説明

カウルルーバ

【課題】カウルルーバ本体とカバーとの隙間から浸入した水がエンジンルーム内にまで流入するのを防止し、止水のためのシール材等を不要としてカウルルーバの製造にかかわる人員ならびに製品コストを削減する。
【解決手段】メンテナンス用の開口部がカバーで被われているカウルルーバであって、カウルルーバ本体10とカバー30との間の隙間40が、そこから浸入する水の量を規制する寸法に設定されている。カウルルーバ本体10は、隙間40から入ってくる水を受止めて勢いを弱める障壁24と、この障壁を通過した水を排水口まで導く排水路26とを備えている。カバー30は、その内面を伝って流れる水を受止めて排水路に落とす止水壁(内側リブ34)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のエンジンフードとフロントガラスの下部との境に設けられるカウルルーバに関し、特にメンテナンス用の開口部と、それを被うカバーとを有するカウルルーバに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のカウルルーバの構造は、例えば特許文献1に開示された技術が既に知られている。この技術でも明らかなように、カウルルーバ本体にはメンテナンス用の開口部が設けられている。この開口部は、主としてエンジンルーム内に位置するブレーキフルードのリザーブタンクにフルードを補充する等のメンテナンスを行うためのものである。したがって、通常状態での開口部はカバーによって被われている。
降雨時や洗車時におけるカウルルーバは、エンジンフードとフロントガラスの下部との間から入り込む水を受けることになる。そこで、カウルルーバには、水がエンジンルーム内にまで浸入するのを防ぐための対策が必要となる。この対策の一環として、メンテナンス用の開口部を被うカバーとカウルルーバ本体との隙間から開口部に向かう水の浸入を防止することも重要である。一般的には、カウルルーバ本体とカバーとの隙間にシール材を設けることにより、この隙間からの水の浸入を防止するといった手段が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−205966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カウルルーバ本体とカバーとの隙間にシール材を設けて止水する手段にあっては、このシール材を製造し、それをカウルルーバ本体側あるいはカバー側に取付けるといった工程が必要となる。そのため、カウルルーバの製造にかかわる人員ならびに製品コストが増大することになる。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、カウルルーバ本体とカバーとの隙間から浸入した水がエンジンルーム内にまで流入するのを防止し、止水のためのシール材を不要としてカウルルーバの製造にかかわる人員ならびに製品コストを削減することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのもので、以下のように構成されている。
第1の発明は、カウルルーバ本体にメンテナンス用の開口部があり、かつ、その開口部を被うカバーを有するカウルルーバであって、カウルルーバ本体とカバーとの間の隙間が、そこから浸入する水の量を規制する寸法に設定されている。カウルルーバ本体は、隙間から入ってくる水を受止めて勢いを弱める障壁と、この障壁を通過した水を排水口まで導く排水路とを備えている。カバーは、その内面を伝って流れる水を受止めて排水路に落とす止水壁を備えている。
【0007】
これにより、カウルルーバ本体とカバーとの隙間から浸入してくる水については、その水量および勢いが規制されてカウルルーバ本体の排水路に流入するため、この排水路での水のオーバーフローが防止され、またカバーの内面を伝って流れる水も排水路に落とされる。したがって、例えば降雨時にカウルルーバ本体とカバーとの隙間から浸入した雨水がエンジンルーム内にまで流入するのを防止できる。このことは、カウルルーバ本体とカバーとの隙間をシール材で止水するといった手段が不要となり、該シール材を成形して取付ける工程を廃止してカウルルーバの製造にかかわる人員ならびに製品コストを削減することができる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、カウルルーバ本体が、カバーとの間の隙間から入ってくる水の一部を排水する排水口を備えている。
この排水口からの排水により、障壁を通過して排水路に流れ込む水の量が少なくなり、該排水路でのオーバーフロー防止性能がより高められる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】自動車のカウルルーバ本体を表した平面図。
【図2】メンテナンス用の開口部の周辺を拡大して表した平面図。
【図3】メンテナンス用の開口部の周辺をカバーと共に表した斜視図。
【図4】図2のA−A矢視方向の拡大断面図。
【図5】図2のB−B矢視方向の拡大断面図。
【図6】図4の模式図。
【図7】図5の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
図面で示す自動車のカウルルーバ本体10は、樹脂材料による一体成形品である。このカウルルーバ本体10は、自動車のフロントガラス下部とエンジンフード(いずれも図示省略)との境において、車体側およびフロントガラス下部に結合された状態で組付けられる。したがって、カウルルーバ本体10の全体形状は、所定の幅を有し、かつ、フロントガラス下部の形状に倣って車幅方向(図1の左右方向)へ長く延びている。
【0011】
カウルルーバ本体10には、それを自動車に組付けた状態においてエンジンフードの内側に位置する受け面14があるとともに、エンジンフードから露出している箇所には格子状に並んだ多数の小孔からなる通気孔12が設けられている。受け面14には、カウルルーバ本体10の長手方向に沿って複数のビード16が成形されており、また受け面14の一部にはメンテナンス用の開口部20が開けられている。この開口部20は、既に述べたようにエンジンルーム内に位置するブレーキフルードのリザーブタンク等に対してメンテナンスを行うためのものであり、通常は図3で示す形状のカバー30で被われている。
なお、開口部20における開放側の両端部には、ロック孔22がそれぞれ設けられている。これらのロック孔22にカバー30の爪(図示省略)が係合することで、カウルルーバ本体10にカバー30が結合状態に保持される。
【0012】
開口部20の周囲には、カウルルーバ本体10とカバー30との間に浸入した水がエンジンルーム内に流入するのを防止するために、複数の溝形状の排水路あるいはリブ形状の壁が設けられている。そこで、開口部20の周囲の構造をカバー30側の形状と共に具体的に説明する。
まず、開口部20の左右両側の形状については、その片側を表した図4から明らかなようにカウルルーバ本体10の受け面14から段差部15によって高くなった部分にリブ形状の障壁24が設けられている。この障壁24に対して第1の排水路26を挟んで対向する位置に隔壁27があり、この隔壁27を越えた箇所が第2の排水路28になっている。この第2の排水路28には、複数の排水口44が開けられている(図2および図3)。なお、受け面14においても、各ビード16の間にそれぞれ排水口43があり、その一部が図2および図3に示されている。
【0013】
開口部20の後側の形状については、図5から明らかなように第2の排水路28の前面側(開口部20側)に、第2の排水路28よりも低い第3の排水路52がある。この第3の排水路52における隔壁54を越えた低い箇所が第4の排水路56になっている。この第4の排水路56にも、排水口58が開けられている(図2)。
なお、開口部20の左右両側における第1の排水路26の前端部は第3の排水路52に通じており、後端部は第2の排水路28に通じている。
【0014】
カバー30は、その内側において縁部に設けられた外側リブ32と、そこから所定の間隔をもって設けられた内側リブ34とを有する(図4および図5)。カバー30によってカウルルーバ本体10の開口部20を被った状態での外側リブ32および内側リブ34の位置関係は次のようになっている。
開口部20の左右両側では、外側リブ32の端部が受け面14の段差部15によって高くなった部分に隙間40をもって対向しており、内側リブ34が第1の排水路26に位置している(図4)。これに対して開口部20の後側では、外側リブ32がカウルルーバ本体10の受け面14から立ち上がっている縦壁に隙間50をもって対向しており、内側リブ34が第3の排水路52に位置している(図5)。
【0015】
図4で示す開口部20の左右両側の構造および機能を主として図6の模式図に基づいて説明すると、例えば降雨時にフロントガラスを伝ってカウルルーバ本体10の受け面14に流れ落ちた水は排水口43から排水されるが、水量によっては受け面14に一時的に溜まることとなる。この溜まった水は段差部15で受止められ、水が開口部20に向かって流れるのを阻止する。したがって、この段差部15は可能な限り高く設定することが好ましい。
また、カバー30の上方から注がれる水に対しては、隙間40の寸法を可能な限り詰めることで、外側リブ32の内側に水が侵入するのを阻止する。それでも隙間40から浸入した水に対しては、カウルルーバ本体10側の障壁24で受止めて勢いを弱め、かつ、この障壁24とカバー30の外側リブ32とで構成されているチャンバー42の機能によって水の流速を落とす。このチャンバー42の機能は、障壁24と外側リブ32との間隔を可能な限り大きくとることが効果的である。
【0016】
チャンバー42から障壁24を乗り越えて第1の排水路26に流入した水は、前述のように第2の排水路28と第3の排水路52とに流れ、また隔壁27を乗り越えた水も第2の排水路28に流れ込む。一方、カバー30の内面を伝って流れる水は、内側リブ34で受止められて第1の排水路26に落とされ、結果的には第2の排水路28に流入する。この内側リブ34は、カバー30の内面からの突出量を可能な限り大きくとることが効果的である。
第2の排水路28に流入した水は、各排水口44から排水される。なお、排水口43,44から排水された水は、周知のように車体側に設けられている樋(図示省略)を通じて車体の両サイドから外に流出する。
【0017】
つぎに、図5で示す開口部20の後側の構造および機能を主として図7の模式図基づいて説明する。この場合においても、隙間50の寸法を可能な限り詰めることで、カバー30の上方から流入する水の量を規制する。この隙間50から浸入する水は、第2の排水路28の底面である障壁28aで受止められて、その勢いが弱められるとともに、第2の排水路28に開けられている排水口44から排水される。
障壁28aで受止められた水の一部は第3の排水路52に流入し、またカバー30の内面を伝って流れる水は内側リブ34で受止められて第3の排水路52に落とされる。そして、第3の排水路52の隔壁54を乗り越えて第4の排水路56に流入した水は、排水口58から排水される。この排水口58から排水された水についても、車体側の樋を通じて車体の両サイドから外に流出する。
【0018】
このように、カウルルーバ本体10とメンテナンス用の開口部20を被っているカバー30との間の隙間40,50を通過して浸入してくる水の水量および勢いを規制し、またカバー30の内面を伝って流れる水についても、最終的に第2の排水路28あるいは第4の排水路56に導いて排水することができる。したがって、例えば降雨時にメンテナンス用の開口部20からエンジンルーム内にまで雨水が流入するのを防止できる。
なお、以上の説明から明らかなようにカバー30の内側リブ34は、本発明のカバーにおける「止水壁」に相当する。
【符号の説明】
【0019】
10 カウルルーバ本体
20 開口部
24,28a 障壁
26 第1の排水路
30 カバー
34 内側リブ(止水壁)
40,50 隙間
52 第3の排水路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カウルルーバ本体にメンテナンス用の開口部があり、かつ、その開口部を被うカバーを有するカウルルーバであって、
カウルルーバ本体とカバーとの間の隙間が、そこから浸入する水の量を規制する寸法に設定され、カウルルーバ本体は、隙間から入ってくる水を受止めて勢いを弱める障壁と、この障壁を通過した水を排水口まで導く排水路とを備え、カバーは、その内面を伝って流れる水を受止めて排水路に落とす止水壁を備えているカウルルーバ。
【請求項2】
請求項1に記載されたカウルルーバであって、
カウルルーバ本体が、カバーとの間の隙間から入ってくる水の一部を排水する排水口を備えているカウルルーバ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−51467(P2012−51467A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195524(P2010−195524)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】