説明

オーディオ信号伝送装置

【課題】 I2S信号をパルストランスを使用して絶縁すること。
【解決手段】 オーディオ信号が無音(振幅値が0V)である場合に、DATA信号のLチャンネルのデータDLiは、「00000000・・・」と「0」が続き、直流信号となってしまう。しかし、変調部2で生成される第2のLチャンネルオーディオ信号は、LRCK信号のハイレベルの期間においては「00000・・」であり、LRCK信号のローレベルの期間においては「11111・・」であるので、その結果、第2のLチャンネルオーディオ信号は交流信号と見なすことが可能となる。従って、第2のLチャンネルオーディオ信号を、パルストランス3を使用して絶縁することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LチャンネルのオーディオデータとRチャンネルのオーディオデータとをワード単位で交互にシリアルに配列してなる配列データと、前記配列データのワードデータを識別するためのワードクロックと、前記配列データのビットデータを識別するためのビットクロックとで構成されるデジタルオーディオ信号を伝送するオーディオ信号伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オーディオ装置において、デジタルオーディオ信号をデジタルインターフェースからDAC(デジタル−アナログ変換器)に伝送する際のフォーマットとして、I2Sといったシリアルデータフォーマットが存在する。
【0003】
図6は、I2Sのデジタルオーディオ信号を示す図である。I2Sのデジタルオーディオ信号は、LチャンネルのオーディオデータとRチャンネルのオーディオデータとを混合したオーディオデータDATA(以下、DATA信号という。)と、このDATA信号のワードデータを識別するためのワードクロックLRCK(以下、LRCK信号という。)と、オーディオデータDATAのビットデータを識別するためのビットクロックBCLK(以下、BCLK信号という。)とで構成されている。
【0004】
より具体的には、DATA信号は、同一のサンプリング位置のLチャンネルのデータDLiとRチャンネルのデータDRiとをペアにし、各ペアをサンプリング順に配列したシリアルのデータ(DL1/DR1、DL2/DR2、…DLm/DRm)である。なお、データDLi、DRiは、それぞれnビットデータで構成され、このnビットデータが1ワードデータに相当する。
【0005】
LRCK信号は、DATA信号の1ワードデータDLi/DRiを1周期とするクロックであり、図6では、LRCK信号のハイレベルの期間がDATA信号のLチャンネルのワードデータDLiに同期し、LRCK信号のローレベルの期間がDATA信号のRチャンネルのワードデータDRiに同期している。BCLK信号は、DATA信号のビットデータに同期したクロックである。
【0006】
ここで、デジタルインターフェースとDACとの間を絶縁することを考える。通常は高速フォトカプラ等の素子が使用される。しかしながら、フォトカプラは、特殊なデバイスであり入手性に難があり、高価である。そこで、安価な絶縁素子として、パルストランスを使用することが考えられる。LRCK信号や、BCLK信号は、オフセットを有する交流信号と見なすことができるので、パルストランスによって絶縁することが可能である。しかしながら、DATA信号は、例えば、オーディオ信号が無音である場合、各ビットデータが全て0になってしまうので、交流信号ではなく、直流信号となってしまう。その結果、DATA信号については、パルストランスで絶縁することができない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−303099号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、LチャンネルのオーディオデータとRチャンネルのオーディオデータとをワード単位で交互にシリアルに配列してなる配列データと、前記配列データのワードデータを識別するためのワードクロックと、前記配列データのビットデータを識別するためのビットクロックとで構成されるデジタルオーディオ信号をパルストランスによって絶縁することができるオーディオ信号伝送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の好ましい実施形態によるオーディオ信号伝送装置は、第1チャンネルのオーディオデータと第2チャンネルのオーディオデータとをワード単位で交互にシリアルに配列してなる配列データと、前記配列データのワードデータを識別するためのワードクロックと、前記配列データのビットデータを識別するためのビットクロックとで構成される第1のデジタルオーディオ信号が入力される入力手段と、 前記第1のデジタルオーディオ信号の前記配列データから、前記ワードクロックの一方のレベルの期間に前記第1チャンネルのオーディオデータを含み、かつ、前記ワードクロックの他方のレベルの期間に前記第1チャンネルのオーディオデータの補数を含む第2の第1チャンネルオーディオ信号と、前記ワードクロックの他方のレベルの期間に前記第2チャンネルのオーディオデータを含み、かつ、前記ワードクロックの一方のレベルの期間に前記第2チャンネルのオーディオデータの補数を含む第2の第2チャンネルオーディオ信号とを生成する変調手段と、前記変調手段からの前記第2の第1チャンネルオーディオ信号と、前記第2の第2チャンネルオーディオ信号とを後段回路に供給するパルストランスとを備える。
【0010】
第2の第1チャンネルオーディオ信号は、ワードクロックの一方のレベルの期間に第1チャンネルのオーディオデータを含み、かつ、ワードクロックの他方のレベルに期間に第1チャンネルのオーディオデータの補数を含む。また、第2の第2チャンネルオーディオ信号は、ワードクロックの他方のレベルの期間に第2チャンネルのオーディオデータを含み、かつ、ワードクロックの一方のレベルの期間に第2チャンネルのオーディオデータの補数を含む。
【0011】
ここで、オーディオ信号が無音(振幅値が0V)である場合に、第1チャンネルのオーディオデータは、「00000000・・・」と「0」が続き、直流信号となってしまう。しかし、第2の第1チャンネルオーディオ信号は、ワードクロックの一方のレベルの期間においては「00000・・」であり、ワードクロックの他方のレベルの期間においては「11111・・」であるので、その結果、第2の第1チャンネルオーディオ信号は交流信号と見なすことが可能となる。従って、第2の第1チャンネルオーディオ信号を、パルストランスを使用して絶縁することができる。
【0012】
同様に、オーディオ信号が無音(振幅値が0V)である場合に、第2チャンネルのオーディオデータは、「00000000・・・」と「0」が続き、直流信号となってしまう。しかし、第2の第2チャンネルオーディオ信号は、ワードクロックの他方のレベルの期間においては「00000・・」であり、ワードクロックの一方のレベルの期間においては「11111・・」であるので、その結果、第2の第2チャンネルオーディオ信号は交流信号と見なすことが可能となる。従って、第2の第2チャンネルオーディオ信号を、パルストランスを使用して絶縁することができる。
【0013】
本発明の好ましい実施形態によるオーディオ信号伝送装置は、LチャンネルのオーディオデータとRチャンネルのオーディオデータとをワード単位で交互にシリアルに配列してなる配列データと、前記配列データのワードデータを識別するためのワードクロックと、前記配列データのビットデータを識別するためのビットクロックとで構成される第1のデジタルオーディオ信号が入力される入力手段と、前記第1のデジタルオーディオ信号の前記配列データから、前記ワードクロックの一方のレベルの期間に前記Lチャンネルのオーディオデータを含み、かつ、前記ワードクロックの他方のレベルの期間に前記Lチャンネルのオーディオデータの補数を含む第2のLチャンネルオーディオ信号と、前記ワードクロックの他方のレベルの期間に前記Rチャンネルのオーディオデータを含み、かつ、前記ワードクロックの一方のレベルの期間に前記Rチャンネルのオーディオデータの補数を含む第2のRチャンネルオーディオ信号とを生成する変調手段と、前記変調手段からの前記第2のLチャンネルオーディオ信号と、前記第2のRチャンネルオーディオ信号とを後段回路に供給するパルストランスとを備える。
【0014】
第2のLチャンネルオーディオ信号は、ワードクロックの一方のレベルの期間にLチャンネルのオーディオデータを含み、かつ、ワードクロックの他方のレベルに期間にLチャンネルのオーディオデータの補数を含む。また、第2のRチャンネルオーディオ信号は、ワードクロックの他方のレベルの期間にRチャンネルのオーディオデータを含み、かつ、ワードクロックの一方のレベルの期間にRチャンネルのオーディオデータの補数を含む。
【0015】
ここで、オーディオ信号が無音(振幅値が0V)である場合に、Lチャンネルのオーディオデータは、「00000000・・・」と「0」が続き、直流信号となってしまう。しかし、第2のLチャンネルオーディオ信号は、ワードクロックの一方のレベルの期間においては「00000・・」であり、ワードクロックの他方のレベルの期間においては「11111・・」であるので、その結果、第2のLチャンネルオーディオ信号は交流信号と見なすことが可能となる。従って、第2のLチャンネルオーディオ信号を、パルストランスを使用して絶縁することができる。
【0016】
同様に、オーディオ信号が無音(振幅値が0V)である場合に、Rチャンネルのオーディオデータは、「00000000・・・」と「0」が続き、直流信号となってしまう。しかし、第2のRチャンネルオーディオ信号は、ワードクロックの他方のレベルの期間においては「00000・・」であり、ワードクロックの一方のレベルの期間においては「11111・・」であるので、その結果、第2のRチャンネルオーディオ信号は交流信号と見なすことが可能となる。従って、第2のRチャンネルオーディオ信号を、パルストランスを使用して絶縁することができる。
【0017】
好ましい実施形態においては、オーディオ信号伝送装置は、前記パルストランスからの前記第2のLチャンネルオーディオ信号と、前記第2のRチャンネルオーディオ信号とから、前記第1のデジタルオーディオ信号の前記配列データを生成する復調手段をさらに備える。
【0018】
この場合、パルストランスを通した後の第2のLチャンネルオーディオ信号と、第2のRチャンネルオーディオ信号とから、元の第1のデジタルオーディオ信号の配列データを生成し後段に供給することができる。
【0019】
好ましい実施形態においては、オーディオ信号伝送装置は、前記パルストランスからの前記第2のLチャンネルオーディオ信号をLチャンネルのアナログオーディオ信号に変換する第1のデジタルアナログ変換器と、前記パルストランスからの前記第2のRチャンネルオーディオ信号をRチャンネルのアナログオーディオ信号に変換する第2のデジタルアナログ変換器とをさらに備える。
【0020】
この場合、第1のデジタルアナログ変換器が第2のLチャンネルオーディオ信号をLチャンネルのアナログオーディオ信号に変換し、第2のデジタルアナログ変換器が第2のRチャンネルオーディオ信号をRチャンネルのアナログオーディオ信号に変換するので、復調手段によって第2のLチャンネルオーディオ信号と、第2のRチャンネルオーディオ信号とから、第1のデジタルオーディオ信号の前記配列データを生成する必要がない。
【発明の効果】
【0021】
本発明は上記構成を有することにより、LチャンネルのオーディオデータとRチャンネルのオーディオデータとをワード単位で交互にシリアルに配列してなる配列データと、前記配列データのワードデータを識別するためのワードクロックと、前記配列データのビットデータを識別するためのビットクロックとで構成されるデジタルオーディオ信号をパルストランスによって絶縁することができるオーディオ信号伝送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の好ましい実施形態によるオーディオ信号伝送装置1を示すブロック図である。
【図2】第2のLチャンネルオーディオ信号と、第2のRチャンネルオーディオ信号とを示す模式図である。
【図3】本発明の好ましい実施形態によるオーディオ信号伝送装置11を示すブロック図である。
【図4】第1のデジタルオーディオ信号(I2Sフォーマット)を示す模式図である。
【図5】第2のFLチャンネルオーディオ信号と、第2のSLチャンネルオーディオ信号とを示す模式図である。
【図6】第1のデジタルオーディオ信号(I2Sフォーマット)を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。図1は、本発明の好ましい実施形態によるオーディオ信号伝送装置1を示すブロック図である。
【0024】
オーディオ信号伝送装置1には、I2Sといったシリアルデータフォーマットの第1のデジタルオーディオ信号が入力される。
【0025】
図6は、I2Sのデジタルオーディオ信号を示す図である。I2Sのデジタルオーディオ信号は、LチャンネルのオーディオデータとRチャンネルのオーディオデータとを混合したオーディオデータDATA(以下、DATA信号という。)と、このDATA信号のワードデータを識別するためのワードクロックLRCK(以下、LRCK信号という。)と、オーディオデータDATAのビットデータを識別するためのビットクロックBCLK(以下、BCLK信号という。)とで構成されている。
【0026】
より具体的には、DATA信号は、同一のサンプリング位置のLチャンネルのデータDLiとRチャンネルのデータDRiとをペアにし、各ペアをサンプリング順に配列したシリアルのデータ(DL1/DR1、DL2/DR2、…DLm/DRm)である。なお、データDLi、DRiは、それぞれnビットデータで構成され、このnビットデータが1ワードデータに相当する。
【0027】
LRCK信号は、DATA信号の1ワードデータDLi/DRiを1周期とするクロックであり、図6では、LRCK信号のハイレベルの期間がDATA信号のLチャンネルのワードデータDLiに同期し、LRCK信号のローレベルの期間がDATA信号のRチャンネルのワードデータDRiに同期している。BCLK信号は、DATA信号のビットデータに同期したクロックである。
【0028】
図1に示すように、オーディオ信号伝送装置1は、変調部2と、パルストランス3と、復調部4と、DAC5とを概略備えている。復調部4およびDAC5は後段回路を構成する。
【0029】
変調部2は、第1のデジタルオーディオ信号のDATA信号、BCLK信号、LRCK信号が供給される。変調部2は、第1のデジタルオーディオ信号のDATA信号から、BCLK信号やLRCK信号を使用して、LRCK信号の一方のレベルの期間にLチャンネルのデータDLiを含み、かつ、LRCK信号の他方のレベルの期間にLチャンネルのデータDLiの補数を含む第2のLチャンネルオーディオ信号を生成する。また、変調部2は、第1のデジタルオーディオ信号のDATA信号から、BCLK信号やLRCK信号を使用して、LRCK信号の他方のレベルの期間にRチャンネルのデータDRiを含み、かつ、LRCK信号の一方のレベルの期間にRチャンネルのデータDLiの補数を含む第2のRチャンネルオーディオ信号を生成する。
【0030】
図2は、第2のLチャンネルオーディオ信号および第2のRチャンネルオーディオ信号を示す模式図である。図2の例では、第2のLチャンネルオーディオ信号(Data Lch)は、LRCK信号のハイレベルの期間にLチャンネルのデータDLiを含み、かつ、LRCK信号のローレベルに期間にLチャンネルのデータDLiの補数を含む。また、第2のRチャンネルオーディオ信号(Data Rch)は、LRCK信号のローレベルの期間にRチャンネルのデータDRiを含み、かつ、LRCK信号のハイレベルに期間にRチャンネルのデータDRiの補数を含む。
【0031】
LチャンネルのデータDLiの補数とは、LチャンネルのデータDLiの「1」「0」を反転させたデータである。すなわち、LチャンネルのデータDLiが、「1010101・・・」である場合、LチャンネルのデータDLiの補数は、「0101010・・・」となる。同様に、RチャンネルのデータDRiの補数とは、RチャンネルのデータDRiの「1」「0」を反転させたデータである。すなわち、RチャンネルのデータDRiが、「1010101・・・」である場合、RチャンネルのデータDRiの補数は、「0101010・・・」となる。
【0032】
より具体的には、変調部2は、まず、第1のデジタルオーディオ信号のDATA信号をコピーして、第1のデジタルオーディオ信号のDATA信号を2つ生成する。変調部2は、DATA信号の一方について、LRCK信号に基づいて、LRCK信号のハイレベルの期間のデータ(LチャンネルのデータDLi)をそのままの状態とし、LRCK信号のローレベルの期間のデータ(RチャンネルのデータDRi)を、LチャンネルのデータDLiの補数に置換することによって、第2のLチャンネルオーディオ信号を生成する。さらに、変調部2は、DATA信号の他方について、LRCK信号に基づいて、LRCK信号のローレベルの期間のデータ(RチャンネルのデータDRi)をそのままの状態とし、LRCK信号のハイレベルの期間のデータ(LチャンネルのデータDLi)を、RチャンネルのデータDRiの補数に置換することによって、第2のRチャンネルオーディオ信号を生成する。
【0033】
パルストランス3は、絶縁素子である。パルストランス3は、第1のデジタルオーディオ信号のうちのLRCK信号およびBCLK信号が供給され、LRCK信号およびBCLK信号を後段回路であるDAC5に供給する。パルストランス3は、変調部2から、第2のLチャンネルオーディオ信号および第2のRチャンネルオーディオ信号が供給され、第2のLチャンネルオーディオ信号および第2のRチャンネルオーディオ信号を後段回路である復調部4に供給する。
【0034】
復調部4は、パルストランス3から、第2のLチャンネルオーディオ信号および第2のRチャンネルオーディオ信号が供給される。復調部4は、また、パルストランス3から、BCLK信号やLRCK信号が供給される。復調部4は、供給された第2のLチャンネルオーディオ信号および第2のRチャンネルオーディオ信号から、BCLK信号やLRCK信号を使用して、図6に示す第1のデジタルオーディオ信号のうちのDATA信号を生成する。生成した第1のデジタルオーディオ信号のDATA信号が、DAC5に供給される。
【0035】
より具体的には、復調部4は、第2のLチャンネルオーディオ信号について、LRCK信号のハイレベルの期間のデータ(LチャンネルのデータDLi)を抽出し、第2のRチャンネルオーディオ信号について、LRCK信号のローレベルの期間のデータ(RチャンネルのデータDRi)を抽出し、抽出したこれらのデータをLRCK信号に基づいて結合することによって、第1のデジタルオーディオ信号を生成する。
【0036】
DAC5は、パルストランス3から、第1のデジタルオーディオ信号のうちのLRCK信号およびBCLK信号が供給される。DAC5は、復調部4から、第1のデジタルオーディオ信号のDATA信号が供給される。DAC5は、供給された第1のデジタルオーディオ信号のDATA信号を、LRCK信号およびBCLK信号を使用してアナログオーディオ信号(Lチャンネルのアナログオーディオ信号およびRチャンネルのアナログオーディオ信号)に変換し、さらに後段(例えば、増幅回路など)に供給する。
【0037】
オーディオ信号伝送装置1の作用効果を説明する。
第2のLチャンネルオーディオ信号は、LRCK信号のハイレベルの期間にLチャンネルのデータDLiを含み、かつ、LRCK信号のローレベルに期間にLチャンネルのデータDLiの補数を含む。また、第2のRチャンネルオーディオ信号は、LRCK信号のローレベルの期間にRチャンネルのデータDRiを含み、かつ、LRCK信号のハイレベルの期間にRチャンネルのデータDRiの補数を含む。
【0038】
ここで、オーディオ信号が無音(振幅値が0V)である場合に、DATA信号のLチャンネルのデータDLiは、「00000000・・・」と「0」が続き、直流信号となってしまう。しかし、第2のLチャンネルオーディオ信号は、LRCK信号のハイレベルの期間においては「00000・・」であり、LRCK信号のローレベルの期間においては「11111・・」であるので、その結果、第2のLチャンネルオーディオ信号は交流信号と見なすことが可能となる。従って、第2のLチャンネルオーディオ信号を、パルストランス3を使用して絶縁することができる。
【0039】
同様に、オーディオ信号が無音(振幅値が0V)である場合に、DATA信号のRチャンネルのデータDRiは、「00000000・・・」と「0」が続き、直流信号となってしまう。しかし、第2のRチャンネルオーディオ信号は、LRCK信号のローレベルの期間においては「00000・・」であり、LRCK信号のハイレベルの期間においては「11111・・」であるので、その結果、第2のRチャンネルオーディオ信号は交流信号と見なすことが可能となる。従って、第2のRチャンネルオーディオ信号を、パルストランス3を使用して絶縁することができる。
【0040】
図3は、本発明の別の好ましい実施形態によるオーディオ信号伝送装置11を示すブロック図である。オーディオ信号伝送装置11は、第2のLチャンネルオーディオ信号をLチャンネルのアナログオーディオ信号に変換するDAC51と、第2のRチャンネルオーディオ信号をRチャンネルのアナログオーディオ信号に変換するDAC52とが個別に設けられている。この場合、復調部において、第2のLチャンネルオーディオ信号および第2のRチャンネルオーディオ信号から、図6に示す第1のデジタルオーディオ信号のうちのDATA信号を生成する必要がない。従って、復調部を省略することができる。
【0041】
詳細には、DAC51は、パルストランス3から、第1のデジタルオーディオ信号のLRCK信号およびBCLK信号が供給され、かつ、第2のLチャンネルオーディオ信号が供給される。DAC51は、供給された第2のLチャンネルオーディオ信号のうちのLチャンネルのデータDLiを、LRCK信号およびBCLK信号を使用してLチャンネルのアナログオーディオ信号に変換し、さらに後段(例えば、増幅回路など)に供給する。つまり、DAC51では、第2のLチャンネルオーディオ信号のうちのLチャンネルのデータDLiの補数は無視される。
【0042】
DAC52は、パルストランス3から、第1のデジタルオーディオ信号のLRCK信号およびBCLK信号が供給され、かつ、第2のRチャンネルオーディオ信号が供給される。DAC52は、供給された第2のRチャンネルオーディオ信号のうちのRチャンネルのデータDRiを、LRCK信号およびBCLK信号を使用してRチャンネルのアナログオーディオ信号に変換し、さらに後段(例えば、増幅回路など)に供給する。つまり、DAC51では、第2のRチャンネルオーディオ信号のうちのRチャンネルのデータDRiの補数は無視される。
【0043】
なお、上記各実施形態において、Lチャンネルは、ブルーレイディスク等に採用される、フロントLチャンネル、サラウンドLチャンネル、サラウンドバックLチャンネル、フロントハイLチャンネル、フロントワイドLチャンネル等の意味を包含する。同様に、Rチャンネルは、ブルーレイディスク等に採用される、フロントRチャンネル、サラウンドRチャンネル、サラウンドバックRチャンネル、フロントハイRチャンネル、フロントワイドRチャンネル等の意味を包含する。
【0044】
本発明のさらに別の好ましい実施形態を説明する。本実施形態における第1のデジタルオーディオ信号は、図4に示すように、LチャンネルのデータDLiの代わりにフロントLチャンネルのデータDFLiが採用され、RチャンネルのデータDRiの代わりにサラウンドLチャンネルのデータDSLiが採用されている。このような場合、図5に示すように、オーディオ信号伝送装置は、第2のフロントLチャンネルオーディオ信号と、第2のサラウンドLチャンネルオーディオ信号とを生成し、パルストランスを使用して絶縁する。このように、各チャンネルを一般化して定義すると、第1チャンネルおよび第2チャンネルということができる。
【0045】
第1チャンネルは、例えば、フロントLチャンネル、サラウンドLチャンネル、サラウンドバックLチャンネル、フロントハイLチャンネル、フロントワイドLチャンネル、フロントRチャンネル、サラウンドRチャンネル、サラウンドバックRチャンネル、フロントハイRチャンネル、フロントワイドRチャンネル、センターチャンネルおよびサブウーファチャンネルの中から選択された1つのチャンネルであればよい。
【0046】
第2チャンネルは、例えば、フロントLチャンネル、サラウンドLチャンネル、サラウンドバックLチャンネル、フロントハイLチャンネル、フロントワイドLチャンネル、フロントRチャンネル、サラウンドRチャンネル、サラウンドバックRチャンネル、フロントハイRチャンネル、フロントワイドRチャンネル、センターチャンネルおよびサブウーファチャンネルの中から選択された1つのチャンネルであって、第1チャンネルと異なるチャンネルであればよい。
【0047】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、オーディオ装置におけるデジタルオーディオ信号伝送装置に好適に採用され得る。
【符号の説明】
【0049】
1 オーディオ信号伝送装置
2 変調部
3 パルストランス
4 復調部
5 DAC
51 DAC
52 DAC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1チャンネルのオーディオデータと第2チャンネルのオーディオデータとをワード単位で交互にシリアルに配列してなる配列データと、前記配列データのワードデータを識別するためのワードクロックと、前記配列データのビットデータを識別するためのビットクロックとで構成される第1のデジタルオーディオ信号が入力される入力手段と、
前記第1のデジタルオーディオ信号の前記配列データから、前記ワードクロックの一方のレベルの期間に前記第1チャンネルのオーディオデータを含み、かつ、前記ワードクロックの他方のレベルの期間に前記第1チャンネルのオーディオデータの補数を含む第2の第1チャンネルオーディオ信号と、前記ワードクロックの他方のレベルの期間に前記第2チャンネルのオーディオデータを含み、かつ、前記ワードクロックの一方のレベルの期間に前記第2チャンネルのオーディオデータの補数を含む第2の第2チャンネルオーディオ信号とを生成する変調手段と、
前記変調手段からの前記第2の第1チャンネルオーディオ信号と、前記第2の第2チャンネルオーディオ信号とを後段回路に供給するパルストランスとを備える、オーディオ信号伝送装置。
【請求項2】
LチャンネルのオーディオデータとRチャンネルのオーディオデータとをワード単位で交互にシリアルに配列してなる配列データと、前記配列データのワードデータを識別するためのワードクロックと、前記配列データのビットデータを識別するためのビットクロックとで構成される第1のデジタルオーディオ信号が入力される入力手段と、
前記第1のデジタルオーディオ信号の前記配列データから、前記ワードクロックの一方のレベルの期間に前記Lチャンネルのオーディオデータを含み、かつ、前記ワードクロックの他方のレベルの期間に前記Lチャンネルのオーディオデータの補数を含む第2のLチャンネルオーディオ信号と、前記ワードクロックの他方のレベルの期間に前記Rチャンネルのオーディオデータを含み、かつ、前記ワードクロックの一方のレベルの期間に前記Rチャンネルのオーディオデータの補数を含む第2のRチャンネルオーディオ信号とを生成する変調手段と、
前記変調手段からの前記第2のLチャンネルオーディオ信号と、前記第2のRチャンネルオーディオ信号とを後段回路に供給するパルストランスとを備える、オーディオ信号伝送装置。
【請求項3】
前記パルストランスからの前記第2のLチャンネルオーディオ信号と、前記第2のRチャンネルオーディオ信号とから、前記第1のデジタルオーディオ信号の前記配列データを生成する復調手段とをさらに備える、請求項2に記載のオーディオ信号伝送装置。
【請求項4】
前記パルストランスからの前記第2のLチャンネルオーディオ信号をLチャンネルのアナログオーディオ信号に変換する第1のデジタルアナログ変換器と、
前記パルストランスからの前記第2のRチャンネルオーディオ信号をRチャンネルのアナログオーディオ信号に変換する第2のデジタルアナログ変換器とをさらに備える、請求項2に記載のオーディオ信号伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−26925(P2013−26925A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161372(P2011−161372)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(710014351)オンキヨー株式会社 (226)
【Fターム(参考)】