説明

カテーテル用切断ワイヤ組立体

【課題】狭窄部を治療する切断ワイヤの選択的使用を可能にする器械を提供する。
【解決手段】体内管腔中の病変部を治療して体内管腔中の通路を拡大する器械(10)は、近位部分及び遠位部分(23)を備えた切断部材(20)と、近位部分及び遠位部分(32)を備えた追跡部材(30)とを有する。切断部材と追跡部材は、これらの遠位部分のところで互いに連結されていて、一ユニットとして体内管腔中に挿入可能であり、切断部材は、少なくとも遠位領域のところでの切断部材と追跡部材との間の隙間を広げるよう追跡部材の長手方向軸線を横切る方向に運動可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、血管の狭窄病変部を治療するシステム及び方法に関し、特に、血管中の狭窄病変部を開くためにカテーテルと併用される切断ワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
血管の狭窄病変部を治療するために幾つかの方法が利用されている。狭窄病変部があると、血管の直径が減少し(血管が狭窄し又はくびれ)、したがって、このくびれを広げるための試みがなされている。一方法は、血管壁を切断して開き、プラーク又は他の狭窄構造物を収容した部分を除去するという侵襲性の外科手技である。この手技は、外傷性であって複雑であり、しかも、その結果として、患者にとって長い回復期間が必要になる。また、この手技により、血管壁の弱体化が生じる。というのは、壁の一部分が除去されるからである。血管壁の弱体化の結果として、最終的には、動脈の拡張(拡大)である動脈瘤が生じ、この動脈瘤は、血管の機能に悪影響を及ぼし、もし外科的に治療されなければ、患者の生命を危険にさらす場合がある。
【0003】
患者に対する外傷を減少させ、患者の回復期間を短縮し、そして病院費用を減少させるため、狭窄病変部を治療する低侵襲手技が開発された。バルーン血管形成術は、かかる方法の1つである。血管形成術では、バルーンを血管の狭窄(狭くなった)部分内に配置し、これをインフレートさせてプラークを血管壁に押し付け、それにより血管の管腔を広げて血液の流れを改善する。即ち、バルーンをインフレートさせて病変部を半径方向外方に押して通路を広くする。狭窄病変部の中には、従来型圧力バルーンに対して耐性を持つものがある。その結果、耐性のある狭窄病変部を治療するために高圧バルーンが開発された。しかしながら、かかる高圧バルーンは、大きな力を及ぼし、血管の外傷及び破裂を生じさせる危険性を増大させる。さらに、病変部の中には、これら高圧バルーンに対しても耐性を持つものがある。
【0004】
加うるに、これら血管形成術用バルーンカテーテルを用いても、再狭窄がかかる治療後に生じる場合が多いことが判明しているので、短期間の効果しか得られない場合が多い。
【0005】
再狭窄及び外傷の恐れを減少させてかかる欠点に取り組むと共に高い耐性を持つ病変部のある血管を治療しようとして、切断バルーンカテーテルが開発された。かかる器械の1つは、例えば、米国特許第5,196,024号明細書に開示されており、この米国特許明細書は、バルーン及び長手方向切れ刃を備えたカテーテルを記載している。しかしながらこの器械の多くの欠点のうちの1つは、これがバルーンカテーテルの改造を必要とし、それによりカテーテルのコストが大幅に増大するということにある。別の欠点は、手技カテーテルを用いるのではなく、切断バルーンを備えた別のカテーテルが必要とされる場合があるということにある。その結果、外科医は、どのような形式のカテーテルを利用すべきかを手技前に決定する必要がある。ただし、これは、病変部に接近して疾患の程度を把握するまでは病変部の性状(例えば、耐性)を判定する情報が得られない場合があるので、常に実行できるとは限らない。かくして、例えば、外科医は、血管形成術用カテーテルを挿入し、バルーンをインフレートさせ、そして血管通路を広げるのが不十分であることが分かる場合がある。次に、外科医は、カテーテルを抜去して切断バルーンカテーテルを挿入し、そしてガイドワイヤ上でこれに沿って血管系中に切断バルーンカテーテルを通すという時間のかかる作業を行なう必要がある。カテーテルは、遠隔部位から、例えば大腿動脈を通って挿入されるので、これらカテーテルの交換には時間がかかり、しかも患者に対する外傷が大きくなる。加うるに、それにより、手技の費用が増加する。というのは、2本のカテーテルを必要とする場合があるからである。各病変部の互いに異なるサイズ及び状態を正しく治療するためには、サイズを多数取り揃えた切断バルーンの多量の在庫が必要である。
【0006】
逆に、或る特定の手技では、切断バルーンを軟質病変部で利用すると、血管への外傷又は損傷の恐れが高くなり、したがって、切断バルーンカテーテルを用いることが望ましくない場合がある。かくして、血管形成術用カテーテルの交換が必要になる。
【0007】
かかるカテーテルの交換にあたり、ガイドワイヤの交換も又必要になる。というのは、血管形成術用カテーテルに利用されている標準型の0.035インチ(0.889mm)ガイドワイヤは、0.018インチ(0.4572mm)切断バルーンカテーテルにとっては大きすぎる場合があるからである。ガイドワイヤの交換は、手技を複雑にし、患者への危険性を増大させ、しかも手技時間を長くし、それにより患者にとっての費用が増大する。
【0008】
米国特許第7,131,981号の発明は、血管形成術用カテーテルの通常の0.035インチガイドワイヤルーメン中に挿入可能な挿入管を備えた転換型器械を提供することにより上述の問題に取り組もうとしている。この器械は、小径ガイドワイヤルーメンを備えた血管形成術用カテーテルには役立たない。挿入管は、2つのジャケットセグメントと、チャネル及び4つのガイドチャネルを備えたガイドインサート器械を有している。この装置は複雑なので、4つのチャネル中の切断要素は、小径器械内に維持されるのに十分薄い又は細いものである必要がある。しかしながら、かかる薄い(小径の)切断要素は、柔軟性が高すぎるので効果があると言えるほどの剛性を備えていない。加うるに、切断要素は、一端が取り付けられ、その反対側の自由端部は、使用中、血管を潜在的に損傷させて穿孔する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,196,024号明細書
【特許文献2】米国特許第7,131,981号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、狭窄部を治療するための切断ワイヤの選択的使用を可能にする改良型のより単純化された器械及び方法に関する要望が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、先行技術の欠点及び不具合を解決する。
【0012】
一観点において、本発明は、体内管腔中の病変部を治療する方法であって、少なくとも1つの切断部材及び追跡部材をカテーテルの第1のルーメン中に挿入するステップと、カテーテルを切断部材及び追跡部材から引き抜くステップと、切断部材をカテーテルの外部に残した状態で、追跡部材上でこれに沿ってカテーテルを挿入するステップと、カテーテルの一部分を拡張して切断部材を動かし、これを病変部に切断可能に接触させて体内管腔中の通路を拡大するステップとを有する方法を提供する。
【0013】
幾つかの実施形態では、追跡部材上でこれに沿ってカテーテルを挿入するステップは、切断部材及び追跡部材が当初挿入されたカテーテルを再び挿入するステップを含む。他の実施形態では、別のカテーテルが利用される。
【0014】
カテーテルは、好ましくは、拡張可能なバルーンを有し、カテーテルの一部分を拡張するステップは、好ましくは、バルーンの一部分を拡張して切断部材をカテーテルに対して半径方向に動かすステップを含む。好ましくは、カテーテルの一部分を拡張するステップの実施により、切断部材と追跡部材との間の隙間が広がる。
【0015】
別の観点では、本発明は、体内管腔中の通路を拡大して体内管腔中の病変部を治療する方法であって、切断部材及び追跡部材を血管中に挿入するステップと、追跡部材上でこれに沿ってカテーテルを挿入し、追跡部材がカテーテルの第1のルーメンを通って延びるが、切断部材は第1のルーメン中に延びず、例えば、外部に位置したままであるようにするステップと、切断部材を追跡部材から遠ざけて切断部材を病変部に切断可能に接触させ、それにより体内管腔中の通路を拡張するステップとを有する方法を提供する。
【0016】
好ましくは、切断部材及び追跡部材を挿入するステップは、切断部材及び追跡部材をカテーテルのルーメン中に挿入するステップを含む。幾つかの実施形態では、切断部材及び追跡部材が挿入されたカテーテルは、次に追跡部材上でこれに沿って挿入されるカテーテルと同一である。他の実施形態では、別のカテーテルが利用される。幾つかの実施形態では、切断部材を動かすステップは、カテーテルのバルーンを拡張するステップを含む。
【0017】
別の観点では、本発明は、体内管腔中の通路を拡大して体内管腔中の病変部を治療する器械であって、近位部分及び遠位部分を備えた少なくとも1つの切断部材と、近位部分及び遠位部分を備えた追跡部材とを有し、切断部材と追跡部材は、遠位部分のところで互いに連結されていて、一ユニットとして体内管腔中に挿入可能であり、切断部材は、少なくとも遠位領域のところでの切断部材と追跡部材との間の隙間を広げるよう追跡部材の長手方向軸線を横切る方向に運動できるよう構成されていることを特徴とする器械を提供する。
【0018】
幾つかの実施形態では、切断部材は、追跡部材に向いた第2の表面と反対側の第1の表面に設けられた切断面を有する。幾つかの実施形態では、切断部材は、追跡部材に向いた表面と反対側の縁部に設けられた平坦な縁部を備える切断面を有する。以下の実施形態では、第2の表面は、凸面を有する。追跡部材は、複数個のマーカーバンドを有するのが良い。
【0019】
別の観点では、本発明は、体内管腔中のくびれ部を拡張して体内管腔中の病変部を治療するシステムであって、ルーメン及び拡張可能な部分を備えたカテーテルと、切断部材及び追跡部材を含む切断組立体とを有し、追跡部材が切断部材に取り付けられていることを特徴とするシステムを提供する。カテーテルの拡張可能な部分は、切断部材を追跡部材の長手方向軸線を横切る方向に動かすよう拡張可能であり、切断部材は、カテーテルの拡張可能な部分によって動かされると、体内管腔中の通路を拡大して病変部を治療するよう構成された切断面を有する。
【0020】
幾つかの実施形態では、切断部材と追跡部材は、これらの遠位領域のところで連結されていて、一ユニットとしてカテーテルのルーメン中に挿入される。好ましい実施形態では、切断部材及び追跡部材は、ワイヤである。追跡部材は、複数個のマーカーバンドを有するのが良い。切断部材は、幾つかの実施形態では、近位領域のところの断面が実質的に円形であると共に遠位領域のところの断面が実質的に三角形である。好ましい実施形態では、カテーテルの拡張可能な部分は、インフレート可能(inflatable)なバルーンから成る。
【0021】
追跡部材は、遠位端部のところにコイルを有するのが良く、切断部材及び追跡部材の取り付け領域を覆って熱収縮ラップを位置決めするのが良い。
【0022】
幾つかの実施形態では、切断部材は、追跡部材に向いた縁部と反対側に位置する切れ刃を有し、カテーテルの一部分の拡張により、切れ刃が病変部内の疾患のある細くなった部分中に押し込まれる。
【0023】
幾つかの実施形態では、追跡部材の長さは、切断部材の長さを超えるのが良い。幾つかの実施形態では、切断部材は、第1の形態の第1の部分及び第2の形態の第2の部分を有し、第2の部分は、切断面を有し、第1の部分は、非外傷性である。幾つかの実施形態では、第2の部分の高さは、第1の部分の高さよりも低い。
【0024】
一観点では、本発明は、体内管腔中の病変部を治療する方法であって、少なくとも1つの切断部材及び追跡部材をカテーテルの第1のルーメン中に挿入するステップと、カテーテルを切断部材及び追跡部材から引き抜くステップと、切断部材をカテーテルの外部に残した状態で、追跡部材上でこれに沿ってカテーテルを挿入するステップと、カテーテルの一部分を拡張して切断部材を動かし、これを病変部に切断可能に接触させて体内管腔中の通路を拡大するステップとを有する方法を提供する。
【0025】
幾つかの実施形態では、追跡部材上でこれに沿ってカテーテルを挿入するステップは、切断部材及び追跡部材が当初挿入されたカテーテルを再び挿入するステップを含む。他の実施形態では、別のカテーテルが利用される。
【0026】
カテーテルは、好ましくは、拡張可能なバルーンを有し、カテーテルの一部分を拡張するステップは、好ましくは、バルーンの一部分を拡張して切断部材をカテーテルに対して半径方向に動かすステップを含む。好ましくは、カテーテルの一部分を拡張するステップの実施により、切断部材と追跡部材との間の隙間が広がる。
【0027】
別の観点では、本発明は、体内管腔中の通路を拡大して体内管腔中の病変部を治療する方法であって、切断部材及び追跡部材を血管中に挿入するステップと、追跡部材上でこれに沿ってカテーテルを挿入し、追跡部材がカテーテルの第1のルーメンを通って延びるが、切断部材は第1のルーメン中に延びず、例えば、外部に位置したままであるようにするステップと、切断部材を追跡部材から遠ざけて切断部材を病変部に切断可能に接触させ、それにより体内管腔中の通路を拡張するステップとを有する方法を提供する。
【0028】
好ましくは、切断部材及び追跡部材を挿入するステップは、切断部材及び追跡部材をカテーテルのルーメン中に挿入するステップを含む。
【0029】
幾つかの実施形態では、切断部材及び追跡部材が挿入されたカテーテルは、次に追跡部材上でこれに沿って挿入されるカテーテルと同一である。他の実施形態では、別のカテーテルが利用される。幾つかの実施形態では、切断部材を動かすステップは、カテーテルのバルーンを拡張するステップを含む。
【0030】
別の観点では、本発明は、体内管腔中の通路を拡大して体内管腔中の病変部を治療する器械であって、近位部分及び遠位部分を備えた少なくとも1つの切断部材と、近位部分及び遠位部分を備えた追跡部材とを有し、切断部材と追跡部材は、遠位部分のところで互いに連結されていて、一ユニットとして体内管腔中に挿入可能であり、切断部材は、少なくとも遠位領域のところでの切断部材と追跡部材との間の隙間を広げるよう追跡部材の長手方向軸線を横切る方向に運動できるよう構成されていることを特徴とする器械を提供する。
【0031】
幾つかの実施形態では、切断部材は、追跡部材に向いた第2の表面と反対側の第1の表面に設けられた切断面を有する。幾つかの実施形態では、切断部材は、追跡部材に向いた表面と反対側の縁部に設けられた平坦な縁部を備える切断面を有する。切断面と反対側の表面は、凸面を有するのが良い。幾つかの実施形態では、追跡部材と切断部材は、遠位部分のところのこれら部材を撚り合わせることにより連結される。
【0032】
幾つかの実施形態では、追跡部材は、遠位端部のところにコイルを有する。切断部材及び追跡部材の連結領域を覆って収縮ラップを位置決めするのが良い。追跡部材は、複数個のマーカーバンドを有するのが良い。
【0033】
幾つかの実施形態では、切断部材は、近位領域のところの断面が実質的に円形であると共に遠位領域のところの断面が実質的に三角形である。幾つかの実施形態では、切断面は、切断部材の遠位領域にのみに形成される。
【0034】
別の観点では、本発明は、体内管腔中のくびれ部を拡張して体内管腔中の病変部を治療するシステムであって、ルーメン及び拡張可能な部分を備えたカテーテルと、複数個の切断部材及び追跡部材を含む切断組立体とを有し、追跡部材が切断部材のうちの少なくとも1つに取り付けられていることを特徴とするシステムを提供する。カテーテルの拡張可能な部分は、切断部材を追跡部材の長手方向軸線を横切る方向に動かすよう拡張可能であり、切断部材は、カテーテルの拡張可能な部分によって動かされると、体内管腔中の通路を拡大して病変部を治療するよう構成された切断面を有する。
【0035】
好ましい実施形態では、切断部材と追跡部材は、これらの遠位領域のところで連結されていて、一ユニットとしてカテーテルのルーメン中に挿入される。幾つかの実施形態では、カテーテルの拡張可能な部分は、インフレート可能なバルーンから成る。
【0036】
追跡部材は、遠位端部のところにコイルを有するのが良い。マーカーバンドを追跡部材に設けるのが良い。切断部材と追跡部材の連結容器を覆って収縮ラップを位置決めするのが良い。
【0037】
幾つかの実施形態では、切断部材の各々は、追跡部材に向いた縁部と反対側に位置する切れ刃を有し、カテーテルの一部分の拡張により、切れ刃が病変部内の疾患のある細くなった部分中に押し込まれる。
【0038】
幾つかの実施形態では、追跡部材の長さは、切断部材の長さを超えるのが良い。
【0039】
幾つかの実施形態では、切断部材は、第1の形態の第1の部分及び第2の形態の第2の部分を有し、第2の部分は、切断面を有し、第1の部分は、非外傷性である。第2の部分の高さは、第1の部分の高さよりも低いのが良い。
【0040】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】従来型バルーンカテーテル及び本発明の切断ワイヤ組立体(ユニット)の第1の実施形態の斜視図であり、バルーンが拡張された状態を示す図である。
【図1A】図1の切断組立体の斜視図である。
【図1B】図1Aに類似した斜視図であり、遠位部分を覆っている収縮ラップを示す図である。
【図2A】図1の詳細部の拡大斜視図であり、一実施形態としての切断ワイヤの一部分を示す図である。
【図2B】図2Aに類似した斜視図であり、切断ワイヤの別の実施形態を示す図である。
【図2C】図2Aに類似した斜視図であり、切断ワイヤの更に別の実施形態を示す図である。
【図2D】図2Aに類似した斜視図であり、切断ワイヤの更に別の実施形態を示す図である。
【図2E】図2Aに類似した斜視図であり、切断ワイヤの更に別の実施形態を示す図である。
【図3A】切断ワイヤ組立体の別の実施形態の斜視図である。
【図3B】図3Aの切断組立体の遠位部分の拡大斜視図である。
【図4A】図3Bの4A‐4A線に沿って取った切断ワイヤの断面図である。
【図4B】図3Bの4B‐4B線に沿って取った切断ワイヤの断面図である。
【図5】図1の切断ワイヤ組立体を使用する方法ステップを示す断面図であり、従来型ガイドワイヤ上でこれに沿って挿入されている従来型バルーンカテーテルを示す図である。
【図5A】図1の切断ワイヤ組立体を用いる方法ステップを示す断面図であり、従来型ガイドワイヤの引き抜きの仕方を示す断面図である。
【図5B】図1の切断ワイヤ組立体を使用する方法ステップを示す断面図であり、バルーンカテーテルルーメン中への本発明の切断部材及び追跡部材の挿入の仕方を示す図である。
【図5C】図1の切断ワイヤ組立体を使用する方法ステップを示す断面図であり、切断部材及び追跡部材を血管管腔内に残した状態でバルーンカテーテルを引き抜く仕方を示す図である。
【図5D】図1の切断ワイヤ組立体を使用する方法ステップを示す断面図であり、追跡部材上でこれに沿って挿入されているバルーンカテーテルを示す図である。
【図5E】図1の切断ワイヤ組立体を使用する方法ステップを示す断面図であり、バルーンカテーテルのバルーンを拡張させて切断ワイヤを病変部に切断可能に接触させる仕方を示す図である。
【図6】従来型バルーンカテーテル及び本発明の切断ワイヤ組立体(ユニット)の変形実施形態の斜視図であり、バルーンが拡張された状態を示す図である。
【図6A】切断ワイヤ組立体の変形実施形態の斜視図である。
【図7】図6の詳細部の斜視図であり、一実施形態としての切断ワイヤの一部分を示す図である。
【図8】図7の8‐8線に沿って取った切断ワイヤの断面図である。
【図8A】図8に類似した図であり、本発明の切断ワイヤの変形実施形態の断面図である。
【図8B】図8に類似した図であり、本発明の切断ワイヤの変形実施形態の断面図である。
【図8C】図8に類似した図であり、本発明の切断ワイヤの変形実施形態の断面図である。
【図8D】図8に類似した図であり、本発明の切断ワイヤの変形実施形態の断面図である。
【図8E】図8に類似した図であり、本発明の切断ワイヤの変形実施形態の断面図である。
【図9】図6の9‐9線に沿って取った切断ワイヤの断面図である。
【図9A】本発明の切断ワイヤ組立体の別の実施形態の断面図である。
【図10】図6の切断ワイヤ組立体の部分分解組立て側面図である。
【図11】図6の切断ワイヤ組立体を使用する方法ステップを示す断面図であり、従来型ガイドワイヤ上でこれに沿って挿入されている従来型バルーンカテーテルを示す図である。
【図11A】図6の切断ワイヤ組立体を用いる方法ステップを示す断面図であり、従来型ガイドワイヤの引き抜きの仕方を示す断面図である。
【図11B】図6の切断ワイヤ組立体を使用する方法ステップを示す断面図であり、バルーンカテーテルルーメン中への本発明の切断部材及び追跡部材の挿入の仕方を示す図である。
【図11C】図6の切断ワイヤ組立体を使用する方法ステップを示す断面図であり、切断部材及び追跡部材を血管管腔内に残した状態でバルーンカテーテルを引き抜く仕方を示す図である。
【図11D】図6の切断ワイヤ組立体を使用する方法ステップを示す断面図であり、追跡部材上でこれに沿って挿入されているバルーンカテーテルを示す図である。
【図11E】図6の切断ワイヤ組立体を使用する方法ステップを示す断面図であり、バルーンカテーテルのバルーンを拡張させて切断ワイヤを病変部に切断可能に接触させる仕方を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
次に図面(幾つかの図全体にわたり同一の参照符号は、類似の又は同一のコンポーネントを示している)を詳細に参照すると、本発明の切断組立体は、切断部材(又は要素)及び追跡部材(又は要素)を有している。幾つかの実施形態では、単一の切断部材が設けられ、変形実施形態では、多数の切断部材が設けられる。
【0043】
本明細書において開示する本発明の種々の器械は、血管壁の内側の狭窄病変部を治療するよう働き、それにより、狭くなった血管内の通路を開き又は拡張する。狭窄は、プラークビルドアップ、内皮成長、凝血塊等の結果である場合がある。器械は又、他の体内管腔内の通路を狭くする他の病変部を治療するために使用できる。
【0044】
最初に図1〜図5の単一切断部材にかかる実施形態を参照すると、本発明の一実施形態としての組立体10は、全体が参照符号30で示され、好ましくは、ワイヤの形態をした追跡部材及び全体が参照符号20で示され、好ましくは、ワイヤの形態をした切断部材を有する。以下に詳細に説明するように、追跡ワイヤ30と切断ワイヤ20は、好ましくは、これらが一ユニットとして挿入可能であるように遠位部分のところで互いに取り付けられている。ワイヤ組立体10は、以下に説明するように、従来型カテーテル、例えば血管形成術用カテーテルに使用されるのが良い。
【0045】
図1及び図5Cを参照すると、ワイヤ20の形態をした切断部材は、遠位部分23を有し、この遠位部分は、ワイヤ30の形態をした追跡部材の遠位部分32に連結されている。図示の実施形態では、切断ワイヤ20の最も遠位側の先端部23は、追跡ワイヤ又はガイドワイヤ30に取り付けられている。一取り付け方法は、ワイヤを互いに撚り合わせることである。他の取り付け方法、例えば、溶接、結合又はワイヤに摩擦係合させるようワイヤの端部に別個の要素、例えばカラーを嵌めることも又想定される。切断ワイヤ20は、この切断ワイヤを追跡ワイヤ30から分離することができ、例えば、追跡ワイヤ30の長手方向軸線に対して横断方向に動かすことができるよう遠位連結(取り付け)領域の近位側で非取り付け状態のままである。図5Cには、ワイヤ20,30の初期位置が示され、図5D及び図5Eでは、ワイヤ20,30は、以下に詳細に説明するように更に分離されている。
【0046】
追跡部材は、可撓性が得られるようコイル先端部33を有している。熱収縮ラップ35を切断ワイヤ20及び追跡ワイヤ30の連結領域を覆って配置するのが良い。マーカーバンド34を画像化のために設けるのが良い。
【0047】
注目されるべきこととして、追跡ワイヤ及び切断ワイヤは、実質的に同一長さのものであるのが良く、両方のワイヤは、以下に説明するようにカテーテルを追跡ワイヤ上でこれに沿って再挿入することができるよう体外に延びている。変形例として、これらワイヤは、互いに異なる長さのものであっても良い。
【0048】
病変部を効果的に切断する切断ワイヤ20の種々の形態が示されている。図2Aの実施形態では、ワイヤ70は、断面が実質的に三角形であり、追跡ワイヤ30に向いた第2の表面と反対側の第1の表面にはV字形切断面72が形成されている。図2Bの実施形態では、実質的に平面状の外縁部を備えた切断ワイヤ78の第1の表面78aの切れ刃76が実質的に平面状のベース79から延びている。図2Cでは、切断面84と反対側に位置すると共に追跡ワイヤ30に向いたワイヤ80の表面82は、凸状である。この表面82は、カテーテルバルーンの外面と同形であるのが良い。切断ワイヤの2つ又は変形例として3つの側部は、図2Dのワイヤ85の側部86a,86b,86cの場合と同様凸状であるのが良い。図2Eの実施形態では、ワイヤ88は、断面が台形であり、外面には切断面89が設けられている。他の形状も又想定され、かかる形状としては、多角形が挙げられるが、これには限定されず、多角形は、実質的に、正方形、長方形、菱形、六角形、五角形、八角形、ダイヤモンド形等である。表面を鋭利にした丸形又は楕円形ワイヤ断面も又想定される。鉄びし形及び上下逆さまのT字形も又想定される。これらワイヤ形状は、本明細書において開示する種々の切断ワイヤ実施形態において利用できる。
【0049】
注目されるべきこととして、所望ならば、切断ワイヤ(部材)の一部分のみ、例えば、遠位領域が切れ刃又は切断面を有しても良く、残りの部分は、非外傷性であり且つ非切断性である。これは、例えば、図3A及び図3Bの実施形態に示されており、この場合、切断組立体50のワイヤ51は、切れ刃54を備えた遠位部分を有している(実質的に三角形断面として示されているが、上述の形状を含む他の断面形状も又想定される)。遠位部分52の近位側の部分56は、非外傷性であると共に図4Bに示されているように断面が実質的に円形であるのが良い(他の形状も又想定される)。ワイヤ51の遠位領域は、円錐形であるのが良く、そして非外傷性表面を有するのが良い。切断面領域の高さは、非外傷性部分56の高さ(例えば、直径)よりも小さいのが良いことに注目されたい。
【0050】
コイル、例えばコイル33が追跡部材(ワイヤ)55の遠位先端部のところに設けられるのが良い。幾つかのマーカーバンド58が画像化のために追跡ワイヤ55に設けられるのが良い。熱収縮ラップ、例えば、ワイヤ20,30の遠位且つ連結領域を覆う図1Bの収縮ラップ35が図3Bの切断ワイヤ51及び追跡ワイヤ55の遠位先端部及び連結領域を覆って設けられるのが良い。
【0051】
次に、本発明のワイヤ組立体10の一使用方法について説明する。この方法をワイヤ組立体10の使用方法として説明するが、理解されるべきこととして、同一の方法をワイヤ組立体50(及び他の切断ワイヤ形態について)使用できる。当初、図5に示すように従来型カテーテル100、例えば従来型血管形成術用カテーテルを従来型ガイドワイヤG上で沿って治療部位まで挿入する。ガイドワイヤGは、カテーテル60内のルーメン62を通って延びる。血管への接近は、例えば大腿動脈又は静脈を通って実施できる。カテーテル60及びガイドワイヤGの遠位端部は、患者の体外に延びている。血管形成術用カテーテル60は、従前通りカテーテルのインフレーションルーメンと流体連通状態にあるインフレート可能なバルーン64を有している。標的部位のところで、バルーン64をインフレートさせることにより、バルーン64が拡張し、病変部Bを拡張して血管Vの管腔を広げる。
【0052】
力不足により従来型バルーンでは狭窄病変部を首尾良く開くことができない場合、本発明のワイヤ組立体10(又は組立体50)を利用するのが良い。この場合、ガイドワイヤGをカテーテル60(図5A参照)のガイドワイヤルーメン62から取り出し、ワイヤ組立体10(又は50)を図5Bに示されているようにルーメン62中に挿入する。かくして、ルーメン62中への挿入によりワイヤ組立体10(又は50)の追跡ガイドワイヤ30(又は55)及び切断ワイヤ20(又は51)が標的部位まで挿入される。
【0053】
次に、カテーテル60を治療部位及び血管から取り出して体から抜去し、後には、ワイヤ組立体10が図5Cに示されているように標的部位のところに残る。次に、カテーテル60を追跡ワイヤ30の近位端部上でこれに沿って再挿入する。図5のステップで用いたのと同一のカテーテルを再挿入するのではなく、変形例として、異なるバルーンカテーテル(又は他の拡張可能な部材を備えたカテーテル)を挿入しても良いことに注目されたい。いずれの場合においても、カテーテルを追跡ワイヤ30の近位部分上でこれに沿って挿入し、追跡ワイヤ30がルーメン62を通って延びるが、切断ワイヤ20は、ルーメン62の外部に位置したままであり、かくして、図5Dに示されているようにルーメン62を通って延びることはない。このように、追跡ワイヤ30は、標的部位までのカテーテル60のガイドとなり、他方、切断ワイヤ20は、カテーテル60の外面に隣接して位置したままであり、その後、拡張により病変部に接触する。図5Dに示されているように、切断ワイヤ20と追跡ワイヤ30との間の隙間65が2本のワイヤ20,30相互間に位置決めされたカテーテル60により増大する。
【0054】
ワイヤ20を追跡ワイヤ30の長手方向軸線に対して横断方向に(且つカテーテル60の長手方向軸線を横切って)ワイヤ20を拡張し又は動かすため、バルーン64をインフレートさせ、それにより、切断ワイヤ20を半径方向に押しやって病変部Bに接触させ、その結果、切れ刃又は切断面が病変部を治療できるようにする。理解されるべきこととして、バルーンではなく、機械的拡張器又は他の構造体を用いても切断ワイヤ20を病変部に接触させることができる。所望ならば、バルーン64をデフレートさせても良く、そしてワイヤ組立体を別の位置まで容易に回転させ、次に切断ワイヤにより横方向に動かしてこれを病変部Bの別の領域に接触させる。このように、切断ワイヤ20が一方向に拡張しているときに、狭窄部の選択された部分を治療することができる。切断ワイヤ組立体50を同様な仕方で用いることができる。
【0055】
理解できるように、上述の方法は、初期ステップ(図5)並びに追跡ワイヤ30(図5D)上にのみ配置するための次の再挿入ステップについて同一のカテーテルを利用している。しかしながら、図5Dのステップにおいて追跡ワイヤ30上でこれに沿って挿入可能に別のカテーテルを用いることができるということも又想定される。
【0056】
多数の切断ワイヤを備えた変形実施形態が図6〜図11に示されている。具体的に説明すると、一実施形態の切断組立体110は、全体が参照符号140で示されると共に好ましくはワイヤの形態をした追跡部材及び全体が参照符号120,130で示されると共に好ましくはワイヤの形態をした2つの切断部材を有している。以下に詳細に説明するように、追跡ワイヤ140と切断ワイヤ120,130は、好ましくは、遠位部分のところで互いに取り付けられ、したがって、これらワイヤは、一ユニットとして挿入可能である。ワイヤ組立体110は、以下に説明するように、従来型カテーテル、例えば血管形成術用カテーテルに使用するのが良い。加うるに、2本の切断ワイヤが図6では約180°の間隔を置いて配置された状態で示されているが、別の間隔も又想定される。加うるに、3本以上の切断ワイヤ、例えば3本の切断ワイヤ、例えば図9Aのワイヤ180,181,182、4本の切断ワイヤ等を設けても良い。3本の切断ワイヤ180,181,182は、図示のように追跡ワイヤ190を包囲した状態で等間隔に配置されても良く、或いは、互いに異なる距離を置いて配置されても良い。
【0057】
図6、図10及び図11Cを参照すると、第1の切断部材は、ワイヤ120の形態をしており、この第1の切断部材は、ワイヤ140の形態をした追跡部材の遠位部分142に連結された遠位部分122を有している。図示の実施形態では、切断ワイヤ120の最も遠位側の先端部123は、追跡ガイドワイヤ140に取り付けられている。同様に、第2の切断ワイヤは、ワイヤ130の形態をしており、この第2の切断ワイヤは、追跡部材140の遠位部分142に連結された遠位部分132を有している。図示の実施形態では、切断ワイヤ130の最も遠位側の先端部133は、追跡ガイドワイヤ140に取り付けられている。ワイヤ140へのワイヤ120,130の一取り付け方法は、ワイヤを互いに撚り合わせることである。他の取り付け方法、例えば、溶接、結合又はワイヤに摩擦係合させるようワイヤの端部に別個の要素、例えばカラー、例えばカラー145を嵌めることも又想定される。切断ワイヤ120,130は、これら切断ワイヤを追跡ワイヤ140から分離することができ、例えば、追跡ワイヤ140の長手方向軸線に対して横断方向に動かすことができるよう遠位連結(取り付け)領域の近位側で非取り付け状態のままである。図11B及び図11Cには、これらワイヤの初期位置が示され、図11D及び図11Eでは、これらワイヤは、以下に詳細に説明するように分離されている。
【0058】
コイル157が例えば図6に示されているように先端部のところに設けられるのが良い。幾つかのマーカーバンド158が画像化のために追跡ワイヤ140に設けられるのが良い。図6Aの変形実施形態では、収縮ラップ153が切断組立体110′の追跡ワイヤ140′及び切断ワイヤ120′,130′の連結領域を覆って設けられるのが良い。切断組立体110′は、コイル157に類似したコイル及び収縮ラップ153に類似した収縮ラップを更に有するのが良い。
【0059】
注目されるべきこととして、追跡ワイヤ及び切断ワイヤは、実質的に同一長さのものであるのが良く、両方のワイヤは、以下に説明するようにカテーテルを追跡ワイヤ上でこれに沿って再挿入することができるよう体外に延びている。変形例として、これらワイヤは、互いに異なる長さのものであっても良い。
【0060】
図6の実施形態では、ワイヤ120,130は、移行領域、即ち領域125まで断面が実質的に円形であり、この領域125において、断面円形のワイヤは、断面が実質的に三角形のワイヤに移行し、追跡ワイヤ140(図8)に向いた第2の表面129と反対側の第1の表面上にはV字形切断面127が形成されている。凹状又は凸状の表面を1つ、2つ又は3つ全ての側部上に形成しても良い(例えば、図8Aのワイヤ170を参照されたい)。切れ刃と反対側の側部の凸面は、カテーテルバルーンの外面と同形になるのに役立つ。
【0061】
切断ワイヤ120,130の他の断面形状も又想定され、かかる形状としては、多角形が挙げられるが、これには限定されず、多角形は、実質的に、長方形、正方形、菱形、台形(これについては、例えば図8Bのワイヤ175を参照されたい)、六角形、五角形、八角形、ダイヤモンド形等である。表面を鋭利にした丸形又は楕円形ワイヤ断面も又想定される。図8Cの実施形態では、菱形のワイヤ180が示されている。この形状は、切断ワイヤを回転させる場合に切断を容易にする。図8Dは、1点が常時上方に向くよう構成された鉄びし形のワイヤ184を示している。図8Eは、上下逆さまのT字形ワイヤ188を示している。ワイヤ188のベースは、凸状であるのが良い。これらワイヤ形状は、本明細書において開示する種々の切断ワイヤ実施形態において利用することができる。
【0062】
切断ワイヤ130は、切断ワイヤ120と同一の形状を有することが想定される。しかしながら、変形実施形態では、切断ワイヤ130は、別の形状を有しても良く、かかる形状としては、上述の断面ワイヤ形状のうちの任意のものが挙げられるが、これには限定されない。
【0063】
注目されるべきこととして、所望ならば、切断ワイヤ120,130の一部分のみ、例えば、遠位領域が切れ刃又は切断面を有しても良く、残りの部分は、非外傷性であり且つ非切断性である。これは、図7に示されており、この場合、遠位側の領域の円形断面は、非外傷性である。切断部分の遠位側の領域は、非外傷性であるのが良く、例えば、実質的に円形の断面に移行して戻るのが良いことに注目されたい。ワイヤは又、図3Bの実施形態の場合と同様、円錐形の先端部を有しても良い。
【0064】
次に、本発明のワイヤ組立体110の一使用方法について説明する。ワイヤ組立体110′を同一の仕方で用いる。当初、図11に示すように従来型カテーテル100を従来型ガイドワイヤG上で沿って治療部位まで挿入する。ガイドワイヤGは、カテーテル100内のルーメン102を通って延びる。血管への接近は、例えば大腿動脈又は静脈を通って実施できる。カテーテル100及びガイドワイヤGの遠位端部は、患者の体外に延びている。血管形成術用カテーテル100は、従前通りカテーテルのインフレーションルーメンと流体連通状態にあるインフレート可能なバルーン104を有している。標的部位のところで、バルーン104をインフレートさせることにより、バルーン64が拡張し、病変部Bを拡張して血管Vの管腔を広げる。
【0065】
力不足により従来型バルーンでは狭窄病変部を首尾良く開くことができない場合、本発明のワイヤ組立体110(又は110′)を利用するのが良い。この場合、ガイドワイヤGをカテーテル100(図11B参照)のガイドワイヤルーメン102から取り出し、ワイヤ組立体110を図11Bに示されているようにルーメン102中に挿入する。かくして、ルーメン102中への挿入によりワイヤ組立体110の追跡ガイドワイヤ140及び切断ワイヤ120,130が標的部位まで挿入される。
【0066】
次に、カテーテル100を治療部位及び血管から取り出して体から抜去し、後には、ワイヤ組立体110が図11Cに示されているように標的部位のところに残る。次に、カテーテル100を追跡ワイヤ140の近位端部上でこれに沿って再挿入する。図11のステップで用いたのと同一のカテーテルを再挿入するのではなく、変形例として、異なるバルーンカテーテルを挿入しても良いことに注目されたい。いずれの場合においても、カテーテル100を追跡ワイヤ140の近位部分上でこれに沿って挿入し、追跡ワイヤ140がルーメン102を通って延びるが、切断ワイヤ120,130は、図11Dに示されているようにルーメン102の外部に位置したままである。このように、追跡ワイヤ140は、標的部位までのカテーテル100のガイドとなり、他方、切断ワイヤは、カテーテル100の外面に隣接して位置したままであり、その後、拡張により病変部に接触する。図11Dに示されているように、切断ワイヤ120,130と追跡ワイヤ140との間の隙間125が追跡ワイヤ140と2本のワイヤ120,130との間に位置決めされたカテーテル100により増大する。
【0067】
ワイヤ120,130を追跡ワイヤ140の長手方向軸線に対して横断方向に(且つカテーテル100の長手方向軸線を横切って)切断ワイヤ120,130を拡張し又は動かすため、バルーン104をインフレートさせ、それにより、切断ワイヤ120,130を病変部Bに接触させ、その結果、切れ刃又は切断面が病変部を治療できるようにする。理解されるべきこととして、バルーンではなく、機械的拡張器又は他の構造体を用いても切断ワイヤ120,130を病変部に接触させることができる。所望ならば、バルーン104をデフレートさせても良く、そしてワイヤ組立体を別の位置まで容易に回転させ、次に切断ワイヤにより横方向に動かしてこれを病変部Bの別の領域に接触させて狭窄部の選択された部分を治療する。
【0068】
理解できるように、上述の方法は、初期ステップ(図11)並びに追跡ワイヤ140(図11D)上にのみ配置するための次の再挿入ステップについて同一のカテーテルを利用している。しかしながら、追跡ワイヤ140上でこれに沿って挿入可能に別のカテーテルを用いることができるということも又想定される。
【0069】
また、図示のように、単一バルーンを利用して両方のワイヤを実質的に同時に拡張させる。また、別個のバルーン又は単一バルーンの別個の拡張を用いてワイヤ120,130を独立して/別々に動かすことができるということが想定される。
【0070】
理解できるように、本明細書において開示したワイヤ組立体は、比較的小径のガイドワイヤルーメンを備えたバルーンカテーテルに対応することができる。
【0071】
また、接近を大腿動脈を通るものとして説明したが、標的部位への他の手法も又想定される。加うるに、血管管腔内の病変部を治療するために治療するために用いるものとして説明したが、本明細書において開示した器械は、血管又は他の体内管腔内の通路を狭窄する他の構造物を取り除くためにも使用可能である。
【0072】
切断コンポーネント及び追跡コンポーネントがワイヤとして示されているが、切断部材及び追跡部材について他の構造体、例えば硬質プラスチック管又は金属ハイポチューブの使用も又想定される。金属ハイポチューブは、切断面を備えるのが良く又は変形例として切断部材を有しても良く、例えば、切断チューブがこの金属ハイポチューブに取り付けられる。
【0073】
説明した本発明の切断ワイヤ組立体は、例えば静脈、例えば大腿静脈を含む種々の血管、例えば透析グラフトのようなグラフト等に使用することができる。他の血管、例えば頸動脈、冠状動脈、下行大動脈、腎動脈、外側仙骨動脈、内側仙骨動脈、総大腿動脈及び大腿深動脈への使用も又想定される。本明細書に開示した器械の用途としては、狭窄した静脈及び動脈吻合部、従来型血管形成術に対して耐性のある病変部、ステント再狭窄部及び動脈内膜が増大した血管等の治療が挙げられるが、これらには限定されない。
【0074】
上述の説明は、多くの細部を含むが、かかる細部は、本発明の範囲に対する限定と解されてはならず、単にその好ましい実施形態の例示として解されるべきである。当業者であれば、本明細書に添付された特許請求の範囲に記載された本発明の範囲及び精神に属する他の多くの考えられる変形例を想到するであろう。
【符号の説明】
【0075】
10,50,110,110′ ワイヤ組立体
20,51,120,130 切断部材又はワイヤ
23 ワイヤ20の遠位部分
30,140 追跡部材又はワイヤ
32 ワイヤ30の遠位部分
33,157 コイル先端部
34,158 マーカーバンド
35,153 収縮ラップ
60,100 血管形成術用バルーンカテーテル
62 ルーメン
65 隙間
70,78 ワイヤ
76 切れ刃
122 ワイヤ120の遠位部分
132 ワイヤ130の遠位部分
140 追跡ガイドワイヤ
142 ワイヤ140の遠位部分
B 病変部
G ガイドワイヤ
V 血管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内管腔中の通路を拡大して前記体内管腔中の病変部を治療する器械であって、近位部分及び遠位部分を備えた少なくとも1つの切断部材と、近位部分及び遠位部分を備えた追跡部材とを有し、前記切断部材と前記追跡部材は、遠位部分のところで互いに連結されていて、一ユニットとして前記体内管腔中に挿入可能であり、前記切断部材は、少なくとも遠位領域のところでの前記切断部材と前記追跡部材との間の隙間を広げるよう前記追跡部材の長手方向軸線を横切る方向に運動できるよう構成されている、器械。
【請求項2】
前記切断部材は、前記追跡部材に向いた第2の表面と反対側の第1の表面に設けられている切断面を有する、請求項1記載の器械。
【請求項3】
前記切断面は、前記切断部材の遠位領域にのみに形成されている、請求項2記載の器械。
【請求項4】
前記第2の表面は、凸面を有する、請求項2又は3記載の器械。
【請求項5】
前記追跡部材は、複数個のマーカーバンドを有する、請求項1〜4のうちいずれか一に記載の器械。
【請求項6】
前記少なくとも1つの切断部材は、複数個の切断部材から成り、前記複数個の切断部材は、遠位部分が前記追跡部材に連結されていて、一ユニットとして前記カテーテルのルーメン中に挿入される、請求項1〜5のうちいずれか一に記載の器械。
【請求項7】
ルーメン及び拡張可能な部分を備えたカテーテルと組み合わせて用いられる請求項1〜6のうちいずれか一に記載の器械であって、前記切断部材は、前記カテーテルの前記拡張可能な部分によって動かされると、前記病変部を治療するために体内管腔中の前記通路を拡大して前記切断部材と前記追跡部材との間の前記隙間を広げるよう構成された切断面を有する、器械。
【請求項8】
前記拡張可能な部分は、インフレート可能なバルーンから成る、請求項7記載の器械。
【請求項9】
前記切断部材は、切断領域のところの断面が実質的に三角形である、請求項1〜8のうちいずれか一に記載の器械。
【請求項10】
前記切断部材は、第1の形態の第1の部分及び第2の形態の第2の部分を有し、前記第2の部分は、切断面を有し、前記第1の部分は、非外傷性である、請求項1〜9のうちいずれか一に記載の器械。
【請求項11】
前記第2の部分の高さは、前記第1の部分の高さよりも低い、請求項10記載の器械。
【請求項12】
前記追跡部材は、遠位先端部のところにコイルを有する、請求項1〜11のうちいずれか一に記載の器械。
【請求項13】
前記追跡部材及び前記切断部材の連結領域を覆う収縮ラップを更に有する、請求項1〜12のうちいずれか一に記載の器械。
【請求項14】
前記切断部材は、ワイヤであり、前記追跡部材は、ワイヤである、請求項1〜13のうちいずれか一に記載の器械。
【請求項15】
前記切断部材は、近位領域のところの断面が実質的に円形であると共に遠位領域のところの断面が実質的に三角形である、請求項1〜14のうちいずれか一に記載の器械。

【図1】
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【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図6】
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【図6A】
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【図7】
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【図8】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図9】
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【図9A】
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【図10】
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【図11】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図11E】
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