説明

カテーテル及びカテーテルの製造方法

【課題】2つのチューブが接合されてなるカテーテルにおいて、それらチューブ同士を好適に接合することができるカテーテルを提供する。
【解決手段】吸引カテーテルはカテーテル本体11を備え、カテーテル本体11は、異物を吸引するための吸引ルーメン17を有する吸引チューブ14と、ガイドワイヤが挿通されるガイドワイヤルーメン18を有するガイドワイヤチューブ15とを備える。吸引チューブ14は、近位側吸引チューブ21とそれよりも遠位側の遠位側吸引チューブ22とが互いに溶着されてなる。ガイドワイヤチューブ15は、近位側吸引チューブ21と遠位側吸引チューブ22とに跨って設けられている。ガイドワイヤチューブ15は、近位側ガイドチューブ41とそれよりも遠位側の遠位側ガイドチューブ42とを備え、近位側ガイドチューブ41が近位側吸引チューブ21に溶着され、遠位側ガイドチューブ42が遠位側吸引チューブ22に溶着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用のカテーテルは体内の腔、血管等に挿入されて、血栓の吸引、閉塞状態にある血管の通路確保等を行うために用いられる中空状の医療用器具であり、その内部に軸線方向に延びるルーメン(通路)を有している。カテーテルには、かかるルーメンを複数有しているものがある。このようなカテーテルは、一のルーメンを有する複数のチューブが溶着や接着により接合されることで形成されるのが一般である。
【0003】
例えば、体内の異物を吸引除去するために用いられる吸引カテーテルでは、吸引ルーメンを有する吸引チューブと、ガイドワイヤを挿通可能なガイドワイヤルーメンを有するガイドワイヤチューブとが溶着により接合されることで形成されているものがある(例えば、特許文献1参照)。この種のカテーテルでは、例えば吸引チューブの外周面に対してガイドワイヤチューブが溶着される。
【0004】
ところで、吸引カテーテルでは、吸引チューブを補強する目的で、吸引チューブにおいて吸引ルーメンを囲む周壁部に編組体を埋設することにより編組層を設けることがある。この場合、吸引チューブの近位部分には編組層を設けることで剛性を高め、同チューブの遠位部分では編組層を設けずに柔軟性を確保することがある。かかる構成では、ガイドワイヤチューブが吸引チューブに対して編組層が存在する編組領域と、編組層が存在しない非編組領域とに跨って設けられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−86476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述の構成では、ガイドワイヤチューブを編組領域に対して溶着する場合と、非編組領域に対して溶着する場合とで、それぞれの溶着を行うのに適した条件(溶着条件)が相違すると考えられる。具体的には、吸引チューブにおける編組領域では周壁部に編組体が埋設されており、その編組体の分、非編組領域と比べて溶着の際に必要な樹脂量が少なくなっているため、ガイドワイヤチューブを吸引チューブにおいて編組領域と非編組領域とに跨って溶着する場合に、編組領域に対する溶着条件と、非編組領域に対する溶着条件とが相違することとなる。したがって、ガイドワイヤチューブを吸引チューブに溶着するに際し、その溶着条件を編組領域及び非編組領域のうちいずれか一方に適した条件に設定すると、他方に対しては溶着不良を招くおそれがあり、その場合溶着強度の低下といった不都合が生じることが懸念される。
【0007】
また、このような問題はガイドワイヤチューブを吸引チューブに対して溶着により接合する場合だけでなく、接着等他の接合方法により接合する場合にも同様に生じうる。例えば、ガイドワイヤチューブを吸引チューブに対して溶剤を用いて接着する際にも、編組領域と非編組領域とでは溶剤により溶解できる樹脂量に差異があるため、同様の問題が生じうる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、2つのチューブが接合されてなるカテーテルにおいて、それらチューブ同士を好適に接合することができるカテーテル及びその製造方法を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、第1の発明のカテーテルは、第1ルーメンを有する第1チューブと、前記第1ルーメンと同方向に延びる第2ルーメンを有する第2チューブと、を備え、前記第1チューブは、第1近位管部とそれよりも遠位側に設けられた第1遠位管部とが互いに接合されてなり、前記第1近位管部の内腔と前記第1遠位管部の内腔とが連通されて前記第1ルーメンが形成されており、前記第2チューブが、前記第1近位管部と前記第1遠位管部とに跨って延びるように設けられたカテーテルであって、前記第2チューブは、第2近位管部とそれよりも遠位側に設けられた第2遠位管部とが互いに接合されてなるものであり、前記第2近位管部が前記第1近位管部に対して接合され、前記第2遠位管部が前記第1遠位管部に対して接合されていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、第2チューブが、第2近位管部と第2遠位管部とに分割されて構成されており、これら各管部が、第1チューブの第1近位管部と第1遠位管部とに対してそれぞれ個別に接合されるようになっている。したがって、第1近位管部と第2近位管部との接合、及び第1遠位管部と第2遠位管部との接合においては、それぞれ行う接合の接合条件について、一方の接合条件により他方の接合条件が制限されることなく、各々の接合に適した接合条件とすることができる。そのため、第1近位管部と第2近位管部との接合、及び第1遠位管部と第2遠位管部との接合をそれぞれ好適に行うことができる。これにより、第1チューブと第2チューブとを好適に接合することができる。
【0011】
第2の発明のカテーテルは、第1の発明において、前記第1チューブにおいて、前記第1近位管部及び前記第1遠位管部のうちいずれか一方には、その内腔を囲む周壁部に補強体を用いて形成される補強層が設けられており、他方には、その内腔を囲む周壁部に前記補強層が設けられていないことを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、第1近位管部及び第1遠位管部のうち補強層が設けられている側の管部(以下、補強管部という)では、周壁部に補強体が存在している分、補強層が設けられていない側の管部(以下、非補強管部という)と比べて、樹脂量が少なくなっていることが考えられる。そのため、例えば第2チューブを第1チューブに対して溶着により接合する際には、第2チューブを第1近位管部に溶着する場合と、第1遠位管部に溶着する場合とで、それぞれの溶着に適した溶着条件が異なることが想定される。この点、本発明では、まず(第1チューブの)補強管部と第2近位管部(又は第2遠位管部)とを溶着により接合するとともに、非補強管部と第2遠位管部(又は第2近位管部)とを溶着により接合することができるため、これらの溶着をそれぞれ各々の溶着に適した溶着条件で実施できる。したがって、かかる構成において、2つのチューブを好適に接合することが可能である。
【0013】
第3の発明のカテーテルは、第1又は第2の発明において、前記第1チューブにおいて、前記第1近位管部及び前記第1遠位管部のうちいずれか一方ではその内腔に少なくとも一部が突出した状態で前記第2チューブが配置され、他方ではその内腔に突出しない状態で前記第2チューブが配置されていることを特徴とする。
【0014】
第1チューブと第2チューブとが接合されてなるカテーテルとして、第1チューブに対する第2チューブの配置態様が第1チューブの軸線方向の途中で切り替わるものがある。例えば、第2チューブを、第1チューブにおける第1近位管部及び第1遠位管部のいずれか一方(以下、突出側管部という)に対してはその内腔に少なくとも一部が突出した状態で配置し、他方(以下、非突出側管部という)に対してはその内腔に突出しない状態で配置する構成が考えられる。ここで、第2チューブを前者のように配置する際には、第2チューブを第1チューブの第1ルーメン内に配置した状態で接合する必要があるのに対し、後者のように配置する際には第2チューブを第1ルーメンの外に配置した状態で接合する必要がある。そのため、かかる構成においては、第2チューブを第1チューブに対して第1近位管部と第1遠位管部とに跨って接合することは困難と考えられる。この点、本発明によれば、まず(第1チューブの)突出側管部の内腔に第2近位管部(又は第2遠位管部)を配置した状態でそれら各管部の接合を行い、非突出側管部の内腔の外側に第2遠位管部(又は第2近位管部)を配置した状態でそれら各管部の接合を行うことができるため、上記構成のカテーテルについて好適に製造することができる。
【0015】
第4の発明のカテーテルは、第3の発明において、前記第1チューブにおいて、前記第1近位管部及び前記第1遠位管部のうち、内腔に突出しない状態で前記第2チューブが配置されている管部には、その外周部に、前記第1チューブの軸線方向に延び前記第2チューブが当接した状態で配置される第2チューブ配置部が設定されており、前記第2チューブ配置部には、前記第2近位管部と前記第2遠位管部とが同軸にかつ、互いの端面同士を突き合わせた状態で接合されていることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、第1チューブの第2チューブ配置部に、第2チューブの2つの管部(第2近位管部、第2遠位管部)が共に当接状態で配置されるようになっており、上記のとおり第1近位管部と第2近位管部とが接合され、かつ第1遠位管部と第2遠位管部とが接合される構成において、例えば第1近位管部の外周部に対して第2遠位管部の一部を重ね合わせて配置することができる。つまり、第2チューブの2つの管部(第2近位管部、第2遠位管部)についていずれも、第1チューブの2つの管部(第1近位管部、第1遠位管部)のうち一方の外周部を、設置の基準部にすることができる。この場合、第2チューブの第2近位管部及び第2遠位管部のうち一方は、第1チューブの第1近位管部及び第1遠位管部のうち一方に対して接合されるのに対し、他方は、第1チューブの第1近位管部及び第1遠位管部の両方に対して接合されるように構成することも可能となる。
【0017】
そして上記構成によれば、第1近位管部及び第1遠位管部のうち、内腔に突出しない状態で第2チューブが配置されている管部(非突出側管部)の外周部では、第2近位管部と第2遠位管部とがいずれも第2チューブ配置部に配置されることで、その非突出側管部の外周部において第2チューブの2つの管部(第2近位管部、第2遠位管部)を同軸で配置する作業の容易化を図ることができる。
【0018】
第5の発明のカテーテルは、第1乃至第4のいずれかの発明において、異物を吸引除去するために用いられる吸引用のカテーテルであって、前記第1チューブは、吸引ルーメンを前記第1ルーメンとして有する吸引チューブであり、前記第2チューブは、ガイドワイヤが挿通されるガイドワイヤルーメンを前記第2ルーメンとして有するガイドワイヤチューブであることを特徴とする。
【0019】
吸引カテーテルでは、吸引チューブにおいてその近位側と遠位側とでチューブの構成が異なる場合がある。例えば、近位側と遠位側とで、周壁部(樹脂層)の厚みが異なったり、溶融温度の異なる素材が用いられたりすることがある。このような吸引チューブに対して、近位側及び遠位側に跨って延びるようにガイドワイヤチューブを配置し接合する場合には、ガイドワイヤチューブの吸引チューブに対する接合条件が吸引チューブの近位側と遠位側とで相違することが考えられ、その場合近位側及び遠位側の少なくともいずれかにおいて接合不良が発生するおそれがある。この点、本発明では、かかる吸引カテーテルにおいて、第1の発明を適用しているため、ガイドワイヤチューブを吸引チューブに対して好適に接合できる。特に、ガイドワイヤチューブでは、そのガイドワイヤルーメンにガイドワイヤが挿入されて使用される際に、同チューブに軸線方向に対し直交する方向への負荷が掛かって同チューブの一部が吸引チューブから剥離するといった問題が生じることが懸念されるため、この点を鑑みても、本発明の効果は大きいといえる。
【0020】
また、一般にガイドワイヤチューブは吸引チューブよりも小径であり、その周壁部の厚みが吸引チューブのそれよりも小さい。そのため、ガイドワイヤチューブを吸引チューブに例えば熱溶着により接合する際に、予め定められた所定の溶着条件とは異なる条件、例えば所定の溶着条件よりも熱負荷の大きい条件で熱溶着を行うと、ガイドワイヤチューブが熱劣化して同チューブに亀裂が発生したりするおそれがある。この点、ガイドワイヤチューブを吸引チューブの第1近位管部及び第1遠位管部にそれぞれ適切な溶着条件で溶着できる上記の構成では、かかる不都合を回避できる利点もある。
【0021】
第6の発明のカテーテルの製造方法は、第1ルーメンを有する第1チューブと、第2ルーメンを有する第2チューブと、を備え、前記第1チューブは、第1近位管部とそれよりも遠位側に設けられた第1遠位管部とが互いに接合されてなり、前記第2チューブは、第2近位管部とそれよりも遠位側に設けられた第2遠位管部とが互いに接合されてなるとともに、前記第1近位管部と前記第1遠位管部とに跨って延びるように設けられているカテーテルに適用され、前記第1近位管部と前記第2近位管部とを接合することにより近位側チューブを製造する近位側チューブ製造工程と、前記第1遠位管部と前記第2遠位管部とを接合することにより遠位側チューブを製造する遠位側チューブ製造工程と、前記第1近位管部と前記第1遠位管部とを接合するとともに前記第2近位管部と前記第2遠位管部とを接合することにより、前記近位側チューブと前記遠位側チューブとを接合するチューブ接合工程と、を備えることを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、まず第1近位管部と第2近位管部とを接合することにより近位側チューブを製造し、第1遠位管部と第2遠位管部とを接合することにより遠位側チューブを製造する。この場合、近位側チューブを製造する際の接合と、遠位側チューブを製造する際の接合とで接合条件を異ならせることができるため、それぞれの接合に適した条件(接合条件)で各接合を行うことができる。その後、第1近位管部と第1遠位管部とを接合し、第2近位管部と第2遠位管部とを接合することにより、近位側チューブと遠位側チューブとを接合する。これにより、第1の発明と同様に、第1チューブと第2チューブとを好適に接合することができる。
【0023】
第7の発明のカテーテルの製造方法は、記遠位側チューブ製造工程では、前記第1ルーメンの一部を構成する前記第1遠位管部の内腔に前記第2遠位管部を配置した状態で、前記第1遠位管部と前記第2遠位管部とを接合することにより、前記第2遠位管部の少なくとも一部が前記第1遠位管部の内腔に突出するように前記遠位側チューブを製造し、前記近位側チューブ製造工程では、前記第1ルーメンの一部を構成する前記第1近位管部の外側に前記第2近位管部を配置した状態で、前記第1近位管部と前記第2近位管部とを接合することにより、前記第2近位管部が前記第1近位管部の内腔に突出しないように前記近位側チューブを製造することを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、第1遠位管部の内腔に第2遠位管部を配置した状態でそれら各管部を接合することにより遠位側チューブを製造でき、第1近位管部の外側に第2近位管部を配置した状態でそれら各管部を接合することにより近位側チューブを製造できる。すなわち、第1チューブに対する第2チューブの配置態様が第1チューブにおける遠位側と近位側とで異なるカテーテルにおいて、カテーテルの遠位側部分(遠位側チューブ)と近位側部分(近位側チューブ)とを個別に製造し、その後遠位側チューブと近位側チューブとを接合することでカテーテルを製造できる。そのため、かかる構成のカテーテルを好適に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】吸引カテーテルの構成を示す概略全体側面図。
【図2】(a)がカテーテル本体の構成を示す縦断面図、(b)が同構成を示す側面図。
【図3】カテーテル本体の構成を示す横断面図であり、(a)が図2(a)のA−A線断面、(b)がB−B線断面、(c)がC−C線断面、(d)がD−D線断面を示す。
【図4】吸引カテーテルの製造手順を説明するための説明図。
【図5】他の実施形態におけるカテーテル本体を示す横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、血栓を吸引するための吸引カテーテルについて具体化している。図1は、吸引カテーテルの構成を示す概略全体側面図である。
【0027】
図1に示すように、吸引カテーテル10は、1m〜2mの長さ寸法とされており、カテーテル本体11と、当該カテーテル本体11の近位端部(基端部)に取り付けられたハブ12とを備えている。カテーテル本体11は、吸引チューブ14と、当該吸引チューブ14の遠位端側に設けられたガイドワイヤチューブ15とを備え、これら各チューブ14,15が溶着により接合されることで形成されている。吸引チューブ14は、その内部に吸引ルーメン17を有しており、ガイドワイヤチューブ15は、その内部にガイドワイヤが挿通されるガイドワイヤルーメン18(図2及び図3参照)を有している。
【0028】
ハブ12は、その内部に吸引チューブ14の吸引ルーメン17に通じる流体通路12aを有している。ハブ12には、吸引具としてシリンジSが接続されており、このシリンジSを用いて吸引ルーメン17に負圧を付与することで、同ルーメン17を介して血栓の吸引等が可能となる。ちなみに、かかる吸引具としては、シリンジSの他に、電動式の真空ポンプ等が用いられる。
【0029】
次に、カテーテル本体11の構成について図2及び図3を用いて詳細に説明する。図2は、(a)がカテーテル本体11の構成を示す縦断面図、(b)が同構成を示す側面図である。図3は、カテーテル本体11の構成を示す横断面図であり、(a)が図2(a)のA−A線断面、(b)がB−B線断面、(c)がC−C線断面、(d)がD−D線断面を示す。ちなみに、縦断面はカテーテル本体11の長手方向(軸線方向)に平行な断面であり、横断面は同長手方向に直交する断面である。
【0030】
図2及び図3に示すように、カテーテル本体11は、上述したように吸引チューブ14とガイドワイヤチューブ15とが溶着されてなるものとなっている。吸引チューブ14は、近位側吸引チューブ21とそれよりも遠位側に設けられた遠位側吸引チューブ22とを備え、それら各チューブ21,22同士が互いに溶着により接合されることで形成されている。なおここで、吸引チューブ14が第1チューブに相当し、ガイドワイヤチューブ15が第2チューブに相当する。また、近位側吸引チューブ21が第1近位管部に相当し、遠位側吸引チューブ22が第1遠位管部に相当する。
【0031】
なお、本明細書において、「溶着」とは、接合対象である各部材の材料同士が溶融することにより接合(溶着)されている場合だけでなく、接合対象となる各部材が熱収縮チューブにより被覆されて加熱される等することで、各部材のうち一方の部材が溶融しそれが他方の部材に接合されている場合を含む意味である。
【0032】
近位側吸引チューブ21は、吸引チューブ14においてその近位端部から遠位側に向けた所定の範囲を構成している。近位側吸引チューブ21は、管状をなしており、その内部に長手方向全域に亘って連続して延びる内腔21aを有している。近位側吸引チューブ21は、合成樹脂を含む複数種類の素材が積層されてなる複層構造を有している。具体的には、近位側吸引チューブ21は、その遠位端部から近位側に向けた所定の範囲を構成しその外周側にガイドワイヤチューブ15が配置されるガイドチューブ配置領域24と、同領域24よりも近位側を構成しその外周側にガイドワイヤチューブ15が配置されないガイドチューブ非配置領域25とを有している。近位側吸引チューブ21は、ガイドチューブ非配置領域25では、内層27がテフロン(登録商標)等のフッ素系樹脂、外層28がポリアミドエラストマ、中間層29(補強層に相当)が金属製の編組体31からなる3層構造(図3(d)参照)となっている。
【0033】
編組体31は、近位側吸引チューブ21を補強するための補強体であり、この編組体31を用いて形成されている中間層29は編組層となっている。編組体31は、図2(b)に示すように、ステンレス製の線材がメッシュ状に編み込まれることにより形成されている。編組体31における複数の線材の間には外層28の樹脂が入り込んでおり、その入り込んだ部分において内層27と溶着されている。なお、図2(a)及び図3では便宜上、中間層29を、編組体31の線材間の隙間が埋められた状態で示している。
【0034】
一方、ガイドチューブ配置領域24では、上記各層27〜29のうち外層28が設けられておらず内層27と中間層29とからなる2層構造(図3(c)参照)となっている。この場合、近位側吸引チューブ21の中間層29の外周側に後述する外層45が設けられることで、編組体31における複数の線材の間に外層45の樹脂が入り込み、その入り込んだ部分において内層27と溶着されている。
【0035】
遠位側吸引チューブ22は、ポリアミドエラストマにより管状に形成されており、単一層構造をなしている(図3(a)参照)。すなわち、遠位側吸引チューブ22は、近位側吸引チューブ21とは異なり、編組体31を有しておらず、そのため近位側吸引チューブ21よりも剛性が低く形成されている。遠位側吸引チューブ22は、その内部に長手方向全域に亘って連続して延びる内腔22aを有している。この内腔22aは、その近位端側において近位側吸引チューブ21の内腔21aと連通しており、これら各内腔21a,22aによって吸引ルーメン17が形成されている。また、本実施形態では、これら各内腔21a,22aの径がほぼ同じとなっており、そのため吸引チューブ14の長手方向全域において吸引ルーメン17の径(ルーメン径)がほぼ一定となっている。但し、これら各内腔21a,22aの径は異なっていてもよく、つまり、内腔21aの径が内腔22aの径よりも大きくなっていても、又は小さくなっていてもよい。
【0036】
内腔22aの遠位端開口は、血栓等の異物を吸引ルーメン17に取り込むための吸引口33となっている。遠位側吸引チューブ22の遠位側端面は軸線方向に対して傾斜しており、その傾斜に沿って吸引口33が形成されている。この場合、吸引口33が軸線方向に直交する方向に沿って形成されている場合と比べ、吸引口33の開口面積を大きくすることができ、異物の吸引性能を高めることができる。
【0037】
図3(a)に示すように、遠位側吸引チューブ22において内腔22aを囲む周壁部37(ポリアミドエラストマからなる樹脂層)は、その厚みが周方向において異なるものとなっている。具体的には、周壁部37は、後述するようにガイドワイヤチューブ15が配設される部位では肉厚に形成された肉厚部37aとなっているのに対し、内腔22aを挟んで肉厚部37aとは反対側の部位では肉薄に形成された肉薄部37bとなっている。
【0038】
遠位側吸引チューブ22の近位端部は、近位側吸引チューブ21の遠位端部に対して溶着されている。遠位側吸引チューブ22の近位端側はそれ以外の部位に対して拡径された拡径部35となっており、その拡径部35の内側(内腔22a)には近位側吸引チューブ21の遠位端側が挿入されている。この挿入されている部分を以下、挿入部39という。そして、かかる挿入状態において、近位側吸引チューブ21と遠位側吸引チューブ22とが溶着により接合されている。
【0039】
ここで、拡径部35における拡径は遠位側吸引チューブ22の伸縮性に基づいたものであり、遠位側吸引チューブ22が径方向に伸張されることにより拡径部35が形成されている。また、拡径部35では、周壁部37において肉薄部37bが内腔22aの軸線に対して径方向の外側に変位している一方、肉厚部37aは内腔22aの軸線に対して径方向に変位していない。そのため、遠位側吸引チューブ22の周壁部37において拡径部35とそれ以外の部位との境界部では、肉薄部37b側において段差部38が形成されている一方、肉厚部37a側ではかかる段差部が形成されていない。
【0040】
ガイドワイヤチューブ15は、ナイロン樹脂により管状に形成されており、その内部に長手方向全域に亘って延びるガイドワイヤルーメン18を有している。ガイドワイヤチューブ15は、吸引チューブ14の軸線方向において近位側吸引チューブ21及び遠位側吸引チューブ22の双方に跨って延びるように設けられている。また、ガイドワイヤチューブ15は、その一部が吸引チューブ14(遠位側吸引チューブ22)よりも遠位側に延出した状態で設けられている。
【0041】
ガイドワイヤチューブ15は、近位側吸引チューブ21に対してはその外周側に配設され、遠位側吸引チューブ22に対してはその内部(詳しくはその外周面よりも内側)に配設されている。具体的には、ガイドワイヤチューブ15は、遠位側吸引チューブ22に対しては同チューブ22の肉厚部37aを軸線方向に貫通するようにして設けられている(図3(a)参照)。かかるガイドワイヤチューブ15の配設状態において、同チューブ15のガイドワイヤルーメン18は吸引チューブ14の吸引ルーメン17と同方向に延びており、そのためこれら各ルーメン17,18は軸線方向に対して直交する方向に並んでいる。以下においては、これら各ルーメン17,18の並び方向を第1方向Xといい、第1方向X及び軸線方向のそれぞれに直交する方向を第2方向Yという。
【0042】
ガイドワイヤチューブ15は、軸線方向に分割されてなる近位側ガイドチューブ41と遠位側ガイドチューブ42とを備える。これら各チューブ41,42はそれぞれその内側に長手方向全域に連続して延びる内腔41a,42aを有しており、これら各内腔41a,42aは互いに連通している。そして、これら各内腔41a,42aによってガイドワイヤルーメン18が形成されている。また、近位側ガイドチューブ41と遠位側ガイドチューブ42とは同じ横断面を有している。各ガイドチューブ41,42はそれぞれ互いの軸線が同一直線上に位置するように、かつ、互いの端面同士を突き合わせた状態で配置されており、その配置状態において当該端面同士が溶着により接合されている。なおここで、近位側ガイドチューブ41が第2近位管部に相当し、遠位側ガイドチューブ42が第2遠位管部に相当する。
【0043】
近位側ガイドチューブ41は、近位側吸引チューブ21に対して溶着により接合されている。近位側ガイドチューブ41は、近位側吸引チューブ21のガイドチューブ配置領域24における外周面(中間層29の外周面)に、同吸引チューブ21と同方向に延びる向きで配設されている。ここで、ガイドチューブ配置領域24の外周面が第2チューブ配置部に相当する。
【0044】
近位側ガイドチューブ41は、その軸線方向の長さ(全長)がガイドチューブ配置領域24の同方向の長さよりも短くなっており、その近位端部をガイドチューブ配置領域24の近位端部と位置合わせした状態で配置されている。この場合、近位側ガイドチューブ41に対して近位側吸引チューブ21(ガイドチューブ配置領域24)の一部が遠位側に延出しており、その延出した部分が遠位側吸引チューブ22の拡径部35に挿入される上記挿入部39となっている。
【0045】
図3(c)に示すように、ガイドチューブ配置領域24において近位側吸引チューブ21と近位側ガイドチューブ41とは外層45によって被覆されている。外層45は、ポリアミド樹脂により形成されており、近位側ガイドチューブ41及び近位側吸引チューブ21に対してそれぞれ溶着されている。これにより、近位側吸引チューブ21と近位側ガイドチューブ41とがこの外層45を介して互いに溶着されている。
【0046】
外層45は、近位側吸引チューブ21の外周面に沿って形成されており、同チューブ21を外側から囲む層をなしている。外層45は、その厚みが周方向において異なるものとなっており、具体的には、近位側ガイドチューブ41が配置される側の部位では肉厚に形成された肉厚部45aとなっており、近位側吸引チューブ21を挟んで肉厚部45aとは反対側の部位では肉薄に形成された肉薄部45bとなっている。そして、近位側ガイドチューブ41は外層45において肉厚部45aに埋設されている。
【0047】
外層45の近位端側では、周方向において近位側ガイドチューブ41が配置されている側の部位が、ガイドチューブ非配置領域25における外層28まで延びており該外層28と溶着されている。そして、上記部位には、軸線方向に貫通する開口部56が形成されている。この開口部56は近位側ガイドチューブ41(ひいてはガイドワイヤチューブ15)の近位端開口に対応する位置に形成され、この開口部56を通じてガイドワイヤをガイドワイヤチューブ15のガイドワイヤルーメン18から引き出すことが可能となっている。
【0048】
なお、近位側吸引チューブ21のガイドチューブ配置領域24における上記挿入部39は外層45により被覆されておらず、その外周側には上述したように、遠位側吸引チューブ22が配置され溶着されている。そして、遠位側吸引チューブ22の近位端部と外層45の遠位端部とが互いの端面同士を突き合わせた状態で溶着されている。
【0049】
遠位側ガイドチューブ42は、遠位側吸引チューブ22に対して溶着により接合されている。遠位側ガイドチューブ42は、図3(a)に示すように、その一部が遠位側吸引チューブ22の周壁部37における肉厚部37aに埋設されており、その埋設状態で遠位側吸引チューブ22に溶着されている。この場合、遠位側ガイドチューブ42、詳しくは同チューブ42において内腔42aを囲む周壁部47において、その一部が遠位側吸引チューブ22に埋設されず非埋設部47aとなっており、その非埋設部47aが遠位側吸引チューブ22の内腔22aに一部突出して設けられている。この非埋設部47aによって遠位側吸引チューブ22の内腔22aと遠位側ガイドチューブ42の内腔42aとが区画されている。また、かかる構成では、第1方向Xにおいて内腔22aの中心部P1(軸線位置)から遠位側ガイドチューブ42までの離間距離が、内腔22aの中心部P1から周壁部37(肉薄部37b)までの離間距離よりも小さくなっている。なお、遠位側ガイドチューブ42は、遠位側吸引チューブ22の外周面よりも内側に配置されており、同外周面からは突出していない。
【0050】
遠位側ガイドチューブ42は、その軸線方向の長さ(全長)が、遠位側吸引チューブ22の軸線方向の長さ(全長)よりも長くなっている。遠位側ガイドチューブ42は、その近位端部を遠位側吸引チューブ22の近位端部と位置合わせした状態で配置されており、その配置状態において遠位側ガイドチューブ42の一部が遠位側吸引チューブ22の遠位端部よりも遠位側に延出している。
【0051】
また、遠位側ガイドチューブ42は、その近位端側では、軸線方向において近位側吸引チューブ21と一部重複しており、その重複部位における外周面が近位側吸引チューブ21(詳しくは挿入部39)の外周面と当接している。そして、その当接状態において遠位側ガイドチューブ42と近位側吸引チューブ21とは互いに溶着されている。具体的には、図3(b)に示すように、かかる重複部位では、遠位側ガイドチューブ42と近位側吸引チューブ21とが共に遠位側吸引チューブ22の周壁部37により被覆された状態にあり、この周壁部37に対して遠位側ガイドチューブ42と近位側吸引チューブ21とがそれぞれ溶着されている。すなわち、遠位側ガイドチューブ42と近位側吸引チューブ21とは周壁部37を介して溶着されている。
【0052】
続いて、カテーテル本体11の寸法関係について説明する。カテーテル本体11の軸線方向(長手方向)において吸引チューブ14とガイドワイヤチューブ15とが並設されている領域では、カテーテル本体11の横断面(軸線方向に直交する方向の断面)寸法について、第1方向Xの幅寸法W1が、第2方向Yの幅寸法W2よりも大きくなっている。したがって、カテーテル本体11は、両チューブ14,15の並設領域においては、その横断面が第1方向Xに長い楕円形状をなしている。
【0053】
具体的には、カテーテル本体11において、ガイドワイヤチューブ15(詳しくは遠位側ガイドチューブ42)が吸引チューブ14(詳しくは遠位側吸引チューブ22)に一部埋設されている遠位部分と、遠位部分よりも近位側でありガイドワイヤチューブ15(詳しくは近位側ガイドチューブ41)が吸引チューブ14(詳しくは近位側吸引チューブ21)の外側に配置されている近位部分とで、幅寸法の寸法比W1/W2を比較すると、遠位部分における寸法比W1/W2が、近位部分における寸法比率W1/W2よりも小さくなっている。したがって、本カテーテル本体11では、近位部分よりも遠位部分の方が真円に近い楕円形状となっている。
【0054】
上述した構成のカテーテル本体11は、その遠位側において吸引ルーメン17とガイドワイヤルーメン18とが並設される部位を見ると、図3(a)と図3(c)とから明らかなように、各々異なる断面構造を有するものとなっており、図3(a)の断面を有する部位が「遠位側チューブ51」、図3(c)の断面を有する部位が「近位側チューブ52」となっている。この場合、遠位側チューブ51は、遠位側吸引チューブ22と遠位側ガイドチューブ42とを有して構成され、近位側チューブ52は、近位側吸引チューブ21と近位側ガイドチューブ41と外層45とを有して構成されている。
【0055】
ここで、遠位側チューブ51では、吸引ルーメン17とガイドワイヤルーメン18とが遠位側ガイドチューブ42の周壁部47により仕切られており、この遠位側ガイドチューブ42の周壁部47が「ルーメン隔壁部」に相当する。そして、そのルーメン隔壁部(遠位側ガイドチューブ42の周壁部47)が、吸引ルーメン17(内腔22a)の中心部P1に向けて突出して設けられている。また、近位側チューブ52では、吸引ルーメン17とガイドワイヤルーメン18とが近位側吸引チューブ21(内層27及び中間層29)と近位側ガイドチューブ41の周壁部48とにより仕切られており、これら近位側吸引チューブ21(内層27及び中間層29)と近位側ガイドチューブ41の周壁部48とが「ルーメン隔壁部」に相当する。そして、そのルーメン隔壁部(近位側吸引チューブ21と近位側ガイドチューブ41の周壁部48)が、吸引ルーメン17(内腔21a)の中心部P1に向けて突出せずに設けられている。
【0056】
かかる構成では、吸引ルーメン17に対する各ガイドチューブ41,42の位置が異なるものとなる。すなわち、遠位側ガイドチューブ42と近位側ガイドチューブ41とは同軸に配置されているため、互いの内腔41a,42aの中心部P2が第1方向Xにおいて同位置にあるのに対して、遠位側吸引チューブ22の内腔22aの中心部P1(図3(a)参照)と近位側吸引チューブ21の内腔21aの中心部P1(図3(b)〜(d)参照)とは第1方向Xにおける位置が若干相違している。詳しくは、第1方向Xにおいて内腔22aの中心部P1が内腔21aの中心部P1よりもガイドワイヤルーメン18の中心部P2側に寄っている。このように、吸引ルーメン17に対する各ガイドチューブ41,42の位置が相違していることにより、遠位側チューブ51と近位側チューブ52とでは、上記のとおり寸法比率W1/W2が異なるものとなっている。
【0057】
次に、吸引カテーテル10の製造手順について図4に基づいて説明する。なお、図4は吸引カテーテル10の製造手順を説明するための説明図である。
【0058】
まず図4(a)に示すように、遠位側吸引チューブ22と遠位側ガイドチューブ42とを熱溶着により接合することで遠位側チューブ51を製造する遠位側チューブ製造工程を行う。この工程では、まず遠位側吸引チューブ22の内腔22aに遠位側ガイドチューブ42を、その外周面を遠位側吸引チューブ22の内周面に当接させた状態で配置する。この際、遠位側ガイドチューブ42の全長は遠位側吸引チューブ22よりも長くなっており、これら両チューブ22,42の近位端部(図の右端部)の端面同士を図示のとおり一致させることで、遠位側吸引チューブ22の遠位端部から遠位側ガイドチューブ42の一部が突出するようになっている。なお、遠位側ガイドチューブ42は、遠位側吸引チューブ22の内腔22aにおいて同チューブ22の遠位端が尖っている側に配置される。
【0059】
そして、この配置状態において遠位側吸引チューブ22と遠位側ガイドチューブ42とを熱溶着により接合する。この熱溶着は、遠位側吸引チューブ22の内腔22aと遠位側ガイドチューブの内腔42aとにそれぞれ芯材としてマンドレルを挿入するとともに、各チューブ22,42の外側に熱収縮チューブを被せた状態で、同収縮チューブの外側からヒータにより熱を加えることで行う。これにより、遠位側チューブ51が製造される。なお、各内腔22a,42aに挿入されるマンドレルは各々の内腔22a,42aの径とほぼ同一の外径を有した金属製の棒材からなる。より詳しくは、内腔22aに挿入されるマンドレルについては同内腔22aに配置される遠位側ガイドチューブ42との干渉を回避すべく長手方向に沿った溝部が形成されている。
【0060】
上記の遠位側チューブ製造工程により、図3(a)に示す断面構造の遠位側チューブ51が得られることとなる。上記の溶着作業に伴い図3(a)の断面構造となることについて補足する。溶着前においては、遠位側吸引チューブ22は周方向に同一厚さの樹脂チューブであり、その内腔22a内に遠位側ガイドチューブ42とマンドレルとをセットした状態で遠位側吸引チューブ22を溶融させることにより、図3(a)に示すように、遠位側ガイドチューブ42を囲むようにして遠位側吸引チューブ22の溶融樹脂が回り込む。これにより、遠位側ガイドチューブ42の周りに肉厚部37aが形成され、遠位側ガイドチューブ42は、内腔22a側の一部を残してそれ以外が遠位側吸引チューブ22の周壁部37に埋設されることとなる。
【0061】
なお、遠位側ガイドチューブ42の溶融温度は遠位側吸引チューブ22の溶融温度よりも高くなっている。これは、熱溶着の接合強度の観点からすれば、各チューブ22,42の溶融温度は同じであるのが好ましいものの、遠位側ガイドチューブ42ではガイドワイヤの滑りを良くするために比較的硬質の材料が用いられており、それ故溶融温度が高いものとなっているからである。
【0062】
次に、図4(b)に示すように、近位側吸引チューブ21を製造する近位側吸引チューブ製造工程を行う。この工程では、まず内層27を構成する内管61の外周面に、複数の線材を螺旋状にかつ編組させて巻き付けることで編組体31を形成する。その後、編組体31の外周側を外層28を構成する外管62により被覆する。この外管62による被覆は内管61において遠位端部から近位側に向けた所定の範囲については行わないこととする。この所定の範囲は上述したガイドチューブ配置領域24に相当するものとなる。その後、内管61の外周面と外管62の内周面とを熱溶着により接合する。これにより、内層27と外層28との間に編組体31(中間層29)が介在されてなる近位側吸引チューブ21が製造される。そして、ガイドチューブ非配置領域25において近位側吸引チューブ21が図3(d)に示す断面構造となる。
【0063】
次に、図4(c)に示すように、近位側吸引チューブ21と近位側ガイドチューブ41とを熱溶着により接合することで近位側チューブ52を製造する近位側チューブ製造工程を行う。この工程では、まず近位側吸引チューブ21のガイドチューブ配置領域24の外周面に近位側ガイドチューブ41を配置する。この際、近位側ガイドチューブ41を、その近位端部をガイドチューブ配置領域24の近位端部(すなわち近位側吸引チューブ21の外層28の遠位端部)と位置合わせした状態で配置する。ここで、近位側ガイドチューブ41の全長は、ガイドチューブ配置領域24の長さ(近位側吸引チューブ21の軸線方向の長さ)よりも短くなっている。そのため、ガイドチューブ配置領域24の外側に近位側ガイドチューブ41を配置した状態では、近位側吸引チューブ21の一部が近位側ガイドチューブ41よりも遠位側に延出し、その延出した部分が上述した挿入部39となる。
【0064】
続いて、近位側吸引チューブ21と近位側ガイドチューブ41との双方に対して外側からポリアミドエラストマからなるカバーチューブ54を被せる。これにより、カバーチューブ54の内側に近位側吸引チューブ21と近位側ガイドチューブ41とが挿入された状態となる。具体的には、カバーチューブ54は、その遠位端部を近位側ガイドチューブ41の遠位端部と位置合わせされた状態で、かつ、その近位端側が近位側吸引チューブ21に若干(例えば1mm程度)被さる状態で、各チューブ21,41に対して被せられる。
【0065】
その後、近位側吸引チューブ21と近位側ガイドチューブ41とを熱溶着により接合する。この熱溶着は、近位側吸引チューブ21の内腔21aと近位側ガイドチューブの内腔41aとにそれぞれマンドレルを挿入するとともに、各チューブ21,41に被せられたカバーチューブ54の外側にシリコン製の熱収縮チューブをさらに被せた状態で、同収縮チューブの外側からヒータにより熱を加えることで行う。これにより、カバーチューブ54が溶け出して各チューブ21,41が溶着され、近位側チューブ52が製造される。なお、この溶着に伴い、カバーチューブ54は上記外層45となる。
【0066】
上記の近位側チューブ製造工程により、図3(c)に示す断面構造の近位側チューブ52が得られることとなる。上記の溶着作業に伴い図3(c)の断面構造となることについて補足する。溶着前においては、カバーチューブ54は周方向に同一厚さの樹脂チューブであり、その内腔内に近位側吸引チューブ21と近位側ガイドチューブ41とマンドレルとをセットした状態でカバーチューブ54を溶融させることにより、図3(c)に示すように、近位側ガイドチューブ41を囲むようにしてカバーチューブ54の溶融樹脂が回り込む。これにより、溶着後において、近位側ガイドチューブ41の周りに肉厚部45aが形成され、近位側ガイドチューブ41は、近位側吸引チューブ21(内層27及び中間層29)の外側において全てが外層45(図3(c)では近位側吸引チューブ21の周壁部)に埋設されることとなる。
【0067】
なお、近位側ガイドチューブ41の溶融温度はカバーチューブ54の溶融温度よりも高くなっている。これは、熱溶着の接合強度の観点からすれば、各チューブ41,54の溶融温度は同じであるのが好ましいものの、近位側ガイドチューブ41ではガイドワイヤの滑りを良くするために比較的硬質の材料が用いられており、それ故溶融温度が高いものとなっているからである。
【0068】
次に、図4(d)に示すように、遠位側チューブ51と近位側チューブ52とを接合するチューブ接合工程を行う。この工程では、まず、近位側チューブ52における近位側吸引チューブ21の挿入部39を遠位側チューブ51における遠位側吸引チューブ22の近位端部に挿入する。この挿入に際しては、まず遠位側吸引チューブ22の近位端側を治具等を用いて拡径し、その拡径部分(つまり拡径部35)の内側に近位側吸引チューブ21の挿入部39を挿入する。そして、この挿入は、近位側チューブ52の近位側ガイドチューブ41と遠位側チューブ51の遠位側ガイドチューブ42とが同軸となるように、かつ、互いの端面同士が突き合わせられた状態となるように行う。
【0069】
その後、遠位側チューブ51と近位側チューブ52とを熱溶着により接合する。この熱溶着は、近位側吸引チューブ21の内腔21aと遠位側吸引チューブ22の内腔22aとに跨るようにマンドレルを挿入するとともに近位側ガイドチューブ41の内腔41aと遠位側ガイドチューブ42の内腔42aとに跨るようにマンドレルを挿入し、かつ、遠位側チューブ51と近位側チューブ52との重複部分を少なくとも含む所定部分に対して外側から熱収縮チューブを被せた状態で、同収縮チューブの外側からヒータにより熱を加えることで行う。これにより、近位側吸引チューブ21の遠位端側(挿入部39)と遠位側吸引チューブ22の近位端側(拡径部35)とが熱溶着されるとともに、遠位側吸引チューブ22の近位側端面と外層45の遠位側端面とが熱溶着され、吸引チューブ14が形成される。また、近位側ガイドチューブ41と遠位側ガイドチューブ42とが熱溶着され、ガイドワイヤチューブ15が形成される。
【0070】
上記のチューブ接合工程により、遠位側チューブ51と近位側チューブ52との接合部分、詳しくは、遠位側チューブ51の遠位側吸引チューブ22が近位側チューブ52の近位側吸引チューブ21の外周側に被せられてそれら両者が重なり合う部分において、図3(b)に示す断面構造となる。このとき、その重なり合う部分では、遠位側チューブ51の遠位側ガイドチューブ42と近位側チューブ52の中間層29(編組体31)とが外周同士で接触し、その状態でそれら遠位側ガイドチューブ42と中間層29(編組体31)とが遠位側吸引チューブ22の周壁部37により一体化されている。
【0071】
その後、後工程として、カテーテル本体11にハブ12を連結するハブ連結工程等を行うことで、一連の製造工程が終了する。
【0072】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0073】
ガイドワイヤチューブ15を、近位側ガイドチューブ41とそれよりも遠位側の遠位側ガイドチューブ42とを溶着することにより形成し、それら各チューブ41,42のうち近位側ガイドチューブ41を近位側吸引チューブ21に対して溶着し、遠位側ガイドチューブ42を遠位側吸引チューブ22に対して溶着した。この場合、吸引カテーテル10の製造に際し、まず近位側ガイドチューブ41と近位側吸引チューブ21とを溶着することにより近位側チューブ52が製造され、遠位側ガイドチューブ42と遠位側吸引チューブ22とを溶着することにより遠位側チューブ51が製造される。その後、近位側吸引チューブ21と遠位側吸引チューブ22とを溶着するとともに、近位側ガイドチューブ41と遠位側ガイドチューブ42とを溶着することにより、近位側チューブ52と遠位側チューブ51とが接合される。これによれば、近位側ガイドチューブ41と近位側吸引チューブ21との溶着、及び遠位側ガイドチューブ42と遠位側吸引チューブ22との溶着をそれぞれ各々の溶着に適した溶着条件で実施できるため、吸引チューブ14とガイドワイヤチューブ15とを好適に溶着できる。
【0074】
また、ガイドワイヤチューブ15では、ガイドワイヤルーメン18にガイドワイヤが挿入されて使用される際に、同チューブ15に軸線方向に直交する方向への負荷が掛かり同チューブ15の一部が吸引チューブ14から剥離する等の問題が生じることが懸念される。そのため、この点を鑑みても、上記の効果は大きいといえる。
【0075】
吸引チューブ14において、近位側吸引チューブ21の内腔21aを囲む周壁部(内層27、外層28、中間層29)に編組体31を用いて形成される中間層29(編組層)を設け、遠位側吸引チューブ22の内腔22aを囲む周壁部37に編組層を設けない構成とした。かかる構成においては、近位側吸引チューブ21では周壁部に編組体31が存在している分、遠位側吸引チューブ22と比べて、溶着の際に必要となる樹脂量が不足することが考えられる。そのため、ガイドワイヤチューブ15を近位側吸引チューブ21に溶着する場合と、遠位側吸引チューブ22に溶着する場合とで、それぞれの溶着に適した溶着条件が異なると考えられる。この点、上記の構成によれば、編組体31を有する近位側吸引チューブ21と近位側ガイドチューブ41との溶着、編組体31を有しない遠位側吸引チューブ22と遠位側ガイドチューブ42との溶着をそれぞれ各々の溶着に適した条件で実施できるため、かかる構成の吸引チューブ14とガイドワイヤチューブ15とを好適に溶着できる。
【0076】
吸引チューブ14において、遠位側吸引チューブ22ではその内腔22aに一部突出した状態でガイドワイヤチューブ15を配置し、近位側吸引チューブ21ではその内腔21aに突出しない状態でガイドワイヤチューブ15を配置した。ここで、内腔22aに一部突出した状態でガイドワイヤチューブ15を配置する際には、同チューブ15を内腔22aに配置した状態で溶着を行う必要があるのに対し、ガイドワイヤチューブ15を内腔21aに突出しない状態で配置する際には、同チューブ15を内腔21aの外に配置した状態で溶着を行う必要がある。そのため、かかる構成では、ガイドワイヤチューブ15を近位側吸引チューブ21と遠位側吸引チューブ22とに跨って溶着することは困難と考えられる。この点、上記の構成によれば、まず遠位側ガイドチューブ42を遠位側吸引チューブ22の内腔22aに配置した状態でそれら各チューブ22,42の溶着を行い、近位側ガイドチューブ41を近位側吸引チューブ21の内腔21aの外に配置した状態でそれら各チューブ21,41の溶着を行うことができるため、かかる構成のカテーテル10を好適に製造できる。
【0077】
吸引チューブ14において、近位側吸引チューブ21(中間層29)の外周面にガイドワイヤチューブ15が当接した状態で配置される部位を設定し、当該部位において近位側ガイドチューブ41と遠位側ガイドチューブ42とを同軸にかつ、互いの端面同士を突き合わせた状態で溶着した。この場合、近位側吸引チューブ21の外周面に対して遠位側ガイドチューブ42の一部を重ね合わせて配置できる。つまり、近位側ガイドチューブ41と遠位側ガイドチューブ42とのいずれについても、近位側吸引チューブ21の外周面を、設置の基準部とすることができる。そのため、近位側吸引チューブ21の外周面において近位側ガイドチューブ41と遠位側ガイドチューブ42とを同軸で配置する作業について容易化を図ることができる。
【0078】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0079】
(1)カテーテル本体11の構成として、ガイドワイヤチューブ15が並設される部位において吸引チューブ14が、軸線方向に並ぶ3つのチューブ、具体的にはガイドワイヤチューブ15の並設領域で最も近位側となる近位側吸引チューブ、その遠位側に連続して設けられる中間吸引チューブ、その遠位側に連続して設けられる遠位側吸引チューブの3つのチューブが溶着されてなる構成が考えられる。かかる構成のカテーテル本体に本発明を適用してもよい。この場合、ガイドワイヤチューブ15を、軸線方向に3分割した各分割チューブを溶着することにより構成する。そして、各分割チューブをそれぞれ近位側吸引チューブ、中間吸引チューブ及び遠位側吸引チューブに溶着する。かかる構成によれば、カテーテル本体11の製造に際し、近位側吸引チューブと近位側分割チューブとの溶着、中間吸引チューブと中間分割チューブとの溶着、及び遠位側吸引チューブと遠位側分割チューブとの溶着のそれぞれを個別に行える。したがって、例えば近位側吸引チューブと遠位側吸引チューブとにそれぞれ編組体31(編組層)が設けられ、中間吸引チューブに編組体31が設けられていない構成であっても、吸引チューブ14とガイドワイヤチューブ15とを好適に溶着できる。
【0080】
(2)カテーテル本体11の構成として、上記実施形態の構成とは逆に、遠位側吸引チューブ22ではガイドワイヤチューブ15が内腔22aに突出しない状態で配置され、近位側吸引チューブ21ではガイドワイヤチューブ15が内腔21aに突出する状態で配置される構成が考えられる。そこで、かかる構成のカテーテル本体11に本発明を適用してもよい。この場合にも、吸引ルーメン17に対するガイドワイヤチューブ15の配置態様が異なるカテーテル本体11の遠位部分(遠位側チューブ51)と近位部分(近位側チューブ52)とを個別に製造できるため、カテーテル本体11の製造を好適に行える。
【0081】
また、遠位側吸引チューブ22及び近位側吸引チューブ21の双方において、ガイドワイヤチューブ15が内腔21a,22aに突出しない状態で配置されるカテーテル本体や、遠位側吸引チューブ22及び近位側吸引チューブ21の双方において、ガイドワイヤチューブ15が内腔21a,22aに少なくとも一部突出した状態で配置されるカテーテル本体に対して本発明を適用してもよい。
【0082】
(3)上記実施形態では、遠位側吸引チューブ22に遠位側ガイドチューブ42の周壁部47の一部を埋設させたが、周壁部47において遠位側吸引チューブ22に埋設される部分と埋設されない部分(非埋設部47a)との比率は任意としてよい。例えば、周壁部47において周方向の半分以上を非埋設部47aとしてもよい。
【0083】
(4)上記実施形態では、遠位側吸引チューブ22の近位端部(拡径部35)に近位側吸引チューブ21の遠位端部(挿入部39)を挿入した状態でそれら両チューブ21,22を溶着したが、これを変更して、近位側吸引チューブ21と遠位側吸引チューブ22とを互いの端面同士を突き合わせた状態で溶着してもよい。また、上記実施形態では、近位側ガイドチューブ41と遠位側ガイドチューブ42とを互いの端面同士を突き合わせた状態で溶着したが、これを変更し、いずれか一方のガイドチューブ41(又は42)の端部を他方のガイドチューブ42(又は41)に挿入した状態で溶着してもよい。
【0084】
(5)例えば、吸引チューブ14において近位側吸引チューブ21と遠位側吸引チューブ22との双方が編組体31を有しない構成が考えられる。かかる構成においても、近位側吸引チューブ21と遠位側吸引チューブ22とで、周壁部の厚みが異なっていたり、又は、チューブを形成する材料の溶融温度が異なっていたりする場合には、ガイドワイヤチューブ15について近位側吸引チューブ21に対する溶着条件と遠位側吸引チューブ22に対する溶着条件とが相違することが考えられる。そこで、そのような場合に本発明を適用してもよい。
【0085】
(6)上記実施形態では、吸引ルーメン17を有する吸引チューブ14と、ガイドワイヤルーメン18を有するガイドワイヤチューブ15とが溶着されてなる吸引カテーテルに対して本発明を適用したが、各々が一のルーメンを有する2つのチューブが溶着されてなる他のカテーテルに対して本発明を適用してもよい。例えば、従来より、血液透析等の体外循環治療(ブラッドアクセス)の際に用いられるブラッドアクセス用のダブルルーメンカテーテルが知られている。この種のカテーテルとしては、血液を体外に排出するための脱血ルーメンを有するチューブと、浄化した血液を体内に戻すための送血ルーメンを有するチューブとが互いに溶着されてなるものが知られている。この場合、例えば各チューブのうち一方のチューブについて遠位側では柔軟性を確保しつつ近位側では剛性を確保したい場合には、遠位側と近位側とでチューブの肉厚を異ならせたり、近位側では編組層を設ける一方遠位側では編組層を設けないようにしたりすることが考えられる。そこで、そのような構成のカテーテルに対して本発明を適用してもよい。
【0086】
(7)近位側吸引チューブ21において、吸引ルーメン17を囲む周壁部に設けられる補強体として、編組体以外を用いることも可能である。例えば、近位側吸引チューブ21の周壁部に、遠位側吸引チューブ22の樹脂材料(ポリアミドエラストマ)よりも硬い(剛性の高い)樹脂材料を用いてなる高剛性樹脂体を設ける構成であってもよい。この場合、近位側吸引チューブ21の周壁部に高剛性樹脂体を埋設することで補強層を形成する。
【0087】
(8)近位側チューブ52において近位側吸引チューブ21と近位側ガイドチューブ41とが並設されている領域における横断面形状、具体的には外層45の横断面形状は必ずしも図3(c)に示すような楕円形状に限ることはない。例えば図5(a)に示す外層45は、(吸引ルーメン17とガイドワイヤルーメン18とが並ぶ)第1方向Xにおいて近位側ガイドチューブ41側の部位が、近位側吸引チューブ21側から近位側ガイドチューブ41側に向かって先細りされた形状となっている。また、図5(b)に示す外層45は、その外周面が、外周方向において近位側吸引チューブ21(中間層29)の外周面と近位側ガイドチューブ41の外周面とに沿って形成されている。この場合、外層45の肉厚が外周方向において比較的均一なものとされている。要するに、外層45により近位側吸引チューブ21と近位側ガイドチューブ41とが被覆されていれば、外層45の断面形状は任意としてよい。
【0088】
(9)上記実施形態では、近位側吸引チューブ21と遠位側吸引チューブ22との接合、近位側ガイドチューブ41と遠位側ガイドチューブ42との接合、近位側吸引チューブ21と近位側ガイドチューブ41との接合、及び遠位側吸引チューブ22と遠位側ガイドチューブ42との接合のそれぞれを溶着により行ったが、これらの接合を接着剤や溶剤を用いた接着により行ってもよい。例えば、吸引チューブ14に対してガイドワイヤチューブ15を溶剤を用いた接着により接合する際には、近位側吸引チューブ21と遠位側吸引チューブ22とで溶剤により溶解される樹脂量が相違するため、近位側吸引チューブ21に対するガイドワイヤチューブ15の接着条件と、遠位側吸引チューブ22に対するガイドワイヤチューブ15の接着条件とが異なることが考えられる。この点、これらの接着を個別に行う本発明を適用すれば、各接着を各々の接着に適した条件(接着条件)で行えるため、吸引チューブ14とガイドワイヤチューブ15とを好適に接着できる。
【符号の説明】
【0089】
10…吸引カテーテル、11…カテーテル本体、14…吸引チューブ、15…ガイドワイヤチューブ、17…吸引ルーメン、18…ガイドワイヤルーメン、21…近位側吸引チューブ、22…遠位側吸引チューブ、41…近位側ガイドチューブ、42…遠位側ガイドチューブ、51…遠位側チューブ、52…近位側チューブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ルーメンを有する第1チューブと、
前記第1ルーメンと同方向に延びる第2ルーメンを有する第2チューブと、を備え、
前記第1チューブは、第1近位管部とそれよりも遠位側に設けられた第1遠位管部とが互いに接合されてなり、前記第1近位管部の内腔と前記第1遠位管部の内腔とが連通されて前記第1ルーメンが形成されており、
前記第2チューブが、前記第1近位管部と前記第1遠位管部とに跨って延びるように設けられたカテーテルであって、
前記第2チューブは、第2近位管部とそれよりも遠位側に設けられた第2遠位管部とが互いに接合されてなるものであり、前記第2近位管部が前記第1近位管部に対して接合され、前記第2遠位管部が前記第1遠位管部に対して接合されていることを特徴とするカテーテル。
【請求項2】
前記第1チューブにおいて、前記第1近位管部及び前記第1遠位管部のうちいずれか一方には、その内腔を囲む周壁部に補強体を用いて形成される補強層が設けられており、他方には、その内腔を囲む周壁部に前記補強層が設けられていないことを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記第1チューブにおいて、前記第1近位管部及び前記第1遠位管部のうちいずれか一方ではその内腔に少なくとも一部が突出した状態で前記第2チューブが配置され、他方ではその内腔に突出しない状態で前記第2チューブが配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記第1チューブにおいて、前記第1近位管部及び前記第1遠位管部のうち、内腔に突出しない状態で前記第2チューブが配置されている管部には、その外周部に、前記第1チューブの軸線方向に延び前記第2チューブが当接した状態で配置される第2チューブ配置部が設定されており、
前記第2チューブ配置部には、前記第2近位管部と前記第2遠位管部とが同軸にかつ、互いの端面同士を突き合わせた状態で接合されていることを特徴とする請求項3に記載のカテーテル。
【請求項5】
異物を吸引除去するために用いられる吸引用のカテーテルであって、
前記第1チューブは、吸引ルーメンを前記第1ルーメンとして有する吸引チューブであり、
前記第2チューブは、ガイドワイヤが挿通されるガイドワイヤルーメンを前記第2ルーメンとして有するガイドワイヤチューブであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項6】
第1ルーメンを有する第1チューブと、
第2ルーメンを有する第2チューブと、を備え、
前記第1チューブは、第1近位管部とそれよりも遠位側に設けられた第1遠位管部とが互いに接合されてなり、
前記第2チューブは、第2近位管部とそれよりも遠位側に設けられた第2遠位管部とが互いに接合されてなるとともに、前記第1近位管部と前記第1遠位管部とに跨って延びるように設けられているカテーテルに適用され、
前記第1近位管部と前記第2近位管部とを接合することにより近位側チューブを製造する近位側チューブ製造工程と、
前記第1遠位管部と前記第2遠位管部とを接合することにより遠位側チューブを製造する遠位側チューブ製造工程と、
前記第1近位管部と前記第1遠位管部とを接合するとともに前記第2近位管部と前記第2遠位管部とを接合することにより、前記近位側チューブと前記遠位側チューブとを接合するチューブ接合工程と、
を備えることを特徴とするカテーテルの製造方法。
【請求項7】
前記遠位側チューブ製造工程では、前記第1ルーメンの一部を構成する前記第1遠位管部の内腔に前記第2遠位管部を配置した状態で、前記第1遠位管部と前記第2遠位管部とを接合することにより、前記第2遠位管部の少なくとも一部が前記第1遠位管部の内腔に突出するように前記遠位側チューブを製造し、
前記近位側チューブ製造工程では、前記第1ルーメンの一部を構成する前記第1近位管部の外側に前記第2近位管部を配置した状態で、前記第1近位管部と前記第2近位管部とを接合することにより、前記第2近位管部が前記第1近位管部の内腔に突出しないように前記近位側チューブを製造することを特徴とする請求項6に記載のカテーテルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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