説明

カウンターとシンクの接合構造

【課題】 製品面側に現れる接合部材を目立たないものとすることができて、外観の良好さを保つことができ、自然感や高級感が得られるようにしたカウンターとシンクの接合構造を提供する。
【解決手段】 カウンター1の開口部にシンク2が組み付けられ、カウンター1の開口部端面1aとシンク2のフランジ部2aとが製品面6側から裏面側に向かって形成された接合部材3を介して接合されたカウンターとシンクの接合構造である。前記接合部材3は製品面6側に位置する第1接着層3Aと該第1接着層3Aの裏面に位置する第2接着層3Bとの2層からなる。そして、第1接着層3Aはカウンター1の色と略同じ色で形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カウンターとシンクの接合構造及び接合方法に関し、詳しくは例えばキッチンや洗面室等に設置されるカウンターとシンクとを一体的に接合する構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、人造大理石製カウンターの開口部に、ステンレス製のキッチンシンクを一体的に組み付けて成る流し台が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、従来では、カウンターとシンクとを一体的に接合する方法として、例えば、図5(a)(b)に示すように、カウンター1とシンク2とを上下反転して、カウンター1とシンク2との隙間に上方から接合部材3を投入して接合するようにしている。図中の8は補強桟である。
【0004】
この従来例では、図5(a)(b)のように、接合部材3が製品面6側には現れない利点があるが、カウンター1とシンク2との接合箇所に段差dが存在しているため、この段差dに汚れが付着しやすくなるだけでなく、段差dの奥まで清掃がしにくいという問題があった。
【0005】
そこで、本発明者らは本発明に至る過程で、図6及び図7のように、カウンター1とシンク2とを接合する接合部材3の最表面が製品面6側に現れるようにして、カウンター1とシンク2とを段差のない状態で接合することで清掃性を向上させる接合方法を案出した。
【0006】
つまり、図6のようにカウンター1とシンク2とを上下反転させて、カウンター1とシンク2間の隙間の下面をシリコンゴム治具10で塞いで上方に開口した溝状部分7を形成し、溝状部分7の上方から接合部材3を投入して第1接着層3Aを形成し、さらに続いて補強用の第2接着層3Bを積層形成している。この新たな接合工法では、図7に示すように、第1接着層3Aの最表面が製品面6側に現れるようになる。
【0007】
しかしながら、この製品面6側に現れる第1接着層3Aで形成されるカウンター1とシンク2との接合部位は、使用者が最も目に付く部位のひとつであり、カウンター1の外観を決める重要な要素の一つとなる。つまり、このカウンター1とシンク2とを段差のない状態で接合する新たな接合工法は、清掃性を向上させる反面、外部に晒された第1接着層3Aによって良好な外観を損ねてしまうという問題が生じてしまっていた。
【特許文献1】特開2006−291610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、製品面側に現れる接合部材を目立たないものとすることができて、外観の良好さを保つことができ、自然感や高級感が得られるようにしたカウンターとシンクの接合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1に係る発明にあっては、カウンター1の開口部にシンク2が組み付けられ、カウンター1の開口部端面1aとシンク2のフランジ部2aとが製品面6側から裏面側に向かって形成された接合部材3を介して接合されたカウンターとシンクの接合構造において、前記接合部材3は製品面6側に位置する第1接着層3Aと該第1接着層3Aの裏面に位置する第2接着層3Bとの2層からなり、第1接着層3Aはカウンター1の色と略同じ色で形成されたことを特徴とするものである。
【0010】
このように構成したことで、カウンター1とシンク2との接合部位が目立たなくできて、接合部位を無くしたような外観を呈することができるので、カウンター1とシンク2との接合部位によって外観が損なわれるのを防止することができる。そのうえ、第1接着層3Aにのみ着色を施すだけでよい。
【0011】
また、請求項2に係る発明にあっては、請求項1に係る発明において、前記接合部材3は合成樹脂を主体として構成し、前記第1接着層3Aは柄や模様を形成するための柄材5を合成樹脂に配合してなり、該柄材5の比重を合成樹脂の比重よりも僅かに重たくして設け、接合部材3の製品面6側に柄材5を形成するようにして成ることを特徴とするものである。
【0012】
このように構成したことで、請求項1に係る発明に加えて、カウンター1とシンク2とを上下反転してカウンター1とシンク2との隙間に上方から合成樹脂を投入して接合するに当たって、合成樹脂に配合された柄材5を沈降させ、柄材5による柄や模様を製品表面側に形成することができる。つまり、製品完成時においては、カウンター1と同じ色を形成するだけでなく、柄材5による模様をカウンター1とシンク2との接合部位に与えることができるので、より一層接合部位の外観をカウンター1の外観に近づけることができ、自然感や高級感が得られるものとなる。
【0013】
しかも、第1接着層3Aにのみ柄材5を配合するだけでよく第2接着層3Bには柄材5を配合する必要がないので、柄材5の量を節約することができる。
【0014】
そのうえ、柄材5の比重を、接合部材3の主体を成す合成樹脂の比重よりも僅かに重たくしただけであるから、カウンター1とシンク2との接合を行なうに際して、柄材5と合成樹脂とを混合させるときに使用する材料タンクにおいて、柄材5と合成樹脂とを混ざり合い易くでき、しかも、短時間で沈降することがないため注入時において注入装置内で柄材が沈降することがない。このため、作業性も向上する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、柄材や着色料といった添加物の使用量を少なくしつつ、カウンターとシンクとの接合部において外観が損なわれるのを防ぐことができるので、コストの低減を図りながらカウンターとシンクにおける外観の良好さを保ち、製品全体として自然感や高級感を得ることができる。つまり、コストを省きつつ製品の商品価値を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について添付図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は本実施形態の人造大理石製のカウンター1の開口部にステンレス製のキッチンシンク2(以下「シンク2」と略す)が組み付けられ、カウンター1の開口部端面1aとシンク2のフランジ部2aとが接合部材3を介して接合された構造の一例を示し、図2はその接合工程の一例を示している。
【0018】
前記シンク2のフランジ部2aの先端は内側に向けて略L字状に折り返した折り返し片2bとなっている。このシンク2の折り返し片2bとカウンター1の開口部端面1aとの隙間が接合部材にて接合され、接合部材3の最表面が製品面6側に現れるようになっている。なお図1中の8は溝状部分7の一部を兼ねる補強桟である。
【0019】
前記接合部材は、図1に示すように、製品面6側から裏面側に向かって形成された汎用接合部材4からなる接着層3A,3Bと、柄や模様を形成するために汎用接合部材4に配合された柄材5とで構成されている。
【0020】
ここで、汎用接合部材4の供給は、それぞれ、ノズルを通して行なわれる。その一例として、接合部材3を充填されたシリンジと、シリンジ内を加圧する加圧手段と、加圧によって接合部材3を吐出するノズルとを備えた塗布装置(図示せず)が用いられる。
【0021】
汎用接合部材4としては、従来のような、高性能ではない低価格の合成樹脂より成る接着剤が選ばれる。本実施形態の汎用接合部材4は、人造大理石から成るカウンター1の色と略同じ色の着色がなされている。さらに、この汎用接合部材4における粘度は、低粘度のものを使用している。なお、汎用接合部材4の種類、色等については適宜に選択変更自在である。
【0022】
柄材5は、柄や模様を形成するものであり、柄材5として人造大理石用の柄材5が用いられる。この柄材5の比重は、汎用接合部材4(合成樹脂から成る接着剤)の比重よりも僅かに重たくしたもの(すなわち、略同じ比重のもの)を用いており(本実施例においては汎用接合部材4の比重の1.1倍以上であって1.2倍に満たない程度の比重を有する柄材5を使用している)、しかも、柄材5を形成する粒径は0.6mm以下のものを使用している。なお、柄材5の種類、柄、模様等については適宜に選択変更自在である。
【0023】
次に、接合工程の一例を説明する。
【0024】
まず、図2のようにカウンター1とシンク2とを上下反転させて、カウンター1の開口部端面1aとシンク2のフランジ部2aの折り返し片2bとの間に設けた隙間の下面を、長尺状で且つ傾斜面形成部10Aを備えたシリコンゴム治具10で閉鎖することで、一方(図2の上方)に開放された溝状部分7を形成する。この溝状部分7の開放された一方(図2の上方)から、柄材5の配合された汎用接合部材4を投入する。
【0025】
この汎用接合部材4は、まず材料タンク内に汎用接合部材4と柄材5とを充填し、攪拌機を用いて材料タンク内でこれらの汎用接合部材4と柄材5とを混合する。このとき、汎用接合部材4と柄材5との比重は略同じ(詳しくは、柄材5の比重のほうが若干重たい)であるから、汎用接合部材4と柄材5とは混ざり易いようになっている。
【0026】
次に、図3(b)に示すように、この柄材5の配合された汎用接合部材4をノズルから投入して第1接着層3A(例えば8mm)を形成すると共に、この第1接着層3Aが硬化する前に、第1接着層3Aの上から更に図3(c)のように、柄材5の配合されていない汎用接合部材4をノズルから投入して補強用の第2接着層3B(例えば15mm)を積層形成する。また、第1接着層3Aを形成する際には、シンク2のフランジ部2aの適宜箇所に開設した連通穴(図示せず)を通して汎用接合部材4がフランジ部2aの中にも進入することで、溝状部分7からフランジ部2aの内部に亘って第1接着層3Aが形成されるようになる。
【0027】
ここで、柄材5の比重を汎用接合部材4の比重よりも僅かに重たくしており、しかも、汎用接合部材4は低粘度のものを使用しているので、第1接着層において配合された柄材5は、下方に沈降しやすくなっている。要するに、柄材5は自重により製品表面側(カウンター1とシンク2が上下反転した状態における下方側)に移動することになり、これにより、製品面6に現れる第1接着層の製品面6側に柄材5による人造大理石の柄が形成されるようになる。
【0028】
その後、汎用接合部材4が硬化した後に、前記シリコンゴム治具10を除去することにより、図1及び図3(a)のように、製品面6が形成される。このシリコンゴム治具10には、傾斜面形成部10Aが設けてあるので、製品面6はカウンター1の表面に対して僅かに傾斜を有するようになっており、カウンター1表面と同一平面には形成されていない(すなわち、カウンター1表面と第1接着層3Aの製品面6側とは面一状ではない)。
【0029】
このようにして、カウンター1とシンク2との接合部位を、人造大理石から成るカウンター1と同じ色にでき、且つ柄材5により人造大理石と同じ模様や柄を有するようにできるので、かかる接合部位を目立たないようにでき、接合部位を無くしたような外観を呈することができる。つまり、カウンター1とシンク2との接合部位による外観の低下を抑止することができる。
【0030】
ところで、図4に示すように、カウンター1の表面と第1接着層3Aの製品面6側とを面一状になるようにすると、カウンター1と第1接着層3Aにおける色調や柄の違いは、微妙な違いであっても目立ってしまう。そこで、本実施例においては、第1接着層3Aの製品面6側にはカウンター1の表面に対して僅かに傾斜を有するようにしてあるので、このシンク2とカウンター1の接合部位において、外観上、面取り加工をしてあるように見せることができる。このようにすれば、仮にカウンター1と汎用接合部材4との色や柄において、若干の相違が生じた場合であっても、カウンター1の表面が成す角度と第1接着層3Aの表面が成す角度に違いを持たせることで、敢えて、当該製品を見る者に対して各面の色感を異ならせるようにして、しかも、この部位を面取り加工が施されているように見せることで、色や柄の相違による違和感を与えにくいようになっている。
【0031】
また、柄材5の配合された汎用接合部材4をノズルから投入するに際して、本実施例の柄材5の粒径は0.6mm以下のものを使用しているから、ノズルを通過し易くなっており、目詰まりを起こしにくいという利点も有している。さらに、塗布装置を構成するシリンジ内に充填された柄材5の配合された汎用接合部材4(接合部材3)を溝状部分7に供給するに際し、汎用接合部材4と柄材5との比重は略同じになっているから、供給作業という短時間であれば、シリンジ内で柄材5が沈降してしまうことがないという利点も有している。
【0032】
さらに言えば、外観を呈する第1接着層3Aのみに着色し柄材5を配合するだけで、本発明の効果を得ることができる。つまり、第2接着層3Bにおいては製品表面に現れないため外観性や高品質性を備える必要はなく、そのために本実施例では第2接着層3Bには柄材5を配合していないから、製品全体として柄材5を使用する量を減らすことができる。そのうえ、第1接着層3Aと第2接着層3Bに、従来と同じ安価な汎用接合部材4を用いることができるので、コストアップを抑止できる。
【0033】
また第1接着層3Aの内部には抗菌剤、防カビ材等を添加することが好ましい。この場合において、第1接着層3Aを形成する汎用接合部材4中に抗菌剤等を添加してノズルで投入するのであるが、この抗菌剤等は、第1接着層3Aを形成する汎用接合部材4においてのみ添加すればよいため、これに添加される抗菌剤、防カビ材等の使用量もまた削減できる利点がある。
【0034】
さらに、シリコンゴム治具10の内部にヒータを納装しておくことにより、第1接着層3Aの樹脂を速く固まらせることが可能となる。つまり、ヒータの熱で硬化しやすく、硬化時間も短く、速く離型できるものとなり、その結果、シリコンゴム治具10の離型時間を大幅に短縮できる利点も得られる。
【0035】
なお、本実施例では、第1接着層3Aと第2接着層3Bとを設けた構成としているが、第1接着層3Aを厚く設け第2接着層3Bを設けない構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態の側断面図である。
【図2】同上のカウンターとシンクとの接合後の状態を示す側断面図である。
【図3】同上の接合工程を説明する概略図であり、(a)は接合部材の硬化後の状態を示し(b)は第1接着層の汎用接合部材と柄材を投入したときの状態を示し(c)は第2接着層の汎用接合部材を投入したときの状態を示す。
【図4】カウンターの表面と第1接着層の製品面側とを面一状にした状態を示す側断面図である。
【図5】従来のカウンターとシンクとの接合方法を示す側断面図であり(a)は完成後を示し(b)は接合時の状態を示す。
【図6】他の従来のカウンターとシンクとの接合方法を示す側断面図であり、接合方法を説明する図である。
【図7】同上の接合後の完成した状態を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 カウンター
1a 開口部端面
2 シンク
2a フランジ部
2b 折り返し片
3 接合部材
3A 第1接着層
3B 第2接着層
4 汎用接合部材
5 柄材
6 製品面
7 溝状部分
8 補強桟
10 シリコンゴム治具
10A 傾斜面形成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カウンターの開口部にシンクが組み付けられ、カウンターの開口部端面とシンクのフランジ部とが製品面側から裏面側に向かって形成された接合部材を介して接合されたカウンターとシンクの接合構造において、前記接合部材は製品面側に位置する第1接着層と該第1接着層の裏面に位置する第2接着層との2層からなり、第1接着層はカウンターの色と略同じ色で形成されたことを特徴とするカウンターとシンクの接合構造。
【請求項2】
前記接合部材は合成樹脂を主体として構成し、前記第1接着層は柄や模様を形成するための柄材を合成樹脂に配合してなり、該柄材の比重を合成樹脂の比重よりも僅かに重たくして設け、接合部材の製品面側に柄材を形成するようにして成ることを特徴とする請求項1記載のカウンターとシンクの接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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