説明

カット紙送給装置

【課題】部分重送の発生を従来より低減可能なカット紙送給装置の提供を目的とする。
【解決手段】本発明のカット紙送給装置10は、カット紙Sを積載可能なストック部70の下方に搬送ベルト63を備えている。搬送ベルト63は、カット紙群Gの下端側からカット紙Sに摩擦接触し、最下部のカット紙Sを前方へ送給する。カット紙群Gと搬送ベルト63との間には、搬送ベルト63のカット紙対向面63Mにおけるカット紙送給方向の後端から中間位置に亘る範囲を覆ってカット紙群Gからカット紙対向面63Mの一部を離間させるカバープレート20が備えられている

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下に重ねられたカット紙群からカット紙を順次抜き出して送給するカット紙送給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のカット紙送給装置として、カット紙群の端部に搬送ローラを回転接触させるものと、カット紙群の端部に搬送ベルトを回転接触させるものが知られている(例えば、特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−738号公報(段落[0020]、図1)
【特許文献2】特開2010−168201号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、搬送ベルトは搬送ローラに比べてカット紙に対する接触面積が大きいので高く大きなグリップ力を発揮するので、送給速度を高くするためには搬送ベルトを備えたカット紙送給装置が好ましい。しかしながら、搬送ベルトを備えた従来のカット紙送給装置は、カット紙群から先に抜き出したカット紙の後端部に次のカット紙の前端部が重なった状態で送給される、所謂、部分重送の不具合が生じ易いという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、部分重送の発生を従来より低減可能なカット紙送給装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者は、従来はあまり解明されていなかった部分重送のメカニズムを以下のように解明し、本願発明を完成させるに至った。即ち、搬送ベルトを備えたカット紙送給装置では、上下に重ねられたカット紙群における最端部のカット紙(以下、「第1のカット紙」という)と搬送ベルトとの間に作用する動摩動力及び静止摩擦力が共に、第1のカット紙とその次のカット紙(以下、「第2のカット紙」という)との間に作用する静止摩擦抵抗より大きいので、カット紙群から第1のカット紙のみが引き抜かれる。そして、第1のカット紙が引き抜かれ始めると(始動すると)、第1と第2のカット紙間の摩擦力は静止摩擦力から動摩擦力に変わり、第1のカット紙と搬送ベルトの間の摩擦力は動摩擦力から静止摩擦力に変わるので、第1のカット紙と搬送ベルトとの間の摩擦力が第1と第2のカット紙間の摩擦抵抗より一層大きくなる。また、第2のカット紙も第1のカット紙から動摩擦力又は静止摩擦力を受けて引っ張られるが、第2のカット紙はその次のカット紙(以下、「第3のカット紙」という)から受ける静止摩擦力によって引き留められる。これらにより、第1のカット紙のみがカット紙群から引き抜かれていく。ところが、第1のカット紙が引き抜かれるに従って、第2のカット紙が搬送ベルト側に露出してそれら第2のカット紙と搬送ベルトとの接触面積も増していき、第2のカット紙が搬送ベルトから受ける動摩擦力も増していく。そして、第1のカット紙がカット紙群から完全に離脱した後に、第2のカット紙が搬送ベルトから受ける動摩擦力が第2と第3のカット紙間の静止摩擦力より大きくなるように搬送ベルトとカット紙群との接触面積が設定されていれば、部分重送は発生せず、第1のカット紙がカット紙群から完全に離脱する前に、第2のカット紙が搬送ベルトから受ける動摩擦力が第2と第3のカット紙間の静止摩擦力より大きくなるように搬送ベルトとカット紙群との接触面積が設定されていれば、部分重送が発生するという部分重送のメカニズムを解明した。
【0007】
そこで、カット紙の紙質や湿度の相違又は搬送ベルトの劣化等によって搬送ベルトとカット紙及びカット紙同士の摩擦抵抗が変化しても、搬送ベルトとカット紙群との接触面積を調整可能な構成をカット紙送給装置に設けることで部分重送を防ぐことができるか、防げなくてもカット紙同士の重なり量を抑えて、後処理でカット紙同士の重なりを解消可能な状態にすることができるという見知を得て、以下請求項1〜5の発明を完成するに至った。
【0008】
請求項1の発明は、上下に重ねられたカット紙群の最上端又は最下端に搬送ベルトを回転接触させて、カット紙群からカット紙を順次前方へ抜き出して送給するカット紙送給装置において、搬送ベルトのうちカット紙対向面と平行な板状をなし、カット紙対向面におけるカット紙送給方向の後端から中間位置に亘る範囲を覆ってカット紙対向面の一部をカット紙群から離間させるカバープレートと、カット紙送給方向におけるカバープレートの位置を変更して固定可能とするプレート可変支持機構とを備えたことを特徴とするカット紙送給装置である。
【0009】
請求項2の発明は、プレート可変支持機構には、カバープレートをカット紙送給方向に直動可能に支持する支持レールが1対備えられているところに特徴を有する。
【0010】
請求項3の発明は、上下に重ねられたカット紙群の最下端に搬送ベルトを回転接触させて、カット紙群からカット紙を順次前方へ抜き出して送給するカット紙送給装置において、搬送ベルトの両側に配置されて、カット紙送給方向に対して前下がりに傾斜した1対のカット紙群支持面を上部に有し、1対のカット紙群支持面が搬送ベルトのカット紙対向面のうちカット紙送給方向の中間の迫り出し開始位置より斜め後側上方に迫り出してカット紙対向面の一部をカット紙群から離間させる1対のベルトサイド部材と、1対のベルトサイド部材を回動可能に支持して任意の回動位置に固定可能とすることで、カット紙対向面におけるカット紙群支持面の迫り出し開始位置をカット紙送給方向の任意の位置に設定可能とするベルトサイド部材可変支持機構とを備えたことを特徴とするカット紙送給装置である。
【0011】
請求項4の発明は、搬送ベルトは、複数、間隔をあけて平行に配置しかつ、隣り合った搬送ベルト同士の間でベルトサイド部材を共有させたことを特徴とする請求項3に記載のカット紙送給装置である。
【0012】
請求項5の発明は、カット紙群から抜き出されたカット紙をさらに前方へ送給する下流搬送ベルトを備え、下流搬送ベルトの搬送速度を、搬送ベルトの搬送速度よりも大きくしたことを特徴とする請求項1乃至4のうち何れか1の請求項に記載のカット紙送給装置である。
【発明の効果】
【0013】
[請求項1の発明]
請求項1のカット紙送給装置は、搬送ベルトのうちカット紙対向面と平行な板状をなし、カット紙対向面におけるカット紙送給方向の後端から中間位置に亘る範囲を覆ってカット紙群からカット紙対向面の一部を離間させるカバープレートを備えている。そして、プレート可変支持機構により、カット紙送給方向におけるカバープレートの位置を変更して搬送ベルトとカット紙群との接触面積を調整することができる。これにより、部分重送を防ぐか、防げなくてもカット紙同士の重なり量を抑えて、後処理でカット紙同士の重なりを解消可能な状態にすることが可能になり、部分重送の発生を従来より低減させることができる。
【0014】
[請求項2の発明]
請求項2のカット紙送給装置では、1対の支持レールによってカバープレートを直動可能に支持したので、カバープレートが安定する。
【0015】
[請求項3の発明]
請求項3のカット紙送給装置では、搬送ベルトの両側の1対のベルトサイド部材におけるカット紙群支持面が、搬送ベルトのカット紙対向面から斜め後側上方に迫り出してカット紙対向面における中間位置より後側をカット紙群から離間させている。そして、搬送ベルトの回転軸と平行な回動軸回りに1対のベルトサイド部材を回動して、カット紙対向面におけるカット紙群支持面の迫り出し開始位置を前後に変更し、搬送ベルトとカット紙群との接触面積を調整することができる。これにより、部分重送を防ぐか、防げなくてもカット紙同士の重なり量を抑えて、後処理でカット紙同士の重なりを解消可能な状態にすることが可能になり、部分重送の発生を従来より低減させることができる。
【0016】
[請求項4の発明]
請求項4のカット紙送給装置では、搬送ベルトが、複数、間隔をあけて平行に配置しかつ、隣り合った搬送ベルト同士の間でベルトサイド部材を共有させたので、カット紙のうち1対のベルトサイド部材のカット紙群支持面に支持された部分が幅方向で撓んで搬送ベルトに接触することを防ぐことができる。
【0017】
[請求項5の発明]
請求項5のカット紙送給装置では、下流搬送ベルトの搬送速度を、搬送ベルトの搬送速度よりも大きくしたので、カット紙群から引き出された時点でカット紙同士が部分的に重なっていても、その重なりを解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態に係るカット紙送給装置の後方斜視図
【図2】搬送ベルト及びカット紙群の側断面図
【図3】カット紙群周辺の側断面図
【図4】カバープレートの上面図
【図5】カット紙送給装置の動作を説明するための側断面図
【図6】第2実施形態に係るカット紙送給装置の側断面図
【図7】第3実施形態に係るカット紙送給装置の側断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。図1に示すように、本発明に係るカット紙送給装置10は、ベースフレーム90に、種々の部品を組み付けてなる。ベースフレーム90は、全体がボックス状をなし、水平方向で対向したサイドプレート92,92と、サイドプレート92の後端部を連結した上面プレート93とを備えている。なお、上面プレート93は水平面と平行になっている。
【0020】
サイドプレート92,92のうち、前後方向のほぼ中央位置には、サイド壁94S,94Sが起立し、それら94S,94Sに挟まれた位置には、部品取付部94が備えられている。部品取付部94の後側には、カット紙Sを複数上下に重ねてなるカット紙群Gを載置可能なストック部70が備えられている(図2参照)。なお、本明細書で用いる図面では、カット紙Sの厚さ、カット紙群Gにおけるカット紙S同士の間隔が誇張して示されている。
【0021】
図2に示すように、ストック部70は、部品取付部94の後面に宛がわれた前端壁71を有している。前端壁71は上面プレート93に対して略直角であると共に、下端部分が前方に向かって迫り出しており、その前端壁71の下端縁と後述するベルト搬送部60との間には、カット紙Sが通過可能なカット紙排出口72が形成されている。
【0022】
ストック部70の後方には、端ずらし部材73が備えられている。端ずらし部材73は、ベースフレーム90の幅方向(サイドプレート92,92の対向方向)に並んだ複数の三角板74と、それら三角板74を上面プレート93に対して固定するための取付板75(図1参照)とを一体に備えてなる。三角板74は、直角三角形状をなし、斜辺がストック部70に載置されたカット紙Sのうち、下端側に位置する複数のカット紙Sの後端縁と当接する。これにより、上下に積み重ねられたカット紙Sのうち、下側のカット紙Sが上側のカット紙Sに対して前方にずらされる。
【0023】
端ずらし部材73は、取付板75に形成された長孔(図示せず)と、上面プレート93に形成された延びた長孔93A(図4参照)を重ねた状態で、それら長孔を貫通したボルト(図示せず)をナット(図示せず)で締め付けることにより固定されている。これにより、カット紙Sの寸法に応じて、端ずらし部材73の位置を前後方向で選択的に調節することが可能となっている。
【0024】
ストック部70の下方には、ストック部70に載置された複数のカット紙Sを下端側から順次前方に抜き出してスライド送給するためのベルト搬送部60が備えられている。具体的には、ストック部70の真下位置に配置された後側プーリ61とストック部70より前方位置に配置された前側プーリ62との間に搬送ベルト63が架け渡され、これと同様な搬送ベルト63が、ベースフレーム90の幅方向で複数、互いに平行に備えられている。
【0025】
詳細には、ベースフレーム90における1対のサイドプレート92,92間には、互いに平行かつ水平な後側シャフト64と前側シャフト65とが差し渡されている。後側シャフト64及び前側シャフト65は、その両端部がベアリング(図示せず)を介してサイドプレート92,92に軸支されている。後側シャフト64には複数の後側プーリ61が互いに間隔を空けて軸支され、前側シャフト65には後側プーリ61と同数の前側プーリ62が互いに間隔を空けて軸支されている。そして、前後方向で並んだ後側プーリ61と前側プーリ62との間に、それぞれ搬送ベルト63が架け渡されている。
【0026】
搬送ベルト63は、ストック部70に載置されたカット紙群Gのうち最下部のカット紙Sの下面と摩擦接触することで、その最下部のカット紙Sを、ストック部70のカット紙排出口72から抜き出し、前方にスライド送給するようになっている。なお、搬送ベルト63は、上側を向いたカット紙対向面63Mが、上面プレート93と平行となるように設けられている。
【0027】
搬送ベルト63は、上面プレート93の下方に配置されたサーボモータ66を駆動源としている。即ち、サーボモータ66のロータに連結された出力シャフト(図示せず)には、出力プーリ66Pが固定されており、前側シャフト65のうち、一方のサイドプレート92を貫通した一端部には、駆動プーリ65Pが固定されている。そして、出力プーリ66Pと駆動プーリ65Pとの間にタイミングベルト67が架け渡されている。なお、タイミングベルト67のテンションは、図示しないテンションローラによって調整可能になっている。
【0028】
ストック部70のカット紙排出口72から前方に離れた位置には、重送規制部材30が備えられている。その重送規制部材30は、部品取付部94の前端部に取り付けられた支持部材31によって上下動可能に支持されていると共に、図示しない圧縮コイルバネによって下方に付勢されている。そして、搬送ベルト63の回転によってストック部70から抜き出されたカット紙Sが、重送規制部材30を押し上げて、重送規制部材30と搬送ベルト63との間を通過するようになっている。
【0029】
重送規制部材30より前側の部分には、カット紙排出口72から排出されたカット紙Sをさらに前方へ送給するための下流ベルト搬送部80が備えられている。下流搬送ベルト部80は、ベルト搬送部60と同様の構成をなし、後側下流プーリ81と前側下流プーリ82との間に下流搬送ベルト83が架け渡され、これと同様な下流搬送ベルト83が、ベースフレーム90の幅方向で複数、互いに平行に備えられている(図2参照)。なお、下流搬送ベルト83についても、上側を向いた搬送面が、上面プレート93の上面と面一となるように設けられている。
【0030】
サイドプレート92,92の間には、互いに平行かつ水平な後側下流シャフト84と前側下流シャフト85とが軸支され、それら前側下流シャフト85,後側下流シャフト84には、複数の前側下流プーリ81、後側下流プーリ81が互いに間隔を空けて軸支されている。そして、前後方向で並んだ後側下流プーリ81と前側下流プーリ82との間に、それぞれ下流搬送ベルト83が架け渡されている。
【0031】
後側下流シャフト84は、上述したベルト搬送部60の前側シャフト65と連結している。具体的には、後側下流シャフト84に軸支された下流連結プーリ86と、前側シャフト65に軸支された連結プーリ69との間に、連結ベルト87が掛け渡されている。これにより、下流搬送ベルト83は、サーボモータ66から駆動力を受けて回転するようになっている。
【0032】
ここで、連結プーリ69及び下流連結プーリ86は、軸方向の一端側(図2の下側)で同径になっていて、連結プーリ69及び下流連結プーリ86の一端側に連結ベルト87が掛け渡されると、下流搬送ベルト83の搬送速度は、搬送ベルト63との搬送速度と同じになる。また、連結プーリ69の軸方向の他端側(図2の上側)は、一端側より大径になっていて、下流連結プーリ86の軸方向の他端側は、一端側より小径になっている。そして、連結プーリ69及び下流連結プーリ86の他端側に連結ベルト87が掛け渡されると(図2には、この状態が示されている)、下流搬送ベルト83の搬送速度は、搬送ベルト63の搬送速度より大きくなる。
【0033】
下流搬送ベルト85は、ストック部70のカット紙排出口72から排出されたカット紙Sの下面と摩擦接触することで、その排出されたカット紙Sをさらに前方へ送給するようになっている。
【0034】
また、下流ベルト搬送部80の上方には、複数の押えローラ88が回転可能に軸支され、各押えローラ88によって、下流搬送ベルト83が搬送するカット紙Sを上方から押えるようになっている。
【0035】
さて、本実施形態のカット紙送給装置10には、上面プレート93の上に、前後方向でスライド可能なカバープレート20が備えられている。このカバープレート20は、搬送ベルト63のカット紙対向面63Mと平行であって、カット紙対向面63Mにおけるカット紙送給方向の後端から中間位置に亘る範囲を覆うようになっている。そして、カバープレート20によって、カット紙群Gからカット紙対向面63Mの一部が離間するようになっている。
【0036】
具体的には、カバープレート20は、前後方向に延びた長孔20Aを備え、この長孔20Aと上面プレート93の長孔93Aとを重ねた状態で、それら長孔を貫通したボルト(図示せず)をナット(図示せず)で締め付けることにより固定されている。なお、カバープレート20と搬送ベルト63との間には、僅かな隙間が形成され、カバープレート20が搬送ベルト63と接触しないようになっている。
【0037】
詳細には、カバープレート20は、端ずらし部材73の取付板75と上面プレート93との間に配置され、上面プレート93の長孔93A、カバープレート20の長孔20A及び上述した取付板75の図示しない長孔を重ねた状態で、取付板75と上面プレート93を固定することにより、上面プレート93に固定されている。
【0038】
また、図4に示すように、カバープレート20の下面には、前端位置から後方に向かって延びた係合突部21,21(図4には、一方のみが示されている)が設けられている。係合突部21,21は、上面プレート93の前端部から後方に向かって形成されたスリット93S,93S(図3参照)と係合し、カバープレート20の幅方向(図4の紙面と直交する方向)の移動を規制している。これにより、カバープレート20は、ボルトが長孔20Aに受容される範囲内で前後方向(図4の左右方向)の任意位置に固定可能になっている。なお、本実施形態では、上面プレート93のうちスリット93S形成する部分が、本発明の「支持レール」に相当し、係合突部21、上面プレート93のうちスリット93Sを形成する部分、上面プレート93とカバープレート20を締め付けるボルトとナット、カバープレート20の長孔20A及び上面プレート93の長孔93Aとから、「プレート可変支持機構」が構成されている。
【0039】
次に、カット紙送給装置10の作用効果について説明する。カット紙送給装置10の使用にあたっては、まず、カバープレート20及び端ずらし部材73の前後位置を調整し、送給するカット紙Sをストック部70に積層させてセットする。そして、搬送ベルト63を回転駆動させると、その搬送ベルト63のカット紙対向面63Mとカット紙群Gのうち最下部に位置する第1のカット紙S1の下面とが摩擦接触して、第1のカット紙S1がカット紙排出口72を介してストック部70から前方に移動する。すると、第1のカット紙S1の1つ上方に位置する第2のカット紙S2の後端部の下面が露出する。
【0040】
図5(A)に示すように、カバープレート20の前端がカット紙群Gの後端よりも後方に配置されている場合には、第2のカット紙S2の下面は搬送ベルト63のカット紙対向面63Mと接触する。第1のカット紙S1の移動に伴って、第2のカット紙S2と搬送ベルト63との接触面積が大きくなると、第2のカット紙S2が搬送ベルト63から受ける動摩擦力が大きくなる。そして、第1のカット紙S1がカット紙群Gから完全に抜き出されたときに、第2のカット紙S2が搬送ベルト63から受ける動摩擦力が、第2のカット紙S2と第2のカット紙の上にある第3のカット紙S3との間の静止摩擦力よりも大きくなり、第2のカット紙S2の送給が開始される。これにより、カット紙群Gの下端側からカット紙Sが順次に前方へ送給される。
【0041】
ここで、例えば、カット紙Sの摩擦係数が大きい場合には、第1のカット紙S1がカット紙群Gから完全に抜き出される前に、第2のカット紙S2が搬送ベルト63から受ける動摩擦力が、第2のカット紙S2と第3のカット紙S3との間の静止摩擦力よりも大きくなって、第2のカット紙S2の送給が開始する事態が起こり得る(図5(B)参照)。このような場合には、図5(C)に示すように、カバープレート20の前端をカット紙群Gの後端より前方にスライドさせておく。すると、第1のカット紙S1が前方へ移動したときに、第2のカット紙S2の下面の後端部と搬送ベルト63との接触がカバープレート20によって防がれ、第2のカット紙S2と搬送ベルト63との接触面積が図5(B)に示した場合よりも小さくなる(図5(D)参照)。これにより、第2のカット紙S2と搬送ベルト63との間に働く動摩擦力を小さくすることができ、第1のカット紙S1がカット紙群Gから完全に抜き出されたときに、第2のカット紙S2の送給を開始することができる。
【0042】
ストック部70から抜き出されたカット紙Sは、重送規制部材30と搬送ベルト63との間に入り込み、重送規制部材30を上方に押し上げながら通過し、下流搬送ベルト83によってさらに前方へ送給される。
【0043】
このように、本実施形態のカット紙送給装置10では、プレート可変支持機構により、カット紙送給方向におけるカバープレート20の位置を変更して搬送ベルト63とカット紙群Gとの接触面積を調整することができるので、部分重送を防ぐか、防げなくてもカット紙S同士の重なり量を抑えることができる。しかも、下流搬送ベルト83の搬送速度を、搬送ベルト63の搬送速度よりも大きくすることで、カット紙群Gから引き出された時点でカット紙S同士が部分的に重なっていても、その重なりを解消することができる。これにより、部分重送の発生を従来より低減させることができる。また、本実施形態では、上面カバー93の1対のスリット93S、93Sによって、カバープレート20を直動可能に支持したので、カバープレート20が安定する。
【0044】
[第2実施形態]
本実施形態のカット紙送給装置10Wは、図6に示されており、カット紙群Gの上端側からカット紙Sが前方へ抜き出される点が第1実施形態と大きく相違する。具体的には、下流ベルト搬送部80の後方かつ上方にベルト搬送部60Wが配置され、搬送ベルト部60Wの真下位置にカット紙Sを積載可能なカット紙収容トレイ95が備えられている。カット紙収容トレイ95は、底板95Aが上下動可能になっていて、圧縮コイルバネ95Bによって上方へ付勢されている。そして、底板95Aの上に載置されたカット紙群Gの上面が搬送ベルト63Wの搬送面に押しつけられるようになっている。また、カバープレート20Wは、カット紙収容トレイ95の後端壁95Kの上端から、カット紙収容トレイ95の上端開口を閉塞するように前後方向にスライド可能になっている。
【0045】
また、カット紙送給装置10Wは、搬送ベルト63Wによってカット紙群Gから抜き出されたカット紙Sを下流搬送ベルト部80へ案内するためのガイド板80Gを備えている。なお、カット紙送給装置10Wには、第1実施形態で示した重送規制部材30及び端ずらし部材73が備えられていない。その他の構成については、第1実施形態と同様になっている。本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0046】
[第3実施形態]
本実施形態のカット紙送給装置110は、図7に示されている。カット紙送給装置110は、ストック部70の下方かつ隣り合った搬送ベルト63同士の間には、ベルトサイド部材111(図7には、一つのみ示されている)が備えられている。ベルトサイド部材111は、前側プーリ62の回転軸より上方かつ搬送ベルト63のカット紙対向面63Mよりも下方であって、搬送ベルト63の幅方向(図7の紙面と直交する方向)と平行な回動軸部112を中心として上下方向に回動可能になっている。ベルトサイド部材111は、例えば、アジャスターやジャッキ等によって、任意の回動位置で固定可能になっている。
【0047】
詳細には、複数のベルトサイド部材111は、後端部同士が図示しない連結部材によって幅方向(図7の紙面と直交する方向)で連結され、一体に回動するようになっている。また、搬送ベルト63の前端部は、ベルトサイド部材111の回動姿勢に関係なくベルトサイド部材111よりも上方へ突出するようになっている。
【0048】
ベルトサイド部材111の後端部を持ち上げるように回動させると、ベルトサイド部材111の上側を向いたカット紙群支持面111Mが、搬送ベルト63のカット紙対向面63Mから斜め後側上方に迫り出す。そして、カット紙群Gのうち搬送ベルト63と接触していた部分の後側が、カット紙群支持面111Mによって搬送ベルト63のカット紙対向面63Mよりも上方へ持ち上げられ、カット紙群Gの下面と搬送ベルト63との接触面積が小さくなる。
【0049】
このように、本実施形態では、ベルトサイド部材111を回動して、カット紙対向面63Mにおけるカット紙群支持面111Mの迫り出し開始位置を前後に変更し、搬送ベルト63とカット紙群Gとの接触面積を調整することができる。これにより、部分重送を防ぐか、防げなくてもカット紙S同士の重なり量を抑えて、後処理でカット紙S同士の重なりを解消可能な状態にすることが可能になり、部分重送の発生を従来より低減させることができる。また、隣り合った搬送ベルト63同士の間でベルトサイド部材111を共有させたので、カット紙Sのうちベルトサイド部材111のカット紙群支持面111Mに支持された部分が幅方向で撓んで搬送ベルト63に接触することを防ぐことができる。
【0050】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0051】
(1)前記第1実施形態では、搬送ベルト63と下流搬送ベルト83を同じ駆動源で駆動していたが、それぞれを別々の駆動源で駆動させてもよい。
【0052】
(2)前記第1及び第3実施形態では、上面プレート93及び搬送ベルト63の搬送面が水平に配置されていたが、前方に向かって下るように水平面に対して傾斜していてもよい。
【0053】
(3)上面プレート93に前後方向に延びるレールを備え、そのレールにカバープレート20を係合させて、スライド可能な構成としてもよい。
【0054】
なお、本発明の技術的範囲には属さないが、前記第1実施形態において、カバープレート20を設けずに、ストック部70を前後方向でスライド可能な構成としてもよい。具体的には、サイド壁94Sを、サイドプレート92の上面に設けられた複数の螺旋孔(図示せず)と螺合するブラケットで構成する。この構成によれば、カット紙群Gを前後方向で移動させることができ、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0055】
10,10W,110 カット紙送給装置
20,20W カバープレート
21 係合突部
60,60W ベルト搬送部
63,63W 搬送ベルト
63M カット紙対向面
80 下流ベルト搬送部
83 下流搬送ベルト
93 上面カバー
93S スリット
111 ベルトサイド部材
111M カット紙群支持面
G カット紙群
S カット紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に重ねられたカット紙群の最上端又は最下端に搬送ベルトを回転接触させて、前記カット紙群からカット紙を順次前方へ抜き出して送給するカット紙送給装置において、
前記搬送ベルトのうちカット紙対向面と平行な板状をなし、前記カット紙対向面におけるカット紙送給方向の後端から中間位置に亘る範囲を覆って前記カット紙対向面の一部を前記カット紙群から離間させるカバープレートと、
前記カット紙送給方向における前記カバープレートの位置を変更して固定可能とするプレート可変支持機構とを備えたことを特徴とするカット紙送給装置。
【請求項2】
前記プレート可変支持機構には、前記カバープレートを前記カット紙送給方向に直動可能に支持する支持レールが1対備えられていることを特徴とする請求項1に記載のカット紙送給装置。
【請求項3】
上下に重ねられたカット紙群の最下端に搬送ベルトを回転接触させて、前記カット紙群からカット紙を順次前方へ抜き出して送給するカット紙送給装置において、
前記搬送ベルトの両側に配置されて、カット紙送給方向に対して前下がりに傾斜した1対のカット紙群支持面を上部に有し、前記1対のカット紙群支持面が前記搬送ベルトのカット紙対向面のうちカット紙送給方向の中間の迫り出し開始位置より斜め後側上方に迫り出して前記カット紙対向面の一部を前記カット紙群から離間させる1対のベルトサイド部材と、
前記1対のベルトサイド部材を回動可能に支持して任意の回動位置に固定可能とすることで、前記カット紙対向面におけるカット紙群支持面の迫り出し開始位置をカット紙送給方向の任意の位置に設定可能とするベルトサイド部材可変支持機構とを備えたことを特徴とするカット紙送給装置。
【請求項4】
前記搬送ベルトは、複数、間隔をあけて平行に配置しかつ、隣り合った前記搬送ベルト同士の間で前記ベルトサイド部材を共有させたことを特徴とする請求項3に記載のカット紙送給装置。
【請求項5】
前記カット紙群から抜き出された前記カット紙をさらに前方へ送給する下流搬送ベルトを備え、
前記下流搬送ベルトの搬送速度を、前記搬送ベルトの搬送速度よりも大きくしたことを特徴とする請求項1乃至4のうち何れか1の請求項に記載のカット紙送給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−158420(P2012−158420A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18161(P2011−18161)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【特許番号】特許第4886075号(P4886075)
【特許公報発行日】平成24年2月29日(2012.2.29)
【出願人】(509068448)江沢事務器株式会社 (5)
【Fターム(参考)】