説明

オーディオ装置及びその制御方法

【課題】 低音用スピーカの設置位置に応じて音響特性を調整可能なオーディオ装置及びその制御方法を提供する。
【解決手段】 センターユニット3は、Rチャンネル音声信号S1及びLチャンネル音声信号S2を各々分配器31、32によって分配し、フェダーボリューム回路301〜304によってレベル調整を行った上、各スピーカ21〜25に音声信号を出力する。また、センターユニット3は、フェダーボリューム回路301〜304によるレベル調整前の音声信号を合成するミキサ回路311を含む複数のミキサ回路311〜314を備え、これらミキサ回路311〜314により合成された音声信号を、信号選択回路35によって選択してサブウーファ26に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数チャンネルの音声信号に基づいて複数のスピーカから音声を出力させるオーディオ装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステレオ音声を再生出力するオーディオシステムにおいて、主として低音を再生出力する重低音用スピーカ(いわゆるサブウーファ)を備えたものが知られている。このようなオーディオシステムにおいて音声信号を出力するオーディオ装置には、L(左)チャンネルの音声信号とR(右)チャンネルの音声信号とについて各々ボリューム調整等を施した後、これら音声信号を合成し、合成した音声信号の低音成分を出力するものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】実開平6−73918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に、重低音用スピーカは指向性の低い低音領域の音声を出力するので、その設置位置は任意であり、どこに設置しても音場への影響は殆どないとされる。このため、上記のオーディオ装置を自動車に搭載する場合、重低音用スピーカは、座席下、リアパーセルボード、荷室等の様々な場所に設置される。しかし実際には、重低音用スピーカの設置位置による音場への影響は無視できるものではなく、聴取者に音像定位の乱れを感じさせる可能性がある。従って、良好な音場を実現するためには、サブウーファの設置位置に合わせて車室内音響特性を最適化することが望ましい。
ところが、従来のオーディオ装置では、重低音用スピーカから出力する音声の生成方法は固定されており、車室内音響特性を調整できる範囲が極めて限定されていた。そして、重低音用スピーカから出力する音声の生成方法を変えるには、装置のハードウェア構成そのものを変更する必要があり、極めて困難であった。
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、入力される音声信号に基づいて低音用スピーカを含む複数のスピーカから音声を出力させるオーディオ装置において、低音用スピーカの設置位置に応じて音響特性を調整可能なオーディオ装置及びその制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、複数チャンネルの音声信号に基づいて、低音用スピーカを含む複数のスピーカから音声を出力させるオーディオ装置において、前記複数チャンネルの音声信号の各々についてレベル調整を行い、レベル調整後の音声信号を前記低音用スピーカ以外のスピーカに出力するレベル調整手段と、それぞれ二以上のチャンネルの音声信号を合成して合成音声信号を出力する複数の合成手段と、前記複数の合成手段から出力される合成音声信号のうち一の合成音声信号を選択して前記低音用スピーカに出力する選択手段とを備え、前記複数の合成手段のうち少なくとも一つは、前記レベル調整手段によるレベル調整前の音声信号を合成することを特徴としている。
【0006】
本発明において、前記レベル調整手段は、前記複数チャンネルの音声信号として入力される右チャンネル及び左チャンネルの音声信号の各々についてレベル調整を行うものであって、前記複数の合成手段のうち少なくとも一つは、前記レベル調整手段によるレベル調整前の右チャンネル及び左チャンネルの音声信号を合成する構成としてもよい。
この場合において、前記右チャンネル及び左チャンネルの音声信号を各々フロント用音声信号及びリア用音声信号に分配して、4チャンネルの音声信号を生成する分配手段をさらに備え、前記レベル調整手段は、前記分配手段により分配された4チャンネルの音声信号の各々についてレベル調整を行い、これら4チャンネルに対応する前記スピーカにそれぞれ音声信号を出力するものであって、前記複数の合成手段は、前記レベル調整手段によるレベル調整後の右チャンネル及び左チャンネルのフロント用音声信号を合成する第1の合成手段と、前記レベル調整手段によるレベル調整後の右チャンネル及び左チャンネルのリア音声信号を合成する第2の合成手段と、前記レベル調整手段によるレベル調整後の右チャンネル及び左チャンネルのフロント音声信号及びリア音声信号を合成する第3の合成手段と、前記レベル調整手段によるレベル調整前の前記右チャンネル及び左チャンネルの音声信号を合成する第4の合成手段とを含む構成としてもよい。
【0007】
また、前記選択手段により選択されて出力された合成音声信号を増幅して前記低音用スピーカに出力する増幅手段を備える構成としてもよい。
【0008】
さらに、車両に搭載される車載機器として構成されたものとしてもよい。この場合において、前記選択手段は、前記複数の合成手段から出力される合成音声信号のうち、前記車両における前記低音用スピーカの設置位置に対応する一の合成音声信号を選択可能に構成されたものとしてもよい。
【0009】
本発明は、複数チャンネルの音声信号に基づいて、低音用スピーカを含む複数のスピーカから音声を出力させるオーディオ装置の制御方法において、前記複数チャンネルの音声信号の各々についてレベル調整を行う工程と、二以上のチャンネルの音声信号を合成して得られる合成音声信号を複数生成して出力する工程と、前記複数の合成音声信号のうち一の音声信号を選択して前記低音用スピーカに出力する工程とを含み、前記複数の合成音声信号のうち少なくとも一つは、前記レベル調整前の音声信号を合成したものであることを特徴としている。
【0010】
ここで、低音用スピーカとは、主として、可聴周波数帯域を含む周波数帯域において、低音領域に相当する周波数帯域及びそれより低い周波数帯域の音声を出力するスピーカを指し、特に、聴取者が指向性を感じないか或いは殆ど感じないとされる周波数帯域の音声信号を出力するものである。その具体的形態は、例えば、上記周波数帯域の音声を主に出力するスピーカユニットを独立した筐体に納めた、いわゆるサブウーファである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低音用スピーカに出力する合成音声信号を複数の合成音声信号から選択可能であることにより、低音用スピーカの設置位置等に応じて、容易に音響特性のチューニングを行うことができる。また、選択手段によってレベル調整前の音声信号を選択可能なため、音像定位に合わせた調整等がされていない、偏りのない音声信号を低音用スピーカから出力させることが可能であり、より高い精度で音響特性のチューニングを行える。そして、複雑な構成を必要としないことから、低コストで容易に実現可能であり、小型化が可能なため省スペース性に富むという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明を適用した実施の形態に係るオーディオシステムの設置状態を示す図であり、図2はオーディオシステムの構成を示すブロック図である。
図1には、オーディオシステム2が設置された車両1を示し、図中上側が車両1の進行方向に相当する。オーディオシステム2は、センターユニット3(オーディオ装置)の制御によって6個のスピーカから音声を出力する、いわゆる6スピーカオーディオシステムである。
なお、以下の説明においては、音声、音声信号並びにスピーカに関し、右側のものをRと表記し、左側のものをLと表記する。
【0013】
オーディオシステム2の6個のスピーカは、車両1の前部右側座席近傍(例えば、フロントドア内張)に設置されたフロントRスピーカ21、車両1の前部左側座席近傍(例えば、フロントドア内張)に設置されたフロントLスピーカ22、車両1の後部座席近傍(例えば、後部座席のヘッドレスト後方に位置するリアパーセルボード上)において右側に設置されたリアRスピーカ23、同じく左側に設置されたリアLスピーカ24、車両1の前部中央(例えば、ダッシュボード上、或いは、ダッシュボードのオーディオ設置スペース)に設置されたセンタースピーカ25、及び、後部座席後方(例えば、上記パーセルボード上)の中央に設置されたサブウーファ26(低音用スピーカ)とから構成される。また、センターユニット3はダッシュボード中央に設けられたオーディオ設置スペースに埋込設置される。
【0014】
図2に示すように、オーディオシステム2は、CD(コンパクトディスク)プレーヤ等の音楽ソース4を備え、この音楽ソース4から出力されるRチャンネル音声信号S1及びLチャンネル音声信号S2に基づいて、センターユニット3から、フロントRスピーカ21、フロントLスピーカ22、リアRスピーカ23、リアLスピーカ24、センタースピーカ25及びサブウーファ26の各スピーカに対して音声信号を出力する。
【0015】
このうち、フロントRスピーカ21、フロントLスピーカ22、リアRスピーカ23、リアLスピーカ24及びセンタースピーカ25の5個のスピーカから出力される音声は、聴取者たる車両1(図1)の搭乗者の搭乗位置に合わせて、所定の音像定位を実現する。これら5個のスピーカは、それぞれ、可聴周波数帯域を含む周波数帯域の音声を出力可能に構成されたものである。これら5個のスピーカは、例えば、高音領域を出力するツィータ、中音領域を出力するスコーカ、及び、低音領域を出力するウーファを適宜組み合わせて一つの筐体に納めたユニットとして構成されるが、1個のフルレンジ対応スピーカを筐体に納めたものであってもよい。また、車両1のドア内張等をその筐体の一部として利用する構成としてもよい。
【0016】
これに対し、サブウーファ26は、主として、可聴周波数帯域を含む周波数帯域において、低音領域に相当する周波数帯域及びそれより低い周波数帯域の音声を出力する低音用スピーカを指し、特に、聴取者が指向性を感じないか或いは殆ど感じないとされる周波数帯域の音声信号を出力するものである。サブウーファ26の具体的形態は、例えば、上記周波数帯域の音声を主に出力するスピーカユニットを独立した筐体に納めたものである。
サブウーファ26は、指向性に乏しい低音、特に重低音を出力するので、オーディオシステム2においてステレオ音声信号を出力する場合であっても、左右に分ける必要が無く、通常は1個のみ設置される。サブウーファ26は車両1の各所に設置可能であり、例えば図3(A)に示すように、車両1の前部座席下方の床面に設置しても、図3(B)に示すように、車両1の後部ラゲッジスペースに設置してもよい。
【0017】
図4は、センターユニット3の構成を示すブロック図である。図4に示すように、センターユニット3は、音楽ソース4(図2)から入力されるRチャンネル音声信号S1及びLチャンネル音声信号S2の分配及びレベル調整を行って、フロントRスピーカ用音声信号S21、フロントLスピーカ用音声信号S22、リアRスピーカ用音声信号S23、リアLスピーカ用音声信号S24、センタースピーカ用音声信号S25を生成し、それぞれ、フロントRスピーカ21、フロントLスピーカ22、リアRスピーカ23、リアLスピーカ24及びセンタースピーカ25の各スピーカに出力する。
また、センターユニット3は、Rチャンネル音声信号S1及びLチャンネル音声信号S2を合成した合成音声信号S11、或いは、Rチャンネル音声信号S1及びLチャンネル音声信号S2を分配及びレベル調整した信号を合成して得られる合成音声信号S12〜S14のうち、いずれか一の合成音声信号を選択して、サブウーファ用音声信号S26としてサブウーファ26に出力する。
【0018】
センターユニット3は、入力されたRチャンネル音声信号S1を分配する分配器31(分配手段)と、分配器31により分配された音声信号の一方のレベル調整を行うフェダーボリューム回路301(レベル調整手段)と、他方のレベル調整を行うフェダーボリューム回路302(レベル調整手段)とを備える。分配器31によって分配された音声信号は等価な信号である。これら等価な音声信号が、それぞれフェダーボリューム回路301、302によって、フロントRスピーカ21用及びリアRスピーカ23用にレベル調整される。
また、センターユニット3は、入力されたLチャンネル音声信号S2を分配する分配器32(分配手段)と、分配器32により分配された音声信号の一方のレベル調整を行うフェダーボリューム回路303(レベル調整手段)と、他方のレベル調整を行うフェダーボリューム回路304(レベル調整手段)とを備える。分配器32によって分配された音声信号は等価な信号であり、これら等価な音声信号が、それぞれフェダーボリューム回路303、304によって、フロントLスピーカ22用及びリアLスピーカ24用にレベル調整される。
これらフェダーボリューム回路301、302、303、304によるレベル調整は、R−L間及びフロント−リア間の音量バランスを調整することによって、所定の音像定位を実現するために行われる。
【0019】
フェダーボリューム回路301から出力されたフロントRチャンネル音声信号S3は、ゲインコントロール回路321に入力され、さらに出力段ボリューム調整回路331を経てフロントRスピーカ21に出力される。ゲインコントロール回路321は音声信号S3のゲインの調整を行い、出力段ボリューム調整回路331は、例えば聴取者が指定した所定の音量に合わせて、音声信号S3を増幅する。
同様に、フェダーボリューム回路302から出力されたリアRチャンネル音声信号S4は、ゲインコントロール回路322に入力されてゲインの調整が施され、さらに出力段ボリューム調整回路332によって所定の音量に合わせて増幅され、リアRスピーカ23に出力される。フェダーボリューム回路303から出力されたフロントLチャンネル音声信号S5は、ゲインコントロール回路325に入力されてゲインの調整が施され、さらに出力段ボリューム調整回路335によって所定の音量に合わせて増幅され、フロントLスピーカ22に出力される。フェダーボリューム回路304から出力されたリアLチャンネル音声信号S6は、ゲインコントロール回路326に入力されてゲインの調整が施され、さらに出力段ボリューム調整回路336によって所定の音量に合わせて増幅され、リアLスピーカ24に出力される。
【0020】
また、センターユニット3は、フロントRチャンネル音声信号S3とフロントLチャンネル音声信号S5とを合成して合成音声信号S15を出力するミキサ回路315を備える。ミキサ回路315から出力される合成音声信号S15は、ゲインコントロール回路323によりゲイン調整された後、出力段ボリューム調整回路333によって所定の音量に合わせて増幅され、センタースピーカ25に出力される。すなわち、センタースピーカ25には、フロントRスピーカ21から出力される音声信号とフロントLスピーカ22から出力される音声信号とが合成された合成音声信号が入力される。
【0021】
これにより、センターユニット3は、フロントRスピーカ21、フロントLスピーカ22、リアRスピーカ23及びリアLスピーカ24から、所定の音像定位を実現するよう調整された音声を出力させることができ、また、センタースピーカ25から、フロントRスピーカ21及びフロントLスピーカ22の音声を合成した音声を出力させることにより、より一層臨場感に富む音場を実現する。また、これら5個のスピーカから出力される音声の音量は、ゲインコントロール回路321、322、323、325、326及び出力段ボリューム調整回路331、332、333、335、336によって調整可能であり、聴取者の所望の音量で出力させることができる。
【0022】
さらに、センターユニット3は、Rチャンネル音声信号S1及びLチャンネル音声信号S2を合成して合成音声信号S11を出力するミキサ回路311(第4の合成手段)と、フロントRチャンネル音声信号S3及びフロントLチャンネル音声信号S5を合成して合成音声信号S12を出力するミキサ回路312(第1の合成手段)と、リアRチャンネル音声信号S4及びリアLチャンネル音声信号S6を合成して合成音声信号S13を出力するミキサ回路313(第2の合成手段)と、フロントRチャンネル音声信号S3、リアRチャンネル音声信号S4、フロントLチャンネル音声信号S5及びリアLチャンネル音声信号S6の4チャンネルの音声信号を合成して合成音声信号S14を出力するミキサ回路314(第3の合成手段)とを備える。
そして、これらミキサ回路311、312、313、314から各々出力された合成音声信号S11〜S14は、信号選択回路35(選択手段)に入力される。信号選択回路35は、入力された合成音声信号S11〜S14から一の合成音声信号を選択してゲインコントロール回路324に出力する。信号選択回路35から出力された合成音声信号は、ゲインコントロール回路324によってゲイン調整が施され、出力段ボリューム調整回路334(増幅手段)によって所定の音量に合わせて増幅された後、サブウーファ26に出力される。
【0023】
このように、センターユニット3は、サブウーファ26から重低音領域の音声を出力させることにより、臨場感に富み、迫力ある音場を再現する6スピーカオーディオシステムを実現する。
【0024】
ところで、図1、図3(A)及び(B)を参照して上述したように、サブウーファ26は、車両1(図1)の後部座席後方のリアパーセルボード上や、リアラゲッジスペース、或いは前部座席下方の床面等に設置することが可能である。上述のように、サブウーファ26から出力される低音、特に重低音は指向性に乏しく、サブウーファ26の設置位置による音場への影響は軽微であるとされているが、実際には、サブウーファ26の設置位置により、音場に無視できない影響が及び、聴取者に音像定位の乱れ・偏りを感じさせる可能性がある。このため、良好な音場を得るためには、サブウーファ26の設置位置に応じた調整を行う必要がある。特に、車両1の室内のように比較的狭い閉空間において、自然で臨場感に富む音場を再現するためには、車室内音響特性を精密にチューニングする必要がある。
【0025】
この点において、センターユニット3は、合成音声信号S11〜S14から一の合成音声信号を選択可能に構成された信号選択回路35を備え、この信号選択回路35により選択された合成音声信号がサブウーファ用音声信号S26としてサブウーファ26に出力される。つまり、サブウーファ26から、R・L両チャンネルの音声を合成した音声、フロントのR・L両チャンネルの音声を合成した音声、リアのR・L両チャンネルの音声を合成した音声、及び、フロント及びリアのR・L両チャンネルの音声を合成した音声のいずれかを選択して出力させることができる。特に、R・L両チャンネルの音声を合成した音声は、フェダーボリューム回路301、302、303、304によるレベル調整前の音声信号を合成したものである。
【0026】
従って、サブウーファ26を車両1の前方(例えば、前部座席下方の床面)に設置した構成では、フロントのR・L両チャンネルの音声を合成した音声を出力させ、サブウーファ26を車両1の後方(例えば、リアパーセルボード上)に設置した構成では、リアのR・L両チャンネルの音声を合成した音声を出力させれば、より自然な音場が得られる。また、サブウーファ26を車両1の中央付近やリアラゲッジスペースに設置した構成では、フロント及びリアのR・L両チャンネルの音声を全て合成した音声を出力させれば、より自然な音場が得られる。或いは、フェダーボリューム回路301、302、303、304による調整が施されていないR・L両チャンネルの音声を合成した音声を、サブウーファ26から出力させることもできる。
【0027】
また、信号選択回路35に入力される合成音声信号S11は、フェダーボリューム回路301、302、303、304による調整が施されていないRチャンネル音声信号S1及びLチャンネル音声信号S2を合成した音声信号であり、所定の音像定位に合わせた調整が施されていない、いわば偏りのない音声信号である。このため、信号選択回路35において合成音声信号S11を選択した場合、サブウーファ26から、特定の音像定位に偏らない重低音を出力できるという利点がある。
これに対し、フェダーボリューム回路301、302、303、304による調整後の音声信号のみを適宜合成して、サブウーファ26から出力する場合は、フェダーボリュームの調整の影響を排することができないので、望ましい音声が得られない可能性がある。例えば、フェダーボリューム回路301、302、303、304によってフロント側に偏った調整を行い、リアのR・L両チャンネルの音声を0(零)とした場合、フェダーボリューム調整後の4チャンネルの音声信号を合成すると、各チャンネルの音声信号は、合成後の音声信号のうち各々1/4を占める。このため、リアの音声信号のレベルが0である分だけ、サブウーファに入力される合成音声信号のレベルが低くなってしまう。また、車室内の前後の音像定位を整えるため、フロント又はリアのR・L両チャンネルの音声信号を一律に増減させることがあるが、このような場合には、一律の増減による影響が合成後の音声信号に表れてしまい、サブウーファに入力される合成音声信号にもその影響が及ぶ。
本実施形態では、信号選択回路35により、サブウーファ26に出力する合成音声信号として、フェダーボリューム回路301、302、303、304の調整前の音声信号を合成した合成音声信号S11を選択可能としたので、上記のような問題を回避できる。
【0028】
これにより、信号選択回路35における選択状態を変更するだけで、車両1における車室内音響特性のチューニングを、少ない工数で、高精度に行うことが可能となる。
そして、センターユニット3は複雑な構成を用いることなく安価に製造可能である上、サブウーファ26から出力する音声を選択するための信号選択回路35を内蔵することで、省スペース性にも優れている。
【0029】
さらに、センターユニット3は、信号選択回路35によって選択された音声信号のゲインを調整するゲインコントロール回路324と、この音声信号を増幅してサブウーファ26に出力する出力段ボリューム調整回路334とを備えているので、サブウーファ26から出力される音声のボリュームを任意に調整することが可能となり、より高精度のチューニングを行うことができ、聴取者の好みに応じた音量で重低音を出力できる。この構成は、サブウーファ26用のパワーアンプを別に設ける場合に比べ、装置本体の小型化と配線数の削減により、省スペース性及び設置性が極めて高いという利点がある。
【0030】
なお、上記実施の形態では、音楽ソース4から出力されるRチャンネル音声信号S1及びLチャンネル音声信号S2がそのままセンターユニット3に入力される構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、センターユニット3に入力される前に、ボリューム/ラウドネスの調整やトーン調整等を施す構成としてもよい。この場合について、第1変形例として説明する。
【0031】
[変形例1]
図5は、本発明を適用した実施の形態の第1変形例におけるセンターユニット3の構成を示すブロック図である。
図5に示す第1変形例では、音楽ソース4から入力されるRチャンネル音声信号S1及びLチャンネル音声信号S2が、センターユニット3に入力される前に、調整回路部5によって処理される。
【0032】
調整回路部5は、Rチャンネル音声信号S1を処理するボリューム/ラウドネス調整部51及びトーンコントロール部53と、Lチャンネル音声信号S2を処理するボリューム/ラウドネス調整部52及びトーンコントロール部54とを備える。
ボリューム/ラウドネス調整部51、52は、入力された音声信号のボリューム及びラウドネスを調整する。このボリューム/ラウドネス調整部51、52によるボリュームの調整は、聴取者が任意に設定するボリュームではなく、例えば、予め設定された増幅率に基づいてRチャンネル音声信号S1及びLチャンネル音声信号S2を適宜増幅する処理である。また、トーンコントロール部53、54は、ボリューム/ラウドネス調整部51、52により調整された音声信号のトーン調整を行うものである。これらボリューム/ラウドネス調整部51、52及びトーンコントロール部53、54の処理によって、例えば、サラウンド効果により立体感や空間の拡がりを感じさせる音場が生み出される。
【0033】
この図5に示す変形例においても、上記実施の形態と同様の効果が得られる上、再生する音楽の属性に合わせて、音場処理を行えるという利点がある。
【0034】
なお、上記実施の形態及び第1変形例においては、センターユニット3に入力されたRチャンネル音声信号S1及びLチャンネル音声信号S2を、分配器31、32によって分配した上で、フェダーボリューム回路301、302、303、304によって調整する構成を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、次に説明する第2変形例のように、スライドボリューム回路を設けて分配及びレベル調整を行ってもよい。
【0035】
[変形例2]
図6は、本発明を適用した実施の形態の第2変形例におけるセンターユニット3の構成を示すブロック図である。
図6に示す第2変形例では、センターユニット3に入力されたRチャンネル音声信号S1及びLチャンネル音声信号S2が、スライドボリューム回路36、37によって、それぞれフロント用及びリア用の音声信号として分配される。
【0036】
スライドボリューム回路36、37(分配手段、レベル調整手段)は、入力された一の音声信号を二系統に分配するとともに、各系統の出力レベルを任意の割合で分配する機能を有する。
具体的には、スライドボリューム回路36は、Rチャンネル音声信号S1をフロントRチャンネル音声信号S3とリアRチャンネル音声信号S4とに分配する。フロントRチャンネル音声信号S3の出力レベルと、リアRチャンネル音声信号S4の出力レベルとは、一方が増すと一方が減ずる関係となっている。つまり、スライドボリューム回路36は、フロントRチャンネル音声信号S3とリアRチャンネル音声信号S4との出力レベルのバランスを調整するものである。同様に、スライドボリューム回路37は、Lチャンネル音声信号S2をフロントLチャンネル音声信号S5とリアLチャンネル音声信号S6とに分配するものであり、フロントLチャンネル音声信号S5とリアLチャンネル音声信号S6との出力レベルのバランスを調整する。
【0037】
この第2変形例の構成によれば、上記実施の形態におけるセンターユニット3と同様の効果が得られる上、分配器31、32及びフェダーボリューム回路301、302、303、304に代えて、スライドボリューム回路36、37を用いることで、構成をより簡素化することができ、センターユニット3の低コスト化、小型化及び省スペース化を図ることが可能となる。
【0038】
なお、上述した実施の形態及び各変形例は、本発明の一実施態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形及び応用可能であることは勿論である。例えば、上記実施の形態及び各変形例では、信号選択回路35により、フェダーボリューム調整前のR・L両チャンネルの音声信号、フェダーボリューム調整後のフロントR・L両チャンネルの音声信号、フェダーボリューム調整後のリアR・L両チャンネルの音声信号、及び、フェダーボリューム調整後の4チャンネルの音声信号を各々合成した合成音声信号を選択可能なものとした。しかしながら、本発明はこれに限定されず、フェダーボリューム調整前のR・L両チャンネルの音声信号と、フェダーボリューム調整後の4チャンネルの音声信号との合計6チャンネルの音声信号の中から、任意の複数チャンネルの音声信号を組み合わせて合成し、サブウーファ26から出力させることも可能である。一例としては、フロントのRチャンネルとリアのLチャンネルの音声信号を合成した信号を選択可能とすることも可能であり、その他の組み合わせであってもよい。
また、例えば、上記実施の形態及び変形例では、音楽ソース4から入力されるRチャンネル音声信号S1及びLチャンネル音声信号S2に基づき、6個のスピーカから音声を出力させる6スピーカオーディオシステムを構成するものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、2個のスピーカと1個のサブウーファ26から音声を出力させるステレオオーディオシステムを構成するものとしてもよいし、より多くのスピーカを用いるオーディオシステムを構成するものであってもよい。また、上記の形態及び各変形例で説明したセンターユニット3は、例えばアナログ音声信号を処理するものであるが、デジタル音声信号を処理するものであってもよい。この場合、アナログ音声信号とデジタル音声信号との変換を行うA/Dコンバータ若しくはD/Aコンバータを備える構成としてもよい。
さらに、センターユニット3は、外部接続される音楽ソース4から入力されるRチャンネル音声信号S1及びLチャンネル音声信号S2に基づいて動作するものとしたが、音楽ソース4としてのCDプレーヤ、MD(ミニディスク)プレーヤ、DVDプレーヤ等をセンターユニット3に内蔵した構成としてもよい。また、上記実施の形態及び各変形例では、車両1に搭載されたオーディオシステム2について説明したが、例えば、居室内に設置される据え置き型のオーディオシステムに本発明を適用してもよく、この場合、テレビ受像器や、ビデオデッキ、DVDプレーヤ等の映像再生装置を備えた構成としても良い。その他、上記実施の形態及び各変形例で示した細部構成についても、本発明の趣旨が損なわれない範囲において任意に変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明を適用した実施の形態におけるオーディオシステムの設置状態を示す図である。
【図2】オーディオシステムの概略構成を示すブロック図である。
【図3】オーディオシステムの別の設置状態を示す図である。
【図4】センターユニットの構成を示すブロック図である。
【図5】第1変形例におけるセンターユニット及び調整回路部の構成を示すブロック図である。
【図6】第2変形例におけるセンターユニットの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0040】
1 車両
2 オーディオシステム
3 センターユニット(オーディオ装置)
4 音楽ソース
5 調整回路部
21 フロントRスピーカ(スピーカ)
22 フロントLスピーカ(スピーカ)
23 リアRスピーカ(スピーカ)
24 リアLスピーカ(スピーカ)
25 センタースピーカ
26 サブウーファ(低音用スピーカ)
31、32 分配器(分配手段)
35 信号選択回路(選択手段)
36、37 スライドボリューム回路(分配手段、レベル調整手段)
301、302、303、304 フェダーボリューム回路(レベル調整手段)
311、312、313、314、315 ミキサ回路(合成手段)
321、322、323、324、325、326 ゲインコントロール回路
331、332、333、335、336 出力段ボリューム調整回路
334 出力段ボリューム調整回路(増幅手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数チャンネルの音声信号に基づいて、低音用スピーカを含む複数のスピーカから音声を出力させるオーディオ装置において、
前記複数チャンネルの音声信号の各々についてレベル調整を行い、レベル調整後の音声信号を前記低音用スピーカ以外のスピーカに出力するレベル調整手段と、
それぞれ二以上のチャンネルの音声信号を合成して合成音声信号を出力する複数の合成手段と、
前記複数の合成手段から出力される合成音声信号のうち一の合成音声信号を選択して前記低音用スピーカに出力する選択手段とを備え、
前記複数の合成手段のうち少なくとも一つは、前記レベル調整手段によるレベル調整前の音声信号を合成すること、
を特徴とするオーディオ装置。
【請求項2】
前記レベル調整手段は、前記複数チャンネルの音声信号として入力される右チャンネル及び左チャンネルの音声信号の各々についてレベル調整を行うものであって、
前記複数の合成手段のうち少なくとも一つは、前記レベル調整手段によるレベル調整前の右チャンネル及び左チャンネルの音声信号を合成すること、
を特徴とする請求項1記載のオーディオ装置。
【請求項3】
前記右チャンネル及び左チャンネルの音声信号を各々フロント用音声信号及びリア用音声信号に分配して、4チャンネルの音声信号を生成する分配手段をさらに備え、
前記レベル調整手段は、前記分配手段により分配された4チャンネルの音声信号の各々についてレベル調整を行い、これら4チャンネルに対応する前記スピーカにそれぞれ音声信号を出力するものであって、
前記複数の合成手段は、
前記レベル調整手段によるレベル調整後の右チャンネル及び左チャンネルのフロント用音声信号を合成する第1の合成手段と、
前記レベル調整手段によるレベル調整後の右チャンネル及び左チャンネルのリア音声信号を合成する第2の合成手段と、
前記レベル調整手段によるレベル調整後の右チャンネル及び左チャンネルのフロント音声信号及びリア音声信号を合成する第3の合成手段と、
前記レベル調整手段によるレベル調整前の前記右チャンネル及び左チャンネルの音声信号を合成する第4の合成手段とを含むこと、
を特徴とする請求項2記載のオーディオ装置。
【請求項4】
前記選択手段により選択されて出力された合成音声信号を増幅して前記低音用スピーカに出力する増幅手段を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のオーディオ装置。
【請求項5】
車両に搭載される車載機器として構成されたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のオーディオ装置。
【請求項6】
前記選択手段は、前記複数の合成手段から出力される合成音声信号のうち、前記車両における前記低音用スピーカの設置位置に対応する一の合成音声信号を選択可能に構成されたことを特徴とする請求項5記載のオーディオ装置。
【請求項7】
複数チャンネルの音声信号に基づいて、低音用スピーカを含む複数のスピーカから音声を出力させるオーディオ装置の制御方法において、
前記複数チャンネルの音声信号の各々についてレベル調整を行う工程と、
二以上のチャンネルの音声信号を合成して得られる合成音声信号を複数生成して出力する工程と、
前記複数の合成音声信号のうち一の音声信号を選択して前記低音用スピーカに出力する工程とを含み、
前記複数の合成音声信号のうち少なくとも一つは、前記レベル調整前の音声信号を合成したものであること、
を特徴とするオーディオ装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−36995(P2007−36995A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−220893(P2005−220893)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】