説明

カチオン重合性樹脂組成物、及びその硬化物

【課題】低粘度で加工しやすく、光を照射することにより、極めて速やかに硬化して、柔軟性、耐熱性、及び熱処理後の屈曲性に優れた硬化物を得ることができるカチオン重合性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明のカチオン重合性樹脂組成物は、オキセタン環含有ビニルエーテル化合物(A)及び/又は脂環エポキシ基含有ビニルエーテル化合物(B)と、オキセタン環又はエポキシ基を含有する特定の(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体で、さらに0℃において液体である、分子量500以上のオリゴマー又はポリマー(C)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導波路[光導波路、電気光混載配線基板(光電気複合配線基板)など]、光ファイバー、太陽電池用基材フィルム及び保護フィルム、フレキシブルディスプレイ用基材フィルム及び保護フィルム、有機EL用基材フィルム及び保護フィルム、透明封止剤、接着剤、インクジェット用インク、カラーフィルター、ナノインプリント、フレキシブル配線基板など、フレキシビリティーと耐熱性が求められる分野において有用なカチオン重合性樹脂組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子素子間や配線基板間の高速、高密度信号伝送において、従来の電気配線による伝送では、信号の相互干渉や周囲からの電磁ノイズが障壁となり、高速、高密度化の限界が見え始めている。これを打ち破るため、電子素子間や配線基板間を光で接続する技術、いわゆる光インタコネクションが検討されている。光路としては、素子や基板との結合の容易さ、及び取り扱いやすさの観点から、柔軟性を備えたフレキシブル光導波路が好適であると考えられる。
【0003】
従来、フレキシブル光導波路には、エポキシ系化合物が用いられている。しかしながら、エポキシ系化合物は、耐薬品性、密着性に優れた硬化物が得られるものの、重合反応性(硬化性)が低く、皮膚刺激性や毒性が高いため、取扱性や安全性に難点がある。また、ポリイミドもフレキシブル光導波路への使用が検討されているが、ポリイミドの調整は高温下で行う必要がある点、ポリマーとして扱う場合には溶剤が著しく限定される点、及び非常に高価である点などから、使用が制限される。
【0004】
一方、特開平10−25262号公報や特開2003−73321号公報には、重合性化合物としていくつかの脂環式ビニルエーテル化合物が開示されている。これらの化合物は皮膚刺激性が低いため安全性は改善されるものの、耐熱性や透明性が未だ不十分であり、改善が必要であった。
【0005】
特開平10−316670号公報には、分子内にオキセタン環を有するビニルエーテル化合物が開示されている。しかしながら、この化合物はグリコール鎖が長いと、硬化物は柔軟性を有するが耐熱性、透明性の点で問題があり、グリコール鎖が短いと、硬化物の柔軟性が不足するため、必ずしも満足できるものではない。特開平7−233112号公報や特開平11−171967号公報にはシクロヘキサン環とオキシラン環とが接合した脂環エポキシ基を分子内に含むビニルエーテル化合物が開示されている。しかしながら、この化合物は耐熱性、透明性、及び硬化速度の点では優れているが、柔軟性が乏しく、フレキシブル光導波路などの柔軟性を必要とする分野では適用が難しい。
【0006】
また、特開2008−266308号公報には、オキセタン環含有ビニルエーテル化合物が開示されているが、この化合物も耐熱性、透明性、及び硬化速度の点では優れているが、柔軟性が乏しく、フレキシブル光導波路などの柔軟性を必要とする分野では適用が難しい。更に、特開2006−232988号公報にはビニルエーテル構造を含む環状エーテル化合物に両末端に水酸基を有するエポキシ化ポリブタジエンを添加する例が示されているが、反応性基としてビニルエーテルのみを含有するため、同一分子内に反応性環状エーテルを含有するビニルエーテルに比べ耐熱性、透明性が劣る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−25262号公報
【特許文献2】特開2003−73321号公報
【特許文献3】特開平10−316670号公報
【特許文献4】特開平7−233112号公報
【特許文献5】特開平11−171967号公報
【特許文献6】特開2008−266308号公報
【特許文献7】特開2006−232988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、低粘度で加工しやすく、光を照射することにより、極めて速やかに硬化して、透明性、柔軟性、耐熱性、及び熱処理後の屈曲性に優れた硬化物を得ることができるカチオン重合性樹脂組成物及びその硬化物を提供することにある。本発明に係るカチオン重合性樹脂組成物は、導波路、光ファイバー、太陽電池用基材フィルム及び保護フィルム、フレキシブルディスプレイ用基材フィルム及び保護フィルム、有機EL用基材フィルム及び保護フィルム、透明封止剤、接着剤、インクジェット用インク、カラーフィルター、ナノインプリント、フレキシブル配線基板などの分野で有用である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記目的を解決するため鋭意検討した結果、カチオン重合性の環状エーテルを有するビニルエーテル化合物と、該ビニルエーテル化合物と反応し得る官能基を有する特定構造のオリゴマー又はポリマーとを含有するカチオン重合性樹脂組成物は、低粘度で作業性に優れ、硬化速度が極めて速く、しかも、硬化することにより、柔軟性、耐熱性、及び熱処理後の屈曲性に優れた硬化物を得ることができることを見出して本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、オキセタン環含有ビニルエーテル化合物(A)及び/又は脂環エポキシ基含有ビニルエーテル化合物(B)と、下記式(1a)〜(1f)
【化1】

(式中、Rxは水素原子又はメチル基を示し、R1〜R3はそれぞれ独立に炭素数1〜5の炭化水素基を示す。aは0〜5の整数であり、bは1又は2である)
で表わされる構造のうち少なくとも1つを含有し、さらに0℃において液体である、分子量500以上のオリゴマー又はポリマー(C)を含むカチオン重合性樹脂組成物を提供する。
【0011】
前記オリゴマー又はポリマー(C)は、式(1a)〜(1f)で表わされる構造のうち少なくとも1つと、さらに下記式(2)
【化2】

(式中、Rxは水素原子又はメチル基を示し、R4は置換基を有してもよい炭素数4以上の炭化水素基を示す)
で表わされる構造を含有していてもよい。
【0012】
また、前記カチオン重合性樹脂組成物は、分子内にビニルエーテル基及びビニル重合鎖を有さず、且つエポキシ基又はオキセタニル基から選択される官能基を1つだけ有する化合物(D)を含んでいてもよい。
【0013】
本発明は、また、前記のカチオン重合性樹脂組成物をカチオン重合させて得られる硬化物を提供する。
【0014】
前記硬化物はフィルム状であってもよく、ファイバー状であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のカチオン重合性樹脂組成物は、カチオン重合性の環状エーテル(具体的には、オキセタン環、又は脂環エポキシ基)とビニルエーテル基とを同一分子内に有する、オキセタン環含有ビニルエーテル化合物(A)及び/又は脂環エポキシ基含有ビニルエーテル化合物(B)と、該カチオン重合性の環状エーテルと反応性を有する官能基(具体的には、オキセタン基又はエポキシ基)を有する特定構造の化合物であって、0℃において液体で、且つ分子量が500以上のオリゴマー又はポリマー(C)を含むため、粘度が低く加工が容易であり、光照射により極めて速やかに硬化することができる。このため、硬化物の生産性を向上させる効果が奏される。また、硬化することにより、柔軟性、耐熱性、及び熱処理後の屈曲性に優れた硬化物を得ることができる。この硬化物は、透明性にも優れている。本発明に係るカチオン重合性樹脂組成物は、光学材料として優れている。また、柔軟性に優れるため、素子や基板との結合が容易となり、取扱性、作業性に優れている。更に、毒性や皮膚刺激性が少ないため、安全性に優れている。このため、本発明に係るカチオン重合性樹脂組成物は、導波路、光ファイバー、太陽電池用基材フィルム及び保護フィルム、フレキシブルディスプレイ用基材フィルム及び保護フィルム、有機EL用基材フィルム及び保護フィルム、透明封止剤、接着剤、インクジェット用インク、カラーフィルター、ナノインプリント、フレキシブル配線基板の分野で好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】硬化物の耐熱性の評価方法を示す説明図(熱重量分析結果の模式図)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[オキセタン環含有ビニルエーテル化合物(A)]
本発明におけるオキセタン環含有ビニルエーテル化合物(A)としては、分子内にオキセタン環とビニルエーテル構造を少なくとも有する化合物であれば特に限定されない。オキセタン環含有ビニルエーテル化合物(A)の代表的な例として、下記式(3)
【化3】

[式中、環Zはオキセタン環とともにスピロ構造を形成する非芳香族性炭素環を示し、分子内に存在していてもよく、存在していなくてもよい。Rは下記式(4)
【化4】

(式中、R4、R5及びR6は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す)
で表される置換又は無置換ビニル基を示す。Wは置換又は無置換ビニルオキシ基(−OR基)とオキセタン環又は環Zとを連結する連結基であって、単結合又は(g+1)価の有機基を示す。Xはオキセタン環及び環Zの置換基であって、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、保護基で保護されていてもよいスルホ基、オキソ基、ニトロ基、シアノ基、又は保護基で保護されていてもよいアシル基を示す。gは1或いは2、fは0〜5の整数、hは1或いは2を示す。g、f、hが2以上の場合、括弧内の置換基は同一であってもよく、異なっていてもよい]
で表される化合物が挙げられる。
【0018】
また、前記化合物は、g=h=1の場合は、少なくとも、環Zが存在するか、Xが芳香族性又は非芳香族性の炭素環を含んでいるか、Wが芳香族性又は非芳香族性の炭素環を含んでいることが好ましい。
【0019】
本発明におけるオキセタン環含有ビニルエーテル化合物(A)としては、分子内にさらに芳香族性又は非芳香族性の炭素環を有するか、又は分子内にビニルエーテル構造を2以上有していることが好ましい。このような、オキセタン環を含み、且つ分子内に炭素環を有するか、又は分子内にビニルエーテル構造を2以上有するビニルエーテル化合物は、硬化速度が極めて速いだけでなく、硬化により透明性、耐熱性等の物性に優れた硬化物が得られるという大きな利点を有する。
【0020】
前記オキセタン環含有ビニルエーテル化合物(A)において、芳香族性の炭素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。また、非芳香族性の炭素環としては、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環、シクロドデカン環等のシクロアルカン環(3〜15員程度のシクロアルカン環など);デカリン環、アダマンタン環、ノルボルナン環等の炭素数6〜20程度の有橋脂環式環などが挙げられる。芳香族性又は非芳香族性の炭素環は分子内に2以上あってもよい。芳香族性又は非芳香族性の炭素環は、ビニルエーテル構造とオキセタン環とを連結する連結基部位に存在している場合が多い。また、非芳香族性の炭素環はオキセタン環とともにスピロ構造を形成していてもよい。
【0021】
本発明におけるオキセタン環含有ビニルエーテル化合物(A)は、芳香族性又は非芳香族性の炭素環を有する場合にはビニルエーテル構造は1つあればよく、ビニルエーテル構造を2以上有する場合には芳香族性又は非芳香族性の炭素環を有していなくてもよいが、芳香族性又は非芳香族性の炭素環を有し且つ分子内に2以上のビニルエーテル構造を有するものであってもよい。
【0022】
式(3)中、環Zにおける非芳香族性炭素環としては、前記例示の非芳香族性の炭素環が挙げられる。環Zとしては、シクロペンタン環又はシクロヘキサン環が好ましい。
【0023】
式(3)中、Rは前記式(4)で表される置換又は無置換ビニル基を示す。式(4)中、R4、R5及びR6は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチルなどの直鎖状C1-4(好ましくはC1-3)アルキル基;イソプロピル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチルなどの分岐鎖状のC1-4(好ましくはC1-3)アルキル基などが挙げられる。R4、R5及びR6としては、それぞれ、特に水素原子又はメチル基が好ましい。式(4)で表される基の代表的な例として、ビニル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、1,2−ジメチル−1−プロペニル基などが挙げられる。
【0024】
式(3)中、Wは、置換又は無置換ビニルオキシ基(−OR基)とオキセタン環又は環Zとを連結する連結基であって、単結合又は(g+1)価の有機基を示す。該有機基としては、通常、隣接する酸素原子との結合部位に炭素原子を有する基が用いられる。好ましい有機基として、(i)炭化水素基、(ii)1又は2以上の炭化水素基と、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、カルボニル基(−CO−)及びアミノ基(−NH−)から選択された少なくとも1種の基とからなる基などが挙げられる。
【0025】
前記炭化水素基には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらが2以上結合した炭化水素基が含まれる。
【0026】
炭化水素基としては、2価の炭化水素基を例にとると、メチレン、メチルメチレン(エチリデン)、エチルメチレン(プロピリデン)、ジメチルメチレン(イソプロピリデン)、エチルメチルメチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ヘキサメチレン基などの炭素数1〜20(好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜6)程度の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基;プロペニレン基などの炭素数2〜20(好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜6)程度の直鎖状又は分岐鎖状のアルケニレン基;1,3−シクロペンチレン、1,2−シクロへキシレン、1,3−シクロへキシレン、1,4−シクロへキシレン基などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルキレン基;シクロプロピレン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン基などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルキリデン基;1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン基などのアリレン基(arylene);ベンジリデン基などが挙げられる。
【0027】
前記炭化水素基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシメチル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、保護基で保護されていてもよいスルホ基、ハロゲン原子、オキソ基、シアノ基、ニトロ基、複素環式基、炭化水素基、ハロアルキル基などが挙げられる。保護基としては有機合成の分野で慣用の保護基を使用できる。
【0028】
前記置換基としての複素環式基としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択された少なくとも1種のヘテロ原子を含む3〜15員程度の複素環式基(特に、5〜8員複素環式基)が挙げられる。
【0029】
前記置換基としての炭化水素基には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基及びこれらの結合した基が含まれる。脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜20(好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜3)程度のアルキル基;炭素数2〜20(好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜3)程度のアルケニル基;炭素数2〜20(好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜3)程度のアルキニル基などが挙げられる。脂環式炭化水素基としては、3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルキル基;3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルケニル基;パーヒドロナフタレン−1−イル基、ノルボルニル、アダマンチル、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン−3−イル基などの橋かけ環式炭化水素基などが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜14(好ましくは6〜10)程度の芳香族炭化水素基が挙げられる。脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した炭化水素基には、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル基などのシクロアルキル−アルキル基(例えば、C3-20シクロアルキル−C1-4アルキル基など)などが含まれる。また、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した炭化水素基には、アラルキル基(例えば、C7-18アラルキル基など)、アルキル置換アリール基(例えば、1〜4個程度のC1-4アルキル基が置換したフェニル基又はナフチル基など)などが含まれる。
【0030】
前記置換基としてのハロアルキル基としては、例えば、クロロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、ペンタフルオロエチル基などの炭素数1〜10程度のハロアルキル基(特に、C1-3ハロアルキル基)が挙げられる。
【0031】
Wの好ましい例には、例えば、下記式(5)
【化5】

[式中、A1は2価の炭化水素基を示し、Y1は酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、カルボニル基(−CO−)、アミノ基(−NH−)又はこれらが2以上結合した基を示し、A2は単結合又は(g+1)価の炭化水素基を示す。A2が−OR側である。i、jは、それぞれ0又は1であり、kは0〜5の整数を示す]
で表される基が含まれる。
【0032】
1における2価の炭化水素基としては、前記例示のものが挙げられる。なかでも、A1としては、メチレン、エチレン、プロピレン、イソピロピリデン、トリメチレン、テトラメチレン基等の炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。
【0033】
1としては、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、カルボニル基(−CO−)、アミノ基(−NH−)、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−等が好ましい。
【0034】
2における(g+1)価の炭化水素基としては、前記例示のものが挙げられる。なかでも、A2としては、単結合;メチレン、エチレン、プロピレン、イソピロピリデン、トリメチレン、テトラメチレン基等の炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、1,3−シクロペンチレン、1,2−シクロへキシレン、1,3−シクロへキシレン、1,4−シクロへキシレン基などの5〜8員のシクロアルキレン基、シクロプロピレン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン基などの5〜8員のシクロアルキリデン基、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン基などのアリレン基(arylene)、又はこれらが2以上結合した基等が挙げられる。
【0035】
Wとしては、特に、単結合、又は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基や、該アルキレン基と酸素原子又は硫黄原子とが結合した基が好ましい。
【0036】
式(3)中、Xはオキセタン環及び環Zの置換基であって、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、保護基で保護されていてもよいヒドロキシル基、保護基で保護されていてもよいアミノ基、保護基で保護されていてもよいカルボキシル基、保護基で保護されていてもよいスルホ基、オキソ基、ニトロ基、シアノ基、又は保護基で保護されていてもよいアシル基を示す。前記保護基としては有機合成の分野で慣用の保護基が挙げられる。
【0037】
Xにおけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素原子などが挙げられる。Xにおける「置換基を有していてもよい炭化水素基」の炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル基などの脂肪族炭化水素基(好ましくはC1-10アルキル基、さらに好ましくはC1-5アルキル基);シクロペンチル、シクロヘキシル基などの脂環式炭化水素基(好ましくは3〜15員のシクロアルキル基);フェニル、ナフチル基などの芳香族炭化水素基;これらが2以上結合した基などが挙げられる。これらの炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素、塩素、臭素原子等のハロゲン原子、メチル基などのC1-4アルキル基、トリフルオロメチル基などC1-5ハロアルキル基、ヒドロキシル基、メトキシ基などのC1-4アルコキシ基、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、メトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基、ニトロ基、シアノ基、アセチル基などのアシル基等が挙げられる。
【0038】
Xにおけるアシル基としては、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、ピバロイル基などのC1-6脂肪族アシル基;アセトアセチル基;ベンゾイル基などの芳香族アシル基などが挙げられる。
【0039】
Xが2以上の場合、それらが互いに結合して、式(3)中の環Z又はオキセタン環を構成する炭素原子と共に環を形成していてもよい。このような環としては、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、パーヒドロナフタレン環(デカリン環)などの脂環式炭素環;γ−ブチロラクトン環、δ−バレロラクトン環などのラクトン環などが挙げられる。
【0040】
式(3)において、gは1或いは2であり、好ましくは1である。fは0〜5の整数であり、好ましくは0〜3の整数である。hは1或いは2である。f、g、hが2以上の場合、括弧内の置換基は同一であってもよく、異なっていてもよい。なお、g=h=1の場合は、少なくとも、環Zが存在するか、Xが芳香族性又は非芳香族性の炭素環を含んでいるか、Wが芳香族性又は非芳香族性の炭素環を含んでいることが好ましい。
【0041】
式(3)で表される化合物の中でも、下記式(3a)、(3b)、(3c)又は(3d)で表される化合物が好ましい。
【0042】
【化6】

【0043】
[式中、mは0又は1を示す。R、W、Xは前記に同じ。但し、式(3b)においては、W及びXのうち少なくとも一方は芳香族性又は非芳香族性の炭素環を含んでいる]
【0044】
本発明のオキセタン環含有ビニルエーテル化合物(A)の代表的な例として、以下の化合物が挙げられる。式中、nは0〜6の整数を示す。
【0045】
【化7】

【0046】
【化8】

【0047】
本発明におけるオキセタン環含有ビニルエーテル化合物(A)は、ビニルエーテル化合物の製造法として公知の反応を利用して製造することができる。好ましい態様としては、オキセタン環含有ビニルエーテル化合物(A)に対応するアルコール(ヒドロキシ化合物)とビニルエステル化合物とを遷移元素化合物の存在下で反応させる方法が挙げられる。例えば、前記式(3)で表されるオキセタン環含有ビニルエーテル化合物(A)は、式(3)においてRが水素原子であるアルコール(ヒドロキシ化合物)と、ビニルエステル化合物とを遷移元素化合物の存在下で反応させることにより製造することができる。
【0048】
[脂環エポキシ基含有ビニルエーテル化合物(B)]
本発明における脂環エポキシ基含有ビニルエーテル化合物(B)としては、分子内に脂環式エポキシ基(エポキシ環と脂環とが2つの炭素原子を共有している基)とビニルエーテル構造とを少なくとも有する化合物であれば特に限定されない。脂環エポキシ基含有ビニルエーテル化合物(B)の代表的な例として、下記式(6)
【化9】

[式中、環Z2は非芳香族性炭素環を示し、分子内に存在していてもよく、存在していなくてもよい。Rは前記式(4)で表される置換又は無置換ビニル基を示す。W2は置換又は無置換ビニルオキシ基(−OR基)とシクロヘキサン環又は環Zとを連結する連結基であって、単結合又は(g+1)価の有機基を示す。Ra、Rbは、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を示す。g、hは前記と同様であり、gは1或いは2、hは1或いは2を示す。g、hが2の場合、括弧内の置換基は同一であってもよく、異なっていてもよい]
で表される化合物が挙げられる。
【0049】
また、前記化合物は、Ra及びRbがともに水素原子の場合は、少なくとも、環Z2が存在するか、W2が下記式(7)
【化10】

(式中、W3は単結合又は2価の有機基を示す。シクロヘキサン環を構成する炭素原子が−OR基と結合している)
で表される基であることが好ましい。
【0050】
この化合物は、脂環エポキシ基(1,2−エポキシシクロヘキサン環=7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン環からなる基)を含有するビニルエーテル化合物であって、分子内の特定位置にさらに非芳香族性の炭素環を有するか、脂環エポキシ基を構成するシクロヘキサン環とオキシラン環との接合部位にアルキル基を有している。このようなビニルエーテル化合物は、硬化速度が極めて速いだけでなく、硬化により透明性、耐熱性等の物性に優れた硬化物が得られるという大きな利点を有する。
【0051】
式(6)中、環Z2は非芳香族性炭素環を示す。環Z2は分子内に存在していてもよく、存在していなくてもよい。非芳香族性の炭素環としては、前記オキセタン環含有ビニルエーテル化合物(A)の項において挙げられた非芳香族性の炭素環の例と同様の例を挙げることができる。
【0052】
式(6)中、Rは前記式(4)で表される置換又は無置換ビニル基を示す。式(4)中、R4、R5及びR6は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。炭素数1〜4のアルキル基としては、前記オキセタン環含有ビニルエーテル化合物(A)の項において挙げられた炭素数1〜4のアルキル基の例と同様の例を挙げることができる。
【0053】
式(6)中、W2は、置換又は無置換ビニルオキシ基(−OR基)とシクロヘキサン環又は環Zとを連結する連結基であって、単結合又は(m+1)価の有機基を示す。該有機基としては、通常、隣接する酸素原子との結合部位に炭素原子を有する基が用いられる。好ましい有機基として、(i)炭化水素基、(ii)1又は2以上の炭化水素基と、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、カルボニル基(−CO−)及びアミノ基(−NH−)から選択された少なくとも1種の基とからなる基などが挙げられる。
【0054】
前記炭化水素基には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらが2以上結合した炭化水素基が含まれる。
【0055】
炭化水素基としては、前記オキセタン環含有ビニルエーテル化合物(A)の項において挙げられた例と同様の例を挙げることができる。また、炭化水素基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、前記オキセタン環含有ビニルエーテル化合物(A)の項において挙げられた例と同様の例を挙げることができる。
【0056】
2の好ましい例としては、前記オキセタン環含有ビニルエーテル化合物(A)の項において挙げられた例と同様の例を挙げることができる。Wとしては、特に、単結合、又は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、又は該アルキレン基と、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)及びカルボニル基(−CO−)から選択された少なくとも1つの基とが結合した基が好ましい。
【0057】
2のシクロヘキサン環又は環Z2における結合位置としては特に制限はないが、環Z2が存在しない場合は、シクロヘキサン環におけるオキシラン環との接合位置を1位及び2位としたときの4位及び/又は5位が好ましい。
【0058】
式(6)中、Ra、Rbは、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を示す。アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル基等の炭素数1〜15程度の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜6のアルキル基、特に炭素数1〜3のアルキル基(例えばメチル基)が好ましい。
【0059】
式(6)において、gは1或いは2であり、好ましくは1である。hは1或いは2である。g、hが2の場合、括弧内の置換基は同一であってもよく、異なっていてもよい。また、Ra、Rbがともに水素原子である場合は、少なくとも分子内に環Z2が存在するか、W2が前記式(7)で表される基であることが好ましい。
【0060】
式(7)において、W3は単結合又は2価の有機基を示す。2価の有機基としては、2価の炭化水素基、又は2価の炭化水素基と、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、カルボニル基(−CO−)及びアミノ基(−NH−)から選択された少なくとも1つの基とが結合した基等が挙げられる。2価の炭化水素基としては、前記に例示したものが挙げられる。W3としては、単結合、炭素数1〜6のアルキレンオキシ基(酸素原子が右端)が特に好ましい。
【0061】
式(6)で表される化合物の中でも、下記式(6a)、(6b)又は(6c)で表される化合物が好ましい。
【0062】
【化11】

【0063】
[式中、Rb'は炭素数1〜6のアルキル基を示す。環Z2、R、Ra、Rb、W2、W3、g、hは前記に同じ。但し、式(6a)において、W2は−OR基と環Z2とを連結している]
【0064】
式(6a)において、Ra、Rbは、それぞれ、好ましくは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、特に水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基(例えばメチル基)が好ましい。Ra、Rbのうち少なくとも一方が水素原子であるのも好ましい。環Z2としては、特に、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環等の5〜12員程度のシクロアルカン環;デカリン環、ノルボルナン環等の炭素数8〜15程度の有橋脂環式環が好ましい。W2としては、単結合、炭素数1〜15の炭化水素基、又は1又は2以上の炭素数1〜15の炭化水素基と、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、カルボニル基(−CO−)及びアミノ基(−NH−)から選択された少なくとも1種の基とが結合した基が特に好ましい。
【0065】
式(6b)において、Ra、Rbは、それぞれ、好ましくは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基であり、特に水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基(例えばメチル基)が好ましい。Ra、Rbのうち少なくとも一方が水素原子であるのも好ましい。W3としては、単結合、炭素数1〜6のアルキレンオキシ基(酸素原子が右端)が特に好ましい。
【0066】
式(6c)において、Raは、好ましくは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基、より好ましくは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基であり、特に水素原子が好ましい。Rb'は、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であり、特にメチル基が好ましい。W2としては、単結合、炭素数1〜15の炭化水素基、又は1又は2以上の炭素数1〜15の炭化水素基と、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、カルボニル基(−CO−)及びアミノ基(−NH−)から選択された少なくとも1種の基とが結合した基が特に好ましい。
【0067】
本発明の脂環エポキシ基含有ビニルエーテル化合物(B)の代表的な例として、以下の化合物が挙げられる。式中、p、qは0又は1である。A3は炭素数2〜10(好ましくは2〜6)の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基を示す。
【0068】
【化12】

【0069】
【化13】

【0070】
本発明の脂環エポキシ基含有ビニルエーテル化合物(B)は、ビニルエーテル化合物の製造法として公知の反応を利用して製造することができる。好ましい態様としては、脂環エポキシ基含有ビニルエーテル化合物(B)に対応するアルコール(ヒドロキシ化合物)とビニルエステル化合物とを遷移元素化合物の存在下で反応させる方法が挙げられる。すなわち、前記式(6)で表される脂環エポキシ基含有ビニルエーテル化合物(B)は、式(6)においてRが水素原子であるアルコール(ヒドロキシ化合物)と、ビニルエステル化合物とを遷移元素化合物の存在下で反応させることにより製造することができる。なお、脂環エポキシ基含有ビニルエーテル化合物(B)に対応するアルコール(ヒドロキシ化合物)は公知の化合物から公知の反応を利用することにより合成できる。
【0071】
[オリゴマー又はポリマー(C)]
本発明におけるオリゴマー又はポリマー(C)は、前記式(1a)〜(1f)で表わされる構造(繰り返し単位)のうち少なくとも1つを含有し、さらに0℃において液体である、分子量500以上(具体的には、分子量500〜100万程度、好ましくは3000〜50万)のオリゴマー又はポリマーである。
【0072】
式(1a)〜(1f)において、Rxは水素原子又はメチル基を示し、R1〜R3はそれぞれ独立に炭素数1〜5の炭化水素基を示す。aは0〜5の整数であり、bは1又は2である。
【0073】
1〜R3における炭素数1〜5の炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル基等の炭素数1〜5のアルキル基;ビニル、アリル、1−ブテニル基などの炭素数2〜5のアルケニル基;エチニル、プロピニル基等の炭素数2〜5のアルキニル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル基等の3〜5員のシクロアルキル基などが挙げられる。炭素数1〜5の炭化水素基は置換基を有していてもよい。
【0074】
オリゴマー又はポリマー(C)は、前記式(1a)〜(1f)で表わされる構造のうち少なくとも1つを有するため、前記化合物(A)及び/又は(B)とカチオン重合が可能であり、耐熱性に優れた硬化物が得られる。また、0℃において液体であるため、取扱性に優れるとともに、硬化物の柔軟性、熱処理後の屈曲性に優れる。また、分子量が500以上であるため、硬化物の柔軟性がより向上する。なお、オリゴマー又はポリマー(C)の分子量が500を下回ると、カチオン重合性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の柔軟性が得られにくくなる傾向がある。
【0075】
オリゴマー又はポリマー(C)は、前記式(1a)〜(1f)で表わされる構造のうち少なくとも1つと、さらに前記式(2)で表わされる構造(繰り返し単位)を含有していてもよい。式(2)で表わされる構造を含有すると、硬化物の柔軟性、熱処理後の屈曲性が向上する場合が多い。式(2)で表される構造は、該構造に対応するモノマーを、式(1a)〜(1f)で表わされる構造(繰り返し単位)に対応するモノマーと共重合させることによりオリゴマー又はポリマー(C)中に導入できる。
【0076】
式(2)中、Rxは水素原子又はメチル基を示し、R4は置換基を有してもよい炭素数4以上の炭化水素基を示す。R4における炭素数4以上の炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらが2以上結合した基等が挙げられる。
【0077】
脂肪族炭化水素基としては、例えば、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、デシル、ドデシル、テトラデシル基等の炭素数4〜20(好ましくは4〜12)のアルキル基;1−ブテニル、2−ブテニル、1−ヘキセニル基等の炭素数4〜20(好ましくは4〜12)のアルケニル基;ブチニル基等の炭素数4〜20(好ましくは4〜12)のアルキニル基などが挙げられる。脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基等の4〜20員(好ましくは4〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルキル基;シクロペンテニル、シクロヘキセニル基等の4〜20員(好ましくは4〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルケニル基;パーヒドロナフタレン−1−イル基、ノルボルニル、アダマンチル、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン−3−イル基などの橋かけ環式炭化水素基などが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、フェニル、ナフチル基等の炭素数6〜14(好ましくは6〜10)程度の芳香族炭化水素基が挙げられる。脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した炭化水素基には、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル基などのシクロアルキル−アルキル基(例えば、C3-20シクロアルキル−C1-4アルキル基など)などが含まれる。また、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した炭化水素基には、ベンジル基等のアラルキル基(例えば、C7-18アラルキル基など);トリル基等のアルキル置換アリール基(例えば、1〜4個程度のC1-4アルキル基が置換したフェニル基又はナフチル基など)などが含まれる。これらの中でも、特に、炭素数4〜20(好ましくは4〜12)のアルキル基、4〜20員(好ましくは4〜15員)の脂環式炭化水素基、または前記シクロアルキル−アルキル基、アラルキル基等が好ましい。
【0078】
[分子内にビニルエーテル基及びビニル重合鎖を有さず、且つエポキシ基又はオキセタニル基から選択される官能基を1つだけ有する化合物(D)]
本発明において、分子内にビニルエーテル基及びビニル重合鎖を有さず、且つエポキシ基又はオキセタニル基から選択される官能基を1つだけ有する化合物(D)がカチオン重合性樹脂組成物中に含まれていると、他の特性が損なわれることなく、熱処理後の屈曲性(柔軟性)が著しく向上する場合がある。
【0079】
前記化合物(D)としては、例えば、下記式(8)
【化14】

(式中、Rcは炭化水素基を示し、Rdはビニル基以外の炭化水素基を示す)
で表されるオキセタン化合物が挙げられる。
【0080】
c、Rdにおける炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらが2以上結合した基等が挙げられる。
【0081】
脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、デシル、ドデシル、テトラデシル基等の炭素数1〜20(好ましくは1〜12)のアルキル基;ビニル、アリル、1−ブテニル、2−ブテニル、1−ヘキセニル基等の炭素数2〜20(好ましくは2〜12)のアルケニル基;エチニル、プロピニル基等の炭素数2〜20(好ましくは2〜12)のアルキニル基などが挙げられる。脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基等の3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルキル基;シクロペンテニル、シクロヘキセニル基等の3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルケニル基;パーヒドロナフタレン−1−イル基、ノルボルニル、アダマンチル、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン−3−イル基などの橋かけ環式炭化水素基などが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、フェニル、ナフチル基等の炭素数6〜14(好ましくは6〜10)程度の芳香族炭化水素基が挙げられる。脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した炭化水素基には、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル基などのシクロアルキル−アルキル基(例えば、C3-20シクロアルキル−C1-4アルキル基など)などが含まれる。また、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した炭化水素基には、ベンジル基等のアラルキル基(例えば、C7-18アラルキル基など);トリル基等のアルキル置換アリール基(例えば、1〜4個程度のC1-4アルキル基が置換したフェニル基又はナフチル基など)などが含まれる。これらの中でも、特に、炭素数1〜20(好ましくは1〜12)のアルキル基、3〜20員(好ましくは3〜15員)の脂環式炭化水素基、またはこれらが結合した基が好ましい。
【0082】
前記炭化水素基には、置換基としてハロゲン原子を有していてもよい。
【0083】
前記オキセタン化合物の具体例として、下記の式(8a)で表される3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、式(8b)で表される3−エチル−3−(シクロヘキシロキシメチル)オキセタンなどが挙げられる。
【0084】
【化15】

【0085】
[カチオン重合性樹脂組成物]
本発明に係るカチオン重合性樹脂組成物は、オキセタン環含有ビニルエーテル化合物(A)及び/又は脂環エポキシ基含有ビニルエーテル化合物(B)と、前記式(1a)〜(1f)で表わされる構造のうち少なくとも1つを含有し、さらに0℃において液体である、分子量500以上のオリゴマー又はポリマー(C)を少なくとも含んでいる。
【0086】
本発明に係るカチオン重合性樹脂組成物中のオキセタン環含有ビニルエーテル化合物(A)及び/又は脂環エポキシ基含有ビニルエーテル化合物(B)の含有量(総量)としては、カチオン重合性樹脂組成物全体の6〜85重量%(例えば、6〜80重量%)が好ましく、なかでも10〜60重量%(例えば、10〜50重量%)がより好ましい。オキセタン環含有ビニルエーテル化合物(A)及び/又は脂環エポキシ基含有ビニルエーテル化合物(B)の含有量(総量)が6重量%未満であると、硬化速度が非常に遅く実用に耐えないことが多い。一方、前記含有量が85重量%を越える場合には、硬化物に十分な柔軟性が得られないことが多い。本発明のカチオン重合性樹脂組成物は、オキセタン環含有ビニルエーテル化合物(A)及び/又は脂環エポキシ基含有ビニルエーテル化合物(B)を用いるため、優れた硬化性と十分な柔軟性を兼ね備えた硬化物を得ることができる。このため、高い耐熱性、透明性、柔軟性、及び硬化性が要求される分野、特に光導波路等の光学分野の材料として極めて有利である。なお、本発明において、耐熱性は加熱による重量減少で評価する。
【0087】
本発明に係るカチオン重合性樹脂組成物中のオリゴマー又はポリマー(C)の含有量としては、カチオン重合性樹脂組成物全体の5〜94重量%(例えば、5〜92重量%)が好ましく、なかでも30〜90重量%(例えば、30〜88重量%)がより好ましい。オリゴマー又はポリマー(C)の含有量が5重量%未満であると、カチオン重合性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の柔軟性が得られにくくなる傾向があり、フレキシブル光導波路等として使用することが困難となる場合がある。一方、オリゴマー又はポリマー(C)の含有量が94重量%を上回ると、カチオン重合性樹脂組成物の粘度が高くなりすぎて使用が困難となる場合がある。
【0088】
本発明に係るカチオン重合性樹脂組成物中の前記化合物(D)の含有量としては、カチオン重合性樹脂組成物全体の0〜85重量%(例えば、4〜85重量%)が好ましく、なかでも0〜50重量%(例えば、10〜50重量%)がより好ましい。化合物(D)の含有量が4重量%未満であると、硬化物の熱処理後の屈曲性(柔軟性)を向上させる効果が得られにくくなる。一方、化合物(D)の含有量が85重量%を上回ると、硬化速度が遅くなり、また得られる硬化物が脆くなりやすい。
【0089】
本発明に係るカチオン重合性樹脂組成物には、必要に応じて他の添加物を添加してもよく、例えば重合開始剤を含有していてもよい。前記重合開始剤としては、例えば、光カチオン重合開始剤等のイオン(カチオン)重合を起こしうるものであれば特に限定されず、公知の重合開始剤、光酸発生剤等を使用することができる。
【0090】
前記光カチオン重合開始剤としては、カチオン部位とアニオン部位とで構成され、前記アニオン部位が、PF6-と同じ又はそれより高い電荷密度で構成されていることが好ましい。溶解性が極めて良好であり、優れたカチオン硬化性を発揮して硬化速度を著しく向上しうると共に、透明性に極めて優れた硬化物を提供できるという効果を奏するためである。PF6-より電荷密度が低いアニオン部位で構成されると、反応性、光カチオン重合開始剤の溶解性は向上するが、耐着色性が低下してしまうため、透明性が要求される分野には好ましくない。ここで、本発明における「電荷密度」とは、J.V.Crivello and J.H.W. Lam, Macromolecules, 1307, Vol.10, 1997に記載の意味に用いる。前記「PF6-と同じ又はそれより高い電荷密度」であるアニオン部分としては、フッ素原子を含み求核性の高いアニオンを利用でき、具体的には、PF6-、BF4-、及びCF3SO4-などが挙げられる。
【0091】
本発明における光重合開始剤としては、トリアリルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリアリールスルホニウムヘキサフウルオロアンチモネート等のスルホニウム塩;ジアリールヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ヨードニウム[4−(4−メチルフェニル−2−メチルプロピル)フェニル]ヘキサフルオロホスフェート等のヨードニウム塩;テトラフルオロホスホニウムヘキサフウルオロホスフェート等のホスホニウム塩;ピリジウム塩等が使用できる。本発明におけるオキセタン環含有ビニルエーテル化合物(A)及び/又は脂環エポキシ基含有ビニルエーテル化合物(B)は、このような重合開始剤を溶解しやすいので、重合性組成物の調製が容易である。
【0092】
光カチオン重合開始剤の市販品としては、例えば、「Irgacure 250」(チバ・ジャパン株式会社製)、「Uvacure 1591」(ダイセル・サイテック社製)等が入手可能である。
【0093】
重合開始剤の使用量としては、カチオン重合性樹脂組成物に対して、通常0.01〜50重量%程度、好ましくは0.1〜20重量%程度である。重合開始剤を上記範囲内で添加すると、重合速度と保存安定性のバランスに優れたカチオン重合性樹脂組成物を得ることができる。
【0094】
また、本発明に係るカチオン重合性樹脂組成物には、必要に応じて、前記オキセタン環含有ビニルエーテル化合物(A)及び/又は脂環エポキシ基含有ビニルエーテル化合物(B)、オリゴマー又はポリマー(C)、化合物(D)以外の硬化性化合物(例えば、エポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物等)を含有していてもよく、例えば、商品名「セロキサイド2021P」(ダイセル化学工業社製)を有していてもよい。商品名「セロキサイド2021P」(ダイセル化学工業社製)は、被着体との結合を形成しやすいため、例えばカチオン重合性樹脂組成物中1〜30重量%を添加することにより、カチオン重合性樹脂組成物の硬化物の、被着体に対する密着性を向上させることができる。
【0095】
また、必要に応じて、硬化膨張性モノマー、光増感剤(アントラセン系増感剤等)、樹脂、密着性向上剤、補強剤、軟化剤、可塑剤、粘度調整剤、溶剤、無機又は有機粒子(ナノスケール粒子等)、フルオロシラン等の従来公知の各種添加剤を含有してもよい。
【0096】
前記硬化膨張性モノマーは、添加することで硬化収縮率を低減することができるため、残留応力の低減、密着性の向上等の効果が期待できる。硬化膨張性モノマーとしては、ビ(3,4−エポキシ)シクロヘキシル化合物(エポキシ基を有するシクロヘキサン環が単結合により結合した化合物)やカーボネート系化合物(スピロオルソカーボネート、ジチオカーボネート類等)などが挙げられる。
【0097】
前記光増感剤は、上記光カチオン重合開始剤の作用をより向上させて、カチオン重合性樹脂組成物の光カチオン重合をより促進させるものである。このような光増感剤としては特に限定されないが、例えば、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾ化合物、ジアゾ化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素等が利用できる。光増感剤の具体例としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン誘導体;ベンゾフェノン、2,4−ジクロルベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;2−クロルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体;2−クロルアントラキノン、2−メチルアントラキノン等のアントラキノン誘導体;ジプロポキシアントラセン、ジブトキシアントラセン等のアントラセン誘導体等が挙げられる。これらの光増感剤は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
【0098】
本発明のカチオン重合性樹脂組成物は、オキセタン環含有ビニルエーテル化合物(A)及び/又は脂環エポキシ基含有ビニルエーテル化合物(B)、オリゴマー又はポリマー(C)、及び必要に応じて、前記化合物(D)、その他の化合物、添加剤を、従来公知の装置を用いて攪拌、混合することにより製造することができる。また、本発明のカチオン重合性樹脂組成物の製造は、紫外線を遮断した状態で行われることが好ましく、得られたカチオン重合性樹脂組成物は遮光した容器に入れて冷暗所に保存されることが好ましい。
【0099】
本発明に係るカチオン重合性樹脂組成物は、オキセタン環含有ビニルエーテル化合物(A)及び/又は脂環エポキシ基含有ビニルエーテル化合物(B)、オリゴマー又はポリマー(C)、及び必要に応じて化合物(D)を含むため、低粘度で加工しやすいという特性を有し、硬化速度が極めて速いという特性を有する。その上、硬化することにより、透明性、耐熱性、柔軟性、熱処理後の屈曲性(柔軟性)に優れた硬化物が得られるという大きな利点を有する。それにより、本発明に係るカチオン重合性樹脂組成物は、塗料、コーティング材料、インクジェット用インクなどのインキ、接着剤、レジスト、製版材、成形材料、カラーフィルター、フレキシブル基板、封止材料等の他、導波路(光導波路、混載基板など)、光ファイバー等の光学分野など、広範な分野に利用できる。特に、フレキシブル光導波路等の光学用途として極めて有用である。また、透明封止剤、ナノインプリント技術に用いる樹脂組成物として好ましく用いることができる。
【0100】
[硬化物]
本発明の硬化物は、本発明に係るカチオン重合性樹脂組成物に光を照射して重合することにより得ることができ、例えば、上記本発明のカチオン重合性樹脂組成物を用いて、インクジェット法、リソグラフィー法等の慣用の方法により所望の画像や形状を形成後、露光することにより製造することができる。
【0101】
露光には、水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、メタルハライドランプ、太陽光、電子線、レーザー光等を照射源として使用することができる。硬化制御は、露光に用いる光の強度、温度、照射時間等を適宜設定することにより、また、カチオン重合性樹脂組成物の構成成分(硬化制御剤の添加等)を選択することにより行うことができる。なかでも、露光時及び露光後(ポストベイク)の温度制御により硬化制御する手段が好ましく用いられる。
【0102】
本発明のカチオン重合性樹脂組成物は、露光後、例えば50〜180℃程度の温度で熱処理を施して硬化を進行させることも可能である。このような露光後の熱処理は、厚膜硬化や光未照射部分の硬化、又は、充填剤若しくは顔料等を含むカチオン重合性樹脂組成物の硬化に有効である。
【0103】
本発明の硬化物は透明性、耐熱性、柔軟性、熱処理後の屈曲性(柔軟性)等に優れる。そのため、導波路(光導波路、電気光混載配線基板など)、光ファイバー、太陽電池用基材フィルム及び保護フィルム、フレキシブルディスプレイ用基材フィルム及び保護フィルム、有機EL用基材フィルム及び保護フィルム、透明封止剤、接着剤、インクジェット用インク、カラーフィルター、ナノインプリント、フレキシブル基板などの分野、特にフレキシブル光導波路、光ファイバー、透明封止剤、ナノインプリントの分野で極めて有用である。
【0104】
本発明における透明性は、波長400〜850nmの光の透過率により評価することができる。本発明によれば、前記透過率が、例えば70%以上、好ましくは80%以上、特に85%以上である透明性に優れた硬化物を得ることができる。
【0105】
本発明における柔軟性は、屈曲性により評価することができ、例えば、100μm厚さのフィルム状硬化物を半径2mmの棒に巻き付けて、クラック(ひび割れ)の発生の有無によって判断することができる。本発明によれば、クラック(ひび割れ)を発生することなく屈曲することができる、柔軟性を有する硬化物を得ることができる。
【0106】
本発明における耐熱性は、カチオン重合性樹脂組成物に光照射することにより得られる硬化物に熱処理を施した場合にも硬化物の重量が維持されていることを意味している。本発明におけるカチオン重合性樹脂組成物の硬化物は、耐熱性に優れるため、硬化後に熱に曝される分野に極めて有用である。
【0107】
本発明における熱処理後の屈曲性(柔軟性)は、加熱処理した後、上記柔軟性の場合と同様に評価できる。
【0108】
[光導波路]
光導波路は、コアと呼ばれる屈折率の高い部分と、クラッドと呼ばれる屈折率の低い部分とで構成される光回路である。本発明に係るカチオン重合性樹脂組成物は、低粘度のため加工が容易であり、硬化速度が極めて速いため高い生産性で硬化物が得られることに加え、得られた硬化物は、柔軟性を有し、半田等の作業が可能な程度の耐熱性を備える。しかも本発明に係るカチオン重合性樹脂組成物の硬化物は、硬化直後だけでなく加熱後も優れた透明性を保持できため、光損失が極めて抑制されるという優れた光学特性を発揮することができる点で、光導波路のクラッド及びコアの形成素材として極めて有用である。例えば、本発明に係るカチオン重合性樹脂組成物をクラッドの形成素材として使用した場合、本発明に係るカチオン重合性樹脂組成物に高屈折率材料(例えば、1−アクリロキシ−4−メトキシナフタレンなど)を添加したものを、コアの形成素材として使用することができる。また、逆に、本発明に係るカチオン重合性樹脂組成物をコアの形成素材として使用した場合、本発明に係るカチオン重合性樹脂組成物に低屈折率材料を添加したものを、クラッドの形成素材として使用することができる。
【0109】
本発明に係る光導波路は、例えば、フィルム上に、本発明に係るカチオン重合性樹脂組成物を塗布してクラッドベースフィルムを作製し、該クラッドベースフィルムでコアを被覆することにより作製することができる。
【0110】
より具体的には、例えば、基板上に本発明に係るカチオン重合性樹脂組成物を塗布してクラッド層を形成し、クラッド層上にコア層を積層し、さらにレジスト塗布後、マスクを介して露光、現像、エッチングを施し、次いでレジストを除去してコアを形成し、当該コアを被覆するように上部クラッド層を形成することにより光導波路を作製するRIE(Reactive Ion Etching)法等により光導波路を作製することができる。
【0111】
光導波路用途のカチオン重合性樹脂組成物には、屈折率の調整を目的として、ナノサイズの金属酸化物等を添加することができる。前記金属酸化物には、例えば、酸化ジルコニウム、酸化チタンなどが含まれ、そのサイズは、例えば1〜100nm程度である。また、硬化収縮を抑える目的で、硬化膨張性の化合物、例えばビシクロへキセンオキサイド及び/または2,2−ジメチルプロピルカーボネートを添加することが好ましい。
【0112】
光導波路としての適性は、公知の導波路特性評価により判定することができる。このような導波路特性評価としては、特に限定されないが、例えば、カチオン重合性樹脂組成物の硬化物で形成された簡易導波路について公知の方法で光損失を測定する方法を用いることができる。本発明に係るカチオン重合性樹脂組成物の硬化物は、例えばカットバック法による光損失が、波長850nmで0.3dB/cm以下(好ましくは0.2dB/cm以下)であり、優れた光導波路特性を備えている。また、本発明に係るカチオン重合性樹脂組成物の硬化物により形成された光導波路は耐熱性を有するため、加熱しても光損失の上昇を著しく抑制することができる。
【0113】
本発明に係る光導波路は、本発明に係るカチオン重合性樹脂組成物により形成するため、柔軟性を有し、自由に屈曲させることが可能となり、屈曲させることによりクラック(ひび割れ)が発生することがなく、光損失値が上昇することがない。そのため、光導波路設置部位の形状に応じて適宜変形させて使用することができる。また、耐熱性が高いため、半田等の作業が可能であり、また、加熱しても光損失値の上昇を抑制することができるため、高熱環境下での使用も可能である。また、透明性が高く、加熱しても透明性が損なわれることがない。
【0114】
本発明の上記光導波路は光配線板単体として利用可能である。また、上記光導波路は、電気配線と複合化することができる。この場合、上記光導波路は光電気複合配線用の光配線として使用できる。
【0115】
[光電気複合配線基板]
本発明の光電気複合配線基板は、上記光導波路の表面に電気配線が設けられている。本発明の光導波路は高耐熱性を有するため、電気配線のプリント配線基板について従来と変わらない取り扱いが可能となる。また、本発明の光導波路は柔軟性が高いので、フレキシブルプリント基板(FPC)との複合化も可能である。
【0116】
前記電気配線は、メッキ、印刷、エッチングなどにより作製することができる。メッキ(ニッケル、銅、銀メッキ等)は、無電解メッキや電解メッキ等の公知の方法を利用して行うことができる。印刷は、一般に、導電体粒子(銀、金、銅、ニッケル、ITO、カーボン、カーボンナノチューブ等の導電性無機粒子;ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロール等の導電性有機高分子粒子など)を含む導電インクを、例えば、スクリーン印刷、インクジェット印刷することにより行われる。エッチングは、例えば、基板表面に銅箔を貼り合わせ、銅箔の不要な部分をエッチングにより除去することにより行われる。
【0117】
本発明の光電気複合配線基板は、上記光導波路の表面に多孔質層を介して電気配線が設けられていてもよい。このような光電気複合配線基板では、さらに配線の細線化が可能となる。
【0118】
光導波路上に形成される多孔質層の厚みは、例えば0.1〜100μm、好ましくは0.5〜70μm、さらに好ましくは1〜50μmである。多孔質層は、連通性を有する微小孔が多数存在し、該微小孔の平均孔径(=フィルム内部の平均孔径)が0.01〜10μmであるのが好ましい。微小孔の平均孔径は、好ましくは0.05〜5μmである。平均孔径が上記範囲外である場合には、用途に応じた所望の効果が得られにくい点で空孔特性に劣り、例えばサイズが小さすぎる場合には、クッション性能の低下、インクの浸透性の低下を引き起こす場合があり、大きすぎる場合にはインクが拡散したり、微細な配線を形成しにくくなる場合がある。
【0119】
多孔質層の内部の平均開孔率(空孔率)は、例えば30〜80%、好ましくは40〜80%、さらに好ましくは45〜80%である。空孔率が上記範囲外である場合には、用途に対応する所望の空孔特性が得られにくく、例えば空孔率が低すぎると、クッション性能が低下したり、インクが浸透しなかったりする場合があり、空孔率が高すぎると、強度や耐折性に劣る可能性がある。また、多孔質層の表面の開孔率(表面開孔率)としては、例えば48%以上(例えば48〜80%)であり、好ましくは60〜80%程度である。表面開孔率が低すぎると透過性能が充分でない場合が生じ、高すぎると強度、耐折性が低下しやすくなる。多孔質層には耐薬品性の付与処理が施されていてもよい。また、多孔質層が耐薬品性高分子により被覆されていてもよい。
【0120】
多孔質層を構成する素材となる高分子成分としては、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、液晶性ポリエステル系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリベンゾオキサゾール系樹脂、ポリベンゾイミダゾール系樹脂、ポリベンゾチアゾール系樹脂、ポリスルホン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂等のプラスチック等が挙げられる。これらの高分子成分は単独で又は2種以上混合して使用してもよく、また、上記樹脂の共重合体(グラフト重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体等)を単独で又は組み合わせて用いることも可能である。さらに、上記樹脂の骨格(ポリマー鎖)を主鎖又は側鎖に含む重合物を用いることも可能である。このような重合物の具体例として、ポリシロキサンとポリイミドの骨格を主鎖に含むポリシロキサン含有ポリイミド等が挙げられる。なかでも、多孔質層を構成する高分子成分として好ましい例として、耐熱性があり、機械的強度、耐薬品性、電気特性に優れているポリアミドイミド系樹脂又はポリイミド系樹脂を主成分とするものが挙げられる。
【0121】
前記光電気複合配線基板は、例えば、高分子溶液を上記光導波路(以下、単に「基材」と称する場合がある)の表面上へフィルム状に流延した後、凝固液に導き、次いで乾燥に付して基材の少なくとも片面に多孔質層を積層することにより多孔膜積層体を製造し、該多孔膜積層体の多孔質層表面に電気配線を作製することにより得ることができる。
【0122】
流延に付す高分子溶液としては、例えば、多孔質層を構成する素材となる前記高分子成分(又はその前駆体)、水溶性ポリマー、水溶性極性溶媒、必要に応じて水からなる混合溶液等を用いることができる。
【0123】
流延に付す高分子溶液への水溶性ポリマーや水の添加は、膜構造をスポンジ状に多孔化するために効果的である。水溶性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、多糖類等やその誘導体、及びこれらの混合物などが挙げられる。なかでもポリビニルピロリドンは、フィルム内部におけるボイドの形成を抑制し、フィルムの機械的強度を向上しうる点で好ましい。これらの水溶性ポリマーは単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。多孔化の観点から、多孔化のためには、水溶性ポリマーの分子量は200以上が良く、好ましくは300以上、特に好ましくは400以上(例えば、400〜20万程度)であり、特に分子量1000以上であってもよい。水の添加によりボイド径を調整でき、例えばポリマー溶液への水の添加量を増やすとボイド径を大きくすることが可能となる。
【0124】
水溶性極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド,N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、2−ピロリドン及びこれらの混合物などが挙げられ、前記高分子成分として使用する樹脂の化学骨格に応じて溶解性を有するもの(高分子成分の良溶媒)を使用することができる。
【0125】
流延に付すポリマー溶液としては、多孔性フィルムを構成する素材となる高分子成分8〜25重量%、水溶性ポリマー5〜50重量%、水0〜10重量%、水溶性極性溶媒30〜82重量%からなる混合溶液などが好ましい。この際に、高分子成分の濃度が低すぎると多孔質層の厚みが不十分となったり、所望の空孔特性が得られにくく、また高すぎると空孔率が小さくなる傾向にある。水溶性ポリマーは、フィルム内部を均質なスポンジ状の多孔構造にするために添加するが、この際に濃度が低すぎるとフィルム内部に10μmを超えるような巨大ボイドが発生し均質性が低下する。また水溶性ポリマーの濃度が高すぎると溶解性が悪くなる他、50重量%を超える場合には、フィルム強度が弱くなるなどの不具合が生じやすい。水の添加量はボイド径の調整に用いることができ、添加量を増やすことで径を大きくすることが可能となる。
【0126】
高分子溶液をフィルム状に流延する際に、該フィルムを相対湿度70〜100%、温度15〜100℃からなる雰囲気下に0.2〜15分間保持した後、高分子成分の非溶剤からなる凝固液に導くのが望ましい。流延後のフィルム状物を上記条件におくことにより、多孔質層を均質で連通性の高い状態にすることができる。この理由としては、加湿下に置くことにより水分がフィルム表面から内部へと侵入し、高分子溶液の相分離を効率的に促進するためと考えられる。特に好ましい条件は、相対湿度90〜100%、温度30〜80℃であり、最も好ましいのは、相対湿度約100%(例えば、95〜100%)、温度40〜70℃である。空気中の水分量がこれよりも少ない場合は、表面の開孔率が充分でなくなる不具合が発生する場合がある。
【0127】
上記方法によれば、例えば、連通性を有する多数の微小孔を有し、該微小孔の平均孔径が0.01〜10μmである多孔質層を容易に成形することができる。多孔膜積層体を構成する多孔質層の微小孔の径、空孔率、開孔率は、高分子溶液の構成成分の種類や量、水の使用量、流延時の湿度、温度及び時間などを適宜選択することにより所望の値に調整することができる。
【0128】
相転換法に用いる凝固液としては、高分子成分を凝固させる溶剤であればよく、高分子成分として使用する高分子の種類によって適宜選択されるが、例えば、ポリアミドイミド系樹脂又はポリアミック酸を凝固させる溶剤であればよく、例えば、水;メタノール、エタノール等の1価アルコール、グリセリン等の多価アルコールなどのアルコール;ポリエチレングリコール等の水溶性高分子;これらの混合物などの水溶性凝固液などが使用できる。
【0129】
上記の製造方法においては、凝固液に導いて基材表面に多孔質層を成形した後、そのまま乾燥に付すことにより、基材の表面に多孔質層が直接積層された構成を有する多孔膜積層体が製造される。乾燥は、凝固液等の溶剤成分を除去しうる方法であれば特に限定されず、加熱下でもよく、室温による自然乾燥であってもよい。加熱処理の方法は特に制限されず、熱風処理、熱ロール処理、あるいは、恒温槽やオーブン等に投入する方法でもよく、多孔膜積層体を所定の温度にコントロールできるものであればよい。加熱温度は、例えば室温〜600℃程度の広範囲から選択することができる。加熱処理時の雰囲気は空気でも窒素や不活性ガスでもよい。空気を使用する場合が最も安価であるが、酸化反応を伴う可能性がある。これを避ける場合は、窒素や不活性ガスを使用するのがよく、コスト面からは窒素が好適である。加熱条件は、生産性、多孔質層及び基材の物性等を考慮して適宜設定される。乾燥に付すことにより、基材表面に多孔質層が直接成形された多孔膜積層体を得ることができる。
【0130】
多孔膜積層体の多孔質層表面に電気配線を作製する方法としては、前記と同様、メッキ、印刷、エッチングなどにより行うことができる。
[透明封止剤]
光半導体素子の封止には透明性、耐熱性、耐湿性、密着性及び耐クラック性に優れた透明封止剤が求められる。本発明に係るカチオン重合性樹脂組成物は上記特性を兼ね備えるため、透明封止剤として光半導体素子の封止に好適に使用することができる。
【0131】
[ナノインプリント加工]
ナノインプリント技術を用いる加工方法は、nmオーダーのパターンを有する微細構造物を高速且つ安価に作製できる技術であって、工程が短く生産性に優れるため好ましく用いられる。
【0132】
より詳細には、ナノインプリント加工は、基材上に塗布した光硬化性組成物に、微細パターンを持つインプリントスタンプ(モールド、版等とも称する)を押圧した後、露光・硬化させることによりパターンを転写する技術であり、具体的には、次のステップで構成される。
ステップ1:基材上に光硬化性樹脂組成物を塗布して未硬化被膜を作製する
ステップ2:未硬化被膜(被膜材料)を、樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)〜軟化点程度に加温して樹脂を柔らかくしたところで、微細パターンを持つインプリントスタンプを押圧してパターンを転写させる
ステップ3:微細パターンが転写された被膜材料を冷やし又は光硬化させる
ステップ4:インプリントスタンプを取り除いて、インプリントされた微細構造物を得る
【0133】
本発明に係るカチオン重合性樹脂組成物は、ナノインプリント加工を施すことにより、微細構造物を得ることができる。ナノインプリント加工用途のカチオン重合性樹脂組成物は、必要に応じて、光増感剤、樹脂、密着性向上剤、補強剤、軟化剤、可塑剤、粘度調整剤、溶剤等の従来公知の各種添加剤を添加してもよい。
【0134】
本発明に係るカチオン重合性樹脂組成物は、光照射により速やかに硬化するため、生産性が高い。また、硬化物が柔軟性を有するため、インプリントスタンプを取り除く際に硬化物がしなるため取り除くことが容易である。また、インプリントスタンプを取り除くと、再び元の形状を取り戻すため、nmオーダーのパターンを忠実に再現した微細構造物を得ることができる。更に、得られた微細構造物は、透明性、及び耐熱性に優れた性質を有する。
【実施例】
【0135】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0136】
[合成例1]
炭酸ナトリウム24.9g(0.23mol)とトルエンの混合液280mlを95℃まで昇温し、プロピオン酸1.4gを加え、95℃を維持しながら、酢酸ビニル16gを滴下し、15分後、ジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム(I)[Ir(cod)Cl]2を1.27g(1.9mmol)添加した。次いで、オキセタン−3,3−ジメタノール40g(0.19mol)を3時間かけて滴下して加え、反応を行った。滴下終了後、1時間攪拌し、反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、下記式で表わされる3,3−ビス(ビニルオキシメチル)オキセタンが90%の収率で、(3−ビニルオキシメチルオキセタン−3−イル)メタノールが2%の収率で生成していた。反応液を蒸留精製して、純度99%の3,3−ビス(ビニルオキシメチル)オキセタン31gを得た。
1H−NMR(CDCl3) δ:6.5(2H,dd)、4.53(4H,s)、4.2(2H,d)、4.05(2H,d)、3.93(4H,s)
【0137】
【化16】

【0138】
[合成例2]
3−クロロメチル−3−エチルオキセタン(0.1mol)と1,4−シクロヘキサンジオール(0.5mol)、テトラブチルアンモニウムブロミド(0.01mol)をトルエン(500g)に加え、90℃まで昇温した後に、5N−NaOH水溶液(100g)滴下して加え、5時間攪拌した。トルエン溶液(トルエン層)を水洗した後、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーにて精製し、純度99%の4−(3−エチルオキセタン−3−イル−メトキシ)シクロヘキサノールを得た。
炭酸ナトリウム(0.06mol)とトルエンの混合液100mlを95℃まで昇温した。95℃を維持しながら、酢酸ビニル4.2gを滴下し、15分後、ジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム(I)[Ir(cod)Cl]2(0.5mmol)を添加した。次いで、4−(3−エチルオキセタン−3−イル−メトキシ)シクロヘキサノール(0.05mol)を2時間かけて滴下して加え、窒素雰囲気下、反応温度95℃を維持しながら、酢酸ビニル12.6gを滴下して加えながら反応を行った。滴下終了後、1時間攪拌し、反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、下記式で表わされる3−エチル−3−(4−ビニルオキシシクロヘキシルオキシメチル)オキセタンが92%の収率で生成していた。 1H−NMR(CDCl3)を測定したところ、合成例1と同様に、6.5ppm、4.2ppm、4.04ppmにビニル基特有のシグナルが観測された。
【0139】
【化17】

【0140】
[合成例3]
(4−メチルシクロヘキサ−3−エニル)メタノール12.6g(0.1mol)を5重量%過酢酸−酢酸エチル溶液を用いて、65℃でエポキシ化した。蒸留精製することで、純度98%の(6−メチル−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ−3−イル)メタノールを12g得た。
炭酸ナトリウム(0.06mol)とトルエンの混合液100mlを95℃まで昇温した。95℃を維持しながら、酢酸ビニル4.2gを滴下し、15分後、ジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム(I)[Ir(cod)Cl]2(0.5mmol)を添加した。次いで、(6−メチル−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ−3−イル)メタノール(0.05mol)を2時間かけて滴下して加え、窒素雰囲気下、反応温度95℃を維持しながら、酢酸ビニル12.6gを滴下して加えながら反応を行った。滴下終了後、1時間攪拌し、反応液をガスクロマトグラフィーで分析したところ、下記式で表わされる1−メチル−4−ビニルオキシ−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタンが95%の収率で生成していた。 1H−NMR(CDCl3)を測定したところ、合成例1と同様に、6.5ppm、4.2ppm、4.05ppmにビニル基特有のシグナルが観測された。
【0141】
【化18】

【0142】
[合成例4]
4−クロロメチルシクロヘキセン(0.1mol)と1,4−シクロヘキサンジオール(0.5mol)、テトラブチルアンモニウムブロミド(0.01mol)をトルエン(500g)に加え、90℃まで昇温した後に、5N−NaOH水溶液(100g)を滴下し、5時間攪拌した。トルエン溶液(トルエン層)を水洗した後、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーにて精製し、純度99%の4−(シクロヘキサ−3−エニルメトキシ)シクロヘキサノール13gを得た。
4−(シクロヘキサ−3−エニルメトキシ)シクロヘキサノールを用い、合成例3と同様にエポキシ化して、4−(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ−3−イルメトキシ)シクロヘキサノール8gを得た。
(6−メチル−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ−3−イル)メタノールの代わりに、上記4−(7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ−3−イルメトキシ)シクロヘキサノールを用い、合成例3と同様にビニルエーテル化して、下記式で表わされる3−(4−ビニルオキシシクロヘキシルオキシメチル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタンを合成した。1H−NMR(CDCl3)を測定したところ、合成例1と同様に、6.5ppm、4.2ppm、4.04ppmにビニル基特有のシグナルが観測された。
【0143】
【化19】

【0144】
[合成例5]
モノマー滴下ライン、開始剤滴下ライン、温度計、還流管、攪拌翼を装着した5口フラスコに、1−メトキシ−2−アセトキシプロパン(PGMEA)333.20g、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(ダイセル化学工業製、サイクロマーM100)541.63g(2.76mol)の混合液(モノマー混合液)のうち25%を仕込み、85±1℃に加熱した。次いで、商品名「パーブチルPV」(t−ブチル ペルオキシピバレート) 0.7gとPGMEA 7.0gの混合液を投入し、攪拌均一化した後、攪拌しながら、モノマー混合液の残り75%とAIBN(アゾビスイソブチロニトリル) 4.90gとPGMEA 70.00gの混合液(開始剤溶液1)を送液ポンプで同時にそれぞれ5時間かけて滴下した。滴下終了後ただちに、AIBN 2.8gとPGMEA 14.00gの混合液(開始剤溶液2)のうち50%を投入し、1時間後に開始剤溶液2の残り50%を投入した。さらに2時間保持した後、40℃以下に冷却することで、樹脂組成物を得た。これをPGMEAで2倍に希釈した後、8倍量の60wt%メタノール水溶液で沈殿精製を行い、真空乾燥機中(40℃、フルバキューム)で20時間保持することで、白色粉状の樹脂(1)を得た。
樹脂(1)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の分子量は、Mn(数平均分子量)が10500、Mw(重量平均分子量)が25800であった。又、この樹脂は0℃において固体であった。
【0145】
[合成例6]
モノマー滴下ライン、開始剤滴下ライン、温度計、還流管、攪拌翼を装着した5口フラスコに、PGMEA 333.20g、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート(ダイセル化学工業製、サイクロマーA200)502.92g(2.76mol)の混合液(モノマー混合液)のうち25%を仕込み、85±1℃に加熱した。次いで、パーブチルPV 0.7gとPGMEA 7.0gの混合液を投入し、攪拌均一化した後、攪拌しながら、モノマー混合液の残り75%とAIBN 4.90gとPGMEA 70.00gの混合液(開始剤溶液1)を送液ポンプで同時にそれぞれ5時間かけて滴下した。滴下終了後ただちに、AIBN 2.8gとPGMEA 14.00gの混合液(開始剤溶液2)のうち50%を投入し、1時間後に開始剤溶液2の残り50%を投入した。さらに2時間保持した後、40℃以下に冷却することで、樹脂組成物を得た。これをPGMEAで2倍に希釈した後、8倍量の60wt%メタノール水溶液で沈殿精製を行い、真空乾燥機中(40℃、フルバキューム)で20時間保持することで、無色透明の樹脂(2)を得た。
樹脂(2)のGPCにより測定した分子量は、Mnが15600、Mwが38200であった。又、この樹脂は0℃において固体であった。
【0146】
[合成例7]
モノマー滴下ライン、開始剤滴下ライン、温度計、還流管、攪拌翼を装着した5口フラスコに、PGMEA 166.60g、サイクロマーM100 90.23g(0.46mol)、n−ブチルメタクリレート(BMA)327.05g(2.30mol)の混合液(モノマー混合液)のうち25%を仕込み、85±1℃に加熱した。次いで、パーブチルPV 0.7gとPGMEA 7.0gの混合液を投入し、攪拌均一化した後、攪拌しながら、モノマー混合液の残り75%とAIBN 4.90gとPGMEA 70.00gの混合液(開始剤溶液1)を送液ポンプで同時にそれぞれ5時間かけて滴下した。滴下終了後ただちに、AIBN 2.8gとPGMEA 14.00gの混合液(開始剤溶液2)のうち50%を投入し、1時間後に開始剤溶液2の残り50%を投入した。さらに2時間保持した後、40℃以下に冷却することで、樹脂組成物を得た。これをPGMEAで2倍に希釈した後、8倍量の60wt%メタノール水溶液で沈殿精製を行い、真空乾燥機中(40℃、フルバキューム)で20時間保持することで、無色透明の樹脂(3)を得た。
樹脂(3)のGPCにより測定した分子量は、Mnが16800、Mwが45800であった。又、この樹脂は0℃において固体であった。
【0147】
[合成例8]
モノマー滴下ライン、開始剤滴下ライン、温度計、還流管、攪拌翼を装着した5口フラスコに、PGMEA 166.60g、サイクロマーM100 90.23g(0.46mol)、n−ブチルアクリレート(BA) 294.77g(2.30mol)の混合液(モノマー混合液)のうち25%を仕込み、85±1℃に加熱した。次いで、パーブチルPV 0.7gとPGMEA 7.0gの混合液を投入し、攪拌均一化した後、攪拌しながら、モノマー混合液の残り75%とAIBN 4.90gとPGMEA 70.00gの混合液(開始剤溶液1)を送液ポンプで同時にそれぞれ5時間かけて滴下した。滴下終了後ただちに、AIBN 2.8gとPGMEA 14.00gの混合液(開始剤溶液2)のうち50%を投入し、1時間後に開始剤溶液2の残り50%を投入した。さらに2時間保持した後、40℃以下に冷却することで、樹脂組成物を得た。これをPGMEAで2倍に希釈した後、8倍量の60wt%メタノール水溶液で再沈精製を行い、真空乾燥機中(40℃、フルバキューム)で20時間保持することで、無色透明の液状樹脂(4)を得た。
得られた樹脂(4)のGPCにより測定した分子量は、Mnが19800、Mwが55800であった。又、この樹脂は0℃においても液状のままであった。
【0148】
[合成例9]
モノマー滴下ライン、開始剤滴下ライン、温度計、還流管、攪拌翼を装着した5口フラスコに、PGMEA 166.60g、サイクロマーM100 90.23g(0.46mol)、n−ブチルアクリレート(BA) 294.77g(2.30mol)の混合液(モノマー混合液)のうち25%を仕込み、85±1℃に加熱した。次いで、パーブチルPV 0.7gとPGMEA 7.0gの混合液を投入し、攪拌均一化した後、攪拌しながら、モノマー混合液の残り75%とAIBN 2.50gとPGMEA 70.00gの混合液(開始剤溶液1)を送液ポンプで同時にそれぞれ5時間かけて滴下した。滴下終了後ただちに、AIBN 1.5gとPGMEA 14.00gの混合液(開始剤溶液2)のうち50%を投入し、1時間後に開始剤溶液2の残り50%を投入した。さらに2時間保持した後、40℃以下に冷却することで、樹脂組成物を得た。これをPGMEAで2倍に希釈した後、8倍量の60wt%メタノール水溶液で再沈精製を行い、真空乾燥機中(40℃、フルバキューム)で20時間保持することで、無色透明の液状樹脂(5)を得た。
得られた樹脂(5)のGPCにより測定した分子量は、Mnが45800、Mwが11800であった。又、この樹脂は0℃においても液状のままであった。
【0149】
[合成例10]
モノマー滴下ライン、開始剤滴下ライン、温度計、還流管、攪拌翼を装着した5口フラスコに、PGMEA 166.60g、サイクロマーA200 83.82g(0.46mol)、BA 294.77g(2.30mol)の混合液(モノマー混合液)のうち25%を仕込み、85±1℃に加熱した。次いで、パーブチルPV 0.7gとPGMEA 7.0gの混合液を投入し、攪拌均一化した後、攪拌しながら、モノマー混合液の残り75%とAIBN 4.90gとPGMEA 70.00gの混合液(開始剤溶液1)を送液ポンプで同時にそれぞれ5時間かけて滴下した。滴下終了後ただちに、AIBN 2.8gとPGMEA 14.00gの混合液(開始剤溶液2)のうち50%を投入し、1時間後に開始剤溶液2の残り50%を投入した。さらに2時間保持した後、40℃以下に冷却することで、樹脂組成物を得た。これをPGMEAで2倍に希釈した後、8倍量の60wt%メタノール水溶液で沈殿精製を行い、真空乾燥機中(40℃、フルバキューム)で20時間保持することで、無色透明の液状樹脂(6)を得た。
得られた樹脂(6)のGPCにより測定した分子量は、Mnが17300、Mwが52100であった。又、この樹脂は0℃においても液状のままであった。
【0150】
[合成例11]
モノマー滴下ライン、開始剤滴下ライン、温度計、還流管、攪拌翼を装着した5口フラスコに、PGMEA 166.60g、グリシジルメタクリレート(GMA) 65.39g(0.46mol)、BA 294.77g(2.30mol)の混合液(モノマー混合液)のうち25%を仕込み、85±1℃に加熱した。次いで、パーブチルPV 0.7gとPGMEA 7.0gの混合液を投入し、攪拌均一化した後、攪拌しながら、モノマー混合液の残り75%とAIBN 4.90gとPGMEA 70.00gの混合液(開始剤溶液1)を送液ポンプで同時にそれぞれ5時間かけて滴下した。滴下終了後ただちに、AIBN 2.8gとPGMEA 14.00gの混合液(開始剤溶液2)のうち50%を投入し、1時間後に開始剤溶液2の残り50%を投入した。さらに2時間保持した後、40℃以下に冷却することで、樹脂組成物を得た。これをPGMEAで2倍に希釈した後、8倍量の60wt%メタノール水溶液で沈殿精製を行い、真空乾燥機中(40℃、フルバキューム)で20時間保持することで、無色透明の液状樹脂(7)を得た。
得られた樹脂(7)のGPCにより測定した分子量は、Mnが19300、Mwが52300であった。又、この樹脂は0℃においても液状のままであった。
【0151】
[合成例12]
モノマー滴下ライン、開始剤滴下ライン、温度計、還流管、攪拌翼を装着した5口フラスコに、PGMEA 166.60g、グリシジルアクリレート(GA) 58.94g(0.46mol)、BA 294.77g(2.30mol)の混合液(モノマー混合液)のうち25%を仕込み、85±1℃に加熱した。次いで、パーブチルPV 0.7gとPGMEA 7.0gの混合液を投入し、攪拌均一化した後、攪拌しながら、モノマー混合液の残り75%とAIBN 4.90gとPGMEA 70.00gの混合液(開始剤溶液1)を送液ポンプで同時にそれぞれ5時間かけて滴下した。滴下終了後ただちに、AIBN 2.8gとPGMEA 14.00gの混合液(開始剤溶液2)のうち50%を投入し、1時間後に開始剤溶液2の残り50%を投入した。さらに2時間保持した後、40℃以下に冷却することで、樹脂組成物を得た。これをPGMEAで2倍に希釈した後、8倍量の60wt%メタノール水溶液で沈殿精製を行い、真空乾燥機中(40℃、フルバキューム)で20時間保持することで、無色透明の液状樹脂(8)を得た。
得られた樹脂(8)のGPCにより測定した分子量は、Mnが16300、Mwが45300であった。又、この樹脂は0℃においても液状のままであった。
【0152】
[合成例13]
モノマー滴下ライン、開始剤滴下ライン、温度計、還流管、攪拌翼を装着した5口フラスコに、PGMEA 166.60g、3−エチル−3−オキセタニルメチルメタクリレート(大阪有機化学工業製、OXE−30) 84.75g(0.46mol)、BA 294.77g(2.30mol)の混合液(モノマー混合液)のうち25%を仕込み、85±1℃に加熱した。次いで、パーブチルPV 0.7gとPGMEA 7.0gの混合液を投入し、攪拌均一化した後、攪拌しながら、モノマー混合液の残り75%とAIBN 4.90gとPGMEA 70.00gの混合液(開始剤溶液1)を送液ポンプで同時にそれぞれ5時間かけて滴下した。滴下終了後ただちに、AIBN 2.8gとPGMEA 14.00gの混合液(開始剤溶液2)のうち50%を投入し、1時間後に開始剤溶液2の残り50%を投入した。さらに2時間保持した後、40℃以下に冷却することで、樹脂組成物を得た。これをPGMEAで2倍に希釈した後、8倍量の60wt%メタノール水溶液で沈殿精製を行い、真空乾燥機中(40℃、フルバキューム)で20時間保持することで、無色透明の液状樹脂(9)を得た。
得られた樹脂(9)のGPCにより測定した分子量は、Mnが20800、Mwが54300であった。又、この樹脂は0℃においても液状のままであった。
【0153】
[合成例14]
モノマー滴下ライン、開始剤滴下ライン、温度計、還流管、攪拌翼を装着した5口フラスコに、PGMEA 166.60g、3−エチル−3−オキセタニルメチルアクリレート(大阪有機化学工業製、OXE−10)78.29g(0.46mol)、BA 294.77g(2.30mol)の混合液(モノマー混合液)のうち25%を仕込み、85±1℃に加熱した。次いで、パーブチルPV 0.7gとPGMEA 7.0gの混合液を投入し、攪拌均一化した後、攪拌しながら、モノマー混合液の残り75%とAIBN 4.90gとPGMEA 70.00gの混合液(開始剤溶液1)を送液ポンプで同時にそれぞれ5時間かけて滴下した。滴下終了後ただちに、AIBN 2.8gとPGMEA 14.00gの混合液(開始剤溶液2)のうち50%を投入し、1時間後に開始剤溶液2の残り50%を投入した。さらに2時間保持した後、40℃以下に冷却することで、樹脂組成物を得た。これをPGMEAで2倍に希釈した後、8倍量の60wt%メタノール水溶液で沈殿精製を行い、真空乾燥機中(40℃、フルバキューム)で20時間保持することで、無色透明の樹脂(10)を得た。
得られた樹脂(10)のGPCにより測定した分子量は、Mnが18900、Mwが48300であった。又、この樹脂は0℃においても液状のままであった。
【0154】
[実施例及び比較例]
(カチオン重合性樹脂組成物の調製)
表1〜表4に示す組成及び量に従って、オキセタン環含有ビニルエーテル化合物(A)又は脂環エポキシ基含有ビニルエーテル化合物(B)と、分子量500以上のオリゴマー又はポリマー(C)と、単官能オキセタン化合物(D)と、光カチオン重合開始剤(Irgacure 250)を混合溶解して、カチオン重合性樹脂組成物を調製した。表中の数字は重量部である。
【0155】
なお、表1〜表4中の記号は下記化合物を示す。
A1:合成例1で得られた3,3−ビス(ビニルオキシメチル)オキセタン
A2:合成例2で得られた3−エチル−3−(4−ビニルオキシシクロヘキシルオキシメチル)オキセタン
B1:合成例3で得られた1−メチル−4−ビニルオキシ−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン
B2:合成例4で得られた3−(4−ビニルオキシシクロヘキシルオキシメチル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン
X:1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル(Aldrich社製)
C1:合成例5で得られた樹脂(1)
C2:合成例6で得られた樹脂(2)
C3:合成例7で得られた樹脂(3)
C4:合成例8で得られた樹脂(4)
C5:合成例9で得られた樹脂(5)
C6:合成例10で得られた樹脂(6)
C7:合成例11で得られた樹脂(7)
C8:合成例12で得られた樹脂(8)
C9:合成例13で得られた樹脂(9)
C10:合成例14で得られた樹脂(10)
C11:両末端に水酸基を有する部分エポキシ化ポリブタジエン(ダイセル化学工業社製、PB3600)
D1:3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン(東亞合成社製、OXT−212)
Irgacure250:ヨードニウム (4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヘキサフルオロホスフェートとプロピレンカーボネートの3:1混合物(チバ・ジャパン社製、Irgacure250)
【0156】
(硬化物の形成)
上記組成物を、フッ素コートPETフィルムを基材として、アプリケーターにより約100μmの厚みになるよう塗布し、ベルトコンベアー式紫外線照射装置(ウシオ電機製、UVC−02516S1AA02)を用いて紫外線を照射することにより硬化物を得た。その際の照射エネルギーは約2J(波長:320−390nm)であった。紫外線照射後の硬化物は、大気中200℃で1時間加熱処理した。
【0157】
(屈曲性評価)
実施例及び比較例で得られた厚さ100μmの硬化物を半径2mmの棒に巻きつけて、クラック(ひび割れ)発生の有無を目視で観察し、下記基準で評価した。
評価基準:クラック(ひび割れ)が見られなかったときを「○」、見られたときを「×」とする。
【0158】
(熱分解温度)
実施例及び比較例で得られた硬化物を熱重量分析にかけて、図1に示すように、初期の重量減少のないあるいは漸減しているところの接線と、急激に重量減少が起こっているところの変曲点の接線が交叉するところの温度をTとしたとき、下記基準で評価した。
評価基準:温度Tが250℃以上のとき「○」、250℃より低いとき「×」とする。
【0159】
(熱処理後の屈曲性評価)
実施例及び比較例で得られた厚さ100μmの硬化物を200℃のオーブンで1時間加熱処理を施し、これを半径2mmの棒に巻きつけて、クラック(ひび割れ)発生の有無を目視で観察し、下記基準で評価した。
評価基準:クラック(ひび割れ)が見られなかったときを「○」、見られたときを「×」とする。
【0160】
【表1】

【0161】
【表2】

【0162】
【表3】

【0163】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキセタン環含有ビニルエーテル化合物(A)及び/又は脂環エポキシ基含有ビニルエーテル化合物(B)と、下記式(1a)〜(1f)
【化1】

(式中、Rxは水素原子又はメチル基を示し、R1〜R3はそれぞれ独立に炭素数1〜5の炭化水素基を示す。aは0〜5の整数であり、bは1又は2である)
で表わされる構造のうち少なくとも1つを含有し、さらに0℃において液体である、分子量500以上のオリゴマー又はポリマー(C)を含むカチオン重合性樹脂組成物。
【請求項2】
オリゴマー又はポリマー(C)が、式(1a)〜(1f)で表わされる構造のうち少なくとも1つと、さらに下記式(2)
【化2】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、R4は置換基を有してもよい炭素数4以上の炭化水素基を示す)
で表わされる構造を含有する請求項1に記載のカチオン重合性樹脂組成物。
【請求項3】
分子内にビニルエーテル基及びビニル重合鎖を有さず、且つエポキシ基又はオキセタニル基から選択される官能基を1つだけ有する化合物(D)を含む請求項1又は2に記載のカチオン重合性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3に記載のカチオン重合性樹脂組成物をカチオン重合させて得られる硬化物。
【請求項5】
硬化物がフィルム状である請求項4に記載の硬化物。
【請求項6】
硬化物がファイバー状である請求項4に記載の硬化物。

【図1】
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【公開番号】特開2010−280844(P2010−280844A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136172(P2009−136172)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】