリレンを含む、請求項1記載の装置。
【請求項6】
カラムの耐圧強度が、0〜約1,000psiである、請求項1記載の装置。
【請求項7】
カラムの耐圧強度が、0〜約5,000psiである、請求項1記載の装置。
【請求項8】
カラムが少なくとも第1および第2のポリマー材料層を互いに接して含み、第1の層が第2の層を通り抜ける、請求項1記載の装置。
【請求項9】
カラムが、基板に固定されたポリマー層を含む、請求項1記載の装置。
【請求項10】
ヒータが温度センサである、請求項1記載の装置。
【請求項11】
基板上に温度センサをさらに含む、請求項1記載の装置。
【請求項12】
基板がシリコンであり、ヒータが金属またはポリシリコンヒータであり、カラムがポリマー材料を含み、ヒータが温度センサである、請求項1記載の装置。
【請求項13】
以下を含む、チップベース温度制御型液体クロマトグラフィーデバイス:
基板;
熱的分離ゾーン;および
熱的分離ゾーンによって基板から熱的に分離された分離カラム。
【請求項14】
熱的分離ゾーンが、熱伝導率が1W/(m・K)未満の媒体を含む、請求項13記載のデバイス。
【請求項15】
熱的分離ゾーンが、空気またはオイルを含む、請求項13記載のデバイス。
【請求項16】
熱的分離ゾーンが、バルクマイクロマシン処理、表面マイクロマシン処理、またはそれらの組み合わせによって作られる、請求項13記載のデバイス。
【請求項17】
分離カラムが、シリコンアイランド上にある、請求項13記載のデバイス。
【請求項18】
シリコンアイランドが、熱伝導率が1W/(m・K)未満である構造体によって支持される、請求項17記載のデバイス。
【請求項19】
構造体が、パリレンを含む、請求項18記載のデバイス。
【請求項20】
構造体が、ビームまたは膜である、請求項18記載のデバイス。
【請求項21】
熱的分離ゾーンを交差する一つまたは複数の流路をさらに含む、請求項13記載のデバイス。
【請求項22】
熱的分離ゾーンを交差する一つまたは複数の電気経路をさらに含む、請求項13記載のデバイス。
【請求項23】
基板上に少なくとも1つの検出器をさらに含み、熱的分離ゾーンがカラムの温度と検出器の温度の温度差を保持し、分離カラムの耐圧強度が0〜約5,000psiである、請求項13記載のデバイス。
【請求項24】
分離カラムの耐圧強度が、0〜約1,000psiである、請求項13記載のデバイス。
【請求項25】
基板がシリコンである、請求項13記載のデバイス。
【請求項26】
カラムがポリマー材料を含む、請求項13記載のデバイス。
【請求項27】
カラムがパリレンを含む、請求項13記載のデバイス。
【請求項28】
カラムの耐圧強度が、0〜5000psiである、請求項13記載のデバイス。
【請求項29】
カラムの耐圧強度が、0〜1000psiである、請求項13記載のデバイス。
【請求項30】
基板上にある液体クロマトグラフィー分離カラム、および温度制御用の冷却素子を含む、チップベース液体クロマトグラフィー装置。
【請求項31】
冷却素子がペルチェ素子である、請求項30記載の装置。
【請求項32】
冷却素子が基板上にある、請求項30記載の装置。
【請求項33】
冷却素子が、基板に熱的に結合された、請求項30記載の装置。
【請求項34】
以下の工程を含む、チップベース温度勾配液体クロマトグラフィーデバイスの製造方法:
基板上にポリマー材料を堆積しパターニングすることによって、液体クロマトグラフィー分離カラムを形成する工程;および
金属層を堆積しパターニングすることによって、ヒータを形成する工程。
【請求項35】
ポリマー材料がパリレンである、請求項34記載の方法。
【請求項36】
金属層が、Al、Cr、Ti、Au、Pt、またはそれらの組み合わせを含む、請求項34記載の方法。
【請求項37】
バルクマイクロマシン処理、表面マイクロマシン処理、またはそれらに組み合わせによって、熱的分離ゾーンを形成する工程をさらに含む、請求項34記載の方法。
【請求項38】
以下を含む、液体クロマトグラフィー装置:
チップベース温度制御型液体クロマトグラフィーデバイス;
デバイス用の流体カップリング;および
電気インタフェース。
【請求項39】
電力入力を調節することによって、温度を制御する工程を含む、チップベース温度制御型液体クロマトグラフィー分離デバイスの使用方法。
【請求項40】
温度を制御する工程が、液体クロマトグラフィー分離を最適化する、請求項39記載の方法。
【請求項41】
温度を制御する工程が、分離に時間的温度勾配を使用する工程を含む、請求項39記載の方法。
【請求項42】
温度を制御する工程が、分離に空間的温度勾配を使用する工程を含む、請求項39記載の方法。
【請求項1】
基板上に液体クロマトグラフィー分離カラムを含み、カラムが基板上のヒータに結合される、液体クロマトグラフィー装置。
【請求項2】
基板が、シリコンである、請求項1記載の装置。
【請求項3】
ヒータが、金属ヒータまたはポリシリコンヒータである、請求項1記載の装置。
【請求項4】
カラムが、ポリマー材料を含む、請求項1記載の装置。
【請求項5】
カラムが、パリレンを含む、請求項1記載の装置。
【請求項6】
カラムの耐圧強度が、0〜約1,000psiである、請求項1記載の装置。
【請求項7】
カラムの耐圧強度が、0〜約5,000psiである、請求項1記載の装置。
【請求項8】
カラムが少なくとも第1および第2のポリマー材料層を互いに接して含み、第1の層が第2の層を通り抜ける、請求項1記載の装置。
【請求項9】
カラムが、基板に固定されたポリマー層を含む、請求項1記載の装置。
【請求項10】
ヒータが温度センサである、請求項1記載の装置。
【請求項11】
基板上に温度センサをさらに含む、請求項1記載の装置。
【請求項12】
基板がシリコンであり、ヒータが金属またはポリシリコンヒータであり、カラムがポリマー材料を含み、ヒータが温度センサである、請求項1記載の装置。
【請求項13】
以下を含む、チップベース温度制御型液体クロマトグラフィーデバイス:
基板;
熱的分離ゾーン;および
熱的分離ゾーンによって基板から熱的に分離された分離カラム。
【請求項14】
熱的分離ゾーンが、熱伝導率が1W/(m・K)未満の媒体を含む、請求項13記載のデバイス。
【請求項15】
熱的分離ゾーンが、空気またはオイルを含む、請求項13記載のデバイス。
【請求項16】
熱的分離ゾーンが、バルクマイクロマシン処理、表面マイクロマシン処理、またはそれらの組み合わせによって作られる、請求項13記載のデバイス。
【請求項17】
分離カラムが、シリコンアイランド上にある、請求項13記載のデバイス。
【請求項18】
シリコンアイランドが、熱伝導率が1W/(m・K)未満である構造体によって支持される、請求項17記載のデバイス。
【請求項19】
構造体が、パリレンを含む、請求項18記載のデバイス。
【請求項20】
構造体が、ビームまたは膜である、請求項18記載のデバイス。
【請求項21】
熱的分離ゾーンを交差する一つまたは複数の流路をさらに含む、請求項13記載のデバイス。
【請求項22】
熱的分離ゾーンを交差する一つまたは複数の電気経路をさらに含む、請求項13記載のデバイス。
【請求項23】
基板上に少なくとも1つの検出器をさらに含み、熱的分離ゾーンがカラムの温度と検出器の温度の温度差を保持し、分離カラムの耐圧強度が0〜約5,000psiである、請求項13記載のデバイス。
【請求項24】
分離カラムの耐圧強度が、0〜約1,000psiである、請求項13記載のデバイス。
【請求項25】
基板がシリコンである、請求項13記載のデバイス。
【請求項26】
カラムがポリマー材料を含む、請求項13記載のデバイス。
【請求項27】
カラムがパリレンを含む、請求項13記載のデバイス。
【請求項28】
カラムの耐圧強度が、0〜5000psiである、請求項13記載のデバイス。
【請求項29】
カラムの耐圧強度が、0〜1000psiである、請求項13記載のデバイス。
【請求項30】
基板上にある液体クロマトグラフィー分離カラム、および温度制御用の冷却素子を含む、チップベース液体クロマトグラフィー装置。
【請求項31】
冷却素子がペルチェ素子である、請求項30記載の装置。
【請求項32】
冷却素子が基板上にある、請求項30記載の装置。
【請求項33】
冷却素子が、基板に熱的に結合された、請求項30記載の装置。
【請求項34】
以下の工程を含む、チップベース温度勾配液体クロマトグラフィーデバイスの製造方法:
基板上にポリマー材料を堆積しパターニングすることによって、液体クロマトグラフィー分離カラムを形成する工程;および
金属層を堆積しパターニングすることによって、ヒータを形成する工程。
【請求項35】
ポリマー材料がパリレンである、請求項34記載の方法。
【請求項36】
金属層が、Al、Cr、Ti、Au、Pt、またはそれらの組み合わせを含む、請求項34記載の方法。
【請求項37】
バルクマイクロマシン処理、表面マイクロマシン処理、またはそれらに組み合わせによって、熱的分離ゾーンを形成する工程をさらに含む、請求項34記載の方法。
【請求項38】
以下を含む、液体クロマトグラフィー装置:
チップベース温度制御型液体クロマトグラフィーデバイス;
デバイス用の流体カップリング;および
電気インタフェース。
【請求項39】
電力入力を調節することによって、温度を制御する工程を含む、チップベース温度制御型液体クロマトグラフィー分離デバイスの使用方法。
【請求項40】
温度を制御する工程が、液体クロマトグラフィー分離を最適化する、請求項39記載の方法。
【請求項41】
温度を制御する工程が、分離に時間的温度勾配を使用する工程を含む、請求項39記載の方法。
【請求項42】
温度を制御する工程が、分離に空間的温度勾配を使用する工程を含む、請求項39記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2007−523351(P2007−523351A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−554238(P2006−554238)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/005219
【国際公開番号】WO2005/079944
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(506154111)カリフォルニア インスティチュート オブ テクノロジー (3)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/005219
【国際公開番号】WO2005/079944
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(506154111)カリフォルニア インスティチュート オブ テクノロジー (3)
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