説明

カバサイトタイプ分子篩、その合成、及びオキシジネートをオレフィンへ変換することにおけるそれらの使用

結晶物質、特にカバサイトタイプのフレームワークを有する高シリカゼオライトの合成は、AEIフレームワークタイプ物質の種を合成混合物に添加することにより行われた。このカバサイトタイプ生成物は相対的に小さな結晶サイズを有し、低級オレフィン、特にエチレン及びプロピレンへメタノールの変換において活性及び選択性を示す。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、新規な、カバサイト含有分子篩、その合成及びオレフィン、特にエチレン及びプロピレンへオキシジェネート特にメタノールの変換におけるその使用に関係する。
【背景技術】
【0002】
オキシジェネートをオレフィンへ変換(OTO)することは、近年注目されている研究課題である。なぜならば、この課題はエチレン及びプロピレンを世界的なスケールで生産するための今日の工業標準であり長年用いられているスチームクラッキング技術の代替技術となる可能性を有するものだからである。非常に大きな体積を含む原材料を費用効率の高い方法で軽質オレフィンの高い処理能力を提供することができる代替技術に対する大きな経済的誘因が存在している。スチームクラッキングはとても高い温度におけるナフサ類の炭化水素の非選択的な熱反応に依存しているのに対して、OTOは、メタノールから、エタノール及びプロピレンへの高い生産性のために、穏やかな温度条件下で、触媒及び酸分子篩を利用する。
【0003】
OTO反応は、(1)活性炭素プール(アルキル−芳香族)の形成を誘導する誘導期間(2)生成物を誘導するための活性中間体のアルキレーション−脱アルキレーション反応、及び、(3)濃縮環状芳香族物質の緩やかな構築の、確立された3の主要な工程を含む複合連続工程であると近年理解されている。それゆえ、OTOは、触媒が変化し続ける中にある、一時的な化学変換である。長期に渡り高いオレフィン生産性を維持する触媒の能力は、上記プロセスの相対比率における微妙なバランスに依存している。コーク様分子が蓄積すると、多くの方法で所望の反応を阻害することから、コーク様分子の形成は一の重要な要素である。特に、コークは、炭素プールを不活性にし、反応物及び生産物の拡散速度を低め、望まれない第二反応に対する可能性を高め、触媒の寿命を短くする。
【0004】
過去20年の間に渡り、OTO反応の実行に有用な多くの触媒物質が確立されてきた。結晶性分子篩は、反応の酸度及び形態的必要性を同時に解決することから、今日において好ましい触媒である。特に好ましい物質は、及びSAPO−34等のCHA構造のケイ素アルミノリン酸塩だけでなく、カバサイト(CHA)フレームワークタイプを有する八員環アルミノケイ酸塩である。これらの分子篩は、規則正しく相互接続した窓の隙間を通じて出入りする反応物及び生産物を拡散輸送させる間に、芳香族中間体を収容するのに十分大きな格子を有している。酸強度及び酸密度の適切なレベルを維持しつつ、そのような形態的特長を補うことにより機能的な触媒が生産される。この分野の更なる研究は、シリカアルミノリン酸が、アルミノケイ酸塩よりもOTO触媒により有効であることを示した。特に、OTO反応において、アルミノケイ酸塩を使用するためには、シリカ対アルミノ比の制御が重要な重要である。それでもなお、アルミノケイ酸塩ゼオライトは、OTOの使用のために探索され続け、いまだ、未発見の性質を有することが明らかである。
【0005】
カバサイトは、おおよそ、CaAl12Si2427の式で表される天然のゼオライトである。これらのカバサイトの合成形態は、参照により本明細書に援用する、John Wiley & Sons社より1997年に出版されたD.W.Breckによる「Zeolite Molecular Sieves」に記載されている。Breckにより報告された3の合成形態は、J.Chem.Soc.,p.2822(1961)に記載されている「ゼオライトK−G」、Buritish Patent No. 898,846(1961)に記載されている「ゼオライトD」及びU.S.Patent No.3,030,181(1962)に記載の「ゼオライトR」である。K−Gゼオライトは、2.3対1乃至4.15:1のシリカ対アルミナ比を有する一方で、ゼオライトD及びRは、それぞれ、4.5:1乃至4.9:1及び3.45:1乃至3.65:1のシリカ対アルミナ比を有する。
【0006】
参照により本明細書に援用されるU.S.Patent No.4,544,538は、N−アルキル−3−キヌクリジノール、N,N,N−トリ−アルキル−1−アダマンチルアンモニウムカチオン及び/又は、N,N,N−トリアルキル−エキソアミノノルボルナンを従来のOH媒体中の誘導試薬として用いたカバサイトの他の合成形態である、SSZ−13、の合成を開示する。この「538特許」によると、SSZ−13は、通常、8乃至50のシリカ対アルミナ比を有するが、合成混合物中の反応物の相対比を変化させることにより、及び/又は、ゼオライト格子からアルミニウムを除去するために、キレート剤又は酸を用いてゼオライトを処理することにより、より高いモル比を得ることができることが記載されている。しかしながら、100を超えるシリカ対アルミナ比で、OH媒体中でSSZ−13を合成する試みは不成功に終わっており、アルキル金属カチオンの存在に依存して、ITQ−1又はSSZ−23が生成する。さらに、脱アルミ化によりSSZ−13のシリカ対アルミナのモル比を増加させることは、わずか、あるいは、ほとんど成功していない。「358特許」は、合成混合物にSSZ−13の種(結晶)を添加することにより、SSZの結晶化が促進され、好ましくない汚染物質の形成が抑制されることを開示している。
【0007】
2000年2月10日に刊行された国際公開公報00/06494によると、LEV構造の種(結晶)のコロイド懸濁液は、LEV、FER、MOR、ERI/OFF、MAZ、OFF、ZSM−57及びCHAを含む多くの分子篩構造体の合成において用いることができる。CHA物質の例は、カバサイト及びリン含有分子篩ASPO−34、ALPO−34、SAPO−37、ALPO−37及びこれらの誘導体を含む物質である。
【0008】
フッ化物の存在下で、中性に近いpHにおいて、N,N,N−トリメチルアダマンチルアンモニウムを水酸化物の形態で、構造誘導試薬として用いて水熱的にCHAフレームワークタイプを有するシリカ結晶分子篩が合成される。Daiz−Cabanas,M−J、Barrett,P.A.及びCamblor, M.A.らによる「Synthesis and Structure of Pure SiO Chabazite: the SiO Polymorph with the Lowest Framework Density」,Chem.Commun.1881(1998)参照のこと。
【0009】
より近年において、CHAフレームワークタイプ及び150乃至2000のような100を超えるようなシリカ対アルミナ比を有するアルミノシリケートがフッ化物の存在下において再び合成された。2003年9月18日に刊行され、参照により本明細書に援用するU.S.Patent Application Publication No.2003/0176751参照のこと。
【0010】
CHAフレームワークタイプを有する高シリカアルミノケイ酸塩及び全てのシリカ分子篩を合成するための既存の方法は大きな結晶サイズを有する物質を生産する傾向にある。しかしながら、オキシジェネートをオレフィンへ変換する等の触媒表面の大きさが重要な触媒の使用においては、小さな結晶物質が好まれる。
【0011】
参照により本明細書に援用されるU.S. Patent No.6,079,644は結晶サイズが0.5ミクロン未満であり、CHAフレームワークタイプを有するSSZ−6と定義されるゼオライトを開示する。SSZ−62はシリカ対アルミナモル比が10を超える、具体的には30を超えると言われているが、実施例において合成された生成物は22のシリカ対アルミナモル比を有するもののみであった。
【発明の開示】
【0012】
概要
一の側面において、本発明はCHAフレームワークタイプを有する結晶物質の合成方法に属する。この方法は、
a)前記反応混合物が更にAEIフレームワークタイプを含む結晶物質の種を含むことを特徴とする、CHAフレームワークタイプを有する前記結晶物質を形成する能力を有する反応混合物を形成する工程と、及び
b)前記反応混合物から、CHAフレームワークタイプを含む前記結晶物質を回収する工程とを含む。
【0013】
更なる側面において、本発明は、CHAフレームワークタイプを有し、及びか焼された無水形態において、
(n)X:YO
式中、Xはアルミニウム、ホウ素、鉄、インジウム、及び/又はガリウム等の三価元素、Yはケイ素、スズ、チタニウム及び/又はゲルマニウム等の四価元素及びNは0乃至0.01未満、例えば、約0.0005乃至約0.007、具体的には、約0.0008乃至約0.005の、モル関係を含む組成物を有する結晶物質を合成する方法に属する。この方法は、
(a)CHAフレームワークタイプを有する前記結晶物質を形成する能力を有する、水の供給源、四価元素Yの酸化物の供給源、任意で三価元素Yの酸化物の供給源、前記細孔性結晶物質の合成を導くための有機誘導試薬及びCHA以外のフレームワークタイプを有する結晶物質の種を含む反応混合物を調製する工程と、
(b)CHAフレームワークタイプを有する前記結晶物質の結晶を形成するのに十分な条件下において、前記反応混合物を維持する工程と、及び
(c)(b)から前記結晶物質を回収する工程を含む。
【0014】
好都合なことには、前記種はAEI、LEV、CHA又はOFFフレームワークタイプ及び好ましくはAEIフレームワークタイプを有する結晶物質を含む。
【0015】
好都合なことには、前記反応混合物は、重量に対して、約0.1ppm乃至約10,000ppm、具体的には、約100ppm乃至約5,000ppmの前記種を含む。
【0016】
一の態様において、前記反応混合物は、フッ化物又はフッ化物含有化合物の等のハロゲン化物又はハロゲン化物含有化合物も含む。
【0017】
一の態様において、前記有機誘導試薬は多環系アミン又はアンモニウム化合物を含む。好都合なことには、この多環系アミン又はアンモニウム化合物は、N−アルキル−3−キヌクリジノール、N,N,N−トリ−アルキル−1−アダマンチルアンモニウム化合物、N,N,N−トリアルキル−エキソアミノノルボルナン又はN,N,N−トリメチル−1−アダマンチルアンモニウム化合物のような、それらの組み合わせ等の三環又は四環アミン又はアンモニウム化合物含む。
【0018】
通常、(c)で回収される結晶物質は、4ミクロン以下、具体的には、約0.5乃至約4ミクロンの平均直径を有する結晶を含む。
【0019】
更なる側面において、本発明の発明は、CHAフレームワーク多を有し、及びか焼された無水形態において、
(n)X:YO
式中、Xは三価元素、Yは四価元素及びNは0乃至0.01未満のモル関係を含む組成物を有する細孔性結晶物質に属する。前記物質の結晶は、4ミクロン以下、具体的には約0.5乃至4ミクロンの平均直径を有する。
【0020】
更なる側面において、本発明は、CHAフレームワーク多を有し、及びか焼された無水形態において、
(n)X:YO
式中、Xは三価元素、Yは四価元素及びNは0乃至0.01未満のモル関係を含む組成物を有する細孔性結晶物質に属する。前記物質の結晶は、双晶である。
【0021】
好都合なことに、か焼された結晶性物質は、重量に対して、約1乃至約10ppm、例えば、約5乃至約50ppm、具体的には、約10乃至約20ppmのハロゲン化物、好ましくはフッ化物を含む。
【0022】
好都合なことに、前記CHAフレームワークタイプを有する細孔性結晶物質は、実質的にフレームワークのリンがない。
【0023】
更なる側面において、本発明は、有機オキシジェネート化合物をオキシジェネート変換条件下において、本明細書で述べるCHAフレームワークタイプを有する細孔性結晶物質を含む触媒に接触させる工程を含む、オレフィンを製造する方法に属する。
【0024】
本明細書で用いる「か焼された無水形態」の語は、再水和することなく、400℃以上の高い温度で0.1乃至10時間、空気中で加熱された物質を意味する。
【0025】
加えて、本明細書で用いる「双晶」結晶の語は、幾つかの明確な共通面において共に結合する2以上の別個の単一結晶を含む結晶、一の結晶の格子が他の結晶の格子と結合している又は、幾つかの対照操作により複合結晶の中にある別個の結晶を意味すると、いう通常の意味に用いられる(Essentials of Crystallography by Duncun Mckie and Christine McKie, Blackwell Scientific Publications, Oxford, 1986. P89参照のこと)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
発明の詳細な説明
本発明は、カバサイト−タイプフレームワークを有する結晶物質特に、高シリカゼオライトの合成方法及びこの物質の小さい細孔性の形態に関係する。更に、本発明は、オキシジェネート、特にメタノールを、オレフィン特にエチレン及びプロピレンへ変換するための工程にこの物質を使用することにも関係する。
【0027】
IUPACの規則に従ったゼオライト命名法によりインターナショナルゼオライトアソシエーション(International Zeolite Association)の構造コミッション(Structure Commission)により分子篩が分類されていることは理解されている。この分類に従って、構造が確立されているフレームワークタイプゼオライト及び他の結晶性細孔性分子篩は三文字表記が割り当てられ、Atlas of Zeolite Framework Types,5th edition Elsevier, London, England(2001)に記載されている。カバサイトはCHAと指定される構造及びフレームワークタイプの物質である分子篩の一つである。
【0028】
そのか焼形態において、本発明により製造された高シリカCHAタイプ分子篩は、以下の表1で示される特性線を有するX線回折パターンを有する。
【表1】

【0029】
これらのX線回折データは銅K−アルファ放射線を用いた、グラファイト単色光分光器と、シンチレーション検出器を備えた、Philips粉末X線回折機により収集された。この回折データは、2−シータの0.02度(degree)での段階走査により記録され、シータはブラッグ角であり、カウント時間は各工程につき1秒である。格子面間隔、d‘sはオングストローム単位で計算され、線の相対強度、I/Ioは、Ioが最も強い線であるとして計算され、上記バックグラウンドは、ピーク強度の積算により決定された。単一の線としてのこのサンプルに対するリストされた回折データは、結晶変化における違い等の特定の条件下で、分解される、あるいは、部分的に分解される線が複数重なったものであることは理解されるべきである。通常、結晶変化は、フレームワーク原子の接続性の変化を伴わない、単位小胞パラメーターのマイナー変化及び/又は結晶対照性における変化を含む。相対強度の変化を含むこれらのマイナー効果はカチオン含量、フレームワーク組成、性質及び細孔の充填度、結晶サイズ及び形、好ましい配向及び熱/水熱過程の違いの結果として生じる。
【0030】
本発明のCHAフレームワークタイプ分子篩は、
(n)X:YO
式中、Xはアルミニウム、ホウ素、鉄、インジウム、及び/又はガリウム等の三価元素、Yはケイ素、スズ、チタニウム及び/又はゲルマニウム等の四価元素及びnは0乃至0.01未満、例えば、約0.0005乃至約0.007、具体的には、約0.0008乃至約0.005の、モル関係を含む組成物を有する。ハロゲン化物含有化合物をこの物質の合成に用いる場合、本発明のAEIフレームワークタイプ結晶物質はか焼形態において、通常、重量に対して約1乃至約100ppm、例えば、約5乃至約50ppm、具体的には約10乃至20ppmのハロゲン化物、好ましくはフッ化物を含む。
【0031】
一の態様において、本発明のCHAフレームワークタイプ結晶物質は、実質的にフレームワークのリンがない。
【0032】
通常、本発明のCHAフレームワークタイプ結晶物質は、4ミクロン以下、具体的には約0.5乃至約4ミクロンの平均直径を有する結晶として製造される。更に、幾つかの態様において、特に、この物質がLEVコロイド種の存在下で、生産されるとき、本発明のCHAフレームワークタイプ結晶物質は、双晶形態を有する結晶として生産される。
【0033】
以下で議論するように、少なくとも1の誘導試薬(R)は少なくとも1のCHAフレームワークタイプ物質の合成を導くための第一誘導試薬及び少なくとも1のAEIフレームワークタイプ物質の合成を導くための第二誘導試薬を含む。これらの誘導試薬は、典型的には分子篩製品の内部分子構造内に完全な状態で保持されていることが発見された。誘導試薬の組成に応じて、13C MAS (magic−angle spinning)NMR等の解析技術により合成された(as−synthesized)分子篩中に保持されている異なる誘導試薬の相対的な量を決定することが可能である。従って、好ましい態様において、第一誘導試薬が、N,N,N−トリメチル−1−アダマンチルアンモニウム化合物(TMAA)及び第二誘導試薬がN,N−ジエチル−2,6−ジメチルピペリジニウム化合物(DEDMP)である場合、DEDMPは13CMAS NMRスペクトルの0乃至20ppmの幅においてCH部分のC原子核に対応するピークを示す。このピークはTMAAの13C MAS NMRスペクトル中には存在しない。13C MAS NMRスペクトルの0乃至20ppmの高さのピークを測定することにより、合成物質中のTMAA及びDEDMPの相対的量を決定することができる。好ましくは、合成された物質中に保持されているAEI及びCHA誘導試薬の総モル量に対する合成された物質中に保持されているAEI誘導試薬のモル量は、0.1乃至0.3の間である。
【0034】
この物質のX/YOモル比に依存する、好ましい範囲で、本発明の技術分野において既知の方法に従って合成された連晶の中の任意のカチオンを少なくとも部分的に、他のカチオンでイオン交換することにより置換することができる。好ましいカチオンの置換は、金属イオン、水素イオン、例えば、アンモニウムイオン等の水素前駆体及びこれらの混合物を含む。特に好ましいカチオンは、特定の炭化水素変換反応のために触媒活性を調製したものである。これらは、水素、希土類金属及び周期表の元素のIIA、IIIA、IVA、VA、IB、IB、IIIB、IVB、VB、VIB、VIIB、及びVIIIグループの金属を含む。
【0035】
本発明の連晶は、水の供給源、四価元素Yの酸化物の供給源、任意で三価物Xの酸化物の供給源、少なくとも1の以下で説明する誘導試薬I及び、通常、フッ化物又はフッ化物含有元素のような、ハロゲン化物又はハロゲン化物含有元素を含む反応混合物より調製され、前記反応混合物は、以下の表で示す幅の範囲内の酸化物のモル比を含む組成物を有する。
【表2】

【0036】
四価元素Yがケイ素である場合、ケイ素の適切な供給源は、ケイ酸塩、例えば、テトラアルキルオルトケイ素、エアロシル(Aerosil)等の(デグサ(Degssa)より市販されている)燻蒸シリカ、Ludoxの取引名でE.I. du Pontde Nemoursにより販売されているシリカの水性コロイド懸濁液である。三価元素Xがアルミニウムである場合、アルミニウムの適切な供給源は、ベーマイト及び偽ベーマイトのような水和アルミニウム酸化物のほかに、アルミニウム塩、特に硝酸アルミニウム等の水溶性塩のような、アルミニウム塩を含む。ハロゲン化物がフッ化物である場合、アルキル金属フッ化物及び有機誘導試薬のフッ化物塩等のフッ化物の供給源も好ましいが、フッ化物の適切な供給源は、フッ化水素を含む。
【0037】
有機(構造)誘導試薬Rが、好都合なことに多環アミン又はアンモニウム化合物を含む。好都合なことに、好都合なことには、この多環アミン又はアンモニウム化合物は、N−アルキル−3−キヌクリジノール、N,N,N−トリ−アルキル−1−アダマンチルアンモニウム化合物、N,N,N−トリアルキル−エキソアミノノルボルナン又はN,N,N−トリメチル−1−アダマンチルアンモニウム化合物のような、それらの組み合わせ等の三環又は四環アミン又はアンモニウム化合物含む。適したかはハロゲン化物のような水酸化物及び塩を含む。
【0038】
用いられる種の量は、幅広く変化することができるが、通常反応混合物には、重量に対して約0.1ppm乃至10,000ppm、具体的には重量に対して、約100ppm乃至約5,000ppmの前記種を含む。前記種は、LEV、OFF、又はAEIフレームワークタイプ分子篩のようなCHA以外のフレームワークタイプを有する物質を含む。この種は、水のような液体媒体中のコロイド懸濁液として反応混合物に添加される。コロイド種懸濁液及びその分子篩の合成における使用は、例えば、2000年2月10日に公開された国際公開公報Nos.00/06493及び00/06494に記載されている。好ましくは、AEIフレームワークタイプ物質、特にAEI構造のシリカ又はアルミノケイ酸塩の構造有するものである。
【0039】
好都合なことには、前記反応混合物は、約4乃至約14の、具体的には約4乃至10のような、例えば、約6乃至約8のpHを有する。
【0040】
ポリプロピレンジャーあるいはテフロン(登録商標)を裏打ちした又はステンレス製のオートクレーブの中において、約135℃乃至約175℃のような、約50乃至約300℃の温度で、結晶化が十分起こる時間、静置又は撹拌状態で結晶化を行う。結晶生成物の形成は、いかなる場合でも、およそ30分から2週間の間まで、具体的には、約45時間から約240時間の間まで、例えば、約2時間から120時間の間までで起こる。用いる温度に依存して結晶化の時間は変動する。通常高い温度を用いると、水熱処理時間が短くなる。
【0041】
通常、結晶生成物は溶液中で形成され、遠心分離又はろ過のような標準技術を用いて回収される。分離された生成物は、洗浄され、遠心分離又はろ過により回収され乾燥される。得られた生成物は4ミクロン以下の、具体的には2ミクロン以下の及び典型的には約1ミクロンの平均結晶サイズを有する粒子を含むことがわかった。
【0042】
結晶化工程後に回収される結晶物質は、合成に用いた少なくとも1の有機誘導試薬の一部をその細孔内に含んでいる。好ましい態様において、活性化は有機誘導試薬を分子篩から除去し、分子篩の細孔チャンネル内の脱離(leaving)触媒部位を供給原料に接触させるために開くことにより行われる。この活性化工程は通常、か焼により行われる、又は酸素含有ガスの存在下で、約200℃乃至約800℃の温度でテンプレートを含む分子篩を加熱することにより行われる。幾つかのケースにおいて、低い酸素又は無酸素環境下で分子篩を加熱することが好ましい。このような工程は、結晶内部の細孔系から、部分的又は完全に有機誘導試薬を除去するのに有効である。他のケースにおいて、わずかな量の有機誘導試薬を分子篩から部分的又は完全に除去するためには、従来の脱離工程により行うことができる。
【0043】
一旦本発明のCHAフレームワークタイプ物質が合成されると、最終的な触媒に硬さ又は触媒活性を提供するバインダー及び/又はマトリックス物質のような他の物質を結合させることにより触媒組成物を形成することができる。
【0044】
本発明のCHAフレームワークタイプ物質とブレンドすることができる物質は、種々の不活性又は触媒的に活性な材料、又は種々の結合剤であることができる。これらの材料には、カオリン及びその他のクレイ、種々の形態の希土類金属、その他の非ゼオライト系触媒成分、ゼオライト系触媒成分、アルミナ又はアルミナゾル、チタニア、ジルコニア、石英、シリカ又はシリカゾル、及びこれらの混合物などの組成物が含まれる。これらの成分は、また、触媒の総コストの削減、再生の間における触媒の遮熱に有用な熱シンクとして作用し、触媒の圧縮(densifying)、及び触媒強度を増加する点において効果がある。反応混合物が前記組成物と混合される場合、最終的な触媒生成物に含まれるゼオライト物質の量は、触媒全体に対し、10乃至90重量パーセント、好ましくは20乃至70重量パーセントの範囲である。
【0045】
本明細書で述べるCHAフレームワークタイプ物質は、サイズ及び極性に基づく分子の選択的分離のために、イオン交換体として、科学的担体として、ガスクロマトグラフィーにおいて、有機変換反応の触媒として、乾式ガス及び液体に対して用いることができる。CHAフレームワークタイプ物質の使用に適した触媒の例は、(a)通常元素周期表の6、及び8乃至10から選択される水素化成分の存在下における重油残さ原材料、循環ストック及び他の水素分解チャージストックの分解、(b)ラフィネート及び潤滑油ベースストックを含む、通常177℃以上で沸騰する炭化水素原料ストックから選択的に直鎖パラフィンを除去するための、異性化脱ろうを含む脱ろう、(c)通常、ゼオライトYのような大きい細孔を有する分解触媒の存在下におけるナフサ、ガスオイル、及び残さオイル等の炭化水素の触媒分解、(d)ガソリン又はガソリンブレンドストックのような燃料及び化学品に有用な重質オレフィンに対する媒体を生産するための、約2乃至21、好ましくは2乃至5の炭素原子を有する直鎖及び分岐鎖オレフィンのオリゴーマ化、(e)オレフィン、具体的には4乃至6の炭素原子を有するオレフィン、特にノーマルブテンをイソ−オレフィンに変換するための異性化、(f)メタン等の低級アルキルのエチレン及びベンゼン等の高級炭化水素への改質、(g)キシレン等のジアルキル芳香族炭化水素を製造するためのトルエン等のアルキル芳香族炭化水素の不均化、(h)エチルベンゼン及びクメンを生産するための、エチレンのプロピレン等のオレフィンを用いたベンゼン等の芳香族炭化水素のアルキル化、(i)キシレン等のジアルキル芳香族炭化水素の異性化、(j)窒素酸化物の触媒還元及び(k)モノアルキルアミン及びジアルキルアミンの合成を含む。
【0046】
特に、本明細書で述べるCHAフレームワークタイプ物質は、オキシジェネートを一以上のオレフィン、特にエチレン及びプロピレンへ変換することに有用である。本明細書で述べるように、「オキシジェネート」の語は、脂肪族アルコール、エーテル、カルボニル化合物(アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭酸塩、及び同種のもの)、及びハロゲン化物、メルカプタン、硫化物、アミン等のヘテロ原子含有化合物、及びこれらの混合物を含むがこれらに限定されない。脂肪族部分は通常1乃至4の炭素原子のような、1乃至10の炭素原子を含む。
【0047】
典型的なオキシジェネートは、低級直鎖又は分岐鎖脂肪族アルコール、それらの不飽和化合物及びそれらの窒素化物、ハロゲン化物及び硫化物を含む。適したオキシジェネート化合物の例は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、C−C10アルコール、メチルエチルエーテル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジ−イソプロピルエーテル、メチルメルカプタン、硫化メチル、メチルアミン、エチルメルカプタン、硫化ジ−エチル、ジ−エチルアミン、塩化エチル、ホルムアルデヒド、炭酸ジ−メチル、ジ−メチルケトン、酢酸、n−アルキルアミン、n−アルキルハロゲン化物、約3乃至10の幅の炭素原子を含むn−アルキル基を有するn−アルキル硫化物及びこれらの混合物を含む。好ましくは、適したオキシジェネート化合物は、メタノール、ジメチルエーテル、又はこれらの混合物であり、最も好ましいのはメタノールである。本明細書で用いるように、「オキシジェネート」は原材料として用いられる有機物質のみを意図する。反応ゾーンへ装填する原材料の中には希釈剤のような追加的な化合物も含まれる。
【0048】
本発明のオキシジェネート変換工程において、有機オキシジェネート、任意で1以上の希釈剤を含む供給原材料は、反応ゾーンの中の気体相の中で、所望のオレフィンを生産するのに効果的なプロセス条件で、本発明の分子篩を含む触媒と接触させる。代替的に、前記工程は液体相又は気体/液体相の中で実施することができる。この工程が液体相又は気体/液体相の中で実施される場合には、触媒及び反応条件に依存して供給原材料から生成物への変換率及び選択性が変動する。
【0049】
希釈剤が存在する場合、希釈剤は通常、供給源材料又は分子篩に対して非反応性であり、供給源材料の中のオキシジェネートの濃度を低めるために用いられる。適した希釈剤の比限定的な例は、ヘリウム、アルゴン、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、水、実質的に非反応性パラフィン(特に、メタン、エタン及びプロパン等のアルカン)、実質的に非反応性の芳香族化合物及びそれらの混合物を含む。最も好ましい希釈剤は水及び窒素であり、水が特に好ましい。希釈剤は供給原材料混合物全体に対して約1モル%乃至約99モル%含まれる。
【0050】
オキシジェネート変換工程に用いる温度は約200℃乃至約1000℃、例えば、約250℃乃至約800℃、約250℃乃至750℃を含み、好都合なことには約300℃乃至約650℃、典型的には約350℃ないし600℃及び具体的には400℃及び約600℃の範囲で大きく変動する。
【0051】
適切に定量化する必要はないけれども、自己加圧及び約0.1kPa乃至約10Mpaの圧力を含まれるがこれらに限定されない圧力の広い幅において軽質オレフィン生成物が生成されるであろう。好都合なことには、前記圧力は約50kPa乃至約1MPaのような、約7kPa乃至約5MPaの幅である。前記圧力は希釈剤が存在しない場合の圧力であり、もし希釈剤が存在するならば、オキシジェネート化合物及び/又はそれらの混合物に基づいて供給原材料の部分的な圧力が決定される。この範囲の下端及び上端の圧力は選択性、変換、コーキング率及び/又は反応速度に有利に影響するけれども依然として、エチレン等の軽質オレフィンが形成される。
【0052】
前記方法は、所望のオレフィン生成物を生成するのに十分な時間連続的に行われる。この反応時間は、数秒から数時間の間で変動し得る。この反応時間は、反応温度、圧力、及び選択された触媒、重量空間速度、相(液体又は気体)及び選択された工程の特徴により決定される。
【0053】
本発明の工程において広い幅の供給原材料に対する重量空間速度(WHSV)を用いることができる。WHSVは、分子篩触媒の総反応容量(不活性物質及び/又は充填剤を除く)に対する時間当たりの供給原料の重量(希釈剤を除く)として定義される。WHSVは、通常、約0.01時間−1乃至約500時間−1、具体的には約0.5時間−1乃至約300時間−1のような、例えば約0.1時間−1乃至約200時間−1の幅である。
【0054】
近年用いられている流動触媒分解装置に似た、連続再生可能な循環流動床反応機は、オキシジェネート変換工程に対する反応システムの実際的な態様である。オキシジェネートからオレフィンへの変換は内部冷却又の冷却装置を伴ういくつかのステージを必要とする高い発熱工程であることから固定床はこの方法には好ましくない。この反応は低圧及び低濃度ガスの生成に依存して大きな圧力低下を生じる。
【0055】
触媒は頻繁に生成されなければならないので、この反応機は触媒の一部分を容易に除去して再生機へ容易に投入できるものでなければならない。触媒の活性を回復させるために、触媒からコークを焼失させることができる、例えば空気のような、酸素含有ガス等の再生媒体に触媒を曝す。反応器内の温度、酸素分圧、及び滞留時間は再生された触媒のコーク含有率が0.5wt%未満になるように選択される。再生された触媒の少なくとも一部が反応機に戻る。
【0056】
一の態様において、CHAフレームワークタイプ分子篩のフレームワーク細孔内に取り込まれた炭化水素共触媒を形成するために、ジメチルエーテル、C−Cアルデヒド化合物及び/又はC−Cオレフィン組成物を用いてオレフィンへオキシジェネートを変換する前に、前記触媒を前処理する。好ましくは、前記前処理は、少なくとも10℃、20℃のような、例えば、少なくとも50℃、オキシジェネート反応ゾーンより高い温度で行われ、分子篩の総重量に対して少なくとも0.1wt%、少なくとも1wt%のような、例えば少なくとも5wt%の取り込まれた共触媒を生産するために調節される。そのような分子篩の炭素含量を高めるための前処理工程は、「プレプーリング(pre−pooling)」として知られ、詳細は、2003年11月12日に提出されU.S.Patent Nos.10/712668、10/712952,及び10/712953に記載されている。これらの文献を参照により本明細書に援用する。
【0057】
本発明は、以下の実施例及び添付の図により、より具体的に説明される。
【実施例】
【0058】
実施例1
23.5mg/mlのAl(NO・9HO水溶液の0.818mlを15.674mlの0.5379モルのN,N,N−トリ−メチル−1−アダマンチルアンモニウム水酸化物の水溶液、(TMAAOH)に添加し、次いで、テトラエチルオルトケイ酸塩の4mlを添加した。全てのテトラエチルオルトケイ素が完全に加水分解されるまで室温の密閉コンテナ内で得られた混合物を攪拌した。得られた透明な溶液に48wt%のフッ化水素酸溶液の0.390mlを添加し、直ちにスラリーを生成した。このスラリーを更に攪拌によりホモジナイズし、濃密なスラリーが得られるまで、水及びエタノールのエバポレーションのために空気に曝した。更なる水をこのスラリー混合物から静的条件においてエバポレートし、以下のモル組成を有する4650mgの乾燥固形ゲルを得た。
SiO:0.00143Al:0.5TEAA:0.6F:5.0H
【0059】
得られた固形分を2等分した。このうちの一に、8.9のSi/Al原子比率を有し、26.4のSi/Na原子比率を有する4mgの種物質(乾燥ゲル固形分に基づき0.2wt%)、AEIを機械攪拌を行いながら添加し、もう一方には種物質を添加しなかった。各固形の混合物をテフロン(登録商標)を裏打ちした5mlの圧力反応器に移し、低い回転(約60rpm)で105℃において65時間結晶化させた。冷却の後、各生成物を遠心により回収し、蒸留水で洗浄し、100℃で乾燥し、種合成については598mgの白い固形ミクロ結晶固形物(乾燥ゲルの総重量に対して29.0%)を、非種合成については701mgの白い固形ミクロ結晶固形物を得た。
【0060】
種工程及び非種工程の合成生成物は、図1(a)及び図2(a)を示すX線回折パターンを示した。これらの図から両生成物ともCHAフレームワークタイプを有することが示される。各生成物のシリカ対アルミナモル比は約700であった。SEM解析の結果を種合成については図3(a)に、非種合成については図4(a)にそれぞれ示す。これらの結果から、種合成は約1ミクロンの実質的に均一な粒子サイズ及び3次元形態を有する生成物を与えることを示したが、いくつかの欠陥及び不規則結晶が観察された。しかしながら、非種合成の生成物はニ峰性の粒子サイズ分布を有する、20ミクロンまでの、有意に大きな粒子を生成した。
【0061】
実施例2
実施例1の工程を23.5mg/mlのAl(NO・9HO水溶液を0.716mlに減らして行い、以下のモル組成を有する乾燥ゲル固形物を得た
SiO:0.00125Al:0.5TMA:0.6F:5.0H
【0062】
この乾燥ゲル固形物を2等分し、一方の固形物に0.2wt%のAEI種を添加し、実施例1に記載の通りに結晶化を行った。洗浄及び乾燥の後、種合成については686mgの白色ミクロ結晶固形物及び非種合成については566mgの白色ミクロ結晶固形物が得られた。
【0063】
種合成及び非種合成による合成生成物は、図1(b)及び図2(b)を示すX線回折パターンを示した。これらの図から両生成物ともCHAフレームワークタイプを有することが示される。各生成物のシリカ対アルミナモル比は約800であった。SEM解析の結果を種合成については図3(b)に、非種合成については図4(b)にそれぞれ示す。これらの結果から、種合成は約1ミクロンの実質的に均一な粒子サイズ及び3次元形態を有する生成物を与えることを示したが、いくつかの欠陥及び不規則結晶が観察された。再び(実施例1と同様に)、種合成は約1ミクロンの実質的に均一な粒子サイズ及び3次元形態を有する生成物を与えることを示したが、非種合成の生成物は20ミクロンまでの有意に大きな粒子を生成した。
【0064】
実施例3乃至6
実施例1の方法を23.5mg/mlのAl(NO・9HO水溶液を0.636ml(実施例3)、0.572ml(実施例4)、0.520ml(実施例5)、及び0,478ml(実施例6)に減らして行い、以下のモル組成を有する乾燥ゲル固形物を得た
SiO:0.00111Al:0.5TMA:0.6F:5.0HO 実施例3
SiO:0.00100Al:0.5TMA:0.6F:5.0HO 実施例4
SiO:0.00091Al:0.5TMA:0.6F:5.0HO 実施例5
SiO:0.00083Al:0.5TMA:0.6F:5.0HO 実施例6
前述のように、各乾燥ゲル固形文を2等分し、一方の乾燥ゲル固形分にのみ0.2wt%のAEIの種を添加して結晶化を行った。得られた合成物を表2にまとめた。
【表3】

【0065】
実施例3乃至6の種合成の生成物に対するX線回折パターンをそれぞれ、図1(c)乃至1(f)に示す。非種合成の生成物のX線回折パターンをそれぞれ図2(c)乃至2(f)に示す。実施例3乃至6の種合成の生成物に対するSEM解析を図3(c)乃至3(f)に、及び非種合成の生成物に対するSEM解析を図4(c)乃至4(f)にそれぞれ示す。
【0066】
実施例7
実施例1の種合成から合成された物質は、30000psig(2.07×10kPa)の圧力でペレットにされ、粉砕され、80及び125μmの間の篩にかけられた。サイズ調製された2の分離サンプルを21mg乃至22mgの間で量りとり、100μmのシリコンカーバイトの90mgと混合した。これらの混合物を石英フリットで底が密閉されている内径1.9mmのチューブに充填した。このチューブは加熱された反応ブロックの中に密閉され、熱反応ブロックの中に入れ、有機テンプレートを効果的に除去するために流れている空気のしたで、2時間、540℃において触媒をか焼した。か焼された触媒は、約100の重量空間速度、及び40psia(276kPa)のメタノール分圧でN中に85%のメタノールを含む混合物に、540℃において6分間曝された。メタノールが反応している間、反応器の廃液が収集され、ガスクロマトグラフィーによる解析のため、所定の時間間隔で貯蔵された。メタノール反応の後、触媒は、沈殿したコークを消散させるために、約90分間、550℃で窒素中に50%の酸素を含む気体流れに曝した。反応器の廃液は、コークの沈殿の量を決定するために赤外分光法を用いて一酸化炭素及び二酸化炭素の両方を定量した。
【0067】
炭水化物生成物の選択性を計算した。以下に提供する値は、全体の反応の個々の選択性の平均値である。各値は、2の個々の繰り返しから得られた選択性の平均値で表す。
【表4】

【0068】
実施例8
実施例4の種及び非種合成の両方の合成物質は、それぞれ30000psig(2.07×10kPa)の圧力でペレットにされ、粉砕され、80及び125μmの間の篩にかけられた。サイズ調製された2の分離サンプルを21mg乃至22mgの間で量りとり、100μmのシリコンカーバイトの90mgと混合した。これらの混合物を石英フリットで底が密閉されている内径1.9mmのチューブに充填した。このチューブは加熱された反応ブロックの中に密閉され、熱反応ブロックの中に入れ、有機テンプレートを効果的に除去するために流れている空気のしたで、2時間、540℃において触媒をか焼した。か焼された触媒は、約100の重量空間速度、及び40psia(276kPa)のメタノール分圧でN中に85%のメタノールを含む混合物に、540℃において6分間曝された。メタノールが反応している間、反応器の廃液が収集され、ガスクロマトグラフィーによる解析の時間間隔で貯蔵された。メタノール反応の後、触媒は、沈殿したコークを消散させるために、約90分間、550℃で窒素中に50%の酸素を含む気体流れに曝した。反応器の廃液は、コークの沈殿の量を決定するために一酸化炭素及び二酸化炭素の両方を定量を伴う赤外分光法により解析された。
【0069】
炭化水素生成物に対する選択性は、各反応において計算された。以下に提供する値は、全体の反応の個々の選択性の平均値である。各値は、2の個々の繰り返しから得られた選択性の平均値で表す。
【表5】

【0070】
実施例9
実施例1の工程は、5のファクターにより増加された試薬の量を用いて繰り返した。エタノール及び大部分の水をエバポレートした後、乾燥ゲルのベースに基づいて0.2wt%のLEVの量において、2000年2月10日に刊行された国際公開公報00/06494に従って調整されたLEVの種(乾燥レビナイト含量11wt%、Si/Al=7)を攪拌しながら添加した。更に水をエバポレーションにより除去し、以下のモル組成を有する乾燥ゲル固形物を得た
SiO:(1/1200)Al:0.5TMA:0.6F:5.0H
このゲルを2等分し、それらを23mlのテフロンを裏打ちしたパールボンブ(Parr−Bomb)の中に入れ、185℃で65時間加熱した。X線回折は固形生成物が純粋なカバサイトであることを示し、元素分析はこのカバサイトのSi/Alが228であることを示した。
【0071】
得られた生成物の走査型電子顕微鏡を図に示す。電子顕微鏡像は、得られた高シリカ結晶が双晶であることを示す。本発明は特定の実施例を参照することにより説明及び図示されるけれども、当業者は、本明細書に図示される必要のない変更を本発明に付与することが可能であることを理解している。このため、本発明の真の範囲を決定する目的のために、添付の特許請求の範囲のみが参照されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1(a)乃至1(b)は、実施例1乃至6の種合成により合成された生成物のX線回折パターンである。
【図2】図2(a)乃至2(f)は、実施例1乃至6の種を使用しないで合成した生成物のX線回折パターンである。
【図3】図3(a)乃至図3(f)は、実施例1乃至6の種合成により合成された生成物のSEM写真である。
【図4】図4(a)乃至4(f)は、実施例1乃至6の種を使用しないで合成した生成物のSEM写真である。
【図5】図5は実施例9の生成物のSEM写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CHAフレームワークタイプを有する結晶物質を合成する方法であって、
(a)CHAフレームワークタイプを有する前記結晶物質を形成することができる反応混合物を形成する工程であって、前記反応混合物がAEIフレームワークタイプを含む前記結晶物質の種を更に含む工程、及び
(b)CHAフレームワークタイプを含む前記結晶物質を前記反応混合物から回収する工程とを含む方法。
【請求項2】
CHAフレームワークタイプを有し、かつそのか焼及び無水状態で、以下のモル関係:
(n)X:YO
(式中、Xは三価元素であり、Yは四価元素であり、及びnは0乃至0.01未満である。)
を含む組成を有する結晶物質を合成する方法であって、
前記方法が、
(a)水の供給源、四価元素Yの酸化物の供給源、任意に三価元素Xの酸化物の供給源、CHAフレームワークタイプを有する前記結晶物質の形成を導くため有機誘導試薬、及びCHA以外のフレームワークタイプを有する結晶物質の種を含む、CHAフレームワークタイプを有する前記結晶物質を形成することができる反応混合物を調製する工程と、
(b)CHAフレームワークタイプを有する前記結晶物質の結晶を形成するのに十分な条件下で前記反応混合物を維持する工程と、及び
(c)(b)から前記結晶物質を回収する工程
とを含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
前記有機誘導試薬が、多環系アミン又はアンモニウム化合物を含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記多環系アミン又はアンモニウム化合物が、三環系又は四環系アミン又はアンモニウム化合物を含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記有機誘導試薬が、N−アルキル−3−キヌクリジノール、N,N,N−トリ−アルキル−1−アダマンチルアンモニウム化合物、N,N,N−トリアルキル−エキソアミノノルボルナン又はこれらの組み合わせである請求項2乃至4のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記有機誘導試薬が、N,N,N−トリメチル−1−アダマンチルアンモニウム化合物を含むことを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記nが、約0.0005乃至約0.007であることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記nが、約0.0008乃至約0.005であることを特徴とする請求項2乃至7に記載のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記反応混合物が、以下のモル組成
O/YO 1乃至20
ハロゲン化物/YO 0乃至2
R/YO 0.01乃至2、及び
/YO 0乃至0.1
(ここで、Rは有機誘導試薬)を有することを特徴とする請求項2乃至8のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記反応混合物が、以下のモル組成
O/YO 1乃至10
ハロゲン化物/YO 0.01乃至1
R/YO 0.1乃至1
/YO 0乃至0.01
(ここでRは有機誘導試薬)を有することを特徴とする請求項2乃至9のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記Xが、アルミニウム、ボロン、鉄、インジウム、ガリウム、又はこれらの組み合わせであり、前記Yが、ケイ素、スズ、チタン、ゲルマニウム又はこれらの組み合わせであることを特徴とする請求項2乃至10のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記Yが、ケイ素であることを特徴とする請求項2乃至11のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記Xが、アルミニウムであることを特徴とする請求項2乃至12のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項14】
前記nが0であることを特徴とする請求項2乃至12のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項15】
前記種が、AEI、LEV又はOFFフレームワークタイプを有する結晶物質を含むことを特徴とする請求項2乃至14のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項16】
前記種が、AEIフレームワークタイプを有するアルミノケイ酸塩又はケイ酸塩を含むことを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項17】
前記種が、液体媒体中のコロイド懸濁液として前記反応混合物に添加されることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項18】
前記反応混合物が、重量比で約0.01ppm乃至約10,000ppmの前記種を含むことを特徴とする請求項1乃至17のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項19】
前記反応混合物が、重量比で約100ppm乃至約5,000ppmの前記種を含むことを特徴とする請求項1乃至18に記載の方法。
【請求項20】
前記反応混合物が、ハロゲン化物又はハロゲン化物含有化合物も含むことを特徴とする請求項1乃至19のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項21】
前記反応混合物が、フッ化物又はフッ化物含有化合物も含むことを特徴とする請求項1乃至請求項20に記載の方法。
【請求項22】
CHAフレームワークタイプを有する前記結晶物質が、4ミクロン以下の平均直径を有する結晶から成ることを特徴とする請求項1乃至請求項21に記載の方法。
【請求項23】
CHAフレームワークタイプを有する前記結晶性物質が、0.5乃至4ミクロンの平均直径を有する結晶から成ることを特徴とする請求項1乃至22のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項24】
CHAフレームワークタイプを有する前記結晶性物質が、フレームワークのリンを実質的に含まないことを特徴とする請求項1乃至23に記載の方法。
【請求項25】
CHAフレームワークタイプを有し、かつそのか焼及び無水形態において、以下のモル関係:
(n)X:YO
(式中、Xは三価元素であり、Yは四価元素であり、nは0乃至0.01未満であり、及び前記物質の結晶が、4ミクロン以下の平均直径を有する)を含む組成を有する結晶物質。
【請求項26】
CHAフレームワークタイプを有し、かつそのか焼及び無水形態において、以下のモル関係:
(n)X:YO
(式中、Xは三価元素であり、Yは四価元素であり、nは0乃至0.01未満であり、及び前記物質の結晶が双晶である)を含む組成を有する結晶物質。
【請求項27】
前記nが、約0.0005乃至0.007であることを特徴とする請求項25又は請求項26に記載の結晶物質。
【請求項28】
前記nが、約0.0008乃至約0.005であることを特徴とする請求項25乃至27に記載の結晶物質。
【請求項29】
前記Xが、アルミニウム、ボロン、鉄、インジウム、ガリウム、又はそれらの組み合わせであり、及びYが、ケイ素、スズ、チタンゲルマニウム又はそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項25乃至28のいずれか1請求項に記載の結晶物質。
【請求項30】
前記結晶物質ことを特徴とする請求項25乃至29のいずれか1請求項に記載の結晶物質。
【請求項31】
前記結晶物質が、そのか焼形態において、重量比で約5乃至約50ppmのハロゲン化物を含むことを特徴とする請求項25乃至30のいずれか1請求項に記載の結晶物質。
【請求項32】
前記ハロゲン化物がフッ化物を含むことを特徴とする請求項25乃至31のいずれか1請求項に記載の結晶物質。
【請求項33】
前記物質の結晶が、約0.5乃至約4ミクロンの平均直径を有することを特徴とする請求項25乃至請求項32のいずれか1請求項に記載の結晶物質。
【請求項34】
オキシジェネート変換条件下で有機オキシジネート化合物を、請求項1乃至24のいずれか1請求項に記載の方法により製造された結晶物質を含む結晶と接触させる工程を含むオレフィンを製造する方法。
【請求項35】
オキシジェネート変換条件下で有機オキシジネート化合物を請求項25乃至33のいずれか1請求項に記載の結晶物質を含む結晶に接触させる工程を含むオレフィンを製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−534582(P2007−534582A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547212(P2006−547212)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/042737
【国際公開番号】WO2005/063622
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】