説明

カテプシンHの使用

本発明は、カテプシンHの使用に関する。本発明の他の局面は、薬剤スクリーニングのため、疼痛感受性の診断のため、および疼痛の処置のための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテプシンHの使用に関する。本発明の他の局面は、薬剤スクリーニングの方法、疼痛感受性診断の方法及び疼痛処置の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
西欧諸国では、慢性疼痛は、何百万という国民の保健福祉を損なう主要な未解決の健康問題である。慢性疼痛は、それを患う個人の幸せを厳しく苦しめ、そしてそれには、しばしば欝病をもたらす自律神経症状が高い頻度で付随又は追随する。慢性疼痛は、個人的な苦痛及び膨大な社会経済的コストをもたらす。既存の薬理学的疼痛療法は、有効性及び安全性の両者に関して広範に満足させるものではない。
【0003】
最先端の疼痛処置に関する深刻な欠点を考慮に入れると、進行中の疼痛の処置のため、並びに慢性疼痛への進展の可能性に関する診断及び予測のための新規な選択肢に対する必要性がおおいにある。特に、急速に進展した疼痛の神経生物学の理解と欠点のない最先端の効果的な治療法の提供に対する満たされていない臨床ニーズとの間の巨大なギャップを考慮に入れると、取り組みは、新規な種類の鎮痛薬のための、新しいターゲットの発見に向けられる必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、新しい種類の疼痛調節剤を開発し提供するための新しい手段を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、疼痛および特には神経障害性疼痛を調節する化合物を同定するために、カテプシンH又はその機能的フラグメント若しくは誘導体を使用することによって解決される。
【0006】
本発明は、カテプシンHの発現が神経障害性疼痛のマウスモデルにおける疼痛感受性と密接に相関することを初めて示す、発明者らの驚くべき所見に基づいている。
【0007】
疼痛は、国際疼痛研究会の定義によると、現実的若しくは潜在的組織損傷に伴う、又はその様な損傷に関して表現される不快な感覚的及び精神的な経験である。 疼痛は、通常、組織の損傷又は潜在的な損傷を検出し、そしてコード化することに特化された侵害性神経系の活性化の帰結である。疼痛は、従って、身体への現実的又は潜在的損傷を最小化するための反応を開始させる、身体の警報システムの一部である。疼痛は、病状の一次症状である可能性があるか、又はしばしば生物学的に意味の無い病的状態の副次効果である可能性がある。
【0008】
疼痛は、急性又は慢性である場合がある。急性の疼痛は、潜在的又は現実的な損傷を知らせる生理学的信号である。それは、組織損傷、感染、炎症又は他の急性の原因に付随して起こり、肉体的損傷又は故障の後にその人に警報を出す。急性疼痛が適切に処置されない場合、慢性疼痛を引き起こす可能性がある。
【0009】
慢性疼痛は、種々の原因、期間、強さ及び特異的症状を有する病的状態である。
【0010】
慢性疼痛は、侵害性起源の、炎症性の又は神経障害性のものである可能性がある。侵害受容性疼痛は、体性又は内臓性の疼痛感受性神経線維の進行している活性化に比例すると判断される。神経障害性疼痛は、末梢又は中枢神経組織のあらゆる種類の損傷に起因する疼痛であり;それは末梢神経系、中枢神経系(CNS)又は両者における異常な体性感覚過程によって持続すると思われている(疼痛メカニズムの概要については、例えば、Scholz and Woolf,2002;Julius and Basbaum,2001,Woolf and Mannion,1999;Wood,J.D.,2000;Woolf and Salter,2000を参照)。
【0011】
慢性神経障害性疼痛は、患者によって違いがある。最近のデータは、個人の疼痛感受性が個人の苦しみの大きさのために重要な役割を演じている、即ち、疼痛、特に神経障害性疼痛の進行に対する重要な遺伝的素因があることを示している。本発明は、慢性疼痛のげっ歯類モデルで疼痛感受性遺伝子(即ち、与えられた一定の程度の組織損傷の存在で感じる疼痛の大きさを決定する遺伝子)を特定することを目指した、本発明者らの広範な研究に基づく。本発明者らによって使用されたげっ歯類モデル及び実験設定は、異なる個体の中で、a)神経病変の性質及び均一性が正確に制御でき、b)遺伝的及び環境的変動を最小限にできる、実験条件を可能にした。
【0012】
カテプシンH(CTSH;Atlas of Genetics and Cytogenetics in Oncology and Haematology(http://atlasgeneticsoncology.org)に従う副題:ACC−4、ACC−5、CPSB、DKFZp686B24257、EC 3.4.22.16、MGC1519、アリューレイン(aleurain)、小鎖(minichain))は、リソソームプロテアーゼである。
【0013】
ヒトカテプシンHの遺伝子座は、染色体15q24−125である(例えば、Atlas of Genetics and Cytogenetics in Oncology and Haematologyを参照のこと)。この遺伝子は、全長が23kbにわたるゲノム配列の12エキソンを含む。ヒトプレプロカテプシンHのヌクレオチド配列は、例えば、Fuchs and Gassen,1989,Nucleic Acids Res.17:9471−9471により公開された。ラットのカテプシンHの遺伝子構造は、例えば、Ishidoh et al,FEBS Letters,1989,Vol.253,number 1,2,103−107により公開された。染色体15上のホモサピエンスCTSHのゲノム配列は、例えば、NCBIのホームページにて登録番号NG_009614.1(配列番号1)で検索することができる。
【0014】
カテプシンHの遺伝子は、TATA−およびCAAT−を含まないプロモータならびにエキソン1の上流に1つのGCボックスを有している。カテプシンH cDNAの2つの異なる形態は、前立腺組織および癌細胞株中で検出されている:全長形態(CTSH)およびシグナルペプチド領域での12アミノ酸の欠失による切断形態(CTSHdelta 10−21)(Atlas of Genetics and Cytogenetics in Oncology and Haematologyを参照のこと)。プレプロ酵素転写物の長さは、1005bpである。カテプシンHのコードポリヌクレオチド配列は、NCBIヌクレオチドデータベースで以下のような登録番号で入手可能である:BC006878(CTSH、完全コード配列、ハツカネズミ、配列番号4、NM_004390.3(ホモサピエンスCTSH 転写改変体1 mRNA(配列番号2)、NM_148979.2(ホモサピエンスCTSH、転写改変体2 mRNA(配列番号3))。当業者は、NCBIデータベースよりカテプシンHのさらなるコード配列またはゲノム配列を検索する方法を知っている(他の種のカテプシンH;存在する場合、カテプシンHの改変体または異なるアイソフォーム)。以下でカテプシンHコード配列を言及する場合、これは、上記のmRNAまたはコード配列の全てを意味し得る;配列番号2、3および4に従う配列が好ましい例である。
【0015】
カテプシンHのタンパク質配列は、NCBIタンパク質データベースにて、例えば以下の登録番号で入手可能である:ホモサピエンス(hs)カテプシンHアイソフォーム プレプロタンパク質:NP_004381(配列番号8);hsアイソフォームb 前駆体:NP:683880(配列番号9);マウス(ハツカネズミ) カテプシンH:プレプロタンパク質:NP_031827;ハツカネズミアイソフォームCRA_a:EDL20900、ハツカネズミアイソフォームCRA_b:EDL20901、ラット(ドブネズミ)カテプシンH:NP_037071;カテプシンH アイソフォームCRA−a(ドブネズミ):EDL77562、カテプシンHのアイソフォームCRA−b(ドブネズミ):EDL77563、カテプシンH。さらにこのタンパク質配列は、UniProtKB データベース(www.beta.uniprot.org)より、以下の登録番号で入手可能である:P09668(HUMAN_CATH、ヒトカテプシンH、配列番号5)。以下でカテプシンHタンパク質またはアミノ酸配列を言及する場合、これは、上記のタンパク質配列または上記のコード配列より翻訳されたタンパク質配列の全てを意味し得る;例えば、配列番号5、6、7、8または9。
【0016】
NCBIは、バイオテクノロジー情報の国際センターである(住所:National Centre for Biotechnology Information,National Library of Medicine,Building 38A,Bethesda,MD 20894,USA;ウエブアドレス:www.ncbi.nhm.nih.gov)。さらなる配列(例えば、SwissProtまたはEMBL登録番号を有する配列)は、www.beta.uniprot.orgのUniProtKBデータベースで検索可能である。
【0017】
カテプシンHは、アミノペプチダーゼおよび弱いエンドペプチダーゼ機能を持つリソソームプロテアーゼである。これは、C1(パパイン様)システインプロテアーゼのファミリーに属している。カテプシンHタンパク質は、335個のアミノ酸のプレプロ酵素として合成され、タンパク質分解によってエンドソームまたはリソソーム内の活性な単鎖中にプロセスされる。重鎖および軽鎖(一緒になって長鎖と呼ばれる)に加え、カテプシンHは、いわゆる小鎖(mini chain)「EPQNCSAT」を含んでおり、これはプロペプチドに由来している。(カテプシンHの構造については、Turk et al.,Biological Chemistry,1997も参照のこと)。この小鎖は、カテプシンHのアミニペプチダーゼ(aminipeptidase)活性に関与し、基質認識において重要な役割を果たす。ヒトカテプシンHを欠く小鎖の組み換え形態は、エンドペプチダーゼであると示された(Valiljeva et al,2003)。カテプシンHのエンドペプチダーゼ基質は、例えば以下のとおりである:Bz−Arg+NHNap、Bz−Arg+NH−Mec、Bz−Phe−Val−Arg+NHMec。これは、基質のジペプチジル−ペプチダーゼ活性を有している:Pro−Gly+PheおよびPro−Arg+NHNap。これは、基質のアミノペプチダーゼ活性を有している:H−Arg−NH−Mec、Bz−Arg−NH−Mec、Bz−Arg−NH−MecおよびH−Cit−NH−Mec(例えば、Rothe and Dodt,1992を参照のこと;Bz=ベンゾイル、NH−Mec=e−メチルクマリル−7−アミド;Cit= シトルリン)。天然に生じるカテプシンHの阻害剤は、シス他チン、α2−マクログロブリンならびにマウス細胞障害性リンパ球CTLA−2β由来の抗原である。
【0018】
カテプシンHは、腎臓において最も高いレベルで広範に発現される。その発現は、いくつかの癌組織中で増加される場合がある。カテプシンは、エンドソーム−リソソーム区画中に優先的に局在するが、ある程度までは分泌され、血液中に循環している。
【0019】
カテプシンHの機能には、一般的には以下のものが含まれる:プロテアーゼ活性(例えば加水分解酵素活性)、ペプチダーゼ活性(例えば、アミノペプチダーゼ、ジペプチジルペプチダーゼ、エクソペプチダーゼまたはエンドペプチダーゼ活性)、アシル基転移酵素活性(Koga et al.,1991を参照のこと);上記の基質の切断;未変性のC5の切断およびケモタキシンC5aの産生、疎水性界面活性剤関連タンパク質Cのプロセシング、フィブロネクチンおよびフィブリノゲンの切断および/または分解。さらに具体的には、細胞内タンパク質分解において、リソソームシステインプロテアーゼとして関与する。未変性のC5の切断によってケモタキシンC5aの産生を生じる。カテプシンHは、疎水性界面活性剤関連タンパク質Cのプロセシングに関与する。さらに不安定なアテローム硬化型プラークの発生に関与すると思われ、かつ初期のアテローム発生にも関与する可能性がある。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明による使用は、疼痛、特に神経障害性疼痛の予防及び/又は処置のための新規な物質の同定を可能にする。本発明による使用は、望ましい(即ち、疼痛感覚を低下させる)性質を備えた化合物の同定、並びに望ましくない(即ち、疼痛感覚を高める)性質を備えた化合物の同定を含む。更にまた、本発明は、疾患又は病的状態の予防及び/又は処置に有用であることが既に確認された化合物のいずれにも、更なる特徴付けを可能にする。この場合、本発明は、例えば、不要な副作用(即ち、疼痛感覚増強)を有することが確認された活性化合物を除外するために使用することができる。所定の疾患に対する候補化合物の、例えば、カテプシンH(タンパク質及び/又は核酸、発現及び/又は機能など)に対する影響の概容を描くことができる。
【0021】
本発明の別の局面に使用される化合物/試験化合物/活性化合物は、精製された、部分的に精製された、合成された又は生化学的若しくは分子生物学的な方法による製造の何れかの、いかなる生物学的若しくは化学的物質又は天然物抽出物であってもよい。
【0022】
本発明の別の局面の意味で、疼痛を調節する活性があると考えられる化合物は、カテプシンHの機能の1つ又は細胞内のカテプシンH(タンパク質又は核酸)の量に対して、及びカテプシンHの発現、翻訳後修飾(例えば、N−グリコシル化又は処理(例えば、開裂))、タンパク質の折りたたみ又は活性化に対して影響を及ぼす如何なる物質であってもよい。
【0023】
この目的を達成するためには、この物質はカテプシンH(例えば、上又は下にリストアップしたようなもの)のいかなる機能を調節させてもよい。カテプシンHタンパク質活性は、物質によって、例えば、カテプシンHポリペプチド/タンパク質又はそのフラグメントの直接的な相互作用及び干渉によって調節されてもよい。この物質は、また、カテプシンHの発現を、例えば、転写のレベル(開始、伸長、処理など)、転写安定性、翻訳について、調節させてもよい。更にそれは、翻訳後修飾、不活性形態から活性形態への処理(活性なタンパク質へのプレプロ構造の開裂)、並びにカテプシンHのタンパク質折りたたみなどを調節させてもよい。この物質は、直接的に又は間接的に(間接的な意味で、即ち、カテプシンHの機能/タンパク質活性/発現などに影響を与える天然のシグナル伝達カスケードに(プラス又はマイナスに)干渉することによって)上記の効果を発揮させてもよい。
【0024】
カテプシンHの機能には、上記に掲げたもの、例えば、プロテアーゼ活性;1つ又はそれ以上の上記に掲げたようなタンパク質基質のアミノ末端からジペプチドを除去する能力;1つ又はそれ以上の上記に掲げたようなタンパク質基質と特異的に相互作用する能力(タンパク質−タンパク質相互作用);1つ又はそれ以上の上記に掲げたようなタンパク質基質を開裂及び/又は活性化する能力;上記に掲げたようなタンパク質またはペプチド基質を処理する能力;上記に掲げたような阻害剤の1つによって阻害される能力が含まれる。
【0025】
カテプシンHの機能には、また、一般に、カテプシンHタンパク質又はその核酸若しくはフラグメントが(タンパク質、ペプチド、核酸、合成分子を含むがこれらに限定されない)他の分子と相互作用する能力、そして好ましくはタンパク質基質と相互作用しそして開裂させることができる能力が含まれる。
【0026】
酵素の基質とは、本件出願の用語の範囲で、酵素によって改変できるあらゆる分子であると理解される。本発明の範囲にある天然の基質は、それが天然の生理的又は病理学的状況で発生する形態に相当する(上記ような)分子であり、それは、また、それぞれの酵素によって変更され得る分子である。
【0027】
疼痛および特には神経障害性疼痛の調節は、減少か増加の何れかであってよい。
【0028】
相互に関連した本発明のグループの一局面によれば、カテプシンHのフラグメント又は誘導体が使用されてもよい。フラグメントは、タンパク質、ポリペプチド又はポリ核酸のフラグメントであってもよい。
【0029】
タンパク質又はポリペプチドのフラグメントは、1つ又はそれ以上の末端(N末端及び/又はC末端)を持つ、及び/又は、カテプシンHの完全長例と比較した場合、1つ、2つ又はそれ以上のアミノ酸の内部欠失を持つタンパク質またはポリペプチドであり;フラグメントは、例えば、図7の説明に記載したようなドメインおよび/またはフラグメントを含む(以下を参照のこと)。
【0030】
カテプシンHタンパク質の機能的フラグメントは、少なくとも1つ又はそれ以上の完全長タンパク質の機能的特性、特に上記のような機能的特性、を有する、このタンパク質のあらゆるフラグメントである。
【0031】
ポリヌクレオチド酸のフラグメントは、1つ又はそれ以上の末端(5’−及び/又は3’−)を持つ、及び/又は、完全長のゲノム又はコード配列と比較した場合、1つ、2つ又はそれ以上のヌクレオチドの内部欠失を持つポリヌクレオチド酸又はオリゴヌクレオチドである。カテプシンH核酸の機能的フラグメントは、少なくとも1つ又はそれ以上の完全長ポリ核酸(mRNA,ゲノム又はコード配列)の機能的特性を有する、あらゆるフラグメントである。
【0032】
カテプシンHの誘導体という用語は、天然物の形態との比較、特に配列番号5、6、7、8または9によるカテプシンHと比較して、カテプシンHのあらゆる種類の欠失ではない改変を含む。カテプシンHの機能的誘導体は、少なくとも1つ、そして好ましくは2つ以上の未改変タンパク質の機能的特性を有する、このタンパク質のあらゆる誘導体である。誘導体は、例えば、アミノ酸若しくはヌクレオチド配列の改変、又は、例えば、ポリペプチド又はポリヌクレオチドの安定化(核酸骨格のホスホルチオエート修飾又はアミノ酸間の結合の交換など)をもたらす、又はポリペプチド又はポリヌクレオチドの所定の細胞への標的化を可能にする、又は細胞内への侵入若しくは細胞による取り込みを容易にする(細胞透過性ホスホペプチド、細胞透過性ペプチドベクターへのオルトカップリング、例えば、アンテナペディア/透過性、TAT及びシグナルペプチドを基本にした配列;又は特異的トランスポータ又はインポータ用のリガンドの部分への結合)など、化学的又は生物学的改変などの、あらゆる種類の他の変更を含む。
【0033】
本発明の別の局面は、疼痛および特には神経障害性疼痛を調節する化合物を同定又は分析するための、カテプシンH又はその機能的フラグメントを異種的に発現する、非ヒトトランスジェニック動物の使用に関する。
【0034】
非ヒト動物は、いかなる非ヒト動物であってもよい。好ましくは、ラット又はマウスのような齧歯類である。
【0035】
トランスジェニック動物は、そのゲノム内に意図的に移入された外来DNAを持つ動物である。動物ゲノムへの外来DNAの導入は、標準的な手順に従って行うことができる(例えば、Transgenic Animal Technology A Laboratory Handbook.C.A.Pinkert,editor;Academic Press Inc.,San Diego,California,1994(ISBN:0125571658)を参照)。
【0036】
異種発現という用語は、宿主生物中の正常な遺伝子発現とは(定常状態のレベル、量、タイミング又は発現される遺伝子の組織分布に関して、又は発現される遺伝子の種類(即ち、その遺伝子は宿主内では通常全く発現されない)に関して)異なる発現を指す。異種発現は、構成的又は誘導性であってもよい。好適な誘導発現系は、当該分野でよく知られている(例えば、テトラサイクリン誘導系など)。生物は、細胞又は非ヒト動物であればよい。
【0037】
別の局面によれば、本発明は、亢進した疼痛感受性のモデルシステムとして、カテプシンH又はその機能的フラグメントを異種性に発現する、非ヒトトランスジェニック動物の使用に関する。
【0038】
更に、本発明の別の局面は、疼痛を調節する化合物を同定又は分析するための、非ヒトカテプシンHノックアウト動物の使用に関する。
【0039】
ノックアウト生物(動物又は細胞など)は、遺伝子の発現又は機能が部分的に又は完全に削除され、ゲノム的並びに機能的なノックアウト、誘導的並びに構成的なノックアウトを含む生物を指す。ノックアウト生物の創出は、ノックアウト生物を作り出すために使用することができる細胞又は動物と同様、当該分野でよく知られている。カテプシンHノックアウトマウスの創出は、Pham and Ley,1999に記載されている。
【0040】
本発明の更なる局面は、低下した疼痛感受性、特に低下した神経障害性感受性のモデルシステムとして、非ヒトカテプシンHノックアウト動物の使用に関する。
【0041】
疼痛、特に神経障害性疼痛を調節する化合物を同定するための、カテプシンH又はその機能的フラグメントを異種的に発現する細胞の使用は、本発明の別の局面である。
【0042】
細胞は、例えば、核酸ベクターを移入させることができ、レポーター遺伝子を発現することができる細胞のような、いかなる原核生物又は真核生物の細胞であってもよい。これらは、基本的に初代細胞及び細胞培養由来細胞、例えば、多細胞生物及び組織由来の細胞(HeLA、CHO、COS、SF9又は3T3細胞など)若しくは酵母のような単細胞生物由来の細胞(例えば、サッカロミセス・ポンベ又はサッカロミセス・セレビシエ)のいずれかの細胞を含む真核培養細胞、又は原核培養細胞、好ましくはピチア属またはエシェリヒア・コリ(E.coli)を含む。組織由来の細胞及び試料は、血液採取、組織穿刺又は外科的手法のような周知の技術によって得ることができる。
【0043】
1つの実施態様によれば、改変前の状態と比較して低いカテプシンH活性を有する改変細胞が使用される。このように、例えば、被験化合物が、低下した又は完全に廃絶したカテプシンH活性を亢進又は復活させることができるかどうかをテストすることができる。あるいは、疼痛感受性が低下した状況で、化合物がその機能を(例えば、疼痛調節又は別の病的状態若しくは疾患との関連における機能でも)実行できるかどうかを試験することができる。
【0044】
改変は、カテプシンH活性の低下、カテプシンH転写物の定常状態レベルの低下(即ち、カテプシンH転写又は転写物安定化の活性化による)又はカテプシンHタンパク質の定常状態レベルの低下(即ち、カテプシンHの翻訳又は翻訳後プロセシングの活性化による;カテプシンH翻訳後修飾の調節による、又は安定化の活性化による、又はその分解の阻害による)につながるいかなる種類の改変(安定的又は一過性、好ましくは安定的)でもよい。これは、例えば、カテプシンHのドミナントネガティブ変異体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、カテプシンHのRNAi構築物の利用によって、機能的又はゲノム性のカテプシンHノックアウト(それは、例えば、誘導性でもよい)の創出又は当該分野でに知られている他の好適な技術によって達成することができる。上記の技術の概要については、例えば、Current protocols in Molecular biology(2000) J.G.Seidman,Chapter 23,Supplemtent 52,John Wiley and Sons,Inc.;Gene Targeting:a practical approach(1995),Editor:A.L.Joyner,IRL Press;Genetic Manipulation of Receptor Expression and Function,2000;Antisense Therapeutics,1996;Scherr et al,2003を参照されたい。
【0045】
1つの実施態様によれば、カテプシンHノックアウト細胞が用いられる。ノックアウトの創出に好適な細胞株は当該分野でよく知られており、例えば、Current protocols in Molecular Biology(2000) J.G.Seidman,Chapter 23,Supplement 52,John Wiley and Sons,Inc;又は Gene Targeting a practical approach.(1995) Ed.A.L.Joyner,IRL Press を参照されたい。カテプシンH(DPPI)ノックアウト細胞の創出は、同様に、Pham and Ley,1999に記載されている(DPPIネズミ胚幹細胞ノックアウトクローンの創出、8,628ページ、左欄上半部を参照)。
【0046】
本発明の別の局面は、従って、疼痛、特に神経障害性疼痛を調節する化合物を同定又は分析するための、カテプシンノックアウト細胞の使用に関する。
【0047】
更に、低下した疼痛感受性、特に低下した神経障害性疼痛のモデルシステムとしてのカテプシンノックアウト細胞の使用は、本発明の相互に関連したグループの別の局面である。
【0048】
本発明の別の実施態様によれば、細胞は、参照細胞(例えば、未改変の状態にある同じ細胞)と比較してより高いカテプシンHの量を有することができる。カテプシンHの発現量は疼痛感受性に関係するため、この細胞システムは亢進した疼痛感受性の状態に類似した働きができる。
【0049】
本発明は、従ってまた、亢進した疼痛感受性、特に神経障害性感受性のモデルシステムとして、カテプシンH又はその機能的フラグメントを異種的に発現する細胞の使用に関する。
【0050】
疼痛、特に神経障害性疼痛を調節する化合物を同定又は分析するための、カテプシンHプロモータ及び/又はエンハンサーと発現可能に連結したレポーター遺伝子を異種的に発現する細胞の使用は、関連する本発明の別の実施態様である。
【0051】
本発明の上記の局面は、当該分野で一般に公知である典型的なレポーター遺伝子アッセイに基づく。この目的を達成するために、最適なプロモータは、プロモータが活性化されるとレポーター遺伝子が発現するように、選択された宿主細胞の種類に好適な発現ベクターの最適なレポーター遺伝子の上流に挿入される。その後、構築物は選りぬきの宿主細胞に導入される。形質転換又はトランスフェクションのための好適な方法、並びに細胞培養及びレポーター遺伝子発現の検出の条件は、当該分野でよく知られている(例えば、下に表示した標準的な文献を参照)。好適な条件は、ベクター、レポーター遺伝子及び市販の必要な試薬と同様、当該分野でよく知られている。
【0052】
ベクターは、環状又は線状ポリヌクレオチド分子、例えば、DNAプラスミド、バクテリオファージ又はコスミドであり、その助けによってポリヌクレオチドフラグメント(例えば、他のベクターから切り出した又はPCRで増幅してクローニングベクターに挿入された)は、好適な細胞又は生物内で特異的に増幅される。発現ベクターは、宿主細胞又は生物に目的の遺伝子(例えば、レポーター遺伝子)の異種発現を可能にする。細胞又は生物の種類は目的に大きく依存し、その選択は当業者の知識の内に在る。核酸増幅のために好適な生物は、例えば、大抵は、増殖速度の速い、例えば、細菌又は酵母のような単細胞生物である。好適な生物は、また、多細胞組織から単離し培養された、例えば、さまざまな生物から生成された細胞株のような細胞(例えば、Spodoptera Frugiperda由来のSF9細胞など)であればよい。好適なクローニングベクターは当該分野で知られており、例えば、Roche Diagnostics、New England Biolabs、Promega、Stratageneなど更に多くのさまざまなバイオテクノロジー業者から購入可能である。好適な細胞株は、例えば、American Type Culture Collection(ATCC)から購入可能である。
【0053】
タンパク質又はポリペプチドを異種発現させるためには、細胞は、核酸ベクターを移入させることができ、目的の遺伝子、例えば、レポーター遺伝子を発現することができるいかなる原核細胞又は真核細胞であってもよい。これらには、基本的に初代細胞及び細胞培養由来細胞、好ましくは多細胞生物及び組織(HEK293、RIN−5F、HeLA、CHO、COS、SF9又は3T3細胞など)若しくは酵母のような単細胞生物(例えば、サッカロミセス・ポンベ(S.pombe)又はサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae))のいずれか由来の細胞を含む真核細胞培養、又は原核細胞培養、好ましくはピチア属またはエシェリヒア・コリ(E.coli)が含まれる。組織由来の細胞及び試料は、血液採取、組織穿刺又は外科的手法のような周知の技術によって得ることができる。
【0054】
本出願の文脈の中で、「トランスフェクション」という用語は、宿主細胞(原核細胞か真核細胞の何れか)に核酸ベクターを導入することを指し、従って、用語「形質転換」を含む。
【0055】
トランスフェクションは、安定的又は一過性のトランスフェクションであってもよい。
【0056】
カテプシンHプロモータは、カテプシンH遺伝子の一部であり、遺伝子産物のコード配列の上流に好適な発現ベクターで導入されると、興味ある遺伝子産物の発現を駆動させることができる。このカテプシンHプロモータは、カテプシンH遺伝子の5’−配列の上流のゲノムの一部であり、下流の転写された領域の転写活性を案内し、例えば以下に由来する:Ishidoh et al.,FEBS letters,1989 or Ishidoh et al,Biomed.Biochim.Acta,1991,50(4):541−7。
【0057】
レポーター遺伝子は、遺伝子産物の簡単な定量を可能にするいかなる遺伝子でもよい。真核生物又は原核生物宿主用の膨大で多様なレポーター遺伝子、並びに検出方法及び必要な試薬は当該分野で知られており、市販されている。これらには、例えば、βラクタマーゼ(lacZ)、ルシフェラーゼ、グリーン又はブルーの蛍光タンパク質(GFP又はBFP)、DsRed、HIS3、URA3、TRP1若しくはLEU2又はβガラクトシダーゼの各遺伝子が含まれる。これらの遺伝子は、可視(色又は発光)反応(例えば、lacZ、ルシフェラーゼ)によって容易に検出できるタンパク質をコードする。これらは、可視(色又は発光)反応によって容易に検出できる遺伝子産物、又は発現された場合、アンピシリン又はカナマイシンのような抗生物質に対する耐性を付与する遺伝子産物を含む。他のレポーター遺伝子産物は、例えば、栄養要求性遺伝子のように、発現細胞の成長をある条件下で可能にする。
【0058】
レポーター遺伝子の機能的フラグメントは、その遺伝子産物の簡単な数量化を可能にする所定のレポーター遺伝子の全てのフラグメントである。
【0059】
本出願の文脈の中で、用語の「トランスフェクション」は、宿主細胞(原核細胞か真核細胞の何れか)に核酸ベクターを導入することを指し、したがって用語「形質転換」を含む。
【0060】
トランスフェクションは、安定的又は一過性のトランスフェクションであってもよい。
【0061】
細胞は、核酸ベクターを移入させることができ、レポーター遺伝子を発現することができるいかなる原核細胞又は真核細胞であってもよい。これらには、基本的に初代細胞及び細胞培養由来細胞、好ましくは多細胞生物及び組織(HeLA、CHO、COS、SF9又は3T3細胞など)若しくは酵母のような単細胞生物(例えば、サッカロミセス・ポンベ又はサッカロミセス・セレビシエ)のいずれか由来の細胞を含む真核細胞培養、又は原核細胞培養、好ましくはピチア属またはエシェリヒア・コリ(E.coli)が含まれる。組織由来の細胞及び試料は、血液採取、組織穿刺又は外科的手法のような周知の技術によって得ることができる。
【0062】
上記の本発明の局面の文脈の中で、対照ベクターは、レポーター遺伝子又はその機能的フラグメントを含むあらゆる好適なベクターであり、かつ、(機能的な)カテプシンHプロモータによってレポーター遺伝子の発現が駆動されないベクターであってよい。これは、例えば、レポーター遺伝子又はその機能的フラグメントが、機能的カテプシンHプロモータと作動的にカップリングしないことを意味する(即ち、完全にカテプシンHプロモータを欠いている、非機能的カテプシンHプロモータ若しくはプロモータフラグメントを含む、又は、そこではプロモータとレポーター遺伝子のカップリングが機能しない)。別の可能性は、レポーター遺伝子又はその機能的フラグメントが、カテプシンHプロモータ以外のプロモータ(例えば、SV40又は別の標準的なプロモータ)と作動的にカップリングすることである。機能的ベクター及び対照ベクターは、同様に、同じ細胞に移入することができるが、その場合レポーター遺伝子は異なる必要がある。
【0063】
上記の使用による化合物の同定は、例えば、以下に記載されるような又は当該分野で知られるアッセイによって行なうことができる。
【0064】
アッセイは、生物学的プロセスをモニターするあらゆる種類の分析的方法又はシステムである。好適には、生理学的代謝経路並びに病的状態の部分を示す分子カスケード及びメカニズムが、細胞性又は生化学的(生体外)システムで再現されることである。潜在的な活性を持つ医薬化合物の薬理活性は、従って、これらのカスケード又はメカニズムを干渉又は調節する能力によって測定することができる。
【0065】
薬物スクリーニング、特に、新規医薬化合物のハイスループット・スクリーニングに使用するためには、アッセイは、再現性のあることが必要であり、好ましくは更にスケーラブルで堅固であることである。本発明の範囲では、ハイスループット・スクリーニングは、本発明による方法が非常に小さなスケール、例えば、96、386又は1,536ウェルのプレートで数ミリリットルから数ナノリットル又は更に少ない範囲の非常に少量の試料で行われることを意味する。従って、非常に大量の試料が、短時間で分析できる。ハイスループット・スクリーニングには、たいてい1回の単一アッセイで、特定の能力について約500の異なる化合物のスクリーニングが含まれる。アッセイは、研究中の標的分子の活性を調節する能力について、化学物質のハイスループット・スクリーニングに好適であることが好ましい。アッセイの種類は、例えば、用いる標的分子の種類(例えば、ポリペプチド又はポリヌクレオチド)及び「読み取り」、即ち、それによって標的分子の活性が測定されるパラメータに依存する(下記を参照)。
【0066】
異なる種類のそのようなアッセイは、一般に当該分野で知られており、商業的な供給業者から購入できる。
【0067】
いろいろな目的に好適なアッセイは、放射性同位体アッセイ又は蛍光アッセイ、例えば、標識されたメンバーと非標識メンバーの相互作用(例えば、標識タンパク質とそれらの非標識タンパク質リガンドとの相互作用)を測定するための蛍光偏光アッセイ(Panveraによって商業的に提供されるようなもの)又はPackard BioScience(HTRF;ALPHAScreen(商標)))を包含する。
【0068】
追加の例としては、細胞株が目的の組み換えタンパク質を安定に(誘導性又はそうでない;染色体性又はエピソーム性に)又は一過的に発現する、細胞ベースのアッセイが挙げられる。これらのアッセイは、例えば、特定のプロモータ又はシグナル伝達カスケードのメンバーのシグナル伝達経路の制御が、その発現が前記特定のプロモータの制御下にあるレポーター酵素の活性に従って測定される、レポーター遺伝子アッセイを含む。このタイプのアッセイのためには、組み換え細胞株は、自体が研究対象である又は研究中のシグナル伝達カスケードによって規制される、明確なプロモータの制御下にレポーター遺伝子を含めて構築されなければならない。好適なレポーター酵素は、一般に当該分野で知られており、蛍ルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼ(例えば、Packard reagentsから市販されている)、βガラクトシダーゼが含まれる。好適な細胞株は、アッセイの目的によるが、普通はトランスフェクションが容易であり培養が容易な、例えば、HeLA、COS、CHO、NIH−3T3などの細胞株が含まれる。
【0069】
プロテアーゼ活性の測定については、代表的なプロテアーゼアッセイ形式が知られる。即ち、例えば、基質の1つの位置にレポータータグ(例えば、発光/蛍光又は他のシグナル発生タンパク質/ペプチド又は構成要素)の付いた、そして別の位置にクエンチャー(一構成要素(例えば、基質が無傷/未切断である限り、レポータータグのシグナル放出を抑制している別のペプチド))の付いた基質を用いる;基質は、好適な条件下でカテプシンHとインキュベートすることによって切断され、クエンチャーとレポータータグが分離するため、検出可能なシグナルの放出(例えば、発光)が起こる。
【0070】
他のタイプのアッセイ及び他のタイプの「読み取り」は、当該分野で周知されている。細胞中のカテプシンH活性を検出するための1つのアッセイは、例えば、Ruttger
et.Al.,BioTechniques,2006より得られる。
【0071】
本発明によるアッセイは、以下に関する:
疼痛、好ましくは神経障害性疼痛を調節及び/又は予防する化合物を同定又は分析する方法であって、以下:
a.少なくとも2つの試料を備える工程;
b.カテプシンH又はその機能的フラグメント若しくは誘導体を含む1つの試料を化合物と接触させる工程;
c.化合物の存在下でカテプシンHの活性を測定する工程;
d.化合物の非存在下でカテプシンHの活性を測定する工程;及び
e.c)によるカテプシンHの活性をd)によるカテプシンHの活性と比較する工程;を含む方法。
【0072】
疼痛好ましくは神経障害性疼痛を調節及び/又は予防する化合物を同定又は分析する方法であって、以下:
a.カテプシンHタンパク質又はその機能的フラグメント若しくは誘導体を、試験化合物と接触させる工程;及び
b.その試験化合物がカテプシンHタンパク質又はその機能的フラグメント若しくは誘導体の活性を調節するかどうかを測定する工程;
を含む方法。
【0073】
疼痛好ましくは神経障害性疼痛を調節及び/又は予防する化合物を同定又は分析する方法であって、以下:
a.検出可能な量又は活性のカテプシンH又はその機能的フラグメント若しくは誘導体を有する細胞を、試験化合物と接触させる工程;
b.その試験化合物が細胞中に存在するカテプシンH又はその機能的フラグメント若しくは誘導体の量又は活性を調節できるかどうかを測定する工程;
を含む方法。
【0074】
疼痛好ましくは神経障害性疼痛を調節及び/又は予防する化合物を同定又は分析する方法であって、以下:
a.カテプシンHタンパク質又はその機能的フラグメント若しくは誘導体をコードする核酸を、転写活性のあるシステム中で試験化合物と接触させる工程;及び
b.前述の化合物の存在下で、前述のシステム内に存在するカテプシンHタンパク質又はその機能的フラグメント若しくは誘導体をコードするmRNAの量を測定する工程;及び
c.その化合物が、前述のシステム中に存在するカテプシンHタンパク質又は機能的フラグメント若しくは誘導体をコードするmRNAの量を調節できるかどうかを測定する工程;
を含む方法。
【0075】
転写活性のあるシステムは、少なくとも転写単位の転写反応を行う能力があるあらゆる生化学的又は細胞性のシステムである。そのようなシステムは、当該分野でよく知られており、細胞並びに市販の生体外転写システム又はキット(例えば、細胞抽出物を基本とした)が含まれる。
【0076】
疼痛好ましくは神経障害性疼痛を調節及び/又は予防する化合物を同定又は分析する方法であって、以下:
a.レポーター遺伝子又はその機能的フラグメントと作動的にカップリングしたカテプシンH遺伝子又はその機能的フラグメントのプロモータを含む核酸ベクターでトランスフェクトされた細胞を備える工程;
b.機能的カテプシンHプロモータと作動的にカップリングしていないレポーター遺伝子又はその機能的フラグメントを含む対照ベクターでトランスフェクトされた細胞を備える工程;
c.試験化合物の存在下で、a)及びb)による細胞のレポーター遺伝子活性を測定する工程;
d.試験化合物の非存在下で、a)及びb)による細胞のレポーター遺伝子活性を測定する工程;
を含む方法。
【0077】
疼痛好ましくは神経障害性疼痛を調節する化合物を同定又は分析する方法であって、以下:
a.カテプシンHの活性を調節する化合物を試験化合物として選択する工程;及び
b.該試験化合物を疼痛感覚のある対象に投与し、疼痛が調節されるかどうかを測定する工程;
を含む方法。
【0078】
対象における疼痛、好ましくは神経障害性疼痛を調節及び/又は予防する化合物を同定又は分析する方法であって、以下:
c.カテプシンHの生物学的活性を調節する1つ又はそれ以上の調節化合物を同定するために、1つ又はそれ以上の試験化合物の存在下で、カテプシンH又はその機能的フラグメント若しくは誘導体の生物学的活性をアッセイする工程;及び
d.対象における疼痛(好ましくは神経障害性疼痛)、および/または疼痛感覚(好ましくは神経障害性疼痛感覚)、および/または疼痛感受性(好ましくは神経障害性疼痛感受性)を減少させる能力について、1つ又はそれ以上の調節化合物を試験する工程;
を含む方法。
【0079】
本発明の更なる局面は、医師の処置を個々の患者に適合/改善させるために、患者をグループに分類し医師を支援するための、以下のような、薬理ゲノム学的方法に関する。
【0080】
個体の疼痛(特に、神経障害性疼痛)限界を分析する方法が、前記個体の採取試料中のカテプシンHの量を、前記試料中に存在するカテプシンHmRNA及び/又はタンパク質の量と1つ又はそれ以上の参照試料のそれとが異なるかどうかに関して、1つ又はそれ以上の参照試料と比較して分析することを含む方法であって、前記個体におけるより多い量の存在が亢進した疼痛(特に、神経障害性疼痛)感受性を示し、より少ない量の存在が低下した疼痛(特に、神経障害性疼痛)感受性を示す方法。
【0081】
個体の疼痛の予防及び/又は処置のために薬剤の投与量を適合させる方法は、個体の採取試料中に存在するカテプシンHmRNA及び/又はタンパク質の量が1つ又はそれ以上の参照試料中のそれと異なるかどうかに関して試験することを含み、前記投与量は、個体の採取試料中のタンパク質及び/又はmRNAの量が1つ又はそれ以上の参照試料のそれと異なるかどうかに依存して適合されている方法であって、この方法において、個体の採取試料中のより高いカテプシンH量は、より高い用量が必要であることを示し、個体の試料中のより低いカテプシンH量は、より低い投与量が必要であることを示している。
【0082】
本明細書で用いられる「採取試料」という用語は、1種又はそれ以上の個々の生物(ヒト又は非ヒト動物)の身体から採取した/分離した生体試料を言う。生物材料及び生体試料は、例えば、細胞、組織又は器官の標本又は部分(例えば、脳、血液、肝、脾臓、腎臓、心臓、血管など)を含み、もし脊椎動物に由来するなら好ましく、更にヒトを含む哺乳動物に由来するならより好ましい。含まれるのは、同様に、細胞培養由来の細胞、好ましくは多細胞生物及び組織(HeLA、CHO、COS、SF9又は3T3細胞など)若しくは酵母のような単細胞生物(例えば、サッカロミセス・ポンベ(S.pombe)又はサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae))のいずれか由来の細胞を含む真核細胞培養、又は原核細胞培養、好ましくはピチア属またはエシェリヒア・コリ(E.coli)である。組織由来の細胞及び試料は、血液採取、組織穿刺又は外科的手法のような周知の技術によって得ることができる。組換え分子の調製及び細胞又は組織からの天然由来の分子の精製、並びに細胞抽出物又は組織抽出物の調製は、当業者が周知している(例えば、更に下記にリストアップした標準的な文献を参照)。
【0083】
用語「参照試料」は、既知の規定の疼痛表現型を持つ1つ又はそれ以上の個体から採られた生物試料、又は生体外生物試料(例えば、生体外の細胞培養又は組織培養から生じる試料(例えば、培養細胞))であり、特定の性質(例えば、そのカテプシンHの活性、量又は発現のレベル)が規定の疼痛表現型(例えば、高い疼痛感受性又は低い疼痛感受性)に相当する試料を指す。
【0084】
更に本発明の別の局面は、検査する個体の身体から採取した生物試料を分析することによって、個体の亢進した疼痛感受性(特にneuropathic pain sensitivity)を測定するためのカテプシンH検出方法の使用に関する。
【0085】
カテプシンH検出の方法は、生物試料中に存在するカテプシンHポリペプチド/タンパク質又は核酸を特異的に検出することができるいかなる方法でもよい。
【0086】
カテプシンHタンパク質又はポリペプチドを検出する方法は、野生型カテプシンHタンパク質/ポリペプチドのいずれかを特異的に検出できるいかなる方法、及び同様に野生型ポリペプチド/タンパク質と比較して、サイズ又はアミノ酸配列に関する1つ又はそれ以上の変異を隠匿しているカテプシンHタンパク質/ポリペプチドを特異的に検出できるいかなる方法でもよい。そのような方法の好ましい例は、カテプシンHタンパク質を特異的に検出することができる抗体、例えば、免疫組織学的又は免疫組織化学的技術(例えば、メンブラン、チップ、ELISAプレートなどの好適な担体に固定した組織学的組織切片、又はカテプシンにHタンパク質おけるカテプシンHタンパク質又はそのある種の変異の検出)に使用するための抗体である。
【0087】
カテプシンH核酸を検出する方法は、例えば、野生型か又は野生型カテプシンH核酸と比較して、その長さ又はその核酸配列に関する1つ又はそれ以上の変異を隠匿している場合の、どちらかのカテプシンH mRNA/cDNA又はゲノムを検出する方法であればよい。その方法は、例えば、カテプシンH mRNAを特異的に検出及び/又は定量する方法であり、そして好ましくは、例えば、PCR配列決定(ヌクレオチド配列中の変異を検出するため)に使用するためのカテプシンH DNAを増幅することができる、又は、例えば、RT PCR(カテプシンH mRNAの発現を検出及び/又は定量するため)に使用するカテプシンH cDNAを増幅することができる特異的カテプシンH核酸プローブ又はプライマーセットを含む、又はそのものである方法であればよい。別の方法は、例えば、ノーザンブロット又はチップハイブリダイゼーション技術で使用するための、標準条件下でカテプシンH mRNA又はcDNAと特異的にハイブリダイズすることができる核酸プローブであってもよい。
【0088】
野生型という用語は、自然に又は所定の生物の標準研究室保存に見られる遺伝子型又は表現型を指す。1つの好ましい実施態様によれば、カテプシンHの野生型配列は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8および/または9に記載された配列である。
【0089】
好適なプライマーの設計及び合成は、当該分野でよく知られている(上記を参照)。カテプシンHの検出用のプライマーセットは、例えば、以下のものである:
セット1:(ヒトCTSH転写改変体1の検出用の産物長=154ヌクレオチド、ヒトCTSH転写改変体2の検出用の産物長=118ヌクレオチド):
順方向プライマー 5’−GCGCTCCCAGTTGACGCTCT−3’(配列番号10)
逆方向プライマー 5’−CACGCACAGTTCGGCGGC−3’(配列番号11)
セット2:(ヒトCTSH転写改変体1の検出用の産物長= 153ヌクレオチド、ヒトCTSH転写改変体2の検出用の産物長=117ヌクレオチド):
順方向プライマー 5’−CGCTCCCAGTTGACGCTCTGG−3’(配列番号12)
逆方向プライマー 5’−CACGCACAGTTCGGCGGC−3’(配列番号13).
【0090】
本発明の好ましい実施態様によれば、その手段は、テプシンH核酸増幅用のプライマーセット、好ましくは配列番号10、11(セット1と一緒)、12及び/又は13(セット2と一緒)に記載した少なくとも1つのプライマーを含むプライマーセットである。
【0091】
更に好ましい本発明の実施態様によれば、その手段は、カテプシンH核酸の検出用のプローブである。好適なプローブの設計及び合成は、当該分野でよく知られている(同様に、下記の標準的な文献を参照)。
【0092】
更に別の好ましい本発明の実施態様によれば、その手段は、カテプシンHタンパク質又はポリペプチドを特異的に検出するための抗体である。
【0093】
好適な抗体又はその機能的フラグメントの調製もまた当該分野で周知されており、例えば、動物、例えば、ウサギを、必要に応じて、例えば、フロイントアジュバント及び/又は水酸化アルミニウムゲルの存在下で、カテプシンHタンパク質又はそのフラグメントで免疫することによる(例えば、Diamond,B.A.et al.(1981) The New England Journal of Medicine:1344−1349を参照)。免疫反応の結果として動物に生じるポリクローナル抗体は、次に、周知の方法で血液から分離され、そして、例えば、カラムクロマトグラフィーによって精製される。モノクローナル抗体は、例えば、Winter & Milstein の既知の方法(Winter,G.& Milstein,C.(1991) Nature,349,293−299)に従って調製することができる。モノクローナル抗体を産生する好適な手法は、当該分野でもよく知られている(下記の標準的な文献を参照)。本発明との関連において、抗体又は抗体フラグメントという用語は、また、抗体又は遺伝子組み換え的に調製され必要に応じて改変された、その抗原結合部分も含み、必要に応じてキメラ抗体、ヒト化抗体、多機能性抗体、二重特異性又はオリゴ特異性抗体、一本鎖抗体及びF(ab)又はF(ab)2などに改変される(例えば、欧州特許公開第B1−0368684号、米国特許第4,816,567号、米国特許第4,816,397号、国際公開公報第88/01649号、国際公開公報第93/06213号又は国際公開公報第98/24884号を参照)。カテプシンH抗体はまた、ヤギ抗マウスカテプシンH、カタログ番号BAF1013、R&D Systems(Minneapolis,USA)、ラット抗マウスカテプシンH、カタログ番号MAB1013、R&D Systems(Minneapolis,USA)、ヤギ抗マウスカテプシンH、カタログ番号AF1013またはウサギ抗ヒトカテプシンH、カタログ番号ABIN285430(抗体−オンラインGmbH、Germany、http://www.antikoerper−online.deを参照のこと)またはマウス抗ヒトカテプシンH、カタログ番号ABIN165388(抗体−オンラインGmbH、Germany)などでも市販されている。
【0094】
ヒト組織サイトゾルおよび血清からの、カテプシンH抗体の生成およびヒトカテプシンHの検出は、例えばSchweiger et al.,Journal of Immunological Methods,2001,p.165−172(材料および方法については例えば、p.66−167を参照のこと)に詳述されている。
【0095】
本発明の別の局面は、個体の疼痛、特に神経障害性疼痛感受性を測定するための診断キットおよびその使用に関し、その検査キットは、生体試料中のカテプシンHを検出するための少なくとも1つの方法を含む。
【0096】
本発明との関連において、検査キットは、本出願で確認される構成要素のあらゆる組み合わせであり、それは、機能的なユニットに組み合わせられ、空間的に共存し、そして更なる要素を含有できると理解される。
【0097】
本発明との関連において、検査キットは、少なくとも生体試料中のカテプシンH(例えば、量及び/又は変異)を検出する方法を含み、好適には、検出反応(例えば、抗体を用いたカテプシンHの免疫学的検出、カテプシンH活性をアッセイするための酵素反応など)を行うための好適な緩衝液及び/もしくは試薬、並びに/又は個々の検出技術を実施するための試料調製法及び場合により取り扱いマニュアルを併せて含む。
【0098】
本発明の他の局面は、以下のような処置の方法に関する。:
疼痛に悩む対象の疼痛を処置する方法であって、前記対象に治療的有効量の組成物を投与し、前記対象のカテプシンHの量又は活性を低下させることを含む方法。これは、全体又は特定の組織中、例えば、神経組織、リンパ組織又はマスト細胞、マクロファージ、好中球、T細胞(例えばCD8+ T細胞)などのような、免疫システムの細胞中のカテプシンHの量又は活性であればよく、ここで、治療的有効量は、個体の疼痛感覚又は感受性(特に神経障害性疼痛に関する)を回復させるのに十分な量を含む。
【0099】
対象の疼痛(特に神経障害性疼痛)感受性を低下させる方法であって、前記対象に治療的有効量の組成物を投与し、前記対象の(例えば、リンパ又は神経組織若しくは免疫システムの細胞中の)カテプシンHの量(例えば、発現、半減期)又は活性を低下させることを含む方法は、本発明の更に別の局面に関する。
【0100】
更に、本発明は、ヒト以外の雌の対象の子の疼痛(特に神経障害性疼痛)感受性を調節する方法であって、調節したカテプシンHの発現を付与する核酸を受精卵へ移入(例えば、電気穿孔)すること、その受精卵をヒト以外の里親へ移入すること、及びカテプシンH発現特性(例えば、マウスのような野生型の対象と比較してカテプシンH発現が低下しているかまたは根絶している)に従った子供を選択することを含む方法に関する。
【0101】
本発明の別の局面は、疼痛、特に神経障害性疼痛の処置のためにカテプシンHの活性及び/又は発現を低下させることができる化合物に関する。
【0102】
カテプシンHの阻害剤は当該分野で公知であり、例えば、E−64d(例えばRuttger et al.,BioTechniques,41:469−473,2006を参照)およびKirschke,H et al,1995,Protein Profile 2:1581−1643)である。
【0103】
薬剤の製造のためには、本発明のカテプシンH調節剤は、投与の種類によって、生理的緩衝液、例えば、塩化ナトリウム溶液、脱塩水などの好適な添加剤又は補助物質、プロテアーゼ阻害剤又はヌクレアーゼ阻害剤、好ましくはアプロチニン、ε−アミノカプロン酸又はペプスタチンA若しくはEDTAのような金属イオン封鎖剤などの安定化剤、白色ワセリン、低粘性パラフィン及び/又は黄色蝋などのゲル配合物を用いて製剤化することができる。
【0104】
好適な更なる添加剤は、例えば、Triton X 100又はデオキシコール酸ナトリウムのような界面活性剤、並びに、例えばポリエチレングリコール又はグリセリンのようなポリオール、例えば、ショ糖又はグルコースのような糖類、例えば、グリシン、特にタウリン又はベタインなどのアミノ酸のような双性イオン性化合物、及び/又は、例えば、ウシ又はヒト血清アルブミンのようなタンパク質である。界面活性剤、ポリオール及び/又は双性イオン性化合物は好ましい。
【0105】
生理的緩衝液は、好ましくは、約6.0〜8.0のpH、特に約6.8〜7.8のpH、とりわけ約7.4のpHを有し、約200〜400ミリオスモル/リットル、好ましく約290〜310ミリオスモル/リットルのオスモル濃度を有する。薬剤のpHは、一般に好適な有機又は無機緩衝液を用いて、例えば、好ましくはリン酸緩衝液、トリス緩衝液(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、HEPES緩衝液([4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジノ]エタンスルホン酸)又はMOPS緩衝液(3−モルホリノ−1−プロパンスルホン酸)を用いて調整される。個別の緩衝液の選択は、一般に必要な緩衝液モル濃度に依存する。リン酸緩衝液は、例えば、注射及び注入溶液に好適である。
【0106】
薬剤は、従来の方法で、例えば、錠剤又はカプセルのような経口剤形を用いて、例えば、鼻腔又は口腔などの粘膜を介して、皮下に埋め込まれた貯蔵所の形態で、注射、注入又は本発明による薬剤を含むゲルによって投与することができる。上記のような特定の関節疾患を処置するために、薬剤を局所的及び局部的に、適切な場合、リポソーム複合体の形態で投与することは更に可能である。更に、処置は、薬剤の一時的に制御された放出を可能にする経皮吸収治療システム(TTS)によって行うことができる。TTSは、例えば、欧州特許第0944398A1号、欧州特許第0916336A1号、欧州特許第0889723A1号又は欧州特許第0852493A1号により知られている。
【0107】
注射液は、一般に、例えば、約1〜約20mLの比較的少量の溶液又は懸濁液を身体に投与する場合だけに用いられる。注入液は、一般に、例えば、1リットル又はそれ以上の大量の溶液又は懸濁液を投与する場合に用いられる。注入液と対照的に、注射液の場合には僅か数ミリリットルが投与されるため、注射における血液又は組織液のpH及び浸透圧の小さな違いは、疼痛感覚に関してそれ自体が目立たない又は僅かな程度ににしか目立たない。従って、本発明による製剤の使用前の希釈は、通常必要ない。しかし、比較的大量の投与の場合、本発明による製剤は、少なくとも大よそ等張溶液が得られる程度に投与の前に希釈されるべきである。等張溶液の一例は、0.9%強度の塩化ナトリウム溶液である。注入の場合、希釈は、例えば、無菌水を使用して行うことができ、更に投与は、例えば、いわゆるバイパスによって行うことができる。
【0108】
本発明の異なる局面の1つの好ましい実施態様によれば、カテプシンH、その誘導体又はフラグメントは、孤立分子として使用することができる。
【0109】
本発明との関連で、「孤立分子」という用語は、特に、カテプシンHについては、天然発生源から精製されるカテプシンHポリヌクレオチド又はポリペプチド、並びに精製された組換え分子を指す(ここで、用語の「精製された」は、完全精製と同様に部分精製も含む)。
【0110】
組換えポリペプチド又はポリヌクレオチド分子の調製、及び細胞又は組織からの天然分子の精製、並びに細胞抽出物又は組織抽出物の調製は、当業者が熟知している(例えば、更に下記の標準的な文献を参照)。
【0111】
これらには、公開されているゲノム又はコードポリヌクレオチド配列に基づいて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってポリヌクレオチドを目的の長さに増幅すること、そして次に、生成したポリヌクレオチドを宿主細胞にクローニングすることが含まれる(例えば、下記の標準的な文献を参照)。
【0112】
本発明との関連で、用語の「ポリペプチド」は、互いにペプチド結合によって結合したアミノ酸を含み、線形の様式で互いに結合してポリペプチド鎖を形成した少なくとも50残基のアミノ酸を含む分子を指す。この種類のより短い分子は、ペプチドと呼ばれる。用語の「タンパク質」は、少なくとも1つのポリペプチド鎖を含む分子を指すが、互いに結び付いた又は結合した2つ以上のポリペプチド鎖を含む分子を言ってもよい。従って、「タンパク質」という用語は、「ポリペプチド」という用語を包含する。
【実施例】
【0113】
材料及び方法
使用したマウス系統
5つの異なる近交系マウス系統:AKR/J(AKR)、CBA/J(CBA)、C3H/HeJ(C3H)、C57BL/6J(B6)及び C58/J(C58)を使用した。マウスは、The Jackson Laboratory(Bar Harbor,ME,USA) から入手した。これらのマウス系統について、それらは、幾つかの生体内疼痛指標に関して著しく異なることが示されている(Mogil et al 1999)。
【0114】
トータルRNAの分離
DRG(後根神経節)由来のトータルRNAは、PicoPure(商標)RNA Isolation Kit(Arcturus)を用いて、製造元の使用説明書に従って分離した。RNAの品質は、2100 Bioanalyzer及びRNA 6000 Nano LabChip(商標)Kit(Agilent)を用いて評価した。
【0115】
Affymetrix GeneChip(商標)Microarrays
ファーストストランドcDNA合成は、Baugh,L.R,Hill,A.A.,Brown,E.L.and Hunter,C.P.(2001) Nucleic Acids Res.29,e29に従って、100pMのT7−(dT)24オリゴマー(GGCCAGTGAATTGTAATACGACTCACTATAGGGAGGCGG−dT24:配列番号14)と共に、500ngのトータルRNA及びSuperScript II逆転写酵素を用い、製造元の説明書の指示に従って行った。二本鎖cDNAを合成し、その後フェノール−クロロホルムを用い、続いてエタノール沈殿工程によって抽出した。生体外転写反応は、二本鎖cDNA試料を用い、BioArray High Yield RNA Transcription Labeling kit(Enzo)を使用して、製造元の使用説明書に従って行った。転写反応は、37℃で16時間インキュベートした。cRNAは、RNA精製用のRNeasy(商標)Mini kit(Qiagen)のプロトコルを用いて精製し、分光光度計で定量した。ビオチン標識cRNAは、RNAフラグメント化緩衝液(200mMのトリス−酢酸、500mMのKOAc、150mMのMgOAc、pH8.1)を用いてフラグメントにした。Mouse Genome 430 2.0 GeneChips(商標)(Affymetrix)のハイブリダイゼーション及び染色は、製造元の使用説明書に従って行った。マイクロアレイは、GeneChip(商標)3000 Scannerを使用して読み取り、読み取ったデータは発現データ分析ソフトResolver v5.1(Rosetta Biosoftware)を用いて取り込み、解析した。
【0116】
L5脊髄神経切断及び擬似手術
麻酔下のマウスの左L5脊髄神経を露出させ、次に横突起を部分的に除去した。L4脊髄神経から分離した後、L5脊髄神経を切断した。擬似手術は、L5脊髄神経の切断手術と同じであるが、しかしL5脊髄神経は切断しなかった(DeLeo et al.2000を参照)。
【0117】
足引っ込め限界(paw withdrawal threshold)の測定
足引っ込め限界(PWT)は、動的足底角膜知覚計(dynamic plantar aesthesiometer)を用いて評価した(Szabo et al.2005を参照)。金属網状の床のコンパートメントで馴化した後、刺激装置を動物の後ろ足の下に置き、電動のアクチュエータで駆動するまっすぐな金属の細い線を足底の表面に接触させ、動物が足を取りのけるまで(足引っ込め限界、PWT)上向きに増加する力を与えた。PWTは、同側の、操作された側及び対側部位の後ろ足について評価した。各動物は、1つの測定のみに使用した。すべての動物実験では、意識のある動物による研究に対する倫理ガイドラインを遵守し、その手順は現地倫理委員会によって承認された。
【0118】
相関関係の解析
相関関係の解析については、「疼痛表現型」がそれぞれの神経切断動物(Chungの動物)に対してC1−S1として定義され、ここで、C1=ln(同側のPWT/対側のPWT)であり、S1=平均(同一系統内の全擬似動物)ln(同側のPWT/対側のPWT)である。強度発現データに基づいて、差転写調節の2つの単位を、各Chungの動物及び測定した各遺伝子に対して定義した。「生の強度測定」は、それぞれの遺伝子及び動物についての、Resolverの発現データ解析ソフト(v5.1)によって計算された強さの尺度として用いた。「ログ測定比」は、特定の遺伝子及びChungの動物についてln(C2/S2)として計算され、ここで、C2=Chungの発現強度、そしてS2=平均(同一系統内ノ全擬似動物)擬似発現強度である。
【0119】
相関性を計算する前に、ノイズレベル以下で顕著なChung対擬似の規制無しに発現された遺伝子を排除するために、遺伝子のセットをフィルターにかけた。対象遺伝子は、少なくとも60%のChungの動物は絶対発現比(absolute fold−change)が>1.5で制御されなければならないものとし、又は少なくとも20%のChungの動物は絶対発現比が>2.0で制御されなければならないものとした。また、関連遺伝子の発現は、それぞれの強度のp値が<0.001によって定義されるように、少なくとも5頭の動物で検出可能(「存在する」)でなければならないものとした。
疼痛表現型のスコアと転写制御の定義された単位の1つとの間の、各遺伝子についてのピアソンの相関係数は、Rソフトウェアパッケージ(http://www.r−project.org/)を使用して計算した。これらに基づいて、Storey et al.(2002)の方法に従い、統計学的有意性のp値及び対応する偽発見率(FDR)を求めた。「ログ測定比」又は「強度測定」の下でFDR<0.05をもつ遺伝子は、有意に相関していると見なした。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】カテプシンH−相関性プロットを示す。 L5DRG(L5診断別関連群)における、各マウスの神経障害性疼痛表現型スコア(機械的疼痛過敏性、X軸)及び対応するカテプシンHの遺伝子制御(ログ比(Chung 対シャム対照)、Y軸)を示す。マウスは、使用した系統によって色分けされる。ピアソンの相関性解析が行われ、疼痛表現型及びカテプシンHの遺伝子制御の2つのパラメータの、有意な正の相関性が明らかにされた。これは、個々のマウスについて、Chungの神経障害性マウスでL5DRGのカテプシンH発現が高くなればなるほど、行動試験で示された機械的疼痛感覚過敏がより顕著になることを意味する。この有意な相関は、神経因性疼痛表現型を誘導するためのカテプシンH遺伝子発現の因果関係を示す。
【図2】カテプシンH−強度データを示す。 AKR、CBA及びC57の各マウス系統の、Chung又は擬似手術後の、L5神経節におけるカテプシンH発現の絶対値。
【図3−1】NCBI参照配列に従う、染色体15上のホモサピエンスカテプシンHのゲノムDNA配列:NG_009614.1(配列番号1)。
【図3−2】図3−1の続きである。
【図3−3】図3−2の続きである。
【図3−4】図3−3の続きである。
【図3−5】図3−4の続きである。
【図3−6】図3−5の続きである。
【図3−7】図3−6の続きである。
【図4】NM_004390.3に従うホモサピエンスカテプシンH転写改変体1のコード配列(配列番号2)であり、1494bp長でカテプシンHのより長いアイソフォームAをコードしている。
【図5】NM_148979.2に従うホモサピエンスカテプシンH転写改変体2のコード配列(配列番号3)であり、1458bp長でカテプシンHのより長いアイソフォームBをコードしている。上記のNCBIエントリーに従って、この転写改変体は改変体1と比較して代替のインフレームセグメントを欠いており、転写改変体1によってコードされているアイソフォームAと比較した場合、より短いタンパク質(アイソフォームB)を生じている。これは、リソソームタンパク質よりも分泌されやすいタンパク質(アイソフォームB)をもたらし得る。
【図6】NCBIエントリーBC006878.1に従う、ハツカネズミカテプシンHのコード配列(配列番号4)。
【図7】UniProtKB/Swiss−Prot P09668に従う、ヒトカテプシンHタンパク質配列(配列番号5)であって、335個のアミノ酸を含み、ヒトカテプシンH(アイソフォームA)のプレプロ形態を構築している。この配列はさらに、成熟形態にプロセスされ;以下の3つの鎖に切断される:カテプシンH小鎖(mini chain)、カテプシンH重鎖、カテプシンH軽鎖(軽鎖と重鎖は一緒になって長鎖と呼ばれる);全ての鎖はジスルフィド結合によって共に保持されている。アミノ酸1―22は、シグナルペプチドを構築しており(22aa長)、アミノ酸23−97は、活性化ペプチド(75aa長)を構築しており、アミノ酸98−105は、カテプシン小鎖(8aa長)を構築しており、アミノ酸106−115は、プロペプチド(10aa長)を構築しており、アミノ酸116−335は、ジスルフィド結合によって一緒に保持される重鎖および軽鎖からなるカテプシンH長鎖(220aa長)を構築しており、アミノ酸116−292は、カテプシンH重鎖(177aa長)を構築しており、アミノ酸293−335は、カテプシン軽鎖(43aa長)を構築している。
【図8】NM_004390.3に従うヒトアイソフォームAプレプロタンパク質(配列番号6;配列番号2の翻訳アミノ酸配列)
【図9】NM_148979.2に従うヒトアイソフォームBプレプロタンパク質(配列番号7;配列番号3の翻訳アミノ酸配列)
【図10】NP_004381.2に従うヒトカテプシンHアイソフォームaプレプロタンパク質のタンパク質配列(配列番号8)
【図11】NP_683880.1に従うヒトカテプシンHアイソフォームb前駆体タンパク質のタンパク質配列(配列番号9)。
【0121】
参考文献:
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【0122】
標準的な実験室手法のための文献
他に記載がなければ、標準的な実験室手法は以下の標準的な文献に従って行った又は行うことができる。
Sambrook et al.(1989) Molecular Cloning:A Laboratory Manual.Second edition.Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY.545 pp;

Current Protocols in Molecular Biology;regularly updated,e.g.Volume 2000;Wiley & Sons,Inc;Editors:Fred M.Ausubel,Roger Brent,Robert Eg.Kingston,David D.Moore,J.G.Seidman,John A.Smith,Kevin Struhl.

Current Protocols in Human Genetics;regularly uptdated;Wiley & Sons,Inc;Editors:Nicholas C.Dracopoli,Honathan L.Haines,Bruce R.Korf,Cynthia C.Morton,Christine E.Seidman,J.G.Seigman,Douglas R.Smith.

Current Protocols in Protein Science;regularly updated;Wiley & Sons,Inc;Editors:John E.Coligan,Ben M.Dunn,Hidde L.Ploegh,David W.Speicher,Paul T.Wingfield.

Molecular Biology of the Cell;third edition;Alberts,B.,Bray,D.,Lewis,J.,Raff,M.,Roberts,K.,Watson,J.D.;Garland Publishing,Inc.New York & London,1994;

Short Protocols in Molecular Biology,5th edition,by Frederick M.Ansubel(Editor),Roger Brent(Editor),Robert E.Kingston(Editor),David D.Moore(Editor),J.G.Seidman(Editor),John A.Smith(Editor),Kevin Struhl(Editor),October 2002,John Wiley & Sons,Inc.,New York“

Transgenic Animal Technology A Laboratory Handboook.C.A.Pinkert,editor;Academic Press Inc.,San Diego,California,1994(ISBN:0125571658)

Gene targeting:A Practical Approach,2nd Ed.,Joyner AL,ed.2000.IRL Press at Oxford University Press,New York;

Manipulating the Mouse Embryo:A Laboratory Manual.Nagy,A,Gertsenstein,M.,Vintersten,K.,Behringer,R.,2003,Cold Spring Harbor Press,New York;

Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th Edition,1985(for physiologically tolerable salts(anorganic or organic),see esp.p.1418)
【0123】
実験室手法のための標準的な文献
他に記載がなければ、実験室手法は下に掲げた標準的な文献の標準的な方法に従って行った、又は行うことができる。
Sambrook et al.(1989) Molecular Cloning:A Laboratory Manual.Second edition.Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY.545 pp or Current Protocols in Molecular Biology;

Current Protocols in Molecular Biology;regularly updated,e.g.Volume 2000;John Wiley & Sons,Inc;Editors:Fred M.Ausubel,Roger Brent,Robert Eg.Kingston,David D.Moore,J.G.Seidman,John A.Smith,Kevin Struhl.

Current Protocols in Human Genetics;regularly uptdated,e.g.Volume 2003;John Wiley & Sons,Inc;Editors:Nicholas C.Dracopoli,Honathan L.Haines,Bruce R.Korf,Cynthia C.Morton,Christine E.Seidman,J.G.Seigman,Douglas R.Smith.

Current Protocols in Protein Science;regularly updated,e.g.Volume 2003;John Wiley & Sons,Inc;Editors:John E.Coligan,Ben M.Dunn,Hidde L.Ploegh,David W.Speicher,Paul T.Wingfield.

Molecular Biology of the Cell;third edition;Alberts,B.,Bray,D.,Lewis,J.,Raff,M.,Roberts,K.,Watson,J.D.;Garland Publishing,Inc.New York & London,1994;

Gene Targeting:a practical approach(1995),Editor:A.L.Joyner,IRL Press

Remington’s Pharmaceutical Sciences,Edition 17,1985.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経障害性疼痛を調節する化合物を同定するための、カテプシンHの使用。
【請求項2】
神経障害性疼痛を調節する化合物を同定又は分析するための、カテプシンHを異種的に発現する非ヒトトランスジェニック動物の使用。
【請求項3】
亢進した神経障害性疼痛感受性のモデルシステムとして、カテプシンHを発現する非ヒトトランスジェニック動物の使用。
【請求項4】
神経障害性疼痛を調節する化合物を同定又は分析するための、非ヒトカテプシンHノックアウト動物の使用。
【請求項5】
低下した神経障害性疼痛感受性のモデルシステムとして、非ヒトカテプシンHノックアウト動物の使用。
【請求項6】
神経障害性疼痛を調節する化合物を同定するための、カテプシンH又はその機能的フラグメントを異種的に発現する細胞の使用。
【請求項7】
亢進した神経障害性疼痛感受性のモデルシステムとして、カテプシンH又はその機能的フラグメントを異種的に発現する細胞の使用。
【請求項8】
神経障害性疼痛を調節する化合物を同定又は分析するための、カテプシンノックアウト細胞の使用。
【請求項9】
低下した神経障害性疼痛感受性のモデルシステムとして、カテプシンノックアウト細胞の使用。
【請求項10】
神経障害性疼痛を調節する化合物を同定又は分析するための、カテプシンHプロモータ及び/又はエンハンサー又はその機能的フラグメントと発現可能にリンクしたレポーター遺伝子を異種的に発現する細胞の使用。
【請求項11】
神経障害性疼痛を調節及び/又は予防する化合物を同定又は分析する方法であって、以下:
a.少なくとも2つの試料を備える工程;
b.カテプシンH又はその機能的フラグメント若しくは誘導体を含む1つの試料を化合物と接触させる工程;
c.化合物の存在下でカテプシンHの活性を測定する工程;
d.化合物の非存在下でカテプシンHの活性を測定する工程;及び
e.c)によるカテプシンHの活性をd)によるカテプシンHの活性と比較する工程;を含んでなる、上記方法。
【請求項12】
神経障害性疼痛を調節及び/又は予防する化合物を同定又は分析する方法であって、以下:
a.カテプシンHタンパク質又はその機能的フラグメント若しくは誘導体を、試験化合物と接触させる工程;及び
b.その試験化合物が、カテプシンHタンパク質又はその機能的フラグメント若しくは誘導体の活性を調節するかどうかを測定する工程;
を含んでなる、上記方法。
【請求項13】
神経障害性疼痛を調節及び/又は予防する化合物を同定又は分析する方法であって、以下:
a.カテプシンHの又はその機能的フラグメント若しくは誘導体の検出可能な量又は活性を有する細胞を、試験化合物と接触させる工程;
b.その試験化合物が、細胞中に存在するカテプシンH又はその機能的フラグメント若しくは誘導体の量又は活性を調節できるかどうかを測定する工程;
を含んでなる、上記方法。
【請求項14】
神経障害性疼痛を調節及び/又は予防する化合物を同定又は分析する方法であって、以下:
a.カテプシンHタンパク質又はその機能的フラグメント若しくは誘導体をコードする核酸を、転写活性のあるシステム中で試験化合物と接触させる工程;及び
b.該化合物の存在下で、該システム内に存在するカテプシンHタンパク質又はその機能的フラグメント若しくは誘導体をコードするmRNAの量を測定する工程;及び
c.その化合物が、該システム中に存在するカテプシンHタンパク質又は機能的フラグメント若しくは誘導体をコードするmRNAの量を調節できるかどうかを測定する工程;を含んでなる、上記方法。
【請求項15】
神経障害性疼痛を調節及び/又は予防する化合物を同定又は分析する方法であって、以下:
a.レポーター遺伝子又はその機能的フラグメントと作動的にカップリングしたカテプシンH遺伝子又はその機能的フラグメントのプロモータを含む核酸ベクターでトランスフェクトされた細胞を備える工程;
b.機能的カテプシンHプロモータと作動的にカップリングしていないレポーター遺伝子又はその機能的フラグメントを含む対照ベクターでトランスフェクトされた細胞を備える工程;
c.試験化合物の存在下で、a)及びb)による細胞のレポーター遺伝子活性を測定する工程;
d.試験化合物の非存在下で、a)及びb)による細胞のレポーター遺伝子活性を測定する工程;
を含んでなる、上記方法。
【請求項16】
神経障害性疼痛を調節する化合物を同定又は分析する方法であって、以下:
a.カテプシンHの活性を調節する化合物を試験化合物として選択する工程;及び
b.該試験化合物を疼痛感覚のある対象に投与し、疼痛が調節されるかどうかを測定する工程;
を含んでなる、上記方法。
【請求項17】
対象における神経障害性疼痛を調節及び/又は予防する化合物を同定又は分析する方法であって、以下:
a.カテプシンHの生物学的活性を調節させる1つ又はそれ以上の調節化合物を同定するために、1つ又はそれ以上の試験化合物の存在下で、カテプシンH又はその機能的フラグメント若しくは誘導体の生物学的活性をアッセイする工程;及び
b.対象における疼痛、疼痛感覚又は疼痛感受性を減少させる能力について、1つ又はそれ以上の調節化合物を試験する工程;
を含んでなる、上記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図3−4】
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【図3−5】
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【図3−6】
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【図3−7】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2013−502912(P2013−502912A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526071(P2012−526071)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062525
【国際公開番号】WO2011/023786
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(504456798)サノフイ (433)
【Fターム(参考)】