説明

カツラ用ゴム系接着剤

【課題】カツラを長期に装着してもベタつかず、毛髪の展着が少なく、しかも安全性の高いカツラ用ゴム系接着剤を開発することを課題とする。
【解決手段】有機溶剤としてヘプタン/ペンタンの混合溶液を使用することが有効であることを見出し、本発明を完成させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カツラ用ゴム系接着剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、カツラの技術が急速に進歩し、女性のみならず男性も躊躇なく愛用し、老若男女が着用する時代となっている。
【0003】
しかしながら、カツラの技術は、毛髪の状態、すなわちいかに天然の毛髪に見せるかに集中しており、カツラを頭皮に留める方法の技術はそれに比べて進歩していないのが現状である。
【0004】
従来、カツラを頭皮に留める方法としては、クリップによる方法、両面テープによる方法、あるいは天然ゴム系の接着剤による方法等があった。例えば、合成ポリイソプレンラテックスを主基剤とする義髪類用接着剤が開示されている(特開昭57−92073号公報(特許文献1))が、いずれも装着保持時間が1日程度であり、また水泳時に離脱する等の欠点があり、一方強固に固定するとはずし難く、また有害な成分を含んだ接着剤である等、カツラを常用している人たちからは不満の声が上がっていた。
【0005】
そこで本発明者は、上記のような問題を解決できる接着剤を開発し、既に特許出願をしている(特開2002−317164号公報(特許文献2))。すなわち、アクリルと酢酸ビニル樹脂との共重合エマルジョンを主成分とする水性接着剤を発明した。
【0006】
しかし、長期にカツラを装着した場合、表面のベタツキやカツラの毛髪の展着があるという欠点があった。
【0007】
【特許文献1】特開昭57−92073号公報
【特許文献2】特開2002−317164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
カツラを長期に装着してもベタつかず、毛髪の展着が少なく、しかも安全性の高いカツラ用ゴム系接着剤を開発することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意努力した結果、有機溶剤としてヘプタン/ペンタンの混合溶液を使用することが有効であることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は
(1)有機溶剤としてヘプタン/ペンタンの混合溶液を使用したことを特徴とするカツラ用ゴム系接着剤、
(2)(1)記載のカツラ用接着剤において、抗炎症剤及び/又は殺菌剤を添加したことを特徴とするカツラ用ゴム系接着剤、
(3)(1)又は(2)に記載のカツラ用接着剤において、シリカ、タルク、ゼオライトのいずれか1以上を添加することを特徴とするカツラ用ゴム系接着剤
に関する。
【0011】
ゴム系接着剤に溶剤を必要とする理由は、ゴムが乾燥して皮膜を作らないように均一に分散させておくためと、一定の膜厚をつくること、及び塗布し易くするために一定の粘度にするためである。
【0012】
一般的に、ゴム系接着剤と称されている接着剤は、有機溶剤にトルエン・キシレン及びn-ヘキサン/イソヘキサン混合溶液が使用されており、これらは化粧品原料にも使用が許可されていない成分であり、人間の肌と同然の頭皮に触れるカツラ用接着剤としては有害性の観点から好ましくないといえる。
【0013】
そこで、本発明者等は化粧品原料としても許可されており、かつ長期にカツラを装着しても表面のベタツキを抑制することができ、カツラの毛髪の展着を防ぐことができ、しかも安全性が高い成分を探索した結果、ヘプタン/ペンタンの混合溶液が有機溶剤として好ましいことを見出した。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、カツラを長期に装着してもベタつかず、カツラの毛髪の展着が少なく、しかも安全性の高いカツラ用ゴム系接着剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明を具体的に説明するために実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0016】
(接着剤成分内訳)
1.天然ゴム/ロジン 20〜40%
ヘプタン/ペンタン混合溶液 70〜48%
エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類 10〜12%
抗炎症剤、殺菌剤 微量
2.天然ゴム/ロジン 20〜40%
ヘプタン/ペンタン混合溶液 70〜48%
エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類 10〜12%
抗炎症剤、殺菌剤 微量
シリカ、タルク、ゼオライト 微量
【0017】
上記の成分割合を見ても分かるように、有機溶剤として用いられるヘプタン/ペンタン混合溶液は、70〜48%と非常に多く、従って体に有害な成分であってはならない。
【0018】
また、天然ゴムとしては、通常高分子天然ゴムを接着剤とするが、本発明においては低分子天然ゴム、例えば分子量10〜400程度の天然ゴムを用いるのが好ましい。
【実施例2】
【0019】
(モニター試験)
以下の成分を有する本発明の低分子天然ゴムラテックスからなる接着剤を使用したカツラを、従来のカツラ用粘着剤を使用したカツラを装着していた方々30名のモニターに30日間装着させ、その結果を表1にまとめた。
【0020】
試用品の成分
天然ゴム/ロジン
ヘプタン/ペンタン混合溶液
エタノール(溶剤)
塩酸ジフェンヒドラミン(抗炎症剤)
グリチルリチン酸ジカリウム(抗炎症剤)
塩化セチルピリジニウム(防腐剤)
シリカ(表面処理、吸着剤)
タルク(表面処理、吸着剤)
ゼオライト(表面処理、吸着剤)
【0021】
【表1】

【0022】
なお、表中「炎症者」、「ベタツキ感」及び「毛髪の展着」は、本発明品の装着においての評価である。
【0023】
また、装着期間とは、洗髪回数と同義であり、入浴洗髪時にシャンプーを3g手に取り、直接頭髪に塗布しシャワーで洗髪し、これを1日1回として洗髪回数、すなわち装着期間とした。
【0024】
表1から明らかなように、従来品のカツラは、装着後10日前後で頭皮から剥離しやすくなるが、本発明品により装着したカツラは、装着してから10日以上はしっかりと固定されていることが分かる。また、長期の装着でも従来品に比べ「ベタツキ感があまり感じられない」し、毛髪の展着も「従来品に比べ少なく」なっている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶剤としてヘプタン/ペンタンの混合溶液を使用したことを特徴とするカツラ用ゴム系接着剤。
【請求項2】
請求項1記載のカツラ用接着剤において、抗炎症剤及び/又は殺菌剤を添加したことを特徴とするカツラ用ゴム系接着剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載のカツラ用接着剤において、シリカ、タルク、ゼオライトのいずれか1以上を添加することを特徴とするカツラ用ゴム系接着剤。