カテーテルおよびカテーテルキット
【課題】カテーテルの貫通穴に目詰まりが発生した場合や薬剤投与位置の変更が必要である場合に、患者等に負担をかけず容易に対処することができるカテーテルおよびカテーテルキットを提供すること。
【解決手段】内部チャネル5を有する細長い管状をしており、軸方向に沿って複数の貫通穴6をもつ内筒2と、内筒2の一部を軸方向にスライド可能かつ液密に収容する細長い管状をした第1の外筒3と、内筒2の他の一部を軸方向にスライド可能かつ液密に収容する細長い管状をした第2の外筒4と、を備える。第1の外筒3および第2の外筒4の一端に設けられたフランジ9,12によって生体組織を位置決めし、フランジ9,12間で露出した貫通穴6から薬剤が投与され、内筒2をスライドさせることによって、第1の外筒3あるいは第2の外筒4内に隠れていた貫通穴6を新たに露出させることができる。
【解決手段】内部チャネル5を有する細長い管状をしており、軸方向に沿って複数の貫通穴6をもつ内筒2と、内筒2の一部を軸方向にスライド可能かつ液密に収容する細長い管状をした第1の外筒3と、内筒2の他の一部を軸方向にスライド可能かつ液密に収容する細長い管状をした第2の外筒4と、を備える。第1の外筒3および第2の外筒4の一端に設けられたフランジ9,12によって生体組織を位置決めし、フランジ9,12間で露出した貫通穴6から薬剤が投与され、内筒2をスライドさせることによって、第1の外筒3あるいは第2の外筒4内に隠れていた貫通穴6を新たに露出させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生体内に挿入されるカテーテルおよびカテーテルキットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、人間や人間以外の哺乳動物等に挿入されるカテーテルは、内部にチャネルを有する細長い管状をしており、体内に挿入される部分には、薬剤の吐出や体液の吸引等を目的として内部チャネルと外部とを連通する貫通穴が設けられている。この貫通穴は、カテーテル先端の針の先端に設けられる場合もあるが、カテーテル側面に1つまたは複数個設けられる場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2003−504132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、カテーテルを使用しているうちに、貫通穴が目詰まりを起こし、薬剤の吐出などに支障を来たす場合があった。例えば、薬剤を間欠投与した場合など、貫通穴に組織が入りこんで、貫通穴を塞いでしまう場合がある。このような詰まりが発生した場合、従来は、カテーテルを取り替える必要があり、この取り替えに時間と労力とがかかるという問題点があった。
【0005】
また、カテーテルを使用しているうちに、薬剤等の投与位置を変更したほうが好ましい場合もあった。例えば、腫瘍に対して薬剤を注入する際、十分に薬剤が送達される部位はネクローシスをおこして腫瘍が縮小し、薬剤が不足している部位は腫瘍が肥大するなど、徐々に腫瘍の大きさや形状が変化してくる場合があった。この場合、この腫瘍の大きさや形状の変化に応じて、薬剤の投与位置や投与分布を変化させたほうが治療効果の向上を期待できる。しかしながら、このように薬剤の投与位置を変更する場合、従来は、カテーテルの位置の変更を行っていたが、薬剤の投与位置や投与分布に対応した柔軟な位置変更を簡易に行うことができないという問題点があった。また、カテーテルの交換を行う場合もあるが、この場合、上述したように、カテーテルの交換に時間と労力とがかかるという問題点があった。
【0006】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、カテーテルの貫通穴に目詰まりが発生した場合や薬剤投与位置の変更が必要である場合に、患者等に負担をかけず容易に対処することができるカテーテルおよびカテーテルキットを提供することを目的とする。
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、カテーテルの貫通穴に目詰まりが発生した場合や薬剤投与位置の変更が必要である場合に、貫通穴の切替を容易に行うことができるカテーテルおよびカテーテルキットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかるカテーテルは、内部チャネルを有する細長い管状をしており、側面に少なくとも1つの貫通穴をもつ内筒と、前記内筒の一部を軸方向にスライド可能かつ液密に収容する細長い管状をした第1の外筒と、前記内筒の他の一部を軸方向にスライド可能かつ液密に収容する細長い管状をした第2の外筒と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記内筒には軸方向に沿って複数の貫通穴が設けられることを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記複数の貫通穴は、軸方向に沿って開口面積が異なるように分布していることを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記複数の貫通穴は、軸方向に沿って開口方向が異なるように分布していることを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記内筒の内部チャネルは、複数の流路を有し、前記複数の貫通穴の各々は、前記複数の流路の何れか1つと外部とを連通することを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記第1の外筒の一端には、フランジが設けられていることを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記第2の外筒の一端には、フランジが設けられていることを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記内筒の一端には、把持される被把持部を備えることを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかるカテーテルキットは、内部チャネルを有する細長い管状をしており、側面に少なくとも1つの貫通穴をもつ内筒と、前記内筒の一部を軸方向にスライド可能かつ液密に収容可能な内部通路を有する細長い管状をした第1の外筒と、前記内筒の他の一部を軸方向にスライド可能かつ液密に収容可能な内部通路を有する細長い管状をした第2の外筒と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、内部チャネルを有する細長い管状をしており、側面に少なくとも1つの貫通穴をもつ内筒と、前記内筒の一部を軸方向にスライド可能かつ液密に収容する細長い管状をした第1の外筒と、前記内筒の他の一部を軸方向にスライド可能かつ液密に収容する細長い管状をした第2の外筒と、を備え、前記第1の外筒と前記第2の外筒とに前記内筒を挿入し、前記第1の外筒と前記第2の外筒との間に露出した前記貫通穴から薬剤等を吐出し、あるいは体液等を吸引し、貫通穴に目詰まりが発生した場合や薬剤投与位置の変更が必要である場合に、前記内筒をスライドさせるのみで、前記第1の外筒あるいは前記第2の外筒内に隠れていた貫通穴を露出させることができるので、貫通穴の切替が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、この発明の実施の形態にかかるカテーテルキットの概要構成を示す模式図である。
【図2】図2は、図1に示したカテーテルキットを組み立てたカテーテルの概要構成を示す模式図である。
【図3】図3は、カテーテルの組み立て手順を示す図である。
【図4】図4は、カテーテルが生体に取り付けられた状態を示す模式図である。
【図5】図5は、生体に取り付けられるカテーテルの他の状態を示す模式図である。
【図6】図6は、この発明の実施の形態の変形例1にかかるカテーテルの概要構成を示す模式図である。
【図7】図7は、この発明の実施の形態の変形例2にかかるカテーテルの概要構成を示す模式図である。
【図8】図8は、この発明の実施の形態の変形例3にかかるカテーテルの概要構成を示す模式図である。
【図9】図9は、この発明の実施の形態の変形例4にかかるカテーテルの概要構成を示す模式図である。
【図10】図10は、この発明の実施の形態にかかるカテーテルの内筒の構成を示す断面図である。
【図11】図11は、この発明の実施の形態の変形例5にかかるカテーテルの概要構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、この発明を実施するための形態であるカテーテルおよびカテーテルキットについて説明する。
【0019】
図1は、この発明の実施の形態にかかるカテーテルキットの概要構成を示す模式図である。また、図2は、図1に示したカテーテルキットを組み立てたカテーテルの概要構成を示す模式図である。図1および図2において、カテーテルキットは、内筒2と第1の外筒3と第2の外筒4とを組み立てることによってカテーテル1が形成される。
【0020】
図1に示すように、内筒2は内部チャネル5を有する細長い管状をしており、側面に少なくとも1つの貫通穴6を有し、図1では複数の貫通穴6を有する。貫通穴6は、内部チャネル5と内筒2の外部とを連通し、薬剤の吐出や体液の吸引等に用いられる。また、内筒2の一端には、ワイヤ8で連結された被把持部である針7を有している。内筒2は、生体適合性のある材料、例えば、ポリウレタン、弾性シリコン、テフロン(登録商標)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンなどで形成される。
【0021】
第1の外筒3は、細長い管状をしており、内筒2の一部を軸方向にスライド可能かつ液密に収容可能な内部通路11を有している。また、第1の外筒3の一端には、フランジ9が設けられ、また他端近傍には軸方向に位置が変更可能な可動フランジ10が設けられている。
【0022】
第2の外筒4は、第1の外筒3と同様に細長い管状をしており、内筒2の一部を軸方向にスライド可能かつ液密に収容可能な内部通路14を有している。また、第2の外筒4の一端にはフランジ12が設けられ、また他端近傍には軸方向に位置が変更可能な可動フランジ13が設けられている。
【0023】
第1の外筒3および第2の外筒4は、生体適合性のある材料、例えば、ポリウレタン、弾性シリコン、テフロン(登録商標)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンなど)で形成される。
【0024】
内筒2を、針7がついた側から、第1の外筒3の基端側(フランジ9の無い側)の内部通路11に挿入し、次いで、第2の外筒4の先端側(フランジ12の有る側)の内部通路14に挿入すると、図2に示すように、カテーテル1が構成される。
【0025】
ここで、第1の外筒3および第2の外筒4は、内筒2に対して、軸方向にスライド可能である。内筒2に対する第1の外筒3と第2の外筒4との位置を調整して、第1の外筒3と第2の外筒4との間に、内筒2の貫通穴6が一部または全部露出するようにすることができる。
【0026】
また、内筒2と第1の外筒3との嵌合、および内筒2と第2の外筒4との嵌合は、液体がシールドされる程度に密接、すなわち液密になっている。このため、第1の外筒3および第2の外筒4が覆う貫通穴6からは薬剤の吐出が無い。
【0027】
このカテーテル1は、具体的には、図3に示すように、生体に取り付けられる。まず、図3(1)に示すように、内筒2が挿入された状態の第1の外筒3を生体内の臓器等の生体組織(不図示)に近づけ、フランジ9を生体組織に当接させる。また、生体組織の反対側から第2の外筒4を生体組織に近づけ、フランジ12を生体組織に当接させる。この状態で第2の外筒4の基端側より内部通路14を通して把持具15を導入する。その後、図3(2)に示すように、把持具15で、被把持部である針7を把持する。
【0028】
その後、針7を把持したまま把持具15を引き戻すことにより、内筒2を第2の外筒4の内部通路14内に引き込み(図3(3)参照)、内筒2を第2の外筒4の基端側から突出させる(図3(4)および図3(5)参照)。図3(3)〜(5)に示すように、複数の貫通穴6が内筒2に設けられており、そのうち一部しか第1の外筒3と第2の外筒4との間に現れず、残りは第1の外筒3内に収容された部分の内筒2に位置するか、第2の外筒4内に収容された部分の内筒2に位置している。このため、内筒2を第1の外筒3および第2の外筒4に対して相対的にスライドさせることにより、第1の外筒3と第2の外筒4との間に位置する貫通穴6が切り替わる。
【0029】
上述したように、貫通穴6は、第1の外筒3や第2の外筒4に覆われた状態では薬剤が吐出あるいは吸引できないので、内筒2の第1の外筒3および第2の外筒4に対するスライドにより、薬剤等の吐出や吸引ができる貫通穴6(アクティブな貫通穴)と、薬剤等の吐出や吸引ができない貫通穴6(インアクティブな貫通穴)とが切り替わってゆく。このような内筒2のスライド操作のみによって、目詰まりした貫通穴6を目詰まりしていない貫通穴6に切り替えることができる。また、薬剤等の吐出位置あるいは吐出分布を変化させることができる。
【0030】
ここで、図4は、カテーテル1が生体に取り付けられた状態を示している。図4に示すように、生体21内部の臓器などの生態組織20にカテーテル1が挿入される。第1の外筒3のフランジ9は生体組織20に当接している、また、可動カテーテル10は、生体21の表面に当接するように位置調整されて第1の外筒3に固定される。一方、第2の外筒4のフランジ12は生体組織20に当接している、また、可動カテーテル13は、生体21の表面に当接するように位置調整されて第2の外筒4に固定される。
【0031】
この状態で、内筒1は、第1の外筒3および第2の外筒4の内部を通ってスライド可能に位置している。なお、内筒2の先端の針7は、図4においては、第2の外筒4の内部に位置しており、外部からは見えない。また、内筒2の基端には、薬剤等の駆動手段であるポンプ22が取り付けられている。薬剤等は、ポンプ22から内筒2の内部チャネルを経由して送られ、貫通穴6より生体組織20内に吐出される。
【0032】
なお、図5に示すように、内筒2の先端側にもポンプ23を設けても良い。すなわち、ポンプ22,23の双方のポンプから薬剤等を吐出あるいは体液等を吸引すれば、カテーテル1の先端に近づくに従い吐出圧が小さくなることを防止できる。この場合、内筒2の針7を有する先端側は体外に到達した時点で切断されて内部チャネル5の開口を形成し、この開口をポンプ23に接続する。
【0033】
(変形例1)
なお、図6は、貫通穴6が1つの場合を示している。この場合であっても、第1の外筒3および第2の外筒4に対して内筒2をスライドさせることにより、薬剤吐出位置の変更が可能である。
【0034】
(変形例2)
また、図1では、複数の貫通穴6が内筒2の軸方向に直線状に形成されていたが、図7に示すように、複数の貫通穴6が、軸方向に沿って径方向の開口方向を異なるように分布させてもよい。図7では、貫通穴6がスパイラル状に配列されている。この場合、第1の外筒3および第2の外筒4に対して内筒2をスライドすることにより、薬剤等の吐出方向を、ラジアル方向についても変更することができる。
【0035】
(変形例3)
さらに、図8では、内筒2の軸方向に沿う領域E1〜E4毎に、同じ開口径を有した貫通穴6の個数を増減させるようにしている。このため、第1の外筒3と第2の外筒4との間で露出する貫通穴6の個数によって、軸方向の開口面積が異なるように分布させることができる。すなわち、第1の外筒3および第2の外筒4に対して内筒2をスライドさせることによって、薬剤等の吐出量を変更させることができる。図8では、先端方向に内筒2をスライドさせることによって、順次、複数の貫通穴6による開口面積および開口分布を増大させている。なお、逆に、内筒2を基端側にスライドさせることによって、順次、複数の貫通穴6による開口面積および開口分布を減少させることができる。
【0036】
(変形例4)
なお、図8に示す同じ開口径の貫通穴6ではなく、図9に示すように、異なる開口をもつ貫通穴6−1〜6−4を軸方向に沿って持たせ、第1の外筒3および第2の外筒4に対して内筒2をスライドさせることによって、順次、貫通穴6−1〜6−4による開口面積を変化させることができる。図9では、先端方向に内筒2をスライドさせることによって、順次、貫通穴6−1〜6−4による開口面積を増大させている。なお、逆に、内筒2を基端側にスライドさせることによって、順次、貫通穴6−4〜6−1による開口面積を減少させることができる。
【0037】
(変形例5)
また、上述した内筒2の内部チャネル5は、図10に示すように、1つの内部チェネル5であることを前提として説明したが、これに限らず、図11に示すように、内部チャネル5を隔壁2aによって複数の内部チャネル5a,5bに分割し、複数の流路を形成するようにしてもよい。この場合、内筒2に設けられた複数の貫通穴は、いずれかの流路と外部に連通することになる。図11では、貫通穴6aは、内部チェネル5aから外部に連通し、貫通穴6bは、内部チャネル5bから外部に連通する。このような複数の内部チャネル5a,5bを有することによって、たとえば、異なる薬剤等を同時に吐出することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 カテーテル
2 内筒
2a 隔壁
3 第1の外筒
4 第2の外筒
5,5a,5b 内部チャネル
6,6−1〜6−4,6a,6b 貫通穴
7 針
8 ワイヤ
9,12 フランジ
10,13 可動フランジ
11,14 内部通路
20 生体組織
21 生体
22,23 ポンプ
【技術分野】
【0001】
この発明は、生体内に挿入されるカテーテルおよびカテーテルキットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、人間や人間以外の哺乳動物等に挿入されるカテーテルは、内部にチャネルを有する細長い管状をしており、体内に挿入される部分には、薬剤の吐出や体液の吸引等を目的として内部チャネルと外部とを連通する貫通穴が設けられている。この貫通穴は、カテーテル先端の針の先端に設けられる場合もあるが、カテーテル側面に1つまたは複数個設けられる場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2003−504132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、カテーテルを使用しているうちに、貫通穴が目詰まりを起こし、薬剤の吐出などに支障を来たす場合があった。例えば、薬剤を間欠投与した場合など、貫通穴に組織が入りこんで、貫通穴を塞いでしまう場合がある。このような詰まりが発生した場合、従来は、カテーテルを取り替える必要があり、この取り替えに時間と労力とがかかるという問題点があった。
【0005】
また、カテーテルを使用しているうちに、薬剤等の投与位置を変更したほうが好ましい場合もあった。例えば、腫瘍に対して薬剤を注入する際、十分に薬剤が送達される部位はネクローシスをおこして腫瘍が縮小し、薬剤が不足している部位は腫瘍が肥大するなど、徐々に腫瘍の大きさや形状が変化してくる場合があった。この場合、この腫瘍の大きさや形状の変化に応じて、薬剤の投与位置や投与分布を変化させたほうが治療効果の向上を期待できる。しかしながら、このように薬剤の投与位置を変更する場合、従来は、カテーテルの位置の変更を行っていたが、薬剤の投与位置や投与分布に対応した柔軟な位置変更を簡易に行うことができないという問題点があった。また、カテーテルの交換を行う場合もあるが、この場合、上述したように、カテーテルの交換に時間と労力とがかかるという問題点があった。
【0006】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、カテーテルの貫通穴に目詰まりが発生した場合や薬剤投与位置の変更が必要である場合に、患者等に負担をかけず容易に対処することができるカテーテルおよびカテーテルキットを提供することを目的とする。
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、カテーテルの貫通穴に目詰まりが発生した場合や薬剤投与位置の変更が必要である場合に、貫通穴の切替を容易に行うことができるカテーテルおよびカテーテルキットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかるカテーテルは、内部チャネルを有する細長い管状をしており、側面に少なくとも1つの貫通穴をもつ内筒と、前記内筒の一部を軸方向にスライド可能かつ液密に収容する細長い管状をした第1の外筒と、前記内筒の他の一部を軸方向にスライド可能かつ液密に収容する細長い管状をした第2の外筒と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記内筒には軸方向に沿って複数の貫通穴が設けられることを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記複数の貫通穴は、軸方向に沿って開口面積が異なるように分布していることを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記複数の貫通穴は、軸方向に沿って開口方向が異なるように分布していることを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記内筒の内部チャネルは、複数の流路を有し、前記複数の貫通穴の各々は、前記複数の流路の何れか1つと外部とを連通することを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記第1の外筒の一端には、フランジが設けられていることを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記第2の外筒の一端には、フランジが設けられていることを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記内筒の一端には、把持される被把持部を備えることを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかるカテーテルキットは、内部チャネルを有する細長い管状をしており、側面に少なくとも1つの貫通穴をもつ内筒と、前記内筒の一部を軸方向にスライド可能かつ液密に収容可能な内部通路を有する細長い管状をした第1の外筒と、前記内筒の他の一部を軸方向にスライド可能かつ液密に収容可能な内部通路を有する細長い管状をした第2の外筒と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、内部チャネルを有する細長い管状をしており、側面に少なくとも1つの貫通穴をもつ内筒と、前記内筒の一部を軸方向にスライド可能かつ液密に収容する細長い管状をした第1の外筒と、前記内筒の他の一部を軸方向にスライド可能かつ液密に収容する細長い管状をした第2の外筒と、を備え、前記第1の外筒と前記第2の外筒とに前記内筒を挿入し、前記第1の外筒と前記第2の外筒との間に露出した前記貫通穴から薬剤等を吐出し、あるいは体液等を吸引し、貫通穴に目詰まりが発生した場合や薬剤投与位置の変更が必要である場合に、前記内筒をスライドさせるのみで、前記第1の外筒あるいは前記第2の外筒内に隠れていた貫通穴を露出させることができるので、貫通穴の切替が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、この発明の実施の形態にかかるカテーテルキットの概要構成を示す模式図である。
【図2】図2は、図1に示したカテーテルキットを組み立てたカテーテルの概要構成を示す模式図である。
【図3】図3は、カテーテルの組み立て手順を示す図である。
【図4】図4は、カテーテルが生体に取り付けられた状態を示す模式図である。
【図5】図5は、生体に取り付けられるカテーテルの他の状態を示す模式図である。
【図6】図6は、この発明の実施の形態の変形例1にかかるカテーテルの概要構成を示す模式図である。
【図7】図7は、この発明の実施の形態の変形例2にかかるカテーテルの概要構成を示す模式図である。
【図8】図8は、この発明の実施の形態の変形例3にかかるカテーテルの概要構成を示す模式図である。
【図9】図9は、この発明の実施の形態の変形例4にかかるカテーテルの概要構成を示す模式図である。
【図10】図10は、この発明の実施の形態にかかるカテーテルの内筒の構成を示す断面図である。
【図11】図11は、この発明の実施の形態の変形例5にかかるカテーテルの概要構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、この発明を実施するための形態であるカテーテルおよびカテーテルキットについて説明する。
【0019】
図1は、この発明の実施の形態にかかるカテーテルキットの概要構成を示す模式図である。また、図2は、図1に示したカテーテルキットを組み立てたカテーテルの概要構成を示す模式図である。図1および図2において、カテーテルキットは、内筒2と第1の外筒3と第2の外筒4とを組み立てることによってカテーテル1が形成される。
【0020】
図1に示すように、内筒2は内部チャネル5を有する細長い管状をしており、側面に少なくとも1つの貫通穴6を有し、図1では複数の貫通穴6を有する。貫通穴6は、内部チャネル5と内筒2の外部とを連通し、薬剤の吐出や体液の吸引等に用いられる。また、内筒2の一端には、ワイヤ8で連結された被把持部である針7を有している。内筒2は、生体適合性のある材料、例えば、ポリウレタン、弾性シリコン、テフロン(登録商標)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンなどで形成される。
【0021】
第1の外筒3は、細長い管状をしており、内筒2の一部を軸方向にスライド可能かつ液密に収容可能な内部通路11を有している。また、第1の外筒3の一端には、フランジ9が設けられ、また他端近傍には軸方向に位置が変更可能な可動フランジ10が設けられている。
【0022】
第2の外筒4は、第1の外筒3と同様に細長い管状をしており、内筒2の一部を軸方向にスライド可能かつ液密に収容可能な内部通路14を有している。また、第2の外筒4の一端にはフランジ12が設けられ、また他端近傍には軸方向に位置が変更可能な可動フランジ13が設けられている。
【0023】
第1の外筒3および第2の外筒4は、生体適合性のある材料、例えば、ポリウレタン、弾性シリコン、テフロン(登録商標)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンなど)で形成される。
【0024】
内筒2を、針7がついた側から、第1の外筒3の基端側(フランジ9の無い側)の内部通路11に挿入し、次いで、第2の外筒4の先端側(フランジ12の有る側)の内部通路14に挿入すると、図2に示すように、カテーテル1が構成される。
【0025】
ここで、第1の外筒3および第2の外筒4は、内筒2に対して、軸方向にスライド可能である。内筒2に対する第1の外筒3と第2の外筒4との位置を調整して、第1の外筒3と第2の外筒4との間に、内筒2の貫通穴6が一部または全部露出するようにすることができる。
【0026】
また、内筒2と第1の外筒3との嵌合、および内筒2と第2の外筒4との嵌合は、液体がシールドされる程度に密接、すなわち液密になっている。このため、第1の外筒3および第2の外筒4が覆う貫通穴6からは薬剤の吐出が無い。
【0027】
このカテーテル1は、具体的には、図3に示すように、生体に取り付けられる。まず、図3(1)に示すように、内筒2が挿入された状態の第1の外筒3を生体内の臓器等の生体組織(不図示)に近づけ、フランジ9を生体組織に当接させる。また、生体組織の反対側から第2の外筒4を生体組織に近づけ、フランジ12を生体組織に当接させる。この状態で第2の外筒4の基端側より内部通路14を通して把持具15を導入する。その後、図3(2)に示すように、把持具15で、被把持部である針7を把持する。
【0028】
その後、針7を把持したまま把持具15を引き戻すことにより、内筒2を第2の外筒4の内部通路14内に引き込み(図3(3)参照)、内筒2を第2の外筒4の基端側から突出させる(図3(4)および図3(5)参照)。図3(3)〜(5)に示すように、複数の貫通穴6が内筒2に設けられており、そのうち一部しか第1の外筒3と第2の外筒4との間に現れず、残りは第1の外筒3内に収容された部分の内筒2に位置するか、第2の外筒4内に収容された部分の内筒2に位置している。このため、内筒2を第1の外筒3および第2の外筒4に対して相対的にスライドさせることにより、第1の外筒3と第2の外筒4との間に位置する貫通穴6が切り替わる。
【0029】
上述したように、貫通穴6は、第1の外筒3や第2の外筒4に覆われた状態では薬剤が吐出あるいは吸引できないので、内筒2の第1の外筒3および第2の外筒4に対するスライドにより、薬剤等の吐出や吸引ができる貫通穴6(アクティブな貫通穴)と、薬剤等の吐出や吸引ができない貫通穴6(インアクティブな貫通穴)とが切り替わってゆく。このような内筒2のスライド操作のみによって、目詰まりした貫通穴6を目詰まりしていない貫通穴6に切り替えることができる。また、薬剤等の吐出位置あるいは吐出分布を変化させることができる。
【0030】
ここで、図4は、カテーテル1が生体に取り付けられた状態を示している。図4に示すように、生体21内部の臓器などの生態組織20にカテーテル1が挿入される。第1の外筒3のフランジ9は生体組織20に当接している、また、可動カテーテル10は、生体21の表面に当接するように位置調整されて第1の外筒3に固定される。一方、第2の外筒4のフランジ12は生体組織20に当接している、また、可動カテーテル13は、生体21の表面に当接するように位置調整されて第2の外筒4に固定される。
【0031】
この状態で、内筒1は、第1の外筒3および第2の外筒4の内部を通ってスライド可能に位置している。なお、内筒2の先端の針7は、図4においては、第2の外筒4の内部に位置しており、外部からは見えない。また、内筒2の基端には、薬剤等の駆動手段であるポンプ22が取り付けられている。薬剤等は、ポンプ22から内筒2の内部チャネルを経由して送られ、貫通穴6より生体組織20内に吐出される。
【0032】
なお、図5に示すように、内筒2の先端側にもポンプ23を設けても良い。すなわち、ポンプ22,23の双方のポンプから薬剤等を吐出あるいは体液等を吸引すれば、カテーテル1の先端に近づくに従い吐出圧が小さくなることを防止できる。この場合、内筒2の針7を有する先端側は体外に到達した時点で切断されて内部チャネル5の開口を形成し、この開口をポンプ23に接続する。
【0033】
(変形例1)
なお、図6は、貫通穴6が1つの場合を示している。この場合であっても、第1の外筒3および第2の外筒4に対して内筒2をスライドさせることにより、薬剤吐出位置の変更が可能である。
【0034】
(変形例2)
また、図1では、複数の貫通穴6が内筒2の軸方向に直線状に形成されていたが、図7に示すように、複数の貫通穴6が、軸方向に沿って径方向の開口方向を異なるように分布させてもよい。図7では、貫通穴6がスパイラル状に配列されている。この場合、第1の外筒3および第2の外筒4に対して内筒2をスライドすることにより、薬剤等の吐出方向を、ラジアル方向についても変更することができる。
【0035】
(変形例3)
さらに、図8では、内筒2の軸方向に沿う領域E1〜E4毎に、同じ開口径を有した貫通穴6の個数を増減させるようにしている。このため、第1の外筒3と第2の外筒4との間で露出する貫通穴6の個数によって、軸方向の開口面積が異なるように分布させることができる。すなわち、第1の外筒3および第2の外筒4に対して内筒2をスライドさせることによって、薬剤等の吐出量を変更させることができる。図8では、先端方向に内筒2をスライドさせることによって、順次、複数の貫通穴6による開口面積および開口分布を増大させている。なお、逆に、内筒2を基端側にスライドさせることによって、順次、複数の貫通穴6による開口面積および開口分布を減少させることができる。
【0036】
(変形例4)
なお、図8に示す同じ開口径の貫通穴6ではなく、図9に示すように、異なる開口をもつ貫通穴6−1〜6−4を軸方向に沿って持たせ、第1の外筒3および第2の外筒4に対して内筒2をスライドさせることによって、順次、貫通穴6−1〜6−4による開口面積を変化させることができる。図9では、先端方向に内筒2をスライドさせることによって、順次、貫通穴6−1〜6−4による開口面積を増大させている。なお、逆に、内筒2を基端側にスライドさせることによって、順次、貫通穴6−4〜6−1による開口面積を減少させることができる。
【0037】
(変形例5)
また、上述した内筒2の内部チャネル5は、図10に示すように、1つの内部チェネル5であることを前提として説明したが、これに限らず、図11に示すように、内部チャネル5を隔壁2aによって複数の内部チャネル5a,5bに分割し、複数の流路を形成するようにしてもよい。この場合、内筒2に設けられた複数の貫通穴は、いずれかの流路と外部に連通することになる。図11では、貫通穴6aは、内部チェネル5aから外部に連通し、貫通穴6bは、内部チャネル5bから外部に連通する。このような複数の内部チャネル5a,5bを有することによって、たとえば、異なる薬剤等を同時に吐出することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 カテーテル
2 内筒
2a 隔壁
3 第1の外筒
4 第2の外筒
5,5a,5b 内部チャネル
6,6−1〜6−4,6a,6b 貫通穴
7 針
8 ワイヤ
9,12 フランジ
10,13 可動フランジ
11,14 内部通路
20 生体組織
21 生体
22,23 ポンプ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部チャネルを有する細長い管状をしており、側面に少なくとも1つの貫通穴をもつ内筒と、
前記内筒の一部を軸方向にスライド可能かつ液密に収容する細長い管状をした第1の外筒と、
前記内筒の他の一部を軸方向にスライド可能かつ液密に収容する細長い管状をした第2の外筒と、
を備えたことを特徴とするカテーテル。
【請求項2】
前記内筒には軸方向に沿って複数の貫通穴が設けられることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記複数の貫通穴は、軸方向に沿って開口面積が異なるように分布していることを特徴とする請求項2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記複数の貫通穴は、軸方向に沿って開口方向が異なるように分布していることを特徴とする請求項2に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記内筒の内部チャネルは、複数の流路を有し、
前記複数の貫通穴の各々は、前記複数の流路の何れか1つと外部とを連通することを特徴とする請求項2に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記第1の外筒の一端には、フランジが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記第2の外筒の一端には、フランジが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記内筒の一端には、把持される被把持部を備えることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項9】
内部チャネルを有する細長い管状をしており、側面に少なくとも1つの貫通穴をもつ内筒と、
前記内筒の一部を軸方向にスライド可能かつ液密に収容可能な内部通路を有する細長い管状をした第1の外筒と、
前記内筒の他の一部を軸方向にスライド可能かつ液密に収容可能な内部通路を有する細長い管状をした第2の外筒と、
を備えたことを特徴とするカテーテルキット。
【請求項1】
内部チャネルを有する細長い管状をしており、側面に少なくとも1つの貫通穴をもつ内筒と、
前記内筒の一部を軸方向にスライド可能かつ液密に収容する細長い管状をした第1の外筒と、
前記内筒の他の一部を軸方向にスライド可能かつ液密に収容する細長い管状をした第2の外筒と、
を備えたことを特徴とするカテーテル。
【請求項2】
前記内筒には軸方向に沿って複数の貫通穴が設けられることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記複数の貫通穴は、軸方向に沿って開口面積が異なるように分布していることを特徴とする請求項2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記複数の貫通穴は、軸方向に沿って開口方向が異なるように分布していることを特徴とする請求項2に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記内筒の内部チャネルは、複数の流路を有し、
前記複数の貫通穴の各々は、前記複数の流路の何れか1つと外部とを連通することを特徴とする請求項2に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記第1の外筒の一端には、フランジが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記第2の外筒の一端には、フランジが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記内筒の一端には、把持される被把持部を備えることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項9】
内部チャネルを有する細長い管状をしており、側面に少なくとも1つの貫通穴をもつ内筒と、
前記内筒の一部を軸方向にスライド可能かつ液密に収容可能な内部通路を有する細長い管状をした第1の外筒と、
前記内筒の他の一部を軸方向にスライド可能かつ液密に収容可能な内部通路を有する細長い管状をした第2の外筒と、
を備えたことを特徴とするカテーテルキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−252923(P2010−252923A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104483(P2009−104483)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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