カテーテル
【課題】薬剤吐出対象の生体組織の硬さによらず円滑に薬剤を吐出することができるカテーテルを提供すること。
【解決手段】本発明にかかるカテーテル1は、内部にルーメン2aを有するとともに該ルーメン2aに連通する薬剤吐出穴7を有する細長い躯体2と、屈曲可能である弾性部3を介して躯体2と連結する切開部4と、躯体2が挿通されて躯体2に対して移動可能であるとともに、弾性部3を屈曲させることによって切開部4を躯体2との間に収容するシース5と、を備え、切開部4は、シース5が躯体2に対して移動することによって、シース5に収容された状態から解放されるとともに、弾性部3の弾性復元にしたがって躯体2の側面から離間する方向に移動するように構成されており、薬剤吐出穴7は、切開部4の移動軌跡に対応する空間に薬剤を吐出できる位置に形成される。
【解決手段】本発明にかかるカテーテル1は、内部にルーメン2aを有するとともに該ルーメン2aに連通する薬剤吐出穴7を有する細長い躯体2と、屈曲可能である弾性部3を介して躯体2と連結する切開部4と、躯体2が挿通されて躯体2に対して移動可能であるとともに、弾性部3を屈曲させることによって切開部4を躯体2との間に収容するシース5と、を備え、切開部4は、シース5が躯体2に対して移動することによって、シース5に収容された状態から解放されるとともに、弾性部3の弾性復元にしたがって躯体2の側面から離間する方向に移動するように構成されており、薬剤吐出穴7は、切開部4の移動軌跡に対応する空間に薬剤を吐出できる位置に形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生体組織内に導入されるカテーテルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、人間を含む哺乳動物の生体組織内に導入されて、直接、生体組織に薬剤を吐出するカテーテルが知られている。このようなカテーテルは、静脈に穿刺されるものの他に、目的とする体内の非管腔臓器(たとえば膵臓)内部に導入されるものがある(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−034462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、カテーテル先端の薬剤吐出穴から薬剤を吐出する方法では、生体組織の狭い領域にしか薬剤を浸潤させることができなかった。また、生体組織の広い領域に薬剤を浸潤させるために薬剤吐出穴を複数設けることもできるものの、薬剤吐出穴を増やすと針自体の強度が弱くなるため、側面開口による薬剤の吐出領域の拡大には限界があった。
【0005】
また、カテーテルを生体組織内に導入した段階で薬剤吐出穴が組織片で塞がれ、薬剤の吐出がスムーズに行われないこともあった。この場合、薬剤吐出の圧力を高めて無理に吐出させようとすると、組織を破損する場合や、カテーテルの導入で形成された組織内の空間から薬剤が勢いよく飛び出して薬剤吐出対象外の他の生体組織にまで薬剤が飛散してしまう場合も考えられる。
【0006】
さらに、薬剤吐出対象の生体組織によって薬剤吐出穴周囲の生体組織の柔らかさは異なる。たとえば、肝臓内の腫瘍は柔軟であるが、膵臓内の腫瘍は繊維性間質が豊富な固形腫瘍であり、比較的硬い。このような固形腫瘍の場合、吐出された薬剤の組織内への浸潤度合いも柔軟な生体組織と比較して低くなる。
【0007】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、薬剤吐出対象の生体組織の硬さによらず円滑に薬剤を吐出することができるカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかるカテーテルは、生体組織内に導入されるカテーテルであって、内部にルーメンを有するとともに細長い躯体と、屈曲可能である弾性部を介して前記躯体と連結する切開部と、前記ルーメンに連通する薬剤吐出穴と、前記躯体が挿通されるシースであって、前記躯体に対して移動可能であるとともに、前記弾性部を屈曲させた状態で前記切開部を前記躯体との間に収容するシースと、を備え、前記切開部は、前記シースが前記躯体に対して移動することによって、前記シースに収容された状態から解放されるとともに、前記弾性部の弾性復元にしたがって少なくとも一部が前記躯体の側面から離間する方向に移動するように構成されており、前記薬剤吐出穴は、前記切開部の移動軌跡に対応する空間に薬剤を吐出できる位置に形成されることを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記切開部は、前記躯体の先端に設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記シースは、先端または側面に開口を有し、前記切開部は、前記シースが前記躯体に対して基端側に移動することによって、前記開口から突出するように構成されていることを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記弾性部は、前記躯体内部のルーメンと連通する内部ルーメンを有し、前記薬剤吐出穴は前記弾性部に設けられていることを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記弾性部および前記切開部は、前記躯体内部のルーメンと連通する内部ルーメンを有し、前記薬剤吐出穴は、前記切開部に設けられていることを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記薬剤吐出穴は、前記躯体の先端に設けられていることを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記シースは、先端部が分離する構造となっており、前記シースの先端部は、前記切開部の位置を規定する当接部を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
この発明にかかるカテーテルは、シースが躯体に対して移動することによって、切開部は、シースに収容された状態から解放されるとともに、弾性部の弾性復元にしたがって少なくとも一部が躯体の側面から離間する方向に移動して生体組織を切開し、薬剤拡散用の空間を確保するため、薬剤吐出対象の生体組織の硬さによらず円滑に薬剤を吐出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、実施の形態1にかかるカテーテルの斜視図である。
【図2】図2は、図1に示すカテーテルを生体組織に導入した状態で該カテーテルの軸に沿って切断した先端部分の断面図である。
【図3】図3は、図2に示す切開部の他の例を示す斜視図である。
【図4】図4は、図2に示す躯体の他の例を示す斜視図である。
【図5】図5は、実施の形態1の変形例1にかかるカテーテルを生体組織に導入した状態で該カテーテルの軸に沿って切断した先端部分の断面図である。
【図6】図6は、実施の形態1の変形例2にかかるカテーテルを生体組織に導入した状態で該カテーテルの軸に沿って切断した先端部分の断面図である。
【図7】図7は、実施の形態1の変形例2にかかるカテーテルの他の例を示す斜視図である。
【図8】図8は、実施の形態1の変形例2にかかるカテーテルの他の例を示す斜視図である。
【図9】図9は、実施の形態1の変形例3にかかるカテーテルを生体組織に導入した状態で該カテーテルの軸に沿って切断した先端部分の断面図である。
【図10】図10は、実施の形態1の変形例3にかかる他のカテーテルを生体組織に導入した状態で該カテーテルの軸に沿って切断した先端部分の断面図である。
【図11A】図11Aは、図10に示すカテーテルを用いた薬剤吐出の方法を説明する断面図である。
【図11B】図11Bは、図10に示すカテーテルを用いた薬剤吐出の方法を説明する断面図である。
【図11C】図11Cは、図10に示すカテーテルを用いた薬剤吐出の方法を説明する断面図である。
【図11D】図11Dは、図10に示すカテーテルを用いた薬剤吐出の方法を説明する断面図である。
【図11E】図11Eは、図10に示すカテーテルを用いた薬剤吐出の方法を説明する断面図である。
【図12】図12は、実施の形態2にかかるカテーテルを生体組織に導入した状態で該カテーテルの軸に沿って切断した先端部分の断面図である。
【図13】図13は、実施の形態2の変形例1にかかるカテーテルを生体組織に導入した状態で該カテーテルの軸に沿って切断した先端部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、この発明を実施するための形態として、人間を含む哺乳動物の生体組織内に導入されるカテーテルについて説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0018】
(実施の形態1)
まず、実施の形態1について説明する。図1は、本実施の形態1にかかるカテーテルの斜視図である。図2は、図1に示すカテーテルを生体組織に導入した状態で該カテーテルの軸に沿って切断した先端部分の断面図であり、実施の形態1にかかるカテーテルを用いた薬剤吐出の方法を説明する図である。
【0019】
図1(1)および図2(1)に示すように、本実施形態のカテーテル1は、内部にルーメンを有する細長い躯体2と、躯体2の先端に設けられ、屈曲可能である弾性部3を介して躯体2と連結する切開部4と、躯体2が移動可能に挿通される管状のシース5とを有する。シース5は、先端に開口6を有する。シース5は、躯体2に対して移動可能である。また、シース5は、先端が長手方向に対して斜めに切断されて尖った形状を有する。
【0020】
図1(1)および図2(1)は、シース5が、躯体2、弾性部3および切開部4を、その内部に収容している状態を示す図である。図1(2)および図2(2)は、シース5を躯体2に対して躯体2の基端側(後方)にスライドさせた状態を示す図である。
【0021】
図2(1)に示すように、シース5は、弾性部3を屈曲させた状態で、切開部4を躯体2とシース5の内壁との間に収容する。弾性部3は、躯体2内部のルーメン2aと連通する内部ルーメンと、この内部ルーメンと連通する薬剤吐出穴7とを有する。図2(1)に示すシース5内部に躯体2、弾性部3および切開部4が収容された状態で、カテーテル1は、シース5先端が薬剤吐出対象の生体組織Bに到達するまで穿刺される。実施の形態1では、所定の大きさ以上の力で躯体2を押し出さないと弾性部3および切開部4が開口6から飛び出さないようにシース5の先端にストッパ部材8を設けて、カテーテル1の穿刺時に躯体2、弾性部3および切開部4がシース5の開口6から滑り出ないようにシース5の開口6の開口面積を調整している。
【0022】
薬剤吐出対象の生体組織Bまでカテーテル1が穿刺されると、図1(2)および図2(2)に示すように、シース5は、カテーテル1の操作者によって、矢印Y1のように、躯体2に対して後方にスライドされる。
【0023】
カテーテル1は、この後方へのスライドによって、弾性部3および切開部4がシース5の先端の開口6から突出するように構成されており、シース5の後方へのスライドによって弾性部3および切開部4がシース5内部に収容された状態から解放される。このとき、シース5の先端内部のストッパ部材8の傾斜面8aに沿って弾性部3がさらに屈曲することで、切開部4が解放される直前の弾性部3の復元力が強められる。
【0024】
続いて、切開部4の先端がシース5の外部に出ると、解放の際の弾性部3の弾性復元にしたがって、切開部4の一部(この場合は、弾性部3との連結部分以外の部分)が、図2(2)の矢印Y2のように、躯体2の側面から離間する方向に移動する。この切開部4の移動によって、切開部4の移動軌跡にある生体組織Bが切開され、薬剤が拡散する空間が確保される。
【0025】
ここで、弾性部3に設けられる薬剤吐出穴7は、この切開部4の移動軌跡に対応する空間に薬剤を吐出できる位置に形成される。躯体2の基端側からルーメン2aを通って送出されてきた薬剤Mは、薬剤吐出穴7から、矢印Y3のように、切開部4によって切開された空間に拡散する。したがって、薬剤Mは、切開部4によって切開された空間を介して、空間との境界付近の領域S1の生体組織Bに広く拡散するため、組織内に高い浸潤率で浸潤することができる。なお、カテーテル1の生体組織B内への穿刺後、シース5は、体内から引き出される。
【0026】
このように、カテーテル1においては、以上に述べた操作を行うことによって、薬剤吐出穴7側の生体組織Bを切開して空間を形成してから薬剤Mを吐出することができる。このため、カテーテル1によれば、薬剤吐出穴数を増やさなくても生体組織Bに広く薬剤Mを浸潤させることができる。
【0027】
また、カテーテル1においては、シース5の開口6が生体組織Bで塞がれた場合であっても、この開口6を塞いでいる生体組織B自体はシース5の後退にともない屈曲部3によって除去される。その後切開部4で生体組織Bを切開して薬剤拡散用の空間を確保するため、薬剤Mの吐出圧力を必要以上に高めずとも薬剤吐出対象の生体組織Bに円滑に薬剤を吐出することができる。
【0028】
したがって、実施の形態1にかかるカテーテル1によれば、薬剤吐出対象の生体組織の硬さによらず円滑に薬剤を吐出することができる。
【0029】
また、実施の形態1のカテーテル1によれば、シース5先端を、生体組織B内の薬剤吐出位置よりも、シース5先端とシース5内部に収容された弾性部3との僅かな距離分(図2(1)に示す距離D1分)だけ先端側に穿刺すれば足りるため、侵襲度を低くすることができる。
【0030】
また、実施の形態1のカテーテル1においては、シース5のスライドによってシース5先端の開口6から切開部4が突出するように構成されているため、切開部4を突出させる動作が容易に行え、生体組織Bの切開を円滑に行うことができる。
【0031】
また、実施の形態1のカテーテル1においては、切開部4と躯体2とを連結する弾性部3に薬剤吐出穴7を設けるため、切開部4の移動によって薬剤の吐出位置が動くこともなく、固定位置から薬剤を吐出できる。
【0032】
なお、躯体2と弾性部3と切開部4とは、単一の部材として一体に形成することも可能である。もちろん、躯体2と弾性部3と切開部4とは、独立して形成した部材を連結することによって形成することも可能である。躯体2と弾性部3と切開部4とは、例えば弾性シリコーン、ポリウレタン、ポリエチレンなどを用いて形成される。また、弾性部3および切開部4を、アセタル樹脂、チタンなどを用いて形成してもよい。
【0033】
また、実施の形態1においては、切開部の切開能力を高めるために、たとえば図3の切開部4Aに示すように、切開部4Aの移動方向側の側面にブレード4aを設けてもよい。このブレード4aは、複数であってもよく、また、単数であってもよい。
【0034】
また、実施の形態1においては、さらに広い領域に薬剤Mを浸潤させるために、図4に示すように、複数の薬剤吐出穴7a〜7eを設けた躯体2Bを用いてもよい。なお、薬剤吐出穴は、もちろん5箇所に限らず、薬剤吐出対象領域に合わせて形成すればよい。
【0035】
(実施の形態1の変形例1)
次に、実施の形態1の変形例1について説明する。図5は、実施の形態1の変形例1にかかるカテーテルを生体組織に導入した状態でカテーテルの軸に沿って切断した先端部分の断面図であり、実施の形態1の変形例1にかかるカテーテルを用いた薬剤吐出の方法を説明する図である。図5(1)は、シースが、躯体、弾性部および切開部を、その内部に収容している状態を示す図である。図5(2)は、シースを後方にスライドさせた状態を示す図である。
【0036】
図5(1)に示すように、実施の形態1の変形例1にかかるカテーテル11は、実施の形態1における躯体2に代えて、先端部12bに薬剤吐出用の開口17が設けられた躯体12を有する。開口17は、躯体12内部のルーメン12aと連通する。
【0037】
躯体12の先端部12bは、斜めになっており、斜めの頂点から延伸部材12cが延伸する。切開部14は、屈曲可能である弾性部13を介して躯体12の延伸部材12cと連結する。なお、実施の形態1と同様に、躯体12の延伸部材12cと弾性部13と切開部14とは、単一の部材として一体に形成することも可能であり、独立して形成した部材を連結することによって形成することも可能である。
【0038】
図5(1)に示すように、シース5は、弾性部13を屈曲させた状態で、切開部14を躯体12の延伸部材12cとシース5の内壁との間に収容し、この状態で、カテーテル11は、シース5先端が薬剤吐出対象の生体組織Bに到達するまで穿刺される。
【0039】
図5(2)に示すように、シース5が矢印Y21のように後方にスライドされることによって、弾性部13および切開部14がシース5の先端の開口6から突出するとともに、解放の際の弾性部13の弾性復元にしたがって切開部14が矢印Y12のように、躯体2の側面から離間する方向に移動する。実施の形態1と同様に、この切開部14の移動によって、切開部14の移動軌跡にある開口6前方の生体組織Bが切開され、薬剤が拡散する空間が確保される。躯体12の基端側からルーメン12aを通って送出されてきた薬剤Mは、躯体12の先端面12bの開口17から、矢印Y13のように、切開部14によって切開された空間を介して、空間との境界付近の領域S11の生体組織Bに広く拡散する。
【0040】
この実施の形態1の変形例1のように開口17を躯体12の先端面12bに設けた場合も、薬剤Mが組織内に高い浸潤率で浸潤することができる。また、実施の形態1の変形例1においては、薬剤Mが送出されるルーメンは躯体12にのみあれば足り、細径の延伸部材12cにまで内部のルーメンを形成しなくともよいため、躯体12の製造が容易になる。さらに、実施の形態1の変形例1においては、弾性部13および切開部14についても内部のルーメンが不要となるため、弾性部13および切開部14を細身にでき、切開能力の向上を図ることができる。
【0041】
(実施の形態1の変形例2)
次に、実施の形態1の変形例2について説明する。図6は、実施の形態1の変形例2にかかるカテーテルを生体組織に導入した状態で該カテーテルの軸に沿って切断した先端部分の断面図であり、実施の形態1の変形例2にかかるカテーテルを用いた薬剤吐出の方法を説明する図である。図6(1)は、シースが、躯体、弾性部および切開部を、その内部に収容している状態を示す図である。図6(2)および図6(3)は、躯体をシースに対してシースの先端側(前方)にスライドさせた状態を示す図である。
【0042】
図6(1)に示すように、実施の形態1の変形例2にかかるカテーテル21は、実施の形態1におけるシース5に代えて、側面に開口26を有するシース25を有する。シース25の先端は閉じており、先端内部はガイド部材28によって埋められている。
【0043】
このガイド部材28は、切開部4をシース25の開口26に誘導するための傾斜面28aを有する。また、ガイド部材28の傾斜面28aは、所定以上の力で躯体2を押し出さないと切開部4が開口26から突出しないように設定されており、カテーテル21の穿刺時に躯体2、弾性部3および切開部4がシース5の開口26から滑り出すことを防ぐ機能も有する。シース25の開口26の大きさは、切開部4の大きさ、ガイド部材28の大きさや傾斜面28aの傾斜に対応して設定される。
【0044】
図6(1)に示すように、シース25は、弾性部3を屈曲させた状態で、切開部4を躯体2とシース25の内壁との間に収容する。この状態で、カテーテル21は、シース25の開口26が薬剤吐出対象の生体組織Bに到達するまで穿刺される。
【0045】
図6(2)に示すように、シース25はそのままの状態で矢印Y21のように躯体2をシース25の先端側に前進させることによって、弾性部3および切開部4がシース25の側面の開口26から突出するとともに、解放の際の弾性部3の弾性復元にしたがって切開部4が躯体2の側面から離間する方向に移動する。実施の形態1と同様に、この切開部4の移動によって、切開部4の移動軌跡にある開口26上部の生体組織Bが切開され、薬剤が拡散する空間が確保される。躯体2の基端側からルーメン2aを通って送出されてきた薬剤Mは、薬剤吐出穴7から、矢印Y23のように、切開部4によって切開された空間を介して、空間との境界付近の領域S21の生体組織Bに広く拡散する。
【0046】
さらに、図6(3)の矢印Y24に示すように、躯体2をシース25の先端側に前進させることによって、躯体2の先端側も突出させることができ、この場合には、図6(2)に示す領域S21よりも広い領域S22に薬剤Mが拡散する。
【0047】
このように、実施の形態1の変形例2にかかるカテーテル21によれば、シース25に対する躯体2の移動量を調節することによって、躯体2、弾性部3および切開部4の突出量を変更して生体組織Bの切開量を調節できる。さらに、カテーテル21においては、切開部4の移動に応じて薬剤吐出穴7の位置が移動するので、薬剤吐出対象の生体組織に対して、漏れなく薬剤を投与できる。
【0048】
なお、本実施の形態1の変形例2においては、シース25の躯体2に対する相対的な移動方向は後方に限らない。図7(1)に示すように、躯体2先端、弾性部3および切開部4がシース35の側面の開口36よりも十分に前進した位置で収容されている場合には、矢印Y31のようにシース35を躯体2に対して前方に移動させて弾性部3および切開部4上に開口36を位置させることによって、図7(2)の矢印Y32のように、弾性部3および切開部4を解放する。また、図8(1)に示すように、矢印Y41のようにシース45を側方側に回転させて弾性部3および切開部4上に開口46を位置させることによって、図8(2)の矢印Y42のように、弾性部3および切開部4を解放してもよい。
【0049】
(実施の形態1の変形例3)
次に、実施の形態1の変形例3について説明する。図9は、実施の形態1の変形例3にかかるカテーテルを生体組織に導入した状態で該カテーテルの軸に沿って切断した先端部分の断面図であり、実施の形態1の変形例3にかかるカテーテルを用いた薬剤吐出の方法を説明する図である。図9(1)は、シースが、躯体、弾性部および切開部を、その内部に収容している状態を示す図である。図9(2)は、シースを後方にスライドさせた状態を示す図である。
【0050】
図9(1)に示すように、実施の形態1の変形例3にかかるカテーテル51は、実施の形態1における躯体2に代えて、先端が尖った形状を有する躯体52を有し、シース5に代えて、図2に示すストッパ部材8を省略した構成を有するシース55を備える。シース55の先端には、開口56が設けられている。
【0051】
躯体52の側面には、躯体52内部のルーメン52aに連通する薬剤吐出穴57が設けられる。躯体52先端には、一体に形成された屈曲可能である弾性部53と切開部54とが取り付けられた取り付け部材59が嵌合される。この場合、弾性部53の屈曲させた状態のときに躯体52の薬剤吐出穴57と弾性部53および切開部54とが対向するように取り付け部材59が嵌合される。
【0052】
図9(1)に示すように、シース55は、弾性部53を屈曲させた状態で、切開部54を躯体52の薬剤吐出穴57が形成される側面とシース55の内壁との間に収容する。この状態で、カテーテル51は、躯体52の薬剤吐出穴57が薬剤吐出対象の生体組織Bに到達するまで穿刺される。
【0053】
図9(2)に示すように、シース55が矢印Y51のように後方にスライドされることによって、弾性部53および切開部54がシース55の先端の開口56から突出するとともに、解放の際の弾性部53の弾性復元にしたがって、切開部54が矢印Y52のように躯体2の薬剤吐出穴57が形成される側面から離間する方向に移動する。実施の形態1と同様に、この切開部54の移動によって、切開部54の移動軌跡にある薬剤吐出穴57上の生体組織Bが切開され、薬剤が拡散する空間が確保される。躯体52の基端側からルーメン52aを通って送出されてきた薬剤Mは、躯体52の薬剤吐出穴57から、矢印Y53のように、切開部54によって切開された空間を介して、空間との境界付近の領域S51の生体組織Bに広く拡散する。また、カテーテル51の生体組織B内への穿刺後、シース55は、体内から引き出される。
【0054】
この実施の形態1の変形例3にかかるカテーテル51は、側面に薬剤吐出用の開口を有する一般的なカテーテルに弾性部53と切開部54とが取り付けられた取り付け部材59を嵌合した後、一般的なシース55内部に差し込むだけで容易に実現できる。
【0055】
なお、実施の形態1の変形例3では、単数の切開部と単数の薬剤吐出穴を有する構成について説明したが、もちろんこれに限らない。図10(1)に示すように、複数の薬剤吐出穴671,672を側面に有する躯体62に、複数の切開部641,642をそれぞれ屈曲可能である弾性部631,632を介して基端部682に取り付けた取り付け部材68を嵌合した構成であってもよい。取り付け部材68の先端部681は、尖った形状を有する。そして、先端に開口66を有する管状のシース65内部に、弾性部631,632を屈曲させた状態で、躯体62、弾性部631,632および切開部641,642を収容する。このとき、シース65の開口66からは、取り付け部材68の先端部681の一部が少なくとも突出する状態で、躯体62、弾性部631,632および切開部641,642が収容される。
【0056】
続いて、図10(2)に示す矢印Y61のように、シース65が後方にスライドされることによって、弾性部631,632および切開部641,642がシース65の先端の開口66から突出するとともに、解放の際の弾性部631,632の弾性復元にしたがって、切開部641,642がそれぞれ矢印Y621,622のように躯体62の側面から離間する方向に移動する。この切開部641,642の移動によって、切開部641,642の移動軌跡にある生体組織Bであって薬剤吐出穴671,672上の生体組織Bがそれぞれ切開され、薬剤が拡散する2つの空間が確保される。躯体62の基端側からルーメン62aを通って送出されてきた薬剤Mは、躯体62の薬剤吐出穴671,672から、矢印Y631,632のように、切開部641,642によってそれぞれ切開された空間を介して、空間との境界付近の領域S61,S62の生体組織Bに広く拡散する。また、カテーテル61の生体組織B内への穿刺後、シース65は、体内から引き出される。
【0057】
このカテーテル61では、収容状態(図11A参照)から矢印Y61a(図11B参照)のようにシース65を後方に引いて切開部641,642を広げたときに、生体組織Bを切開する力の不足などにより切開部641,642の開きが不十分であった場合は、シース65を矢印Y64(図11C参照),Y65(図11D参照)のように再び前方に移動させればよい。シース65を前方に移動させることによって、シース65先端で切開部641,642を押し開いて、矢印Y661,662(図11D参照)のように切開部641,642が十分開くように切開部641,642に力を加えた後に、矢印Y67(図11E参照)のようにシース65を後方に移動させて抜き出せばよい。
【0058】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2にかかるカテーテルにおいては、シースが先端部と本体部とで分離可能である場合について説明する。
【0059】
図12は、実施の形態2にかかるカテーテルを生体組織に導入した状態で該カテーテルの軸に沿って切断した先端部分の断面図であり、実施の形態2にかかるカテーテルを用いた薬剤吐出の方法を説明する図である。図12(1)は、シースが、躯体、弾性部および切開部を、その内部に収容している状態を示す図である。図12(2)は、シースの本体部を後方にスライドさせた状態を示す図である。
【0060】
図12(1)に示すように、実施の形態2にかかるカテーテル201は、実施の形態1における躯体2に代えて、切開部204の側面に薬剤吐出穴207が設けられた躯体202を有し、シース5に代えて、先端部205aと基端側まで延伸する本体部205bとに分離可能であるシース205を有する。弾性部203および切開部204は、躯体202内部のルーメン202aと連通する内部ルーメンを有し、薬剤吐出穴207は、この内部ルーメンと連通する。シース205は、先端部205aと本体部205bとは分離面206に塗布された接着剤等によって予め仮止めされている。シース205の先端部205a内部は、当接部材208によって埋められている。
【0061】
図12(1)に示すように、シース205は、弾性部203を屈曲させた状態で、切開部204を躯体202と分離前のシース205の内壁との間に収容する。躯体202は、弾性部203がシース205の先端部205a内部の当接部材208の当接面208に当たるまで、シース205内部に挿通される。この状態で、カテーテル201は、先端部205aの先端が薬剤吐出対象の生体組織Bに到達するまで穿刺される。
【0062】
続いて、躯体202を矢印Y70のようにシース205に対して前進させる。この躯体202の前進によって、弾性部203が当接部材208の当接面208aを押すこととなり、この押す力によって、仮止めされていたシース205の先端部205aと本体部205bとが分離する。
【0063】
そして、図12(2)に示す矢印Y71のように、シース205の本体部205bを後方にスライドさせると、先端部205aと本体部205bとは離間し、本体部205bから切開部204は解放され、切開部204がシース205の離間部分から突出するとともに、解放の際の弾性部203の弾性復元にしたがって切開部204が矢印Y72のように、躯体202の側面から離間する方向に移動する。
【0064】
実施の形態1と同様に、この切開部204の移動によって、切開部204の移動軌跡にある生体組織Bが切開され、薬剤が拡散する空間が確保される。躯体202の基端側からルーメン202aを通って送出されてきた薬剤Mは、弾性部203および切開部204の内部ルーメンを経由して、切開部204の薬剤吐出穴207に到達し、矢印Y73のように、切開部204によって切開された空間を介して、空間との境界付近の領域S71の生体組織Bに広く拡散する。また、カテーテル201の生体組織B内への穿刺後、シース205の本体部205bは、体内から引き出される。
【0065】
当接部材208と弾性部203とが当接する当接面208aは、傾斜面となっている。切開部204の移動は当接面208aに接触することで停止するため、当接面208aは、解放後の切開部204の位置を規定して切開部204の躯体202からの離間位置を安定させる機能を有する。
【0066】
この実施の形態2によれば、実施の形態1と同様に、薬剤吐出対象の生体組織の硬さによらず円滑に薬剤を吐出することができるとともに、当接部材208の当接面208aの角度を調整することによって、切開部204の切開領域を生体組織の薬剤吐出対象領域に対応させて柔軟に設定できる。
【0067】
(実施の形態2の変形例1)
次に、実施の形態2の変形例1について説明する。図13は、実施の形態2の変形例1にかかるカテーテルを生体組織に導入した状態で該カテーテルの軸に沿って切断した先端部分の断面図であり、実施の形態2の変形例1にかかるカテーテルを用いた薬剤吐出の方法を説明する図である。図13(1)は、シースが、躯体、弾性部および切開部を、その内部に収容している状態を示す図である。図13(2)は、躯体を前進させた状態を示す図である。図13(3)は、シースの本体部を後方にスライドさせた状態を示す図である。
【0068】
図13(1)に示すように、実施の形態2の変形例1にかかるカテーテル211は、実施の形態2におけるシース205に代えて、先端部215aと基端側まで延伸する本体部215bとに分離可能であるシース215を有する。先端部215aと本体部215bとは、分離面219に塗布された接着剤等によって予め仮止めされている。先端部215a側面には開口216が形成される。先端部215aの先端内部は、当接部材218によって埋められている。
【0069】
図13(1)に示すように、シース215は、弾性部203を屈曲させた状態で、切開部204を、躯体202と分離前のシース215の本体部215bの内壁との間に収容する。躯体202の先端、弾性部203および切開部204は、先端部215aの開口216より十分に後退した位置で収容される。この状態で、カテーテル211は、薬剤吐出対象の生体組織Bに先端が到達するまで穿刺される。
【0070】
続いて、図13(2)に示す矢印Y81のように、シース215の先端部215aが当接部材218の当接面218aに当てつくまで躯体202を前進させる。この結果、弾性部203および切開部204がシース215の先端部215aの開口56から突出するとともに、解放の際の弾性部203の弾性復元にしたがって、切開部204が矢印Y82のように躯体202の側面から離間する方向に移動する。この切開部204の移動によって、切開部204の移動軌跡にある生体組織Bが切開され、薬剤が拡散する空間が確保される。この切開によって薬剤が浸潤する空間が確保できるため、シース215の先端部215aと本体部215bとの分離なしに、この状態で薬剤を投与してもよい。躯体202の基端側からルーメン202aを通って送出されてきた薬剤Mは、弾性部203および切開部204の内部ルーメンを経由して、切開部204の薬剤吐出穴207に到達し、矢印Y83のように、切開部204によって切開された空間を介して、空間との境界付近の領域S81の生体組織Bに広く拡散する。
【0071】
当接部材218と弾性部203とが当接する当接面218aは、傾斜面となっているため、実施の形態2と同様に、当接面218aは、解放後の切開部204の位置を規定して切開部204の躯体202からの離間位置を安定させる機能を有する。
【0072】
続いて、図13(3)に示すように、シース215の本体部215bを矢印Y84のように後方に引くと、先端部215aと本体部215bとの接着が解除され、本体部215bを生体組織内から抜き出すことができる。
【0073】
この実施の形態2の変形例1によれば、実施の形態1と同様に、薬剤吐出対象の生体組織の硬さによらず円滑に薬剤を吐出することができるとともに、当接部材218の当接面218aの角度を調整することによって、切開部204の切開領域を生体組織の薬剤吐出対象領域に対応させて柔軟に設定できる。
【符号の説明】
【0074】
1,11,21,31,41,51,61,201,211 カテーテル
2,2B,12,52,62,202 躯体
2a,12a,52a,62a,202a ルーメン
3,13,53,203,631,632 弾性部
4,4A,14,54,204,641,642 切開部
4a ブレード
5,25,35,45,55,65,205,215 シース
6,16,17,26,36,46,56,66,216 開口
7,7a〜7e,57,207,671,672 薬剤吐出穴
8 ストッパ部材
【技術分野】
【0001】
この発明は、生体組織内に導入されるカテーテルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、人間を含む哺乳動物の生体組織内に導入されて、直接、生体組織に薬剤を吐出するカテーテルが知られている。このようなカテーテルは、静脈に穿刺されるものの他に、目的とする体内の非管腔臓器(たとえば膵臓)内部に導入されるものがある(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−034462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、カテーテル先端の薬剤吐出穴から薬剤を吐出する方法では、生体組織の狭い領域にしか薬剤を浸潤させることができなかった。また、生体組織の広い領域に薬剤を浸潤させるために薬剤吐出穴を複数設けることもできるものの、薬剤吐出穴を増やすと針自体の強度が弱くなるため、側面開口による薬剤の吐出領域の拡大には限界があった。
【0005】
また、カテーテルを生体組織内に導入した段階で薬剤吐出穴が組織片で塞がれ、薬剤の吐出がスムーズに行われないこともあった。この場合、薬剤吐出の圧力を高めて無理に吐出させようとすると、組織を破損する場合や、カテーテルの導入で形成された組織内の空間から薬剤が勢いよく飛び出して薬剤吐出対象外の他の生体組織にまで薬剤が飛散してしまう場合も考えられる。
【0006】
さらに、薬剤吐出対象の生体組織によって薬剤吐出穴周囲の生体組織の柔らかさは異なる。たとえば、肝臓内の腫瘍は柔軟であるが、膵臓内の腫瘍は繊維性間質が豊富な固形腫瘍であり、比較的硬い。このような固形腫瘍の場合、吐出された薬剤の組織内への浸潤度合いも柔軟な生体組織と比較して低くなる。
【0007】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、薬剤吐出対象の生体組織の硬さによらず円滑に薬剤を吐出することができるカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかるカテーテルは、生体組織内に導入されるカテーテルであって、内部にルーメンを有するとともに細長い躯体と、屈曲可能である弾性部を介して前記躯体と連結する切開部と、前記ルーメンに連通する薬剤吐出穴と、前記躯体が挿通されるシースであって、前記躯体に対して移動可能であるとともに、前記弾性部を屈曲させた状態で前記切開部を前記躯体との間に収容するシースと、を備え、前記切開部は、前記シースが前記躯体に対して移動することによって、前記シースに収容された状態から解放されるとともに、前記弾性部の弾性復元にしたがって少なくとも一部が前記躯体の側面から離間する方向に移動するように構成されており、前記薬剤吐出穴は、前記切開部の移動軌跡に対応する空間に薬剤を吐出できる位置に形成されることを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記切開部は、前記躯体の先端に設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記シースは、先端または側面に開口を有し、前記切開部は、前記シースが前記躯体に対して基端側に移動することによって、前記開口から突出するように構成されていることを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記弾性部は、前記躯体内部のルーメンと連通する内部ルーメンを有し、前記薬剤吐出穴は前記弾性部に設けられていることを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記弾性部および前記切開部は、前記躯体内部のルーメンと連通する内部ルーメンを有し、前記薬剤吐出穴は、前記切開部に設けられていることを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記薬剤吐出穴は、前記躯体の先端に設けられていることを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかるカテーテルは、上記の発明において、前記シースは、先端部が分離する構造となっており、前記シースの先端部は、前記切開部の位置を規定する当接部を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
この発明にかかるカテーテルは、シースが躯体に対して移動することによって、切開部は、シースに収容された状態から解放されるとともに、弾性部の弾性復元にしたがって少なくとも一部が躯体の側面から離間する方向に移動して生体組織を切開し、薬剤拡散用の空間を確保するため、薬剤吐出対象の生体組織の硬さによらず円滑に薬剤を吐出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、実施の形態1にかかるカテーテルの斜視図である。
【図2】図2は、図1に示すカテーテルを生体組織に導入した状態で該カテーテルの軸に沿って切断した先端部分の断面図である。
【図3】図3は、図2に示す切開部の他の例を示す斜視図である。
【図4】図4は、図2に示す躯体の他の例を示す斜視図である。
【図5】図5は、実施の形態1の変形例1にかかるカテーテルを生体組織に導入した状態で該カテーテルの軸に沿って切断した先端部分の断面図である。
【図6】図6は、実施の形態1の変形例2にかかるカテーテルを生体組織に導入した状態で該カテーテルの軸に沿って切断した先端部分の断面図である。
【図7】図7は、実施の形態1の変形例2にかかるカテーテルの他の例を示す斜視図である。
【図8】図8は、実施の形態1の変形例2にかかるカテーテルの他の例を示す斜視図である。
【図9】図9は、実施の形態1の変形例3にかかるカテーテルを生体組織に導入した状態で該カテーテルの軸に沿って切断した先端部分の断面図である。
【図10】図10は、実施の形態1の変形例3にかかる他のカテーテルを生体組織に導入した状態で該カテーテルの軸に沿って切断した先端部分の断面図である。
【図11A】図11Aは、図10に示すカテーテルを用いた薬剤吐出の方法を説明する断面図である。
【図11B】図11Bは、図10に示すカテーテルを用いた薬剤吐出の方法を説明する断面図である。
【図11C】図11Cは、図10に示すカテーテルを用いた薬剤吐出の方法を説明する断面図である。
【図11D】図11Dは、図10に示すカテーテルを用いた薬剤吐出の方法を説明する断面図である。
【図11E】図11Eは、図10に示すカテーテルを用いた薬剤吐出の方法を説明する断面図である。
【図12】図12は、実施の形態2にかかるカテーテルを生体組織に導入した状態で該カテーテルの軸に沿って切断した先端部分の断面図である。
【図13】図13は、実施の形態2の変形例1にかかるカテーテルを生体組織に導入した状態で該カテーテルの軸に沿って切断した先端部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、この発明を実施するための形態として、人間を含む哺乳動物の生体組織内に導入されるカテーテルについて説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0018】
(実施の形態1)
まず、実施の形態1について説明する。図1は、本実施の形態1にかかるカテーテルの斜視図である。図2は、図1に示すカテーテルを生体組織に導入した状態で該カテーテルの軸に沿って切断した先端部分の断面図であり、実施の形態1にかかるカテーテルを用いた薬剤吐出の方法を説明する図である。
【0019】
図1(1)および図2(1)に示すように、本実施形態のカテーテル1は、内部にルーメンを有する細長い躯体2と、躯体2の先端に設けられ、屈曲可能である弾性部3を介して躯体2と連結する切開部4と、躯体2が移動可能に挿通される管状のシース5とを有する。シース5は、先端に開口6を有する。シース5は、躯体2に対して移動可能である。また、シース5は、先端が長手方向に対して斜めに切断されて尖った形状を有する。
【0020】
図1(1)および図2(1)は、シース5が、躯体2、弾性部3および切開部4を、その内部に収容している状態を示す図である。図1(2)および図2(2)は、シース5を躯体2に対して躯体2の基端側(後方)にスライドさせた状態を示す図である。
【0021】
図2(1)に示すように、シース5は、弾性部3を屈曲させた状態で、切開部4を躯体2とシース5の内壁との間に収容する。弾性部3は、躯体2内部のルーメン2aと連通する内部ルーメンと、この内部ルーメンと連通する薬剤吐出穴7とを有する。図2(1)に示すシース5内部に躯体2、弾性部3および切開部4が収容された状態で、カテーテル1は、シース5先端が薬剤吐出対象の生体組織Bに到達するまで穿刺される。実施の形態1では、所定の大きさ以上の力で躯体2を押し出さないと弾性部3および切開部4が開口6から飛び出さないようにシース5の先端にストッパ部材8を設けて、カテーテル1の穿刺時に躯体2、弾性部3および切開部4がシース5の開口6から滑り出ないようにシース5の開口6の開口面積を調整している。
【0022】
薬剤吐出対象の生体組織Bまでカテーテル1が穿刺されると、図1(2)および図2(2)に示すように、シース5は、カテーテル1の操作者によって、矢印Y1のように、躯体2に対して後方にスライドされる。
【0023】
カテーテル1は、この後方へのスライドによって、弾性部3および切開部4がシース5の先端の開口6から突出するように構成されており、シース5の後方へのスライドによって弾性部3および切開部4がシース5内部に収容された状態から解放される。このとき、シース5の先端内部のストッパ部材8の傾斜面8aに沿って弾性部3がさらに屈曲することで、切開部4が解放される直前の弾性部3の復元力が強められる。
【0024】
続いて、切開部4の先端がシース5の外部に出ると、解放の際の弾性部3の弾性復元にしたがって、切開部4の一部(この場合は、弾性部3との連結部分以外の部分)が、図2(2)の矢印Y2のように、躯体2の側面から離間する方向に移動する。この切開部4の移動によって、切開部4の移動軌跡にある生体組織Bが切開され、薬剤が拡散する空間が確保される。
【0025】
ここで、弾性部3に設けられる薬剤吐出穴7は、この切開部4の移動軌跡に対応する空間に薬剤を吐出できる位置に形成される。躯体2の基端側からルーメン2aを通って送出されてきた薬剤Mは、薬剤吐出穴7から、矢印Y3のように、切開部4によって切開された空間に拡散する。したがって、薬剤Mは、切開部4によって切開された空間を介して、空間との境界付近の領域S1の生体組織Bに広く拡散するため、組織内に高い浸潤率で浸潤することができる。なお、カテーテル1の生体組織B内への穿刺後、シース5は、体内から引き出される。
【0026】
このように、カテーテル1においては、以上に述べた操作を行うことによって、薬剤吐出穴7側の生体組織Bを切開して空間を形成してから薬剤Mを吐出することができる。このため、カテーテル1によれば、薬剤吐出穴数を増やさなくても生体組織Bに広く薬剤Mを浸潤させることができる。
【0027】
また、カテーテル1においては、シース5の開口6が生体組織Bで塞がれた場合であっても、この開口6を塞いでいる生体組織B自体はシース5の後退にともない屈曲部3によって除去される。その後切開部4で生体組織Bを切開して薬剤拡散用の空間を確保するため、薬剤Mの吐出圧力を必要以上に高めずとも薬剤吐出対象の生体組織Bに円滑に薬剤を吐出することができる。
【0028】
したがって、実施の形態1にかかるカテーテル1によれば、薬剤吐出対象の生体組織の硬さによらず円滑に薬剤を吐出することができる。
【0029】
また、実施の形態1のカテーテル1によれば、シース5先端を、生体組織B内の薬剤吐出位置よりも、シース5先端とシース5内部に収容された弾性部3との僅かな距離分(図2(1)に示す距離D1分)だけ先端側に穿刺すれば足りるため、侵襲度を低くすることができる。
【0030】
また、実施の形態1のカテーテル1においては、シース5のスライドによってシース5先端の開口6から切開部4が突出するように構成されているため、切開部4を突出させる動作が容易に行え、生体組織Bの切開を円滑に行うことができる。
【0031】
また、実施の形態1のカテーテル1においては、切開部4と躯体2とを連結する弾性部3に薬剤吐出穴7を設けるため、切開部4の移動によって薬剤の吐出位置が動くこともなく、固定位置から薬剤を吐出できる。
【0032】
なお、躯体2と弾性部3と切開部4とは、単一の部材として一体に形成することも可能である。もちろん、躯体2と弾性部3と切開部4とは、独立して形成した部材を連結することによって形成することも可能である。躯体2と弾性部3と切開部4とは、例えば弾性シリコーン、ポリウレタン、ポリエチレンなどを用いて形成される。また、弾性部3および切開部4を、アセタル樹脂、チタンなどを用いて形成してもよい。
【0033】
また、実施の形態1においては、切開部の切開能力を高めるために、たとえば図3の切開部4Aに示すように、切開部4Aの移動方向側の側面にブレード4aを設けてもよい。このブレード4aは、複数であってもよく、また、単数であってもよい。
【0034】
また、実施の形態1においては、さらに広い領域に薬剤Mを浸潤させるために、図4に示すように、複数の薬剤吐出穴7a〜7eを設けた躯体2Bを用いてもよい。なお、薬剤吐出穴は、もちろん5箇所に限らず、薬剤吐出対象領域に合わせて形成すればよい。
【0035】
(実施の形態1の変形例1)
次に、実施の形態1の変形例1について説明する。図5は、実施の形態1の変形例1にかかるカテーテルを生体組織に導入した状態でカテーテルの軸に沿って切断した先端部分の断面図であり、実施の形態1の変形例1にかかるカテーテルを用いた薬剤吐出の方法を説明する図である。図5(1)は、シースが、躯体、弾性部および切開部を、その内部に収容している状態を示す図である。図5(2)は、シースを後方にスライドさせた状態を示す図である。
【0036】
図5(1)に示すように、実施の形態1の変形例1にかかるカテーテル11は、実施の形態1における躯体2に代えて、先端部12bに薬剤吐出用の開口17が設けられた躯体12を有する。開口17は、躯体12内部のルーメン12aと連通する。
【0037】
躯体12の先端部12bは、斜めになっており、斜めの頂点から延伸部材12cが延伸する。切開部14は、屈曲可能である弾性部13を介して躯体12の延伸部材12cと連結する。なお、実施の形態1と同様に、躯体12の延伸部材12cと弾性部13と切開部14とは、単一の部材として一体に形成することも可能であり、独立して形成した部材を連結することによって形成することも可能である。
【0038】
図5(1)に示すように、シース5は、弾性部13を屈曲させた状態で、切開部14を躯体12の延伸部材12cとシース5の内壁との間に収容し、この状態で、カテーテル11は、シース5先端が薬剤吐出対象の生体組織Bに到達するまで穿刺される。
【0039】
図5(2)に示すように、シース5が矢印Y21のように後方にスライドされることによって、弾性部13および切開部14がシース5の先端の開口6から突出するとともに、解放の際の弾性部13の弾性復元にしたがって切開部14が矢印Y12のように、躯体2の側面から離間する方向に移動する。実施の形態1と同様に、この切開部14の移動によって、切開部14の移動軌跡にある開口6前方の生体組織Bが切開され、薬剤が拡散する空間が確保される。躯体12の基端側からルーメン12aを通って送出されてきた薬剤Mは、躯体12の先端面12bの開口17から、矢印Y13のように、切開部14によって切開された空間を介して、空間との境界付近の領域S11の生体組織Bに広く拡散する。
【0040】
この実施の形態1の変形例1のように開口17を躯体12の先端面12bに設けた場合も、薬剤Mが組織内に高い浸潤率で浸潤することができる。また、実施の形態1の変形例1においては、薬剤Mが送出されるルーメンは躯体12にのみあれば足り、細径の延伸部材12cにまで内部のルーメンを形成しなくともよいため、躯体12の製造が容易になる。さらに、実施の形態1の変形例1においては、弾性部13および切開部14についても内部のルーメンが不要となるため、弾性部13および切開部14を細身にでき、切開能力の向上を図ることができる。
【0041】
(実施の形態1の変形例2)
次に、実施の形態1の変形例2について説明する。図6は、実施の形態1の変形例2にかかるカテーテルを生体組織に導入した状態で該カテーテルの軸に沿って切断した先端部分の断面図であり、実施の形態1の変形例2にかかるカテーテルを用いた薬剤吐出の方法を説明する図である。図6(1)は、シースが、躯体、弾性部および切開部を、その内部に収容している状態を示す図である。図6(2)および図6(3)は、躯体をシースに対してシースの先端側(前方)にスライドさせた状態を示す図である。
【0042】
図6(1)に示すように、実施の形態1の変形例2にかかるカテーテル21は、実施の形態1におけるシース5に代えて、側面に開口26を有するシース25を有する。シース25の先端は閉じており、先端内部はガイド部材28によって埋められている。
【0043】
このガイド部材28は、切開部4をシース25の開口26に誘導するための傾斜面28aを有する。また、ガイド部材28の傾斜面28aは、所定以上の力で躯体2を押し出さないと切開部4が開口26から突出しないように設定されており、カテーテル21の穿刺時に躯体2、弾性部3および切開部4がシース5の開口26から滑り出すことを防ぐ機能も有する。シース25の開口26の大きさは、切開部4の大きさ、ガイド部材28の大きさや傾斜面28aの傾斜に対応して設定される。
【0044】
図6(1)に示すように、シース25は、弾性部3を屈曲させた状態で、切開部4を躯体2とシース25の内壁との間に収容する。この状態で、カテーテル21は、シース25の開口26が薬剤吐出対象の生体組織Bに到達するまで穿刺される。
【0045】
図6(2)に示すように、シース25はそのままの状態で矢印Y21のように躯体2をシース25の先端側に前進させることによって、弾性部3および切開部4がシース25の側面の開口26から突出するとともに、解放の際の弾性部3の弾性復元にしたがって切開部4が躯体2の側面から離間する方向に移動する。実施の形態1と同様に、この切開部4の移動によって、切開部4の移動軌跡にある開口26上部の生体組織Bが切開され、薬剤が拡散する空間が確保される。躯体2の基端側からルーメン2aを通って送出されてきた薬剤Mは、薬剤吐出穴7から、矢印Y23のように、切開部4によって切開された空間を介して、空間との境界付近の領域S21の生体組織Bに広く拡散する。
【0046】
さらに、図6(3)の矢印Y24に示すように、躯体2をシース25の先端側に前進させることによって、躯体2の先端側も突出させることができ、この場合には、図6(2)に示す領域S21よりも広い領域S22に薬剤Mが拡散する。
【0047】
このように、実施の形態1の変形例2にかかるカテーテル21によれば、シース25に対する躯体2の移動量を調節することによって、躯体2、弾性部3および切開部4の突出量を変更して生体組織Bの切開量を調節できる。さらに、カテーテル21においては、切開部4の移動に応じて薬剤吐出穴7の位置が移動するので、薬剤吐出対象の生体組織に対して、漏れなく薬剤を投与できる。
【0048】
なお、本実施の形態1の変形例2においては、シース25の躯体2に対する相対的な移動方向は後方に限らない。図7(1)に示すように、躯体2先端、弾性部3および切開部4がシース35の側面の開口36よりも十分に前進した位置で収容されている場合には、矢印Y31のようにシース35を躯体2に対して前方に移動させて弾性部3および切開部4上に開口36を位置させることによって、図7(2)の矢印Y32のように、弾性部3および切開部4を解放する。また、図8(1)に示すように、矢印Y41のようにシース45を側方側に回転させて弾性部3および切開部4上に開口46を位置させることによって、図8(2)の矢印Y42のように、弾性部3および切開部4を解放してもよい。
【0049】
(実施の形態1の変形例3)
次に、実施の形態1の変形例3について説明する。図9は、実施の形態1の変形例3にかかるカテーテルを生体組織に導入した状態で該カテーテルの軸に沿って切断した先端部分の断面図であり、実施の形態1の変形例3にかかるカテーテルを用いた薬剤吐出の方法を説明する図である。図9(1)は、シースが、躯体、弾性部および切開部を、その内部に収容している状態を示す図である。図9(2)は、シースを後方にスライドさせた状態を示す図である。
【0050】
図9(1)に示すように、実施の形態1の変形例3にかかるカテーテル51は、実施の形態1における躯体2に代えて、先端が尖った形状を有する躯体52を有し、シース5に代えて、図2に示すストッパ部材8を省略した構成を有するシース55を備える。シース55の先端には、開口56が設けられている。
【0051】
躯体52の側面には、躯体52内部のルーメン52aに連通する薬剤吐出穴57が設けられる。躯体52先端には、一体に形成された屈曲可能である弾性部53と切開部54とが取り付けられた取り付け部材59が嵌合される。この場合、弾性部53の屈曲させた状態のときに躯体52の薬剤吐出穴57と弾性部53および切開部54とが対向するように取り付け部材59が嵌合される。
【0052】
図9(1)に示すように、シース55は、弾性部53を屈曲させた状態で、切開部54を躯体52の薬剤吐出穴57が形成される側面とシース55の内壁との間に収容する。この状態で、カテーテル51は、躯体52の薬剤吐出穴57が薬剤吐出対象の生体組織Bに到達するまで穿刺される。
【0053】
図9(2)に示すように、シース55が矢印Y51のように後方にスライドされることによって、弾性部53および切開部54がシース55の先端の開口56から突出するとともに、解放の際の弾性部53の弾性復元にしたがって、切開部54が矢印Y52のように躯体2の薬剤吐出穴57が形成される側面から離間する方向に移動する。実施の形態1と同様に、この切開部54の移動によって、切開部54の移動軌跡にある薬剤吐出穴57上の生体組織Bが切開され、薬剤が拡散する空間が確保される。躯体52の基端側からルーメン52aを通って送出されてきた薬剤Mは、躯体52の薬剤吐出穴57から、矢印Y53のように、切開部54によって切開された空間を介して、空間との境界付近の領域S51の生体組織Bに広く拡散する。また、カテーテル51の生体組織B内への穿刺後、シース55は、体内から引き出される。
【0054】
この実施の形態1の変形例3にかかるカテーテル51は、側面に薬剤吐出用の開口を有する一般的なカテーテルに弾性部53と切開部54とが取り付けられた取り付け部材59を嵌合した後、一般的なシース55内部に差し込むだけで容易に実現できる。
【0055】
なお、実施の形態1の変形例3では、単数の切開部と単数の薬剤吐出穴を有する構成について説明したが、もちろんこれに限らない。図10(1)に示すように、複数の薬剤吐出穴671,672を側面に有する躯体62に、複数の切開部641,642をそれぞれ屈曲可能である弾性部631,632を介して基端部682に取り付けた取り付け部材68を嵌合した構成であってもよい。取り付け部材68の先端部681は、尖った形状を有する。そして、先端に開口66を有する管状のシース65内部に、弾性部631,632を屈曲させた状態で、躯体62、弾性部631,632および切開部641,642を収容する。このとき、シース65の開口66からは、取り付け部材68の先端部681の一部が少なくとも突出する状態で、躯体62、弾性部631,632および切開部641,642が収容される。
【0056】
続いて、図10(2)に示す矢印Y61のように、シース65が後方にスライドされることによって、弾性部631,632および切開部641,642がシース65の先端の開口66から突出するとともに、解放の際の弾性部631,632の弾性復元にしたがって、切開部641,642がそれぞれ矢印Y621,622のように躯体62の側面から離間する方向に移動する。この切開部641,642の移動によって、切開部641,642の移動軌跡にある生体組織Bであって薬剤吐出穴671,672上の生体組織Bがそれぞれ切開され、薬剤が拡散する2つの空間が確保される。躯体62の基端側からルーメン62aを通って送出されてきた薬剤Mは、躯体62の薬剤吐出穴671,672から、矢印Y631,632のように、切開部641,642によってそれぞれ切開された空間を介して、空間との境界付近の領域S61,S62の生体組織Bに広く拡散する。また、カテーテル61の生体組織B内への穿刺後、シース65は、体内から引き出される。
【0057】
このカテーテル61では、収容状態(図11A参照)から矢印Y61a(図11B参照)のようにシース65を後方に引いて切開部641,642を広げたときに、生体組織Bを切開する力の不足などにより切開部641,642の開きが不十分であった場合は、シース65を矢印Y64(図11C参照),Y65(図11D参照)のように再び前方に移動させればよい。シース65を前方に移動させることによって、シース65先端で切開部641,642を押し開いて、矢印Y661,662(図11D参照)のように切開部641,642が十分開くように切開部641,642に力を加えた後に、矢印Y67(図11E参照)のようにシース65を後方に移動させて抜き出せばよい。
【0058】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2にかかるカテーテルにおいては、シースが先端部と本体部とで分離可能である場合について説明する。
【0059】
図12は、実施の形態2にかかるカテーテルを生体組織に導入した状態で該カテーテルの軸に沿って切断した先端部分の断面図であり、実施の形態2にかかるカテーテルを用いた薬剤吐出の方法を説明する図である。図12(1)は、シースが、躯体、弾性部および切開部を、その内部に収容している状態を示す図である。図12(2)は、シースの本体部を後方にスライドさせた状態を示す図である。
【0060】
図12(1)に示すように、実施の形態2にかかるカテーテル201は、実施の形態1における躯体2に代えて、切開部204の側面に薬剤吐出穴207が設けられた躯体202を有し、シース5に代えて、先端部205aと基端側まで延伸する本体部205bとに分離可能であるシース205を有する。弾性部203および切開部204は、躯体202内部のルーメン202aと連通する内部ルーメンを有し、薬剤吐出穴207は、この内部ルーメンと連通する。シース205は、先端部205aと本体部205bとは分離面206に塗布された接着剤等によって予め仮止めされている。シース205の先端部205a内部は、当接部材208によって埋められている。
【0061】
図12(1)に示すように、シース205は、弾性部203を屈曲させた状態で、切開部204を躯体202と分離前のシース205の内壁との間に収容する。躯体202は、弾性部203がシース205の先端部205a内部の当接部材208の当接面208に当たるまで、シース205内部に挿通される。この状態で、カテーテル201は、先端部205aの先端が薬剤吐出対象の生体組織Bに到達するまで穿刺される。
【0062】
続いて、躯体202を矢印Y70のようにシース205に対して前進させる。この躯体202の前進によって、弾性部203が当接部材208の当接面208aを押すこととなり、この押す力によって、仮止めされていたシース205の先端部205aと本体部205bとが分離する。
【0063】
そして、図12(2)に示す矢印Y71のように、シース205の本体部205bを後方にスライドさせると、先端部205aと本体部205bとは離間し、本体部205bから切開部204は解放され、切開部204がシース205の離間部分から突出するとともに、解放の際の弾性部203の弾性復元にしたがって切開部204が矢印Y72のように、躯体202の側面から離間する方向に移動する。
【0064】
実施の形態1と同様に、この切開部204の移動によって、切開部204の移動軌跡にある生体組織Bが切開され、薬剤が拡散する空間が確保される。躯体202の基端側からルーメン202aを通って送出されてきた薬剤Mは、弾性部203および切開部204の内部ルーメンを経由して、切開部204の薬剤吐出穴207に到達し、矢印Y73のように、切開部204によって切開された空間を介して、空間との境界付近の領域S71の生体組織Bに広く拡散する。また、カテーテル201の生体組織B内への穿刺後、シース205の本体部205bは、体内から引き出される。
【0065】
当接部材208と弾性部203とが当接する当接面208aは、傾斜面となっている。切開部204の移動は当接面208aに接触することで停止するため、当接面208aは、解放後の切開部204の位置を規定して切開部204の躯体202からの離間位置を安定させる機能を有する。
【0066】
この実施の形態2によれば、実施の形態1と同様に、薬剤吐出対象の生体組織の硬さによらず円滑に薬剤を吐出することができるとともに、当接部材208の当接面208aの角度を調整することによって、切開部204の切開領域を生体組織の薬剤吐出対象領域に対応させて柔軟に設定できる。
【0067】
(実施の形態2の変形例1)
次に、実施の形態2の変形例1について説明する。図13は、実施の形態2の変形例1にかかるカテーテルを生体組織に導入した状態で該カテーテルの軸に沿って切断した先端部分の断面図であり、実施の形態2の変形例1にかかるカテーテルを用いた薬剤吐出の方法を説明する図である。図13(1)は、シースが、躯体、弾性部および切開部を、その内部に収容している状態を示す図である。図13(2)は、躯体を前進させた状態を示す図である。図13(3)は、シースの本体部を後方にスライドさせた状態を示す図である。
【0068】
図13(1)に示すように、実施の形態2の変形例1にかかるカテーテル211は、実施の形態2におけるシース205に代えて、先端部215aと基端側まで延伸する本体部215bとに分離可能であるシース215を有する。先端部215aと本体部215bとは、分離面219に塗布された接着剤等によって予め仮止めされている。先端部215a側面には開口216が形成される。先端部215aの先端内部は、当接部材218によって埋められている。
【0069】
図13(1)に示すように、シース215は、弾性部203を屈曲させた状態で、切開部204を、躯体202と分離前のシース215の本体部215bの内壁との間に収容する。躯体202の先端、弾性部203および切開部204は、先端部215aの開口216より十分に後退した位置で収容される。この状態で、カテーテル211は、薬剤吐出対象の生体組織Bに先端が到達するまで穿刺される。
【0070】
続いて、図13(2)に示す矢印Y81のように、シース215の先端部215aが当接部材218の当接面218aに当てつくまで躯体202を前進させる。この結果、弾性部203および切開部204がシース215の先端部215aの開口56から突出するとともに、解放の際の弾性部203の弾性復元にしたがって、切開部204が矢印Y82のように躯体202の側面から離間する方向に移動する。この切開部204の移動によって、切開部204の移動軌跡にある生体組織Bが切開され、薬剤が拡散する空間が確保される。この切開によって薬剤が浸潤する空間が確保できるため、シース215の先端部215aと本体部215bとの分離なしに、この状態で薬剤を投与してもよい。躯体202の基端側からルーメン202aを通って送出されてきた薬剤Mは、弾性部203および切開部204の内部ルーメンを経由して、切開部204の薬剤吐出穴207に到達し、矢印Y83のように、切開部204によって切開された空間を介して、空間との境界付近の領域S81の生体組織Bに広く拡散する。
【0071】
当接部材218と弾性部203とが当接する当接面218aは、傾斜面となっているため、実施の形態2と同様に、当接面218aは、解放後の切開部204の位置を規定して切開部204の躯体202からの離間位置を安定させる機能を有する。
【0072】
続いて、図13(3)に示すように、シース215の本体部215bを矢印Y84のように後方に引くと、先端部215aと本体部215bとの接着が解除され、本体部215bを生体組織内から抜き出すことができる。
【0073】
この実施の形態2の変形例1によれば、実施の形態1と同様に、薬剤吐出対象の生体組織の硬さによらず円滑に薬剤を吐出することができるとともに、当接部材218の当接面218aの角度を調整することによって、切開部204の切開領域を生体組織の薬剤吐出対象領域に対応させて柔軟に設定できる。
【符号の説明】
【0074】
1,11,21,31,41,51,61,201,211 カテーテル
2,2B,12,52,62,202 躯体
2a,12a,52a,62a,202a ルーメン
3,13,53,203,631,632 弾性部
4,4A,14,54,204,641,642 切開部
4a ブレード
5,25,35,45,55,65,205,215 シース
6,16,17,26,36,46,56,66,216 開口
7,7a〜7e,57,207,671,672 薬剤吐出穴
8 ストッパ部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織内に導入されて薬剤を吐出するカテーテルであって、
内部にルーメンを有するとともに細長い形状をなす躯体と、
屈曲可能である弾性部を介して前記躯体と連結する切開部と、
前記躯体が移動可能に挿通されるとともに、前記弾性部を屈曲させた状態で前記切開部を前記躯体との間に収容するシースと、
を備え、
前記切開部は、前記シースが前記躯体に対して移動することによって、前記シースに収容された状態から解放されるとともに、解放の際の前記弾性部の弾性復元にしたがって少なくとも一部が前記躯体の側面から離間する方向に移動するように構成されており、
前記切開部の移動軌跡に対応する空間に薬剤を吐出できる位置に、前記ルーメンに連通する薬剤吐出穴が形成されることを特徴とするカテーテル。
【請求項2】
前記切開部は、前記躯体の先端に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記シースは、先端または側面に開口を有し、
前記切開部は、前記シースが前記躯体に対して基端側に移動することによって、前記開口から突出するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記弾性部は、前記躯体内部のルーメンと連通する内部ルーメンを有し、
前記薬剤吐出穴は、前記弾性部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記弾性部および前記切開部は、前記躯体内部のルーメンと連通する内部ルーメンを有し、
前記薬剤吐出穴は、前記切開部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記薬剤吐出穴は、前記躯体の先端に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記シースは、先端部が分離する構造となっており、
前記シースの先端部は、前記切開部の位置を規定する当接部を有していることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項1】
生体組織内に導入されて薬剤を吐出するカテーテルであって、
内部にルーメンを有するとともに細長い形状をなす躯体と、
屈曲可能である弾性部を介して前記躯体と連結する切開部と、
前記躯体が移動可能に挿通されるとともに、前記弾性部を屈曲させた状態で前記切開部を前記躯体との間に収容するシースと、
を備え、
前記切開部は、前記シースが前記躯体に対して移動することによって、前記シースに収容された状態から解放されるとともに、解放の際の前記弾性部の弾性復元にしたがって少なくとも一部が前記躯体の側面から離間する方向に移動するように構成されており、
前記切開部の移動軌跡に対応する空間に薬剤を吐出できる位置に、前記ルーメンに連通する薬剤吐出穴が形成されることを特徴とするカテーテル。
【請求項2】
前記切開部は、前記躯体の先端に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記シースは、先端または側面に開口を有し、
前記切開部は、前記シースが前記躯体に対して基端側に移動することによって、前記開口から突出するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記弾性部は、前記躯体内部のルーメンと連通する内部ルーメンを有し、
前記薬剤吐出穴は、前記弾性部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記弾性部および前記切開部は、前記躯体内部のルーメンと連通する内部ルーメンを有し、
前記薬剤吐出穴は、前記切開部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記薬剤吐出穴は、前記躯体の先端に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記シースは、先端部が分離する構造となっており、
前記シースの先端部は、前記切開部の位置を規定する当接部を有していることを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図11E】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図11E】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−130627(P2012−130627A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287549(P2010−287549)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(510340023)オリンパスビジネスクリエイツ株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(510340023)オリンパスビジネスクリエイツ株式会社 (4)
【Fターム(参考)】
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