説明

オーガースクリューホルダー装置

【課題】オーガースクリューを揺るぎなく保持し、正確な角度の穴を掘削できるオーガースクリューホルダー装置を提供する。
【解決手段】オーガー1は台車2の上に旋回台4を介して作業プラットホーム5を支持している。作業プラットホーム5の前端からはブラケット8が突出し、その先端にガイドリーダー9が立設される。ガイドリーダー9はオーガースクリュー12とその回転駆動装置13を鉛直方向に昇降可能に支持する。オーガースクリュー12の下端部は台車2のシャーシー2aに取り付けられたオーガースクリューホルダー20に保持される。オーガースクリューホルダー20は、水平多関節形式の多関節アーム30と、その先端に取り付けられた傾き可変支持装置50によって支持される。多関節アーム30と傾き可変支持装置50は油圧シリンダで駆動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオーガー(アースオーガー)のオーガースクリューホルダー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の基礎杭を地盤に建て込むに際し、近年では予め地盤に掘削した穴に基礎杭を押し込むプレボーリング方式が多く用いられている。地盤に穴を掘削するのにはオーガーが用いられる。オーガーのスクリューは非常に長いので、スクリューの下端部に対し振れ止めが設けられる。その例を特許文献1、2に見ることができる。
【0003】
特許文献1に記載された多軸オーガーでは、リーダーブラケットの前面にオーガースクリューの下端部の振れ止めが取り付けられている。特許文献2に記載されたアーム式作業機械では、オーガースクリューをガイドするキャッチホークを作業機械本体から延設させている。
【特許文献1】特開平7−247574号公報([0018]、図1、2)
【特許文献2】特開平5−222888号公報([0008][0009]、図1−4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、建物の高層化が進むに従い、大荷重を支え得る基礎杭の必要性が高まっている。大荷重用の基礎杭は、必然的に大直径となり、また、地中の支持層に確実に届かせるために長さも長くなる。そして、耐荷重性能を十分なものとするためには、単に基礎杭の寸法を長大化するだけでは不十分で、その建て込みを正確に鉛直に行わねばならない。
【0005】
長大な基礎杭を建て込む穴を正確に鉛直に掘削するためには、オーガースクリューを正しくガイドする必要がある。この点において、特許文献1、2に記載された振れ止めやキャッチホークは、目的に完全に適うとは言い難かった。というのは、それらはいずれも、作業機械の旋回台より上の部分より延設されているからである。旋回台の機構には必ず遊びがある。旋回台における回転方向の遊びはオーガースクリューの振れとして現れるが、その振れAの大きさは次式で求められる。
A=2×π×R×α/360゜
Rは旋回台の中心からオーガースクリューまでの半径、αは旋回台の回転方向の遊びの値である。Rが4,000mm、αが0.2゜の場合、Aは約14mmとなる。
【0006】
上記の振れAは不可避的に発生するものであり、従って特許文献1、2に開示された機構では穴が正確に鉛直に掘削されるということを保証できない。また特許文献1に記載されたようなガイドリーダーを有するオーガーでは、ガイドリーダー自体が鉛直軸まわりに回転可能となっていることがあり、ガイドリーダーの回転方向の遊びが旋回台の回転方向の遊びに重なって、オーガースクリューの下端位置はますます不安定になる。またガイドリーダーはステイで鉛直を出すのであるが、ステイの機構の遊びもオーガースクリューの下端位置の不安定さに輪をかける。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、オーガースクリューを揺るぎなく保持し、正確な角度の穴を掘削できるオーガースクリューホルダー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記目的を達成するために本発明は、オーガーの台車のシャーシーに、オーガースクリューの位置決めを行うオーガースクリューホルダーを取り付けたことを特徴としている。
【0009】
この構成によると、オーガースクリューホルダーは旋回台より下の部分である台車のシャーシーに取り付けられるから、旋回部の遊びの影響を受けない。そして台車が地盤に対してずれるということはまずあり得ないので、オーガースクリューホルダーは、オーガースクリューの下端部を所定位置に位置決めするという役割を確実に果たすものである。
【0010】
(2)また本発明は、上記構成のオーガースクリューホルダー装置において、前記オーガースクリューホルダーは前記シャーシーに取り付けられた多関節アームに支持されるものであり、この多関節アームにはその屈曲形状を変化させるアクチュエーターが設けられていることを特徴としている。
【0011】
この構成によると、多関節アームの屈曲形状をアクチュエータで変えることにより、台車に対するオーガースクリューホルダーの位置を調整することができる。このため、オーガースクリューホルダーの位置を調整するのに台車を移動させなくても済む。
【0012】
(3)また本発明は、上記構成のオーガースクリューホルダー装置において、前記多関節アームは水平多関節形式であることを特徴としている。
【0013】
この構成によると、多関節アームは鉛直方向には屈曲しないので、アクチュエータの作動・非作動に関わらず、オーガースクリューホルダーを地盤から一定の高さに保つことができる。
【0014】
(4)また本発明は、上記構成のオーガースクリューホルダー装置において、前記オーガースクリューホルダーは傾き可変支持装置を介して前記多関節アームに支持されるものであり、前記傾き可変支持装置にはオーガースクリューホルダーの鉛直方向の角度を変化させるアクチュエーターが設けられていることを特徴としている。
【0015】
この構成によると、オーガースクリューホルダーの鉛直方向の角度をアクチュエーターで変化させることができるから、オーガースクリューの角度を矯正し、正しい角度で穴を掘削することができる。
【0016】
(5)また本発明は、上記構成のオーガースクリューホルダー装置において、前記オーガースクリューホルダーは前記多関節アームに対し上下方向の相対変位が可能であることを特徴としている。
【0017】
この構成によると、オーガースクリューホルダーの内部に掘削土が溜まったときにはオーガースクリューホルダーを引き上げ、掘削土をオーガースクリューホルダーの外に排出することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、オーガーの台車のシャーシーにオーガースクリューホルダーを取り付けたことにより、オーガースクリューの下端部を確実に所定位置に位置決めすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の一実施形態を図1−4に示す。図1はオーガーの側面図、図2はガイドリーダーの水平断面図、図3はオーガースクリューホルダー部分の平面図、図4はオーガースクリューホルダーの傾き可変支持装置の斜視図である。
【0020】
オーガー1はキャタピラー(またはクローラー)3を移動手段とする台車2を有する。台車2は旋回台4を介して作業プラットホーム5を支持する。作業プラットホーム5はエンジン、発電機、油圧ポンプといった動力源を内蔵し、またオペレーターが乗り込んで操作を行うキャビン6を備えている。作業プラットホーム5の後部には、キャタピラー3よりも広い正面幅で地盤Gに接地し、オーガー1の安定性を高めるアウトリガー7が設けられている。作業プラットホーム5の前端からはブラケット8が突出し、その先端にガイドリーダー9が立設される。ガイドリーダー9の上寄りの部分と作業プラットホーム5の後部を伸縮可能なステイ10が連結する。ステイ10は、特許文献1に記載のオーガーと同様、左右一対設けられており、左右の伸縮調整でガイドリーダー9を鉛直に維持する。
【0021】
図2に見られるように、ガイドリーダー9は断面円形のパイプで構成されるものであり、前方寄りの側面に左右一対のガイドレール11を取り付けている。ガイドレール11も断面円形のパイプで構成され、ガイドリーダー9のほぼ全長にわたり鉛直に延びる。
【0022】
ガイドレール11はオーガースクリュー12の回転駆動装置13を支持する。回転駆動装置13は左右のガイドレール11を外側から抱き抱えるアーム14によって鉛直方向にスライド可能に、且つ水平面内で回転しないようにガイドリーダー9に連結される。回転駆動装置13の重量は、ガイドリーダー9の上端から繰り出され、回転駆動装置13の上面の動滑車15に巻き掛けられる懸垂ケーブル16で支えられる。懸垂ケーブル16の繰り出し量を多くすれば回転駆動装置13は下降し、懸垂ケーブル16の繰り出し量を小さくすれば回転駆動装置13は上昇する。オーガースクリュー12は回転駆動装置13と共に昇降する。ガイドレール11の途中にはオーガースクリュー12を案内する固定ガイド17が取り付けられている。
【0023】
オーガースクリュー12の下端部は台車2に取り付けたオーガースクリューホルダー20によって位置決めされる。以下、オーガースクリューホルダー20及びその支持構造につき説明する。
【0024】
オーガースクリューホルダー20はパイプ状の部材であり、オーガースクリュー12の螺旋を2巻き以上、所定の隙間を存して受け入れる軸線方向長さ及び内径を備える。オーガースクリューホルダー20の側面には支持マウント21が固定されている。オーガースクリューホルダー20を支持するのは多関節アーム30(図3参照)及びその先端に設けられた傾き可変支持装置50(図4参照)である。
【0025】
多関節アーム30は水平多関節形式であり、第1アーム部31、第2アーム部32、及び第3アーム部33を、それぞれ水平面内でのみ旋回できるよう順次関節部で連結したものである。第1アーム部31は台車2のシャーシー2aの前部中央に固定したブラケット34に関節部35で連結され、第2アーム部32は第1アーム部31の先端に関節部36で連結され、第3アーム部33は第2アーム部32の先端に関節部37で連結されている。
【0026】
多関節アーム30の屈曲形状はアクチュエーターの動作で変化する。本実施形態ではアクチュエーターとしてクレビスタイプの油圧シリンダーを採用している。
【0027】
シャーシー2aと第1アーム部31を油圧シリンダー38で連結し、油圧シリンダー38の伸縮量でシャーシー2aに対する第1アーム部31の角度を変化させ、その角度を固定する。第1アーム部31と第2アーム部32を油圧シリンダー39で連結し、油圧シリンダー39の伸縮量で第1アーム部31に対する第2アーム部32の角度を変化させ、その角度を固定する。第2アーム部32と第3アーム部33を油圧シリンダー40で連結し、油圧シリンダー40の伸縮量で第2アーム32に対する第3アーム部33の角度を変化させ、その角度を固定する。油圧シリンダー38、39、40の伸縮量を制御することにより、第3アーム部33の先端を所定の二次元可動領域内で自由に位置決めし、その位置に固定することができる。
【0028】
アクチュエーターとして電動機と減速機の組み合わせを採用することも可能である。その組み合わせは各関節部に配置されることになる。
【0029】
第3アーム部33の先端部上面にはポール41が鉛直に立設される。ポール41には傾き可変支持装置50のベース51が昇降可能、且つポール41に対し回転不能に取り付けられる。ベース51は、ポール41の上端のストッパー41aに当たるところまで、所定ストロークの上昇が可能である。ベース51を上昇させるについては懸垂ケーブル16と同様の懸垂ケーブル42を用いることができるが、油圧シリンダーやボールねじ等、他の駆動機構で上昇させることも可能である。
【0030】
ベース51の側面からは支持軸52が水平に突き出す。支持軸52は中間支持ブロック53を支持する。中間支持ブロック53はオーガースクリューホルダー20の支持マウント21から突き出した支持軸54を支持する。支持軸52はベース51と中間支持ブロック53の一方に対して固定、他方に対して回転自在であり、支持軸54は支持マウント21と中間支持ブロック53の一方に対して固定、他方に対して回転自在である。この機構により、中間支持ブロック53は支持軸52の軸線まわりに角度可変、支持マウント21は支持軸54の軸線まわりに角度可変となる。
【0031】
支持軸52の軸線と支持軸54の軸線は直交する。ベース51に対する中間支持ブロック53の角度θAと、中間支持ブロック53に対する支持マウント21の角度θBを変化させることにより、オーガースクリューホルダー20の傾き、すなわち鉛直方向における角度をあらゆる方向に調整することができる。
【0032】
傾き可変支持装置50にはオーガースクリューホルダー12の鉛直方向の角度を変化させるアクチュエーターが設けられている。本実施形態で用いられているのはトラニオンタイプの油圧シリンダーである。
【0033】
ベース51に固定されたブラケット55のフォーク部55aに、油圧シリンダー56を傾動可能に取り付ける。油圧シリンダー56はフォーク部55aに対し支持軸52に直角な面内で傾く。油圧シリンダー56のロッドは中間支持ブロック53から突き出したブラケット57に連結されている。
【0034】
中間支持ブロック53に固定されたブラケット58のフォーク部58aには油圧シリンダー59を傾動可能に取り付ける。油圧シリンダー59はフォーク部58aに対し支持軸54に直角な面内で傾く。油圧シリンダー58のロッドは支持マウント21から突き出した連結軸60に連結されている。
【0035】
油圧シリンダー56が伸縮するとベース51に対する中間支持ブロック53の角度θAが変化し、油圧シリンダー59が伸縮すると中間支持ブロック53に対する支持マウント21の角度θBが変化する。すなわち油圧シリンダー56、59の伸縮量を制御することにより、オーガースクリューホルダー20の鉛直方向における角度を自由に調整し、調整後はその角度を固定することができる。
【0036】
オーガー1により基礎杭建て込み穴の掘削を行う際は、キャタピラー3を駆動してオーガー1を掘削現場に移動させ、オーガースクリュー12の位置決めを行う。油圧シリンダー38、39、40を制御して多関節アーム30の屈曲形状を変えることによりオーガースクリューホルダー20の位置を正確に設定し、また油圧シリンダー56、59を制御してオーガースクリューホルダー20の軸線を正確に鉛直にする。それからステイ10を伸縮させてガイドリーダー9の軸線を正確に鉛直にする。傾き可変支持装置50のベース51はこの時最も下がった位置にあり、オーガースクリューホルダー20は地盤Gから余り離れていない。
【0037】
このようにオーガースクリューホルダー20とガイドリーダー9を鉛直にし、鉛直な穴を掘削する準備が整ったところで、回転駆動装置13の運転を開始する。オーガースクリュー12を回転させつつ回転駆動装置13を下降させれば、地盤Gには鉛直な穴が掘削されることになる。オーガースクリューホルダー20は掘削の間中オーガースクリュー12を保持する。オーガースクリューホルダー20は台車2のシャーシー2aに取り付けられているので、旋回部4の遊びの影響を受けない。そして台車2が地盤Gに対してずれるということはまずあり得ないので、オーガースクリューホルダー20はオーガースクリュー12を確実に所定位置に位置決めする。
【0038】
オーガースクリューホルダー20の内部に掘削土が溜まってきたときには傾き可変支持装置50のベース51を引き上げ、オーガースクリューホルダー20の下端と地盤Gとの隙間を広げる。そして掘削土をオーガースクリューホルダー20の外に排出した後、再びオーガースクリューホルダー20を下げ、掘削を続行する。
【0039】
所定の深さの鉛直な穴を掘削できたらオーガースクリュー12を引き上げ、当該オーガー1を利用して、あるいはオーガー1とは別の機械を使用して、基礎杭の建て込みを行う。
【0040】
以上本発明の実施形態につき説明したが、発明の主旨を逸脱しない範囲でさらに種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明はスクリューで鉛直な穴を掘削するオーガーに広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】オーガーの側面図
【図2】ガイドリーダーの水平断面図
【図3】オーガースクリューホルダー部分の平面図
【図4】オーガースクリューホルダーの傾き可変支持装置の斜視図
【符号の説明】
【0043】
G 地盤
1 オーガー
2 台車
2a シャーシー
4 旋回台
5 作業プラットホーム
9 ガイドリーダー
12 オーガースクリュー
13 回転駆動装置
20 オーガースクリューホルダー
30 多関節アーム
38、39、40 油圧シリンダー(アクチュエーター)
50 傾き可変支持装置
56、59 油圧シリンダー(アクチュエーター)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーガーの台車のシャーシーに、オーガースクリューの位置決めを行うオーガースクリューホルダーを取り付けたことを特徴とするオーガースクリューホルダー装置。
【請求項2】
前記オーガースクリューホルダーは前記シャーシーに取り付けられた多関節アームに支持されるものであり、この多関節アームにはその屈曲形状を変化させるアクチュエーターが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のオーガースクリューホルダー装置。
【請求項3】
前記多関節アームは水平多関節形式であることを特徴とする請求項2に記載のオーガースクリューホルダー装置。
【請求項4】
前記オーガースクリューホルダーは傾き可変支持装置を介して前記多関節アームに支持されるものであり、前記傾き可変支持装置にはオーガースクリューホルダーの鉛直方向の角度を変化させるアクチュエーターが設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載のオーガースクリューホルダー装置。
【請求項5】
前記オーガースクリューホルダーは前記多関節アームに対し上下方向の相対変位が可能であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のオーガースクリューホルダー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−285027(P2007−285027A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−114363(P2006−114363)
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【特許番号】特許第3856814号(P3856814)
【特許公報発行日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【出願人】(505404471)美和産業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】