カップ状容器
【課題】カップ状容器内の飲料を飲みやすくする。
【解決手段】カップ状容器本体(1)と、カップ状容器本体の口縁のフランジ(2)とが合成樹脂により一体成形されてなるカップ状容器において、フランジの外周面(2a)よりも高さ方向で幅広であり、この外周面と略面一であるか又はやや内周側に偏倚した外周面(4a)を有するリング状部材(4)が、カップ状容器本体の胴部(5)とフランジとの間の隅部に所定の固定手段によって取り付けられている。
【解決手段】カップ状容器本体(1)と、カップ状容器本体の口縁のフランジ(2)とが合成樹脂により一体成形されてなるカップ状容器において、フランジの外周面(2a)よりも高さ方向で幅広であり、この外周面と略面一であるか又はやや内周側に偏倚した外周面(4a)を有するリング状部材(4)が、カップ状容器本体の胴部(5)とフランジとの間の隅部に所定の固定手段によって取り付けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料を飲みやすくすることができるカップ状容器に関する。
【背景技術】
【0002】
カップ状容器本体に飲料を充填した後、カップ状容器本体の口縁のフランジにシール蓋を接着することによって容器内部を密封した飲料詰めカップ状容器が市販されている。この飲料詰めカップ状容器を購入した者は、中味の飲料が常温であるか又は冷たい場合はストローをシール蓋に突き刺すことで容易に飲料を飲むことができる。しかし、中味の飲料が熱い場合はストローで飲むことができないので、シール蓋を剥がし、フランジに唇を直に接触させて中味を飲まざるをえない。ところが、フランジは容器の口縁に突起物となって存在し、また、フランジ面はシール蓋を接着するための接着剤が残留する等して粗面化しているので、中味を飲もうとする者が唇を付けたときに違和感を覚える。
【0003】
このような、問題点を解消するものとして、開封部材を有するオーバーキャップが提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。このオーバーキャップは、切刃を有した開封部材をオーバーキャップと一体的に形成し、開封部材とオーバーキャップとの間にヒンジを設けてなるものである。オーバーキャップは予めシール蓋の上からカップ状容器本体に被せ、オーバーキャップ下端部をカップ状容器本体のフランジと嵌合させておき、飲料を飲む際は、ヒンジを支点にして開封部材を指で押し下げ、開封部材の切刃でシール蓋を破ることができる。そして、唇をフランジに直に当てることなく、開封部材とオーバーキャップとの間の隙間に当てることにより、違和感なく中味の飲料を飲むことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−22757号公報
【特許文献2】特開2006−69642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の開封部材付きオーバーキャップを使用して飲料を飲む場合は、開封部材の切刃が中味の飲料に接触するという問題があり、また、飲料がシール蓋の上にこぼれ出てこれがオーバーキャップとカップ状容器本体のフランジとの繋ぎ目から漏れ出るという問題がある。さらに、シール蓋には切り込みが入れられるだけで開封が不完全であることから、飲料が容器本体から出難いという問題がある。
【0006】
従って、本発明は、前記問題点を解決することができるカップ状容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成を採用する。
【0008】
なお、本発明の理解を容易にするため図面の参照符号を括弧書きで付するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0009】
請求項1に係る発明は、カップ状容器本体(1)と、カップ状容器本体(1)の口縁のフランジ(2)とが合成樹脂により一体成形されてなるカップ状容器において、前記フランジ(2)の外周面(2a)よりも高さ方向で幅広であり、かつ、前記外周面(2a)と略面一であるか又は前記外周面(2a)よりもやや内周側に偏倚した外周面(4a)を有するリング状部材(4)が、前記カップ状容器本体(1)の胴部(5)と前記フランジ(2)との間の隅部に所定の固定手段によって取り付けられているカップ状容器の構成を採用する。
【0010】
請求項2に記載されるように、請求項1に記載のカップ状容器において、前記カップ状容器本体(1)には飲料(A)が充填され、前記フランジ(2)にはシール蓋(3)が接着されたものとすることができる。
【0011】
フランジ(2)の平坦な上面は開放状態にあり、その回りを取り囲むものは何ら存在しないので、シール蓋(3)はフランジ(2)に簡易かつ正確に接着されることとなり、従ってカップ状容器の密封性を適正に維持することができ、また、開封時にはシール蓋(3)を簡易にフランジ(2)から引き剥がすことが可能である。
【0012】
請求項3に記載されるように、請求項1又は請求項2に記載のカップ状容器において、前記固定手段が、超音波溶着によって前記リング状部材(4)と前記フランジ(2)との間に形成された溶着部であるものとすることができる。
【0013】
固定手段が超音波溶着であることから、リング状部材(4)とカップ状容器本体(1)との接合力が高められ、かつ、水密性が高められる。
【0014】
請求項4に記載されるように、請求項1又は請求項2に記載のカップ状容器において、前記固定手段が、前記胴部(5)と前記リング状部材(4)との間に設けられた嵌合部(10,11,17)であるものとすることができる。
【0015】
固定手段が嵌合部(10,11,17)であることから、飲み口部材(4)はカップ状容器本体(1)にワンタッチで速やかに接合される。
【0016】
請求項5に記載されるように、請求項1又は請求項2に記載のカップ状容器において、前記固定手段が、前記胴部(5)と前記リング状部材(4)との間に形成された前記フランジ(2)の軸芯を中心に旋回する螺旋を有した雌雄ネジ(9a,9b)であるものとすることができる。
【0017】
固定手段がネジであることから、リング状部材(4)とカップ状容器本体(1)との接合力を適度に加減することが可能である。
【0018】
請求項6に記載されるように、請求項1又は請求項2に記載のカップ状容器において、前記固定手段が、前記胴部(5)と前記リング状部材(4)との間に形成された接着剤層(15)であるものとすることができる。
【0019】
固定手段が接着剤層(15)であることから、リング状部材(4)をカップ状容器本体(1)に簡易に取り付けることができる。
【0020】
請求項7に記載されるように、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のカップ状容器において、前記リング状部材(4)が弾性体により形成され、このリング状部材(4)がその弾性変形によって前記胴部(5)に固定されるものとすることができる。
【0021】
この場合は、前記固定手段と併用することで、より緊密にリング状部材(4)をカップ状容器本体(1)に固定することができる。
【0022】
請求項8に記載されるように、請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のカップ状容器において、前記リング状部材(4)の周方向における所定の外周面部分(16)のみが、他の部分よりも高さ方向で幅広に形成されたものとすることができる。
【0023】
この場合は、幅広の外周面部分(16)に唇を当てることで、飲料(A)をさらに飲みやすくすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、カップ状容器本体(1)内の飲料(A)を飲む際に、唇がフランジ(2)の外周面(2a)と、この外周面(2a)と略面一であるか又はこの外周面(2a)よりもやや内周側に偏倚したリング状部材(4)の外周面(4a)に当たることになるので、唇がフランジ(2)の外周面(2a)にのみ当たることによる違和感、不快感を覚えることなく飲料(A)を飲むことができる。
【0025】
また、飲料(A)が熱い場合であっても、リング状部材(4)の断熱作用によって、リング状部材(4)の外周面(4a)に指を当てることでカップ状容器本体(1)を適正に保持することができ、従って、円滑に飲料(A)を喫することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る飲料詰めカップ状容器の斜視図である。
【図2】飲料詰めカップ状容器の半断面図である。
【図3】空状態のカップ状容器の斜視図である。
【図4】リング状部材の固定手段を示す部分切欠断面図である。
【図5】他の固定手段を示す部分切欠縦断面図である。
【図6】他の固定手段を示す部分切欠縦断面図である。
【図7】他の固定手段を示す部分切欠縦断面図である。
【図8】他の固定手段を示す部分切欠縦断面図である。
【図9】他の固定手段を示す部分切欠縦断面図である。
【図10】(A)はリング状部材をフランジに超音波溶接中であることを示す部分切欠縦断面図、(B)超音波溶接後の部分切欠縦断面図である。
【図11】(A)は他のリング状部材をフランジに超音波溶接中であることを示す部分切欠縦断面図、(B)超音波溶接後の部分切欠縦断面図である。
【図12】他の実施の形態に係るカップ状容器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0028】
<実施の形態1>
図1及び図2に示すように、この飲料詰めカップ状容器は、飲料Aが充填されたカップ状容器本体1と、カップ状容器本体1の口縁のフランジ2に接着されたシール蓋3と、フランジ2下に設置されたリング状部材4とを具備する。
【0029】
カップ状容器本体1は、図2及び図3に示すように、筒状の胴部5と、胴部5の底を閉じる底部6と、胴部5の口縁に形成されたフランジ2とを具備する。胴部5には、望ましくは底部6側からフランジ2側へと向かうにつれて径が大きくなるようにテーパが付けられている。フランジ2は、胴部5の口縁から半径方向外側へと突出する平らなリングとして形成される。このカップ状容器本体1は、望ましくは溶融合成樹脂のインジェクション成形によって一体成形される。もちろん、必要に応じて合成樹脂シートを加熱し、真空成形、圧空成形、プレス成形等するシート成形によって得ることも可能である。
【0030】
シール蓋3は、カップ状容器本体1のフランジ2の外径よりやや大きい外径を有した円形シートとして構成される。シール蓋3は前記フランジ2に接着され、それよりも外周の部分はフランジ2に接着されることなくフランジ2の外周からはみ出す。シール蓋3の外周には、その一箇所から突出する摘み片3aが一体的に設けられる。
【0031】
このシール蓋3は、例えば、基材層/バリア層/イージーピール層の層構造を有する積層体として構成される。基材層は、シール蓋3に密封性、腰の強さ等を与えるためのもので、例えばPETやポリアミド系樹脂フィルムにより形成される。基材層の内面には所望事項が印刷により表示される。バリア層はシール蓋3にガスバリア性を付与するものであり、アルミ箔や蒸着PET、EVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂)などのフィルムにより形成される。イージーピール層は、シール蓋3をカップ状容器に熱接着するとともに、飲用時に容器からシール蓋3を容易に剥がすためのものであり、イージーピール剤をコーティングやEC(エクストルージョン・コータ)によって積層してもよいし、イージーピールフィルムを、ドライラミネート等によって接着して積層してもよい。
【0032】
シール蓋3は、前記層構造を有する素材シートから、前記摘み片3aを有する円板としてあらかじめ打ち抜かれる。
【0033】
シール蓋3は、そのヒートシール剤層が前記フランジ2に接するように、飲料Aが充填された後のカップ状容器本体1の口縁に被せられたうえで、例えば加熱盤によるプレスや超音波溶着によって、フランジ2に接着される。
【0034】
なお、シール蓋3の積層体シートをロール状態で供給し、飲料Aを充填し、積層体シートをカップ状容器本体1にヒートシールした後、図示しない抜き刃にてシール蓋3の形状に打ち抜くことも可能である。
【0035】
リング状部材4は、図4に示すように、前記フランジ2の外周面2aよりも高さ方向で幅広であり、かつ、フランジ2の外周面2aと略面一である外周面4aを有する。このリング状部材4が、前記カップ状容器本体1の胴部5と前記フランジ2との間の隅部に所定の固定手段によって取り付けられる。隅部とは、胴部5とフランジ2とが交差する箇所であって、胴部5の外面とフランジ2の下面に対応する箇所をいう。
【0036】
図示例では、リング状部材4の外周面4aは下方に向かって縮径するテーパ面とされているので、フランジ2の外周面2aに対しリング状部材4の外周面4aはやや屈曲して連なるので、両外周面2a,4aは略面一となっているが、リング状部材4の外周面4aをテーパの無いストレート面とすることで、両外周面2a,4aを完全に面一化することも可能である。
【0037】
リング状部材4は、図4に示すごとく縦断面が略四角形を呈するように、カップ状容器本体1と同様に溶融合成樹脂を用いたインジェクション成形によって一体形成され、上端面4bはフランジ2の下面2bに密着可能な平坦面に形成される。また、内周面4cはカップ状容器本体1の胴部5の外周面に密着可能なテーパ面に形成される。下端面4dは上端面4bに平行な平坦面とされるが、テーパ面等他の形態の面としてもよい。
【0038】
リング状部材4は、嵌合部からなる固定手段によって、カップ状容器本体1の胴部5とフランジ2との間の隅部に固定される。
【0039】
嵌合部は、カップ状容器本体1の胴部5の外周面におけるフランジ2の近傍に形成された環状突起10と、リング状部材4の内周面4cに形成された環状凹溝11とで構成される。
【0040】
リング状部材4がカップ状容器本体1にその底側から被せられ、リング状部材4がカップ状容器本体1の胴部5の外周面に沿って上方向にスライドさせられると、リング状部材4の上部が環状突起10を乗り越え、リング状部材4の環状凹溝11内に環状突起10が嵌り込む。
【0041】
これにより、リング状部材4がカップ状容器本体1のフランジ2と胴部5との隅部に固定される。このようにリング状部材4が固定される結果、フランジ2の外周面2aとリング状部材4の外周面4aは略面一化し、両外周面2a,4aにこのカップ状容器の使用者が指や唇を当てても違和感を持たない。また、リング状部材4の上端面4bはフランジ2の下面に水密的に密着する結果、両者間への飲料Aの侵入が防止される。さらに、中味の飲料Aが熱いものであったとしても、リング状部材4の断熱作用により、使用者はリング状部材4を介してカップ状容器を指先で適正に保持することができる。
【0042】
なお、環状凹溝11と環状突起10は、カップ状容器本体1の胴部5の外周面とリング状部材4の内周面4cとの間で入れ替えることも可能である。
【0043】
次に、前記構成のカップ状容器の作用について説明する。
【0044】
(1)カップ状容器本体1及びリング状部材4がインジェクション成形等望ましい製法によって製造され用意される。また、シール蓋3が例えば打ち抜かれた状態で用意される。
【0045】
(2)カップ状容器本体1に飲料Aが充填される。飲料Aは例えばコーヒーである。飲料Aは無菌充填方法にて常温で充填される。
【0046】
(3)前記充填工程を経た後、カップ状容器本体1がシール蓋3で密封される。具体的には、カップ状容器本体1の口縁のフランジ2にシール蓋3が被せられ、熱プレス、超音波溶着等によって、シール蓋3のヒートシール剤層が溶かされ、これによりシール蓋3がフランジ2の平坦な上面に接着される。また、シール蓋3のフランジ2への接着と同時に、摘み片3aがシール蓋3の半径方向外側へと突出する。
【0047】
(4)リング状部材4がカップ状容器本体1にその底側から被せられ、リング状部材4がカップ状容器本体1の胴部の外周面に沿って上方向にスライドさせられ、フランジ2側へと押し込まれる。押し込みが完了する際に、リング状部材4の上部が環状突起10を乗り越え、リング状部材4の環状凹溝11内に環状突起10が嵌り込む。これにより、リング状部材4がカップ状容器本体1のフランジ2と胴部5との隅部に固定される。
【0048】
(5)かくて、飲料詰めカップ状容器が完成し、必要に応じて飲み口部材4の上から図示しない保護キャップ等が被せられた後、市場へと搬出される。
【0049】
(6)飲料詰めカップ状容器の購入者が中味の飲料Aを温めて飲もうとする場合は、例えば飲料詰めカップ状容器が電子レンジに入れられることで中味の飲料Aが加熱される。
【0050】
電子レンジに入れる前にあらかじめシール蓋3の摘み片3aが購入者によって摘まれて引っ張られ、シール蓋3がカップ状容器本体1のフランジ2から剥がし取られる。
【0051】
なお、このシール蓋3の剥がし取りは、飲料詰めカップ状容器がホットウォーマー等に入れられることによって、あらかじめ加温される場合は不要である。
【0052】
(7)リング状部材4は断熱作用も果たすので、購入者は熱さを感じることなくリング状部材4を指で持ってカップ状容器本体1を保持することができる。
【0053】
また、購入者が飲料Aを喫する際にフランジ2及びリング状部材4の外周面2a,4aに唇を付けても、両外周面2a,4aは略面一化していることから、違和感を覚えることがない。
【0054】
さらに、リング状部材4の上端面4aはフランジ2の下面2bに水密的に密着しているので、両者4a,2b間への飲料Aの侵入が防止される。従って、飲料Aがカップ状容器本体1の胴部5の外壁面を伝って垂れ落ちることもない。
【0055】
<実施の形態2>
図5に示すように、実施の形態2では、リング状部材4の外周面4aがカップ状容器本体1のフランジ2の外周面2aよりもやや内周側に偏倚している。
【0056】
また、フランジ2の外周面2aは面取りされ、その結果フランジ2の外周面2aは凸状の湾曲面を呈している。
【0057】
この場合も、中味の飲料Aを飲もうとする者が指や唇を前記外周面2a,4aに当てても、違和感等を覚えることはない。
【0058】
<実施の形態3>
図6に示すように、実施の形態3では、リング状部材4の外周面4aと上端面4bに対応する部分が板状に形成される。そして、リング状部材4の外周面4aに対応する外周壁と上端面4bに対応する上端壁との間に、外周壁の上下方向に伸びるリブ12が形成される。
【0059】
また、カップ状容器本体1の胴部5側には実施の形態1と同様に半径方向外向きに環状突起10が設けられる。前記上端面4bに対応する上端壁には、前記環状突起10に対応して半径方向内向きに他の環状突起17が設けられる。
【0060】
これらの環状突起10、17で嵌合部が構成され、両環状突起10、17が嵌合することで、リング状部材4が胴部5とフランジ2との間の隅部に固定される。
【0061】
この場合は、前記リブ12により胴部5とリング状部材4との間に厚い空気層が形成されるので、断熱効果が高まる。
【0062】
<実施の形態4>
図7に示すように、実施の形態4では、フランジ2の下面における胴部5寄りの箇所に環状凹部13が形成され、この環状凹部13に対応してリング状部材4の上端面4bには環状凸部14が形成される。
【0063】
リング状部材4をカップ状容器本体1側に固定するに際し、環状突起10が環状凹溝11内に嵌り込むと同時に、環状凹部13内に環状凸部14が嵌り込む。これにより、フランジ2の下面2bとリング状部材4の上端面4bとの結合力が高められ、あるいは両者間にラビリンスパッキンのごとき作用が付与され、従って、フランジ2の下面2bとリング状部材4の上端面4bとの間の水密性が高められる。
【0064】
<実施の形態5>
図8に示すように、実施の形態5では、実施の形態1における図4に示した環状突起10及び環状凹溝11からなる嵌合部に代えて、固定手段としてカップ状容器本体1の胴部5の外周面とリング状部材4の内周面4cとの間に設けられる接着剤層15が採用される。
【0065】
接着剤層15としては、接着剤単体のみの層に限らず、ウレタン等のクッション材からなるテープに接着剤を塗布してなるもの、両面テープ、ホットメルト等を採用することもできる。
【0066】
なお、接着剤層15は、フランジ2の下面2bとリング状部材4の上端面4bとの間の接着に用いることも可能である。
【0067】
また、この実施の形態5において、固定手段として前記接着剤層15に代えリング状部材4の弾性を利用することも可能である。すなわち、リング状部材4をゴム等の弾性体により形成し、このリング状部材4をカップ状容器本体1の胴部5に取り付ける際の弾性変形によって胴部5に固定することができる。
【0068】
また、この場合は、前記各実施の形態の固定手段と併用することで、より緊密にリング状部材4をカップ状容器本体1に固定することができる。しかも、風合いをやわらかくすることで、より唇にソフトな感触を与えることができる。
【0069】
<実施の形態6>
図9に示すように、実施の形態6では、リング状部材4のカップ状容器本体1に対する固定手段が、胴部5の外周面とリング状部材4の内周面との間に形成されたフランジ2の軸芯を中心に旋回する螺旋を有した雌雄ネジ9a,9bとして構成される。
【0070】
固定手段であるネジの締め付け具合によって、リング状部材4とカップ状容器本体1との接合力の加減が可能である。
【0071】
<実施の形態7>
図10(A)(B)に示すように、実施の形態7では、リング状部材4のカップ状容器本体1に対する固定手段が、超音波溶着によってリング状部材4とフランジ2との間に形成される溶着部とされる。
【0072】
超音波溶着方法は図10(A)に示される。同図中、符号7は超音波を出力するホーンを示し、符号8はフランジ2及びリング状部材4を受ける治具を示す。ホーン7と治具8とによってフランジ2及びリング状部材4の二者が挟まれ、ホーン7から超音波が発射されると、フランジ2の三角状突起D(ダイレクター)を基点にフランジ2とリング状部材4との間に摩擦熱が発生し、これによってこれらを構成する合成樹脂の溶着部が形成され、この溶着部によってリング状部材4がカップ状容器本体1のフランジ2に固定され一体化される。
【0073】
なお、三角状突起Dはリング状部材4側に設けてもよいし、ホーン7と治具8の位置は互いに入れ替えてもよい。
【0074】
このように、リング状部材4とフランジ2との間にこれらを構成する合成樹脂の溶着部が形成されることから、この溶着部によってリング状部材4がフランジ2に水密的に接合される。従って、リング状部材4とフランジ2との間への飲料Aの浸み込みが防止される。
【0075】
<実施の形態8>
図11(A)(B)に示すように、実施の形態8では、実施の形態4における構成と実施の形態7における構成とが併用される。
【0076】
すなわち、フランジ2の下面2bにおける胴部5寄りの箇所に環状凹部13が形成され、この環状凹部13に対応してリング状部材4の上端面4bには環状凸部14が形成される。リング状部材4をカップ状容器本体1側に固定するに際し、環状凹部13内に環状凸部14が嵌り込むことにより、リング状部材4とフランジ2との間の水密性が向上する。
【0077】
また、リング状部材4とフランジ2との間に、超音波溶着による溶着部が形成される。この場合、三角状突起Dはフランジ2の環状凹部13の底に形成され、実施の形態7の場合と同様にしてホーン7と治具8とによってフランジ2及びリング状部材4の二者が挟まれ、ホーン7から超音波が発射されることによって、前記溶着部が形成される。
【0078】
<実施の形態9>
図12に示すように、実施の形態9では、リング状部材4の周方向における所定の外周面部分16のみが、他の部分よりも高さ方向で幅広に形成される。
【0079】
この場合は、幅広の外周面部分16に唇を当てることで、飲料Aをさらに飲みやすくすることができる。
【0080】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々変更可能である。例えば、前記実施の形態では中味を熱い飲料として説明したが、冷たい飲料についても本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0081】
1…カップ状容器本体
2…フランジ
2a…外周面
3…シール蓋
4…リング状部材
4a…外周面
5…胴部
9a,9b…雌雄ネジ
10、17…環状突起
11…環状凹溝
12…リブ
15…接着剤層
16…外周面部分
A…飲料
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料を飲みやすくすることができるカップ状容器に関する。
【背景技術】
【0002】
カップ状容器本体に飲料を充填した後、カップ状容器本体の口縁のフランジにシール蓋を接着することによって容器内部を密封した飲料詰めカップ状容器が市販されている。この飲料詰めカップ状容器を購入した者は、中味の飲料が常温であるか又は冷たい場合はストローをシール蓋に突き刺すことで容易に飲料を飲むことができる。しかし、中味の飲料が熱い場合はストローで飲むことができないので、シール蓋を剥がし、フランジに唇を直に接触させて中味を飲まざるをえない。ところが、フランジは容器の口縁に突起物となって存在し、また、フランジ面はシール蓋を接着するための接着剤が残留する等して粗面化しているので、中味を飲もうとする者が唇を付けたときに違和感を覚える。
【0003】
このような、問題点を解消するものとして、開封部材を有するオーバーキャップが提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。このオーバーキャップは、切刃を有した開封部材をオーバーキャップと一体的に形成し、開封部材とオーバーキャップとの間にヒンジを設けてなるものである。オーバーキャップは予めシール蓋の上からカップ状容器本体に被せ、オーバーキャップ下端部をカップ状容器本体のフランジと嵌合させておき、飲料を飲む際は、ヒンジを支点にして開封部材を指で押し下げ、開封部材の切刃でシール蓋を破ることができる。そして、唇をフランジに直に当てることなく、開封部材とオーバーキャップとの間の隙間に当てることにより、違和感なく中味の飲料を飲むことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−22757号公報
【特許文献2】特開2006−69642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の開封部材付きオーバーキャップを使用して飲料を飲む場合は、開封部材の切刃が中味の飲料に接触するという問題があり、また、飲料がシール蓋の上にこぼれ出てこれがオーバーキャップとカップ状容器本体のフランジとの繋ぎ目から漏れ出るという問題がある。さらに、シール蓋には切り込みが入れられるだけで開封が不完全であることから、飲料が容器本体から出難いという問題がある。
【0006】
従って、本発明は、前記問題点を解決することができるカップ状容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成を採用する。
【0008】
なお、本発明の理解を容易にするため図面の参照符号を括弧書きで付するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0009】
請求項1に係る発明は、カップ状容器本体(1)と、カップ状容器本体(1)の口縁のフランジ(2)とが合成樹脂により一体成形されてなるカップ状容器において、前記フランジ(2)の外周面(2a)よりも高さ方向で幅広であり、かつ、前記外周面(2a)と略面一であるか又は前記外周面(2a)よりもやや内周側に偏倚した外周面(4a)を有するリング状部材(4)が、前記カップ状容器本体(1)の胴部(5)と前記フランジ(2)との間の隅部に所定の固定手段によって取り付けられているカップ状容器の構成を採用する。
【0010】
請求項2に記載されるように、請求項1に記載のカップ状容器において、前記カップ状容器本体(1)には飲料(A)が充填され、前記フランジ(2)にはシール蓋(3)が接着されたものとすることができる。
【0011】
フランジ(2)の平坦な上面は開放状態にあり、その回りを取り囲むものは何ら存在しないので、シール蓋(3)はフランジ(2)に簡易かつ正確に接着されることとなり、従ってカップ状容器の密封性を適正に維持することができ、また、開封時にはシール蓋(3)を簡易にフランジ(2)から引き剥がすことが可能である。
【0012】
請求項3に記載されるように、請求項1又は請求項2に記載のカップ状容器において、前記固定手段が、超音波溶着によって前記リング状部材(4)と前記フランジ(2)との間に形成された溶着部であるものとすることができる。
【0013】
固定手段が超音波溶着であることから、リング状部材(4)とカップ状容器本体(1)との接合力が高められ、かつ、水密性が高められる。
【0014】
請求項4に記載されるように、請求項1又は請求項2に記載のカップ状容器において、前記固定手段が、前記胴部(5)と前記リング状部材(4)との間に設けられた嵌合部(10,11,17)であるものとすることができる。
【0015】
固定手段が嵌合部(10,11,17)であることから、飲み口部材(4)はカップ状容器本体(1)にワンタッチで速やかに接合される。
【0016】
請求項5に記載されるように、請求項1又は請求項2に記載のカップ状容器において、前記固定手段が、前記胴部(5)と前記リング状部材(4)との間に形成された前記フランジ(2)の軸芯を中心に旋回する螺旋を有した雌雄ネジ(9a,9b)であるものとすることができる。
【0017】
固定手段がネジであることから、リング状部材(4)とカップ状容器本体(1)との接合力を適度に加減することが可能である。
【0018】
請求項6に記載されるように、請求項1又は請求項2に記載のカップ状容器において、前記固定手段が、前記胴部(5)と前記リング状部材(4)との間に形成された接着剤層(15)であるものとすることができる。
【0019】
固定手段が接着剤層(15)であることから、リング状部材(4)をカップ状容器本体(1)に簡易に取り付けることができる。
【0020】
請求項7に記載されるように、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のカップ状容器において、前記リング状部材(4)が弾性体により形成され、このリング状部材(4)がその弾性変形によって前記胴部(5)に固定されるものとすることができる。
【0021】
この場合は、前記固定手段と併用することで、より緊密にリング状部材(4)をカップ状容器本体(1)に固定することができる。
【0022】
請求項8に記載されるように、請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のカップ状容器において、前記リング状部材(4)の周方向における所定の外周面部分(16)のみが、他の部分よりも高さ方向で幅広に形成されたものとすることができる。
【0023】
この場合は、幅広の外周面部分(16)に唇を当てることで、飲料(A)をさらに飲みやすくすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、カップ状容器本体(1)内の飲料(A)を飲む際に、唇がフランジ(2)の外周面(2a)と、この外周面(2a)と略面一であるか又はこの外周面(2a)よりもやや内周側に偏倚したリング状部材(4)の外周面(4a)に当たることになるので、唇がフランジ(2)の外周面(2a)にのみ当たることによる違和感、不快感を覚えることなく飲料(A)を飲むことができる。
【0025】
また、飲料(A)が熱い場合であっても、リング状部材(4)の断熱作用によって、リング状部材(4)の外周面(4a)に指を当てることでカップ状容器本体(1)を適正に保持することができ、従って、円滑に飲料(A)を喫することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る飲料詰めカップ状容器の斜視図である。
【図2】飲料詰めカップ状容器の半断面図である。
【図3】空状態のカップ状容器の斜視図である。
【図4】リング状部材の固定手段を示す部分切欠断面図である。
【図5】他の固定手段を示す部分切欠縦断面図である。
【図6】他の固定手段を示す部分切欠縦断面図である。
【図7】他の固定手段を示す部分切欠縦断面図である。
【図8】他の固定手段を示す部分切欠縦断面図である。
【図9】他の固定手段を示す部分切欠縦断面図である。
【図10】(A)はリング状部材をフランジに超音波溶接中であることを示す部分切欠縦断面図、(B)超音波溶接後の部分切欠縦断面図である。
【図11】(A)は他のリング状部材をフランジに超音波溶接中であることを示す部分切欠縦断面図、(B)超音波溶接後の部分切欠縦断面図である。
【図12】他の実施の形態に係るカップ状容器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0028】
<実施の形態1>
図1及び図2に示すように、この飲料詰めカップ状容器は、飲料Aが充填されたカップ状容器本体1と、カップ状容器本体1の口縁のフランジ2に接着されたシール蓋3と、フランジ2下に設置されたリング状部材4とを具備する。
【0029】
カップ状容器本体1は、図2及び図3に示すように、筒状の胴部5と、胴部5の底を閉じる底部6と、胴部5の口縁に形成されたフランジ2とを具備する。胴部5には、望ましくは底部6側からフランジ2側へと向かうにつれて径が大きくなるようにテーパが付けられている。フランジ2は、胴部5の口縁から半径方向外側へと突出する平らなリングとして形成される。このカップ状容器本体1は、望ましくは溶融合成樹脂のインジェクション成形によって一体成形される。もちろん、必要に応じて合成樹脂シートを加熱し、真空成形、圧空成形、プレス成形等するシート成形によって得ることも可能である。
【0030】
シール蓋3は、カップ状容器本体1のフランジ2の外径よりやや大きい外径を有した円形シートとして構成される。シール蓋3は前記フランジ2に接着され、それよりも外周の部分はフランジ2に接着されることなくフランジ2の外周からはみ出す。シール蓋3の外周には、その一箇所から突出する摘み片3aが一体的に設けられる。
【0031】
このシール蓋3は、例えば、基材層/バリア層/イージーピール層の層構造を有する積層体として構成される。基材層は、シール蓋3に密封性、腰の強さ等を与えるためのもので、例えばPETやポリアミド系樹脂フィルムにより形成される。基材層の内面には所望事項が印刷により表示される。バリア層はシール蓋3にガスバリア性を付与するものであり、アルミ箔や蒸着PET、EVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂)などのフィルムにより形成される。イージーピール層は、シール蓋3をカップ状容器に熱接着するとともに、飲用時に容器からシール蓋3を容易に剥がすためのものであり、イージーピール剤をコーティングやEC(エクストルージョン・コータ)によって積層してもよいし、イージーピールフィルムを、ドライラミネート等によって接着して積層してもよい。
【0032】
シール蓋3は、前記層構造を有する素材シートから、前記摘み片3aを有する円板としてあらかじめ打ち抜かれる。
【0033】
シール蓋3は、そのヒートシール剤層が前記フランジ2に接するように、飲料Aが充填された後のカップ状容器本体1の口縁に被せられたうえで、例えば加熱盤によるプレスや超音波溶着によって、フランジ2に接着される。
【0034】
なお、シール蓋3の積層体シートをロール状態で供給し、飲料Aを充填し、積層体シートをカップ状容器本体1にヒートシールした後、図示しない抜き刃にてシール蓋3の形状に打ち抜くことも可能である。
【0035】
リング状部材4は、図4に示すように、前記フランジ2の外周面2aよりも高さ方向で幅広であり、かつ、フランジ2の外周面2aと略面一である外周面4aを有する。このリング状部材4が、前記カップ状容器本体1の胴部5と前記フランジ2との間の隅部に所定の固定手段によって取り付けられる。隅部とは、胴部5とフランジ2とが交差する箇所であって、胴部5の外面とフランジ2の下面に対応する箇所をいう。
【0036】
図示例では、リング状部材4の外周面4aは下方に向かって縮径するテーパ面とされているので、フランジ2の外周面2aに対しリング状部材4の外周面4aはやや屈曲して連なるので、両外周面2a,4aは略面一となっているが、リング状部材4の外周面4aをテーパの無いストレート面とすることで、両外周面2a,4aを完全に面一化することも可能である。
【0037】
リング状部材4は、図4に示すごとく縦断面が略四角形を呈するように、カップ状容器本体1と同様に溶融合成樹脂を用いたインジェクション成形によって一体形成され、上端面4bはフランジ2の下面2bに密着可能な平坦面に形成される。また、内周面4cはカップ状容器本体1の胴部5の外周面に密着可能なテーパ面に形成される。下端面4dは上端面4bに平行な平坦面とされるが、テーパ面等他の形態の面としてもよい。
【0038】
リング状部材4は、嵌合部からなる固定手段によって、カップ状容器本体1の胴部5とフランジ2との間の隅部に固定される。
【0039】
嵌合部は、カップ状容器本体1の胴部5の外周面におけるフランジ2の近傍に形成された環状突起10と、リング状部材4の内周面4cに形成された環状凹溝11とで構成される。
【0040】
リング状部材4がカップ状容器本体1にその底側から被せられ、リング状部材4がカップ状容器本体1の胴部5の外周面に沿って上方向にスライドさせられると、リング状部材4の上部が環状突起10を乗り越え、リング状部材4の環状凹溝11内に環状突起10が嵌り込む。
【0041】
これにより、リング状部材4がカップ状容器本体1のフランジ2と胴部5との隅部に固定される。このようにリング状部材4が固定される結果、フランジ2の外周面2aとリング状部材4の外周面4aは略面一化し、両外周面2a,4aにこのカップ状容器の使用者が指や唇を当てても違和感を持たない。また、リング状部材4の上端面4bはフランジ2の下面に水密的に密着する結果、両者間への飲料Aの侵入が防止される。さらに、中味の飲料Aが熱いものであったとしても、リング状部材4の断熱作用により、使用者はリング状部材4を介してカップ状容器を指先で適正に保持することができる。
【0042】
なお、環状凹溝11と環状突起10は、カップ状容器本体1の胴部5の外周面とリング状部材4の内周面4cとの間で入れ替えることも可能である。
【0043】
次に、前記構成のカップ状容器の作用について説明する。
【0044】
(1)カップ状容器本体1及びリング状部材4がインジェクション成形等望ましい製法によって製造され用意される。また、シール蓋3が例えば打ち抜かれた状態で用意される。
【0045】
(2)カップ状容器本体1に飲料Aが充填される。飲料Aは例えばコーヒーである。飲料Aは無菌充填方法にて常温で充填される。
【0046】
(3)前記充填工程を経た後、カップ状容器本体1がシール蓋3で密封される。具体的には、カップ状容器本体1の口縁のフランジ2にシール蓋3が被せられ、熱プレス、超音波溶着等によって、シール蓋3のヒートシール剤層が溶かされ、これによりシール蓋3がフランジ2の平坦な上面に接着される。また、シール蓋3のフランジ2への接着と同時に、摘み片3aがシール蓋3の半径方向外側へと突出する。
【0047】
(4)リング状部材4がカップ状容器本体1にその底側から被せられ、リング状部材4がカップ状容器本体1の胴部の外周面に沿って上方向にスライドさせられ、フランジ2側へと押し込まれる。押し込みが完了する際に、リング状部材4の上部が環状突起10を乗り越え、リング状部材4の環状凹溝11内に環状突起10が嵌り込む。これにより、リング状部材4がカップ状容器本体1のフランジ2と胴部5との隅部に固定される。
【0048】
(5)かくて、飲料詰めカップ状容器が完成し、必要に応じて飲み口部材4の上から図示しない保護キャップ等が被せられた後、市場へと搬出される。
【0049】
(6)飲料詰めカップ状容器の購入者が中味の飲料Aを温めて飲もうとする場合は、例えば飲料詰めカップ状容器が電子レンジに入れられることで中味の飲料Aが加熱される。
【0050】
電子レンジに入れる前にあらかじめシール蓋3の摘み片3aが購入者によって摘まれて引っ張られ、シール蓋3がカップ状容器本体1のフランジ2から剥がし取られる。
【0051】
なお、このシール蓋3の剥がし取りは、飲料詰めカップ状容器がホットウォーマー等に入れられることによって、あらかじめ加温される場合は不要である。
【0052】
(7)リング状部材4は断熱作用も果たすので、購入者は熱さを感じることなくリング状部材4を指で持ってカップ状容器本体1を保持することができる。
【0053】
また、購入者が飲料Aを喫する際にフランジ2及びリング状部材4の外周面2a,4aに唇を付けても、両外周面2a,4aは略面一化していることから、違和感を覚えることがない。
【0054】
さらに、リング状部材4の上端面4aはフランジ2の下面2bに水密的に密着しているので、両者4a,2b間への飲料Aの侵入が防止される。従って、飲料Aがカップ状容器本体1の胴部5の外壁面を伝って垂れ落ちることもない。
【0055】
<実施の形態2>
図5に示すように、実施の形態2では、リング状部材4の外周面4aがカップ状容器本体1のフランジ2の外周面2aよりもやや内周側に偏倚している。
【0056】
また、フランジ2の外周面2aは面取りされ、その結果フランジ2の外周面2aは凸状の湾曲面を呈している。
【0057】
この場合も、中味の飲料Aを飲もうとする者が指や唇を前記外周面2a,4aに当てても、違和感等を覚えることはない。
【0058】
<実施の形態3>
図6に示すように、実施の形態3では、リング状部材4の外周面4aと上端面4bに対応する部分が板状に形成される。そして、リング状部材4の外周面4aに対応する外周壁と上端面4bに対応する上端壁との間に、外周壁の上下方向に伸びるリブ12が形成される。
【0059】
また、カップ状容器本体1の胴部5側には実施の形態1と同様に半径方向外向きに環状突起10が設けられる。前記上端面4bに対応する上端壁には、前記環状突起10に対応して半径方向内向きに他の環状突起17が設けられる。
【0060】
これらの環状突起10、17で嵌合部が構成され、両環状突起10、17が嵌合することで、リング状部材4が胴部5とフランジ2との間の隅部に固定される。
【0061】
この場合は、前記リブ12により胴部5とリング状部材4との間に厚い空気層が形成されるので、断熱効果が高まる。
【0062】
<実施の形態4>
図7に示すように、実施の形態4では、フランジ2の下面における胴部5寄りの箇所に環状凹部13が形成され、この環状凹部13に対応してリング状部材4の上端面4bには環状凸部14が形成される。
【0063】
リング状部材4をカップ状容器本体1側に固定するに際し、環状突起10が環状凹溝11内に嵌り込むと同時に、環状凹部13内に環状凸部14が嵌り込む。これにより、フランジ2の下面2bとリング状部材4の上端面4bとの結合力が高められ、あるいは両者間にラビリンスパッキンのごとき作用が付与され、従って、フランジ2の下面2bとリング状部材4の上端面4bとの間の水密性が高められる。
【0064】
<実施の形態5>
図8に示すように、実施の形態5では、実施の形態1における図4に示した環状突起10及び環状凹溝11からなる嵌合部に代えて、固定手段としてカップ状容器本体1の胴部5の外周面とリング状部材4の内周面4cとの間に設けられる接着剤層15が採用される。
【0065】
接着剤層15としては、接着剤単体のみの層に限らず、ウレタン等のクッション材からなるテープに接着剤を塗布してなるもの、両面テープ、ホットメルト等を採用することもできる。
【0066】
なお、接着剤層15は、フランジ2の下面2bとリング状部材4の上端面4bとの間の接着に用いることも可能である。
【0067】
また、この実施の形態5において、固定手段として前記接着剤層15に代えリング状部材4の弾性を利用することも可能である。すなわち、リング状部材4をゴム等の弾性体により形成し、このリング状部材4をカップ状容器本体1の胴部5に取り付ける際の弾性変形によって胴部5に固定することができる。
【0068】
また、この場合は、前記各実施の形態の固定手段と併用することで、より緊密にリング状部材4をカップ状容器本体1に固定することができる。しかも、風合いをやわらかくすることで、より唇にソフトな感触を与えることができる。
【0069】
<実施の形態6>
図9に示すように、実施の形態6では、リング状部材4のカップ状容器本体1に対する固定手段が、胴部5の外周面とリング状部材4の内周面との間に形成されたフランジ2の軸芯を中心に旋回する螺旋を有した雌雄ネジ9a,9bとして構成される。
【0070】
固定手段であるネジの締め付け具合によって、リング状部材4とカップ状容器本体1との接合力の加減が可能である。
【0071】
<実施の形態7>
図10(A)(B)に示すように、実施の形態7では、リング状部材4のカップ状容器本体1に対する固定手段が、超音波溶着によってリング状部材4とフランジ2との間に形成される溶着部とされる。
【0072】
超音波溶着方法は図10(A)に示される。同図中、符号7は超音波を出力するホーンを示し、符号8はフランジ2及びリング状部材4を受ける治具を示す。ホーン7と治具8とによってフランジ2及びリング状部材4の二者が挟まれ、ホーン7から超音波が発射されると、フランジ2の三角状突起D(ダイレクター)を基点にフランジ2とリング状部材4との間に摩擦熱が発生し、これによってこれらを構成する合成樹脂の溶着部が形成され、この溶着部によってリング状部材4がカップ状容器本体1のフランジ2に固定され一体化される。
【0073】
なお、三角状突起Dはリング状部材4側に設けてもよいし、ホーン7と治具8の位置は互いに入れ替えてもよい。
【0074】
このように、リング状部材4とフランジ2との間にこれらを構成する合成樹脂の溶着部が形成されることから、この溶着部によってリング状部材4がフランジ2に水密的に接合される。従って、リング状部材4とフランジ2との間への飲料Aの浸み込みが防止される。
【0075】
<実施の形態8>
図11(A)(B)に示すように、実施の形態8では、実施の形態4における構成と実施の形態7における構成とが併用される。
【0076】
すなわち、フランジ2の下面2bにおける胴部5寄りの箇所に環状凹部13が形成され、この環状凹部13に対応してリング状部材4の上端面4bには環状凸部14が形成される。リング状部材4をカップ状容器本体1側に固定するに際し、環状凹部13内に環状凸部14が嵌り込むことにより、リング状部材4とフランジ2との間の水密性が向上する。
【0077】
また、リング状部材4とフランジ2との間に、超音波溶着による溶着部が形成される。この場合、三角状突起Dはフランジ2の環状凹部13の底に形成され、実施の形態7の場合と同様にしてホーン7と治具8とによってフランジ2及びリング状部材4の二者が挟まれ、ホーン7から超音波が発射されることによって、前記溶着部が形成される。
【0078】
<実施の形態9>
図12に示すように、実施の形態9では、リング状部材4の周方向における所定の外周面部分16のみが、他の部分よりも高さ方向で幅広に形成される。
【0079】
この場合は、幅広の外周面部分16に唇を当てることで、飲料Aをさらに飲みやすくすることができる。
【0080】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々変更可能である。例えば、前記実施の形態では中味を熱い飲料として説明したが、冷たい飲料についても本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0081】
1…カップ状容器本体
2…フランジ
2a…外周面
3…シール蓋
4…リング状部材
4a…外周面
5…胴部
9a,9b…雌雄ネジ
10、17…環状突起
11…環状凹溝
12…リブ
15…接着剤層
16…外周面部分
A…飲料
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップ状容器本体と、カップ状容器本体の口縁のフランジとが合成樹脂により一体成形されてなるカップ状容器において、前記フランジの周面よりも高さ方向で幅広であり、かつ、前記周面と略面一であるか又は前記周面よりもやや内周側に偏倚した周面を有するリング状部材が、前記カップ状容器本体の胴部と前記フランジとの間の隅部に所定の固定手段によって取り付けられていることを特徴とするカップ状容器。
【請求項2】
請求項1に記載のカップ状容器において、前記カップ状容器本体には飲料が充填され、前記フランジにはシール蓋が接着されたことを特徴とするカップ状容器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のカップ状容器において、前記固定手段が、超音波溶着によって前記リング状部材と前記フランジとの間に形成された溶着部であることを特徴とするカップ状容器。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のカップ状容器において、前記固定手段が、前記胴部と前記リング状部材との間に設けられた嵌合部であることを特徴とするカップ状容器。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のカップ状容器において、前記固定手段が、前記胴部と前記リング状部材との間に形成された前記フランジの軸芯を中心に旋回する螺旋を有した雌雄ネジであることを特徴とするカップ状容器。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載のカップ状容器において、前記固定手段が、前記胴部と前記リング状部材との間に形成された接着剤層であることを特徴とするカップ状容器。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のカップ状容器において、前記リング状部材が弾性体により形成され、このリング状部材がその弾性変形によって前記胴部に固定されたことを特徴とするカップ状容器。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のカップ状容器において、前記リング状部材の周方向における所定の周面部分のみが、他の部分よりも高さ方向で幅広に形成されたことを特徴とするカップ状容器。
【請求項1】
カップ状容器本体と、カップ状容器本体の口縁のフランジとが合成樹脂により一体成形されてなるカップ状容器において、前記フランジの周面よりも高さ方向で幅広であり、かつ、前記周面と略面一であるか又は前記周面よりもやや内周側に偏倚した周面を有するリング状部材が、前記カップ状容器本体の胴部と前記フランジとの間の隅部に所定の固定手段によって取り付けられていることを特徴とするカップ状容器。
【請求項2】
請求項1に記載のカップ状容器において、前記カップ状容器本体には飲料が充填され、前記フランジにはシール蓋が接着されたことを特徴とするカップ状容器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のカップ状容器において、前記固定手段が、超音波溶着によって前記リング状部材と前記フランジとの間に形成された溶着部であることを特徴とするカップ状容器。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のカップ状容器において、前記固定手段が、前記胴部と前記リング状部材との間に設けられた嵌合部であることを特徴とするカップ状容器。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のカップ状容器において、前記固定手段が、前記胴部と前記リング状部材との間に形成された前記フランジの軸芯を中心に旋回する螺旋を有した雌雄ネジであることを特徴とするカップ状容器。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載のカップ状容器において、前記固定手段が、前記胴部と前記リング状部材との間に形成された接着剤層であることを特徴とするカップ状容器。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のカップ状容器において、前記リング状部材が弾性体により形成され、このリング状部材がその弾性変形によって前記胴部に固定されたことを特徴とするカップ状容器。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のカップ状容器において、前記リング状部材の周方向における所定の周面部分のみが、他の部分よりも高さ方向で幅広に形成されたことを特徴とするカップ状容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−91516(P2013−91516A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235651(P2011−235651)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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