説明

オーディオ装置

【課題】容易に所望の音響特性を設定できる「オーディオ装置」を提供する。
【解決手段】ポーズ状態とされたビデオソース機器1によって静止画表示が行われているときに(a)、ユーザから入力装置3によって範囲401の指定を受け付け(b)、範囲401内の画像(c)に対して画像認識処理を施して認識対象(「女性ボーカル」)を識別し、イコライザ特性テーブル13に、識別した認識対象に対応づけて登録されているイコライザ特性をイコライザ6に設定する。イコライザ特性テーブル13には、予め、各認識対象に対応づけて、当該認識対象の発生する音を際だたせるイコライザ特性を登録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーディオ装置において出力音に与える音響特性を設定する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オーディオ装置において出力音に与える音響特性を設定する技術としては、予め用意しておいた複数の音響特性の名称のリストを表示し、表示したリスト上で、ユーザが名称を指示した音響特性を表すグラフを表示しつつ、ユーザによって名称を選択された音響特性を、出力音に与える音響特性として設定する技術が知られている(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-181462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した音響特性の名称のリスト上で、出力音に与える音響特性の選択を受け付ける技術によれば、ユーザが、出力中のオーディオコンテンツに無関係な音響特性を含む多数の音響特性のうちから、所望の音響特性を選択する煩雑な操作を行う必要がある。
【0005】
また、音響特性の名称や音響特性を表すグラフによっては、その音響特性の効果を把握し難い場合もあり、このような場合には、直ちに所望の音響特性を設定することが困難となる。
そこで、本発明は、より容易に所望の音響特性を設定できるオーディオ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題達成のために、本発明は、映像の表示と共に、音声の出力を行うオーディオ装置に、前記出力する音声を、設定された特性値が表す音響特性で調整するイコライザと、複数の対象物について、当該対象物の識別と前記特性値との対応を登録した特性値テーブルと、前記ユーザから前記映像の表示上で範囲の指定を受け付けて、前記表示されている映像中の前記指定された範囲内の部分に画像認識処理を施して、当該範囲内の部分に像が含まれる前記対象物を認識する画像認識手段と、前記画像認識手段が認識した前記対象物の識別との対応が前記特性値テーブルに登録されている前記特性値を前記イコライザに設定するイコライザ特性設定手段とを備えたものである。
【0007】
このようなオーディオ装置によれば、映像の表示上で所望の対象物が写り込んでいる画像部分を範囲指定するだけで、その対象物の識別との対応が特性値テーブルに登録されている特性値が前記イコライザに設定される。
よって、対象物の識別との対応を特性値テーブルに登録する特性値を適当に設定しておくことにより、より直感的かつ容易に所望の音響特性を設定できるようになる。すなわち、たとえば、前記複数の対象物を、各々音の発生源とし、前記特性値テーブルに登録されている、前記対象物の識別と対応する前記特性値は、当該対象物の発生する音を際立たせる音響特性を表すものとすれば、ユーザは、映像の表示上で、当該映像に含まれている、より良く音を聴きたい対象物の像の範囲を指定するだけで、当該対象物の発生する音を際立たせる音響特性の特性値をイコライザに設定することができる。
【0008】
ここで、以上のようなオーディオ装置は、前記イコライザ特性設定手段において、画像認識手段が複数の対象物を認識した場合に、当該複数の対象物の内からの一つの対象物の選択をユーザから受け付け、選択を受け付けた対象物の識別に対応して前記特性値テーブルに登録されている前記特性値を前記イコライザに設定するように構成することもできる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、より容易に所望の音響特性を設定できるオーディオ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るオーディオ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係るイコライザ特性テーブルの内容を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係るイコライザ特性設定制御処理を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態に係るイコライザ特性設定制御処理の処理例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係るイコライザ特性設定制御処理の処理例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るオーディオ装置の実施形態について説明する。
図1に、本実施形態に係るオーディオ装置の構成を示す。
図示するように、オーディオ装置は、ビデオ再生装置やTV受信機などのオーディオデータと映像データとを出力するビデオソース機器1、スピーカ2、入力装置3、表示装置4、制御部5、イコライザ6、アンプ7、ビデオメモリ8、表示制御部9、画像認識辞書10、画像認識部11、イコライザ特性設定制御部12、イコライザ特性テーブル13とを備えている。
【0012】
但し、本オーディオ装置は、マイクロプロセッサや、メモリや、その他の周辺デバイスなどの一般的なハードウエア構成を備えたコンピュータを利用して構成されるものであってよく、この場合、以上に示した制御部5、画像認識辞書10、画像認識部11、イコライザ特性設定制御部12、イコライザ特性テーブル13、イコライザ6などの各部、または、その一部は、コンピュータが所定のコンピュータプログラムを実行することにより実現されるリソースやプロセスであってよい。
【0013】
このような構成において、制御部5は、入力装置3で受け付けたユーザ操作に応じて、ビデオソース機器1の動作を制御する。
また、ビデオソース機器1から出力されたオーディオデータは、イコライザ6においてイコライザ6に設定されているイコライザ特性に従って音響特性が調整された後、アンプ7を介してスピーカ2に出力される。一方、ビデオソース機器1から出力された映像データは、一旦、ビデオメモリ8に格納された後、表示制御部9によって読み出され、映像データが表す映像が表示装置4に表示される。
【0014】
次に、画像認識辞書10には、画像認識部11において行う画像認識処理において画像認識する対象である認識対象の各々に対応づけて、当該認識対象を表す画像の特徴を表す特徴データが格納されている。ここで、画像認識部11において行う画像認識処理では、たとえば、「男性ボーカル」、「女性ボーカル」、「ギター」、「ベース」などの、音の発生源となる歌唱者や楽器の種別を認識の対象とする。
【0015】
そして、イコライザ特性テーブル13には、図2に示すように、上述した画像認識処理において認識する各認識対象に対応づけて、イコライザ特性を登録する。ここで、イコライザ特性テーブル13には、イコライザ特性として、各チャネル毎にFc,Q,Gainなどによって表される周波数特性を登録する。また、イコライザ特性テーブル13に登録するイコライザ特性が表す周波数特性は、基本的には、対応づけられた認識対象の発生する音を際だたせるものとする。すなわち、たとえば、「女性ボーカル」に対応づけられてイコライザ特性テーブル13に登録されたイコライザ特性が表す周波数特性は女性の声の音域を際だたせるものとし、「ギター」に対応づけけられてイコライザ特性テーブル13登録されたイコライザ特性が表す周波数特性はギターの音域を際だたせるものとする。
【0016】
以下、このようなオーディオ装置において行う、イコライザ6へのイコライザ特性の設定動作について説明する。
イコライザ特性設定制御部12は、イコライザ6へのイコライザ特性の設定のために、図3に示すイコライザ特性設定制御処理を行う。
図示するように、この処理では、制御部5がユーザ操作に従ってビデオソース機器1の出力をポーズ状態(映像を構成する1フレームを静止画として表示している状態)に制御しているときに(ステップ302)、ユーザによる入力装置3を介した、表示装置4の表示画面上の範囲指定が発生するのを監視する(ステップ304)。
【0017】
そして、範囲指定が発生したならば、画像認識部11を用いて、当該時点で表示装置4で表示している映像の、指定された範囲内の部分の画像の画像認識を行って、指定された範囲内の部分の画像に像が写り込んでいる認識対象を識別する(ステップ306)。ここで、ステップ306において、画像認識部11は、ビデオメモリ8に格納されている静止画表示中の映像の映像データが表す画像中の、指定された範囲内の部分の画像に対して、画像認識辞書10を用いて画像認識処理を施して、上述した認識対象のいずれの像が、当該入力された範囲内の部分の画像に含まれているかを識別し、識別結果をイコライザ特性設定制御部12に通知する。
【0018】
すなわち、たとえば、ポーズ状態とされたビデオソース機器1によって図4aに示す画像が静止画表示されているときに、図4bに示す範囲401がユーザによって入力装置3によって指定された場合には、画像認識部11は、指定された範囲401内の画像である図4cに示す画像に対して画像認識処理を施して、図4cに示す画像に含まれるパターンの特徴とマッチする特徴データと対応づけて画像認識辞書10に登録されている認識対象(ここでは、「女性ボーカル」)を識別し、イコライザ特性設定制御部12に通知する。
【0019】
次に、このようにして画像認識を行ったならば、イコライザ特性テーブル13より、画像認識で識別した認識対象に対応づけて登録されているイコライザ特性を取得し(ステップ308)、取得したイコライザ特性をイコライザ6に設定する(ステップ310)。
すなわち、図4bに示す範囲401がユーザによって入力装置3によって指定され、「女性ボーカル」を画像認識した場合には、「女性ボーカル」に対応づけてイコライザ特性テーブル13に登録されているイコライザ特性をイコライザ6に設定する。
ここで、イコライザ6は、イコライザ特性が設定されたならば、以降、設定されたイコライザ特性に従ってオーディオデータの音響特性の調整を行う。
この結果、図4bに示すように表示装置4の表示上で「女性ボーカル」が写り込んでいる画像部分401をユーザが範囲指定するだけで、「女性ボーカル」の音域を際だたせるオーディオデータの音響特性の調整をイコライザ6に行わせるイコライザ特性が、自動的にイコライザ6に設定されることになる。
【0020】
以上、イコライザ特性設定制御処理について説明した。
ところで、以上のイコライザ特性設定制御処理のステップ306の画像認識において、指定範囲内の画像に対する画像認識処理によって複数の認識対象が識別された場合には、以下のようにしてよい。
すなわち、識別された複数の認識対象のうちのいずれか一つの認識対象を所定の規則に従って選択して、選択認識対象とし、選択認識対象に対応づけて登録されているイコライザ特性をイコライザ特性テーブル13より取得し(ステップ308)、取得したイコライザ特性をイコライザ6に設定するようにする(ステップ310)。ここで、上記所定の規則としては、画像認識辞書10に登録されている当該認識対象の特徴データと指定範囲内の画像中のパターンとのマッチ度が最大の認識対象を選択認識対象とする規則や、識別した認識対象に対応する指定範囲内の画像中のパターンのサイズが最も大きい認識対象を選択認識対象とする規則や、識別した認識対象に対応する指定範囲内の画像中のパターンの中心位置が、指定範囲の中心に最も近い認識対象を選択認識対象とする規則などを用いることができる。
【0021】
または、イコライザ特性テーブル13に、複数の認識対象の組み合わせに対応づけたイコライザ特性も登録しておくようにし、識別された複数の認識対象の組み合わせに対応づけられたイコライザ特性をイコライザ特性テーブル13より取得し(ステップ308)、取得したイコライザ特性をイコライザ6に設定するようにしてもよい(ステップ310)。
【0022】
または、識別された複数の認識対象のリストを表示装置4に表示し、表示したリスト中からの一つの認識対象の選択をユーザから受け付け、選択された認識対象を、選択認識対象として、選択認識対象に対応づけて登録されているイコライザ特性をイコライザ特性テーブル13より取得し(ステップ308)、取得したイコライザ特性をイコライザ6に設定するようにしてもよい(ステップ310)。
【0023】
すなわち、たとえば、図5aに示すようにユーザから指定された範囲501に対する画像認識によって「女性ボーカル」と「ギター」が識別された認識対象として得られた場合には、図5bに示すように、選択ウインドウ502を表示して、識別された認識対象「女性ボーカル」、「ギター」のリストを表示して、「女性ボーカル」、「ギター」のいずれかの選択を受け付けて、選択認識対象とするようにする。
【0024】
または、図5cに示すように、ユーザから指定された範囲503に対する画像認識によって「女性ボーカル」と「男性ボーカル」が識別された認識対象として得られた場合には、選択ウインドウ502を表示して、識別された認識対象「女性ボーカル」、「男性ボーカル」のリストを表示して、「女性ボーカル」、「男性ボーカル」のいずれかの選択を受け付けて、選択認識対象とするようにする。
【0025】
または、図5dに示すように、以上のイコライザ特性設定制御処理のステップ306の画像認識において、指定範囲504内の画像に対する画像認識処理によって、認識対象として複数の大きさが異なる人物であるところの認識対象(「女性ボーカル」や「男性ボーカル」等)が、識別された場合には、同図に示すように選択ウインドウ505を表示し、識別した認識対象と、奥行き感のいずれかの選択を受け付け、識別した認識対象が選択された場合には、識別した認識対象に対応づけて登録されているイコライザ特性をイコライザ特性テーブル13より取得し(ステップ308)、取得したイコライザ特性をイコライザ6に設定し、奥行き感が選択された場合には、イコライザ特性テーブル13に予め登録しておいた出力音像の奥行き感を増加させる音響特性を与えるイコライザ特性を取得して、取得したイコライザ特性をイコライザ6に設定するようにしてもよい。
【0026】
ところで、以上の実施形態では画像認識辞書10に、認識対象を表す画像の特徴を表す特徴データを認識対象と対応づけて登録したが、画像認識辞書10には認識対象を表す典型的な画像を参照画像として認識対象と対応づけて登録するようにしてもよい。ここで、この場合、画像認識部11は、指定された範囲内の画像とパターンや特徴がマッチする参照画像と対応づけて画像認識辞書10に登録されている認識対象を識別する。
【0027】
なお、以上のオーディオ装置には、画像認識辞書10やイコライザ特性テーブル13の内容をユーザ操作に応じて編集する編集機能を設けるようにしてもよい。また、この場合において、画像認識辞書10に上述のように参照画像を登録する場合には、ビデオソース機器1が出力するビデオデータが表す画像を参照画像として画像認識辞書10に登録できるようにしてもよい。
【0028】
以上、本発明の実施形態について説明した。
【符号の説明】
【0029】
1…ビデオソース機器、2…スピーカ、3…入力装置、4…表示装置、5…制御部、6…イコライザ、7…アンプ、8…ビデオメモリ、9…表示制御部、10…画像認識辞書、11…画像認識部、12…イコライザ特性設定制御部、13…イコライザ特性テーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像の表示と共に、音声の出力を行うオーディオ装置であって、
前記出力する音声を、設定された特性値が表す音響特性で調整するイコライザと、
複数の対象物について、当該対象物の識別と前記特性値との対応を登録した特性値テーブルと、
前記ユーザから前記映像の表示上で範囲の指定を受け付けて、前記表示されている映像中の前記指定された範囲内の部分に画像認識処理を施して、当該範囲内の部分に像が含まれる前記対象物を認識する画像認識手段と、
前記画像認識手段が認識した前記対象物の識別との対応が前記特性値テーブルに登録されている前記特性値を前記イコライザに設定するイコライザ特性設定手段とを有することを特徴とするオーディオ装置。
【請求項2】
請求項1記載のオーディオ装置であって、
前記複数の対象物は、各々音の発生源であって、
前記特性値テーブルに登録されている、前記対象物の識別と対応する前記特性値は、当該対象物の発生する音を際だたせる音響特性を表すことを特徴とするオーディオ装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のオーディオ装置であって、
前記イコライザ特性設定手段は、画像認識手段が複数の対象物を認識した場合に、当該複数の対象物の内からの一つの対象物の選択をユーザから受け付け、選択を受け付けた対象物の識別との対応が前記特性値テーブルに登録されている前記特性値を前記イコライザに設定することを特徴とするオーディオ装置。
【請求項4】
映像の表示と共に、音声の出力を行う、前記出力する音声を、設定された特性値が表す音響特性で調整するイコライザを備えたコンピュータによって読み取られ実行されるコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータを、
複数の対象物について、当該対象物の識別と前記特性値との対応を登録した特性値テーブルと、
前記ユーザから前記映像の表示上で範囲の指定を受け付けて、前記表示されている映像中の前記指定された範囲内の部分に画像認識処理を施して、当該範囲内の部分に像が含まれる前記対象物を認識する画像認識手段と、
前記画像認識手段が認識した前記対象物の識別との対応が前記特性値テーブルに登録されている前記特性値を前記イコライザに設定するイコライザ特性設定手段として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−217328(P2011−217328A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86128(P2010−86128)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】