説明

カテーテル、中空針、及び留置針組立体

【課題】穿刺部の径を細くして被穿刺者への痛みを緩和するとともに、治療に十分な流量を確保することのできるカテーテル、中空針及び留置針組立体を提供する。
【解決手段】本発明の留置針組立体1は、被穿刺者に穿刺される内針2と、内針2が挿通されるカテーテル6とを備え、カテーテル6はカテーテルチューブ4とカテーテル基5とから構成され、カテーテルチューブ穿刺部21の少なくとも一部にテーパー部24を設けて、穿刺側先端のカテーテル穿刺部21の径がカテーテルチューブ本体22の径よりも細くなるようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば血液透析や輸液、輸血などを行う際に使用されるカテーテル、中空針、及び留置針組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から治療のために血液透析や輸液、輸血が行われており、その処置を行うための装置として留置針が用いられている。この留置針は金属製の注射針にテフロン(登録商標)ないしポリウレタンなどにより形成される柔らかい外筒を設けたもので、血管への挿入後に金属の針を抜くと外筒のみが留置されるものである。
【0003】
このような留置針は、通常、カテーテルと内針からなる2重構造であり、使用に際しては、カテーテルチューブ内に内針を挿入した状態で血管に穿刺し、所定位置まで挿入した後で内針をカテーテルから抜き取る。そして、カテーテルの基端部に輸液ラインなどを接続して、カテーテルチューブを通じて輸液や薬液などを血管中に流入させるものである(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−126090号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の留置針では、被穿刺者に対して内針やカテーテルを刺入するときに、内針やカテーテルの穿刺部の径が太いことにより被穿刺者が強い痛みを感じてしまうという問題点があった。
【0005】
そこで、内針やカテーテルを細くして痛みを緩和することも考えられるが、内針やカテーテルの全体を細くしてしまうと、内部を流れる液体の流量が減少して治療のために十分な流量を確保することができないという問題点があった。
【0006】
本発明の目的は、穿刺部の径を細くすることで被穿刺者への痛みを緩和するとともに、治療のために十分な流量を確保することができるカテーテル、中空針、及び留置針組立体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、カテーテルチューブ穿刺部の少なくとも一部にテーパー部を設けて、穿刺側先端の前記カテーテル穿刺部の径が前記カテーテルチューブ本体の径よりも細くなるように構成したことを特徴とするカテーテルである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のカテーテルにおいて、前記テーパー部を滑らかな流線型の形状としたことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2のいずれか1項に記載のカテーテルにおいて、前記カテーテルチューブ本体に側孔を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、中空針の先端穿刺部の径を中空針胴部の径よりも細くしたことを特徴とする中空針である。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の中空針において、前記先端穿刺部と前記中空針胴部との境界部を滑らかな流線型の形状としたことを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項4または5のいずれか1項に記載の中空針において、前記中空針胴部にサイドホールを設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、被穿刺者に穿刺される内針と、前記内針が挿通されるカテーテルとを備えた留置針組立体において、前記カテーテルを透明体で形成すると共に、カテーテルチューブ穿刺部の少なくとも一部にテーパー部を設けて、穿刺側先端のカテーテルチューブ穿刺部の径がカテーテルチューブ本体の径よりも細くなるように形成し、前記内針は、先端穿刺部を金属で形成すると共に、内針胴部を透明体で形成したことを特徴とする留置針組立体である。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の留置針組立体において、前記テーパー部を滑らかな流線型の形状としたことを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項7または8のいずれか1項に記載の留置針組立体において、前記カテーテルチューブ本体に側孔を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のカテーテル、中空針及び留置針組立体によれば、カテーテルチューブ穿刺部の少なくとも一部にテーパー部を設けて、穿刺側の径を本体の径よりも細くしたので被穿刺者への痛みを緩和できる。また、カテーテルチューブ本体の径を細くすることなしに、穿刺側先端の径を細くしたので、治療のために十分な流量を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、第1の実施形態に係る留置針の構造を説明するため断面図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の留置針組立体1は、被穿刺者に穿刺される内針2と、この内針2を固定する内針基3と、カテーテルチューブ4及びカテーテル基5から構成されたカテーテル6と、カテーテル6に接続されたクランプチューブ7と、コネクター8と、止血弁9とを備えて構成されている。
【0019】
内針2は、カテーテルチューブ4の内腔に挿通される中空針であり、カテーテルチューブ4の内腔に挿通可能となるように、その外径がカテーテルチューブ4の内径よりも若干小さくなるように設定されている。また、材質としては、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン、あるいはこれらの合金等の金属材料によって形成されている。さらに、内針2はカテーテルチューブ4に挿通された状態で被穿刺者に穿刺されるので、刃先がカテーテルチューブ4の先端から突出するような長さに設定されている。内針2の先端部には鋭利な刃先が形成されており、この刃先は穿刺抵抗を低くするために傾斜した刃面を備えている。
【0020】
内針基3は、内針2の後端部に取り付けられている。穿刺者はカテーテル6を被穿刺者に穿刺する際、この内針基3を保持しながら作業を行い、また穿刺後は、クランプチューブ7を保持した状態で内針基3を取り外すことにより内針2を本体部分から抜去することができる。なお、内針2を抜去した際、止血弁9により血液の外部への漏れが防止される。
【0021】
なお、本実施形態の留置針組立体1において、カテーテル6以外の構造は一例を示したものであり、本発明の構造として限定されるものではない。
【0022】
次に、カテーテル6の構造を図2及び図3に基づいて説明する。図2に示すように、カテーテル6は、内針2が挿通されるカテーテルチューブ4と、このカテーテルチューブ4を先端に備えたカテーテル基5とから構成されている。
【0023】
そして、カテーテルチューブ4は、図3の部分拡大図に示すように、被穿刺者に穿刺されるカテーテルチューブ穿刺部21の一部にテーパー部24を設けて、穿刺側先端の径がカテーテルチューブ本体22の径よりも細くなるように構成されている。例えば、カテーテルチューブ穿刺部21の径を20ゲージとして、カテーテルチューブ本体22の径を18ゲージとする。
【0024】
これによれば、穿刺側先端の径が内針2の径とほぼ等しく、テーパー部24では徐々に径が太くなるため、カテーテルチューブ穿刺部21における穿刺抵抗が低減され、被穿刺者への痛みを緩和することができる。さらに、カテーテルチューブ本体22の径は細くしないので、治療のために十分な流量を確保することが可能となる。
【0025】
また、カテーテルチューブ穿刺部21とカテーテルチューブ本体22との境界部分に形成されたテーパー部24を、滑らかな流線型の形状とし、カテーテルチューブ4の径が徐々に細くなるように変化させているので、挿入抵抗を低く抑えることができ、被穿刺者への痛みを緩和することが可能となる。
【0026】
さらに、図3に示すように、カテーテルチューブ本体22には複数の側孔23が設けられており、この側孔の数と大きさによってカテーテルチューブ4を流れる液体の流量を調整することができる。したがって、適切な数と大きさの側孔23を備えたカテーテル6を選択することによって、治療に必要となる流量を確保することができる。
【0027】
このように構成された留置針組立体1では、カテーテル6に内針2が挿入された状態で被穿刺者の血管に穿刺され、カテーテルチューブ4が所定の位置まで挿入された後に内針2は内針基3とともにカテーテル6から抜き取られる。また、止血弁9も取り外される。そして、カテーテルチューブ4が被穿刺者の体内に留置されると、コネクター8に輸液ラインなどが接続され、カテーテルチューブ4を通じて輸液や薬液などが血管中に投入される。
【0028】
したがって、カテーテルチューブ4は血管内を傷つけるおそれの少ない軟質樹脂製のものが一般に用いられ、また内針2は血管への穿刺が容易である金属製のものが一般に用いられる。
【0029】
以上のように、本実施形態のカテーテル6では、カテーテルチューブ穿刺部21の径をカテーテルチューブ本体22の径よりも細くしたので、被穿刺者への痛みを緩和できるとともに、カテーテルチューブ本体22は細くしないので治療のために十分な流量を確保することができる。
【0030】
また、本実施形態のカテーテル6では、カテーテルチューブ穿刺部21のテーパー部24を、滑らかな流線型の形状とすることによりカテーテルチューブ4の径が徐々に細くなるように変化させているので、挿入抵抗を低く抑えることができ、被穿刺者への痛みを緩和することができる。
【0031】
さらに、本実施形態のカテーテル6では、カテーテルチューブ本体22に側孔23を設け、この側孔23の数と大きさによってカテーテルチューブ4を流れる液体の流量を調整することができるので、適切な数と大きさの側孔23を備えたカテーテル6を選択することにより、治療に必要となる流量を確保することができる。
【0032】
なお、カテーテルチューブ穿刺部21の形状は図3に示す形状に限らず、他の形状とすることもできる。例えば、図4(a)に示すカテーテルチューブ穿刺部21Aでは、テーパー部24を全体に形成するとともに、テーパー部24を滑らかな流線型の形状とし、カテーテルチューブ4の径が徐々に細くなるように変化させている。また、図4(b)に示すカテーテルチューブ穿刺部21Bでは、テーパー部24を全体に形成するとともに、テーパー部24を緩やかな円錐形状とし、カテーテルチューブ4の径が徐々に細くなるように変化させている。
【0033】
このように、テーパー部24は図3に示すようなカテーテルチューブ穿刺部21の一部に形成するだけでなく、図4(a)、(b)に示すように全体に形成してもよい。また、テーパー部24の形状は、挿入抵抗を出来るだけ低く抑える意味では、滑らかな流線型の形状とすることが望ましいが、緩やかな円錐形状としてもよく、その他、滑らかな曲線や直線、又はこれらを複合させた形状等を用いることができる。
【0034】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態を図面に基づいて説明する。図5は、第2の実施形態に係る中空針の構造を説明するため側面図である。
【0035】
図5(a)に示すように、本実施形態の中空針41は、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン、あるいはこれらの合金等の金属材料によって形成された中空構造の針であり、内部は先端から根本までが貫通している。
【0036】
そして、被穿刺者に穿刺される先端穿刺部42の径が中空針胴部43の径よりも細くなるように形成されている。例えば、先端穿刺部42の径を19ゲージとして、中空針胴部43の径を16ゲージとする。
【0037】
このように本実施形態の中空針41では、先端穿刺部42を中空針胴部43よりも細くして穿刺抵抗を低減することができるので、被穿刺者への痛みを緩和することができる。さらに、中空針胴部43の径は細くしないので、治療のために十分な流量を確保することができる。
【0038】
また、先端穿刺部42と中空針胴部43との境界部分に形成されたテーパー部45を、滑らかな流線型の形状とし、針の径が徐々に細くなるように変化させているので、挿入抵抗を低く抑えることができ、被穿刺者への痛みを緩和することが可能となる。
【0039】
さらに、図5(b)に示すように、中空針胴部43にはサイドホール44が設けられており、このサイドホール44の数と大きさによって中空針41を流れる液体の流量を調整することができる。したがって、適切な数と大きさのサイドホール44を備えた中空針41を選択することによって、治療に必要となる流量を確保することができる。
【0040】
また、第1の実施形態の留置針組立体1では、カテーテルチューブ4の穿刺部21の径が細くなるように構成しているが、通常のカテーテルを使用し、内針2として本実施形態の中空針41を利用することにより、第1の実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0041】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態を図面に基づいて説明する。図6は、第3の実施形態に係る留置針組立体を構成する内針の構造を説明するため側面図である。ただし、内針以外の構造は第1の実施形態と同様なので、詳しい説明は省略する。
【0042】
図6に示すように、本実施形態の留置針組立体を構成する内針51は、先端穿刺部52が金属で形成され、内針胴部53は樹脂等の透明体で形成されている。 先端穿刺部52は、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン、あるいはこれらの合金等の金属材料によって形成されているので、血管への穿刺が容易になる。
【0043】
内針胴部53は、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の透明または半透明の硬質材料が用いられているので、内針51が被穿刺者に穿刺されたときに血液の逆流を確認することが可能となる。
【0044】
これにより、通常の留置針では、図1に示すように、血液の逆流を確認できる位置は内針2の基端部側の末端となる内針基3の位置であったのに対して、本実施形態の内針51を利用した場合には、図7に示すように、先端穿刺部52と内針胴部53との接続位置Aを過ぎれば血液の逆流を確認することが可能となる。
【0045】
以上のように、本実施形態の内針51を利用した留置針組立体では、内針52の先端穿刺部52を金属で形成し、内針胴部53を透明体で形成したので、血液の逆流を速やかに確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る留置針組立体の構造を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る留置針組立体のカテーテルの構造を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る留置針組立体のカテーテルの構造を示す部分拡大図である。
【図4】(a)、(b)は本発明の第1の実施形態に係る留置針組立体のカテーテルの他の構造を示す部分拡大図である。
【図5】(a)、(b)は本発明の第2の実施形態に係る中空針の構造を示す図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る留置針組立体の内針の構造を示す図である。
【図7】は本発明の第3の実施形態に係る留置針組立体における血液の目視状態を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1 留置針組立体
2、51 内針
3 内針基
4 カテーテルチューブ
5 カテーテル基
6 カテーテル
7 クランプチューブ
8 コネクター
9 止血弁
21 カテーテルチューブ穿刺部
22 カテーテルチューブ本体
23 側孔
24、45 テーパー部
41 中空針
42、52 先端穿刺部
43 中空針胴部
44 サイドホール
53 内針胴部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルチューブ穿刺部の少なくとも一部にテーパー部を設けて、穿刺側先端の前記カテーテル穿刺部の径が前記カテーテルチューブ本体の径よりも細くなるように構成したことを特徴とするカテーテル。
【請求項2】
前記テーパー部を滑らかな流線型の形状としたことを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記カテーテルチューブ本体に側孔を設けたことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載のカテーテル。
【請求項4】
中空針の先端穿刺部の径を中空針胴部の径よりも細くしたことを特徴とする中空針。
【請求項5】
前記先端穿刺部と前記中空針胴部との境界部を滑らかな流線型の形状としたことを特徴とする請求項4に記載の中空針。
【請求項6】
前記中空針胴部にサイドホールを設けたことを特徴とする請求項4または5のいずれか1項に記載の中空針。
【請求項7】
被穿刺者に穿刺される内針と、前記内針が挿通されるカテーテルとを備えた留置針組立体において、
前記カテーテルを透明体で形成すると共に、カテーテルチューブ穿刺部の少なくとも一部にテーパー部を設けて、穿刺側先端の前記カテーテルチューブ穿刺部の径がカテーテルチューブ本体の径よりも細くなるように形成し、
前記内針は、先端穿刺部を金属で形成すると共に、内針胴部を透明体で形成したことを特徴とする留置針組立体。
【請求項8】
前記テーパー部を滑らかな流線型の形状としたことを特徴とする請求項7に記載の留置針組立体。
【請求項9】
前記カテーテルチューブ本体に側孔を設けたことを特徴とする請求項7または8のいずれか1項に記載の留置針組立体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−43445(P2008−43445A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−220427(P2006−220427)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(596183321)メディキット株式会社 (8)
【Fターム(参考)】