カテーテルポンプ
本発明は、外部の駆動源に近位端で接続可能な駆動ケーブル(5)を備えた細長いスリーブ(6)と、駆動ケーブル(5)に接続された駆動シャフト(4)に取り付けられた、駆動ケーブル(5)の遠位端の近くにある駆動ロータとを備え、駆動ロータが、ケージ(2)で囲まれたプロペラ(3)からなり、プロペラ(3)及びケージ(2)が、駆動シャフト(4)に近い挿入状態から、広げられた動作状態へと折畳み可能である、ヒトの大動脈弁(10)の近くの上行大動脈(11)内に配置されるカテーテルポンプであって、挿入後に、大動脈弁(10)の近くの上行大動脈(11)内に駆動ロータ(3)を固定するための手段(7、7a、2a、19)により特徴付けられるカテーテルポンプに関する。本発明はまた、大動脈弁(10)のすぐ上の上行大動脈(11)内にカテーテルポンプのポンプ送り手段を配置する方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
「Reitanカテーテルポンプシステム」は、可撓性を有するカテーテルの先端にある折畳み可能なプロペラの概念に基づいた一時的な循環サポートシステムである。このシステムは、本来の心臓が十分に酸素化された血液で体をサポートすることのできない心不全を有する患者で、使用される。
【0002】
かかるシステムは、欧州特許第0768900号、スウェーデン特許出願第0801459−9号及び第0801460−7号で述べられており、また、以下ではこのシステムの最新の改良と共に説明する。前記公報の内容は本願の一部として含まれる。述べられている寸法は好ましい寸法であって、本発明に関して請求する保護を限定することを意図するものではない。
【0003】
市場にはいくつかの血液ポンプがあるが、それらの大部分は、埋め込むために大がかりな外科手術を必要とする。したがって、折畳み可能なプロペラを使用することは、挿入中に折り畳まれて、高い流量能力を備える大きなプロペラを、経皮的に、外科手術を必要とせずに、体内に導入することを可能にするという利点を有する。展開した後、ポンプは動作中、プロペラが大きくなる。プロペラは、カテーテルの遠位端にあるポンプヘッド内に配置される。プロペラに加えて、ポンプヘッドはまた、プロペラから大動脈を保護するために、プロペラを囲む、フィラメントから作られたケージを備えている。
【0004】
ポンプの挿入は、動脈系に穿刺することにより、好ましくは鼠蹊部の大腿動脈に穿刺することにより、導入器シースを介して行われる。以前のバージョンでは、ポンプは、上部胸大動脈中へと前進して、ポンプヘッドを左の鎖骨下動脈の約5〜10センチメートル下に配置される。適当な位置に配置された後、プロペラ及びその保護ケージは、可撓性カテーテルの近位端で傘状の機構により展開される。この位置で、プロペラの回転が、大動脈の内側に圧力勾配を生成する。大動脈の上部で生成される血圧降下により、左心室の拍出が容易になる。大動脈の下部で増した圧力は、内部臓器の、特に、腎臓の灌流を容易にする。
【0005】
プロペラへの動力の伝達は、近位端でDCモータに接続された、カテーテルの内部にある回転ワイヤにより行われる。DCモータの回転速度は、特別に設計されたコンソールにより調整され、監視することができる。
【0006】
「CARDIOBRIDGE REITANカテーテルポンプシステム」は、4つの主要な構成要素からなる。すなわち、1.カテーテル−ポンプヘッド、2.駆動ユニット、3.コンソール、4.パージ(purge)システムである。
【0007】
REITANカテーテルポンプそれ自体は、可撓性のある外側及び内側カテーテルからなり、それは、互いに摺動して保護ケージを展開し、ケージの中でプロペラを広げる。内側カテーテルの中心管腔を通る可撓性のある駆動ワイヤが存在する。内側カテーテルはまた、潤滑のために20%グルコース溶液をポンプヘッドに移送するための小さなチャネルを有する。液の1/3は、内部の駆動シャフト管腔を介して戻り、液の2/3は、患者に送達される。
【0008】
[ポンプヘッド]
可撓性のあるカテーテルの遠位先端に取り付けられたポンプヘッドは、挿入中は35mm(10French)であるが、展開されたポンプヘッドは約19.5mmの寸法である。内側カテーテルの中心管腔に配置された回転ワイヤを介して伝達されるプロペラの回転は、カテーテルの近位端で開始するが(駆動結合)、それは、DCモータへの磁界を介して、駆動ユニット中に配置される。
【0009】
[駆動ユニット]
駆動ユニットは、DCモータを含み、また患者のベッドの横に置かれ、一端でカテーテルポンプに接続するための磁気結合(駆動結合)を有する。駆動ユニットの他端は、電気ケーブルを介してコンソールに接続される。
【0010】
[コンソール]
コンソールの主な機能は、カテーテルポンプ、及びパージ液のためのぜん動ポンプの速度を監視し、且つ制御することである。システムに対するすべての制御及びパラメータの監視は、タッチスクリーン上に表示される。
【0011】
DCモータ、回転ワイヤ、及びプロペラの速度は調整可能であり、且つ監視され、また1000〜15000rpmの間で調整することができる。
【0012】
[パージシステム]
パージシステムは、ポンプの回転部分を潤滑するために、また回転部分に血液が入ることを阻止するように構成される。パージシステムは、20%の無菌のグルコース溶液を移送して内部の構成要素を潤滑するためのカテーテルの内側にある小さなチャネルからなる。ヘパリンが、パージ液に添加されることになる。液の1/3は、内側の管腔を通って移送されて戻り、回転ワイヤを潤滑する。グルコース溶液の2/3が、患者の循環に入り、シャフトを密封する。コンソールは、ぜん動ポンプの速度を制御する。
【発明の概要】
【0013】
以下では、カテーテルポンプの改良点を説明する。
【0014】
上記で述べた設計は、ポンプが、鼠蹊部から患者に挿入されたとき、上行大動脈(大動脈弁の上)中にポンプを安全に配置し、且つ固定するための固定機構を欠いている。
【0015】
大腿動脈を介する挿入の問題は、
1.ポンプは、大動脈弓の湾曲部を横断する必要がある。
2.ポンプは、大動脈弁に対する動き、及び接触を回避するために、上行大動脈中で固定される必要がある。
【0016】
しかし、最近のポンプは、大動脈弓上の移植片を介して、或いは一般的ではないが、右(また左)の頸動脈を通して、心臓手術中に上行大動脈内に配置することができる。
【0017】
本発明では、ポンプヘッドを、大動脈中でさらに上に進ませて大動脈弓を横断し、上行大動脈中に配置することができる。
【0018】
上行大動脈中にカテーテルポンプを配置することにより、特有の利点が得られる。
【0019】
[逆流、大動脈弁、及び冠状灌流]
ポンプが管(大動脈)中に配置されたとき、プロペラの回転が管の内側に圧力勾配を生成することになり、前方の圧力は、プロペラの後方の圧力よりも低下する。圧力勾配は、管の壁に沿って後方流れを生成する。大動脈壁に沿った流れは、プロペラを通る流れの方向とは反対に生ずるため、エネルギーの損失と見なすことができる。
【0020】
大動脈弁は、左心室の直接上の上行大動脈の壁に接続された3つの小葉状の弁である。ポンプが、大動脈弁の上方に配置されると、逆流は小葉状の弁により止められる。最終的に、高い圧力勾配が得られる。
【0021】
ベンチテストでは、この圧力は、真っ直ぐな管で得られる圧力と比較して、3倍を超えるまで増加することができる。
【0022】
これによる影響は、
1.左心室の後負荷の低減であり、それは、左心室における作業負荷の低下を示唆している。
2.小葉状の弁の上方に冠状動脈出口があるため、増加した逆流は、冠状灌流の圧力を高めることになる。
3.大脳動脈の出口の前にポンプを配置することは、脳の灌流を増加させることになる。
【0023】
本発明はまた、大動脈弁のすぐ上の上行大動脈中に、本発明によるカテーテルポンプを配置するための方法を対象とする。好ましくは、カテーテルは、動脈系に穿刺することにより、好ましくは鼠蹊部の大腿動脈に穿刺することにより、好ましくは導入器シースを介して挿入される。次いで、カテーテルポンプが移送されて、大動脈弁のすぐ上の上行大動脈内の位置に固定される。使用時には、カテーテルポンプは心臓と直列に動作する。
【0024】
図を参照して、以下で本発明をより詳細に述べる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】心臓に挿入されるように意図されたカテーテルの延長部によりポンプヘッドが固定される本発明の第1の実施形態を示している。
【図2】心臓に挿入されるように意図されたカテーテルの延長部によりポンプヘッドが固定される本発明の第1の実施形態を示している。
【図3】心臓に挿入されるように意図されたカテーテルの延長部によりポンプヘッドが固定される本発明の第1の実施形態を示している。
【図4】大動脈弁の外側付近に位置するように意図されたカテーテルの延長部によりポンプヘッドが固定される本発明の第2の実施形態を示している。
【図5】大動脈弁の外側付近に位置するように意図されたカテーテルの延長部によりポンプヘッドが固定される本発明の第2の実施形態を示している。
【図6】大動脈弁の外側付近に位置するように意図されたカテーテルの延長部によりポンプヘッドが固定される本発明の第2の実施形態を示している。
【図7】ケージから外側に延びており、血管壁に対して配置される、プロペラを囲むケージの一部によりポンプヘッドが固定される本発明の第3の実施形態を示している。
【図8】ケージから外側に延びており、血管壁に対して配置される、プロペラを囲むケージの一部によりポンプヘッドが固定される本発明の第3の実施形態を示している。
【図9】ケージから外側に延びており、血管壁に対して配置される、プロペラを囲むケージの一部によりポンプヘッドが固定される本発明の第3の実施形態を示している。
【図10】駆動ロータの近くのカテーテルに取り付けられ、且つ外側から制御できる、カテーテルと共に挿入可能な細線によりポンプが固定された本発明の第4の実施形態を示している。
【図11】駆動ロータの近くのカテーテルに取り付けられ、且つ外側から制御できる、カテーテルと共に挿入可能な細線によりポンプが固定された本発明の第4の実施形態を示している。
【図12】駆動ロータの近くのカテーテルに取り付けられ、且つ外側から制御できる、カテーテルと共に挿入可能な細線によりポンプが固定された本発明の第4の実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明によるカテーテルの第1の実施形態の遠位端を示している。1は、スリーブ6を貫通する駆動ケーブル5に接続された駆動シャフト4上のプロペラ3を囲んだケージ2からなるポンプヘッドである。ポンプヘッド1は動作状態で示されており、図3で示すように、心臓の中へと運ばれるように意図された延長部7を備える。
【0027】
図2は、挿入状態にあるポンプヘッド1が導入器8と共に示されている。延長部7は、図1で示された本来の形状から延ばされて、一部が導入器8の中に挿入されている。
【0028】
図3は、延長部7が心臓9に挿入された、動作状態のカテーテルを示している。以下の細部はポンプの機能に対して重要である。
【0029】
10は大動脈弁。
【0030】
11は上行大動脈。12は大動脈湾曲部。
【0031】
13、14は頸動脈。
【0032】
15は鎖骨下動脈。
【0033】
16は下行大動脈。
【0034】
17は左冠状動脈。
【0035】
18は右冠状動脈。
【0036】
細部20及び21は、以下で説明する。
【0037】
図3で示すように、延長部7の遠位端7’が、心臓9の壁で支持される場合、延長部7は、プロペラ3及びケージ2が心臓9の外側の大動脈弁10の近くの上行大動脈11内に配置されるような長さを有する。
【0038】
図4、5、及び6は、動作状態にある本発明によるカテーテルの第2の実施形態の遠位端を示している。その違いは、延長部7aが、円、又は円の一部、又は螺旋形という本来の形状を有することであるが、それは、図5で示すように真っ直ぐな形で導入器8に挿入することができる。延長部7aは、挿入されると本来の形状に戻り、大動脈弁10の外側付近に配置されたポンプヘッド1を支持することになる。図5及び6で、円、円の一部、又は螺旋形で示されるように、延長部7aは、カテーテルの長手方向軸線に対して直角をなす平面内に配置される。さらに、延長部7aは、大動脈弁の近位の位置に直接固定される位置に配置された遠位先端7a’を延長部7aの遠位端に有しており、装置を上行大動脈11中に配置できるようにする。
【0039】
図7、8、及び9は、本発明によるカテーテルの第3の実施形態を示している。その違いは、駆動シャフト4に近い状態から、ケージを形成するように拡大することのできるバンド、細線(thread)、又は帯状体(strip)からなるケージ2が、血管壁に接触して、囲まれているプロペラを備えたケージを所望の位置に固定するために、ケージから外に延びるように構成されたいくつかのバンド、細線、若しくは帯状体、又はそれらの部分2aを有することである。
【0040】
同じ原理に基づく第2の実施形態では、フィラメントが、ケージから離れたポンプヘッドの先端のリングに固定される。フィラメントは、挿入中は平行であり、またポンプヘッドの回転軸線に対して平行である。それらは、展開されたとき、本来の形状により半径方向に反り血管壁に押しつけられて固定されるように構成される。利点は、フィラメントがポンプヘッドの延長部に配置されており、ケージ直径の増加が回避されることである。
【0041】
図10、11、及び12は、本発明によるカテーテルの第4の実施形態を示している。その違いは、カテーテルと共に挿入されるように、細線19が、ポンプヘッド1の近傍に取り付けられていることである。細線19は外側から制御され、したがって、上行大動脈11におけるポンプヘッド1の位置を決定するために使用することができる。
【0042】
大動脈弁10のすぐ上の上行大動脈11内のポンプヘッド1の位置により、矢印20により示される逆流が生ずる。前記逆流は、左及び右の冠状動脈17、18への血流を増すことになる。それと同時に、通常のポンプ流れ21は、頸動脈13、14、及び鎖骨下動脈15への血流を増加させる。
【0043】
上行大動脈中にポンプヘッドを固定した場合、特別の利点が得られるが、例えば、下行大動脈で使用される場合に位置を固定することも、当然であるが有利になるはずである。
【背景技術】
【0001】
「Reitanカテーテルポンプシステム」は、可撓性を有するカテーテルの先端にある折畳み可能なプロペラの概念に基づいた一時的な循環サポートシステムである。このシステムは、本来の心臓が十分に酸素化された血液で体をサポートすることのできない心不全を有する患者で、使用される。
【0002】
かかるシステムは、欧州特許第0768900号、スウェーデン特許出願第0801459−9号及び第0801460−7号で述べられており、また、以下ではこのシステムの最新の改良と共に説明する。前記公報の内容は本願の一部として含まれる。述べられている寸法は好ましい寸法であって、本発明に関して請求する保護を限定することを意図するものではない。
【0003】
市場にはいくつかの血液ポンプがあるが、それらの大部分は、埋め込むために大がかりな外科手術を必要とする。したがって、折畳み可能なプロペラを使用することは、挿入中に折り畳まれて、高い流量能力を備える大きなプロペラを、経皮的に、外科手術を必要とせずに、体内に導入することを可能にするという利点を有する。展開した後、ポンプは動作中、プロペラが大きくなる。プロペラは、カテーテルの遠位端にあるポンプヘッド内に配置される。プロペラに加えて、ポンプヘッドはまた、プロペラから大動脈を保護するために、プロペラを囲む、フィラメントから作られたケージを備えている。
【0004】
ポンプの挿入は、動脈系に穿刺することにより、好ましくは鼠蹊部の大腿動脈に穿刺することにより、導入器シースを介して行われる。以前のバージョンでは、ポンプは、上部胸大動脈中へと前進して、ポンプヘッドを左の鎖骨下動脈の約5〜10センチメートル下に配置される。適当な位置に配置された後、プロペラ及びその保護ケージは、可撓性カテーテルの近位端で傘状の機構により展開される。この位置で、プロペラの回転が、大動脈の内側に圧力勾配を生成する。大動脈の上部で生成される血圧降下により、左心室の拍出が容易になる。大動脈の下部で増した圧力は、内部臓器の、特に、腎臓の灌流を容易にする。
【0005】
プロペラへの動力の伝達は、近位端でDCモータに接続された、カテーテルの内部にある回転ワイヤにより行われる。DCモータの回転速度は、特別に設計されたコンソールにより調整され、監視することができる。
【0006】
「CARDIOBRIDGE REITANカテーテルポンプシステム」は、4つの主要な構成要素からなる。すなわち、1.カテーテル−ポンプヘッド、2.駆動ユニット、3.コンソール、4.パージ(purge)システムである。
【0007】
REITANカテーテルポンプそれ自体は、可撓性のある外側及び内側カテーテルからなり、それは、互いに摺動して保護ケージを展開し、ケージの中でプロペラを広げる。内側カテーテルの中心管腔を通る可撓性のある駆動ワイヤが存在する。内側カテーテルはまた、潤滑のために20%グルコース溶液をポンプヘッドに移送するための小さなチャネルを有する。液の1/3は、内部の駆動シャフト管腔を介して戻り、液の2/3は、患者に送達される。
【0008】
[ポンプヘッド]
可撓性のあるカテーテルの遠位先端に取り付けられたポンプヘッドは、挿入中は35mm(10French)であるが、展開されたポンプヘッドは約19.5mmの寸法である。内側カテーテルの中心管腔に配置された回転ワイヤを介して伝達されるプロペラの回転は、カテーテルの近位端で開始するが(駆動結合)、それは、DCモータへの磁界を介して、駆動ユニット中に配置される。
【0009】
[駆動ユニット]
駆動ユニットは、DCモータを含み、また患者のベッドの横に置かれ、一端でカテーテルポンプに接続するための磁気結合(駆動結合)を有する。駆動ユニットの他端は、電気ケーブルを介してコンソールに接続される。
【0010】
[コンソール]
コンソールの主な機能は、カテーテルポンプ、及びパージ液のためのぜん動ポンプの速度を監視し、且つ制御することである。システムに対するすべての制御及びパラメータの監視は、タッチスクリーン上に表示される。
【0011】
DCモータ、回転ワイヤ、及びプロペラの速度は調整可能であり、且つ監視され、また1000〜15000rpmの間で調整することができる。
【0012】
[パージシステム]
パージシステムは、ポンプの回転部分を潤滑するために、また回転部分に血液が入ることを阻止するように構成される。パージシステムは、20%の無菌のグルコース溶液を移送して内部の構成要素を潤滑するためのカテーテルの内側にある小さなチャネルからなる。ヘパリンが、パージ液に添加されることになる。液の1/3は、内側の管腔を通って移送されて戻り、回転ワイヤを潤滑する。グルコース溶液の2/3が、患者の循環に入り、シャフトを密封する。コンソールは、ぜん動ポンプの速度を制御する。
【発明の概要】
【0013】
以下では、カテーテルポンプの改良点を説明する。
【0014】
上記で述べた設計は、ポンプが、鼠蹊部から患者に挿入されたとき、上行大動脈(大動脈弁の上)中にポンプを安全に配置し、且つ固定するための固定機構を欠いている。
【0015】
大腿動脈を介する挿入の問題は、
1.ポンプは、大動脈弓の湾曲部を横断する必要がある。
2.ポンプは、大動脈弁に対する動き、及び接触を回避するために、上行大動脈中で固定される必要がある。
【0016】
しかし、最近のポンプは、大動脈弓上の移植片を介して、或いは一般的ではないが、右(また左)の頸動脈を通して、心臓手術中に上行大動脈内に配置することができる。
【0017】
本発明では、ポンプヘッドを、大動脈中でさらに上に進ませて大動脈弓を横断し、上行大動脈中に配置することができる。
【0018】
上行大動脈中にカテーテルポンプを配置することにより、特有の利点が得られる。
【0019】
[逆流、大動脈弁、及び冠状灌流]
ポンプが管(大動脈)中に配置されたとき、プロペラの回転が管の内側に圧力勾配を生成することになり、前方の圧力は、プロペラの後方の圧力よりも低下する。圧力勾配は、管の壁に沿って後方流れを生成する。大動脈壁に沿った流れは、プロペラを通る流れの方向とは反対に生ずるため、エネルギーの損失と見なすことができる。
【0020】
大動脈弁は、左心室の直接上の上行大動脈の壁に接続された3つの小葉状の弁である。ポンプが、大動脈弁の上方に配置されると、逆流は小葉状の弁により止められる。最終的に、高い圧力勾配が得られる。
【0021】
ベンチテストでは、この圧力は、真っ直ぐな管で得られる圧力と比較して、3倍を超えるまで増加することができる。
【0022】
これによる影響は、
1.左心室の後負荷の低減であり、それは、左心室における作業負荷の低下を示唆している。
2.小葉状の弁の上方に冠状動脈出口があるため、増加した逆流は、冠状灌流の圧力を高めることになる。
3.大脳動脈の出口の前にポンプを配置することは、脳の灌流を増加させることになる。
【0023】
本発明はまた、大動脈弁のすぐ上の上行大動脈中に、本発明によるカテーテルポンプを配置するための方法を対象とする。好ましくは、カテーテルは、動脈系に穿刺することにより、好ましくは鼠蹊部の大腿動脈に穿刺することにより、好ましくは導入器シースを介して挿入される。次いで、カテーテルポンプが移送されて、大動脈弁のすぐ上の上行大動脈内の位置に固定される。使用時には、カテーテルポンプは心臓と直列に動作する。
【0024】
図を参照して、以下で本発明をより詳細に述べる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】心臓に挿入されるように意図されたカテーテルの延長部によりポンプヘッドが固定される本発明の第1の実施形態を示している。
【図2】心臓に挿入されるように意図されたカテーテルの延長部によりポンプヘッドが固定される本発明の第1の実施形態を示している。
【図3】心臓に挿入されるように意図されたカテーテルの延長部によりポンプヘッドが固定される本発明の第1の実施形態を示している。
【図4】大動脈弁の外側付近に位置するように意図されたカテーテルの延長部によりポンプヘッドが固定される本発明の第2の実施形態を示している。
【図5】大動脈弁の外側付近に位置するように意図されたカテーテルの延長部によりポンプヘッドが固定される本発明の第2の実施形態を示している。
【図6】大動脈弁の外側付近に位置するように意図されたカテーテルの延長部によりポンプヘッドが固定される本発明の第2の実施形態を示している。
【図7】ケージから外側に延びており、血管壁に対して配置される、プロペラを囲むケージの一部によりポンプヘッドが固定される本発明の第3の実施形態を示している。
【図8】ケージから外側に延びており、血管壁に対して配置される、プロペラを囲むケージの一部によりポンプヘッドが固定される本発明の第3の実施形態を示している。
【図9】ケージから外側に延びており、血管壁に対して配置される、プロペラを囲むケージの一部によりポンプヘッドが固定される本発明の第3の実施形態を示している。
【図10】駆動ロータの近くのカテーテルに取り付けられ、且つ外側から制御できる、カテーテルと共に挿入可能な細線によりポンプが固定された本発明の第4の実施形態を示している。
【図11】駆動ロータの近くのカテーテルに取り付けられ、且つ外側から制御できる、カテーテルと共に挿入可能な細線によりポンプが固定された本発明の第4の実施形態を示している。
【図12】駆動ロータの近くのカテーテルに取り付けられ、且つ外側から制御できる、カテーテルと共に挿入可能な細線によりポンプが固定された本発明の第4の実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明によるカテーテルの第1の実施形態の遠位端を示している。1は、スリーブ6を貫通する駆動ケーブル5に接続された駆動シャフト4上のプロペラ3を囲んだケージ2からなるポンプヘッドである。ポンプヘッド1は動作状態で示されており、図3で示すように、心臓の中へと運ばれるように意図された延長部7を備える。
【0027】
図2は、挿入状態にあるポンプヘッド1が導入器8と共に示されている。延長部7は、図1で示された本来の形状から延ばされて、一部が導入器8の中に挿入されている。
【0028】
図3は、延長部7が心臓9に挿入された、動作状態のカテーテルを示している。以下の細部はポンプの機能に対して重要である。
【0029】
10は大動脈弁。
【0030】
11は上行大動脈。12は大動脈湾曲部。
【0031】
13、14は頸動脈。
【0032】
15は鎖骨下動脈。
【0033】
16は下行大動脈。
【0034】
17は左冠状動脈。
【0035】
18は右冠状動脈。
【0036】
細部20及び21は、以下で説明する。
【0037】
図3で示すように、延長部7の遠位端7’が、心臓9の壁で支持される場合、延長部7は、プロペラ3及びケージ2が心臓9の外側の大動脈弁10の近くの上行大動脈11内に配置されるような長さを有する。
【0038】
図4、5、及び6は、動作状態にある本発明によるカテーテルの第2の実施形態の遠位端を示している。その違いは、延長部7aが、円、又は円の一部、又は螺旋形という本来の形状を有することであるが、それは、図5で示すように真っ直ぐな形で導入器8に挿入することができる。延長部7aは、挿入されると本来の形状に戻り、大動脈弁10の外側付近に配置されたポンプヘッド1を支持することになる。図5及び6で、円、円の一部、又は螺旋形で示されるように、延長部7aは、カテーテルの長手方向軸線に対して直角をなす平面内に配置される。さらに、延長部7aは、大動脈弁の近位の位置に直接固定される位置に配置された遠位先端7a’を延長部7aの遠位端に有しており、装置を上行大動脈11中に配置できるようにする。
【0039】
図7、8、及び9は、本発明によるカテーテルの第3の実施形態を示している。その違いは、駆動シャフト4に近い状態から、ケージを形成するように拡大することのできるバンド、細線(thread)、又は帯状体(strip)からなるケージ2が、血管壁に接触して、囲まれているプロペラを備えたケージを所望の位置に固定するために、ケージから外に延びるように構成されたいくつかのバンド、細線、若しくは帯状体、又はそれらの部分2aを有することである。
【0040】
同じ原理に基づく第2の実施形態では、フィラメントが、ケージから離れたポンプヘッドの先端のリングに固定される。フィラメントは、挿入中は平行であり、またポンプヘッドの回転軸線に対して平行である。それらは、展開されたとき、本来の形状により半径方向に反り血管壁に押しつけられて固定されるように構成される。利点は、フィラメントがポンプヘッドの延長部に配置されており、ケージ直径の増加が回避されることである。
【0041】
図10、11、及び12は、本発明によるカテーテルの第4の実施形態を示している。その違いは、カテーテルと共に挿入されるように、細線19が、ポンプヘッド1の近傍に取り付けられていることである。細線19は外側から制御され、したがって、上行大動脈11におけるポンプヘッド1の位置を決定するために使用することができる。
【0042】
大動脈弁10のすぐ上の上行大動脈11内のポンプヘッド1の位置により、矢印20により示される逆流が生ずる。前記逆流は、左及び右の冠状動脈17、18への血流を増すことになる。それと同時に、通常のポンプ流れ21は、頸動脈13、14、及び鎖骨下動脈15への血流を増加させる。
【0043】
上行大動脈中にポンプヘッドを固定した場合、特別の利点が得られるが、例えば、下行大動脈で使用される場合に位置を固定することも、当然であるが有利になるはずである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトの大動脈弁(10)の近くの上行大動脈(11)内に配置されるカテーテルポンプであって、
細長いスリーブ(6)であり、該スリーブを貫通して延び、外部の駆動源に近位端で接続可能な駆動ケーブル(5)を備えたスリーブ(6)と、
前記駆動ケーブル(5)に接続された駆動シャフト(4)に取り付けられた、前記駆動ケーブル(5)の遠位端の近くにある駆動ロータと
を備え、
前記駆動ロータが、ケージ(2)で囲まれたプロペラ(3)からなり、
前記プロペラ(3)及び前記ケージ(2)が、前記駆動シャフト(4)に近い挿入状態から、広げられた動作状態へと折畳み可能である、カテーテルポンプにおいて、
挿入後に、大動脈弁(10)の近くの上行大動脈(11)内に前記駆動ロータ(3)を固定するための手段(7、7a、2a、19)により特徴付けられる、カテーテルポンプ。
【請求項2】
前記駆動ロータを固定するための前記手段は、心臓の壁に押しつけられて支持されるよう心臓(9)へと運ばれるように意図された前記カテーテルの遠位端の延長部(7)からなり、前記延長部は、該延長部の遠位端が心臓の壁に支持される場合、前記プロペラ(3)及び前記ケージ(2)が、心臓の外側であるが、大動脈弁(10)の近くの上行大動脈(11)内に配置されるような長さを有することを特徴とする、請求項1に記載のカテーテルポンプ。
【請求項3】
前記駆動ロータを固定するための前記手段は、円、円の一部、又は螺旋という本来の形状を有する、前記カテーテルの前記遠位端の延長部(7a)からなり、該延長部は、前記カテーテルの長手方向軸線と直角をなす平面内に位置するが、血管中に真っ直ぐな形状で挿入可能であって、且つ、心臓(9)のすぐ外側で本来の形状に戻ることができ、大動脈弁(10)の上方付近に置かれることにより前記駆動ロータを支持することができ、
前記延長部(7a)は、上行大動脈(11)の壁に、又は上行大動脈(11)の壁の近傍に配置される遠位の先端を遠位端に有することを特徴とする、請求項1に記載のカテーテルポンプ。
【請求項4】
前記駆動シャフト(4)に近い状態から、前記ケージの形状へと拡大可能である複数のバンド、細線又は帯状体からなる前記ケージ(2)は、前記バンド、前記細線若しくは前記帯状体(2)又はそれらの部分(2a)のいくつかが、前記血管壁に接触するために、且つ前記囲まれた駆動ロータ(3)を有する前記ケージを大動脈弁(10)の近くの上行大動脈(11)内に固定するために、前記ケージから外側に延びるように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のカテーテルポンプ。
【請求項5】
いくつかの前記バンド、前記細線又は前記帯状体の端部は、前記駆動シャフト(4)上で互いに移動可能な2つスリーブ(22)に固定されることを特徴とする、請求項4に記載のカテーテルポンプ。
【請求項6】
前記駆動ロータ(3)の近傍で前記カテーテルに取り付けられ、且つ前記駆動ロータの位置を規定するために外側から制御できる、前記カテーテルと共に挿入可能な細線(19)により特徴付けられる、請求項1に記載のカテーテルポンプ。
【請求項7】
前記ケージ(2)は、前記駆動ロータの外側でいくらかの逆流を可能にする開いた構造のバンド、細線又は帯状体からなることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のカテーテルポンプ。
【請求項8】
大動脈弁(10)のすぐ上の上行大動脈(11)内にカテーテルポンプのポンプ送り手段を配置する方法であって、請求項1〜7のいずれか一項に記載のカテーテルポンプを使用することにより特徴付けられる方法。
【請求項9】
前記カテーテルが、動脈系に穿刺することにより、好ましくは鼠蹊部の大腿動脈に穿刺することにより、好ましくは導入器シースを介して挿入され、前記カテーテルポンプが、大動脈弁(10)のすぐ上の上行大動脈(11)内の位置に運ばれ、且つ固定されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項1】
ヒトの大動脈弁(10)の近くの上行大動脈(11)内に配置されるカテーテルポンプであって、
細長いスリーブ(6)であり、該スリーブを貫通して延び、外部の駆動源に近位端で接続可能な駆動ケーブル(5)を備えたスリーブ(6)と、
前記駆動ケーブル(5)に接続された駆動シャフト(4)に取り付けられた、前記駆動ケーブル(5)の遠位端の近くにある駆動ロータと
を備え、
前記駆動ロータが、ケージ(2)で囲まれたプロペラ(3)からなり、
前記プロペラ(3)及び前記ケージ(2)が、前記駆動シャフト(4)に近い挿入状態から、広げられた動作状態へと折畳み可能である、カテーテルポンプにおいて、
挿入後に、大動脈弁(10)の近くの上行大動脈(11)内に前記駆動ロータ(3)を固定するための手段(7、7a、2a、19)により特徴付けられる、カテーテルポンプ。
【請求項2】
前記駆動ロータを固定するための前記手段は、心臓の壁に押しつけられて支持されるよう心臓(9)へと運ばれるように意図された前記カテーテルの遠位端の延長部(7)からなり、前記延長部は、該延長部の遠位端が心臓の壁に支持される場合、前記プロペラ(3)及び前記ケージ(2)が、心臓の外側であるが、大動脈弁(10)の近くの上行大動脈(11)内に配置されるような長さを有することを特徴とする、請求項1に記載のカテーテルポンプ。
【請求項3】
前記駆動ロータを固定するための前記手段は、円、円の一部、又は螺旋という本来の形状を有する、前記カテーテルの前記遠位端の延長部(7a)からなり、該延長部は、前記カテーテルの長手方向軸線と直角をなす平面内に位置するが、血管中に真っ直ぐな形状で挿入可能であって、且つ、心臓(9)のすぐ外側で本来の形状に戻ることができ、大動脈弁(10)の上方付近に置かれることにより前記駆動ロータを支持することができ、
前記延長部(7a)は、上行大動脈(11)の壁に、又は上行大動脈(11)の壁の近傍に配置される遠位の先端を遠位端に有することを特徴とする、請求項1に記載のカテーテルポンプ。
【請求項4】
前記駆動シャフト(4)に近い状態から、前記ケージの形状へと拡大可能である複数のバンド、細線又は帯状体からなる前記ケージ(2)は、前記バンド、前記細線若しくは前記帯状体(2)又はそれらの部分(2a)のいくつかが、前記血管壁に接触するために、且つ前記囲まれた駆動ロータ(3)を有する前記ケージを大動脈弁(10)の近くの上行大動脈(11)内に固定するために、前記ケージから外側に延びるように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のカテーテルポンプ。
【請求項5】
いくつかの前記バンド、前記細線又は前記帯状体の端部は、前記駆動シャフト(4)上で互いに移動可能な2つスリーブ(22)に固定されることを特徴とする、請求項4に記載のカテーテルポンプ。
【請求項6】
前記駆動ロータ(3)の近傍で前記カテーテルに取り付けられ、且つ前記駆動ロータの位置を規定するために外側から制御できる、前記カテーテルと共に挿入可能な細線(19)により特徴付けられる、請求項1に記載のカテーテルポンプ。
【請求項7】
前記ケージ(2)は、前記駆動ロータの外側でいくらかの逆流を可能にする開いた構造のバンド、細線又は帯状体からなることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のカテーテルポンプ。
【請求項8】
大動脈弁(10)のすぐ上の上行大動脈(11)内にカテーテルポンプのポンプ送り手段を配置する方法であって、請求項1〜7のいずれか一項に記載のカテーテルポンプを使用することにより特徴付けられる方法。
【請求項9】
前記カテーテルが、動脈系に穿刺することにより、好ましくは鼠蹊部の大腿動脈に穿刺することにより、好ましくは導入器シースを介して挿入され、前記カテーテルポンプが、大動脈弁(10)のすぐ上の上行大動脈(11)内の位置に運ばれ、且つ固定されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2012−527269(P2012−527269A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511253(P2012−511253)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056772
【国際公開番号】WO2010/133567
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(510315009)カーディオブリッジ ゲーエムベーハー (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056772
【国際公開番号】WO2010/133567
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(510315009)カーディオブリッジ ゲーエムベーハー (3)
【Fターム(参考)】
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