説明

オーディオスピーカ装置

スピーカ装置は、低周波数範囲でサウンドを再生し、第1の軸方向と第1の中心点とを有する第1のサウンドトランスデューサ(101)を有する。外装置は、さらに、高周波数範囲のサウンドを再生する、第1のトランスデューサの前にマウントされ、第2の軸方向と第2の中心点とを有する第2のサウンドトランスデューサ(103)を有する。第1の軸と第2の軸が成す角度が45°乃至135°であり、第1の中心点と第2の中心点との距離がクロスオーバー周波数に対応するクロスオーバー波長より長くないように、トランスデューサを配置する。低周波数範囲と高周波数範囲との間のクロスオーバー周波数は1.5kHz乃至3kHzの区間内になるように選択する。点音源近似がよくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスピーカ装置に関し、特に点音源オーディオ再生に近いスピーカに関するが、これに限定されるものではない。
【背景技術】
【0002】
多くのオーディオアプリケーションにおいて、理想的なサウンド放射器(sound radiator)は、大きさのない、全帯域幅、無指向性の振動球面であり、点音源とも呼ばれる。しかし、このようなサウンド放射特性を実現することは実際には不可能であり、要求どうしが衝突するため、このような理想的なサウンド発生に近づけようとする試みは困難であることが分かっている。例えば、超小型スピーカ(すなわち大きさのないスピーカに近いもの)が、大きなサウンドレベルで低音周波数を再生するのに必要となる大量の空気を動かすことは難しい。
【0003】
従来のスピーカボックスには、2つ以上のトランスデューサが含まれている。これらのトランスデューサは、垂直に並べられ、周波数がクロスオーバーする領域では同じ周波数範囲の再生をうけもっている。そのためスピーカは非常に指向的となり、垂直面で強い干渉パターンを示す。
【0004】
スピーカ設計の一例が特許文献1に記載されている。これに開示されたスピーカ設計では、低周波数スピーカを、これとは距離を離して設置した高周波数スピーカと組み合わせて用いる。具体的には、2つのスピーカを、クロスオーバー周波数の波長の少なくとも2倍の距離を離して配置しなければならない。
【0005】
特許文献1のシステムは興味深い特徴を有している。例えば、低周波数スピーカと高周波数スピーカとが独立に再生する周波数では、指向性が低い。また、スピーカどうしの干渉は低レベルである。このシステムが再生するサウンドステージ(sound stage)は非常に広く深いので、スピーカボックスがあるとはほとんど感じられない。
【0006】
このように、特許文献1のシステムは、スピーカがサウンドステージに溶け込んだように感じられる非常に現実感のあるリスニング体験を提供する。しかし、このデザインの欠点は、スピーカが大きくなるということであり、一般的には大型のフロア設置型スピーカへの使用しか適していない。
【0007】
スピーカデザインの他の例として、高周波数トランスデューサを低周波数トランスデューサの前に、またはその中に配置した、同軸スピーカ構成を用いたものがある。トランスデューサは所望のリスニング位置に直接向けて配置され、認識される両トランスデューサの音響中心は一致する。しかし、このようなスピーカは、低周波数トランスデューサ表面における高周波の反射による影響を受けて高い指向性パターンを示し、点音源オーディオ放射が必要なアプリケーションには適していない。
【0008】
特許文献2には、同軸スピーカ構成を修正して、高周波数ツイータと広帯域スピーカとの同軸構成が開示されている。この同軸構成は一部が上向きに配置されており、上向きのサウンドを水平方向に反射する反射器が設けられ、これにより指向性を低減している。しかし、このスピーカデザインは多くの実施形態で好適な特性を発揮するが、欠点もある。例えば、デザインが複雑であり、寸法の変化に敏感である。例えば、所望の効果を得るためには、反射器を注意深く設計、製造、取り付けしなければならない。したがって、製造の最適化が困難であり、コストがかかる。また、アプリケーションによっては、このスピーカ構成の音質は最適ではない。具体的に、反射音を用いるので、リスナが受けるサウンドイメージがフォーカスの弱いものとなってしまう。
【0009】
他の大型フロア設置型スピーカの例として、Linkwitzラボが設計し次のウェブサイトで開示している「プルート」スピーカがある:http://www.linkwitzlab.com/Pluto/intro.htm
プルートスピーカでは、前方放射型広帯域サウンドトランスデューサを低周波数ウーファとともに用いている。低周波数ではウーファにより広帯域サウンドトランスデューサを補助する。広帯域サウンドトランスデューサと低周波数ウーファとのカットオフ周波数は1kHzである。このデザインでは、比較的大きなチューブによる高音響負荷(high acoustic load)で比較的大きなスピーカをサポートして、広帯域サウンドトランスデューサを実施している。広帯域サウンドトランスデューサはこのチューブにマウントされる。このスピーカデザインでは、所望のオーディオ特性を得るために、比較的大きな前方放射型(frontfiring)サウンドトランスデューサに大きな音響負荷を結合する必要がある。このため前方放射型サウンドトランスデューサを比較的大きな筐体(enclosure)にマウントしなければならない。このデザインでは低周波数ウーファを上方放射型構成で配置している。
【0010】
プルートスピーカは、多くのオーディオアプリケーションにおいて好適な性能を発揮するが、再生音質は最適ではなく、このデザインに起因する指向性が比較的高い。特に、上部でウーファの音波が反射と回折を起こし、クロスオーバー周波数近辺の波長と比較して無視できない大きさとなる。高周波数用に大きな駆動部を用いることにより、結果として指向性が高くなる。また、このデザインは大型のフロア設置型のスピーカであり、多くのアプリケーションには適していない。
【0011】
したがって、スピーカ装置を改良する利益がある。特に、小型で、低コストで、製造が容易で、デザインに柔軟性があり、音質がよく、配置が容易で、点音源に近く、性能がよいスピーカ装置が好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際出願公開第2006/097857号
【特許文献2】米国特許公開第2003/0179899A1号明細書
【発明の概要】
【0013】
従って、本発明は、好ましくは、単独でまたは組み合わされて、上記の1つ以上の不利な点を緩和もしくは解消するものである。
【0014】
本発明の一態様によると、スピーカ装置は、低周波数範囲でサウンドを再生し、第1の軸方向と第1の中心点とを有する第1のサウンドトランスデューサと、高周波数範囲のサウンドを再生する、前記第1のトランスデューサの前にマウントされ、第2の軸方向と第2の中心点とを有する第2のサウンドトランスデューサとを有し、前記第1の軸方向と第2の軸方向がなす角は45°乃至135°であり、前記低周波数範囲と高周波数範囲とのクロスオーバー周波数は1.5kHz乃至3kHzの区間内にあり、前記第1の中心点と第2の中心点との距離は前記クロスオーバー周波数に対応するクロスオーバー波長より長くない。
【0015】
本発明はスピーカ装置を改良するものであり得る。例えば、ブックシェルフ型のスピーカ装置に好適な小型のスピーカ装置を作ることができる。多くのシナリオで、音質を改良し得る。特に、点音源特性を改良し得る。指向性サウンドと無指向性サウンド間のトレードオフを改良でき、フォーカスの効いた音像を生成しつつ、点音源に近いものとして聞こえる。本デザインにより、第2のサウンドトランスデューサ用に非常に小さいマウンティング構成を用い、特に視覚的インパクトをよくすることができる。2つのトランスデューサ間の距離がクロスオーバー周波数の波長に対して短いので、コムフィルタ効果(comb-filtering effects)がさらに低減する。
【0016】
クロスオーバー周波数は、無響状態で測定したときに、第2のサウンドトランスデューサから1メートルの距離において、第1と第2のサウンドトランスデューサが同じ音圧レベルとなる周波数である。
【0017】
サウンドトランスデューサの中心点は、対称点、サウンドトランスデューサの音響中心、幾何学的な中心点、及び/またはサウンドトランスデューサの重心であってもよい。具体的に、中心点は、軸方向が交わる放射面の点などの、トランスデューサの放射面の対称点であり得る。
【0018】
第1のサウンドトランスデューサは高効率ツイータであってもよい。スピーカ装置は、さらに、入力オーディオ信号から、第1のトランスデューサに低周波数駆動信号を供給し、第2のトランスデューサに高周波数駆動信号を供給する駆動部を有する。
【0019】
サウンドトランスデューサの軸上方向(on-axis direction)は具体的には対称放射軸である。例えば、サウンドトランスデューサは回転不変すなわち軸上方向について対称である。軸上方向はサウンドトランスデューサの最大サウンド出力の方向であってもよい。このように、軸上方向は、最大サウンドエネルギーが放射される方向に一致することもある。軸上方向はサウンドトランスデューサの中心を通る軸で定義してもよい。
【0020】
本発明の任意的特徴によると、前記スピーカ装置が動作状態のとき、前記第1のサウンドトランスデューサは、上方放射構成であり、前記第1の軸方向は垂直方向に対して50°未満の角度をなす。
【0021】
これにより多くのシナリオでは性能が向上する。特に、点音源近似がよくなり、一方スピーカ装置を実際に配置できる。動作状態は、具体的には、スピーカ装置が床やシェルフなどの水平面上に置かれている状態に対応する。
【0022】
多くの実施形態において、30°未満の角度の場合に、特に有利である。
【0023】
本発明の任意的特徴によると、前記スピーカ装置が動作状態のとき、前記第2のサウンドトランスデューサは、前方放射構成であり、前記第2の軸方向は水平方向に対して50°未満の角度をなす。
【0024】
これにより多くのシナリオでは性能が向上する。特に、点音源近似がよくなり、一方スピーカ装置を実際に配置できる。前方放射構成により特に音像のフォーカスがよくなる。動作状態は、具体的には、スピーカ装置が床やシェルフなどの水平面上に置かれている状態に対応する。
【0025】
多くの実施形態において、20°未満の角度の場合に、特に有利である。
【0026】
本発明の任意的特徴によると、前記第2のサウンドトランスデューサの筐体の最大寸法は前記クロスオーバー波長の1/4未満である。
【0027】
これにより、多くの実施形態では、性能がよくなり、特に、高音質サウンド再生ができるスピーカ装置を提供でき、点音源サウンド放射への近似がよくなる。特に、本特徴により、トランスデューサ間の干渉が低減し、音像認識が改善される。
【0028】
筐体は第2のサウンドトランスデューサ専用の筐体であってもよく、他のサウンドトランスデューサを含まなくてもよい。
【0029】
本発明の任意的特徴によると、前記第2のサウンドトランスデューサの筐体の体積は4d未満であり、ここでdは前記第2のサウンドトランスデューサの放射面の最大寸法である。
【0030】
これにより、多くの実施形態では、性能がよくなり、特に、高音質サウンド再生ができるスピーカ装置を提供でき、点音源サウンド放射への近似がよくなる。特に、本特徴により、トランスデューサ間の干渉が低減し、音像認識が改善される。
【0031】
筐体は第2のサウンドトランスデューサ専用の筐体であってもよく、他のサウンドトランスデューサを含まなくてもよい。最大寸法は例えば円形の放射面の直径に対応する。
【0032】
本発明の任意的特徴によると、前記第2のサウンドトランスデューサの筐体の体積は150cm未満である。
【0033】
本発明の任意的特徴によると、第1のサウンドトランスデューサの放射面の外周を第1の軸方向に無限に延ばして画成される空間内にある、第2のサウンドトランスデューサのマウント手段の要素の体積は、6d未満であり、ここでdは、第2のサウンドトランスデューサの放射面の最大寸法である。
【0034】
これにより、多くの実施形態では、性能がよくなり、特に、高音質サウンド再生ができるスピーカ装置を提供でき、点音源サウンド放射への近似がよくなる。特に、本特徴により、トランスデューサ間の干渉が低減し、音像認識が改善される。
【0035】
マウンティング構成は、第2のサウンドトランスデューサ用の筐体と、第2のサウンドトランスデューサ自体の要素とを含み得る。筐体は第2のサウンドトランスデューサ専用の筐体であってもよく、他のサウンドトランスデューサを含まなくてもよい。最大寸法は例えば円形の放射面の直径に対応する。
【0036】
実施形態によっては、第1のサウンドトランスデューサの放射面の外周を第1の軸方向に無限に延ばして画成される空間内にある、第2のサウンドトランスデューサのマウント手段の要素の体積は、3(0.5d)未満であり、ここでdは、第1のサウンドトランスデューサの放射面の最大寸法である。
【0037】
これにより、多くの実施形態では、性能がよくなり、特に、高音質サウンド再生ができるスピーカ装置を提供でき、点音源サウンド放射への近似がよくなる。特に、本特徴により、トランスデューサ間の干渉が低減し、音像認識が改善される。
【0038】
マウンティング構成は、第2のサウンドトランスデューサ用の筐体と、第2のサウンドトランスデューサ自体の要素とを含み得る。筐体は第2のサウンドトランスデューサ専用の筐体であってもよく、他のサウンドトランスデューサを含まなくてもよい。最大寸法は例えば円形の放射面の直径に対応する。
【0039】
本発明の任意的特徴によると、第1のサウンドトランスデューサの放射面の外周を第1の軸方向に無限に延ばして画成される空間内にある、第2のサウンドトランスデューサのマウント手段の要素の体積は、200cm未満である。
【0040】
本発明の任意的特徴によると、スピーカ装置は、さらに、前記第1のサウンドトランスデューサのみを含む第1の筐体と、前記第2のサウンドトランスデューサのみを含む第2の筐体と、前記第2の筐体に対して前記第1の筐体を配置するマウント手段とを有する。
【0041】
これにより、実施が容易になり、及び/またはオーディオ性能がよくなる。特に、第1の筐体は第1のサウンドトランスデューサ以外のアクティブサウンドトランスデューサを有さず、第2の筐体は第2のサウンドトランスデューサ以外のアクティブサウンドトランスデューサを有さなくてもよい。
【0042】
第2の筐体は回折エッジを有さないように設計され得る。よって、滑らかな、例えば丸い、またはしずく形の筐体を用いることができる。
【0043】
本発明の任意的特徴によると、前記第1のサウンドトランスデューサの放射面の外周を前記第1の軸方向に無限に延ばして画成される空間内にある前記マウント手段の体積は、0.5d未満であり、ここでdは前記第2のサウンドトランスデューサの放射面の最大寸法である。
【0044】
これにより、多くの実施形態では、性能がよくなり、特に、高音質サウンド再生ができるスピーカ装置を提供でき、点音源サウンド放射への近似がよくなる。特に、本特徴により、トランスデューサ間の干渉が低減し、音像認識が改善される。最大寸法は例えば円形の放射面の直径に対応する。
【0045】
本発明の任意的特徴によると、第1のサウンドトランスデューサの放射面の外周を第1の軸方向に無限に延ばして画成される空間内にある、第2のサウンドトランスデューサのマウント手段の要素の体積は、200cm未満である。
【0046】
これにより、多くの実施形態では、性能がよくなり、特に、高音質サウンド再生ができるスピーカ装置を提供でき、点音源サウンド放射への近似がよくなる。特に、本特徴により、トランスデューサ間の干渉が低減し、音像認識が改善される。
【0047】
マウンティング構成は、第2のサウンドトランスデューサ用の筐体と、第2のサウンドトランスデューサ自体の要素とを含み得る。筐体は第2のサウンドトランスデューサ専用の筐体であってもよく、他のサウンドトランスデューサを含まなくてもよい。最大寸法は例えば円形の放射面の直径に対応する。
【0048】
本発明の任意的特徴によると、前記第2のサウンドトランスデューサの筐体の体積は21リットル未満である。
【0049】
本発明により、多くの実施形態では、性能がよくなり、特に、高音質サウンド再生ができるスピーカ装置を提供でき、点音源サウンド放射への近似がよくなり、一方、ブックシェルフサイズスピーカなどに好適な小さい物理的サイズを維持できる。
【0050】
本発明の任意的特徴によると、第2のサウンドトランスデューサのマウントされた要素の第1の軸方向への投影により覆われる第1のサウンドトランスデューサの放射面の面積は、放射面の総面積の50%未満である。
【0051】
これにより、多くの実施形態では、性能がよくなり、特に、高音質サウンド再生ができるスピーカ装置を提供でき、点音源サウンド放射への近似がよくなる。特に、本特徴により、トランスデューサ間の干渉が低減し、音像認識が改善される。
【0052】
本発明の任意的特徴によると、第2の中心点は、第1のサウンドトランスデューサの放射面の外周を第1の軸方向に無限に延ばして画成される空間内にある。
【0053】
これにより、多くの実施形態では、性能がよくなり、特に、高音質サウンド再生ができるスピーカ装置を提供でき、点音源サウンド放射への近似がよくなる。
【0054】
本発明の任意的特徴によると、第2のサウンドトランスデューサの最近点から第1の軸方向への距離は、第1のサウンドトランスデューサの放射面の最大寸法の1/4未満である。
【0055】
これにより、多くの実施形態では、性能がよくなり、特に、高音質サウンド再生ができるスピーカ装置を提供でき、点音源サウンド放射への近似がよくなる。
【0056】
本発明の任意的特徴によると、第1の中心点と第2の中心点との距離はクロスオーバー波長の1/10より大きい。
【0057】
これにより、多くの実施形態で性能が向上し、特に、サウンドトランスデューサ間の干渉が低減でき得る。特に、第1のサウンドトランスデューサの、第2のサウンドトランスデューサからのオーディオ信号の反射が低減できる。
【0058】
本発明の一態様によると、請求項1に記載のスピーカ装置を提供する方法は、低周波数範囲でサウンドを再生し、第1の軸方向と第1の中心点とを有する第1のサウンドトランスデューサと、高周波数範囲のサウンドを再生する、前記第1のトランスデューサの前にマウントされ、第2の軸方向と第2の中心点とを有する第2のサウンドトランスデューサとを有し、前記第1の軸方向と第2の軸方向がなす角は45°乃至135°であり、前記低周波数範囲と高周波数範囲とのクロスオーバー周波数は1.5kHz乃至3kHzの区間内にあり、前記第1の中心点と第2の中心点との距離は前記クロスオーバー周波数に対応するクロスオーバー波長より長くない。
【0059】
本発明の上記その他の態様、特徴、及び利点を、以下に説明する実施形態を参照して明らかにして説明する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図面を参照して、本発明の実施形態を例示により説明する。
【図1】本発明の実施形態によるスピーカ装置の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態によるスピーカ装置の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態によるスピーカ装置の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態によるスピーカ装置の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態によるスピーカ装置の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態によるスピーカ装置の高周波数トランスデューサの測定したポーラーパターンの一例を示す図である。
【図7】従来のブックシェルフサイズのスピーカバッフルにマウントした高周波数トランスデューサの測定したポーラーパターンの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1は、本発明の実施形態によるスピーカ装置の一例を示す。このスピーカ装置は、低周波数(サウンド)トランスデューサ101を有する。このトランスデューサはこの例では低周波数スピーカである。このスピーカ装置は、さらに、高周波数(サウンド)トランスデューサ103を有する。このトランスデューサはこの例では高周波数・高効率ツイータである。2つのサウンドトランスデューサ101、103はツーウェイスピーカ装置であり、主に低周波数トランスデューサ101が低周波数範囲のサウンドを発生し、主に高周波数トランスデューサ103が高周波数範囲のサウンドを発生する。このスピーカ装置は、クロスオーバー周波数(cross-over frequency)を有している。この周波数は、2つのトランスデューサ101、103がサウンドの発生に等しく貢献する周波数として定義される。特に、クロスオーバー周波数は、無響状態で測定したときに、低周波数トランスデューサ101と高周波数トランスデューサ103が、高周波数トランスデューサ103から1メートルの距離において、同じ音圧レベルを生成する周波数であると定義できる。
【0062】
スピーカ装置は駆動回路105により駆動される。この駆動回路は、再生するオーディオ信号を受け取り、低周波数トランスデューサ101と高周波数トランスデューサ103にそれぞれ駆動信号を発生する。駆動会105は、クロスオーバーフィルタを有していても良い。このフィルタは、入力信号のローパスフィルタリングを行い、低周波数トランスデューサ101用の駆動信号を発生し、入力信号のハイパスフィルタリングを行い、高周波数トランスデューサ103用の駆動信号を発生する。
【0063】
言うまでもなく、クロスオーバー周波数は駆動回路105の特徴に応じて決定できる。このように、実施形態によっては、駆動回路105をスピーカ装置の一部と考え、システムのクロスオーバー周波数を決定するときに、クロスオーバーフィルタの影響を考慮してもよい。
【0064】
言うまでもなく、以下の説明ではスピーカシステムがツーウェイシステムである実施形態にフォーカスするが、別の実施形態ではスリーウェイ以上のシステムを用いてもよい。例えば、別の実施形態では、図1の低周波数トランスデューサ101が分担する周波数範囲を、ミッドレンジスピーカとサブウーファなどの複数のスピーカで分担してもよい。
【0065】
各トランスデューサは軸方向と中心点を有する。
【0066】
サウンドトランスデューサの軸方向(on-axis direction)は具体的には対称放射軸である。例えば、サウンドトランスデューサは回転不変すなわち軸方向について対称である。軸方向はサウンドトランスデューサの最大サウンド出力の方向であってもよい。このように、軸方向は、最大サウンドエネルギーが放射される方向に一致することもある。軸方向はサウンドトランスデューサの中心を通る軸で定義してもよい。
【0067】
実施形態によっては、中心点はサウンドトランスデューサの音響中心(音波が放射されたとみなせる点)として定義できる。あるいは、中心点はサウンドトランスデューサの幾何学的な中心点であってもよい。具体的には、中心点はトランスデューサの放射面の中心点としてもよい。例えば、対称的な放射面の場合、中心点は放射面の対称中心であり得る。例えば、円形の放射面の場合、中心点は放射面の中心である。このように、スピーカの中心点はスピーカの振動板の中点(すなわち、振動板面の中心点)であってもよい。シナリオによっては、中心点はトランスデューサの重心であると考えることもできる。
【0068】
具体的に、中心点は、軸方向がサウンドトランスデューサの放射面と交わる点であってもよい。
【0069】
このシステムでは、低周波数トランスデューサ101と高周波数トランスデューサ103は、両者の軸方向が45°乃至135°(両端値を含む)をなすように構成される。具体的に、図2に示したように、低周波数トランスデューサ101と高周波数トランスデューサ103は、両者の軸方向が互いに角度φ(ほぼ90°)をなすようにマウントできる。多くのシナリオでは、角度が70°乃至130°のときに、特に相対角度が90°乃至130°のときに(すなわち、高周波数トランスデューサ103が少し上向きのときに)、最良の性能が得られる。
【0070】
図2に示した具体例では、低周波数トランスデューサ101は上方放射構成で配置されている。このように、スピーカ装置を使用状態(operational configuration)にするとき、例えば、低周波数トランスデューサ101の筐体を床や棚などのほぼ水平面上に配置し、低周波数トランスデューサ101の軸方向が水平方向とほぼ90°の角度をなす、すなわちほぼ垂直になる。
【0071】
さらに、高周波数トランスデューサ103を前方放射構成とする。このように、スピーカ装置を使用状態(operational configuration)にするとき、例えば、低周波数トランスデューサ101の筐体を床や棚などのほぼ水平面上に配置し、高周波数トランスデューサ103の軸方向が垂直方向とほぼ90°の角度をなす、すなわちほぼ水平になる。
【0072】
このように、本スピーカ装置では、低い方の周波数範囲は上方向に放射され、一般的には様々な反射を経て間接的パスを経てリスナに到達する。しかし、高い方の周波数範囲はリスニング位置に直接向けて放射され、拡散が少なく、より直接的に聞こえる。
【0073】
低い方の周波数範囲と高い方の周波数範囲のクロスオーバーは1.5kHz乃至3kHz(両端値を含む)である。このように、前方放射高周波数トランスデューサ103からの直接的なサウンド放射は比較的高周波数に限定され、低周波数と中間周波数は間接的に放射される。これにより、オーディオパーセプション(audio perception)が改善し、特に点音源近似がよくなる。特に、例えば1kHz以下のクロスオーバー周波数を用いる同様の装置と比較して、中域周波数を上向きに放射することにより、点音源近似がよくなる。さらに、これにより著しく方向を認識できなくなることはない。高周波数が直接放射されており、リスナに方向についてのより大きな手がかりを提供するからである。このように、フォーカスした音像(sound image)を維持できる。
【0074】
高周波数トランスデューサ103は低周波数トランスデューサ101に非常に近いところにある。具体的に、2つのトランスデューサ101、103の中心点間の距離はクロスオーバー周波数の波長より短い。そのため、装置を非常に小さくでき、例えばブックシェルフスピーカサイズでの実施にも好適である。トランスデューサ101、103の間の干渉と反射を制御・低減することにより、トランスデューサ101、103をこのように近づけられる。
【0075】
高周波数トランスデューサ103は低周波数トランスデューサ101の上にある。このように、高周波数トランスデューサ103は、低周波数トランスデューサ101の主サウンド放射方向、すなわち低周波数トランスデューサ101のサウンド放射利得が最も高い側に配置されている。さらに、高周波数トランスデューサ103は、軸方向に沿った低周波数トランスデューサ101への高周波数トランスデューサ103の投影が、低周波数トランスデューサ101の放射面内に少なくとも部分的には入るように、配置されている。
【0076】
このように、高周波数トランスデューサ103は、少なくとも部分的に、低周波数トランスデューサ101の軸方向と並行な方向に、低周波数トランスデューサ101の放射面の外周を無限に延ばすことにより画成される仮想的なチューブの空間内にある。典型的な中音域スピーカの場合、放射面は膜またはダイアフラムであり、これが動いて音を発生する。円形膜の場合、膜の外周を軸方向に延ばすことにより仮想的な円筒が画成される。この無限に長い円筒は、軸方向に一致する中心軸を有し、膜の直径と一致する直径を有する。図2はこの例を示す。仮想的な円筒は中心軸として軸方向201を有し、壁(の断面203)は低周波数トランスデューサ101の放射面の外周により画成されている。
【0077】
高周波数トランスデューサ103は、少なくとも部分的に、この仮想的なチューブ内に配置され、典型的にはこの仮想的なチューブ内に完全に入っている。多くの実施形態では、高周波数トランスデューサ103を低周波数トランスデューサ101に対して中心に配置することにより、視覚的なインパクトや音質を改良できる。この例では、高周波数トランスデューサ103の中心点は、実質的に低周波数トランスデューサ101の軸方向にある。多くの実施形態では、高周波数トランスデューサ103から低周波数トランスデューサ101の軸方向への距離を、低周波数トランスデューサ101の放射面の最大寸法の1/4より小さくすることにより、性能と視覚的インパクトが良くなる。特に、軸方向との距離を、低周波数トランスデューサ101のサウンド発生膜の直径の1/4より小さくしてもよい。
【0078】
このように、高周波数トランスデューサ103は、低周波数トランスデューサ101の主ビーム方向に配置され、低周波数トランスデューサ101の近くに配置される。トランスデューサは近づけて配置するので、低周波数トランスデューサ101の中心点と高周波数トランスデューサ103の中心点との距離がクロスオーバー周波数の波長よりも短い(またはその波長と等しい)。
【0079】
高周波数トランスデューサ103が低周波数トランスデューサ101に近いので、小型のスピーカ装置を作ることができる。特に、これにより、高音質で点音源に近いブックシェルフサイズのスピーカを作れる。
【0080】
さらに、高周波数トランスデューサ103の中心点と低周波数トランスデューサ101の中心点との距離が、クロスオーバー波長の1/10より大きいように、トランスデューサ101、103を配置する。こうすることにより、音質が改善され、特に一方のトランスデューサから他方のトランスデューサへの干渉と反射を低減できる。特に、低周波数トランスデューサ101の放射面への高周波数信号の反射が減少し、サウンドの干渉とクロスカラーレーション(cross coloration)が減少する。
【0081】
低周波数トランスデューサ101と高周波数トランスデューサ103は別の筐体にマウントする。図3は、説明したスピーカ装置を有するスピーカシステムの一例を示す。この例では、低周波数トランスデューサ101は第1の筐体301にマウントされる。この筐体は例えば密閉式音響筐体であり、例えば低音反射部やパッシブサウンドトランスデューサなどを有している。いうまでもなく、実施形態によっては、第1の筐体301は、サブウーファスピーカなどの複数のサウンドトランスデューサを有していてもよい。しかし、図3の例では、低周波数筐体は低周波数トランスデューサ101以外の(アクティブ)サウンドトランスデューサを有していない。
【0082】
第1の筐体301の体積は比較的小さく抑えることができ、21リットル未満の体積で高音質再生が可能である。そのため、スピーカシステムをブックシェルフスピーカ市場など用に設計できる。この例では、低周波数トランスデューサ101は直径が15.5cmのスピーカであり、低音域と中音域で高音質再生ができる。
【0083】
同様に、高周波数トランスデューサ103は、低周波数トランスデューサ101の上に配置された第2の筐体303にマウントされる。第2の筐体303は、高周波数トランスデューサ103以外のサウンドトランスデューサを有していない。この例では、高周波数トランスデューサ103は高効率ツイータであり、丸い形状または滑らかな形状を有する音響筐体にマウントされ、回折効果を減少またはほぼ無くしている。
【0084】
第2の筐体303は、マウント手段(mounting structure)305により第1の筐体301に対して固定されている。この例では、マウント手段は第1と第2の筐体301、303に固定された単一の支持要素であり、第1の筐体301に対して第2の筐体303を所望の位置に保持するような形状を有している。
【0085】
干渉を低く抑え、点音源近似のよくするため、第2の筐体303のサイズを小さくする。第2の筐体303の最大寸法はクロスオーバー波長の1/4未満である。特に、クロスオーバー周波数が1.5kHzの場合、第2の筐体303のどの断面の内径(internal length)も約6cm以下であり、クロスオーバー周波数が3kHzの場合、第2の筐体303のどの断面の内径も約3cm以下である。
【0086】
この例では、高周波数トランスデューサ103は、直径が約4cm、奥行きが約2.5cmのツイータである。ツイータは、最大径が約5cmであり、軸方向の長さが約4cmである筐体に入っている。
【0087】
第2の筐体303の体積は小さく、4d(dは高周波数トランスデューサ103の放射面の最大径)未満である。放射面は音響的な「ピストン」すなわち運動部分に対応すると考えることができ、一般的にはツイータ自体より(よってハウジング303自体より)小さい。
【0088】
この例では、直径が33.5mmで、直径が40mmのカバーグリルを有するツイータを用いた。この例では、放射面の直径は約25mmであり、4(2.5)=62.5cmとなる(これは直径が49mmの球と同じである)。このように、この例では、第2の筐体303の総体積は62.5cm未満になる。
【0089】
ほとんどの実施形態では、第2の筐体の体積を150cm未満とすることにより性能がよくなる。
【0090】
マウント手段305の音響的影響を低減するために、マウント手段305も、低周波数トランスデューサ101の放射面から見たときの体積と断面を小さくしているこの例では、マウント手段305は、第2の筐体303を支持する細長い要素である。一般的にマウント手段の断面寸法は、この細長い要素の長さの1/10未満である。このように、永細いバーやロッドを用いて、高周波数トランスデューサ103を、低周波数トランスデューサ101の上に保持する。
【0091】
低周波数トランスデューサ101への音響的影響を低減するように、物理的寸法は小さくしている。これは、低周波数トランスデューサ101の放射面から見た、第2の筐体303とマウント手段の大きさ(visual coverage)を小さくすることによる。特に、高周波数トランスデューサ103のマウント手段を低周波数トランスデューサ101の放射面に投影したとき、面積が放射面の総面積の50%未満になるように、システムを設計している。投影は軸方向に行う。
【0092】
また、低周波数トランスデューサ101の放射面の外周が画成する仮想的チューブ内にあるマウント手段の部分を小さくするように設計している。特に、高周波数トランスデューサ103用のマウント手段の要素の(高周波数トランスデューサ103自体も含む)総体積は6d(dは高周波数トランスデューサ103の放射面の最大寸法)未満である。例えば、前述のツイータの場合、この仮想的チューブ内のマウント手段の体積は94cm未満である。
【0093】
多くの実施形態では、もっと小型にしてもよい。多くの実施形態では、200cm未満の体積でも非常によい性能が得られる。
【0094】
高周波数トランスデューサ103のマウント手段の、仮想的チューブ内の部分の体積は、低周波数トランスデューサ101と比較して小さい。特に、仮想的チューブ内の体積は3(0.5d)未満である(dは第1のサウンドトランスデューサの放射面の最大寸法)。
【0095】
仮想的チューブ内のマウント手段305の体積は、非常に小さく、所望の物理的な強さを与えるために十分大きく設計されている。一般的に、マウント手段の総体積は0.5d未満である(dは高周波数トランスデューサ103の放射面の最大寸法)。
【0096】
クロスオーバー周波数が高いと、高周波数トランスデューサ103は、高周波数範囲のみをサポートすればよく、中音域や全音域をサポートする必要はなく、第2の筐体303は小さくできる。結果として、低周波数トランスデューサ101からのサウンドの第2の筐体303による反射を大幅に低減でき、点音源近似がよくなり、低周波数トランスデューサ101がサブウーファの性能を発揮するだけでなく、中音域全体をサポートできる。このように、上方放射の低音域・中音域サウンドトランスデューサに、高周波数範囲の前方放射のツイータを結合するデザインにより、反射とトランスデューサ間干渉を低減でき、音質がよくなり、点音源に近くなる。
【0097】
さらに、非常に小さい高周波数トランスデューサを用いると、サポート手段の物理的強さに関する要求により、反射を低減するだけでなく、外観をよくすることもできる。例えば、低周波数トランスデューサ101の大きな筐体の上に小さい丸い筐体が「浮いている」ような視覚的印象を与えることができる。
【0098】
言うまでもなく、筐体301、303とマウント手段305は、別々の要素である必要はなく、例えば一体で形成してもよい。
【0099】
言うまでもなく、個々までの説明では、低周波数トランスデューサ101が上方放射型(すなわち、軸方向が垂直)であるスピーカ装置にフォーカスしたが、実施形態によっては、低周波数トランスデューサ101はこの角度に対して傾いていてもよい。具体的に、図4と図5に示したように、低周波数トランスデューサ101の軸方向は、動作時の設定または配置で、傾いていてもよい。傾けることによって、低周波数サウンドと中間周波数サウンド間のサウンドバランスのトレードオフを、実施形態に応じて調整することができる。しかし、最も性能がよいのは、軸方向と垂直方向との間の角度が50°未満の場合であり、特に25°未満の場合である。特に、多くの場合では、軸方向と垂直方向との間の角度が15°乃至25°(両端値を含む)のときに、特によい性能が得られる。
【0100】
同様に、高周波数トランスデューサ103は水平軸方向に配置される必要はない。むしろ、性能がよいのは、軸方向と水平方向との間の角度が50°未満の場合であり、特に15°未満の場合である。
【0101】
説明したスピーカ装置はいくつもの良好な特徴を有する非常に有利なシステムを提供する。特に、本システムは、点音源サウンド放射に近く、それでいて小型の実装をすることができる。
【0102】
低周波数トランスデューサ101の上方放射構成により、水平面での無指向放射ができる。さらに、高周波数トランスデューサ103と低周波数トランスデューサ101の各点との間の経路差を平均化またはキャンセルでき、トランスデューサ間で干渉の低減に貢献する。
【0103】
低周波数トランスデューサ101の上に高周波数トランスデューサ103を配置するので、水平面内にいるリスナに対して、スピーカ筐体による高周波数トランスデューサ103の音波の反射が減る。よって、高周波数トランスデューサの配置により、放射された音波の低周波数トランスデューサの筐体での反射が主リスニングエリアに届くことを防止する。
【0104】
この構成により、高周波数トランスデューサ103をそれ用に最適化した筐体にマウントできる。
【0105】
高周波数トランスデューサ103は前方放射型であり、高周波数での周波数応答の線形性がよい(例えば、ツイータは高周波数では非常に指向的になる)。これにより音像がよりフォーカスされる。
【0106】
図6は、説明したアプローチによりマウントした高周波数トランスデューサ103の測定したポーラーパターンの一例を示す図である。図7は、従来のブックシェルフサイズのスピーカバッフルにマウントした同じ高周波数トランスデューサ103の測定したポーラーパターンの一例を示す図である。図から分かるように、説明したアプローチは高周波数で前方に進むビーム形状をしているが、バッフルマウントのツイータは周波数が上がるとポーラーパターンの形状が変化する。
【0107】
さらに、高周波数トランスデューサ103を1.5kHzより高い高周波数範囲に限定することにより、非常に小型の筐体とマウント手段を用いることができ、反射を低減し、視覚的影響を大幅に改善することができる。高周波数トランスデューサ103を有する筐体のサイズは小さいので、低周波数トランスデューサ101の音波の反射が最低になる。
【0108】
2つのトランスデューサ間の距離がクロスオーバー周波数の波長に対して短いので、コムフィルタ効果(comb-filtering effects)がさらに低減する。
【0109】
本発明は多くの形態で実施することができる。本発明の実施形態の構成要素は、いかなる好適な方法で物理的、機能的、論理的に実施してもよい。機能は単一のユニット、複数のユニット、または他の機能ユニットの一部として実施することもできる。
【0110】
実施形態に関して本発明を説明したが、ここに記載した具体的な形態に限定することを意図したものではない。むしろ、本発明の範囲は添付した請求の範囲のみにより限定される。また、具体的な実施形態に関して構成を説明したように見えるかも知れないが、当業者には言うまでもなく、説明した実施形態の様々な構成を、本発明により、組み合わせることができる。請求項では、「有する」という用語は他の要素やステップの存在を排除するものではない。
【0111】
さらに、個別的に列挙されていても、複数の手段、要素、方法ステップは、例えば単一のユニットまたはプロセッサにより実施してもよい。また、個々の機能(feature)は異なる請求項に含まれていても、これらを有利に組み合わせることが可能であり、異なる請求項に含まれていても、機能を組み合わせられないとか、組み合わせても有利ではないということを示唆するものでもない。また、ある構成をあるカテゴリーのクレームに含めたとしても、そのカテゴリーに限定することを意味するのではなく、むしろその構成が必要に応じて他のクレームカテゴリーにも等しく適用できることを示すものである。さらに、クレーム中の構成の順序は、その構成が機能しなければならない特定の順序を示すものではなく、特に、方法クレームにおける個々のステップの順序はそのステップがこの順序で実行されなければならないことを示すものではない。むしろ、ステップは任意の好適な順序で実行してもよい。また、単数扱いをしても複数の場合を排除するものではない。よって、「1つの」、「第1の」、「第2の」等は複数の場合を排除するものではない。請求項中の参照符号は、明りょうにするために設けており、請求項の範囲を限定するものと解してはならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカ装置であって、
低周波数範囲のサウンドを再生し、第1の軸方向と第1の中心点とを有する第1のサウンドトランスデューサと、
高周波数範囲のサウンドを再生する、前記第1のトランスデューサの前にマウントされ、第2の軸方向と第2の中心点とを有する第2のサウンドトランスデューサとを有し、
前記第1の軸方向と第2の軸方向がなす角は45°乃至135°であり、前記低周波数範囲と高周波数範囲とのクロスオーバー周波数は1.5kHz乃至3kHzの区間内にあり、前記第1の中心点と第2の中心点との距離は前記クロスオーバー周波数に対応するクロスオーバー波長より長くない、スピーカ装置。
【請求項2】
前記スピーカ装置が動作状態のとき、前記第1のサウンドトランスデューサは、上方放射構成であり、前記第1の軸方向は垂直方向に対して50°未満の角度をなす、請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項3】
前記スピーカ装置が動作状態のとき、前記第2のサウンドトランスデューサは、前方放射構成であり、前記第2の軸方向は水平方向に対して50°未満の角度をなす、請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項4】
前記第2のサウンドトランスデューサの筐体の最大寸法は前記クロスオーバー波長の1/4未満である、請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項5】
前記第2のサウンドトランスデューサの筐体の体積は4d未満であり、ここでdは前記第2のサウンドトランスデューサの放射面の最大寸法である、請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項6】
前記第1のサウンドトランスデューサの放射面の外周を前記第1の軸方向に無限に延ばして画成される空間内にある前記第2のサウンドトランスデューサのマウント手段の要素の体積は、6d未満であり、ここでdは前記第2のサウンドトランスデューサの放射面の最大寸法である、請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項7】
前記第1のサウンドトランスデューサのみを含む第1の筐体と、
前記第2のサウンドトランスデューサのみを含む第2の筐体と、
前記第2の筐体に対して前記第1の筐体を配置するマウント手段とをさらに有する、請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項8】
前記第1のサウンドトランスデューサの放射面の外周を前記第1の軸方向に無限に延ばして画成される空間内にある前記マウント手段の体積は、0.5d未満であり、ここでdは前記第2のサウンドトランスデューサの放射面の最大寸法である、請求項7に記載のスピーカ装置。
【請求項9】
前記第1のサウンドトランスデューサの放射面の外周を前記第1の軸方向に無限に延ばして画成される空間内にある前記第2のサウンドトランスデューサのマウント手段の要素の体積は、200cm未満である、請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項10】
前記第2のサウンドトランスデューサの筐体の体積は21リットル未満である、請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項11】
前記第2のサウンドトランスデューサのマウントされた要素の前記第1の軸方向への投影により覆われる前記第1のサウンドトランスデューサの放射面の面積は、前記放射面の総面積の50%未満である、請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項12】
前記第2の中心点は、前記第1のサウンドトランスデューサの放射面の外周を前記第1の軸方向に無限に延ばして画成される空間内にある、請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項13】
前記第2のサウンドトランスデューサの最近点から前記第1の軸方向への距離は、前記第1のサウンドトランスデューサの放射面の最大寸法の1/4未満である、請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項14】
前記第1の中心点と第2の中心点との距離は前記クロスオーバー波長の1/10より大きい、請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項15】
請求項1に記載のスピーカ装置を提供する方法であって、
低周波数範囲でサウンドを再生し、第1の軸方向と第1の中心点とを有する第1のサウンドトランスデューサを設ける段階と、
高周波数範囲のサウンドを再生する、前記第1のトランスデューサの前にマウントされ、第2の軸方向と第2の中心点とを有する第2のサウンドトランスデューサを設ける段階とを有し、
前記第1の軸方向と第2の軸方向がなす角は45°乃至135°であり、前記低周波数範囲と高周波数範囲とのクロスオーバー周波数は1.5kHz乃至3kHzの区間内にあり、前記第1の中心点と第2の中心点との距離は前記クロスオーバー周波数に対応するクロスオーバー波長より長くない、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−507182(P2012−507182A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532765(P2011−532765)
【出願日】平成21年10月26日(2009.10.26)
【国際出願番号】PCT/IB2009/054712
【国際公開番号】WO2010/049867
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】