説明

カチオン交換クロマトグラフィーのためのグラフトコポリマー

本発明は、細胞培養上清、または動物もしくはヒト体液中の生物学的成分、特にモノクローナル抗体に対して改善された結合能を有するクロマトグラフィー分離材料に関する。本発明は同様に、このタイプの分離材料の製造、および特に対応する液体からの帯電したバイオポリマーの除去のための使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された結合能を有する分離材料、この調製、および帯電したバイオポリマーを液体から除去するためのこの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術
クロマトグラフィーは、タンパク質を単離するための最も好適な方法の1つである。モノクローナル抗体を、例えばプロテインAリガンドを用いてアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる。細胞培養上清からリガンドへの結合は、pHおよび塩濃度を適合させずに可能である。しかし、これらの吸着剤は、これらの高い費用のために、およびリガンドの流出(bleeding-out)のために、限られた範囲で用いられるに過ぎない。
【0003】
高い能力のイオン交換樹脂を用いることは、好ましい選択肢である。しかし、イオン交換体への結合が起こるように細胞培養上清の伝導値(conduction value)を低下させなければならない。これは、脱塩によって、または上清の希釈によって行うことができる。特に大量生産プロセスの場合においては、両方の可能性は所望されない。
【0004】
塩類(高い伝導値)の存在下で、電荷は遮蔽される。それにもかかわらず、比較的高い伝導値にてイオン交換体に結合するのを可能にするために、タンパク質とクロマトグラフィー支持体との間の少なくとも1つの第2の相互作用が、イオン相互作用に加えて存在しなければならない。
【0005】
アニオン性基に加えてさらに官能基を含み、塩の存在下でバイオポリマーに結合する分離材料は、文献で知られている。
US 5,652,348 (Burton et al.)には、非イオン化リガンドを用いる、イオン化リガンドの疎水性修飾により得られるクロマトグラフィー樹脂およびこれらの使用が開示されている。ここでの結合は、疎水性相互作用を支持する条件の下で生じる。脱着は異なるpHにて行われ、これは、樹脂が親水性となり、電荷を得、結合したタンパク質(同一の電荷の)が反発されることを意味する。
【0006】
Burtonらは(Biotechnology and Bioengineering 1997, 56, 45-55)、芳香族アミンへのカップリングによって部分的に修飾されたカルボキシルマトリックス上でのキモシンの精製を記載している。
EP 1 094 899には、カチオン交換体を用いて生体分子、特にタンパク質を除去する方法であって、結合を>15mS/cmにて行い、溶出を比較的高いイオン強度にて行うことを特徴とする、前記方法が開示されている。カチオン交換リガンドは、ここでは、第2の官能基およびスペーサーを介して支持マトリックスに結合している。
【0007】
US 7,067,059には、混合モードのカチオン交換体リガンドを含むクロマトグラフィーゲルの調製方法がクレームされており、ここで、調製を、環状ホモシステイン化合物を用いて行い、この結果、開環により、少なくとも2つの官能基を含む基が得られる。
US 6,852,230およびEP 1 345 694には、ペプチド構造を有する帯電した生体分子の結合および除去のためにイオン交換体を用いることが記載およびクレームされており、ここで、脱着段階の後に、塩を含まない、または塩が減少した溶液が存在し、したがって脱塩は同時に開始する。
【0008】
US 7,008,542には、物質、特に1000ダルトンより大きい分子量を有する生体有機分子を除去する方法であって、支持マトリックスを用いて行う、前記方法がクレームされている。後者は、少なくとも2種の構造的に異なるリガンドを含み、ここで、少なくとも1種のリガンドはイオン交換体である。典型的なリガンドは、<1000Daの分子量を有する。
US 7,144,743には、アニオン性基により置換されているクロマトグラフィーのための多環式リガンドが記載されている。
【0009】
対応する官能化されたモノマーを多数の異なる表面にグラフトさせることにより得られる官能化された直線状ポリマーは、長年にわたり知られている。官能化が化学的に結合したアニオン性基を伴う場合には、対応する材料を、カチオン交換クロマトグラフィーのために用いることができる(W. Mueller, J. Chromatography 1990, 510, 133-140)。バイオポリマーの分別を意図する比較的多数の考えられるグラフトポリマー構造は、特許EP 0 337 144またはUS 5,453,186に示されている。共重合によって得られる1種より多いモノマー単位を含むグラフトポリマーはまた、特許文献から知られている。しかし、モノマーの組み合わせは、文献において簡単に論じられているに過ぎない:次に、好適な交換体を得るために、共重合のためのモノマーを、両方のモノマーが塩基性もしくは酸性基を含むか、またはモノマーの1種が中性であるように選択しなければならない。グラフトポリマーの三元モノマー混合物または化学的修飾は、明白に述べられていない。
【0010】
タンパク質と、遊離または可溶性の合成高分子電解質、例えば疎水的に修飾されたポリ(アクリル酸)およびBSAなどとの相互作用は、Biomacromolecules 2003, 4, 273-282において調査され、議論されている。
このように、カチオン交換体を修飾するための多くの方法は、特許文献および雑誌文献から知られている。混合モードで作動するリガンドを含む吸着剤を調製するための種々の方法もまた、知られている。しかし、細胞培養上清からタンパク質、特に抗体を結合するのに適する商業的に入手できる吸着剤は少数に過ぎない。
【0011】
リガンドとして2−メルカプト−5−ベンズイミダゾールスルホン酸により誘導体化される、US 7,144,743に記載されているクロマトグラフィーゲルは、30mg/mlまでのIgGを結合することができる。名称MBI HyperCel(登録商標)の下で商業的に入手できる対応する製品を用いるGammanormについての本発明者ら自身の測定により、pH5および140mMのNaCl(10%破過)にて23mg/mlの結合が示された。
同一の会社によって市販されている他の製品の場合において、疎水性電荷誘導クロマトグラフィー(HCIC)を用いる。この製品を用いて、約32mg/mlまでのポリクローナルヒトIgGを結合することができる。
【0012】
名称Capto MMC(登録商標)の下で市販されている他の商業的に入手できる製品を用いる際に、pH5.5および150mMのNaClにて7mg/mlの動的結合能(10%破過)が、ヒトIgGについて見出された。多様なリガンドが、US 7,067,059に記載されている製品を調製するために用いられる。しかし、このゲルは、特に抗体のために開発されておらず、45mg/mlのBSAを結合する。
【0013】
さらに、緩衝液から抗体を結合することができるに過ぎない合成リガンドを含む他の商業的に入手できる製品がある。細胞培養上清を処理するために用いる際には、不満足な結合が得られるかまたは結合が得られない。この結果はおそらく、干渉挙動を有する細胞培養上清中の成分により生じる。
【0014】
能力、処理量、経済効率または選択性に関する利点を有する、抗体を精製するための吸着剤の供給に対する要求が継続してある(J. Chromatography B 2007, 848, 48 - 63)。ポリマーは、これ自体クロマトグラフィー支持体の表面修飾に高度に適する。その理由は、官能基の広範囲の選択が、特に多機能材料の合成のためにも有用であり、多数の官能基を含む厚い層を構築することが可能であるからである。特に、高い能力のクロマトグラフィー材料を、「柔軟な」ポリマー層で表面を被覆することにより作成することができる(J. Chromatography 1993, 631, 107 - 114)。
【0015】
しかし、安価な出発材料を用いて、簡単に実行できるプロセスにより調製することができ、伝導性を顕著に低下させずに細胞培養上清または他の生物学的液体を分離するために用いる際に、これらが産業的規模で用いるのに適するような、特にモノクローナル抗体に関して高い分離活性を有する分離材料は、現在まで知られていない。
【発明の概要】
【0016】
目的
したがって、本発明の目的は、細胞培養上清からのタンパク質についての、特にまた抗体についての改善された結合能を有し、調製の用途のために産業的規模で用いるのに適する分離材料を提供することにある。
【0017】
したがって、特に、本発明の目的は、通常細胞培養上清中に存在する伝導値において、現在商業的に入手できるカチオン交換体、例えばFractogel(登録商標)EMD SO(M)またはFractogel(登録商標)EMD COO(M)よりも、他の点では同一の条件の下で高いタンパク質結合能を有する材料を調製することにある。ここで、タンパク質が、特に動的な条件の下、比較的速い速度でクロマトグラフィープロセス中に存在するような短い分離材料との接触時間を有するに過ぎない場合には、ここでのタンパク質結合能は、用いるタンパク質の良好な回収に伴って高くなければならない。したがって、本発明の目的は、塩耐容性のカチオン交換体の合成およびタンパク質精製におけるこの使用である。
本発明のさらなる目的は、分離材料の特性を顕著に変化させずにpH≧13にて精製または再生を促進する、アルカリに安定な分離材料を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、クロマトグラフィー支持体に結合するグラフトコポリマーの2種の調製法を概略的に示した図である。
【図2】図2は、Fractogel・SO3/COOおよびFractogel・SO3/COO/ベンジルの分配係数を示した図である。
【図3】図3は、モノクローナル抗体を用いた結合実験のクロマトグラムを示した図である。
【0019】
本発明の目的の達成および本発明の主題
本発明の目的は、共有結合したコポリマーにより、ヒドロキシル含有無機、有機または複合支持材料の表面を誘導体化することにより調製することができる、新規な分離材料を提供することにより達成され、ここでコポリマーは、少なくとも2種の異なるモノマー単位から構成されるグラフトポリマーであり、またここでこれらのモノマー単位の少なくとも1種は、負の電荷を有する官能基を含み、これらのモノマー単位の少なくとも1種は、コポリマーに、負電荷に加えて疎水性特性を付与する疎水性基を含む。分離材料の表面に結合したグラフトポリマーの特性は、負に荷電した基として少なくとも1つのカルボキシルおよび/またはスルホン酸基を含み、さらに合計で最大8個のC原子を有するエステルまたはアミド基ならびにアルキルおよび/またはアルキレン基を含むが、アリール基を含まない、少なくとも1種のモノマー単位を用いて、これを調製することができることである。他の変形態様は、これがスルホン酸またはカルボン酸の形態で負の電荷を有し、さらにアルキルおよび/またはアルキレン基を含むがアリール基を含まない。
【0020】
さらに、コポリマーは、特に、4〜18個のC原子を有する直鎖状もしくは分枝状アルキルまたは対応するアリール基を有する少なくとも1種のモノマー単位を疎水性基として含み、エステルまたはアミド基を含む。支持材料に結合するグラフトポリマーは、負電荷を有するモノマー単位対疎水性基を含むモノマー単位のモル比が99:1〜10:90の範囲であるモノマー単位から、構成される。コポリマーの形態で分離材料の表面に共有結合したグラフトポリマーの調製を、好ましくは一般式(1)
【化1】

【0021】
式中、
、RおよびYは、互いに独立してHもしくはCHを示し、
は、R−SOMもしくはR−COOMを示し、
は、2〜4個のC原子を有する直鎖状もしくは分枝状アルキレンを示し、
Mは、H、Na、KもしくはNHを示す、
【0022】
あるいは、一般式(2)
【化2】

式中、
およびRは、互いに独立してHもしくはCHを示し、または
は、Z=MかつR=Hである場合にはCOOMを示し、
Zは、M、R−COOMもしくはR−SOMを示し、ここで
は、2〜4個のC原子を有する直鎖状もしくは分枝状アルキレンを示し、
Mは、H、Na、KもしくはNHを示す、
で表される、負の電荷を有する少なくとも1種の水溶性モノマー単位、
あるいは各々の場合において少なくとも1種の一般式(1)で表されるモノマー単位および一般式(2)で表されるモノマー単位、
【0023】
ならびに疎水性特性をコポリマーに付与し、一般式(1)、式中、
は、HまたはCOOMを示し、
は、HまたはCHを示し、
YおよびRは、18個までのC原子を有する直鎖状または分枝状アルキルを示し、ここでYおよびRは一緒に、少なくとも6個のC原子を有し、
あるいは、
【0024】
Yは、Hを示し、
および
は、6〜18個のC原子を有する直鎖状もしくは分枝状アルキルを示し、
あるいは、
Yは、Hを示し、
および
は、アリールまたはR−アリールを示し、
あるいは、
【0025】
Yは、HまたはCHを示し、
および
は、R−CONHXを示し、
Xは、6〜18個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、アリールまたはR−アリールを示し
は、2〜4個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキレンを示し
は、1〜4個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキレンを示し、ここでメチレン基は、Oにより置き換えられていてもよく、COOMにより置換されていてもよく、
また
Mは、H、Na、KまたはNHを示す、
で表される疎水性基を含む少なくとも1種の他のモノマー単位、
【0026】
あるいは一般式(2)、
式中、
は、Hを示し、
は、HまたはCHを示し、
Zは、4〜18個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、アリール、R−アリールまたはR−CONHXを示し、
Xは、6〜8個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、アリール、R−アリールを示し、
また
は、1〜4個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキレンを示す、
で表される疎水性基を含む対応するモノマー単位を用いて行い、
ここで、負の電荷を有するモノマー単位対疎水性基を含むモノマー単位のモル比は、99:1〜10:90の範囲である。
【0027】
このタイプの共有結合したグラフトポリマーを、同様に、一般式(1)
【化3】

または一般式(2)
【化4】

【0028】
式中、
Yは、R−COOMを示し、
およびRは、互いに独立して、
H、1〜6個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、カルボキシル、カルボキシメチルを示し、
は、H、1〜6個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、Yを示し、
は、8個までのC原子を有し、任意にアルコキシまたはカルボキシル基により単置換または多置換されている直鎖状または分枝状アルキレン、または/および
10個までのC原子を有し、任意にアルキル、アルコキシまたはカルボキシル基により単置換または多置換されているアリーレンを示し、
および
Mは、H、Na、KまたはNHを示し、
Zは、MまたはYを示す、
で表される少なくとも1種の水溶性モノマー単位を用いて、調製することができる。
【0029】
さらに、このタイプの分離材料をまた、一般式(1)または(2)で表され、式中
Yは、R−SOMを示し、
また
およびRは、互いに独立して、H、1〜6個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキルを示し、
は、H、1〜6個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキルを示し、
は、メチレン、エチレン、プロピレン、ヘキシレン、イソプロピレン、イソブチレンまたはフェニレンを示す、
少なくとも1種の水溶性モノマー単位を用いて、調製することができる。
【0030】
用いる一般式(1)または式(2)で表される水溶性モノマー単位のラジカルYはまた、以下の意味を採ってもよい:
Yは、R−COOMを示し、
ここで同時に、
およびRは、互いに独立して、
H、1〜6個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキルを示し、
は、H、1〜6個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキルを示し、
は、メチレン、エチレン、ヘキシレン、プロピレン、イソプロピレン、イソブチレンまたはフェニレンを示す。
【0031】
特に好ましいのは、少なくとも2種の異なるモノマー単位を含み、ここでコポリマーが、各々の場合において、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミドエタンスルホン酸、カルボキシメチルアクリルアミド、カルボキシエチルアクリルアミド、カルボキシプロピルアクリルアミド、カルボキシメチルメタクリルアミド、カルボキシエチルメタクリルアミド、カルボキシプロピルメタクリルアミド、マレイン酸、アクリル酸およびメタクリル酸の群から選択された、負電荷を有する少なくとも1種のモノマー単位、ならびに各々の場合において、一般式(1)
【化5】

【0032】
式中、
は、Hを示し、
は、HまたはCHを示し、
Yは、Hを示し、
および
は、アリールまたはR−アリールを示し、
あるいは、
Yは、HまたはCHを示し、
および
は、R−CONHXを示し、ここで
Xは、アリールまたはR−アリールを示し、
は、メチレン、エチレン、プロピレンを示し、
は、1〜4個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキレンを示し、ここでメチレン基は、−O−により置き換えられていてもよく、COOMにより置換されていてもよく、
および
Mは、H、Na、KまたはNHを示す、
で表される、疎水性基を含む少なくとも1種のモノマー単位を含むコポリマーを含む、このタイプの分離材料である。
【0033】
好ましいのは、さらに、コポリマーが、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミドエタンスルホン酸、カルボキシメチルアクリルアミド、カルボキシエチルアクリルアミド、カルボキシプロピルアクリルアミド、カルボキシメチルメタクリルアミド、カルボキシエチルメタクリルアミド、カルボキシプロピルメタクリルアミド、マレイン酸、アクリル酸およびメタクリル酸の群から選択された、負電荷を有する少なくとも1種のモノマー単位を含み、コポリマーが、一般式(1)
【化6】

【0034】
式中、
は、Hを示し、
は、HまたはCHを示し、
Yは、Hを示し、
および
は、フェニル、ベンジル、フェニルエチルまたはフェノキシエチルを示し、
あるいは、
Yは、HまたはCHを示し、
および
は、R−CONHXを示し、ここで
Xは、フェニル、ベンジルまたはフェニルエチルを示し、
および
は、メチレン、エチレン、プロピレン、アクリロイルフェニルグリシンまたはアクリロイルフェニルアラニンを示す、
で表される疎水性基を含む少なくとも1種のモノマー単位を含む、このタイプの分離材料である。
【0035】
メタクリルアミド類、アクリルアミド類または不飽和カルボン酸類の群から選択される少なくとも1種の化合物を用いて調製された対応する分離材料は、特に有利な特性を有する。
【0036】
本発明は特に、上記の分離材料に関し、これを調製するために、スルホアルキルアクリレート類、例えば3−スルホプロピルアクリレートまたは2−スルホエチルアクリレート、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸およびビニルトルエンスルホン酸の群から、またはスルホアルキルメタクリレート類、例えば2−スルホエチルメタクリレートまたは3−スルホプロピルメタクリレートの群から選択される少なくとも1種の化合物を用いる。
【0037】
しかし、マレイン酸、桂皮酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸もしくはフマル酸の群、またはカルボキシアルキルアクリレート類、例えばカルボキシエチルアクリレート、またはカルボキシアルキルメタクリレート類の群から選択される少なくとも1種の化合物をまた、本発明において、好適な誘導体化された分離材料を調製するために用いることができる。
【0038】
本発明の目的に高度に適する分離材料を、さらに、カルボキシメチルアクリルアミド、カルボキシエチルアクリルアミド、アクリロイル−ガンマ−アミノ酪酸およびアクリロイルフェニルアラニン、アクリル酸、メタクリル酸およびエタクリル酸の群から選択される少なくとも1種の化合物を用いて、調製することができる。
【0039】
特に好ましいのは、表面上に共有結合したグラフトポリマーを含み、好適な数の炭素原子を有する少なくとも1種のアルキルまたはアリール基の形態で顕著な疎水性成分を有する少なくとも1種のモノマー単位を用いて調製された、分離材料である。このタイプの分離材料は、除去されるべきバイオポリマーと、グラフトポリマーの疎水性成分および帯電した成分の両方によって相互作用する可能性のために、本発明おいて特に有効であることが明らかになった。
【0040】
したがって、アルキルビニルケトン類、アリールビニルケトン類、アリールアルキルビニルケトン類、スチレン、アルキルアクリレート類、アリールアクリレート類、アリールアルキルアクリレート類、アルキルアリールアクリレート類、アルキルメタクリレート類、アリールメタクリレート類、アリールアルキルメタクリレート類およびアルキルアリールメタクリレート類の群から選択される疎水性成分を有する、少なくとも1種のモノマー単位を用いた誘導体化が、特に望ましい。
【0041】
特に有効な分離材料をまた、疎水性成分を有し、ここでY=Rであり、またここで、
およびRは、互いに独立して、
H、6個までのC原子を有する非分枝状または分枝状アルキルを示し、
および/またはRは、互いに独立して、
H、非分枝状または分枝状アルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキルを示し、
ここでアルキル基は、オキソ基を有していてもよく、
ここでアルキルおよび/またはアリール基は、アルコキシ、フェノキシ、シアノ、カルボキシル、アセトキシまたはアセトアミノ基により単置換または多置換されていてもよく、
またここで、RおよびRは一緒に、少なくとも6個のC原子を有する、
一般式(1)で表される少なくとも1種のモノマー単位を用いて、調製することができる。
【0042】
したがって、本発明の分離材料を、疎水性成分を有し、一般式(1)、式中、
、Rは、互いに独立して、H、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、2−、3−または4−オキサペンチル、2−、3−、4−または5−オキサヘキシル、2−、3−、4−、5−または6−オキサヘプチル、3−ブトキシプロピル、イソプロピル、3−ブチル、イソブチル、2−メチルブチル、イソペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、2−オキサ−3−メチルブチル、2−メチル−3−オキサヘキシル、2−フェニル−2−オキソエチル、フェノキシエチル、フェニル、ベンジル、フェニルエチルおよびフェニルプロピルを示し、
またここで、RおよびRが一緒に少なくとも6個のC原子を有する、
で表される少なくとも1種のモノマー単位を用いて、調製することができる。
【0043】
したがって、本発明の分離材料を、好ましくは、負電荷を有する官能基を含むこれらのモノマー単位の少なくとも1種、ならびに負電荷に加えて疎水性特性をコポリマーに付与する疎水性基を含む少なくとも1種のモノマー単位、ならびに任意に親水性であり得る少なくとも1種の中性モノマー単位を用いて、調製する。
【0044】
特に好ましいのは、親水性であってもよく、一般式(1)、式中Y=Rであり、および、
、Rは、互いに独立してHまたはメチルを示し、
、Rは、互いに独立してH、アルキル、アルコキシアルキルを示し、各々は4個までのC原子を有する、で表される、少なくとも1種の中性モノマー単位を用いて調製された、このタイプの分離材料である。
【0045】
極めて特に好ましいのは、親水性であってもよく、一般式(1)、
式中Y=Rであり、ここで、
、Rは、互いに独立してHまたはメチルを示し、
、Rは、互いに独立してH、メチル、エチル、ブチル、イソプロピル、3−ブチル、イソブチル、メトキシエチルまたはエトキシエチルを示す、で表される、少なくとも1種の中性モノマー単位を含む分離材料である。
【0046】
したがって、分離材料を調製するために、アクリルアミド(AAm)、ジメチルアクリルアミド、メタクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、メトキシエチルアクリルアミドおよびエトキシエチルアクリルアミドの群から、またはメチルアクリレートおよびメチルメタクリレートの群から選択される少なくとも1種の中性のモノマー単位を用いることができ、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アクリル酸、N−アリールアルキルアクリルアミド類、例えばベンジルアクリルアミドおよびアクリロイルフェニルアラニンなど、N−カルボキシアルキルアクリルアミド類、例えばアクリロイル−ガンマ−アミノ酪酸など、ならびにN−アルキルアクリルアミド類の群から選択される2種または3種のモノマーを用いる。
【0047】
本発明は、特に、上記のように、負電荷を有する単位対芳香族基を含む単位のモル比が99:1〜10:90の範囲、好ましくは96:4〜40:60の範囲にある、分離材料に関する。
【0048】
次にここで、コポリマーが、負電荷を有するモノマー単位(1種または2種以上)として2−アクリルアミド−2メチルプロパンスルホン酸または/および2−アクリルアミドエタンスルホン酸を含み、ここで負電荷を有するモノマー単位対疎水性のフェニル、ベンジルまたはフェニルエチル基を含むモノマー単位のモル比が70:30〜30:70の範囲にある分離材料は、特に良好な特性を有する。
【0049】
特に良好な特性を有するさらなる分離材料は、コポリマーが、負電荷を有するモノマー単位としてアクリル酸または/およびメタクリル酸を含み、ここで負電荷を有するモノマー単位対疎水性のフェニル、ベンジルまたはフェニルエチル基を含むモノマー単位のモル比が95:5〜70:30の範囲のものである。
【0050】
そのうえ、コポリマーが、負電荷を有するモノマー単位として2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸および2−アクリルアミドエタンスルホン酸の系からのモノマー、ならびにアクリル酸およびメタクリル酸の系からのモノマーを含み、ここで負電荷を有するモノマー単位対疎水性のフェニル、ベンジルまたはフェニルエチル基を含むモノマー単位のモル比が95:5〜30:70の範囲である、このタイプの分離材料が、使用の際に極めて良好であると明らかになった。
【0051】
この目的は、特に、帯電した基としてスルホン酸基のみを含む表面に共有結合したポリ(アクリルアミド)グラフトポリマーの帯電した基の比率が、グラフトポリマーの合計重量に対して35〜70mol%の範囲である分離材料により、達成される。本発明の目的はさらに、帯電した基としてカルボキシル基のみを含むグラフトポリマーの帯電した基の比率が、グラフトポリマーの合計重量に対して60〜98mol%の範囲である対応する分離材料により、達成することができる。
【0052】
本発明の分離材料は、クロマトグラフィーカラムにおける使用に特に高度に適する。本発明は、このように、記載した本発明の分離材料を含むクロマトグラフィーカラムにも関する。
【0053】
特に、本発明において特徴づけられる分離材料はまた、バイオポリマーを液体媒体から除去するのに特に高度に適する。
【0054】
バイオポリマーを、これらの分離材料により、6mS/cmより高い、好ましくは9mS/cmより高い電解伝導度を有する液体から簡単かつ効果的に吸着させることができ、一方1〜20mS/cmの範囲の電解伝導度および4より大きいpHを有する水性液体中において、対応するバイオポリマーを溶解した形態にするかまたは脱着することができることは、特に有利であることが明らかになった。
【0055】
したがって、これらの分離材料は、5.5のpHを有し、6mS/cmより高い、好ましくは9mS/cmより高い電解伝導度を有する水性液体から抗体を吸着するのに適し、したがって生体液体から除去するために簡単な方法で用いることができる。その後、負荷させた分離材料を処理し、バイオポリマーを好適な液体と共に溶出させることができる。
【0056】
本発明は、イオン強度を増大させることにより、および/または溶液中のpHを変更することにより、および/または吸着緩衝液のものとは異なる極性を有する溶離液を用いることにより、イオン性基、および任意に疎水性基と相互作用させることにより、分離材料に結合するバイオポリマーを脱着させることによってバイオポリマーを液体から除去することを特徴とする、分離材料の使用に関する。
【0057】
本発明のこのような分離材料を調製するのに適するプロセスを、負電荷を有する官能基を含む少なくとも1種のモノマー単位を、疎水性基を含む少なくとも1種のモノマー単位と、および任意に親水性特性を有する中性のモノマーと、ヒドロキシル含有無機、有機または複合支持材料上で、1段階または2段階反応においてグラフト重合させることにより行う。この目的のために、例えば、負電荷を有する官能基を含む少なくとも1種のモノマー単位を、疎水性基を含む少なくとも1種のモノマー単位および任意に親水性特性を有する中性のモノマーを含む希酸に、セリウム(IV)イオンの存在下で共溶媒を加えて溶解し、ヒドロキシル含有無機、有機または複合支持材料上でグラフト重合させる。
【0058】
上記で特徴づけした分離材料を調製するための本発明の方法は、特に、
a)一般式(1)
【化7】

式中、
、RおよびYは、互いに独立して、HまたはCHを示し、
は、R−COOMを示し、
は、2〜4個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキレンを示し、
Mは、H、Na、KまたはNHを示す、
で表される、カルボキシル基を含む少なくとも1種のモノマー
【0059】
および/または一般式(2)
【化8】

式中、
およびRは、互いに独立して、HまたはCHを示し、あるいは、
は、Z=MかつR=Hである場合にはCOOMを示し、
Zは、MまたはR−COOMのいずれかを示し、ここで
は、2〜4個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキレンを示し、
および
Mは、H、Na、KまたはNHを示す、
で表される、カルボキシル基を含むモノマーを、任意に水溶性モノマーと共に、ヒドロキシル含有無機、有機または複合支持材料上にグラフト重合させ、
b)その後グラフト重合させたカルボキシル基のいくつかを、アミンとのカップリングによりアミド基に変換する
ことを特徴とする。
【0060】
この方法の選択された変形態様は、
a)一般式(1)
【化9】

式中、
、RおよびYは、互いに独立してHまたはCHを示し、
は、R−COOMを示し、
は、2〜4個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキレンを示し、および
Mは、H、Na、KまたはNHを示す、
【0061】
および/または一般式(2)
【化10】

式中、
およびRは、互いに独立してHまたはCHを示し、あるいは、
は、Z=MかつR=Hである場合にはCOOMを示し、
Zは、MまたはR−COOMを示し、
は、2〜4個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキレンを示し、
および
Mは、H、Na、KまたはNHを示す、
で表される、カルボキシル基を含む少なくとも1種のモノマーを、
任意に他の水溶性モノマーと共に、負に帯電した基の比率がモノマーの合計量に対して1〜100mol%となるように水に溶解し、
【0062】
b)得られた溶液を、沈降した支持材料1リットル当たり0.05〜100molの全モノマーを用いるように支持材料と混合し、
c)鉱酸に溶解したセリウム(IV)塩を、得られた懸濁液に加え、0〜5の範囲のpHおよび0.00001〜5mol/l、好ましくは0.001〜0.1mol/lのセリウム(IV)濃度を生じさせ、また
d)反応混合物を、0.5〜72時間以内でグラフト重合させ、
e)アミンまたはアミン混合物を、グラフト重合したカルボキシル基のカップリングによる修飾のために用い、
【0063】
f)用いるアミンの合計量は、支持体に結合するカルボキシル基に対して0.01〜100:1のモル比であり、支持体に結合する帯電した基に対して0.01:1〜20:1のモル比で用いるカップリング試薬の存在下でアミド基に変換し、
g)アニリン、ベンジルアミン、4−フルオロベンジルアミン、4−メトキシベンジルアミン、ナフチルメチルアミン、フェナシルアミン、フェニルエチルアミン、フェノキシエチルアミン、トリプタミンまたはチラミンの群からの、6〜18個のC原子を有するアルキル、アリールまたはアリールアルキルアミンを、遊離アミンとして、または塩酸塩として、カップリングのために用いる
ことからなる。
【0064】
本発明の方法を行うために、用いる希酸は、1〜0.00001mol/lの範囲の濃度の硫酸、塩酸および硝酸の群からの酸であり、ここで酸を、30:70〜98:2の容積比において共溶媒と混合する。用いる共溶媒を、ジオキサン、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドおよびテトラヒドロフランの群から選択される少なくとも1種の溶媒とすることができる。
【0065】
所望の特性を有する誘導体化された分離材料を得るために、疎水性成分の比率がモノマーの合計量に対して1〜90mol%であり、ここで沈降した支持材料1リットル当たり0.05〜100molのモノマーを用いるような、互いに対する比率で、帯電したモノマーおよび疎水性モノマーを用いて、当該プロセスを行う。
【0066】
本発明の方法を行う選択された形態は、官能化された(メタ)アクリルアミド類および(メタ)アクリル酸を、ヒドロキシル含有無機、有機または複合支持材料の表面上に、1段階反応においてグラフト重合することからなる。
【0067】
本発明の方法の他の変形態様は、親水性モノマーを、液体反応媒体中でヒドロキシル含有無機、有機または複合支持材料上でグラフト重合し、得られたグラフトポリマーを、第2の段階においてポリマー類似反応(polymer-analogous reaction)により疎水的に修飾することからなる。
【0068】
分離材料を調製するための本発明の方法を、好ましくは、
a)親水性モノマーを水に溶解し、これを任意に、負に荷電した基の比率がモノマーの合計量に対して1〜100mol%であるような比率で、他のモノマーと混合し、
b)沈降したポリマー材料1リットル当たり0.05〜100molの全モノマーを、用いるように得られた溶液を支持材料と混合し、
c)鉱酸に溶解したセリウム(IV)塩を得られた懸濁液に加え、0〜5の範囲のpHにさせ、
d)0.5〜72時間以内で反応混合物をグラフト重合させる
ことにより行う。
【0069】
疎水性修飾のために用いるモノマー単位を、好ましくは、ここでは支持体に結合した帯電した基に対して100〜10,000mol%過剰で、カップリング試薬の存在下で用い、ここで後者を、支持体に結合した帯電した基に対して60〜2000mol%過剰で用いる。
【0070】
したがって、本発明はまた、このようにして得られる分離材料に関し、これは、クロマトグラフィーカラムの形態であってもよく、これは、グラフト重合により本発明に従って誘導体化されている。
【0071】
本発明は同様に、バイオポリマーを液体媒体から除去するための、特にタンパク質を液体媒体から除去するための、または抗体を液体媒体から除去するための、本発明の分離材料の使用を包含する。バイオポリマーがイオン性基と、および任意に支持材料の表面に共有結合したグラフトポリマーの疎水性基と相互作用する場合には、除去は特に選択的である。バイオポリマーをここで、グラフトポリマーの帯電した成分と、およびまた疎水性の成分と相互作用することにより、吸着させる。液体から除去された吸着されたバイオポリマーのその後の分離を、再度イオン性の、および任意に疎水性の基との相互作用により分離材料に結合したバイオポリマーを、
溶液中の
a)イオン強度を増加させ、および/または
b)pHを変更することにより、
および/または
c)吸着緩衝液とは異なる極性を有する好適な溶離液により、
脱着させることにより、行うことができる。
【0072】
したがって、以下に記載する本発明は、多孔質粒子のヒドロキシル含有表面上のグラフトコポリマーまたは対応する好適な成形品の製造であって、グラフトポリマーを、2種または3種以上の繰り返し単位から構成し、ここで当該単位の少なくとも1種は負電荷を有し、少なくとも1種の単位は疎水性基に結合しており、グラフトポリマーが帯電した物質、特に細胞培養物および細胞培養物上清中に見出される帯電した物質を、イオン性相互作用により結合することができることを特徴とする、前記製造に関する。
【0073】
支持表面に結合している柔軟なグラフトポリマー、いわゆる「触手」をイオン交換基として用いることは、知られている。このように、商業的に入手できるカチオン交換体であるFractogel(登録商標)EMD SO(M)中のグラフトポリマーは、スルホン酸基を含む1種の繰り返し単位のみから構成されている。カチオン交換体Fractogel(登録商標)EMD COO(M)は同様に、繰り返されている親水性単位のみからなる。これらのカチオン交換体は、IgGが10mS/cmより大きい伝導値を有する溶液中、即ち、例えば150mMの塩化ナトリウムを含む溶液中に位置する場合には、例えば免疫グロブリン(IgG)に対して低い結合能を示すにすぎない。
【0074】
特許EP 0 337 144またはUS 5,453,186には、塩耐容性のイオン交換体を合成するにあたり好ましいモノマーの組み合わせについての情報は、示されていない。種々のグラフトポリマーを調製する本発明者ら自身の試行を通してのみ、疎水性モノマーと負に荷電したモノマーとの組み合わせが、特に計画されている使用に適することが、明らかになった。例えば表1に列挙されている官能化されたアクリルアミドおよびアクリル酸を、好ましくは一連のグラフト実験のために用いた。その理由は、これから生成するポリマーがアルカリ性条件下で加水分解安定性であるからである。調査のために、材料に、何時間にもわたり0.1M〜1.0Mの水酸化ナトリウム溶液での処理を施した。水溶液における特性のより詳細な調査により、得られた新規な表面構造が、これらの疎水性特性にもかかわらず極めて良好な膨潤特性を有することが示された。これは、明らかに、文献(W. Shi et al.、J. Chromatography A、2001、924、123-135)で知られるように、得られたポリ(アクリルアミド)類が水溶液中で水素結合を形成することができるという事実に起因し得る。
【0075】
本発明の分離材料を調製するために、親水性クロマトグラフィー支持体、例えば商業的に入手できるToyopearl HW-65(S)および(M)と同一であるFractogel TSK HW65(S)または(M)を、用いることができる。この支持体を、グラフトコポリマーにより修飾する。クロマトグラフィー支持体に結合するグラフトコポリマーは、2種の異なる調製経路により得られる:
【0076】
a)クロマトグラフィー支持体の表面上のすべての官能基の導入を、単一のグラフト重合段階により、1段階グラフト重合において行う、
または、
b)2段階方法において、先ず好適な親水性単位によるグラフティングを行い、続いてグラフトポリマー上でのポリマー類似反応により、疎水性基を導入する。
【0077】
本発明の材料を調製するために、他のクロマトグラフィー支持体もまた、用いることができる。しかし、このための必要条件は、用いる材料が、グラフト重合反応にアクセス可能な反応性基、特にOH基を含むことである。したがって、好適な支持材料をまた、例えば有機ポリマーから調製することができる。このタイプの有機ポリマーを、多糖類、例えばアガロース、デキストラン、デンプン、セルロースなど、または合成ポリマー、例えばポリ(アクリルアミド)、ポリ(メタクリルアミド)、ポリ(アクリレート)、ポリ(メタクリレート)、親水的に置換されたポリ(アルキルアリルエーテル)、親水的に置換されたポリ(アルキルビニルエーテル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(スチレン)および対応するモノマーのコポリマーとすることができる。これらの有機ポリマーをまた、好ましくは架橋した親水性ネットワークの形態で用いることができる。これはまた、スチレンおよびジビニルベンゼンから製造されたポリマーを含み、これを、好ましくは他の疎水性ポリマーと同様に、親水性化された形態で用いることができる。
【0078】
あるいはまた、無機物質、例えばシリカ、酸化ジルコニウム、二酸化チタン、酸化アルミニウムなどを、支持体として用いることができる。複合材料を用いることは、同等に可能である。即ち、例えば、本発明の分離材料を、例えば無機粒子または成形品の表面を誘導体化し、これを本発明の方法において誘導体化することにより、得ることができる。この例は、磁化可能な粒子の、または磁化可能なコアの共重合によりこれら自体磁化され得る粒子である。
【0079】
しかし、好ましいのは、加水分解に対して安定であるか、または困難を伴って加水分解され得るに過ぎない親水性支持材料を用いることである。その理由は、本発明の材料が、長期の使用期間にわたってpH≧13にてアルカリ清浄または再生に耐えなければならないからである。支持体は、すでに低分子量のリガンドを有していてもよい。リガンドは、1種または2種以上の帯電した基、疎水性基または水素結合を形成することができる基を有していてもよい。好ましいのは、負に荷電した基を含むリガンドである。
【0080】
支持材料はまた、粒子の大きさが2〜1000μmであり得る、不規則な形状の、または球状の粒子からなっていてもよい。好ましいのは、3〜300μmの粒子の大きさである。
支持材料は、特に、非孔質であるかまたは好ましくは多孔質粒子の形態であってもよい。孔の大きさは、2〜300nmであり得る。好ましいのは、5〜200nmの孔の大きさである。
支持材料は、同様に、また膜、繊維、中空繊維、コーティングまたはモノリシック成形品の形態であってもよい。モノリシック成形品は、例えば円筒形の形態での三次元物体である。
【0081】
図1は、上述の2種の調製法を概略的に示す。詳細に、この図面は、以下のものを示す:
アニオン性基を含むモノマー4および疎水性モノマー5を、親水性支持表面1上に直接混合物としてグラフトし、アニオン性および疎水性基を含む化学的に修飾された表面3を得ることができる。モノマー4がカルボキシル基を含む場合には、親水性アニオン性表面2を先ず形成し、その後、例えばカップリング試薬としてアリールアルキルアミンおよびカルボジイミドを用いた疎水性修飾により、3に変換することができる。モノマー4は親水性モノマーの混合物であり得、モノマー5は疎水性モノマーと中性モノマーとの混合物であり得る。
【0082】
1段階グラフト重合のために、例えばスルホン酸基またはカルボキシル基を含む少なくとも1種の負に荷電したモノマーを用いる。スルホン酸基を含む好適なモノマーは、例えばビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸、式2、式中Z=R−SOMであり、ここでRおよびRは、互いに独立して水素または6個までのC原子を有するアルキル、好ましくは水素またはメチル、カルボキシルまたはカルボキシメチルの意味を有し、ここでRは、1〜8個のC原子を有する直鎖状アルキレン、例えばメチレン、エチレン、プロピレンもしくはヘキシレン、または1〜8個のC原子を有する分枝状アルキレン基、例えばイソプロピレンもしくはイソブチレンであってもよい、で表されるアクリレートである。
【0083】
アルキレン基は、任意にアルコキシまたはカルボキシル基により単置換または多置換されていてもよい。Rは、同様に、10個までのC原子を有するアリーレン基、例えばフェニレンの意味を有することができる。アルキレン基は、1〜4個のC原子を有するアルキル基、アルコキシまたはカルボキシル基により、任意に単置換または多置換、好ましくは単置換または二置換、特に単置換されていてもよい。Rはまた、1つの鎖のアルキレンおよびアリーレン基、またはアリーレンおよびアルキレン基からなっていてもよい。Mは、水素原子または金属カチオン、例えばナトリウムもしくはカリウム、またはアンモニウムカチオンである。Mを、モノマーが水溶性であるように選択する。
【0084】
スルホアルキルアクリレート、例えば3−スルホプロピルアクリレートまたは2−スルホエチルアクリレート、およびスルホアルキルメタクリレート、例えば3−スルホプロピルメタクリレートまたは2−スルホエチルメタクリレートが、例として示される。好ましいのは、式1、式中R=R−SOMであり、ここでR、RおよびYは、互いに独立して、水素または6個までのC原子を有するアルキル、好ましくは水素またはメチルの意味を有し、RおよびRは同様に、互いに独立してカルボキシルまたはカルボキシメチルであってもよく、Rはまた、R−SOMであってもよく、またここでRは、1〜8個のC原子を有する直鎖状アルキレン基、例えばメチレン、エチレン、プロピレンもしくはヘキシレン、または1〜8個のC原子を有する分枝状アルキレン、例えばイソプロピレンもしくはイソブチレンであり得る、で表される、アクリルアミドを用いることである。
【0085】
アルキレン基は、任意にアルコキシまたはカルボキシル基により単置換または多置換されていてもよい。Rは、同様に、10個までのC原子を有するアリーレン基、例えばフェニレンの意味を有していてもよい。アルキレン基は、任意に、1〜4個のC原子を有するアルキル基、アルコキシまたはカルボキシル基により単置換または多置換、好ましくは単置換または二置換、特に単置換されていてもよい。Rはまた、1つの鎖のアルキレンおよびアリーレン基、またはアリーレンおよびアルキレン基からなっていてもよい。Mは、水素原子または金属カチオン、例えばナトリウムもしくはカリウム、またはアンモニウムカチオンである。Mを、モノマーが水溶性であるように選択する。本明細書中で例により述べることができる好適なアクリルアミドは、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)および2−アクリルアミドエタンスルホン酸である。
【化11】

【0086】
カルボキシル基を含む好適なモノマーは、例えば式2、式中Z=R−COOMであり、ここでRおよびRが互いに独立して、水素または6個までのC原子を有するアルキル、好ましくは水素またはメチル、カルボキシルまたはカルボキシメチルの意味を有することができ、ここでRが1〜8個のC原子を有する直鎖状アルキレン基、例えばメチレン、エチレン、プロピレンもしくはヘキシレン、または1〜8個のC原子を有する分枝状アルキレン基、例えばイソプロピレンもしくはイソブチレンであり得る、で表されるケイ皮酸またはアクリレートであり得る。アルキレン基は、任意にアルコキシまたはカルボキシル基により単置換または多置換されていてもよい。Rは、同様に10個までのC原子を有するアリーレン基、例えばフェニレンの意味を有していてもよい。
【0087】
アルキレン基は、任意に、1〜4個のC原子を有するアルキル基、アルコキシまたはカルボキシル基により単置換または多置換、好ましくは単置換または二置換、特に単置換されていてもよい。Rはまた、1つの鎖のアルキレンおよびアリーレン基、またはアリーレンおよびアルキレン基からなっていてもよい。Mは、水素原子または金属カチオン、例えばナトリウムもしくはカリウム、またはアンモニウムカチオンである。Mを、モノマーが水溶性であるように選択する。カルボキシエチルアクリレートなどのカルボキシアルキルアクリレートおよびカルボキシアルキルメタクリレートを例として示す。
【0088】
好ましいのは、式1、式中R=R−COOMであり、ここでR、RおよびYが、互いに独立して水素または6個までのC原子を有するアルキル、好ましくは水素またはメチルの意味を有し、RおよびRが同様に、互いに独立してカルボキシルまたはカルボキシメチルであり得、RはまたR−COOMであり得、ここでRは、1〜8個のC原子を有する直鎖状アルキレン基、例えばメチレン、エチレン、プロピレンもしくはヘキシレン、または1〜8個のC原子を有する分枝状アルキレン、例えばイソプロピレンもしくはイソブチレンであり得る、で表されるアクリルアミドを用いることである。アルキレン基は、任意にアルコキシまたはカルボキシル基により単置換または多置換されていてもよい。
【0089】
は、同様に10個までのC原子を有するアリーレン基、例えばフェニレンの意味を有していてもよい。アルキレン基は、任意に、1〜4個のC原子を有するアルキル基、フェニル、フェニルメチル、アルコキシまたはカルボキシル基により単置換または多置換、好ましくは単置換または二置換、特に単置換されていてもよい。Rはまた、1つの鎖のアルキレンおよびアリーレン基、またはアリーレンおよびアルキレン基からなっていてもよい。Mは、水素原子または金属カチオン、例えばナトリウムもしくはカリウム、またはアンモニウムカチオンである。Mを、モノマーが水溶性であるように選択する。本明細書中で述べることができる好適なアクリルアミドの例は、アクリロイル−ガンマ−アミノ酪酸である。
【0090】
特に好ましいのは、式2、式中Z=Mであり、ここでRおよびRが互いに独立して水素または6個までのC原子を有するアルキル、好ましくは水素またはメチル、カルボキシルまたはカルボキシメチルの意味を有することができる、で表される不飽和カルボン酸を用いることである。Mは、水素原子または金属カチオン、例えばナトリウムもしくはカリウム、またはアンモニウムカチオンである。Mを、モノマーが水溶性であるように選択する。マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸またはフマル酸を、例として示すことができる。これらの中で、特に好ましいのは、式2、式中Z=Mであり、ここでRが水素を示し、Rが水素または3個までのC原子を有するアルキルを示す、で表されるモノマーである。アクリル酸(AA)、メタクリル酸またはエタクリル酸を、この目的のために例として示すことができる。
【化12】

【0091】
分子中で顕著な疎水性成分を有する少なくとも1種の疎水性モノマーは、1段階グラフト重合のためのさらなる成分として必要とされる。したがって、好適な疎水性モノマーは、少なくとも1種のアルキルもしくはアリール基または分子の疎水性特性を生じる他の基を含む。好ましいのは、疎水性特性が好適な数の炭素原子を有するアルキル基により、またはアリール基により生じるモノマーである。用いる疎水性モノマーは、好ましくは、アルキルまたはアリール基を含むモノマーである。本発明において用いるのに適する疎水性モノマーは、例えば式(2)、式中Rは水素の意味を有し、Rは水素またはメチルを示し、Zは4〜18個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、アリール、R−アリールまたはR−CONHXを示し、ここでXが6〜8個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、アリール、R−アリールを示し、Rが1〜4個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキレンを示す、で表されるアクリレートであり、ブチルアクリレートおよびブチルメタクリレートを例として示すことができる。
【0092】
好ましいのは、一般式1、式中RおよびRが互いに独立して水素または6個までのC原子を有するアルキル、好ましくは水素またはメチルの意味を有し、ここでYおよび/またはRが互いに独立して、YおよびRが一緒に少なくとも6個のC原子、好ましくは6〜18個のC原子を有するアルキルの意味を有し、メチレン基がO、アリール、アルキルアリール、アリールアルキルにより置換されていてもよく、ここでアルキルおよび/またはアリール基がアルコキシ、シアノ、カルボキシル、アセトキシまたはアセトアミノラジカルにより単置換または多置換、好ましくは単置換または二置換、特に単置換されていてもよく、したがって、Yおよび/またはRが好ましくは、互いに独立してメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、2−、3−または4−オキサペンチル、2−、3−、4−または5−オキサヘキシル、2−、3−、4−、5−または6−オキサヘプチル、3−ブトキシプロピル、イソプロピル、3−ブチル、イソブチル、2−メチルブチル、イソペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、2−オキサ−3−メチルブチル、2−メチル−3−オキサヘキシルを示す、で表されるアクリルアミドである。
【0093】
Yおよび/またはRは、好ましくはまた、互いに独立して、好ましくはシアノ、シアノアルキル、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキルにより、好ましくはp位において単置換されている、フェニル基の意味を有することができる。Yおよび/またはRは、好ましくは、互いに独立して、フェニルオキシアルキル基、例えばフェノキシエチル、またはフェニルアルキル基を意味し、特に、Yおよび/またはRは、特に好ましくは、互いに独立して、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピルを意味する。アルキル基は、オキソ基を有することができる。
【0094】
疎水性モノマーは、この場合において、特に好ましくは、式1、式中RおよびRが互いに独立して水素または6個までのC原子を有するアルキル、好ましくは水素またはメチルの意味を有し、ここでYは、水素の意味を有し、ここでRは、アルキルの意味を有し、ここでRは、少なくとも6個のC原子、好ましくは6〜18個のC原子を有し、メチレン基は、O、アリール、アルキルアリール、アリールアルキルにより置き換えられていてもよく、ここで、アルキルおよび/またはアリール基は、アルコキシ、シアノ、カルボキシル、アセトキシまたはアセトアミノラジカルにより単置換または多置換、好ましくは単置換または二置換、特に単置換されていてもよい、で表されるアクリルアミドである。
【0095】
したがって、Rは、好ましくはヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、2−、3−、4−、5−または6−オキサヘプチル、3−ブトキシプロピル、2−メチル−3−オキサヘキシルを示す。Rは、好ましくはまた、フェニル基の意味を有することができ、これは、好ましくはシアノ、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキルにより、好ましくはp位において単置換されている、フェニル基の意味を有することができる。Rは、好ましくはフェニルオキシアルキル基、例えばフェノキシエチル、またはフェニルアルキル基を意味し、特にRは、特に好ましくはベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピルを意味する。アルキル基は、2−フェニル−2−オキソエチルにおけるように、オキソ基を有することができる。モノマーアクリロイルグリシンアラニン、アクリロイルフェニルアラニン、ベンジルアクリルアミド、オクチルアクリルアミドを、本明細書中で例として示すことができる。
【0096】
さらに、好ましくは親水性である中性のモノマーを、任意に1段階グラフト重合において加えることができる。このようにして、グラフトポリマーの電荷密度を上昇させずに、水性媒体中でのグラフトポリマーの膨潤挙動を改善することが、可能である。この目的のために適する中性のモノマーは、例えば低級アルキルアクリレート、例えばメチルアクリレート、低級アルキルメタクリレート、例えばメチルメタクリレートである。
【0097】
好ましいのは、一般式1、式中Y=Rであり、ここでRおよびRが互いに独立して水素またはメチルであり、またここで、RおよびRが互いに独立して水素または4個までのC原子を有するアルキルを示す、で表されるアクリルアミドを用いることである。したがって、Rおよび/またはRは、水素または低級アルキルを示す。後者は、好ましくは、本明細書中ではメチル、エチル、ブチル、イソプロピル、3−ブチルまたはイソブチルの意味を有し、さらに4個までのC原子を有するアルコキシアルキル、例えばメトキシエチルまたはエトキシエチルの意味を有する。アクリルアミド(AAm)、ジメチルアクリルアミド、メタクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、メトキシエチルアクリルアミドおよびエトキシエチルアクリルアミドを、本明細書中で例として示すことができる。
【0098】
実際のグラフト重合反応を、ヒドロキシル含有支持体上でセリウム(IV)により開始することができる。この反応を、通常希薄な鉱酸中で、例えば希硝酸中で行い、ここで疎水性モノマーは、難溶性であるかまたは不溶性である。反応をまた、希硫酸または塩酸中で行うことができる。しかし、これを、好ましくは希硝酸中で行う。可溶化剤または共溶媒、好ましくはジオキサンを加えることにより、疎水性モノマーを溶解し、グラフトするのが可能になる。用いることができる共溶媒はまた、アセトン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランである。しかし、ジオキサンを特に好ましくは用いる。その理由は、これがセリウム(IV)により開始される反応において最も高いグラフト収率および最少の副産物を提供するからである。
【0099】
本明細書中で、グラフト重合のための他の方法もまた用いることができることに、さらに注意しなければならない。好ましいのは、除去しなければならない副産物、例えば非共有的に結合したポリマーなどがわずかに生成するに過ぎない方法である。制御されたフリーラジカル重合を用いる方法、例えば原子移動ラジカル重合(ATRP)の方法は、特に興味深いと見られる。ここでの第1段階において、開始基を、所望の密度で支持表面に共有結合させる。開始基は、例えばエステル官能基を介して結合したハロゲン化物、例えば2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸エステルであり得る。グラフト重合を、第2の段階において銅(I)塩の存在下で行う。
【0100】
疎水性モノマーが完全に液相に溶解せず、これが、例えば反応溶液が曇ることまたは第2の液相の小滴から明白である場合には、グラフト化は、2種のモノマーの反応により発生するが、得られた生成物は、むしろより通常のイオン交換体のように挙動する。したがって、この場合における特性は、主に帯電したモノマー単位により決定される。これは、グラフトコポリマーを、グラフトポリマーにおける帯電した、および疎水性の官能が、溶液中で互いに協働することができるように調製しなければならないことを意味する。したがって、当該反応について、希酸および共溶媒を特定の反応に最も好ましい比率で使用することを、試行する。
【0101】
グラフト重合を行うために、酸を通常、1〜0.00001mol/l、好ましくは0.1〜0.001の範囲の濃度を有する水溶液中で、用いる。0.05〜0.005mol/lの範囲の濃度で用いる希硝酸を、極めて特に好ましく用いる。反応を行うために、希酸対好適な共溶媒の体積比を、30:70〜98:2の範囲とすることができる。40:60〜90:10の体積比を、好ましくは用いる。用いる希酸および共溶媒が45:55〜75:25の範囲の体積比である場合に、特に良好な結合能が見出される。このことは、特に、スルホン酸基を含むモノマーを希硝酸中で用い、ジオキサンを共溶媒として用いる場合に該当する。
【0102】
対照的に、過度に多量の共溶媒を加える場合には、グラフトポリマーの収率は低下する。この結果、過度に少量のタンパク質が、得られる誘導体化された分離材料に結合し得る。支持材料上のグラフトポリマーの収率は、疎水性モノマーのさらなる溶液を共溶媒の存在下で、すでに開始した帯電したモノマーとのグラフト重合に加えることにより、増大させることができる。
【0103】
さらなる一連の実験により、好適な支持材料を以下の表中に述べるモノマーとグラフト重合させた場合に、グラフト重合により誘導体化され、本発明に従って改善された特性を有する分離材料が得られることが、示された。
【0104】
【表1】

【0105】
好適な支持体、例えば商業的に入手できるToyopearl HW-65(M)(製造者:東ソー、日本国、またEP 0 006 199に記載されている)と同一であるFractogel TSK HW65(M)上の以下の支持体に結合したグラフトコポリマーを、2種または3種のモノマーの組み合わせにより、例により調製し、これらの特性、特にこれらの結合能に関して調査した:
【0106】
ベンジルアクリルアミドとのポリ(AMPS、AA、ArAAm)
ベンジルアクリルアミドとのポリ(AMPS、ArAAm)
ベンジルアクリルアミド、アクリロイルフェニルアラニンとのポリ(AA、ArAAm)
ベンジルアクリルアミドとのポリ(AMPS、ArAAm、AAm)
ベンジルアクリルアミドとのポリ(AA、ArAAm、AAm)
カルボキシプロピルアクリルアミドおよびベンジルアクリルアミドとのポリ(CAAAm、ArAAm)
ブチルアクリルアミドとのポリ(AMPS、AlkylAAm)
【0107】
低級アルキルアクリルアミド(AlkyAAm)、例えばブチルアクリルア

ミドを、スルホン酸基を含むモノマー、例えばAMPSと共重合させることができるが、誘導体化された支持材料は、既知の分離材料、例えば純粋なAMPSから製造されたグラフトポリマーのものの領域において免疫グロブリン(IgG)に対する結合能のみを示すことが、見出された。
【0108】
この点について、より高級のアルキル基、例えばオクチル基が、タンパク質の結合に対する明確な貢献をなすことが、見出された。しかし、驚くことに、調査の過程で、芳香族モノマー(例えばArAAm)を反応混合物と、塩耐容性のイオン交換体を調製している間に混合することが特に有利であることが、明らかになった。これらのモノマーにより、疎水性基がイオン性表面修飾中に保持されるのが可能になる。加える芳香族モノマーの量に応じて、得られた材料の疎水性特性は増大し、したがって結合能は、当該結合能がグラフトポリマー中の疎水性基のモル分率に応じてこれ自体影響され得るように影響される。また、互いに対するモノマーの比率を、選択されたモノマーの組み合わせに応じて、および重合条件に応じて異なって選択して、高い結合能を達成しなければならないことが、見出された。
【0109】
ポリ(アクリルアミド)グラフトポリマーが帯電した基としてスルホン酸基のみを含む場合には、特に有利な特性は、帯電した基の比率がグラフトポリマーの合計量に対して35〜70mol%である場合に見出される。100mol%の帯電した基を含む分離材料は、疎水性基を含まない純粋なカチオン交換体に相当する。
【0110】
グラフトポリマーが、例えばアクリル酸とのコポリマー中で、他の帯電した基に加えてカルボキシル基を含むか、またはこのタイプの帯電した基のみが存在する場合には、異なる状況が発生する。このような場合において、帯電した基の比率がグラフトポリマーの合計量を基準として60〜98mol%である場合に、改善された結合能が見出される。帯電した基の比率が70〜95mol%の範囲にある材料について、特に有利な特性が見出された。
【0111】
有利な特性を有するグラフトポリマーを得るために、帯電したモノマーと疎水性モノマーとを、疎水性成分の比率がモノマーの合計量に対して1〜90mol%であるような互いに対する比率において混合し、好ましいのは、モノマーの合計量を基準として3〜70mol%の範囲の比率である。AMPSの使用に際して、疎水性成分の比率を、特に、これがモノマーの合計量を基準として20〜60mol%の範囲でにあるように選択する。AAの使用に際して、疎水性成分の比率が5〜50mol%の範囲である場合に、グラフトポリマーの特に良好な特性が達成される。本発明の分離材料を調製するために、モノマーを通常、支持材料に過剰に加える。沈降したポリマー材料1リットル当たり0.05〜100molの合計モノマーを用い、好ましくは0.15〜25mol/lを用いる。
【0112】
沈降した支持材料は、懸濁液からの沈降により得られ、これを上清溶媒から遊離させた、湿潤した支持材料を意味するものと解釈される。対応する支持材料を、通常湿潤状態において保存する。本発明による使用のために、上清溶媒を、予め吸引により除去する。その後、誘導体化を行うために、測定した容積または秤量した量(フィルター湿潤ゲル)を、好適な容積または好適な量のモノマー溶液中に懸濁させ、グラフト重合させる。支持材料は、ヒドロキシル含有無機、有機または複合支持材料であり得る。したがって、これはまた、有機ポリマー材料であり得る。
【0113】
第2の調製の変形態様が、2段階方法と同様に、追加の反応段階の欠点を有するが、グラフト重合は、加える共溶媒の有効性によっては限定されない。最初のグラフト重合段階において、液体反応媒体に容易に可溶である親水性モノマーのみをグラフトさせるのが、好ましい。ここでは、少なくとも1種のモノマーが、カルボキシル基を含む。次に、グラフトポリマーを、第2の段階においてポリマー類似反応により疎水的に修飾することができる。この段階を、例えば、ベンジルアミンを水溶性カルボジイミドとカップリングさせてポリ(アクリル酸)グラフトポリマーとし、グラフトしたポリ(ベンジルアクリルアミド)を得ることにより、行うことができる。
【0114】
2段階プロセスのために用いることができるモノマーは、1段階グラフト重合についてすでに述べたモノマーである。カルボキシル基を含むモノマーを、単独で、または疎水性、中性のモノマーとの、および/またはスルホン酸基を含むモノマーとの混合物として、グラフト重合において用いることができる。好ましいのは、中性のモノマーとの、および/またはスルホン酸基を含むモノマーとの混合物を用いることである。特に好ましいのは、カルボキシル基を含む水溶性モノマーまたは、カルボキシル基を含む水溶性モノマーとさらなる水溶性モノマーとの混合物である。したがって、以下の一般式(1)
【化13】

【0115】
式中、R、RおよびYは、互いに独立してHまたはCHを示し、Rは、R−COOMの意味を有し、ここでRは、2〜4個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキレンを示し、Mは、H、Na、KまたはNHを示す、
あるいは一般式(2)
【化14】

【0116】
式中、RおよびRは、互いに独立してHまたはCHを示し、ZはMまたはR−COOMのいずれかを示し、ここでRは、2〜4個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキレンを示し、Rはまた、ZがMでありRがHである場合にはCOOMを示すことができ、MはH、Na、KまたはNHを示す、
で表される、カルボキシル基を含む水溶性モノマーが、特に好ましい。
【0117】
さらなる水溶性モノマーは、カルボキシル基を含み、ここで基R−COOMがR−SOMにより置き換えられている水溶性モノマー、または1段階グラフト重合についてすでに述べた中性のモノマーの対応するスルホン酸類とすることができる。カルボキシル基を含む水溶性モノマーの例は、アクリル酸、カルボキシエチルアクリルアミド、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシエチルメタクリルアミド、カルボキシメチルアクリルアミド、カルボキシメチルアクリレート、カルボキシメチルメタクリルアミド、カルボキシプロピルアクリルアミドおよびカルボキシプロピルメタクリルアミド、メタクリル酸およびマレイン酸である。さらなる水溶性モノマーの例は、アクリルアミド、2−アクリルアミドエタンスルホン酸、AMPS、イソプロピルアクリルアミド、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、2−スルホエチルアクリレート、2−スルホエチルメタクリレート、3−スルホプロピルアクリレート、3−スルホプロピルメタクリレートである。
【0118】
ベンジルアミンの例えばポリ(アクリロイル−ガンマ−アミノ酪酸)グラフトポリマーへのカップリング反応において、ベンジルアミンを、支持体に結合したカルボキシル基に対して約4000mol%の過剰で用いる場合には、事実上すべてのカルボキシル基を反応させることが、可能である。支持体に結合したカルボキシル基に対して300mol%の過剰の結合試薬EDC(N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩)で、存在するカルボキシル基の約90%のアミド基への変換が、達成される。しかし、本発明における反応の目的は、カルボキシル基のいくらかのみを反応させて、十分なイオン交換基が依然としてグラフトポリマー中に存在するようにすることである。上記の例において、60mol%のみのEDCを用いる場合には、約30%のみのカルボキシル基が反応し、塩の存在下での生成物の結合能は、上記の場合におけるよりも2倍高い。
【0119】
過剰のカップリングするべきモノマーを、反応したカルボキシル基の所望の比率がどれだけ高く意図されるかに応じて選択する。したがって、過剰のカップリングするべきモノマーを、支持体に結合したカルボキシル基に対して100〜10,000mol%の範囲とすることができ、一方カップリング試薬を、支持体に結合したカルボキシル基に対して60〜2000mol%の範囲で、過剰に用いる。カップリングするべきモノマーの、およびまたカップリング試薬の両方の比率を、当然十分なカルボキシル基が反応することができ、かつ第2の反応段階を行った後に有利な、または改善された特性を有し、目的の分子、例えば帯電したバイオポリマーを液体、例えば細胞培養上清から除去するのに適する分離材料を調製することが可能であるるように、選択する。
【0120】
例えばポリ(アクリル酸)の高い表面密度において、存在するカルボキシル基の約30%は、過剰のアミン、および支持体に結合したカルボキシル基に対するEDCの欠乏の場合において、選択された条件下で反応した。しかし、大過剰のカップリング試薬によっても、カルボキシル基のより高い割合が反応するのが可能になる。しかし、産業的規模での反応の場合におけるこの手順の欠点は、2段階調製の費用が顕著に増大することである。したがって、経済的理由により、この手順は真実の代替法ではない。
【0121】
顕著により好ましいのは、カルボキシルまたはスルホン酸基を含むモノマーの混合物からグラフトコポリマーを調製することである。前駆体としてのAMPSとAAとの混合物を、本明細書中で例により述べることができる。その理由は、スルホン酸基のために、カルボキシル基の任意に完全な変換の場合においてさえも、イオン交換基が依然としてグラフトポリマー中に存在するからである。特に、すでに上記で記載したように、低いグラフトポリマー密度において、支持体に結合したカルボキシル基に対して少なくとも300mol%の過剰のカップリング試薬EDCにより、完全な変換を達成することができる。
【0122】
しかし、カルボキシル基は、ここでは、一般的に高いグラフトポリマー密度において常に完全に反応することができるわけではない。したがって、約30mol%のAMPS単位と70mol%のアクリル酸単位とからなるグラフトポリマーへのベンジルアミンのカップリングにより、約20mol%のベンジルアクリルアミド単位に加えて、50mol%のアクリル酸単位を依然として含むグラフトポリマーが得られることが、見出された。したがって、これは、3種のモノマー単位からなるが、最初の合成計画では、100〜150mol%のEDCを用いることにより完全な変換が予想され、2種の単位のみが存在するはずであった。
【0123】
AMPSとAAとからなるグラフトポリマーに対するポリマー類似反応について、例えば、沈降したポリマー材料1リットルあたり3molのベンジルアミンを用いる。0.2mol/lのEDCをカップリング試薬として加え、これは、支持体に結合したカルボキシル基に対してほぼ100mol%に相当する。
【0124】
疎水性修飾のためのカルボキシル基を含む好適なグラフトポリマーを得るために、少なくとも1種のカルボキシル基を含むモノマーを、一般的に水に溶解し、場合によっては存在する他のモノマーと混合して、カルボキシル基を含む成分の比率がモノマーの合計量に対して1〜100mol%、好ましくは10〜100mol%であるようにする。モノマーを、通常支持材料に過剰に加える。沈降するポリマー材料1リットル当たり0.05〜100molの全モノマーを用い、好ましいのは、0.15〜25mol/lを用いることである。
【0125】
理想的には同様に酸素から遊離させた、セリウム(IV)塩を鉱酸に溶解した溶液、好ましくは硝酸アンモニウムセリウム(IV)を硝酸に溶解した溶液を、水性懸濁液に加え、5〜95℃、好ましくは20〜70℃の温度にて撹拌しながら酸素から遊離させ、その後、この温度にて0.5〜72時間、好ましくは2〜20時間継続して撹拌する。セリウム(IV)塩溶液を加えた後に生じる水溶液の濃度を、pHが0〜5、好ましくは1〜3であるように選択する。セリウム(IV)濃度を、これが反応溶液中で0.00001〜0.5mol/l、好ましくは0.001〜0.1mol/lであるように設定する。
【0126】
表2は、AMPSとAAとの支持体に結合したグラフトコポリマー(Fractogel(登録商標)TSK HW65 M上)にカップリングした第一アミンの例を示す。また、複数のアミンを支持材料にカップリングさせるか、またはアミンの混合物をカップリング反応のために用いることも可能である。対応する例をまた、表3に示す。また、1段階グラフト重合の場合において疎水性モノマー単位としてすでに述べた、アクリルアミドを生じるすべてのアミンを、用いることができる。例えばグラフトポリマーの、EDCを用いて調製したヒドロキシスクシンイミドエステル類を介しての代替のカップリング方法を、アミン単位のカルボキシル基へのカップリングの場合において選択しなければならないことは、当業者に知られている。
【0127】
また、いくつかの場合においては1段階合成によってすでに調製されていてもよい、芳香族基を含むグラフトコポリマーの場合におけるように、グラフトポリマーの中のアルキル基、例えばオクチル基と共にスルホン酸およびカルボキシル基がまた、非疎水的に修飾されたカチオン交換体と比較して結合特性の改善をもたらすことが、見出された。
【0128】
このように、異なる疎水性成分、しかし同一のグラフト密度を有するグラフトポリマーを、2段階合成により単純な様式で、例えばポリ(アクリル酸)前駆体から開始して調製することができる。表3において、6〜8行に示す例の結果は、グラフトポリマー中に種々の比率(単位mol%)のベンジル基を有するこのような一連のものを示す。また、実験により、グラフトポリマー中約25mol%のベンジル基において、結合最適条件があることが示された。ポリクローナルIgGの回収が高くなるに伴って、ベンジル基はグラフトポリマー中により少量で存在する。モノクローナル抗体を用いた実験により、約25mol%のベンジル基がグラフトポリマー中にある場合において、回収はまた約100%であることが示された。モノクローナルタンパク質の場合における溶出を、より容易に最適化することができる。その理由は、ポリクローナルタンパク質とは対照的に、極めて類似した種を溶解して除去しなければならないからである。
【0129】
分離材料を評価するために、75mMおよび150mMの塩化ナトリウム溶液中のポリクローナルヒトIgG(Gammanorm)の静的結合能を、一般的にpH5〜7の範囲において調査する。150mMの塩濃度の伝導値は、細胞培養上清のものに相当する(しばしば10〜15mS/cm)。結合能を、塩濃度を約1MのNaClに増加することによりIgGを溶出させた後に、決定する。
【0130】
動的結合能を、同様に150mMの塩化ナトリウムの存在下で決定する。このために、IgG溶液での充填を、10%破過まで行う。溶出を、結合緩衝液のpHにて塩濃度を約1MのNaClに増大させることにより行う。IgGの回収の改善を、塩濃度およびpHを同時に上昇させることにより達成することができる。
【0131】
表3の例は、グラフトコポリマーを有する分離材料が、グラフトポリマー中に疎水性部分を有しない比較のゲルよりも顕著に高い動的結合能を達成することを示す。高い結合能が、pH5.5にてグラフトコポリマーにより達成される。このpHにて、グラフトコポリマーは負に帯電する。対照的に、IgGは、負の電荷よりも正の電荷を多大に有する(pH<pI)。結合は、このように主にイオン相互作用により生成する。ポリクローナルIgGの正電荷がpH6.5に再緩衝する(re-buffer)ことにより低減され、このpIに接近する場合には、10%の破過値が、極めて少量のIgGですでに達成される。この結合挙動は、これらの合成がグラフト重合段階により、または好適な親水性グラフトポリマーの疎水性の修飾によってのみ直接行われるか否かとは無関係に、すべてのグラフトコポリマーにより示される。
【0132】
要するに、細胞培養上清中に通常存在する伝導値において、イオン交換クロマトグラフィーに特に適する分離材料は、スルホン酸もしくはカルボン酸の形態で負電荷を有し、さらにエステルまたはアミド基および合計で最大8個のC原子のアルキルおよび/またはアルキレン基を含むが、アリール基を含まない、またはスルホン酸もしくはカルボン酸の形態で負電荷を有し、さらにアルキルおよび/またはアルキレン基を含むが、アリール基を含まないモノマー単位から少なくともなり、かつ、エステル基および、疎水性基として4〜18個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキルまたはアリール基を有する、および少なくとも1個のアミド基および、疎水性基として合計6〜18個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキルまたはアリール基を含む少なくとも1種のモノマー単位を含むグラフトコポリマーを含むことを、述べることができる。負電荷を有するモノマー単位対疎水性基を含むモノマー単位の比率は、好ましくは99:1〜10:90の範囲にある。
【0133】
グラフトポリマーの疎水性部分により、結合がより高い塩濃度にて起こるのが可能になる。その理由は、純粋なカチオン交換体中の電荷が存在する塩イオンにより遮蔽され、したがってイオン性相互作用がタンパク質を分離材料に結合させるには過度に弱いからである。タンパク質との追加の疎水性−疎水性相互作用により、十分強力な結合が可能になる。
【0134】
この疎水性相互作用は、おそらくまた、グラフトポリマー鎖内またはこの間で発生し、これらの鎖の可逆的結合をもたらす(C. Tribet, Biochimie, 1998, 80, 461-473)。特徴づけのために、多孔質支持体上での2段階合成において調製された疎水的に修飾されたグラフトコポリマーおよび、Fractogel(登録商標)TSK HW65 Mに結合したこのポリ(AMPS、AA)前駆体を、したがって、逆サイズ排除クロマトグラフィー(図2)により分析した。2種のゲルが同一のグラフト密度を有するが、疎水性グラフトコポリマーの孔系が、特に1Mの塩化ナトリウムの存在下で、非結合条件下でよりアクセス可能であることが、見出された。したがって、より疎水性のグラフトポリマーが、高い塩の条件下で多孔質支持体の表面上により密に存在する。それにもかかわらず、より疎水性のグラフトポリマーを有する孔系はまた、塩化ナトリウム濃度を低下させることで、より小さい分配係数KDを示す。したがって、この表面構造は、1Mより低い塩化ナトリウム濃度にて大幅に膨潤し、水性緩衝液中で溶解する成分に極めて容易にアクセス可能である。
【0135】
本発明の材料を、帯電したバイオポリマーを分離するために用いることができる。これらを、好ましくは、抗体部分を含む抗体断片または融合タンパク質からタンパク質、特にポリクローナルまたはモノクローナルであってもよい抗体を分離するために用いる。しかし、他のバイオポリマー、例えばポリペプチド、核酸、ウイルス、真核細胞または原核細胞もまた、分離することができる。当該分離により、バイオポリマーが精製、単離または除去されるのが可能になる。
【0136】
目的分子を、試料からの少なくとも1種または2種以上の他の物質から分離し、ここで目的分子を含む試料を液体に溶解し、これを本発明の材料と接触させる。接触時間は、通常30秒〜24時間の範囲である。本発明の分離材料を含むクロマトグラフィーカラムに液体を通じることにより液体クロマトグラフィーの原理に従って行うことが有利である。
【0137】
液体は、単にこの重力によりカラム中を通過するか、またはポンプによりポンプ輸送され得る。代替法はバッチクロマトグラフィーであり、ここで、目的分子またはバイオポリマーが分離材料と結合することができる必要がある限りは、分離材料を、撹拌するかまたは振盪することにより液体と混合する。同様に、クロマトグラフィー流動床の原理に従って、例えば分離材料(ここで分離材料は、その高い密度および/または磁心のために所望の分離に適するように選択される)を含む懸濁液中に、分離すべき液体を導入することにより行うことが可能である。
【0138】
目的分子は、通常本発明の材料に結合する。その後、分離材料を、洗浄緩衝液で洗浄することができ、これは、好ましくは、目的分子を分離材料と接触させる液体と同一のイオン強度および同一のpHを有する。洗浄緩衝液は、分離材料に結合しないすべての物質を除去する。好適な緩衝液でのさらなる洗浄段階を、続けてもよい。結合した目的分子の脱着を、溶離液中のイオン強度を増加させることにより行う。溶離液中のpHを変化させることにより、好ましくはpHを上昇させることにより、吸着緩衝液のものとは異なる極性を有する溶離液を用いることにより、または所望により溶離液に溶解した界面活性剤を用いることにより、溶出は、好ましくはイオン強度の増加と組み合わせて同様に可能である。したがって、目的分子を、溶離液中に精製され、濃縮された形態で得ることができる。目的分子は、脱着後に通常70%〜99%、好ましくは85%〜99%、特に好ましくは90%〜99%の純度を有する。
【0139】
しかし、また目的分子が液体中に残留し、他の共存物質が分離材料に結合することも可能である。その後、目的分子を、スルーフロー(through-flow)でカラム溶出液を採集することにより、直接得る。特定のバイオポリマーを分離材料に結合させるために、条件、特にpHおよび/または伝導率をどのように適合させるか、または精製作業が目的分子を結合させないのが有利か否かは、当業者に知られている。
【0140】
バイオポリマーは主に、しかし排他的にではなく、液体源から発生するか、またはこの中、例えば体液、例えば血液、血清、唾液または尿、器官エキス、ミルク、乳清、植物エキス、細胞エキス、細胞培養物、発酵ブロス、動物性エキス中に存在する。抗体は、例えば齧歯動物からの哺乳類細胞またはハイブリドーマ細胞から発生していてもよい。
【0141】
本発明の分離材料を、バイオポリマーのための精製操作(work-up)プロセスの最初のクロマトグラフィー精製段階(捕獲段階)において用いることができる。固体含有粗溶液、例えば細胞懸濁液または細胞ホモジネートを、先ず捕獲段階の前に濾過して、粗い不純物、例えば細胞全体または細胞片を除去するのが、通常有利である。本発明の利点は、上記のように、細胞培養上清のイオン強度を適合させる必要がないことにある。バイオポリマーの所望の純度が未だ達成されていない場合には、通常、捕獲段階に、種々の残留不純物を除去することができる他の分離材料を用いたさらなるクロマトグラフィー精製段階を続ける。分離材料を用いる一連のものがプロセスの全体的な性能に影響を及ぼし得るため、特定の場合においては、第2の、第3の、または第4の精製段階まで本発明の分離材料を用いないのが、有利であり得る。
【0142】
本発明は同様に、液体中の1種または2種以上の他の物質からバイオポリマーを精製または分離するためのキットに関する。キットは、本発明の分離材料を充填したクロマトグラフィーカラム、1種または2種以上の緩衝液および書面での指示を有する添付文書からなる。液体を、緩衝液を用いて例えば5.5のpHに調整し、クロマトグラフィーカラムと接触させる。カラムを先ず、洗浄緩衝液で洗浄し、非結合性成分の1つの画分を得、次にバイオポリマーを、より高いイオン強度の溶離緩衝液を用いて、例えば1MのNaCl溶液を用いて脱着し、第2の画分中に得る。
【0143】
本記載により、当業者は、本発明を包括的に適用することが可能になる。したがって、さらなるコメントがなくても、当業者は上記の記載を最も広い範囲で利用することができると、推測される。
不明な点がある場合には、引用した刊行物および特許文献を参照しなければならないことは、言うまでもない。したがって、これらの文献は、本記載の開示内容の一部と見なされる。
【0144】
より良好に理解するために、また本発明を例示するために、本発明の保護の範囲にある例を、以下に示す。これらの例はまた、可能な変形態様を例示する作用を奏する。しかし、記載した本発明の原理の一般的な有効性のために、例は、本出願の保護の範囲をこれらのみに減少させるには適さない。
【0145】
さらに、示された百分率範囲からより高い値が生じ得る場合であっても、示す例において、およびまた記載の残部において、組成物中に存在する成分の量は、常に、全体の組成物を基準として、加えて100重量%または100mol%となるに過ぎず、これを超えることができないことは、当業者には言うまでもない。他に示さない限り、比率を除いて、%データは重量%またはmol%であり、これを、容積データにおいて示し、例えば溶離液は、これを調製するために、特定の容積比の溶媒を、混合物中で用いる。
例および記載ならびに特許請求の範囲中に示す温度は、常に℃である。
【0146】

例1:
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびベンジルアクリルアミドからグラフトコポリマーを調製するための手順(バッチ05SW136)
手順:
70gのフィルター湿潤Fractogel TSK HW65(M)(希薄な鉱酸および脱イオン水で洗浄した)、32.3gのベンジルアクリルアミドを250mlのジオキサンに溶解した溶液および41.5gの2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の溶液および25gの32%水酸化ナトリウム溶液を50mlの脱イオン水に溶解した溶液の懸濁液を、パドル攪拌機を有するガラス反応装置中で調製する。懸濁液を、脱イオン水で475mlとし、32%水酸化ナトリウム溶液または65%硝酸を用いてpH4に調整する。
【0147】
13.7gの硝酸アンモニウムセリウム(IV)および1.2gの65%硝酸を25mlの脱イオン水中に含む開始溶液を、最初に圧力を平衡にした滴下漏斗中に導入する。装置全体を、繰り返し(3回)排気および窒素での減圧により不活性にする。その後、装置中の懸濁液を、70℃に加温する。
【0148】
開始溶液を、70℃の内部温度にて撹拌しながら不活性化した懸濁液に加える。懸濁液を、窒素の穏やかな流れの下で70℃にて17時間撹拌する。次に、反応溶液を、吸引によりガラスフィルターフリット(P2)を通して濾過し、フリット上のゲルを、各々の場合において100mlの洗浄溶液で以下のように洗浄する:
8×0.5M硫酸、0.2Mアスコルビン酸
3×脱イオン水
2×1M水酸化ナトリウム溶液
4×脱イオン水
5×アセトン
5×水
【0149】
ゲルを、200mlの脱イオン水に懸濁させ、25%塩酸を用いてpH7に調整する。ゲルを、20%のエタノール中で室温にて保存する。
【0150】
例2:
アクリル酸およびベンジルアクリルアミドからグラフトコポリマーを調製するための手順(バッチ06SW297)
手順:
77.9gのフィルター湿潤Fractogel TSK HW65(M)(希薄な鉱酸および脱イオン水で洗浄した)、1.34gのベンジルアクリルアミドを14.5mlのジオキサンに溶解した溶液および18.0gのアクリル酸を50mlの脱イオン水に溶解した溶液の懸濁液を、パドル攪拌機を有するガラス反応装置中で調製する。懸濁液を、32%水酸化ナトリウム溶液を用いてpH4に調整し、脱イオン水で375mlとする。
【0151】
さらに6.72gのベンジルアクリルアミドを、圧力を平衡にした滴下漏斗中で73mlのジオキサンに溶解し、脱イオン水で100mlとする。
9.6gの硝酸アンモニウムセリウム(IV)および1.2gの65%硝酸を25mlの脱イオン水中に含む開始溶液を、最初に、圧力を平衡にした第2の滴下漏斗中に導入する。装置全体を、繰り返し(3回)排気および窒素での減圧により不活性にする。その後、装置中の懸濁液を、55℃に加温する。
【0152】
開始溶液を、55℃の内部温度にて撹拌しながら不活性化した懸濁液に加える。懸濁液を、窒素の穏やかな流れの下で55℃にて撹拌し、20mlのベンジルアクリルアミド/ジオキサン溶液を、30分おきに加える。全体で、開始溶液を加えた後に、反応懸濁液を、55℃にてさらに17時間撹拌する。次に、反応溶液を、吸引によりガラスフィルターフリット(P2)を通して濾過し、フリット上のゲルを、各々の場合において100mlの洗浄溶液で以下のように洗浄する:
2×0.5M硫酸/0.2Mアスコルビン酸−アセトン1:1(V/V)
8×0.5M硫酸、0.2Mアスコルビン酸
3×脱イオン水
2×1M水酸化ナトリウム溶液
【0153】
ゲルを、200mlの1M水酸化ナトリウム溶液に懸濁させ、20時間振盪し、フリット上で吸引により濾過した後に、ゲルを、各々の場合において100mlの洗浄溶液で以下のようにさらに洗浄する:
2×1M水酸化ナトリウム溶液
5×脱イオン水
ゲルを、200mlの脱イオン水に懸濁させ、25%塩酸を用いてpH7に調整する。ゲルを、20%エタノール中で室温にて保存する。
【0154】
例3:
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アクリル酸およびベンジルアクリルアミドからグラフトコポリマーを調製するための手順(バッチ06SW085)
手順:
69gのフィルター湿潤Fractogel TSK HW65(M)(希薄な鉱酸および脱イオン水で洗浄した)、32.2gのベンジルアクリルアミドを250mlのジオキサンに溶解した溶液、25.9gの2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ならびに15.6gの32%水酸化ナトリウム溶液を50mlの脱イオン水に溶解した溶液および9.0gのアクリル酸の懸濁液を、パドル攪拌機を有するガラス反応装置中で調製する。懸濁液を、脱イオン水で475mlとし、32%水酸化ナトリウム溶液または65%硝酸を用いてpH4に調整する。
【0155】
13.7gの硝酸アンモニウムセリウム(IV)および1.2gの65%硝酸を25mlの脱イオン水中に含む開始溶液を、最初に、圧力を平衡にした滴下漏斗中に導入する。装置全体を、繰り返し(3回)排気および窒素での減圧により不活性にする。その後、装置中の懸濁液を、55℃に加温する。
【0156】
開始溶液を、55℃の内部温度にて撹拌しながら不活性化した懸濁液に加える。懸濁液を、窒素の穏やかな流れの下で55℃にて17時間撹拌する。次に、反応溶液を、吸引によりガラスフィルターフリット(P2)を通して濾過し、フリット上のゲルを、各々の場合において100mlの洗浄溶液で以下のように洗浄する:
8×0.5M硫酸、0.2Mアスコルビン酸
3×脱イオン水
2×1M水酸化ナトリウム溶液
【0157】
ゲルを、200mlの1M水酸化ナトリウム溶液に懸濁させ、20時間振盪し、フリット上で吸引により濾過した後に、ゲルを、各々の場合において100mlの洗浄溶液で以下のようにさらに洗浄する:
2×1M水酸化ナトリウム溶液
4×脱イオン水
5×0.5M硫酸、0.2Mアスコルビン酸
5×脱イオン水
ゲルを、200mlの脱イオン水に懸濁させ、25%塩酸を用いてpH 7に調整する。ゲルを、20%エタノール中で室温にて保存する。
【0158】
例4:
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびアクリル酸からグラフトコポリマーを調製するための手順(バッチ05PP131)
手順:
140gのフィルター湿潤Fractogel TSK HW65(M)(希薄な鉱酸および脱イオン水で洗浄した)および33.6gの32%水酸化ナトリウム溶液を120mlの脱イオン水に溶解した溶液、46.6gの2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(氷冷しながら添加)および16.2gのアクリル酸の懸濁液を、パドル攪拌機を有するガラス反応装置中で調製する。懸濁液を、脱イオン水で400mlとし、65%硝酸を用いてpH3に調整する。
【0159】
2.8gの硝酸アンモニウムセリウム(IV)および0.7gの65%硝酸を50mlの脱イオン水中に含む開始溶液を、最初に、圧力を平衡にした滴下漏斗中に導入する。装置全体を、繰り返し(3回)排気および窒素での減圧により不活性にする。その後、装置中の懸濁液を、42℃に加温する。
【0160】
開始溶液を、42℃の内部温度にて撹拌しながら不活性化した懸濁液に加える。懸濁液を、窒素の穏やかな流れの下で42℃にて5時間、その後室温にてさらに17時間撹拌する。次に、反応溶液を、吸引によりガラスフィルターフリット(P2)を通して濾過し、フリット上のゲルを、各々の場合において200mlの洗浄溶液で以下のように洗浄する:
7×脱イオン水
8×1M硫酸、0.2Mアスコルビン酸
5×脱イオン水
3×1M水酸化ナトリウム溶液
3×脱イオン水
1×50mMリン酸塩緩衝液、pH7.0
2×脱イオン水
2×20%エタノール/150mM塩化ナトリウム
ゲルを、20%エタノール/150mM塩化ナトリウム溶液中で室温にて保存する。
【0161】
例5:
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびアクリル酸からグラフトコポリマーを調製するための手順(バッチ06PP066)
手順:
210gのフィルター湿潤Fractogel TSK HW65(M)(希薄な鉱酸および脱イオン水で洗浄した)および56.1gの32%水酸化ナトリウム溶液を150mlの脱イオン水に溶解した溶液、77.7gの2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(氷冷しながら添加)および27.0gのアクリル酸の懸濁液を、パドル攪拌機を有するガラス反応装置中で調製する。懸濁液を、脱イオン水で660mlとし、65%硝酸を用いてpH3に調整する。
【0162】
20.7gの硝酸アンモニウムセリウム(IV)および7.2gの65%硝酸を90mlの脱イオン水中に含む開始溶液を、最初に、圧力を平衡にした滴下漏斗中に導入する。装置全体を、繰り返し(3回)排気および窒素での減圧により不活性にする。その後、装置中の懸濁液を、55℃に加温する。
【0163】
開始溶液を、55℃の内部温度にて撹拌しながら不活性化した懸濁液に加える。懸濁液を、窒素の穏やかな流れの下で55℃にて3時間撹拌する。次に、反応溶液を、吸引によりガラスフィルターフリット(P2)を通して濾過し、フリット上のゲルを、各々の場合において300mlの洗浄溶液で以下のように洗浄する:
7×脱イオン水
8×0.5M硫酸、0.2Mアスコルビン酸
5×脱イオン水
2×1M水酸化ナトリウム溶液
【0164】
ゲルを、600mlの1M水酸化ナトリウム溶液に懸濁させ、20時間振盪し、フリット上で吸引により濾過した後に、ゲルを、各々の場合において100mlの洗浄溶液で以下のようにさらに洗浄する:
2×1M水酸化ナトリウム溶液
3×脱イオン水
1×50mMリン酸緩衝液、pH7.0
2×脱イオン水
2×20%エタノール/150mM塩化ナトリウム
ゲルを、20%エタノール/150mM塩化ナトリウム溶液中で室温にて保存する。
【0165】
例6:
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびアクリル酸からグラフトコポリマーを調製するための手順(バッチ06PP189)
手順。2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびアクリル酸からのグラフトコポリマー(バッチ06PP066)の調製についての手順を参照。2×0.5M硫酸、0.2Mアスコルビン酸を用いたさらなる洗浄段階のみを、加えた。
【0166】
例7:
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびアクリル酸を含むグラフトコポリマーにベンジルアミンをカップリングさせるための手順(バッチ06PP262)
手順:
Fractogel上の2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびアクリル酸を含む40mlの沈降したグラフトコポリマー(バッチ06PP189)を、各々の回40mlの水で8回洗浄し、ガラスフィルターフリット上で吸引により濾過する。
【0167】
フィルター湿潤ゲルを、12.8gのベンジルアミンを32mlの脱イオン水に溶解した溶液中に懸濁させ、パドル攪拌機を有するガラス装置中で32%塩酸を用いてpH4.7に調整する。pHをチェックし、必要に応じて調整した後に、0.8gのN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)を加える。
懸濁液を攪拌し、この間pHを、6%水酸化ナトリウム溶液を加えることによりpH4.7に保持する。3時間後、さらに0.8gのEDCを加える。pHを、6%水酸化ナトリウム溶液を加えることによりpH4.7にさらに保持し、最低1時間モニタリングする。
【0168】
反応溶液を17時間攪拌した際に、これを、ガラスフィルターフリット(P2)を通して吸引しながら濾過し、フリット上のゲルを、各々の場合において40mlの洗浄溶液で以下のように洗浄する:
10×脱イオン水
3×1M塩化ナトリウム溶液
5×50mMリン酸緩衝液、pH7.0
2×20%エタノール/150mM塩化ナトリウム溶液
ゲルを、20%エタノール/150mM塩化ナトリウム溶液中で室温にて保存する。
【0169】
例8:
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびアクリル酸を含むグラフトコポリマーにベンジルアミンをカップリングするための手順(バッチ06PP345)
手順。2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびアクリル酸を含むグラフトコポリマーにベンジルアミンをカップリングさせるための手順(バッチ06PP262)を参照。0.6gのN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)を、各々の場合において加える。
【0170】
例9:
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびアクリル酸を含むグラフトコポリマーにベンジルアミンをカップリングするための手順(バッチ06PP346)
手順。2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびアクリル酸を含むグラフトコポリマーにベンジルアミンをカップリングさせるための手順(バッチ06PP262)を参照。1.0gのN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)を、各々の場合において加える。
【0171】
例10:
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸および4−アクリルアミド酪酸からグラフトコポリマーを調製するための手順(バッチ06SW055)
手順:
70gのフィルター湿潤Fractogel TSK HW65(M)(希薄な鉱酸および脱イオン水で洗浄した)および16.8gの32%水酸化ナトリウム溶液を75mlの脱イオン水に溶解した溶液、13.3gの2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(氷冷しながら添加)および17.7gの4−アクリルアミド酪酸の懸濁液を、パドル攪拌機を有するガラス反応装置中で調製する。懸濁液を、脱イオン水で200mlとし、65%硝酸を用いてpH3に調整する。
【0172】
6.2gの硝酸アンモニウムセリウム(IV)および0.4gの65%硝酸を25mlの脱イオン水中に含む開始溶液を、最初に、圧力を平衡にした滴下漏斗中に導入する。装置全体を、繰り返し(3回)排気および窒素での減圧により不活性にする。その後、装置中の懸濁液を、55℃に加温する。
【0173】
開始溶液を、55℃の内部温度にて撹拌しながら不活性化した懸濁液に加える。懸濁液を、窒素の穏やかな流れの下で55℃にて3時間撹拌する。次に、反応溶液を、吸引によりガラスフィルターフリット(P2)を通して濾過し、フリット上のゲルを、各々の場合において100mlの洗浄溶液で以下のように洗浄する:
5×0.5M硫酸、0.2Mアスコルビン酸
3×脱イオン水
4×1M水酸化ナトリウム溶液
5×脱イオン水
1×50mMリン酸緩衝液、pH7.0
3×脱イオン水
2×20%エタノール/150mM塩化ナトリウム
ゲルを、20%エタノール/150mM塩化ナトリウム溶液中で室温にて保存する。
【0174】
例11:
4−アクリルアミド酪酸からグラフトポリマーを調製するための手順(バッチ05PP116)
手順:
25.0gの32%水酸化ナトリウム溶液を、20.6gの4−アミノ酪酸を200mlの脱イオン水に溶解した溶液に、0〜5℃にて、パドル攪拌機を有するガラス反応装置中で加える。18.2gの塩化アクリロイルおよび25.0gの32%水酸化ナトリウム溶液を、同時に2つの滴下漏斗から激しく攪拌しながら0〜5℃にて加える。次に、混合物を、室温にてさらに45分間攪拌する。モノマー溶液を、65%硝酸を用いてpH2に酸性化する。
【0175】
70gのフィルター湿潤Fractogel TSK HW65(M)(希薄な鉱酸および脱イオン水で洗浄した)を、モノマー溶液に懸濁させる。混合物を、脱イオン水で450mlとし、65%硝酸を用いてpH2に調整する。
【0176】
2.7gの硝酸アンモニウムセリウム(IV)および1.0gの65%硝酸を50mlの脱イオン水中に含む開始溶液を、最初に、圧力を平衡にした滴下漏斗中に導入する。装置全体を、繰り返し(3回)排気および窒素での減圧により不活性にする。その後、装置中の懸濁液を、42℃に加温する。
【0177】
開始溶液を、42℃の内部温度にて撹拌しながら不活性化した懸濁液に加える。懸濁液を、窒素の穏やかな流れの下で42℃にて5時間、およびその後室温にてさらに17時間撹拌する。次に、反応溶液を、吸引によりガラスフィルターフリット(P2)を通して濾過し、フリット上のゲルを、各々の場合において200mlの洗浄溶液で以下のように洗浄する:
5×脱イオン水
8×0.5M硫酸、0.2Mアスコルビン酸
3×脱イオン水
2×1M水酸化ナトリウム溶液
2×脱イオン水
ゲルを、200mlの脱イオン水に懸濁させ、25%塩酸を用いてpH7に調整する。ゲルを、20%エタノール中で室温にて保存する。
【0178】
例12:
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびアクリル酸を含むグラフトコポリマーにアミン類をカップリングさせるための手順
手順:
Fractogel上の2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびアクリル酸を含む20mlの沈降したグラフトコポリマー(バッチ06PP066または05PP131)を、各々の回20mlの水で8回洗浄し、ガラスフィルターフリット上で吸引により濾過する。
【0179】
アミン溶液:5〜60mmolのアミンを、20mlの脱イオン水(またはDMF/脱イオン水3:1)に溶解し、32%塩酸を用いてpH4.7に調整する(表2)。
EDC溶液:2.4gのN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)を、4.8mlの脱イオン水に溶解する。
フィルター湿潤ゲルを、密封可能なビーカー中でアミン溶液に懸濁させる。次に、1.2mlのEDC溶液を加え、懸濁液を室温にて振盪する。3時間後、さらに1.2mlのEDC溶液を加え、混合物をさらに17時間振盪する。
【0180】
反応溶液を、吸引によりガラスフィルターフリットを通して濾過し、フリット上のゲルを、各々の場合において20mlの洗浄溶液で以下のように洗浄する:
(所望により5×DMF)
5×脱イオン水
3×1M水酸化ナトリウム溶液/エタノール2:8(V/V)
【0181】
ゲルを、20mlの1Mの水酸化ナトリウム溶液/エタノール2:8に懸濁させ、20時間振盪し、フリット上で吸引により濾過した後に、ゲルを、さらに各々の場合において20mlの洗浄溶液で以下のように洗浄する:
2×1M水酸化ナトリウム溶液/エタノール2:8
3×脱イオン水
1×50mMリン酸緩衝液、pH7.0
2×脱イオン水
2×20%エタノール/150mM塩化ナトリウム溶液
ゲルを、20%エタノール/150mM塩化ナトリウム溶液中で室温にて保存する。
【0182】
例13:
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸および4−アクリルアミド酪酸を含むグラフトコポリマーにベンジルアミンをカップリングさせるための手順(バッチ06SW058)
手順:
Fractogel上の2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸および4−アクリルアミド酪酸を含む20mlの沈降したグラフトコポリマー(バッチ06SW055)を、各々の回20mlの水で5回、および各々の回20mlの0.1Mの2−モルホリノエタンスルホン酸溶液(MES緩衝液)、pH4.7で5回洗浄し、ガラスフィルターフリット上で吸引により濾過する。
【0183】
6.4gのベンジルアミンを、20mlの0.1MのMES緩衝液に溶解し、32%塩酸を用いてpH4.7に調整する。
フィルター湿潤ゲルを、密封可能なビーカー中でベンジルアミン溶液に懸濁させる。0.4gのN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)を加え、懸濁液を、室温にて振盪する。3時間後、さらに0.4gのEDCを加え、混合物をさらに17時間振盪する。
【0184】
反応溶液を、吸引によりガラスフィルターフリットを通して濾過し、フリット上のゲルを、各々の場合において20mlの洗浄溶液で以下のように洗浄する:
10×脱イオン水
3×1M塩化ナトリウム溶液
5×50mMリン酸緩衝液、pH7.0
2×脱イオン水
2×20%エタノール/150mM塩化ナトリウム溶液
ゲルを、20%エタノール/150mM塩化ナトリウム溶液中で室温にて保存する。
【0185】
ポリクローナルヒトIgG(Gammanorm)の静的結合能は、20mMのリン酸塩、75mMの塩化ナトリウム、pH6.5中で30.9mgのIgG/mlであり、20mMのリン酸塩、150mMの塩化ナトリウム、pH6.5中で9.1mgのIgG/mlである。結合能を決定する方法を、例15に記載する。
【0186】
例14:
4−アクリルアミド酪酸を含むグラフトポリマーにベンジルアミンをカップリングさせるための手順(バッチ05PP117/05PP118)
手順:
Fractogel上の4−アクリルアミド酪酸を含む20mlの沈降したグラフトポリマー(バッチ05PP116)を、各々の回20mlの水で5回、および各々の回20mlの0.1M 3−モルホリノプロパンスルホン酸溶液(MPS緩衝液)、pH4.7で5回洗浄し、ガラスフィルターフリット上で吸引により濾過する。
【0187】
変形態様A:6.4gのベンジルアミンを、20mlの0.1MのMPS緩衝液に溶解し、32%塩酸を用いてpH4.7に調整する。
フィルター湿潤ゲルを、密封可能なビーカー中でアミン溶液に懸濁させる。0.4gのN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)を加え、懸濁液を、室温にて振盪する。3時間後、さらに0.4gのEDCを加え、混合物をさらに17時間振盪する。
【0188】
変形態様B:1.1gのベンジルアミンを、20mlの0.1MのMPS緩衝液に溶解し、32%塩酸を用いてpH4.7に調整する。
フィルター湿潤ゲルを、密封可能なビーカー中でアミン溶液に懸濁させる。0.07gのN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)を加え、懸濁液を、室温にて振盪する。3時間後、さらに0.07gのEDCを加え、混合物をさらに17時間振盪する。
【0189】
変形態様AまたはBの反応溶液を、吸引によりガラスフィルターフリットを通して濾過し、フリット上のゲルを、各々の場合において20mlの洗浄溶液で以下のように洗浄する:
10×脱イオン水
3×1M塩化ナトリウム溶液
5×50mMリン酸緩衝液、pH7.0
ゲルを、20%エタノール/150mM塩化ナトリウム溶液中に室温にて保存する。
【0190】
20mMのリン酸塩、75mMの塩化ナトリウム、pH6.5中のポリクローナルヒトIgG(Gammanorm)の静的結合能は、変形態様Aのゲルについて7.6mgのIgG/mlであり、変形態様Bのゲルについて16.8mgのIgG/mlである。結合能を決定する方法を、例15に記載する。
【0191】
例15:
静的IgG結合能(マイクロタイタープレート形式)の決定
すべてのゲル懸濁液を、20%エタノール水を用いて、50%のゲル沈降容積に調整した。フィルタープレートを、結合緩衝液で、および各々の場合において20μlの均質化したゲル懸濁液で満たす。次に、フィルタープレートを、真空ステーション上で吸引により濾過する。
深いウェルのプレートを、結合緩衝液で満たし、IgG原液(ポリクローナルヒトIgG、Gammanorm, Octapharma)を加え、成分を混合する。
【0192】
200μlのIgG溶液を、フィルタープレート中のゲルに加え、プレートを15分間シェーカー上で振盪する。フィルタープレートを、真空ステーション上で吸引により濾過する。これを、各々の回100μlの結合緩衝液で2回洗浄し、吸引により濾過する。各々の場合において、次に、200μlの溶離緩衝液(20mMのリン酸塩、1Mの塩化ナトリウム、pH7)を、フィルタープレートに加え、これを5分間振盪する。上清を、真空ステーション上でUVプレート中に吸引させ、プレートを、280nmにて光度計において測定する。
【0193】
溶出液から計算したゲル沈降物容積(IgG SBC)1mlあたりのIgG結合能を、表2に列挙する。用いる結合緩衝液は、20mMのリン酸塩、75mMの塩化ナトリウム、pH6.5および20mMのリン酸塩、150mMの塩化ナトリウム、pH6.5であった。
例12からの分離材料の結合能を、表2に示す。
【0194】
例16:
グラフトポリマーの化学的組成の決定
官能基をポリアクリルアミド鎖であるグラフトポリマーから、酸性加水分解により切断して除去することができる。官能基は、アミンとして遊離し、これを、オルトフタルジアルデヒドおよびメルカプトエタノールにより誘導体化した後に、HPLCにより定量的に分析することができる。校正のために、市販のアミンを用いるか、またはモノマーを合成において用い、これを次に、グラフトポリマーと同様に加水分解しなければならない。
【0195】
1000μlの5M塩酸を、10mgの乾燥ゲルに加え、混合物を、超音波浴中で処理し、その後1mlの圧力容器中で125℃にて10時間加熱する。
室温に冷却した後、圧力容器を開放し、約200μlの上清をピペットで除去し、5分間遠心分離する(8000rpm)。
【0196】
40μlの透明な上清を、176μlの1M水酸化ナトリウム溶液を用いて中和し、325μlの0.5Mホウ酸塩緩衝液、pH9.5および119μlのアセトニトリル/水8:2(V/V)を加え、成分を混合する。100mgのオルトフタルアルデヒド、9mlのメタノール、1mlの0.5Mホウ酸塩緩衝液、pH9.5および100μlのメルカプトエタノールから調製した100μlのOPA試薬を加え、混合物を激しく振盪する。2分間の反応時間の後、試料を、HPLC(UV検出330nm)により分析する。
【0197】
帯電した基の数を、滴定により決定する。このために、ゲルを、0.5M塩酸と共に振盪し、0.001M塩酸で洗浄する。このようにして帯電させたゲルを、0.1M水酸化ナトリウム溶液で滴定する。その後、ゲルを洗浄し、乾燥する。当量点を、第1の誘導体の生成により決定する。
結果を表3に列挙する。
【0198】
例17:
動的IgG結合能の決定
カラムに、1mlの内容物を充填した。19mmの床の深さおよび20%の圧縮を有するProteo-Cartカラムならびに13mmの床の深さおよび10%の圧縮を有するSuperformanceカラム。当該カラムに、緩衝液A(ポリクローナルヒトIgG、Gammanorm, Octapharmaから調製した)中で、1g/lの内容物を有するIgG溶液を10%破過まで流した。ここでの流速を、カラム中の接触時間が4分であるように選択した。緩衝液Aで洗浄した後に、カラムを緩衝液Bで溶出させた。
【0199】
緩衝液A:25mMのリン酸塩、150mMの塩化ナトリウム、pH6.5
緩衝液B:25mMのリン酸塩、1Mの塩化ナトリウム、pH6.5
または
緩衝液A’:25mMのリン酸塩、150mMの塩化ナトリウム、pH5.5
緩衝液B’:25mMのリン酸塩、1Mの塩化ナトリウム、pH5.5
または
緩衝液A’’:25mMのリン酸塩、150mMの塩化ナトリウム、pH5.5
緩衝液B’’:50mMのTRIS緩衝液、2Mの塩化ナトリウム、pH9.0
結果を表3に列挙する。
【0200】
例18:
モノクローナル抗体を用いた結合実験
1mlの容量のProteo-Cartカラム(Merck KgaA)に、例7に従って調製した分離材料(06PP343)を充填し(17%圧縮)、25mMのリン酸塩、150mMの塩化ナトリウム、pH5.5で平衡にする(約12mS/cm)。20mgのキメラモノクローナル抗体(Clinical Cancer Research 1995, 1, 1311- 1318に記載されている、25mMのリン酸塩、150mMの塩化ナトリウム、pH5.5に溶解した)を含む試料を、0.2ml/分の流速にてカラムに適用する。溶出を、25mMのリン酸塩、1Mの塩化ナトリウムを含む溶液で、pH5.5にて行う。その後の溶出後の抗体の回収は、行った実験において98%であった。
クロマトグラムを図3に示す。
【0201】
例19:
サイズ排除クロマトグラフィー
これらの粘性の範囲により図2に図示する、種々の分子量を有するプルランの分配係数Kdを、3種の塩濃度(0、0.1および1.0Mの塩化ナトリウム)にて、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびアクリル酸を含むグラフトポリマーについて、ベンジルアミンのカップリングの前(Fractogel SO3/COO)および後(Fractogel SO3/COO/ベンジル)に、無勾配実験(isocratic experiment)により、実験的に決定した。
【0202】
【表2】

【0203】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にコポリマーが共有結合した、ヒドロキシル含有ベース支持体をベースとするイオン交換クロマトグラフィーのための分離材料であって、
a)ベース支持体が、脂肪族ヒドロキシル基を含み、
b)共有結合したコポリマーが、末端モノマー単位を介して支持体に結合しており、
c)コポリマーが、少なくとも2種の異なるモノマー単位を含み、
d)モノマー単位が、線状に結合しており、
e)コポリマーが、
スルホン酸またはカルボン酸の形態で負電荷を有し、さらにエステルまたはアミド基および合計で最大8個のC原子のアルキルおよび/またはアルキレン基を含むがアリール基を含まない、あるいは
スルホン酸またはカルボン酸の形態で負電荷を有し、さらにアルキルおよび/またはアルキレン基を含むがアリール基を含まない
少なくとも1種のモノマー単位を含み、
f)コポリマーが、疎水性基として、4〜18個のC原子を有する直鎖状もしくは分枝状アルキルまたは対応するアリール基を有し、かつエステルまたはアミド基を含む、少なくとも1種のモノマー単位を含み、また
g)負電荷を有するモノマー単位対疎水性基を含むモノマー単位の比率が、99:1〜10:90の範囲である
ことを特徴とする、前記分離材料。
【請求項2】
a)ベース支持体が、脂肪族ヒドロキシル基を含み、
b)共有結合したコポリマーが、末端モノマー単位を介して支持体に結合しており、
c)コポリマーが、少なくとも2種の異なるモノマー単位を含み、
d)モノマー単位が、線状に結合しており、
e)コポリマーが、一般式(1)
【化1】

式中、
、RおよびYは、互いに独立してHもしくはCHを示し、
は、R−SOMもしくはR−COOMを示し、
は、2〜4個のC原子を有する直鎖状もしくは分枝状アルキレンを示し、
Mは、H、Na、KもしくはNHを示す、
あるいは、一般式(2)
【化2】

式中、
およびRは、互いに独立してHもしくはCHを示し、または
は、Z=MかつR=Hである場合にはCOOMを示し、
Zは、M、R−COOMもしくはR−SOMを示し、ここで
は、2〜4個のC原子を有する直鎖状もしくは分枝状アルキレンを示し、
Mは、H、Na、KもしくはNHを示す、
で表される、負の電荷を有する少なくとも1種のモノマー単位、あるいは、
各々の場合において少なくとも1種の一般式(1)で表されるモノマー単位および一般式(2)で表されるモノマー単位を含み、および
f)コポリマーが、疎水性特性をコポリマーに付与し、一般式(1)、
式中、
は、HまたはCOOMを示し、
は、HまたはCHを示し、
YおよびRは、18個までのC原子を有する直鎖状または分枝状アルキルを示し、ここでYおよびRは一緒に、少なくとも6個のC原子を有し、
あるいは、
Yは、Hを示し、
および
は、6〜18個のC原子を有する直鎖状もしくは分枝状アルキルを示し、
あるいは、
Yは、Hを示し、
および
は、アリールまたはR−アリールを示し、
あるいは、
Yは、HまたはCHを示し、
および
は、R−CONHXを示し、
Xは、6〜18個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、アリールまたはR−アリールを示し
は、2〜4個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキレンを示し
は、1〜4個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキレンを示し、ここでメチレン基は、Oにより置き換えられていてもよく、COOMにより置換されていてもよく、
および
Mは、H、Na、KまたはNHを示す、
で表される、疎水性基を含む少なくとも1種のモノマー単位、あるいは、一般式(2)、
式中、
は、Hを示し、
は、HまたはCHを示し、
Zは、4〜18個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、アリール、R−アリールまたはR−CONHXを示し、
Xは、6〜8個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、アリール、R−アリールを示し、
および
は、1〜4個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキレンを示す、
で表される対応するモノマー単位を含み、
g)負の電荷を有するモノマー単位対疎水性基を含むモノマー単位のモル比が、99:1〜10:90の範囲である
ことを特徴とする、請求項1に記載の分離材料。
【請求項3】
c)コポリマーが、少なくとも2種の異なるモノマー単位を含み、
e)コポリマーが、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミドエタンスルホン酸、カルボキシメチルアクリルアミド、カルボキシエチルアクリルアミド、カルボキシプロピルアクリルアミド、カルボキシメチルメタクリルアミド、カルボキシエチルメタクリルアミド、カルボキシプロピルメタクリルアミド、マレイン酸、アクリル酸およびメタクリル酸系からの、負の電荷を有する少なくとも1種のモノマー単位を含み、
f)コポリマーが、一般式(1)
【化3】

式中、
は、Hを示し、
は、HまたはCHを示し、
Yは、Hを示し、
および
は、アリールまたはR−アリールを示し、
あるいは、
Yは、HまたはCHを示し、
および
は、R−CONHXを示し、ここで
Xは、アリールまたはR−アリールを示し、
は、メチレン、エチレン、プロピレンを示し、
は、1〜4個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキレンを示し、ここでメチレン基は、Oにより置き換えられてもよく、COOMにより置換されてもよく、
および
Mは、H、Na、KまたはNHを示す、
で表される、疎水性基を含む少なくとも1種のモノマー単位を含む
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の分離材料。
【請求項4】
c)コポリマーが、少なくとも2種の異なるモノマー単位を含み、
e)コポリマーが、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミドエタンスルホン酸、カルボキシメチルアクリルアミド、カルボキシエチルアクリルアミド、カルボキシプロピルアクリルアミド、カルボキシメチルメタクリルアミド、カルボキシエチルメタクリルアミド、カルボキシプロピルメタクリルアミド、マレイン酸、アクリル酸およびメタクリル酸系からの、負の電荷を有する少なくとも1種のモノマー単位を含み、
f)コポリマーが、一般式(1)
【化4】

式中、
は、Hを示し、
は、HまたはCHを示し、
Yは、Hを示し、
および
は、フェニル、ベンジル、フェニルエチルまたはフェノキシエチルを示し、
あるいは、
Yは、HまたはCHを示し、
および
は、R−CONHXを示し、ここで
Xは、フェニル、ベンジルまたはフェニルエチルを示し、
また
は、メチレン、エチレン、プロピレン、アクリロイルフェニルグリシンまたはアクリロイルフェニルアラニンを示す、
で表される、疎水性基を含む少なくとも1種のモノマー単位を含む
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の分離材料。
【請求項5】
a)コポリマーが、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸または/および2−アクリルアミドエタンスルホン酸を、負電荷を有するモノマー単位として含み、
b)負電荷を有するモノマー単位対疎水性のフェニル、ベンジルまたはフェニルエチル基を含むモノマー単位の比率が、70:30〜30:70の範囲である
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の分離材料。
【請求項6】
a)コポリマーが、アクリル酸または/およびメタクリル酸を、負電荷を有するモノマー単位として含み、
b)負電荷を有するモノマー単位対疎水性のフェニル、ベンジルまたはフェニルエチル基を含むモノマー単位のモル比が、95:5〜70:30の範囲であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の分離材料。
【請求項7】
a)コポリマーが、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸および2−アクリルアミドエタンスルホン酸系からのモノマーを、負電荷を有するモノマー単位として含み、
b)アクリル酸およびメタクリル酸系からのモノマー、および
b)負電荷を有するモノマー単位対疎水性のフェニル、ベンジルまたはフェニルエチル基を含むモノマー単位のモル比が、95:5〜30:70の範囲である、ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の分離材料。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の分離材料の製造方法であって、負電荷を有する官能基を含む少なくとも1種のモノマー単位を、疎水性基を含む少なくとも1種のモノマー単位と、および任意に親水性特性を有する中性のモノマーと、ヒドロキシル含有無機、有機または複合支持材料上に、1段階または多段階反応においてグラフト重合させることを特徴とする、前記方法。
【請求項9】
負電荷を有する官能基を含む少なくとも1種のモノマー単位を、疎水性基を含む少なくとも1種のモノマー単位と共に、および任意に親水性特性を有する中性のモノマーと共に、アセトン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、テトラヒドロフラン系からの共溶媒を加えて、セリウム(IV)イオンの存在下で、希酸に溶解し、ヒドロキシル含有ベース支持体上にグラフト重合させることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
a)一般式(1)
【化5】

式中、
、RおよびYは、互いに独立して、HまたはCHを示し、
は、R−COOMを示し、
は、2〜4個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキレンを示し、
Mは、H、Na、KまたはNHを示す、
で表される、カルボキシル基を含む少なくとも1種のモノマー
および/または一般式(2)
【化6】

式中、
およびRは、互いに独立して、HまたはCHを示し、あるいは、
は、Z=MかつR=Hである場合にはCOOMを示し、
Zは、MまたはR−COOMのいずれかを示し、ここで
は、2〜4個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキレンを示し、
および
Mは、H、Na、KまたはNHを示す、
で表される、カルボキシル基を含むモノマーを、任意に水溶性モノマーと共に、ヒドロキシル含有無機、有機または複合支持材料上にグラフト重合させ、
b)その後グラフト重合させたカルボキシル基のいくつかを、アミンをカップリングさせることによりアミド基に変換する
ことを特徴とする、請求項8または9に記載の分離材料の製造方法。
【請求項11】
a)一般式(1)
【化7】

式中、
、RおよびYは、互いに独立してHまたはCHを示し、
は、R−COOMを示し、
は、2〜4個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキレンを示し、および
Mは、H、Na、KまたはNHを示す、
および/または一般式(2)
【化8】

式中、
およびRは、互いに独立してHまたはCHを示し、あるいは、
は、Z=MかつR=Hである場合にはCOOMを示し、
Zは、MまたはR−COOMを示し、
は、2〜4個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキレンを示し、
また
Mは、H、Na、KまたはNHを示す、
で表される、カルボキシル基を含む少なくとも1種のモノマーを、
任意に他の水溶性モノマーと共に、負に帯電した基の比率がモノマーの合計量に対して1〜100mol%となるように水に溶解し、
b)得られた溶液を、沈降した支持材料1リットル当たり0.05〜100molの全モノマーを用いるように、支持材料と混合し、
c)鉱酸に溶解したセリウム(IV)塩を、得られた懸濁液に加え、0〜5の範囲のpHおよび0.00001〜5mol/l、好ましくは0.001〜0.1mol/lのセリウム(IV)濃度を生じさせ、また
d)反応混合物を、0.5〜72時間以内でグラフト重合させ、
e)アミンまたはアミン混合物を、グラフト重合したカルボキシル基のカップリングによる修飾のために用い、
f)用いるアミンの合計量は、支持体に結合するカルボキシル基に対して0.01〜100:1のモル比であり、これを支持体に結合する帯電した基に対して0.01:1〜20:1のモル比で用いるカップリング試薬の存在下でアミド基に変換し、
g)アニリン、ベンジルアミン、4−フルオロベンジルアミン、4−メトキシベンジルアミン、ナフチルメチルアミン、フェナシルアミン、フェニルエチルアミン、フェノキシエチルアミン、トリプタミンまたはチラミンの群からの、6〜18個のC原子を有するアルキル、アリールまたはアリールアルキルアミンを、遊離アミンとして、または塩酸塩として、カップリングのために用いる
ことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の分離材料を製造するための請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれかに記載の分離材料を含む、クロマトグラフィーカラム。
【請求項13】
請求項1〜7のいずれかに記載の分離材料のクロマトグラフィーカラムにおける使用。
【請求項14】
請求項1〜7のいずれかに記載の分離材料のバイオポリマーを液体媒体から除去するための使用。
【請求項15】
バイオポリマーを、1〜20mS/cmの電解伝導度および4より大きいpHを有する水性液体に溶解することを特徴とする、請求項13に記載の使用。
【請求項16】
イオン性基および任意に疎水性基との相互作用により分離材料に結合したバイオポリマーを、
溶液中の
a)イオン強度を増加させ、および/または
b)pHを変更し、
および/または
c)吸着緩衝液のものとは異なる極性を有する溶離液を用いることにより
脱着させることを特徴とする、請求項13〜15のいずれかに記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−528271(P2010−528271A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508731(P2010−508731)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【国際出願番号】PCT/EP2008/003990
【国際公開番号】WO2008/145270
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】