説明

オープンシールド機の降下装置及び降下方法

【課題】 オープンシールド機の降下を円滑に行い得ると共に、オープンシールド機の側板の下端部分から内側への土砂の流入(崩壊)を防止又は減少させることができるオープンシールド機降下装置を提供する。
【解決手段】オープンシールド機の内側に存する土砂の掘削機械による掘削に伴い該オープンシールド機を土中に降下させるためのオープンシールド機降下装置であって、オープンシールド機に下方への力を加える駆動手段と、駆動手段が取り付けられた本体部であって、駆動手段の反力により本体部が上方に移動する際に該掘削機械に加わる重力の少なくとも一部が加わるものである本体部と、を備えるものである、オープンシールド機降下装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オープンシールド機降下装置に関し、より詳細には、オープンシールド機を土中に降下させる際にオープンシールド機に下方に向いた力を加えることで土中にオープンシールド機を円滑に降下させることができるオープンシールド機降下装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オープンシールド機は、上下水道管、ボックスカルバート、マンホール等のような埋設物を埋設するのにこれまで使用されてきた(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5参照)。
オープンシールド機は、出発地点に形成された穴(上部が土表面に開放された土中に向けて形成された窪み。以下、「出発穴」という。)に配設された後、目的地点に向け土砂をバックホー等のような掘削機械で掘削し、オープンシールド機を前進させ、埋設物を埋設することを繰り返すことにより出発地点から目的地点まで埋設物を埋設するのに用いられる。
この出発地点においてオープンシールド機を出発穴に配設するには、特許文献1の第1頁第2欄第8行〜第15行に記載のように「発信地点にオープンシールド機を設置する際には、次のような方法が採られている。(a)最も一般的には、予め発信坑と到達坑とを設け、オープンシールド機を前記坑内で組立、解体する。(b)発信地盤で組立後、オープンシールド機内を掘削して、井筒工法の載荷重により強制的に沈下させる」ような方法が用いられてきた。しかしながら、「(a)の方法では、立坑築造の際、矢板等による山留工事のための板打ち込み、抜き取りによる周辺地盤への振動、騒音、地盤への悪影響が避けられず、工事費も高くつく。又、(b)の方法では、側板と土との摩擦による不等沈下を防止するのが困難である」(特許文献1の第1頁第2欄第18行〜第23行)のに鑑み、特許文献1に係る発明がなされた。
【0003】
特許文献1に係る発明は、「鉛直面に形成された左右の側板を有するオープンシールド機の側部で地上に立設した支持柱と、上下方向の懸架柱と、懸架柱に上端を支持柱に外嵌されて位置調節可能な案内柱に下端を連絡された油圧シリンダとから懸架装置を構成する。そして複数の懸架装置に、各懸隔柱にオープンシールド機に取付けることによりオープンシールド機を懸架する。オープンシールド機の内部の土砂を掘削するのと平行して、油圧シリンダを油圧同調装置で同調させながら作動させ、オープンシールド機を均等に降下させる」(特許文献1の第1頁第2欄第27行〜第2頁第3欄第9行)ことにより「オープンシールド機は、懸架装置により地上に懸架されたまま、オープンシールド機の内部の土砂を掘削するのと平行して、自重の油圧シリンダによって掘削面に押し付けられて下降する。各油圧シリンダは、油圧同調装置により同調しているので、オープンシールド機は均等に降下する。なお、到達地点では、油圧シリンダを逆方向に作動することにより、自昇させることができる」(特許文献1の第2頁第3欄第11行〜第18行)ものである。
【0004】
図8は特許文献1の第1図(地盤101の土表面103(ここでは略水平面)にオープンシールド機1が置かれた状態を示している。)と同様の図であり、図9は特許文献1の第3図(図8中、矢印D方向から見たところを示している。)と同様の図であり、図10は特許文献1の第2図(地盤101の土中105へオープンシールド機1が降下した状態を示している。)と同様の図である。そして、図11は、図9よりも広い範囲を示すオープンシールド機1の側面図(図9とは反対側(図8中、矢印C方向)から見たところを示している。)である。さらに、図12は図10中の点線Eにより囲まれた部分の一部断面図(幾つかの要素を省略又は簡略化して示す。)である。これら図8〜図12を参照して、特許文献1に係る発明に関し簡単に説明する。なお、これらの図に示されたオープンシールド機1や懸架装置4等の構造や作用等については特許文献1の該当個所(例えば、特許文献1の第2頁第3欄第20行〜第4欄第29行)を参照されたい。
【0005】
図8、図9、図11に示すように地盤101の土表面103にオープンシールド機1が配設され、図11のようにオープンシールド機1に隣接した位置には油圧ショベル201a、201b(掘削機械)が配置されている。この油圧ショベル201a、201bにより、オープンシールド機1の内側(左右の側板2の間)に存する土砂301(図8参照)を掘削すると共に、油圧シリンダ7を縮めることでオープンシールド機1の自重(オープンシールド機に加わる重力)により図10に示すようにオープンシールド機1を降下させることができる。
【0006】
【特許文献1】特公平3−46612号公報(例えば、第1頁第1欄第22行〜第2頁第3欄第18行、第1図、第2図、第3図等)
【特許文献2】特開2001−49991号公報(例えば、第1図、第2図等)
【特許文献3】特開2002−61492号公報(例えば、第1図等)
【特許文献4】特開2003−64987号公報(例えば、段落番号0001、0002等)
【特許文献5】特開2004−116179号公報(例えば、段落番号0001〜0003等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に係る発明は、あくまでオープンシールド機を自重(オープンシールド機にはたらく重力)により降下させるものであるので、オープンシールド機周囲の土砂との摩擦が大きい場合には、降下しなかったり降下速度が小さすぎる問題があった。
また、図12に示すように、オープンシールド機1の内側1aに存する土砂301を掘削することで、オープンシールド機1の側板2の下端部分2aから内側1aへ土砂が流入(崩壊)する問題がある(土砂の流入を図12中、矢印Jにて示した。とりわけ周辺土砂が軟弱な粘性土や緩い砂層である場合に顕著に発生する。)。かかる内側1aへの土砂の流入(崩壊)は、オープンシールド機1の周辺地盤のゆるみと共に土表面103の沈下を生じ得る。なお、オープンシールド機1の側板2とそれに面する土砂との間の摩擦を減少させる(摩擦を切る)ため、油圧シリンダ7の伸張による側板2の上昇と、油圧シリンダ7を縮めることによるオープンシールド機1の降下と、を繰り返すことも行われれることがあったが、このような上昇と降下との反復は周辺地盤を乱すことや、側板2の上昇時にはH形鋼等の支持部材16に下向きの力(側板2の上昇に対する反力)が作用するため、やはりこれも側板2の下端部分2aから内側1aへ土砂が流入(崩壊)することを促進し得るものであった(例えば、H形鋼等の支持部材16の端部よりすべり面が発生して掘削面まですべり破壊を生じ得る。)。
【0008】
そこで、本発明においては、オープンシールド機の降下を円滑に行い得ると共に、オープンシールド機の側板の下端部分から内側への土砂の流入(崩壊)を防止又は減少させることができるオープンシールド機降下装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のオープンシールド機降下装置(以下、「本装置」という。)は、オープンシールド機の内側に存する土砂の掘削機械による掘削に伴い該オープンシールド機を土中に降下させるためのオープンシールド機降下装置であって、オープンシールド機に下方への力を加える駆動手段と、駆動手段が取り付けられた本体部であって、駆動手段の反力により本体部が上方に移動する際に該掘削機械に加わる重力の少なくとも一部が加わるものである本体部と、を備えるものである、オープンシールド機降下装置である。
本装置は、オープンシールド機の内側に存する土砂の掘削機械による掘削に伴い該オープンシールド機を土中に降下させるためのオープンシールド機降下装置であり、かかる点では特許文献1に係る発明と同様、オープンシールド機を降下させるのに用いることができる。そして、本装置は、駆動手段と、駆動手段が取り付けられた本体部と、を備えてなり、駆動手段は、オープンシールド機に下方への力(鉛直下方への成分を含む)を加える。オープンシールド機に下方への力を駆動手段が加えると、該下方への力による反力(反作用の力)が加わる。この反力は、該下方への力とは反対方向の上方に向いている(鉛直上方への成分を含む)ので、駆動手段が取り付けられた本体部を上方に移動させるよう作用する。この本体部の上方への移動を防止又は減少させるため、本体部が該反力により上方に移動する際に掘削機械に加わる重力の少なくとも一部が本体部に加わるようにされる。即ち、本体部が該反力により上方に移動しようとすると、通常重量の大きな掘削機械(例えば、油圧ショベル、バックホー等)に加わる重力の少なくとも一部(無論、該重力の全部であってもよい)が本体部に加わることで、本体部が上方に移動することを防止又は減少させる。なお、「駆動手段の反力により本体部が上方に移動する際に該掘削機械に加わる重力の少なくとも一部が加わる」とは、該重力の少なくとも一部(無論、該重力の全部であってもよい)が、該反力により本体部が上方に移動する際に少なくとも加わっていれば足り、該重力の少なくとも一部(無論、該重力の全部であってもよい)が常に加わっているような場合も含む。
このように本体部が上方に移動することを防止又は減少させることで、本体部に取り付けられた駆動手段がオープンシールド機に下方への力を効果的に加えることができ、該加えられた下方への力によりオープンシールド機の降下を円滑に行い得ると共に、オープンシールド機の側板を下方にむけて押し付けることにより側板の下端部分から内側への土砂の流入(崩壊)を防止又は減少させることができる(オープンシールド機の側板の下端部分がしっかりと掘削面に当接するか又は地盤に貫入された状態となることで、該下端部分から内側への土砂の流入(崩壊)を防止又は減少させる。)。
【0010】
駆動手段からの反力が加わる本体部の位置である反力位置と、前記掘削機械に加わる重力の少なくとも一部が加わる本体部の位置である重力位置と、の両位置のうち一方が互いに離れた少なくとも2個所であり、該2個所の間に他方が存するものであってもよい。
該反力は上方に向いており該重力は下方に向いているので、このように反力位置と重力位置との両位置のうち一方が互いに離れた少なくとも2個所であり該2個所の間に他方が存することで、該反力と該重力の少なくとも一部とが本体部に加わった際の本体部の回転モーメントを減少させることができ(例えば、反力位置と重力位置とのいずれも1個所であり両位置が離れている場合に比して、重力位置が2個所であり反力位置(個数を問わない)が該2個所の間に存する場合は、本体部の回転モーメントは小さい。)、本体部を安定させることができ、本装置を安定かつ安全に使用することができる。
【0011】
前記本体部が、前記掘削機械を載置する載置部を有するもの(以下、「掘削機械載置本装置」という。)であってもよい。
このような載置部に掘削機械を載置することで、掘削機械に加わる重力の少なくとも一部を簡単な構成により確実に本体部に加えることができ、本体部の上方への移動を防止又は減少させることができる。
なお、掘削機械は通常重量が大きいので、本体部の載置部に掘削機械を載置する場合には、本体部を地盤表面(土表面103)に支持させる(掘削機械が載置された本体部を直接(例えば、本体部を地盤表面に置く)又は間接(例えば、本体部が他の部材を介して地盤表面に支持される)に地盤表面に支持させるようにすればよい。)ようにすることで本体部に加わる掘削機械の重量に本体部がうまく耐えるようにすることができる(とりわけ、本体部を地盤表面に直接置くようにすれば簡単な構成で本体部に加わる掘削機械の重量に本体部がうまく耐えるようにすることができる。)。
【0012】
掘削機械載置本装置の場合、前記本体部が、前記オープンシールド機の左右両側面に沿って前後方向に配設される一対の側面部材と、前記オープンシールド機の前方において該一対の側面部材を連結する前方連結部材と、前記オープンシールド機の後方において該一対の側面部材を連結する後方連結部材と、を有してなり、該前方連結部材と該後方連結部材とが前記載置部の少なくとも一部を構成するものであってもよい。
一対の側面部材が、オープンシールド機の左右(オープンシールド機の内部においてオープンシールド機の進行方向に向いた状態でそれぞれ「右」及び「左」をいう。)両側面(オープンシールド機の側板の外面をいう。)に沿って前後(オープンシールド機の進行方向に関しそれぞれ「前」及び「後」をいう。)方向に配設される。そして、該一対の側面部材を、前方連結部材が前方において連結し、そして後方連結部材が後方において連結するので、該一対の側面部材と前方連結部材と後方連結部材とにより強度の高い堅牢な本体部とすることができる。このような強度の高い堅牢な本体部の前方連結部材と後方連結部材とが載置部の少なくとも一部を構成することにより、掘削機械に加わる重力の少なくとも一部を簡単な構成により確実に本体部に加えることができることに加え、前記反力位置と前記重力位置との両位置のうち一方(重力位置)が互いに離れた少なくとも2個所(前方連結部材、後方連結部材)であり該2個所の間に他方(反力位置)が存するようにうまく構成することもできる。
【0013】
本装置を用いてオープンシールド機を土中に降下させる方法(以下、「本方法」という。)としては、様々なものが考えられるが、例えば、オープンシールド機の内側に存する土砂を掘削機械により掘削する掘削工程と、駆動手段によりオープンシールド機に下方への力を加えてオープンシールド機を土中に降下させる降下工程と、掘削機械に加わる重力の少なくとも一部が本体部に加わる重力付加工程と、を含んでなる、方法としてもよい。
掘削工程において掘削機械を用いてオープンシールド機の内側に存する土砂を掘削する。そして、降下工程において駆動手段によりオープンシールド機に下方への力(鉛直下方への成分を含む)を加えてオープンシールド機を土中に降下させる。この降下工程においてオープンシールド機に下方への力を駆動手段が加えると、該下方への力による反力(反作用の力。鉛直上方への成分を含む)が加わり、該反力は駆動手段が取り付けられた本体部を上方に移動させるよう作用する。この本体部の上方への移動を防止又は減少させるため、重力付加工程において本体部が該反力により上方に移動する際に掘削機械に加わる重力の少なくとも一部が本体部に加わるようにされる。即ち、本体部が該反力により上方に移動しようとすると、通常重量の大きな掘削機械(例えば、油圧ショベル、バックホー等)に加わる重力の少なくとも一部(無論、該重力の全部であってもよい)が本体部に加わることで(前述したと同様、該重力の少なくとも一部(無論、該重力の全部であってもよい)が、該反力により本体部が上方に移動する際に少なくとも加わっていれば足り、該重力の少なくとも一部(無論、該重力の全部であってもよい)が常に加わっているような場合も含む。)、本体部が上方に移動することを防止又は減少させる。
このように該反力により本体部が上方に移動することを防止又は減少させることで、本装置と同様、本体部に取り付けられた駆動手段がオープンシールド機に下方への力を効果的に加えることができ、該加えられた下方への力によりオープンシールド機の降下を円滑に行い得ると共に、オープンシールド機の側板を下方にむけて押し付けることにより側板の下端部分から内側への土砂の流入(崩壊)を防止又は減少させることができる(オープンシールド機の側板の下端部分がしっかりと掘削面に当接するか又は地盤に貫入された状態となることで、該下端部分から内側への土砂の流入(崩壊)を防止又は減少させる。)。
【0014】
本方法のうち掘削機械載置本装置を用いる場合には、前記降下工程よりも前に行う載置部に掘削機械を載置する載置工程を、さらに含むものであってもよい。
掘削機械載置本装置が有する載置部に掘削機械を載置する載置工程を前記降下工程よりも前に行うことで、前記降下工程において前記下方への力による反力(反作用の力。鉛直上方への成分を含む)が加わり該反力が本体部を上方に移動させるよう作用する際に、確実に載置部に掘削機械が載置されており、本体部の上方への移動を防止又は減少させるための重力付加工程(掘削機械に加わる重力の少なくとも一部が本体部に加わることで、本体部の上方への移動を防止又は減少させる。)が確実に行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。しかしながら、これらによって本発明は何ら制限されるものではない。
【0016】
図1は本発明のオープンシールド機降下装置(本装置)20を示す正面図(一部断面)であり、図2は本装置20の作動原理を模式的に示す正面模式図(図1と同様の方向から見たところを示している。)であり、図3は本装置20の作動原理を模式的に示す平面模式図(図1及び図2中、矢印K方向から見たところを示している。)である。図1乃至図3を参照して、本装置20について説明する。
地盤101の土表面103(ここでは略水平面)には、オープンシールド機1が置かれている。オープンシールド機1は従来から用いられてきたオープンシールド機(例えば、特許文献1の第2頁の実施例に記載されたオープンシールド機1)と同様のものであり、左右の側板2、2(略鉛直平面に沿っている)とフレーム3とを有している。左右の側板2、2の下縁が土表面103に接している。
なお、「前」、「後」、「右」、「左」、「上」及び「下」を、図中それぞれ、矢印P1(前)、P2(後)、P3(右)、P4(左)、P5(上)及びP6(下)にて示す。
【0017】
本装置20は、大まかには、後述する駆動装置4a、4b、4c、4dと、一対のH形鋼21a、21bと、前方連結部材23a、23bと、鉄板25aと、後方連結部材27a、27bと、鉄板25bと、を備えて構成されている(なお、後述するように、一対のH形鋼21a、21bと前方連結部材23a、23bと鉄板25aと後方連結部材27a、27bと鉄板25bとによって本体部が構成される。)。
オープンシールド機1の左右には互いに略平行になるように一対のH形鋼21a、21bが土表面103に置かれて配設されている。
一対のH形鋼21a、21bの上面には、駆動装置4a、4b、4c、4dが配設されている。図4乃至図6は、駆動装置4a、4b、4c、4dについて詳しく説明するための図であり、具体的には、図4はオープンシールド機1を正面側から見たところ(図1乃至図3に見る位置をM−Mにて示した。)を示す一部断面図であり、図5は側面図(図4中、矢印N方向から見たところを示している。)であり、図6は後述する懸架柱と案内柱との係合状態を示す拡大平面図である。図4乃至図6を参照して、駆動装置4a、4b、4c、4dについて説明する。
駆動装置4a、4b、4c、4dは、特許文献1の実施例に記載された懸架装置4と同様の構造を有しており、懸架装置4との相違点は、駆動装置4a、4b、4c、4dに含まれる油圧シリンダ7が縮む方向に力を加える点である(特許文献1の実施例(懸架装置4)における油圧シリンダ7は、オープンシールド機1の重量を支持しつつ(即ち、のびる方向に力を加えつつ)、徐々に縮められる。)。
【0018】
駆動装置4a、4b、4c、4dの構造は、上述のように特許文献1の実施例に記載された懸架装置4と同様であるので特許文献1の懸架装置4に関する説明により理解されるが、以下、簡単に説明しておく。
駆動装置4a、4b、4c、4dはいずれも同様の構造を有しており、大まかには、長手方向(ここでは該長手方向がほぼ鉛直方向に向いている。)に対して垂直な断面が略長方形をした懸架柱5と、油圧シリンダ7と、長手方向(ここでは該長手方向がほぼ鉛直方向に向いている。)に対して垂直な断面が略長方形をした案内柱10と、油圧同調装置15と、を含んで構成されている。
懸架柱5は、下端近傍部分がオープンシールド機1のフレーム3へボルト等の締結具で固定されることによって、オープンシールド機1へ固定されている。なお、懸架柱5はオープンシールド機1に対して左右対称に取り付けられている。案内部6は、懸架柱5の外側に突設されている。
油圧シリンダ7は、懸架柱5の内部に収容された往復動可能な油圧シリンダであり、シリンダヘッドを懸架柱5の上端部近傍に固定されており下方に向かって垂下している。左右の懸架柱5の上端部近傍は、連結金具9により連結支持されている。
案内柱10は、下端部に固定した取付金具11を介して、ロッド8の端部が取り付けられている。案内柱10は、懸架柱5の案内部6に係合する案内部材6’により、懸架柱5へはめ込まれているので(特に図6を参照されたい。なお、図示を容易にするため図3等においては、案内部6と案内部材6’との係合を示していない。)、懸架柱5は案内柱10に沿って上下動自在である。支持柱13は、案内柱10内に摺動自在に嵌挿され、上下方向に所定間隔で複数の位置調節用のピン穴12が穿設されている。連結固定用のピン14をピン穴12に貫入することで両柱10、13が固定される。支持柱13の下端はH形鋼21a、21bに固定されている。
油圧同調装置15は、オープンシールド機1のフレーム3上へ取り付けられ、駆動装置4a、4b、4c、4dに含まれる各油圧シリンダ7に適切な油圧の駆動油を供給するものであり、それによって油圧シリンダ7に対しロッド8を出没(進退)させることができる。
【0019】
一対のH形鋼21a、21bは、図1乃至図3に示すように、オープンシールド機1の前方(矢印P1方向)において前方連結部材23a、23b(具体的にはH形鋼により構成される)により連結されている(具体的には、H形鋼21a、21bの上面に前方連結部材23a、23bの下面が固定されている。)。前方連結部材23a、23bは互いに略平行に配置されると共に、平面視(例えば図3)においてH形鋼21a、21bに対して略垂直にされている。
前方連結部材23a、23bの上面には鉄板25aが載置され固定されている(なお、図3においては、理解を容易にするため鉄板25aの一部のみを示しているが、実際には、鉄板25aの主表面は略長方形をしており、平面視(例えば図3)においてH形鋼21a、21bと前方連結部材23a、23bとにより囲まれる領域を覆っている。)。鉄板25aの上面は、バックホー等のような掘削機械301aを安定して載置することができるような大きさ及び形状を有している。
【0020】
同様に、一対のH形鋼21a、21bは、図1乃至図3に示すように、オープンシールド機1の後方(矢印P2方向)において後方連結部材27a、27b(具体的にはH形鋼により構成される)により連結されている(具体的には、H形鋼21a、21bの上面に後方連結部材27a、27bの下面が固定されている。)。後方連結部材27a、27bは互いに略平行に配置されると共に、平面視(例えば図3)においてH形鋼21a、21bに対して略垂直にされている。
後方連結部材27a、27bの上面には鉄板25bが載置され固定されている(なお、図3においては、理解を容易にするため鉄板25bの一部のみを示しているが、実際には、鉄板25bの主表面は略長方形をしており、平面視(例えば図3)においてH形鋼21a、21bと後方連結部材27a、27bとにより囲まれる領域を覆っている。)。鉄板25bの上面は、バックホー等のような掘削機械301bを安定して載置することができるような大きさ及び形状を有している。
【0021】
このような本装置20を用いて、出発地点の土表面103に置かれたオープンシールド機1を降下させる方法について説明する。
土表面103に置かれたオープンシールド機1に駆動装置4a、4b、4c、4dを取り付け、一対のH形鋼21a、21bに支持柱13の下端を固定する。このときオープンシールド機1を降下させる深さ等に応じて、案内柱10を上下調節して支持柱13へピン14で連結固定する。また、オープンシールド機1が鉛直に設置されるよう、任意の油圧シリンダを伸縮して調整してもよい。このようにオープンシールド機1に本装置20を取り付けた後、次のようにしてオープンシールド機1を降下させる。そして、一対のH形鋼21a、21bに、前方連結部材23a、23bと鉄板25aと後方連結部材27a、27bと鉄板25bとを取り付ける。
【0022】
まず、第1(載置工程)に、図1に示すように、鉄板25aの上面にバックホー等のような掘削機械301aを載置すると共に、鉄板25bの上面にもバックホー等のような掘削機械301bを載置する。
第2(掘削工程)に、オープンシールド機1の内側(左右の側板2、2の間)に存する土砂(図3及び図4中、土砂401)を掘削機械301a、301bにより掘削する。
第3(降下工程)に、駆動装置4a、4b、4c、4dによりオープンシールド機1に下方への力(ここでは鉛直下方へ向かう力。図2中、力Q1、力Q2)を加えてオープンシールド機1を土中に降下させる。具体的には、油圧シリンダ7に対しロッド8を縮めるよう、油圧同調装置15により駆動装置4a、4b、4c、4dの各油圧シリンダ7に油圧を供給し、オープンシールド機1に下方への力(図2中、力Q1、力Q2)を加える。このオープンシールド機1に下方への力(図2中、力Q1、力Q2)を加えるとき、該下方への力(図2中、力Q1、力Q2)に対する反力(ここでは鉛直上方へ向かう力。図2中、力R1、力R2)が駆動装置4a、4b、4c、4dから一対のH形鋼21a、21bへ加わる。
そして、ここでは掘削機械301a、301bは鉄板25a、25bの上面に載置されているので、掘削機械301a、301bに加わる重力の少なくとも一部(ここでは全部。図2中、力W1、力W2)が、一対のH形鋼21a、21bと前方連結部材23a、23bと鉄板25aと後方連結部材27a、27bと鉄板25bとによって構成される部分(本体部)へ常時加わっている(重力付加工程)。
この一対のH形鋼21a、21bと前方連結部材23a、23bと鉄板25aと後方連結部材27a、27bと鉄板25bとによって構成される部分(本体部)へ加わる掘削機械301a、301bの重力の少なくとも一部(ここでは全部。図2中、力W1、力W2)は、駆動装置4a、4b、4c、4dがオープンシールド機1に下方への力(図2中、力Q1、力Q2)を加えるとき一対のH形鋼21a、21bへ加わる該下方への力に対する反力(ここでは鉛直上方へ向かう力。図2中、力R1、力R2)を打ち消すように作用する。
以上のようにして、オープンシールド機1に下方への力(図2中、力Q1、力Q2)を加えて、図7に示すようにオープンシールド機1を土中に降下させることができる。
【0023】
このように本装置20を用いてオープンシールド機1を降下させることにより、次のような利点がある。
(1)オープンシールド機1に下方への力(図2中、力Q1、力Q2)を十分加えることができるので、オープンシールド機1の降下を円滑かつ迅速に行い得る。
(2)オープンシールド機1の側板2、2を下方にむけて押し付けることにより側板2、2の下端部分(図12中、側板2の下端部分2a)から内側への土砂の流入(崩壊)を防止又は減少させることができる。
(3)上記(1)及び(2)のように内側への土砂の流入(崩壊)を防止等しオープンシールド機1の降下を円滑かつ迅速に行い得るので、工事期間を短縮することができる。
(4)上記(2)に対応して、オープンシールド機1の側板2、2に隣接する土砂が側板2、2の下端部分(図12中、側板2の下端部分2a)から内側へ流入(崩壊)することを防止するためにこれまで行われてきた地盤改良を行う必要がなくなる場合があり、地盤改良に要していた費用を大幅に削減できる。
(5)オープンシールド機1に隣接する地盤が崩壊することによる作業員への危険性が低くなり、安全性を向上させることができる。
(6)オープンシールド機1に隣接する地盤が崩壊することによる周辺構造物への悪影響を防止又は減少させることができる。
【0024】
以上説明したように、本装置20は、オープンシールド機1の内側に存する土砂の掘削機械301a、301bによる掘削に伴い該オープンシールド機1を土中に降下させるためのオープンシールド機降下装置であって、オープンシールド機1に下方への力(図2中、力Q1、力Q2)を加える駆動手段たる駆動装置4a、4b、4c、4dと、駆動手段たる駆動装置4a、4b、4c、4dが取り付けられた本体部(一対のH形鋼21a、21bと前方連結部材23a、23bと鉄板25aと後方連結部材27a、27bと鉄板25bとによって構成される。)であって、駆動手段たる駆動装置4a、4b、4c、4dの反力(駆動装置4a、4b、4c、4dによりオープンシールド機1に下方への力を加えるとき、駆動装置4a、4b、4c、4dから一対のH形鋼21a、21bへ該下方への力に対する反力が加わる。図2中、力R1、力R2)により本体部が上方に移動する際に掘削機械301a、301bに加わる重力の少なくとも一部(ここでは全部。図2中、力W1、力W2)が加わるものである本体部と、を備えるものである、オープンシールド機降下装置である。なお、ここでは重力の少なくとも一部(図2中、力W1、力W2)が本体部に常時加わっている。
【0025】
そして、駆動手段たる駆動装置4a、4b、4c、4dからの反力(図2中、力R1、力R2)が加わる本体部の位置である反力位置(ここでは駆動装置4a、4b、4c、4dに含まれる支持柱13の下端が固定されたH形鋼21a、21bの位置である。図2、図3、図5中、反力位置501として示した。)と、前記掘削機械301a、301bに加わる重力の少なくとも一部(図2中、力W1、力W2)が加わる本体部の位置である重力位置(ここでは掘削機械301a、301bが載置された鉄板25a、25b)と、の両位置のうち一方(ここでは重力位置)が互いに離れた少なくとも2個所(鉄板25aと鉄板25bとの2個所)であり、該2個所(鉄板25aと鉄板25bとの2個所)の間に他方(ここでは反力位置501)が存する。
加えて、前記本体部(一対のH形鋼21a、21bと前方連結部材23a、23bと鉄板25aと後方連結部材27a、27bと鉄板25bとによって構成される。)が、前記掘削機械301a、301bを載置する載置部(前方連結部材23a、23bと鉄板25aとにより掘削機械301aを載置する載置部が構成され、後方連結部材27a、27bと鉄板25bとにより掘削機械301bを載置する載置部が構成される。)を有する。なお、ここでは前記本体部が土表面103に直接置かれている。
さらに、前記本体部(一対のH形鋼21a、21bと前方連結部材23a、23bと鉄板25aと後方連結部材27a、27bと鉄板25b)が、前記オープンシールド機1の左右両側面に沿って前後方向に配設される一対の側面部材たる一対のH形鋼21a、21bと、前記オープンシールド機1の前方において該一対の側面部材たる一対のH形鋼21a、21bを連結する前方連結部材23a、23bと、前記オープンシールド機1の後方において該一対の側面部材たる一対のH形鋼21a、21bを連結する後方連結部材27a、27bと、を有してなり、該前方連結部材23a、23bと該後方連結部材27a、27bとが前記載置部(前方連結部材23a、23bと鉄板25aと後方連結部材27a、27bと鉄板25bとにより構成される。)の少なくとも一部を構成する。
【0026】
また、前述した本装置20を用いた出発地点の土表面103に置かれたオープンシールド機1の降下方法は、本装置20を用いて、オープンシールド機1を土中に降下させる方法であって、オープンシールド機1の内側に存する土砂を掘削機械301a、301bにより掘削する掘削工程と、駆動手段たる駆動装置4a、4b、4c、4dによりオープンシールド機1に下方への力(図2中、力Q1、力Q2)を加えてオープンシールド機1を土中に降下させる降下工程と、掘削機械301a、301bに加わる重力の少なくとも一部(ここでは全部。図2中、力W1、力W2)が本体部(一対のH形鋼21a、21bと前方連結部材23a、23bと鉄板25aと後方連結部材27a、27bと鉄板25b)に加わる重力付加工程と、を含んでなる、方法である。
そして、ここでは前記降下工程よりも前に行う、載置部(前方連結部材23a、23bと鉄板25aとにより掘削機械301aを載置する載置部が構成され、後方連結部材27a、27bと鉄板25bとにより掘削機械301bを載置する載置部が構成される。)に掘削機械301a、301bを載置する載置工程を、さらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のオープンシールド機降下装置(本装置)を示す正面図(一部断面)である。
【図2】本装置の作動原理を模式的に示す正面模式図である。
【図3】本装置の作動原理を模式的に示す平面模式図である。
【図4】オープンシールド機を正面側から見たところを示す一部断面図である。
【図5】オープンシールド機の側面図である。
【図6】懸架柱と案内柱との係合状態を示す拡大平面図である。
【図7】オープンシールド機を土中に降下させたところを示す一部断面図である。
【図8】地盤の土表面に置かれた従来のオープンシールド機を正面側から見たところを示す一部断面図である。
【図9】地盤の土表面に置かれた従来のオープンシールド機の側面図である。
【図10】従来のオープンシールド機を土中に降下させたところを示す一部断面図である。
【図11】図9よりも広い範囲を示すオープンシールド機の側面図である。
【図12】図10中の点線Eにより囲まれた部分の一部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 オープンシールド機
1a 内側
2 側板
2a 下端部分
3 フレーム
4 懸架装置
4a、4b、4c、4d 駆動装置
5 懸架柱
6 案内部
6’ 案内部材
7 油圧シリンダ
8 ロッド
9 連結金具
10 案内柱
11 取付金具
12 ピン穴
13 支持柱
14 ピン
15 油圧同調装置
16 支持部材
20 本装置
21a、21b H形鋼
23a、23b 前方連結部材
25a、25b 鉄板
27a、27b 後方連結部材
101 地盤
103 土表面
105 土中
201a、201b 油圧ショベル
301 土砂
301a、301b 掘削機械
401 土砂
501 反力位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オープンシールド機の内側に存する土砂の掘削機械による掘削に伴い該オープンシールド機を土中に降下させるためのオープンシールド機降下装置であって、
オープンシールド機に下方への力を加える駆動手段と、
駆動手段が取り付けられた本体部であって、駆動手段の反力により本体部が上方に移動する際に該掘削機械に加わる重力の少なくとも一部が加わるものである本体部と、
を備えるものである、オープンシールド機降下装置。
【請求項2】
駆動手段からの反力が加わる本体部の位置である反力位置と、前記掘削機械に加わる重力の少なくとも一部が加わる本体部の位置である重力位置と、の両位置のうち一方が互いに離れた少なくとも2個所であり、該2個所の間に他方が存するものである、請求項1に記載のオープンシールド機降下装置。
【請求項3】
前記本体部が、前記掘削機械を載置する載置部を有するものである、請求項1又は2に記載のオープンシールド機降下装置。
【請求項4】
前記本体部が、前記オープンシールド機の左右両側面に沿って前後方向に配設される一対の側面部材と、前記オープンシールド機の前方において該一対の側面部材を連結する前方連結部材と、前記オープンシールド機の後方において該一対の側面部材を連結する後方連結部材と、を有してなり、
該前方連結部材と該後方連結部材とが前記載置部の少なくとも一部を構成するものである、請求項3に記載のオープンシールド機降下装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1に記載のオープンシールド機降下装置を用いて、オープンシールド機を土中に降下させる方法であって、
オープンシールド機の内側に存する土砂を掘削機械により掘削する掘削工程と、
駆動手段によりオープンシールド機に下方への力を加えてオープンシールド機を土中に降下させる降下工程と、
掘削機械に加わる重力の少なくとも一部が本体部に加わる重力付加工程と、を含んでなる、方法。
【請求項6】
請求項3又は4に記載のオープンシールド機降下装置を用いて、オープンシールド機を土中に降下させる方法であって、
前記降下工程よりも前に行う載置部に掘削機械を載置する載置工程を、さらに含む、請求項5に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−120130(P2007−120130A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−313370(P2005−313370)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(591041727)アイサワ工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】