カテーテル
【課題】屈曲性と屈曲時の形状保持性と耐キンク性、および、柔軟性による復元力を兼ね備え、使用性に優れたカテーテルを提供する。
【解決手段】ルーメン21の外周に補強層50が形成されているカテーテル10であり、ルーメン21が内周面に形成されていて、補強層50が外周面に形成されている円筒形の内層20を有している。また、全長の少なくとも一部である基端側で、補強層50の互いに異なる材料からなる第一のコイル51と第二のコイル52が内層20の外周面上に緊密に巻回されている。さらに、本実施の形態のカテーテル10は、補強層50が内周面に形成されている円筒形の外層64を有する。
【解決手段】ルーメン21の外周に補強層50が形成されているカテーテル10であり、ルーメン21が内周面に形成されていて、補強層50が外周面に形成されている円筒形の内層20を有している。また、全長の少なくとも一部である基端側で、補強層50の互いに異なる材料からなる第一のコイル51と第二のコイル52が内層20の外周面上に緊密に巻回されている。さらに、本実施の形態のカテーテル10は、補強層50が内周面に形成されている円筒形の外層64を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーメンの外周に補強層が形成されているカテーテルに関し、特に、補強層が複数の線材を多条巻きしたコイルからなるカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ルーメンの外周に補強層が形成されているカテーテルがあり、特に、補強層が複数の同じ材料製の線材を多条巻きしたコイル状のワイヤからなるカテーテルが開示されている(例えば、特許文献1参照)。このようなコイル状の補強層が形成されたカテーテルでは、柔軟な屈曲性と耐キンク性とが実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−88833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、昨今では、例えば、屈曲性だけでなく復元性にも優れたカテーテル等、様々な特性を備えた製品の開発が求められている。特許文献1のような同一材料の線材を用いて形成された補強層では、カテーテルに様々な特性を持たせるという要求に応えるのは困難であるという課題があった。
【0005】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、様々な特性を備えたカテーテルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のカテーテルは、ルーメンの外周に補強層が形成されているカテーテルであって、互いに異なる材料からなる少なくとも第一のコイルと第二のコイルとが多条に巻回されて補強層の少なくとも一部が形成されている。
【0007】
従って、本発明のカテーテルでは、第一のコイル、および、第二のコイルを互いに異なる材料で形成している。そのため、例えば、屈曲性とその屈曲時の形状保持性、耐キンク性に優れる材料からなる第一のコイルと、柔軟性による復元力に優れる材料からなる第二のコイルとを多条巻きして補強層を形成すれば、互いのコイルの優れた効果を阻害することなく、相乗効果を発揮する。その結果、良好な屈曲性とその屈曲時の形状保持性と耐キンク性、および、柔軟性による復元力の相反する双方の効果を有し、使用性に優れるカテーテルを得ることができる。
【0008】
また、上述のようなカテーテルにおいて、第一のコイルまたは第二のコイルは、少なくとも一方が金属材料からなるものであってもよい。
【0009】
また、上述のようなカテーテルにおいて、第一のコイルは、金属材料からなり、第二のコイルは、樹脂材料からなるものであってもよい。
【0010】
また、上述のようなカテーテルにおいて、第一のコイルまたは第二のコイルは、各々一本の線材が巻回されているか、または、少なくとも一方が複数本の線材を多条に巻回してなるものであってもよい。
【0011】
上述のようなカテーテルにおいて、第一のコイルまたは第二のコイルは、少なくとも一方のコイルが複数本の線材から構成され、複数本の線材は、互いに同種の材料からなるものであってもよい。
【0012】
また、上述のようなカテーテルにおいて、第一のコイルまたは第二のコイルは、少なくとも一方のコイルが複数本の線材から構成され、複数本の線材は、複数の異なる材料であって、さらに、当該コイルとは異なる他のコイルを構成する線材の材料と異なる材料からなるものであってもよい。
【0013】
また、上述のようなカテーテルにおいて、補強層の外周に、樹脂材料からなる外層を有するものであってもよい。
【0014】
また、上述のようなカテーテルにおいて、第二のコイルが、外層の樹脂材料と同種の樹脂材料で形成されているものであってもよい。
【0015】
また、上述のようなカテーテルにおいて、外層と同種の樹脂材料からなる第二のコイルが、樹脂材料からなる外層の内周面に一体に結合しているものであってもよい。
【0016】
また、上述のようなカテーテルにおいて、樹脂材料からなる第二のコイルを構成する線材の本数が、金属材料からなるの第一のコイルを構成する線材の本数よりも少ないものであってもよい。
【0017】
また、上述のようなカテーテルにおいて、補強層の少なくとも第一のコイルは、複数本の線材が多条に巻回されており、補強層の外周に配置した外層の内周面に、樹脂材料からなる第二のコイルが一体に結合し、当該外層と一体に結合している第二のコイルにより隔てられた空間内で、第一のコイルの複数本の線材が軸方向に互いに離間しているものであってもよい。
【0018】
また、上述のようなカテーテルにおいて、第一のコイルの弾性力よりも、第二のコイルの弾性力が大きいものであってもよい。
【0019】
また、上述のようなカテーテルにおいて、第一のコイルが金属材料からなり、第二のコイルが超弾性材料からなるものであってもよい。
【0020】
また、上述のようなカテーテルにおいて、第一のコイルと、超弾性材料からなる第二のコイルとの少なくとも一方が、複数本の線材を多条に巻回してなるものであってもよい。
【0021】
なお、本発明の各種の構成要素は、必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等でもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明のカテーテルでは、互いに異なる材料からなる少なくとも第一のコイルと第二のコイルとが多条に巻回されて補強層の少なくとも一部が形成されている。そのため、各材料の特性を生かし、例えば、屈曲性だけでなく復元力にも優れるといった、様々な要求に対応できるカテーテルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第一の実施形態のカテーテルの先端部分の内部構造を示す模式的な縦断側面図である。
【図2】図1のI−I線断面正面図であって、カテーテルの先端部分の内部構造を示す模式的な縦断正面図である。
【図3】カテーテルの基端部分の内部構造を示す模式的な縦断側面図である。
【図4】カテーテルを湾曲した場合の補強層を示す模式図である。
【図5】第二の実施形態の先端部分の内部構造を示す模式的な縦断側面図である。
【図6】図5のII−II線断面正面図であって、カテーテルの先端部分の内部構造を示す模式的な縦断正面図である。
【図7】第三の実施形態の先端部分の内部構造を示す模式的な縦断側面図である。
【図8】第三の実施形態において、加熱により外層と第二のコイルとを結合した状態を示す模式的な縦断拡大側面図である。
【図9】図7のIII−III線断面正面図であって、カテーテルの先端部分の内部構造を示す模式的な縦断正面図である。
【図10】第四の実施形態のカテーテルの先端部分の内部構造を示す模式的な縦断側面図である。
【図11】図10のIV−IV線断面正面図であって、カテーテルの先端部分の内部構造を示す模式的な縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第一の実施形態)
本発明の第一の実施形態について、図1ないし図4を参照して以下に説明する。なお、本実施の形態および以降の実施形態では、図示するように前後左右上下の方向を規定して説明する。しかし、これは構成要素の相対関係を簡単に説明するために便宜的に規定するものである。従って、本発明を実施する製品の製造時や使用時の方向を限定するものではない。
【0025】
<カテーテルの構成>
以下、本実施の形態のカテーテル10の構成を説明する。血管などの体腔に挿入されたカテーテル10の良好な屈曲形状保持性と耐キンク性、および、柔軟性による復元力については後述する。
【0026】
本実施の形態のカテーテル10は、図1ないし図3に示すように、ルーメン21の外周に補強層50が形成されているカテーテル10であって、第一のコイル51と、第二のコイル52とが、多条に巻回されて補強層50の少なくとも一部が形成されている。また、第一のコイル51と第二のコイル52とは、互いに異なる材料で形成されている。ここで、第一のコイル51と第二のコイル52とが多条に巻回されているとは、それぞれ一本または複数本からなる第一のコイル51および第二のコイル52を一つの単位として、これらの第一のコイル51と第二のコイル52とがループ状に螺旋巻回されていることをいう。言い換えると、本実施の形態のカテーテル10では、一単位として、それぞれ螺旋状に巻回された7本(七条)の第一のコイル51と1本(一条)の第二のコイル52との8本(八条)が、カテーテル10の軸心に沿って配置されている。
【0027】
より具体的には、本実施の形態のカテーテル10では、第一のコイル51を、金属材料であるステンレス鋼(SUS)で形成し、第二のコイル52を、ニッケルとチタンの合金(NiTi合金)、例えば、ニチノール(NITINOL:登録商標)で形成している。なお、本実施形態において、第一のコイル51が金属材料からなるとは、第一のコイル51が通常金属材料(非形状記憶合金)で形成されていることを意味する。ここで、SUSの特性としては、剛性に優れるが、降伏し易いため、大きく変形させると復元力に乏しい。例えば、カテーテル10を90度近く屈曲させた場合、SUSのみの補強層50を用いた場合には、完全には元の形状には復元できないことがある。特に、体腔内での復元や屈曲方向の変更は困難となり得る。一方、NiTi合金の特性としては、いわゆる超弾性の形状記憶合金であり、柔軟であるが、降伏しにくいので、大きく変形させても弾性的に復元する。したがって、第一のコイル51で屈曲させたカテーテル10を、特に体腔内で復元や屈曲方向の変更を第二のコイル52の弾性力によって良好に行うことができる。
【0028】
また、本実施の形態の第一のコイル51は、SUS製の七条の線材(ワイヤ)第一のコイル51をカテーテル10の軸心方向(図1の上下方向)に沿って並べて配置したものである。また、本実施の形態の第二のコイル52は、NiTi合金製の一条の線材をカテーテル10の軸心方向に沿って並べて配置したものである。七条の第一のコイル51と一条の第二のコイル52とは、各々帯状に巻回されている。図1では、第一のコイル51を点線で示し、第二のコイル52を一点鎖線で示している。以下、カテーテル10の軸心方向の長さを軸長という。
【0029】
また、本実施の形態のカテーテル10は、ルーメン21が内周面に形成されていて、補強層50が外周面に形成されている円筒形の内層20を有している。そして、図3に示すように、全長の少なくとも一部である基端側で、補強層50のそれぞれ異なる材料からなる第一のコイル51、および、第二のコイル52が内層20の外周面上に緊密に巻回されている。さらに、本実施の形態のカテーテル10は、補強層50が内周面に形成されている円筒形の外層64を有する。
【0030】
また、本実施の形態のカテーテル10では、図1に示すように、全長の少なくとも一部である先端側で、補強層50の第一のコイル51、および、第二のコイル52が外層64の内周面上に巻回されている。
【0031】
本実施の形態のカテーテル10では、先端側では、補強層50の第一のコイル51および第二のコイル52が所定間隔でピッチ巻回されている。そのピッチは第一のコイル51、第二のコイル52の線径の数倍であり、このような巻回作業は容易である。
【0032】
また、本発明のカテーテル10では、より具体的には、図1および図2に示すように、大径のルーメン21が形成されている大径樹脂管からなる内層20と、内層20の少なくとも遠位端部15で外側に位置する少なくとも一対の小径の操作線細管30a、30bと、操作線細管30a、30bにスライド自在に挿通されていて先端部が少なくともカテーテル10の遠位端部15に連結されているスライド操作線40a、40bと、内層20と操作線細管30a、30bとを一体としてコイル状に巻回されている補強層50と、を有する。
【0033】
また、補強層50は、図1に示すように、シース16の遠位端部15などでは屈曲を容易とするために第一のコイル51と第二のコイル52とが所定間隔を介して巻回されている。シース16の近位端部17などでは、図3に示すように、剛性を向上させるために第一のコイル51と第二のコイル52とが緊密に巻回されている。なお、図3では、第二のコイル52のみ一点鎖線で示している。
【0034】
なお、内層20と外層64との中間に位置する補強層50の間隙は、樹脂からなる補強樹脂層60で密閉されており、これでシース16が形成されている。このシース16は、内視鏡を通じて、または直接に、体腔内に挿通される可撓性の管状体であり、腹腔動脈などの血管、および肝動脈枝や内頚動脈枝などの末梢血管に挿通される。
【0035】
内層20には、フッ素系の熱可塑性ポリマーが広く用いられる。一例として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)などを用いることができる。このように、内層20にフッ素系樹脂を用いることにより、カテーテル10のルーメン21を通じて造影剤や薬液などを患部に供給する際のデリバリー性が良好となる。
【0036】
補強樹脂層60には熱可塑性ポリマーが広く用いられる。一例として、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)のほか、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)、ナイロンエラストマー、ポリウレタン(PU)、エチレン−酢酸ビニル樹脂(EVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)またはポリプロピレン(PP)などを用いることができる。
【0037】
外層64は、カテーテル10の最外層として、潤滑処理が外表面に施された親水性の樹脂層からなる。外層64には、ポリビニルアルコール(PVA)やポリビニルピロリドンなどの親水性材料を用いることができる。
【0038】
なお、本実施の形態のカテーテル10では、フッ素コート層などからなる内層20の外側にポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などからなる別体の操作線細管30a、30bが配置されている。この操作線細管30a、30bと内層20とに補強層50の第一のコイル51および第二のコイル52が巻回されている。
【0039】
ここで、本実施の形態のシース16の代表的な寸法を例示する。シース16の最外径は直径1mm未満、具体的には700〜900μm程度である。内層20の内径は400〜600μm程度、補強樹脂層60の厚さは100〜150μm程度、第一のコイル51および第二のコイル52の直径は20〜100μmである。また、操作線細管30a、30bの内径は40〜100μm、スライド操作線40a、40bの太さは30〜60μmである。
【0040】
また、上記実施形態では、補強層50の第一のコイル51、第二のコイル52として、それぞれSUS、NiTi合金を用いている。しかし、本発明がこれに限定されることはない。少なくとも一方が金属材料であることが好ましい。また、一方が金属材料で他方が樹脂材料であることが、より好ましい。具体的には、第一のコイル51として、耐腐食性被覆した鋼鉄線、チタンもしくはチタン合金などの金属線を用いてもよい。また、第二のコイル52として、上記実施形態では、超弾性のNiTi合金を用いているが、弾性力を有するものであればよく、本発明がこれに限定されることはない。例えば、第二のコイル52として、ナイロン系樹脂材料やポリエチレン系材料等を用いてもよい。また、外層64や内層20と同種の樹脂材料を用いてもよい。なお、補強層50の第一のコイル51、第二のコイル52の断面形状は特に限定されず、正円形、楕円形、正方形、長方形、多角形、等でよいが、本実施の形態では一般的な正円形となっている。
【0041】
また、第一のコイル51および第二のコイル52がフラットワイヤや角ワイヤであって、かつ第二のコイル52の線幅が第一のコイル51の線幅より幅広であってもよい(ともに図示せず)。本実施の形態では、第一のコイル51および第二のコイル52を正円形であって、同幅なものとしている。
【0042】
操作線細管30a、30bは、内層20の外周面に沿って補強層50で保持されている。すなわち、補強樹脂層60および補強層50の内側には、操作線細管30a、30bが長手方向に延在して埋設されており、それぞれにスライド操作線40a、40bがスライド自在に挿通されている。
【0043】
また、操作線細管30a、30bはシース16に対して一部または全部が螺旋状に設けられて長手方向成分とともに周回方向成分を含んでもよい。以下、スライド操作線40aを第一のスライド操作線、スライド操作線40bを第二のスライド操作線という場合がある。
【0044】
本実施の形態のカテーテル10においては、図2に示すように、スライド操作線40a、40bがそれぞれ挿通された一対の操作線細管30a、30bは、内層20の周囲に対向して配置されている。すなわち、本実施の形態では、カテーテル10の軸心を挟んで操作線細管30aと操作線細管30bとは180度対向して形成されている。そして、操作線細管30aにはスライド操作線40aが挿通され、操作線細管30bにはスライド操作線40bが挿通されている。
【0045】
操作線細管30a、30bは、内層20を構成する樹脂材料と共に押し出して、内層20の外周面上に一体に形成することができる。操作線細管30a、30bの材料としては、補強樹脂層60の樹脂材料よりも耐熱性に優れ、またスライド操作線40a、40bとの摺動性の観点から、例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン(PSF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、などのフッ素系高分子材料を好適に用いることができる。
【0046】
スライド操作線40a、40bを操作線細管30a、30bに挿通する方法としては、特に限定されることはなく、種々な方法を採用することができる。例えば、予め操作線細管30a、30bが埋設されたシース16に対して、その一端側からスライド操作線40a、40bを挿通してもよい。または、予めスライド操作線40a、40bが挿通された操作線細管30a、30bを内層20の樹脂材料と共に押し出して、シース16を成形してもよい。
【0047】
スライド操作線40a、40bの具体的な材料としては、例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、PIもしくはPTFEなどの高分子ファイバー、または、SUS、耐腐食性被覆した鋼鉄線、チタンもしくはチタン合金などの金属線を用いることができる。
【0048】
なお、操作線細管30a、30bが予め埋設されたシース16に対してスライド操作線40a、40bを挿通する場合など、スライド操作線40a、40bに耐熱性が求められない場合には、当該スライド操作線40a、40bの材料として、上記各材料に加えて、ポリフッ化ビニリデン、高密度ポリエチレン(HDPE)またはポリエステルなどを用いることもできる。
【0049】
図1に示すように、シース16の遠位端部15には、X線等の検出波が不透過な材料からなるリング状のマーカー66が設けられている。具体的には、マーカー66には白金やタングステンなどの金属材料を用いることができる。本実施の形態のマーカー66は、内層20の外側であって外層64の内側に設けられている。
【0050】
スライド操作線40a、40bの先端部分(遠位端部15部分)41は、カテーテル10の遠位端部15に固定されている。スライド操作線40a、40bの先端部分41を遠位端部15に固定する態様は特に限定されない。
【0051】
例えば、スライド操作線40a、40bの先端部分41をマーカー66に締結してもよく、シース16の遠位端部15に溶着してもよい。または、接着剤によりマーカー66またはシース16の遠位端部15に接着固定してもよい。本実施の形態では、スライド操作線40a、40bの先端部分41は補強樹脂層60の樹脂に埋設されている。
【0052】
シース16の遠位端部15とは、シース16の被験者の身体に挿入される先端側の所定領域をいう。また、シース16の近位端部17とは、操作者に操作される末端側の所定領域をいう。
【0053】
同様に、スライド操作線40a、40bの先端部分41とは、スライド操作線40a、40bの先端を含む所定領域をいい、スライド操作線40a、40bの基端部分とは、スライド操作線40a、40bの基端を含む所定領域をいう。
【0054】
本実施の形態のカテーテル10は、シース16の近位端部17の近傍で一対の操作線細管30a、30bから引き出された一対のスライド操作線40a、40bを手動操作するスライド操作機構(図示せず)が設けられている。
【0055】
本実施の形態のカテーテル10において、第一のスライド操作線40aまたは第二のスライド操作線40bを牽引した場合には、シース16の遠位端部15に張力が与えられて、当該スライド操作線40a、40bが挿通されている側に遠位端部15が屈曲する。ここで、シース16が屈曲するとは、シース16の一部または全部が湾曲または折れ曲がることをいう。また、耐キンク性とは、シース16の屈曲時にシース16が潰れて内腔が閉塞するのを防止することをいう。
【0056】
<カテーテルの性能>
以上のように、第一のコイル51を剛性に優れる七条のSUSで形成し、第二のコイル52を弾性に優れる一条の超弾性のNiTi合金で形成することにより、双方の優れた性能を損なうことなく、双方の利点を発揮することができる。そのため、第一のコイル51の柔軟な屈曲性により、屈曲時の形状保持性と耐キンク性が得られ、第二のコイル52の良好な弾性力により、復元力にも優れた、使用性の良好なカテーテル10を提供することができる。特に、体腔内でカテーテル10を大きく屈曲させた場合でも、元の形状の良好に復元できるとともに、屈曲方向の変更も柔軟かつ自在に行うことができる。
【0057】
さらに、本実施の形態のカテーテル10では、七条の第一のコイル51と一条の第二のコイル52とが多条に巻回されている。そのため、第一のコイル51と第二のコイル52とを、X線透過率の異なる材料で形成することにより、七条の第一のコイル51に隔てられた第二のコイル52のループ間距離P(図1を参照)が非ゼロとなる。そして、このループ間距離Pをカテーテル10の軸心方向に沿って観察することで、カテーテル10の形状に関してさらに多くの情報を得ることができる。
【0058】
図4は、複数の検出位置(a)から(c)においてX線を検出する状態を示す模式図である。カテーテル10は上向きに湾曲している。ここで、カテーテル10の湾曲方向(図中、上向き)に対してX線等の検出波での検出方向が一致した場合にも、本実施の形態によればカテーテル10の湾曲方向を知得することができる。
【0059】
さらに、第一のコイル51のシルエットとの干渉により、かりに第二のコイル52のループが観察できなかった場合でも、第二のコイル52のループ間距離Pの変化に着目することで、カテーテル10の湾曲形状を知得することができる。
【0060】
さらに、本実施の形態のカテーテル10は、ルーメン21が内周面に形成されていて補強層50が外周面に形成されている円筒形の内層20を有している。そして、全長の少なくとも一部である基端側で補強層50の複数種類の第一のコイル51、第二のコイル52が内層20の外周面上に緊密に巻回されている。このため、カテーテル10の基端側を強固に補強することができ、人体への挿入を容易とすることができる。
【0061】
さらに、検出波が磁気共鳴からなってもよく、超音波からなってもよい。これらの場合、当然ながら第一のコイル51、第二のコイル52は磁気や超音波の反射率や透過率が相違するものからなる。
【0062】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。例えば、上記形態では操作線細管30a、30bが樹脂で形成されていることを例示した。しかし、操作線細管が極細の金属ワイヤまたは樹脂ワイヤを巻回した細管コイルで形成されていてもよい(図示せず)。
【0063】
また、上記実施形態では7本(七条)の線材から構成される第一のコイル51と1本(一条)の線材から構成される第二のコイル52とが多条巻きされていることを例示した。しかし、このような多条巻きの本数や断面形状は各種に組み合わせることができ、第二のコイル52の線材も複数本としてもよい。また、第一のコイル51の線材を1本とし、第二のコイル52の線材を複数本としてもよい。または、第一のコイル51および第二のコイル52の双方を1本のみの線材で構成してもよいし、双方の線材の本数を同数で構成してもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、第一のコイル51と第二のコイル52との材料が相違することを例示した。しかし、このような第一のコイル51と第二のコイル52とが同一材料で形成されていてもよい。この場合、表面処理が相違することにより、剛性や弾性力が異なり、良好な柔軟性により屈曲性に優れ、屈曲時の形状保持性と耐キンク性にも優れ、さらには、良好な弾力性により、復元力にも優れた使用性の良好なカテーテル10を得ることができる。また、X線の透過率や反射率を相違させて、双方の区別を容易に行うこともできる。
【0065】
さらに、上記実施形態では、全長の少なくとも一部である基端側で補強層50の複数種類の第一のコイル51と第二のコイル52とが内層20の外周面上に緊密に巻回されている。そして、全長の少なくとも一部である先端側で補強層50の第一のコイル51と第二のコイル52とが外層64の内周面上にピッチ巻回されていることを例示した。しかし、全長で補強層50の第一のコイル51および第二のコイル52が内層20の外周面上に緊密に巻回されていてもよく、全長で補強層50の第一のコイル51と第二のコイル52とが外層64の内周面上にピッチ巻回されていてもよい。また、基端側と先端側とで第一のコイル51と第二のコイル52との種類が相違してもよい(図示せず)。
【0066】
また、上記実施形態では、操作線細管30a、30bから前方に突出したスライド操作線40a、40bが補強樹脂層60の樹脂に埋設されて内層20の遠位端部に連結されていることを例示した。しかし、操作線細管30a、30bの先端側の少なくとも一部が細管コイル(図示せず)からなってもよい。
【0067】
このような細管コイルは、極細の金属ワイヤまたは樹脂ワイヤを操作線細管30a、30bの樹脂部分と同径に巻回した構造からなり、例えば、20〜200mmの全長に形成される。このようなカテーテル(図示せず)では、細管コイルの部分ではシース16が容易に屈曲するので、シース16の遠位端部15の屈曲性による屈曲時の形状保持性を向上させることができる。また、いずれの形状に屈曲させても、超弾性を有するNiTi合金の復元力により、シース16を、直線形状など元の形状に良好に復元させることができる。
【0068】
また、上述したカテーテル10では、マーカー66が配置されている位置よりも、後方に操作線細管30a、30bの先端部が補強樹脂層60に埋設されていることを想定した。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、マーカー66が配置されている位置よりも、前方に操作線細管30a、30bの先端部が補強樹脂層60に埋設されていてもよい(図示せず)。
【0069】
さらに、上記実施形態では内層20の内部が直接に開口していることを例示した。しかし、このような内層20の内周面にフッ素コート(PTFE)などの層膜を、15μmなどの層厚で形成してもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、一対のスライド操作線40a、40bを有することで、シース16の遠位端部15を二方向に偏向させられることを例示した。しかし、二対のスライド操作線40a、40bをカテーテル10の軸心から直交した位置に配置することで、シース16の遠位端部15を上下左右の四方向に偏向させることもできる(図示せず)。また。上記実施形態では、カテーテル10の軸心を挟んでスライド操作線40aと操作線細管30a、および、スライド操作線40bと操作線細管30bとは180度対向して2組形成されている。しかし、本発明がこれに限定されることはなく、120度間隔で3組の操作線と操作線細管とを形成してもよいし、4組以上形成してもよい。
【0071】
なお、上記実施形態では、第一のコイル51としてSUS等の剛性に優れる材料を用い、第二のコイル52としてNiTi合金等の超弾性材料、または超弾性材料よりは弾性力の低い樹脂等の通常の弾性力を有する弾性材料を用いている。しかし、本発明がこれに限定されることはない。例えば、弾性力を重視する場合は、第一のコイル51としてNiTi合金等の超弾性材料、または樹脂等の弾性材料を用い、第二のコイル52としてSUS等の剛性に優れる材料を用いてもよい。このような構成としても、第二のコイル52の良好な剛性と柔軟性により、自在な屈曲性と屈曲時の形状保持性と耐キンク性、および、第一のコイル51の良好な弾力性により、復元力に優れた使用性の良好なカテーテル10を得ることができる。また、例えば、内側に巻回すコイル層に超弾性材料を使用し、その外側に巻回すコイル層に通常の弾性力を有する樹脂材料を使用した場合、超弾性材料の復元性と樹脂材料の柔軟性との相乗効果により、良好な曲げ耐久性を得ることができる。
【0072】
ここで、超弾性材料とは、強い負荷がかかって変形しても、除荷時には元の状態に復元する能力に優れている材料をいう。超弾性材料としては、金属材料と樹脂材料とが存在する。超弾性金属材料は、一般的に形状記憶合金ともよばれている。形状記憶合金は、弾性力に富み、さまざまに変形を加えられても、弾性復元力によって予め設定(記憶)された所定の状態に復元する性質を有する。具体的には、形状記憶合金のうち、JIS G3602に規定される硬鋼線材よりもヤング率が低く、降伏点歪みが大きい材料が好適に用いられる。
【0073】
超弾性金属材料である形状記憶合金としては、より具体的には、Ni−Ti系形状記憶合金、Cu系形状記憶合金、および、Fe系形状記憶合金等を用いることができる。その中でも、最も扱いやすく、耐食性や生体適合性に優れるNi−Ti系形状記憶合金を用いるのがより好ましい。なお、Ni−Ti系形状記憶合金と、Cu系形状記憶合金とは、熱弾性型マルティンサイト変態を示す合金系に属するため、この合金系に属さないFe系形状記憶合金と比較して、熱ヒステリシス幅が狭く、カテーテル10の補強層50に用いるのに好適である。
【0074】
なお、Ni−Ti系形状記憶合金としては、前述したニチノール(登録商標)が最も好ましいが、Ni−Ti−X(X=Fe,Cu,V,Co等)なども好適に用いることができる。また、Cu系形状記憶合金としては、Cu−Zn−X(X=Al、Fe等)合金などを好適に用いることができる。
【0075】
また、超弾性樹脂材料としては、例えば、ポリサルホン樹脂(PSU)、ポリエーテルサルホン樹脂(PESU)、ポリフェニルサルホン樹脂(PPSU)等のサルホン系超弾性樹脂、グリルアミド樹脂等のナイロン系超弾性樹脂等を好適に用いることができる。
【0076】
(第二の実施形態)
本発明の第二の実施形態について、図5および図6を参照して以下に説明する。本実施の形態のカテーテル10は、上記第一の実施形態と同様に、ルーメン21の外周に補強層50が形成されているカテーテル10であって、第一のコイル51と、第二のコイル52とが、多条に巻回されて補強層50の少なくとも一部が形成されている。また、第一のコイル51と第二のコイル52とは、互いに異なる材料で形成されている。本実施の形態では、さらに、第一のコイル51、第二のコイル52とは異なる材料で形成された第三のコイル53を用いている。すなわち、同種の材料からなる五条の第一のコイル51(図5に点線で示している)と、一条の第ニのコイル52(図5に二点鎖線で示している)を挟んで異種材料の二条の第三のコイル53(図5に一点鎖線で示している)からなる、総数八条の線材を一単位として、それぞれ内層20の外周に螺旋状にピッチ巻きし、カテーテル10の軸心に沿って補強層50が配置されている。また、補強層50の第一のコイル51、第二のコイル52、第三のコイル53の断面形状も、上記第一の実施形態と同様に特に限定されず、正円形、楕円形、正方形、長方形、多角形、等でよいが、本実施の形態では一般的な正円形となっている。
【0077】
ここで、同種の材料からなる線材とは、本明細書では、例えば、第一のコイル51に用いられる線材がすべて同じSUSからなる線材である、第二のコイルに用いられる線材が、すべて同じNiTi合金からなる線材である、など、同一の材料で形成されていることを意味する。また、異なる材料とは、例えば、第一のコイル51として、SUSの線材と銅の線材を用いて構成すること等を意味する。したがって、一本の線がSUSと銅とを繋ぎ合わせて形成されていることを意味するものではない。
【0078】
また、第一のコイル51および第二のコイル52がフラットワイヤや角ワイヤであって、かつ第二のコイル52の線幅が第一のコイル51の線幅より幅広であってもよい(ともに図示せず)。本実施の形態では、上記第一の実施形態と同様に、第一のコイル51および第二のコイル52を正円形であって、同幅なものとしている。
【0079】
また、本実施の形態のカテーテル10は、ルーメン21が内周面に形成されていて補強層50が外周面に形成されている円筒形の内層20を有している。さらに、本実施の形態のカテーテル10は、補強層50が内周面に形成されている円筒形の外層64を有する。各部材の材料や作用は、上記第一の実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0080】
また、図5および図6に示すように、大径のルーメン21が形成されている大径樹脂管からなる内層20と、内層20の少なくとも遠位端部15で外側に位置する少なくとも一対の小径の操作線細管30a、30bと、操作線細管30a、30bにスライド自在に挿通されていて先端部が少なくともカテーテル10の遠位端部15に連結されているスライド操作線40a、40bとを有する。これらの材料や形成方法、動作は、第一の実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0081】
また、補強層50は、図5に示すように、シース16の遠位端部15などでは屈曲を容易とするために、第一のコイル51、第二のコイル52および第三のコイル53が所定間隔(ピッチ)を介して巻回されている。また、シース16の近位端部17などでは、図示はしないが、剛性を向上させるために第一のコイル51、第二のコイル52および第三のコイル53が緊密に巻回されていてもよい。
【0082】
なお、内層20と外層64との中間に位置する補強層50の間隙は、樹脂からなる補強樹脂層60で密閉されており、これでシース16が形成されている。このシース16の作用、寸法等は、上記第一の実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0083】
上記第一のコイル51の材料としては、上記第一の実施形態と同様に、剛性に優れるSUSを用いることで、カテーテル10に良好な剛性と柔軟性を持たせ、屈曲性と屈曲時の形状保持性および耐キンク性を向上させている。なお、第一のコイル51の材料は、SUSに限定されることはなく、剛性に優れ、コイル状とした際に柔軟性に優れていれば他の材料を用いてもよい。具体的には、上記第一の実施形態で記載した材料と同様のものを用いることができる。
【0084】
また、第二のコイル52としては、上記第一の実施形態と同様に、超弾性力を有するNiTi合金を用いることで、カテーテル10の弾力性を向上させ、優れた復元力を持たせている。なお、第二のコイル52は、NiTi合金に限定されることはなく、超弾性力あるいは通常の弾性力を有し、復元性に優れていれば他の材料を用いてもよい。具体的には、上記第一の実施形態で記載した材料と同様のものを用いることができる。
【0085】
一方、上記第二のコイル52を挟んで配置される第三のコイル53としては、通常の弾力性を有する樹脂材料等を用いることが好ましい。具体的には、例えば、ナイロン系樹脂やポリエチレン系樹脂等を用いることができる。特に、第二のコイル52よりも弾性力が低い材料を用いることがより好ましい。
【0086】
このように、剛性を有する第一のコイル51と第二のコイル52との間に、第二のコイル52よりも弾性力の低い第三のコイル53を介在させることにより、剛性材料から徐々に弾性力の強い材料となる。また、超弾性材料から徐々に弾性力が弱くなって剛性の材料となる。したがって、第三のコイル53によって、屈曲性と屈曲時の形状保持性と復元性という、相反する特性の緩衝的な役目を果たし、良好な柔軟性による自在な屈曲性、剛性による屈曲時の形状保持性と耐キンク性、および、良好な弾力性による復元力のバランスを取り易いものとなる。そして、使用時において、屈曲が容易であり、その屈曲状態を良好に維持でき、屈曲を解除すると、元の直線的な形状に良好に復元するような、使用性に優れたカテーテル10を得ることができる。
【0087】
なお、本実施の形態でも、第一のコイル51を剛性材料で形成し、第二のコイル52を超弾性材料で形成し、第三のコイル53を通常の弾性材料で形成しているが、本発明がこれに限定されることはない。例えば、第一のコイル51を超弾性材料で形成し、第二のコイル52を剛性材料で形成し、これを挟む第三のコイル53を、第一のコイル51より弾力性が低く、第二のコイル52より剛性が低い中間的な材料で形成して、緩衝材の要素を持たせてもよい。この構成では、より弾力性に優れたカテーテル10を得ることができる。
【0088】
(第三の実施形態)
本発明の第三の実施形態について、図7ないし図9を参照して以下に説明する。本実施の形態のカテーテル10の基本的構成や動作は、上記第一、第二の実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。以下、主に上記第一、第二の実施形態と異なる点について説明する。なお、第一のコイル51として三条のSUSと、第二のコイル52として一条の樹脂性材料(詳細は後述する)とが、合計四条で内層20の外周にピッチ巻きされて補強層50を構成している。図7には、樹脂材料製の第二のコイル52のみ点線で示している。
【0089】
上記第一、第二の実施の形態では第一のコイル51および第二のコイル52が同径であることを例示した。しかし、本実施の形態では、第二のコイル52の線径が第一のコイル51の線径より大径である。また、第二のコイル52は、外層64を形成する樹脂材料と同種の樹脂材料で形成され、内層20と第二のコイル52とが結合している。また、本実施の形態では、スライド操作線40a、40bの先端部分41、およびマーカー66は、補強樹脂層60の樹脂に埋設されている。
【0090】
ここで、同種の樹脂材料とは、同一の樹脂材料であることは勿論、異なる樹脂材料であっても、主成分が同じであったり、ガラス転移温度や融点が同じかほぼ同じで、互いに結合し易いものを含むことを意味する。例えば、一方が低密度ポリエチレンで、他方が高密度ポリエチレンであるなど、双方がポリエチレン系樹脂であれば、同種の樹脂材料であるとする。また、双方が低密度、中密度、または、高密度ポリエチレンであっても、フィラーや触媒が異なるなど添加物が異なっていたり、成分の配合割合が異なったりしていても同種の樹脂材料であるとする。その他、双方がポリエチレン系樹脂である、ナイロン系樹脂である、ポリビニル系樹脂である、ポリプロピレン系樹脂である、ポリスチレン系樹脂である、ポリ塩化ビニル系樹脂である、等であっても同種の樹脂材料とする。また、モノマーであっても、ポリマーであっても同種の樹脂材料とする。
【0091】
なお、外層64および第二のコイル52の材料としては、上述したように同種であって双方が結合可能であれば、特に限定はないが、外層64は、カテーテル10の最外層として、潤滑処理が外表面に施された親水性の樹脂層が好ましい。したがって、第一の実施形態で述べたように、外層64と第二のコイル52の材料としては、ポリビニルアルコール(PVA)やポリビニルピロリドンなどの親水性材料を用いることが好ましい。
【0092】
そして、図7に示すように、補強層50は、遠位端部15側では、所定間隔で三条の第一のコイル51と一条の第二のコイル52とが、所定間隔を介して多条巻きされている。また、シース16の近位端部17などでは、図示はしないが、剛性を向上させるために第一のコイル51と第二のコイル52とが緊密に巻回されていてもよい。
【0093】
また、外層64を配置した後、または、外層64を形成する際に、加熱により、図8、図9に示すように、第二のコイル52を溶融し、外層64と結合する。なお、第二のコイル52は、外層64とは結合しているが、内層20とは必ずしも結合する必要はない。しかし、内層20とも結合させることにより、後述するように、第一のコイル51の軸方向への過剰な移動を良好に抑制することができる。
【0094】
このように、外層64と第二のコイル52とを結合することにより、第二のコイル52の軸方向への移動が抑制される。さらに、図7、図8、図9に示すように、操作線細管30a、30bと外層64との間に形成される補強層50を配置する間隙には、第二のコイル52により隔てられた空間70が形成される。そして、この空間70内では、二条のSUSからなる第一のコイル51が、ルーメン21の軸方向に移動可能となる。
【0095】
以上のように構成された第三の実施形態のカテーテル10では、金属製の第一のコイル51の剛性により、コイル状とした際に良好な柔軟性を有し、屈曲性と屈曲時の形状保持性と耐キンク性に優れたものとなる。また、外層64に結合した樹脂性の第二のコイル52の弾性力の均一性が保持され、復元力にも優れたものとなる。さらには、第一のコイル51が第二のコイル52で隔てられた空間70内でルーメン21の軸方向に自在に移動可能であるから、より柔軟かつ微細にカテーテル10を屈曲させることができる。また、第二のコイル52が外層64に結合して空間70が隔てられているため、第一のコイル51が過剰に軸方向に移動することがなく、バランスの良い屈曲が可能であるとともに、復元性を損なうこともない。したがって、使用性に優れたカテーテル10を提供することができる。
【0096】
(第四の実施形態)
本発明の第四の実施形態について、図10および図11を参照して以下に説明する。本実施の形態のカテーテル10の基本的構成や動作は、上記第一〜第三の実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。以下、主に上記第一、第二の実施形態と異なる点について説明する。なお、図10では、第一のコイル51を点線で示し、第二のコイル52を一点鎖線で示している。
【0097】
上記各実施の形態では第一のコイル51を構成する線材の本数が、第二のコイル52を構成する線材の本数よりも多いことを例示した。しかし、本実施の形態では、第一のコイル51と第二のコイル52とを、4本(4条)ずつ同数本を用いている。そして、これらを一単位として、それぞれ内層20の外周に螺旋状に多条巻きすることにより、カテーテル10の軸心に沿って補強層50が配置されている。また、本実施の形態でも、補強層50の第一のコイル51、第二のコイル52の断面形状は、特に限定されず、正円形、楕円形、正方形、長方形、多角形、等でよいが、本実施の形態では一般的な正円形となっている。
【0098】
また、第一のコイル51および第二のコイル52がフラットワイヤや角ワイヤであって、かつ第二のコイル52の線幅が第一のコイル51の線幅より幅広であってもよい(ともに図示せず)。本実施の形態では、上記各実施の形態と同様に、第一のコイル51および第二のコイル52を正円形であって、同幅なものとしている。
【0099】
また、本実施の形態のカテーテル10は、ルーメン21が内周面に形成されていて補強層50が外周面に形成されている円筒形の内層20を有している。そして、図10に示すように、全長の少なくとも一部である基端側で、補強層50のそれぞれ異なる材料からなる第一のコイル51、および、第二のコイル52が内層20の外周面上に緊密に巻回されている。さらに、本実施の形態のカテーテル10は、補強層50が内周面に形成されている円筒形の外層64を有する。また、内層20と外層64との中間に位置する補強層50の間隙は、樹脂からなる補強樹脂層60で密閉されている。各部材の材料や作用は、上記第一、第二の実施形態等と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0100】
以上のように構成された第四の実施形態のカテーテル10では、金属製の第一のコイル51の剛性と柔軟性により、良好な屈曲性と屈曲時の形状保持性と耐キンク性とに優れ、樹脂製の第二のコイル52の弾力性により、復元力に優れたものとなる。さらには、第一のコイル51と第二のコイル52とが同数本で同径の線材で形成されているため、補強層50における第一のコイル51と第二のコイル52との表面積も同一で広面積となる。そのため、屈曲性と屈曲時の形状保持性と耐キンク性、および、柔軟性による復元力を、よりバランスよく向上させることができる。したがって、使用性に優れたカテーテル10を得ることができる。
【0101】
以上、各実施例では、互いに異なる材料からなる第一のコイル51と第二のコイルとが多条巻きされた補強層50、および、互いに異なる材料からなる第一のコイル51と第二のコイル52と第三のコイル53とが多条巻きされた補強層50について述べている。しかし、柔軟な屈曲性と復元力とを兼ね備えたカテーテル10が得られるならば、本発明がこれに限定されることはなく、互いに異なる材料からなる四以上のコイルを構成する線材がそれぞれ多条巻きされた補強層50であってもよい。また各コイルが一本の線材から構成されるものであってもよいし、複数本の線材から構成されるものであってもよい。また、各コイルにおいて、同じコイルに属していても、他のコイルの線材と異なり、かつコイル内でもさらに異なる線材を用いてもよい。
【0102】
なお、上記各実施の形態では、操作線細管30a、30bと、操作線細管30a、30bにスライド自在に挿通されているスライド操作線40a、40bと、を有し、能動的に操作するカテーテル10を例示しているが、本発明がこれに限定されることはない。例えば、体内にガイドワイヤを挿通し、このガイドワイヤに追随するように血管に挿入して、受動的に患部まで到達させるカテーテル10に、互いに異なる材料からなる少なくとも第一のコイル51と第二のコイル52とが多条に巻回された補強層50を用いてもよい。
【0103】
なお、当然ながら、上述した実施の形態および複数の変形例は、その内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。また、上述した実施の形態および変形例では、各部の構造などを具体的に説明したが、その構造などは本発明を満足する範囲で各種に変更することができる。
【符号の説明】
【0104】
10 カテーテル
20 内層
21 ルーメン
50 補強層
51 第一のコイル
52 第二のコイル
53 第三のコイル
64 外層
70 空間
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーメンの外周に補強層が形成されているカテーテルに関し、特に、補強層が複数の線材を多条巻きしたコイルからなるカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ルーメンの外周に補強層が形成されているカテーテルがあり、特に、補強層が複数の同じ材料製の線材を多条巻きしたコイル状のワイヤからなるカテーテルが開示されている(例えば、特許文献1参照)。このようなコイル状の補強層が形成されたカテーテルでは、柔軟な屈曲性と耐キンク性とが実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−88833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、昨今では、例えば、屈曲性だけでなく復元性にも優れたカテーテル等、様々な特性を備えた製品の開発が求められている。特許文献1のような同一材料の線材を用いて形成された補強層では、カテーテルに様々な特性を持たせるという要求に応えるのは困難であるという課題があった。
【0005】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、様々な特性を備えたカテーテルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のカテーテルは、ルーメンの外周に補強層が形成されているカテーテルであって、互いに異なる材料からなる少なくとも第一のコイルと第二のコイルとが多条に巻回されて補強層の少なくとも一部が形成されている。
【0007】
従って、本発明のカテーテルでは、第一のコイル、および、第二のコイルを互いに異なる材料で形成している。そのため、例えば、屈曲性とその屈曲時の形状保持性、耐キンク性に優れる材料からなる第一のコイルと、柔軟性による復元力に優れる材料からなる第二のコイルとを多条巻きして補強層を形成すれば、互いのコイルの優れた効果を阻害することなく、相乗効果を発揮する。その結果、良好な屈曲性とその屈曲時の形状保持性と耐キンク性、および、柔軟性による復元力の相反する双方の効果を有し、使用性に優れるカテーテルを得ることができる。
【0008】
また、上述のようなカテーテルにおいて、第一のコイルまたは第二のコイルは、少なくとも一方が金属材料からなるものであってもよい。
【0009】
また、上述のようなカテーテルにおいて、第一のコイルは、金属材料からなり、第二のコイルは、樹脂材料からなるものであってもよい。
【0010】
また、上述のようなカテーテルにおいて、第一のコイルまたは第二のコイルは、各々一本の線材が巻回されているか、または、少なくとも一方が複数本の線材を多条に巻回してなるものであってもよい。
【0011】
上述のようなカテーテルにおいて、第一のコイルまたは第二のコイルは、少なくとも一方のコイルが複数本の線材から構成され、複数本の線材は、互いに同種の材料からなるものであってもよい。
【0012】
また、上述のようなカテーテルにおいて、第一のコイルまたは第二のコイルは、少なくとも一方のコイルが複数本の線材から構成され、複数本の線材は、複数の異なる材料であって、さらに、当該コイルとは異なる他のコイルを構成する線材の材料と異なる材料からなるものであってもよい。
【0013】
また、上述のようなカテーテルにおいて、補強層の外周に、樹脂材料からなる外層を有するものであってもよい。
【0014】
また、上述のようなカテーテルにおいて、第二のコイルが、外層の樹脂材料と同種の樹脂材料で形成されているものであってもよい。
【0015】
また、上述のようなカテーテルにおいて、外層と同種の樹脂材料からなる第二のコイルが、樹脂材料からなる外層の内周面に一体に結合しているものであってもよい。
【0016】
また、上述のようなカテーテルにおいて、樹脂材料からなる第二のコイルを構成する線材の本数が、金属材料からなるの第一のコイルを構成する線材の本数よりも少ないものであってもよい。
【0017】
また、上述のようなカテーテルにおいて、補強層の少なくとも第一のコイルは、複数本の線材が多条に巻回されており、補強層の外周に配置した外層の内周面に、樹脂材料からなる第二のコイルが一体に結合し、当該外層と一体に結合している第二のコイルにより隔てられた空間内で、第一のコイルの複数本の線材が軸方向に互いに離間しているものであってもよい。
【0018】
また、上述のようなカテーテルにおいて、第一のコイルの弾性力よりも、第二のコイルの弾性力が大きいものであってもよい。
【0019】
また、上述のようなカテーテルにおいて、第一のコイルが金属材料からなり、第二のコイルが超弾性材料からなるものであってもよい。
【0020】
また、上述のようなカテーテルにおいて、第一のコイルと、超弾性材料からなる第二のコイルとの少なくとも一方が、複数本の線材を多条に巻回してなるものであってもよい。
【0021】
なお、本発明の各種の構成要素は、必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等でもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明のカテーテルでは、互いに異なる材料からなる少なくとも第一のコイルと第二のコイルとが多条に巻回されて補強層の少なくとも一部が形成されている。そのため、各材料の特性を生かし、例えば、屈曲性だけでなく復元力にも優れるといった、様々な要求に対応できるカテーテルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第一の実施形態のカテーテルの先端部分の内部構造を示す模式的な縦断側面図である。
【図2】図1のI−I線断面正面図であって、カテーテルの先端部分の内部構造を示す模式的な縦断正面図である。
【図3】カテーテルの基端部分の内部構造を示す模式的な縦断側面図である。
【図4】カテーテルを湾曲した場合の補強層を示す模式図である。
【図5】第二の実施形態の先端部分の内部構造を示す模式的な縦断側面図である。
【図6】図5のII−II線断面正面図であって、カテーテルの先端部分の内部構造を示す模式的な縦断正面図である。
【図7】第三の実施形態の先端部分の内部構造を示す模式的な縦断側面図である。
【図8】第三の実施形態において、加熱により外層と第二のコイルとを結合した状態を示す模式的な縦断拡大側面図である。
【図9】図7のIII−III線断面正面図であって、カテーテルの先端部分の内部構造を示す模式的な縦断正面図である。
【図10】第四の実施形態のカテーテルの先端部分の内部構造を示す模式的な縦断側面図である。
【図11】図10のIV−IV線断面正面図であって、カテーテルの先端部分の内部構造を示す模式的な縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第一の実施形態)
本発明の第一の実施形態について、図1ないし図4を参照して以下に説明する。なお、本実施の形態および以降の実施形態では、図示するように前後左右上下の方向を規定して説明する。しかし、これは構成要素の相対関係を簡単に説明するために便宜的に規定するものである。従って、本発明を実施する製品の製造時や使用時の方向を限定するものではない。
【0025】
<カテーテルの構成>
以下、本実施の形態のカテーテル10の構成を説明する。血管などの体腔に挿入されたカテーテル10の良好な屈曲形状保持性と耐キンク性、および、柔軟性による復元力については後述する。
【0026】
本実施の形態のカテーテル10は、図1ないし図3に示すように、ルーメン21の外周に補強層50が形成されているカテーテル10であって、第一のコイル51と、第二のコイル52とが、多条に巻回されて補強層50の少なくとも一部が形成されている。また、第一のコイル51と第二のコイル52とは、互いに異なる材料で形成されている。ここで、第一のコイル51と第二のコイル52とが多条に巻回されているとは、それぞれ一本または複数本からなる第一のコイル51および第二のコイル52を一つの単位として、これらの第一のコイル51と第二のコイル52とがループ状に螺旋巻回されていることをいう。言い換えると、本実施の形態のカテーテル10では、一単位として、それぞれ螺旋状に巻回された7本(七条)の第一のコイル51と1本(一条)の第二のコイル52との8本(八条)が、カテーテル10の軸心に沿って配置されている。
【0027】
より具体的には、本実施の形態のカテーテル10では、第一のコイル51を、金属材料であるステンレス鋼(SUS)で形成し、第二のコイル52を、ニッケルとチタンの合金(NiTi合金)、例えば、ニチノール(NITINOL:登録商標)で形成している。なお、本実施形態において、第一のコイル51が金属材料からなるとは、第一のコイル51が通常金属材料(非形状記憶合金)で形成されていることを意味する。ここで、SUSの特性としては、剛性に優れるが、降伏し易いため、大きく変形させると復元力に乏しい。例えば、カテーテル10を90度近く屈曲させた場合、SUSのみの補強層50を用いた場合には、完全には元の形状には復元できないことがある。特に、体腔内での復元や屈曲方向の変更は困難となり得る。一方、NiTi合金の特性としては、いわゆる超弾性の形状記憶合金であり、柔軟であるが、降伏しにくいので、大きく変形させても弾性的に復元する。したがって、第一のコイル51で屈曲させたカテーテル10を、特に体腔内で復元や屈曲方向の変更を第二のコイル52の弾性力によって良好に行うことができる。
【0028】
また、本実施の形態の第一のコイル51は、SUS製の七条の線材(ワイヤ)第一のコイル51をカテーテル10の軸心方向(図1の上下方向)に沿って並べて配置したものである。また、本実施の形態の第二のコイル52は、NiTi合金製の一条の線材をカテーテル10の軸心方向に沿って並べて配置したものである。七条の第一のコイル51と一条の第二のコイル52とは、各々帯状に巻回されている。図1では、第一のコイル51を点線で示し、第二のコイル52を一点鎖線で示している。以下、カテーテル10の軸心方向の長さを軸長という。
【0029】
また、本実施の形態のカテーテル10は、ルーメン21が内周面に形成されていて、補強層50が外周面に形成されている円筒形の内層20を有している。そして、図3に示すように、全長の少なくとも一部である基端側で、補強層50のそれぞれ異なる材料からなる第一のコイル51、および、第二のコイル52が内層20の外周面上に緊密に巻回されている。さらに、本実施の形態のカテーテル10は、補強層50が内周面に形成されている円筒形の外層64を有する。
【0030】
また、本実施の形態のカテーテル10では、図1に示すように、全長の少なくとも一部である先端側で、補強層50の第一のコイル51、および、第二のコイル52が外層64の内周面上に巻回されている。
【0031】
本実施の形態のカテーテル10では、先端側では、補強層50の第一のコイル51および第二のコイル52が所定間隔でピッチ巻回されている。そのピッチは第一のコイル51、第二のコイル52の線径の数倍であり、このような巻回作業は容易である。
【0032】
また、本発明のカテーテル10では、より具体的には、図1および図2に示すように、大径のルーメン21が形成されている大径樹脂管からなる内層20と、内層20の少なくとも遠位端部15で外側に位置する少なくとも一対の小径の操作線細管30a、30bと、操作線細管30a、30bにスライド自在に挿通されていて先端部が少なくともカテーテル10の遠位端部15に連結されているスライド操作線40a、40bと、内層20と操作線細管30a、30bとを一体としてコイル状に巻回されている補強層50と、を有する。
【0033】
また、補強層50は、図1に示すように、シース16の遠位端部15などでは屈曲を容易とするために第一のコイル51と第二のコイル52とが所定間隔を介して巻回されている。シース16の近位端部17などでは、図3に示すように、剛性を向上させるために第一のコイル51と第二のコイル52とが緊密に巻回されている。なお、図3では、第二のコイル52のみ一点鎖線で示している。
【0034】
なお、内層20と外層64との中間に位置する補強層50の間隙は、樹脂からなる補強樹脂層60で密閉されており、これでシース16が形成されている。このシース16は、内視鏡を通じて、または直接に、体腔内に挿通される可撓性の管状体であり、腹腔動脈などの血管、および肝動脈枝や内頚動脈枝などの末梢血管に挿通される。
【0035】
内層20には、フッ素系の熱可塑性ポリマーが広く用いられる。一例として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)などを用いることができる。このように、内層20にフッ素系樹脂を用いることにより、カテーテル10のルーメン21を通じて造影剤や薬液などを患部に供給する際のデリバリー性が良好となる。
【0036】
補強樹脂層60には熱可塑性ポリマーが広く用いられる。一例として、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)のほか、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)、ナイロンエラストマー、ポリウレタン(PU)、エチレン−酢酸ビニル樹脂(EVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)またはポリプロピレン(PP)などを用いることができる。
【0037】
外層64は、カテーテル10の最外層として、潤滑処理が外表面に施された親水性の樹脂層からなる。外層64には、ポリビニルアルコール(PVA)やポリビニルピロリドンなどの親水性材料を用いることができる。
【0038】
なお、本実施の形態のカテーテル10では、フッ素コート層などからなる内層20の外側にポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などからなる別体の操作線細管30a、30bが配置されている。この操作線細管30a、30bと内層20とに補強層50の第一のコイル51および第二のコイル52が巻回されている。
【0039】
ここで、本実施の形態のシース16の代表的な寸法を例示する。シース16の最外径は直径1mm未満、具体的には700〜900μm程度である。内層20の内径は400〜600μm程度、補強樹脂層60の厚さは100〜150μm程度、第一のコイル51および第二のコイル52の直径は20〜100μmである。また、操作線細管30a、30bの内径は40〜100μm、スライド操作線40a、40bの太さは30〜60μmである。
【0040】
また、上記実施形態では、補強層50の第一のコイル51、第二のコイル52として、それぞれSUS、NiTi合金を用いている。しかし、本発明がこれに限定されることはない。少なくとも一方が金属材料であることが好ましい。また、一方が金属材料で他方が樹脂材料であることが、より好ましい。具体的には、第一のコイル51として、耐腐食性被覆した鋼鉄線、チタンもしくはチタン合金などの金属線を用いてもよい。また、第二のコイル52として、上記実施形態では、超弾性のNiTi合金を用いているが、弾性力を有するものであればよく、本発明がこれに限定されることはない。例えば、第二のコイル52として、ナイロン系樹脂材料やポリエチレン系材料等を用いてもよい。また、外層64や内層20と同種の樹脂材料を用いてもよい。なお、補強層50の第一のコイル51、第二のコイル52の断面形状は特に限定されず、正円形、楕円形、正方形、長方形、多角形、等でよいが、本実施の形態では一般的な正円形となっている。
【0041】
また、第一のコイル51および第二のコイル52がフラットワイヤや角ワイヤであって、かつ第二のコイル52の線幅が第一のコイル51の線幅より幅広であってもよい(ともに図示せず)。本実施の形態では、第一のコイル51および第二のコイル52を正円形であって、同幅なものとしている。
【0042】
操作線細管30a、30bは、内層20の外周面に沿って補強層50で保持されている。すなわち、補強樹脂層60および補強層50の内側には、操作線細管30a、30bが長手方向に延在して埋設されており、それぞれにスライド操作線40a、40bがスライド自在に挿通されている。
【0043】
また、操作線細管30a、30bはシース16に対して一部または全部が螺旋状に設けられて長手方向成分とともに周回方向成分を含んでもよい。以下、スライド操作線40aを第一のスライド操作線、スライド操作線40bを第二のスライド操作線という場合がある。
【0044】
本実施の形態のカテーテル10においては、図2に示すように、スライド操作線40a、40bがそれぞれ挿通された一対の操作線細管30a、30bは、内層20の周囲に対向して配置されている。すなわち、本実施の形態では、カテーテル10の軸心を挟んで操作線細管30aと操作線細管30bとは180度対向して形成されている。そして、操作線細管30aにはスライド操作線40aが挿通され、操作線細管30bにはスライド操作線40bが挿通されている。
【0045】
操作線細管30a、30bは、内層20を構成する樹脂材料と共に押し出して、内層20の外周面上に一体に形成することができる。操作線細管30a、30bの材料としては、補強樹脂層60の樹脂材料よりも耐熱性に優れ、またスライド操作線40a、40bとの摺動性の観点から、例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン(PSF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、などのフッ素系高分子材料を好適に用いることができる。
【0046】
スライド操作線40a、40bを操作線細管30a、30bに挿通する方法としては、特に限定されることはなく、種々な方法を採用することができる。例えば、予め操作線細管30a、30bが埋設されたシース16に対して、その一端側からスライド操作線40a、40bを挿通してもよい。または、予めスライド操作線40a、40bが挿通された操作線細管30a、30bを内層20の樹脂材料と共に押し出して、シース16を成形してもよい。
【0047】
スライド操作線40a、40bの具体的な材料としては、例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、PIもしくはPTFEなどの高分子ファイバー、または、SUS、耐腐食性被覆した鋼鉄線、チタンもしくはチタン合金などの金属線を用いることができる。
【0048】
なお、操作線細管30a、30bが予め埋設されたシース16に対してスライド操作線40a、40bを挿通する場合など、スライド操作線40a、40bに耐熱性が求められない場合には、当該スライド操作線40a、40bの材料として、上記各材料に加えて、ポリフッ化ビニリデン、高密度ポリエチレン(HDPE)またはポリエステルなどを用いることもできる。
【0049】
図1に示すように、シース16の遠位端部15には、X線等の検出波が不透過な材料からなるリング状のマーカー66が設けられている。具体的には、マーカー66には白金やタングステンなどの金属材料を用いることができる。本実施の形態のマーカー66は、内層20の外側であって外層64の内側に設けられている。
【0050】
スライド操作線40a、40bの先端部分(遠位端部15部分)41は、カテーテル10の遠位端部15に固定されている。スライド操作線40a、40bの先端部分41を遠位端部15に固定する態様は特に限定されない。
【0051】
例えば、スライド操作線40a、40bの先端部分41をマーカー66に締結してもよく、シース16の遠位端部15に溶着してもよい。または、接着剤によりマーカー66またはシース16の遠位端部15に接着固定してもよい。本実施の形態では、スライド操作線40a、40bの先端部分41は補強樹脂層60の樹脂に埋設されている。
【0052】
シース16の遠位端部15とは、シース16の被験者の身体に挿入される先端側の所定領域をいう。また、シース16の近位端部17とは、操作者に操作される末端側の所定領域をいう。
【0053】
同様に、スライド操作線40a、40bの先端部分41とは、スライド操作線40a、40bの先端を含む所定領域をいい、スライド操作線40a、40bの基端部分とは、スライド操作線40a、40bの基端を含む所定領域をいう。
【0054】
本実施の形態のカテーテル10は、シース16の近位端部17の近傍で一対の操作線細管30a、30bから引き出された一対のスライド操作線40a、40bを手動操作するスライド操作機構(図示せず)が設けられている。
【0055】
本実施の形態のカテーテル10において、第一のスライド操作線40aまたは第二のスライド操作線40bを牽引した場合には、シース16の遠位端部15に張力が与えられて、当該スライド操作線40a、40bが挿通されている側に遠位端部15が屈曲する。ここで、シース16が屈曲するとは、シース16の一部または全部が湾曲または折れ曲がることをいう。また、耐キンク性とは、シース16の屈曲時にシース16が潰れて内腔が閉塞するのを防止することをいう。
【0056】
<カテーテルの性能>
以上のように、第一のコイル51を剛性に優れる七条のSUSで形成し、第二のコイル52を弾性に優れる一条の超弾性のNiTi合金で形成することにより、双方の優れた性能を損なうことなく、双方の利点を発揮することができる。そのため、第一のコイル51の柔軟な屈曲性により、屈曲時の形状保持性と耐キンク性が得られ、第二のコイル52の良好な弾性力により、復元力にも優れた、使用性の良好なカテーテル10を提供することができる。特に、体腔内でカテーテル10を大きく屈曲させた場合でも、元の形状の良好に復元できるとともに、屈曲方向の変更も柔軟かつ自在に行うことができる。
【0057】
さらに、本実施の形態のカテーテル10では、七条の第一のコイル51と一条の第二のコイル52とが多条に巻回されている。そのため、第一のコイル51と第二のコイル52とを、X線透過率の異なる材料で形成することにより、七条の第一のコイル51に隔てられた第二のコイル52のループ間距離P(図1を参照)が非ゼロとなる。そして、このループ間距離Pをカテーテル10の軸心方向に沿って観察することで、カテーテル10の形状に関してさらに多くの情報を得ることができる。
【0058】
図4は、複数の検出位置(a)から(c)においてX線を検出する状態を示す模式図である。カテーテル10は上向きに湾曲している。ここで、カテーテル10の湾曲方向(図中、上向き)に対してX線等の検出波での検出方向が一致した場合にも、本実施の形態によればカテーテル10の湾曲方向を知得することができる。
【0059】
さらに、第一のコイル51のシルエットとの干渉により、かりに第二のコイル52のループが観察できなかった場合でも、第二のコイル52のループ間距離Pの変化に着目することで、カテーテル10の湾曲形状を知得することができる。
【0060】
さらに、本実施の形態のカテーテル10は、ルーメン21が内周面に形成されていて補強層50が外周面に形成されている円筒形の内層20を有している。そして、全長の少なくとも一部である基端側で補強層50の複数種類の第一のコイル51、第二のコイル52が内層20の外周面上に緊密に巻回されている。このため、カテーテル10の基端側を強固に補強することができ、人体への挿入を容易とすることができる。
【0061】
さらに、検出波が磁気共鳴からなってもよく、超音波からなってもよい。これらの場合、当然ながら第一のコイル51、第二のコイル52は磁気や超音波の反射率や透過率が相違するものからなる。
【0062】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。例えば、上記形態では操作線細管30a、30bが樹脂で形成されていることを例示した。しかし、操作線細管が極細の金属ワイヤまたは樹脂ワイヤを巻回した細管コイルで形成されていてもよい(図示せず)。
【0063】
また、上記実施形態では7本(七条)の線材から構成される第一のコイル51と1本(一条)の線材から構成される第二のコイル52とが多条巻きされていることを例示した。しかし、このような多条巻きの本数や断面形状は各種に組み合わせることができ、第二のコイル52の線材も複数本としてもよい。また、第一のコイル51の線材を1本とし、第二のコイル52の線材を複数本としてもよい。または、第一のコイル51および第二のコイル52の双方を1本のみの線材で構成してもよいし、双方の線材の本数を同数で構成してもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、第一のコイル51と第二のコイル52との材料が相違することを例示した。しかし、このような第一のコイル51と第二のコイル52とが同一材料で形成されていてもよい。この場合、表面処理が相違することにより、剛性や弾性力が異なり、良好な柔軟性により屈曲性に優れ、屈曲時の形状保持性と耐キンク性にも優れ、さらには、良好な弾力性により、復元力にも優れた使用性の良好なカテーテル10を得ることができる。また、X線の透過率や反射率を相違させて、双方の区別を容易に行うこともできる。
【0065】
さらに、上記実施形態では、全長の少なくとも一部である基端側で補強層50の複数種類の第一のコイル51と第二のコイル52とが内層20の外周面上に緊密に巻回されている。そして、全長の少なくとも一部である先端側で補強層50の第一のコイル51と第二のコイル52とが外層64の内周面上にピッチ巻回されていることを例示した。しかし、全長で補強層50の第一のコイル51および第二のコイル52が内層20の外周面上に緊密に巻回されていてもよく、全長で補強層50の第一のコイル51と第二のコイル52とが外層64の内周面上にピッチ巻回されていてもよい。また、基端側と先端側とで第一のコイル51と第二のコイル52との種類が相違してもよい(図示せず)。
【0066】
また、上記実施形態では、操作線細管30a、30bから前方に突出したスライド操作線40a、40bが補強樹脂層60の樹脂に埋設されて内層20の遠位端部に連結されていることを例示した。しかし、操作線細管30a、30bの先端側の少なくとも一部が細管コイル(図示せず)からなってもよい。
【0067】
このような細管コイルは、極細の金属ワイヤまたは樹脂ワイヤを操作線細管30a、30bの樹脂部分と同径に巻回した構造からなり、例えば、20〜200mmの全長に形成される。このようなカテーテル(図示せず)では、細管コイルの部分ではシース16が容易に屈曲するので、シース16の遠位端部15の屈曲性による屈曲時の形状保持性を向上させることができる。また、いずれの形状に屈曲させても、超弾性を有するNiTi合金の復元力により、シース16を、直線形状など元の形状に良好に復元させることができる。
【0068】
また、上述したカテーテル10では、マーカー66が配置されている位置よりも、後方に操作線細管30a、30bの先端部が補強樹脂層60に埋設されていることを想定した。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、マーカー66が配置されている位置よりも、前方に操作線細管30a、30bの先端部が補強樹脂層60に埋設されていてもよい(図示せず)。
【0069】
さらに、上記実施形態では内層20の内部が直接に開口していることを例示した。しかし、このような内層20の内周面にフッ素コート(PTFE)などの層膜を、15μmなどの層厚で形成してもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、一対のスライド操作線40a、40bを有することで、シース16の遠位端部15を二方向に偏向させられることを例示した。しかし、二対のスライド操作線40a、40bをカテーテル10の軸心から直交した位置に配置することで、シース16の遠位端部15を上下左右の四方向に偏向させることもできる(図示せず)。また。上記実施形態では、カテーテル10の軸心を挟んでスライド操作線40aと操作線細管30a、および、スライド操作線40bと操作線細管30bとは180度対向して2組形成されている。しかし、本発明がこれに限定されることはなく、120度間隔で3組の操作線と操作線細管とを形成してもよいし、4組以上形成してもよい。
【0071】
なお、上記実施形態では、第一のコイル51としてSUS等の剛性に優れる材料を用い、第二のコイル52としてNiTi合金等の超弾性材料、または超弾性材料よりは弾性力の低い樹脂等の通常の弾性力を有する弾性材料を用いている。しかし、本発明がこれに限定されることはない。例えば、弾性力を重視する場合は、第一のコイル51としてNiTi合金等の超弾性材料、または樹脂等の弾性材料を用い、第二のコイル52としてSUS等の剛性に優れる材料を用いてもよい。このような構成としても、第二のコイル52の良好な剛性と柔軟性により、自在な屈曲性と屈曲時の形状保持性と耐キンク性、および、第一のコイル51の良好な弾力性により、復元力に優れた使用性の良好なカテーテル10を得ることができる。また、例えば、内側に巻回すコイル層に超弾性材料を使用し、その外側に巻回すコイル層に通常の弾性力を有する樹脂材料を使用した場合、超弾性材料の復元性と樹脂材料の柔軟性との相乗効果により、良好な曲げ耐久性を得ることができる。
【0072】
ここで、超弾性材料とは、強い負荷がかかって変形しても、除荷時には元の状態に復元する能力に優れている材料をいう。超弾性材料としては、金属材料と樹脂材料とが存在する。超弾性金属材料は、一般的に形状記憶合金ともよばれている。形状記憶合金は、弾性力に富み、さまざまに変形を加えられても、弾性復元力によって予め設定(記憶)された所定の状態に復元する性質を有する。具体的には、形状記憶合金のうち、JIS G3602に規定される硬鋼線材よりもヤング率が低く、降伏点歪みが大きい材料が好適に用いられる。
【0073】
超弾性金属材料である形状記憶合金としては、より具体的には、Ni−Ti系形状記憶合金、Cu系形状記憶合金、および、Fe系形状記憶合金等を用いることができる。その中でも、最も扱いやすく、耐食性や生体適合性に優れるNi−Ti系形状記憶合金を用いるのがより好ましい。なお、Ni−Ti系形状記憶合金と、Cu系形状記憶合金とは、熱弾性型マルティンサイト変態を示す合金系に属するため、この合金系に属さないFe系形状記憶合金と比較して、熱ヒステリシス幅が狭く、カテーテル10の補強層50に用いるのに好適である。
【0074】
なお、Ni−Ti系形状記憶合金としては、前述したニチノール(登録商標)が最も好ましいが、Ni−Ti−X(X=Fe,Cu,V,Co等)なども好適に用いることができる。また、Cu系形状記憶合金としては、Cu−Zn−X(X=Al、Fe等)合金などを好適に用いることができる。
【0075】
また、超弾性樹脂材料としては、例えば、ポリサルホン樹脂(PSU)、ポリエーテルサルホン樹脂(PESU)、ポリフェニルサルホン樹脂(PPSU)等のサルホン系超弾性樹脂、グリルアミド樹脂等のナイロン系超弾性樹脂等を好適に用いることができる。
【0076】
(第二の実施形態)
本発明の第二の実施形態について、図5および図6を参照して以下に説明する。本実施の形態のカテーテル10は、上記第一の実施形態と同様に、ルーメン21の外周に補強層50が形成されているカテーテル10であって、第一のコイル51と、第二のコイル52とが、多条に巻回されて補強層50の少なくとも一部が形成されている。また、第一のコイル51と第二のコイル52とは、互いに異なる材料で形成されている。本実施の形態では、さらに、第一のコイル51、第二のコイル52とは異なる材料で形成された第三のコイル53を用いている。すなわち、同種の材料からなる五条の第一のコイル51(図5に点線で示している)と、一条の第ニのコイル52(図5に二点鎖線で示している)を挟んで異種材料の二条の第三のコイル53(図5に一点鎖線で示している)からなる、総数八条の線材を一単位として、それぞれ内層20の外周に螺旋状にピッチ巻きし、カテーテル10の軸心に沿って補強層50が配置されている。また、補強層50の第一のコイル51、第二のコイル52、第三のコイル53の断面形状も、上記第一の実施形態と同様に特に限定されず、正円形、楕円形、正方形、長方形、多角形、等でよいが、本実施の形態では一般的な正円形となっている。
【0077】
ここで、同種の材料からなる線材とは、本明細書では、例えば、第一のコイル51に用いられる線材がすべて同じSUSからなる線材である、第二のコイルに用いられる線材が、すべて同じNiTi合金からなる線材である、など、同一の材料で形成されていることを意味する。また、異なる材料とは、例えば、第一のコイル51として、SUSの線材と銅の線材を用いて構成すること等を意味する。したがって、一本の線がSUSと銅とを繋ぎ合わせて形成されていることを意味するものではない。
【0078】
また、第一のコイル51および第二のコイル52がフラットワイヤや角ワイヤであって、かつ第二のコイル52の線幅が第一のコイル51の線幅より幅広であってもよい(ともに図示せず)。本実施の形態では、上記第一の実施形態と同様に、第一のコイル51および第二のコイル52を正円形であって、同幅なものとしている。
【0079】
また、本実施の形態のカテーテル10は、ルーメン21が内周面に形成されていて補強層50が外周面に形成されている円筒形の内層20を有している。さらに、本実施の形態のカテーテル10は、補強層50が内周面に形成されている円筒形の外層64を有する。各部材の材料や作用は、上記第一の実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0080】
また、図5および図6に示すように、大径のルーメン21が形成されている大径樹脂管からなる内層20と、内層20の少なくとも遠位端部15で外側に位置する少なくとも一対の小径の操作線細管30a、30bと、操作線細管30a、30bにスライド自在に挿通されていて先端部が少なくともカテーテル10の遠位端部15に連結されているスライド操作線40a、40bとを有する。これらの材料や形成方法、動作は、第一の実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0081】
また、補強層50は、図5に示すように、シース16の遠位端部15などでは屈曲を容易とするために、第一のコイル51、第二のコイル52および第三のコイル53が所定間隔(ピッチ)を介して巻回されている。また、シース16の近位端部17などでは、図示はしないが、剛性を向上させるために第一のコイル51、第二のコイル52および第三のコイル53が緊密に巻回されていてもよい。
【0082】
なお、内層20と外層64との中間に位置する補強層50の間隙は、樹脂からなる補強樹脂層60で密閉されており、これでシース16が形成されている。このシース16の作用、寸法等は、上記第一の実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0083】
上記第一のコイル51の材料としては、上記第一の実施形態と同様に、剛性に優れるSUSを用いることで、カテーテル10に良好な剛性と柔軟性を持たせ、屈曲性と屈曲時の形状保持性および耐キンク性を向上させている。なお、第一のコイル51の材料は、SUSに限定されることはなく、剛性に優れ、コイル状とした際に柔軟性に優れていれば他の材料を用いてもよい。具体的には、上記第一の実施形態で記載した材料と同様のものを用いることができる。
【0084】
また、第二のコイル52としては、上記第一の実施形態と同様に、超弾性力を有するNiTi合金を用いることで、カテーテル10の弾力性を向上させ、優れた復元力を持たせている。なお、第二のコイル52は、NiTi合金に限定されることはなく、超弾性力あるいは通常の弾性力を有し、復元性に優れていれば他の材料を用いてもよい。具体的には、上記第一の実施形態で記載した材料と同様のものを用いることができる。
【0085】
一方、上記第二のコイル52を挟んで配置される第三のコイル53としては、通常の弾力性を有する樹脂材料等を用いることが好ましい。具体的には、例えば、ナイロン系樹脂やポリエチレン系樹脂等を用いることができる。特に、第二のコイル52よりも弾性力が低い材料を用いることがより好ましい。
【0086】
このように、剛性を有する第一のコイル51と第二のコイル52との間に、第二のコイル52よりも弾性力の低い第三のコイル53を介在させることにより、剛性材料から徐々に弾性力の強い材料となる。また、超弾性材料から徐々に弾性力が弱くなって剛性の材料となる。したがって、第三のコイル53によって、屈曲性と屈曲時の形状保持性と復元性という、相反する特性の緩衝的な役目を果たし、良好な柔軟性による自在な屈曲性、剛性による屈曲時の形状保持性と耐キンク性、および、良好な弾力性による復元力のバランスを取り易いものとなる。そして、使用時において、屈曲が容易であり、その屈曲状態を良好に維持でき、屈曲を解除すると、元の直線的な形状に良好に復元するような、使用性に優れたカテーテル10を得ることができる。
【0087】
なお、本実施の形態でも、第一のコイル51を剛性材料で形成し、第二のコイル52を超弾性材料で形成し、第三のコイル53を通常の弾性材料で形成しているが、本発明がこれに限定されることはない。例えば、第一のコイル51を超弾性材料で形成し、第二のコイル52を剛性材料で形成し、これを挟む第三のコイル53を、第一のコイル51より弾力性が低く、第二のコイル52より剛性が低い中間的な材料で形成して、緩衝材の要素を持たせてもよい。この構成では、より弾力性に優れたカテーテル10を得ることができる。
【0088】
(第三の実施形態)
本発明の第三の実施形態について、図7ないし図9を参照して以下に説明する。本実施の形態のカテーテル10の基本的構成や動作は、上記第一、第二の実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。以下、主に上記第一、第二の実施形態と異なる点について説明する。なお、第一のコイル51として三条のSUSと、第二のコイル52として一条の樹脂性材料(詳細は後述する)とが、合計四条で内層20の外周にピッチ巻きされて補強層50を構成している。図7には、樹脂材料製の第二のコイル52のみ点線で示している。
【0089】
上記第一、第二の実施の形態では第一のコイル51および第二のコイル52が同径であることを例示した。しかし、本実施の形態では、第二のコイル52の線径が第一のコイル51の線径より大径である。また、第二のコイル52は、外層64を形成する樹脂材料と同種の樹脂材料で形成され、内層20と第二のコイル52とが結合している。また、本実施の形態では、スライド操作線40a、40bの先端部分41、およびマーカー66は、補強樹脂層60の樹脂に埋設されている。
【0090】
ここで、同種の樹脂材料とは、同一の樹脂材料であることは勿論、異なる樹脂材料であっても、主成分が同じであったり、ガラス転移温度や融点が同じかほぼ同じで、互いに結合し易いものを含むことを意味する。例えば、一方が低密度ポリエチレンで、他方が高密度ポリエチレンであるなど、双方がポリエチレン系樹脂であれば、同種の樹脂材料であるとする。また、双方が低密度、中密度、または、高密度ポリエチレンであっても、フィラーや触媒が異なるなど添加物が異なっていたり、成分の配合割合が異なったりしていても同種の樹脂材料であるとする。その他、双方がポリエチレン系樹脂である、ナイロン系樹脂である、ポリビニル系樹脂である、ポリプロピレン系樹脂である、ポリスチレン系樹脂である、ポリ塩化ビニル系樹脂である、等であっても同種の樹脂材料とする。また、モノマーであっても、ポリマーであっても同種の樹脂材料とする。
【0091】
なお、外層64および第二のコイル52の材料としては、上述したように同種であって双方が結合可能であれば、特に限定はないが、外層64は、カテーテル10の最外層として、潤滑処理が外表面に施された親水性の樹脂層が好ましい。したがって、第一の実施形態で述べたように、外層64と第二のコイル52の材料としては、ポリビニルアルコール(PVA)やポリビニルピロリドンなどの親水性材料を用いることが好ましい。
【0092】
そして、図7に示すように、補強層50は、遠位端部15側では、所定間隔で三条の第一のコイル51と一条の第二のコイル52とが、所定間隔を介して多条巻きされている。また、シース16の近位端部17などでは、図示はしないが、剛性を向上させるために第一のコイル51と第二のコイル52とが緊密に巻回されていてもよい。
【0093】
また、外層64を配置した後、または、外層64を形成する際に、加熱により、図8、図9に示すように、第二のコイル52を溶融し、外層64と結合する。なお、第二のコイル52は、外層64とは結合しているが、内層20とは必ずしも結合する必要はない。しかし、内層20とも結合させることにより、後述するように、第一のコイル51の軸方向への過剰な移動を良好に抑制することができる。
【0094】
このように、外層64と第二のコイル52とを結合することにより、第二のコイル52の軸方向への移動が抑制される。さらに、図7、図8、図9に示すように、操作線細管30a、30bと外層64との間に形成される補強層50を配置する間隙には、第二のコイル52により隔てられた空間70が形成される。そして、この空間70内では、二条のSUSからなる第一のコイル51が、ルーメン21の軸方向に移動可能となる。
【0095】
以上のように構成された第三の実施形態のカテーテル10では、金属製の第一のコイル51の剛性により、コイル状とした際に良好な柔軟性を有し、屈曲性と屈曲時の形状保持性と耐キンク性に優れたものとなる。また、外層64に結合した樹脂性の第二のコイル52の弾性力の均一性が保持され、復元力にも優れたものとなる。さらには、第一のコイル51が第二のコイル52で隔てられた空間70内でルーメン21の軸方向に自在に移動可能であるから、より柔軟かつ微細にカテーテル10を屈曲させることができる。また、第二のコイル52が外層64に結合して空間70が隔てられているため、第一のコイル51が過剰に軸方向に移動することがなく、バランスの良い屈曲が可能であるとともに、復元性を損なうこともない。したがって、使用性に優れたカテーテル10を提供することができる。
【0096】
(第四の実施形態)
本発明の第四の実施形態について、図10および図11を参照して以下に説明する。本実施の形態のカテーテル10の基本的構成や動作は、上記第一〜第三の実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。以下、主に上記第一、第二の実施形態と異なる点について説明する。なお、図10では、第一のコイル51を点線で示し、第二のコイル52を一点鎖線で示している。
【0097】
上記各実施の形態では第一のコイル51を構成する線材の本数が、第二のコイル52を構成する線材の本数よりも多いことを例示した。しかし、本実施の形態では、第一のコイル51と第二のコイル52とを、4本(4条)ずつ同数本を用いている。そして、これらを一単位として、それぞれ内層20の外周に螺旋状に多条巻きすることにより、カテーテル10の軸心に沿って補強層50が配置されている。また、本実施の形態でも、補強層50の第一のコイル51、第二のコイル52の断面形状は、特に限定されず、正円形、楕円形、正方形、長方形、多角形、等でよいが、本実施の形態では一般的な正円形となっている。
【0098】
また、第一のコイル51および第二のコイル52がフラットワイヤや角ワイヤであって、かつ第二のコイル52の線幅が第一のコイル51の線幅より幅広であってもよい(ともに図示せず)。本実施の形態では、上記各実施の形態と同様に、第一のコイル51および第二のコイル52を正円形であって、同幅なものとしている。
【0099】
また、本実施の形態のカテーテル10は、ルーメン21が内周面に形成されていて補強層50が外周面に形成されている円筒形の内層20を有している。そして、図10に示すように、全長の少なくとも一部である基端側で、補強層50のそれぞれ異なる材料からなる第一のコイル51、および、第二のコイル52が内層20の外周面上に緊密に巻回されている。さらに、本実施の形態のカテーテル10は、補強層50が内周面に形成されている円筒形の外層64を有する。また、内層20と外層64との中間に位置する補強層50の間隙は、樹脂からなる補強樹脂層60で密閉されている。各部材の材料や作用は、上記第一、第二の実施形態等と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0100】
以上のように構成された第四の実施形態のカテーテル10では、金属製の第一のコイル51の剛性と柔軟性により、良好な屈曲性と屈曲時の形状保持性と耐キンク性とに優れ、樹脂製の第二のコイル52の弾力性により、復元力に優れたものとなる。さらには、第一のコイル51と第二のコイル52とが同数本で同径の線材で形成されているため、補強層50における第一のコイル51と第二のコイル52との表面積も同一で広面積となる。そのため、屈曲性と屈曲時の形状保持性と耐キンク性、および、柔軟性による復元力を、よりバランスよく向上させることができる。したがって、使用性に優れたカテーテル10を得ることができる。
【0101】
以上、各実施例では、互いに異なる材料からなる第一のコイル51と第二のコイルとが多条巻きされた補強層50、および、互いに異なる材料からなる第一のコイル51と第二のコイル52と第三のコイル53とが多条巻きされた補強層50について述べている。しかし、柔軟な屈曲性と復元力とを兼ね備えたカテーテル10が得られるならば、本発明がこれに限定されることはなく、互いに異なる材料からなる四以上のコイルを構成する線材がそれぞれ多条巻きされた補強層50であってもよい。また各コイルが一本の線材から構成されるものであってもよいし、複数本の線材から構成されるものであってもよい。また、各コイルにおいて、同じコイルに属していても、他のコイルの線材と異なり、かつコイル内でもさらに異なる線材を用いてもよい。
【0102】
なお、上記各実施の形態では、操作線細管30a、30bと、操作線細管30a、30bにスライド自在に挿通されているスライド操作線40a、40bと、を有し、能動的に操作するカテーテル10を例示しているが、本発明がこれに限定されることはない。例えば、体内にガイドワイヤを挿通し、このガイドワイヤに追随するように血管に挿入して、受動的に患部まで到達させるカテーテル10に、互いに異なる材料からなる少なくとも第一のコイル51と第二のコイル52とが多条に巻回された補強層50を用いてもよい。
【0103】
なお、当然ながら、上述した実施の形態および複数の変形例は、その内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。また、上述した実施の形態および変形例では、各部の構造などを具体的に説明したが、その構造などは本発明を満足する範囲で各種に変更することができる。
【符号の説明】
【0104】
10 カテーテル
20 内層
21 ルーメン
50 補強層
51 第一のコイル
52 第二のコイル
53 第三のコイル
64 外層
70 空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーメンの外周に補強層が形成されているカテーテルであって、
互いに異なる材料からなる少なくとも第一のコイルと第二のコイルとが多条に巻回されて前記補強層の少なくとも一部が形成されているカテーテル。
【請求項2】
前記第一のコイルまたは前記第二のコイルは、少なくとも一方が金属材料からなる
請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記第一のコイルは、金属材料からなり、
前記第二のコイルは、樹脂材料からなる請求項1または2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記第一のコイルまたは前記第二のコイルは、各々一本の線材が巻回されているか、または、少なくとも一方が複数本の線材を多条に巻回してなる請求項2または3に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記第一のコイルまたは前記第二のコイルは、少なくとも一方の前記コイルが複数本の線材から構成され、複数本の前記線材は、互いに同種の材料からなる請求項4に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記第一のコイルまたは前記第二のコイルは、少なくとも一方の前記コイルが複数本の線材から構成され、複数本の前記線材は、複数の異なる材料であって、さらに、当該コイルとは異なる他の前記コイルを構成する線材の材料と異なる材料からなる請求項4に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記補強層の外周に、樹脂材料からなる外層を有する請求項1から6のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記第二のコイルが、前記外層の前記樹脂材料と同種の樹脂材料で形成されている請求項7に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記外層と同種の前記樹脂材料からなる前記第二のコイルが、前記樹脂材料からなる前記外層の内周面に一体に結合している請求項7または8に記載のカテーテル。
【請求項10】
樹脂材料からなる前記第二のコイルを構成する線材の本数が、金属材料からなる前記第一のコイルを構成する線材の本数よりも少ない請求項8または9に記載のカテーテル。
【請求項11】
少なくとも前記第一のコイルは、複数本の線材が多条に巻回されており、
前記補強層の外周に配置した前記外層の前記内周面に、前記樹脂材料からなる前記第二のコイルが一体に結合し、当該外層と一体に結合している前記第二のコイルにより隔てられた空間内で、前記第一のコイルの複数本の前記線材が軸方向に互いに離間している請求項9または10に記載のカテーテル。
【請求項12】
前記第一のコイルの弾性力よりも、前記第二のコイルの弾性力が大きい請求項1から11のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項13】
前記第一のコイルが金属材料からなり、
前記第二のコイルが超弾性材料からなる請求項12に記載のカテーテル。
【請求項14】
前記第一のコイルと、超弾性材料からなる前記第二のコイルとの少なくとも一方が、複数本の線材を多条に巻回してなる請求項13に記載のカテーテル。
【請求項1】
ルーメンの外周に補強層が形成されているカテーテルであって、
互いに異なる材料からなる少なくとも第一のコイルと第二のコイルとが多条に巻回されて前記補強層の少なくとも一部が形成されているカテーテル。
【請求項2】
前記第一のコイルまたは前記第二のコイルは、少なくとも一方が金属材料からなる
請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記第一のコイルは、金属材料からなり、
前記第二のコイルは、樹脂材料からなる請求項1または2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記第一のコイルまたは前記第二のコイルは、各々一本の線材が巻回されているか、または、少なくとも一方が複数本の線材を多条に巻回してなる請求項2または3に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記第一のコイルまたは前記第二のコイルは、少なくとも一方の前記コイルが複数本の線材から構成され、複数本の前記線材は、互いに同種の材料からなる請求項4に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記第一のコイルまたは前記第二のコイルは、少なくとも一方の前記コイルが複数本の線材から構成され、複数本の前記線材は、複数の異なる材料であって、さらに、当該コイルとは異なる他の前記コイルを構成する線材の材料と異なる材料からなる請求項4に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記補強層の外周に、樹脂材料からなる外層を有する請求項1から6のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記第二のコイルが、前記外層の前記樹脂材料と同種の樹脂材料で形成されている請求項7に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記外層と同種の前記樹脂材料からなる前記第二のコイルが、前記樹脂材料からなる前記外層の内周面に一体に結合している請求項7または8に記載のカテーテル。
【請求項10】
樹脂材料からなる前記第二のコイルを構成する線材の本数が、金属材料からなる前記第一のコイルを構成する線材の本数よりも少ない請求項8または9に記載のカテーテル。
【請求項11】
少なくとも前記第一のコイルは、複数本の線材が多条に巻回されており、
前記補強層の外周に配置した前記外層の前記内周面に、前記樹脂材料からなる前記第二のコイルが一体に結合し、当該外層と一体に結合している前記第二のコイルにより隔てられた空間内で、前記第一のコイルの複数本の前記線材が軸方向に互いに離間している請求項9または10に記載のカテーテル。
【請求項12】
前記第一のコイルの弾性力よりも、前記第二のコイルの弾性力が大きい請求項1から11のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項13】
前記第一のコイルが金属材料からなり、
前記第二のコイルが超弾性材料からなる請求項12に記載のカテーテル。
【請求項14】
前記第一のコイルと、超弾性材料からなる前記第二のコイルとの少なくとも一方が、複数本の線材を多条に巻回してなる請求項13に記載のカテーテル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−139345(P2012−139345A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293747(P2010−293747)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】
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