説明

カバレッジに制限のある環境でGPSを使用して位置を求める方法

空がよく見えるベースGPSレシーバと、空の眺めに制限がある1以上のGPSレシーバと、前記GPSレシーバから供給された範囲情報をバッチ処理し、リモートGPSレシーバの位置を小さな許容誤差範囲内で判定する処理センターとから構成されるシステム。ベースGPSレシーバ、及びリモートGPSレシーバは、レシーバが所与の時刻において追跡している衛星信号に基づいて範囲情報を生成し、それらの範囲情報を処理センターに送る。範囲情報は、コードと、各GPSレシーバが追跡している信号についての搬送波測定値との両方を含む。処理センターは、例えば数時間、数日、又は数週間といった長期間にわたって範囲情報を収集した後、収集した情報をデータを処理する複数のパスにおいてバッチ処理し、レシーバの正確な緯度、経度、及び高度を計算する。処理センターは、浮動不明瞭度フィルタを使用してデータをバッチ処理し、データを処理する第1のパスの後、以前のパスにおいて計算された位置を使用して初期化される。また、処理センターは、後の位置計算に使用される情報が十分に信頼できるものであるか否かを確認するために、浮動不明瞭度フィルタの位置、及び位置共分散を固定し、ベースGPSレシーバ測定値に対して二重差を使用して、収集した範囲情報の品質の計算も行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は概してGPSレシーバに関し、特に、カバレッジ(受信有効範囲)に制限がある環境で動作するGPSレシーバに関する。
【背景技術】
【0002】
[背景情報]
固定位置GPSレシーバを利用して正確な位置情報を求める測量システムその他の測定システムは、「カバレッジに制限のある」環境で動作させることが難しく、場合によっては、動作させることが出来ないこともある。カバレッジに制限のある環境とは、GPS衛星からの直接の信号が、間接信号(マルチパス信号)によって乱され、場合によっては、直接の信号が完全に遮断される環境である。カバレッジに制限のある環境の例は、樹木の枝葉、地形、建物などによってGPSレシーバからの空の眺めの一部が不明瞭となる環境や、大きなマルチパス信号がGPSレシーバに供給される環境である。
【0003】
カバレッジに制限のある環境では、GPSレシーバが受信する信号群は、乱された信号を含むだけでなく、純粋に間接的な信号、すなわち、視線上で妨害された信号に対応する反射信号を含むことがある。従来の態様で動作するGPSレシーバは、受信信号を全て使用して、わずか数メートルの精度の位置を生成することができる。また、GPSレシーバは、位置の計算に使用される十分な数のGPS衛星を視界内に捕らえることが出来ないことがある。したがって、測量システムその他の測定システムは、目的によっては必要とされる誤差範囲内で位置(緯度、経度、及び高度)を判定することが出来ないことがある。
【0004】
以下で説明するように、我々は、カバレッジに制限のある環境にあるGPSレシーバから提供された範囲情報を処理し、GPSレシーバの位置を必要とされる誤差範囲内で判定する方法を考え出した。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、GPSレシーバから得られる範囲情報をバッチ処理することによって小さな誤差範囲内でGPS位置を判定するシステムである。このシステムは、空の眺めが障害物によって遮られていないベースGPSレシーバを含む。測定範囲内にあるベースGPSレシーバ、及び他のGPSレシーバは、所与の時刻においてGPSレシーバが追跡する衛星信号に基づいて範囲情報を生成し、その範囲情報をデータ記録処理センターに送る。この範囲情報は、コードと、GPSレシーバがトラッキングしている各信号に対応する搬送波測定値との両方を含む。データ記録処理センターは、長期間、例えば、数時間、数日、又は数週間にわたって範囲情報を収集した後、収集した情報をバッチ処理することによって、GPSレシーバの正確な緯度、経度、及び高度を計算する。また、後で詳しく説明するように、データ記録処理センターは、バッチ位置計算に使用される情報が十分に信頼出来るものであることを確認するために、収集された範囲情報の品質の計算も行う。
【0006】
長期間の間に、所与のGPSレシーバが、3つ又は4つの比較的短いインターバルの間に異なる空の位置において少なくとも2つの衛星を同時に捕捉していれば、範囲情報のバッチ処理は、測量システムや測定システムのような用途に必要とされる比較的小さな許容誤差の範囲内で、GSPレシーバの位置を生成することができる。バッチ処理により本システムは、GPSレシーバが複数の衛星からのGPS衛星信号を常に追跡していなくても、また、GPSレシーバが同じGPS衛星の組からの信号を常に追跡していなくても、GPSレシーバの正確な位置を計算することが出来る。
【0007】
データ処理センターは、長時間にわたって所与のGPSレシーバから収集された範囲データをバッチ処理することにより、単一の位置(すなわち、緯度、経度、高度)、及び関連する位置共分散を計算する。バッチ処理は、収集された範囲データを処理する複数のパスを含む。第1のパスは、収集されたデータを全て使用して、すなわち、全ての擬似範囲情報、及び搬送波位相情報を使用して、30メートルから60メートルの期待精度で、推定地上位置を生成する。上で述べたように、この精度は、範囲データの全体的品質の影響を受ける。
【0008】
データを処理する次のパスにおいて、データ記録制御センターは、マルチパスの影響をあまり受けない搬送波位相測定だけを使用して、計算上の位置、及び位置共分散を絞り込む。GPSレシーバは、第1のパスから得られた推定位置、及び位置共分散を使用して開始され(集束的態様の計算である)、搬送波サイクル不明瞭度を推定し、最新の推定位置、及び関連する位置共分散を判定する。推定位置、及び関連位置共分散は、エポックコードの度に毎回更新され、すなわち、搬送波サイクル不明瞭度の計算に二重差を計算できるときに毎回更新され、その際、2以上の衛星がGPSレシーバの視界に入る。第2のパスの終了時における位置推定精度は、3メートルから6メートルであることが期待され、大半の誤差は、高度成分に起因する。
【0009】
データを処理する第3のパスは、第2のパスから得られた最良推定位置に位置を固定し、搬送波位相測定値を使用して計算される残余、及びベースGPSレシーバからの測定値を使用して二重差に基づいて計算される推定不明瞭度の増大をロックする。次にプロセスは、残余の増大が少ない、又は残余の増大に全く関与しないデータの更なる処理を選択し、残余の増大が比較的大きいデータに無効フラグを付ける。さらに、プロセスは、後の処理に使用される種々のデータに選択的に重みを付ける。
【0010】
次にプロセスは、第3のパスの結果に基づいて推定位置を再計算する。システムは、無効フラグが付けられた測定値を計算対象から外し、残りの測定値に適当な重みを割当て、新たな位置推定値、及び関連する位置共分散を生成する。
【0011】
次に処理システムは、位置、及び位置共分散を新たな推定値に固定し、第3のパスを繰り返す。すなわち、関連する残余に基づいて測定値の有効性、及び重みを判定する処理ステップを繰り返す。このステップにおいてシステムは、前回の推定位置、及び位置共分散に対して移動した思われるが、新たな推定値に対しては動いていないことが判明した特定の測定値を有効なものとして受け入れる場合がある。次にシステムは、最新の重み、及び有効性判定を使用して、次の推定位置、及び関連する位置共分散を判定し、この処理、すなわち、新たな重みと次の推定位置の判定を繰り返し続ける。この処理は、繰り返し行われる処理間で、推定位置の変化が所定の閾値未満になるまで継続される。
【0012】
本発明の説明では、添付の図面を参照する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[例示的実施形態に関する詳細な説明]
ここで図1を参照すると、位置判定システム100は、特定地域内の選択された場所にある信号レシーバ7を通して範囲情報をデータ記録制御センター12に供給する複数のGPSレシーバ6を含む。範囲情報は、擬似範囲測定値、及び搬送波測定値を含む。信号レシーバ7は、ケーブル14によってセンター12に接続される。センター12は、範囲情報を保持、及び処理するための1以上のワークステーション2、及びデータ記憶装置1を有する。種々のケーブル14(図面には1つしか描かれていない)からの信号は、従来の態様で動作するマルチプレクサ4を通して1以上のワークステーション2に供給される。本明細書において、GPSレシーバ6は、「リモートレシーバ」と呼ばれることもある。
【0014】
データ記録制御センター12は、空が良く見える場所にあるベースGPSアンテナ13を使用して種々のGPS衛星9から信号を受信するベースGPSレシーバ3を含む。空が良く見えるGPSアンテナ13を設置するために、高いタワー5が必要になる場合がある。図に描かれているように、GPSレシーバ6のうちの特定のもの、又は全ては、様々な樹木の下、又は樹木の付近にあり、任意の所与の時刻において、上空の特定位置にあるGPS衛星9からの信号10は、種々のGPSレシーバの位置において得られないか、又は弱められる場合がある。
【0015】
ベースGPSレシーバ3は、視野内のGPS衛星9のそれぞれからの信号10を捕捉し、それらの信号を追跡する。GPSレシーバ6は、所与の時刻において追跡可能な衛星信号に基づいて範囲情報を生成し、その範囲情報を信号レシーバ7を介してデータ記録制御センター12に送る。後で図2を参照して詳しく説明するように、センター12は、長時間(例えば、数時間、数日、又は数週間)にわたって範囲情報を収集した後、収集した範囲情報をバッチ処理することにより、GPSレシーバの正確な緯度、経度、及び高度を計算する。また、センター12は、バッチ処理に使用される情報が十分に信頼できるものであることを確認するために、収集された範囲情報の品質の計算も行う。
【0016】
長時間の間に、所与のGPSレシーバ6が、3つ又は4つの比較的短いインターバルの間に上空の異なる位置にある少なくとも2つの衛星を同時に捕捉していて、且つ、データ収集期間中にGPSレシーバが動かなかった場合に限り、範囲情報のバッチ処理は、地震の測定や計測のような用途に必要とされる比較的小さな許容誤差の範囲内で、GPSレシーバの位置を計算することができる。したがって、バッチ処理によって本システムは、GPSレシーバがGPS衛星信号を常に追跡していなくても、また、GPS衛星の同じ組からの信号を追跡していなくても、GPSレシーバの正確な位置を計算することが出来る。
【0017】
データ記録制御センター12は、浮動不明瞭度フィルタ8を使用してデータを処理する複数のパスを作成し、範囲情報をバッチ処理する。後で詳しく説明するように、このフィルタは、搬送波不明瞭度がリセットされたときに、リセットされていない位置、及び位置共分散行列を使用して、前記複数のパスのうちの特定のパスで動作する。その結果、フィルタは、観測情報(ここでは、搬送波情報)の全履歴を使用して、所与のレシーバの静止位置を推定することが出来る。したがって、このフィルタは、連続した搬送波位相測定値の個々のブロックに関連する観測情報の使用に限定されない。
【0018】
図2を更に参照すると、バッチ処理は、収集された範囲情報を処理する次のようなパスを含む。
【0019】
パス1: 所与のGPSレシーバ6から得られるデータ(擬似範囲、及び搬送波位相を含む)を浮動不明瞭度フィルタ8を使用して処理し、第1の推定位置を生成する(ステップ200)。このパスの出力は、30メートルから60メートルの期待精度を持つ位置である。このデータは、長期間(すなわち、数時間、数日など)のうちの種々の時点においてGPSレシーバの視野内にあるGPS衛星からの信号に基づいて生成される。通常、範囲データは、8時間から24時間の間の時間にわたって収集される。樹木、又は他の不完全な視野が原因で、リモートGPSレシーバの空の眺めには制限があり、GPSレシーバは、長期間のうちの一部においてしか、視野内に同じ組の衛星を捕捉できないことがあり、また、時刻によっては、視野内に1つしか衛星を捕捉できない場合もある。また、一部の衛星信号は、GPSレシーバの空の眺めを遮る障害物や、近くの建造物などによる妨害によって反射された信号の影響を受けた多数のマルチパス成分によって、歪められる場合がある。したがって、データによっては信頼できないものもある。
【0020】
パス2: 浮動不明瞭度フィルタ8は、パス1で計算された推定位置を使用して初期化される。パス2では、擬似範囲測定値は使用せず、搬送波位相測定値だけを使用して、正確な位置を計算する(ステップ202)。位置、及び位置共分散は、エポックコード(開始コード)のたびに毎回更新され、その際、GPSレシーバの視野内に2以上の衛星が捕捉される。サイクルスリップの後、又は少なくとも1つのエポックコードについて1以下の衛星しか利用できない場合、このフィルタはリセットされる。フィルタがリセットされるたびに毎回、フィルタは、最後の推定位置、及び位置共分散を初期値として使用する(ステップ204)。位置情報は、不明瞭度情報が実質的に破棄されるまで保持される。最後のパス2の位置精度は3メートルから6メートルであり、大半の誤差は高度成分に関連する。
【0021】
パス3: このパスでは、全ての観測搬送波データを使用できるように、位置、及び位置共分散は一定に固定される(ステップ206)。この固定位置は、パス2で計算された最後の位置である。位置共分散は、非常に小さな要素(すなわち、0.00000001m2)しか持たない対角行列として保持される。位置を固定した状態で、システムは、ベースレシーバからの観測値を使用して、二重差搬送波不明瞭度を推定し、関連する二重差搬送波残余を判定する(ステップ208)。残余、及びその増大率の分析に基づいて、データは、無効であるもとして扱われるか、又はそれに従って重み付けされる(ステップ210)。
【0022】
このパスでは、浮動不明瞭度フィルタに変更を加え、搬送波サイクルのスリップ、すなわち、ロック外れが検出された場合にのみ、搬送波不明瞭度をリセットするように浮動不明瞭度フィルタを変更する。搬送波測定値が連続していれば、残余は無制限に増大することが許される。このパスで生成された残余は、次のパスで使用される一連の信号品質インジケータの生成に使用される。信号品質インジケータによれば、各エポックコードの時に、各衛星からの搬送波測定値に適切な重みを割り当てることが可能となる。下記の条件が満たされたとき、最大の重みが搬送波測定値に割り当てられる。
(a)最後のサイクルスリップからの時間が、第1の所定の閾値を超えていて、
(b)連続して取得される測定値の1つのインターバルにわたって、搬送波測定値の残余の二乗の和が、正規化された閾値未満に下回っていて、
(c)連続して取得される測定値の1つのインターバルにわたって、前記残余の和の増加率が、第2の所定の閾値を超えていないこと。
【0023】
これらの条件が全て満たされると、サイクルスリップ間、又はロック破壊間のインターバル全体にわたる一連の搬送波観測値に、無効というフラグが付けられる。サイクルスリップ間のあるインターバルにおける一連の搬送波測定値が有効であると思われる場合、すなわち、それらの条件が満たされている場合、そのインターバル内の測定値の一部(インターバルの最後のポイントにおける測定値は含まない)の重みは除去される場合がある。この重みの除去は、連続した測定値における相関のあるマルチパス誤差、すなわち、ホワイトノイズを防止し、推定位置に不適切な影響が加わることを防止するために使用される。この重みの除去は、例えば、特定のエポックコードにわたって測定値の一部だけを使用する形をとる。すなわち、測定値4つにつき1つの測定値を使用するか、又は、関連計算において比較的大きな標準偏差を使用する形をとる。
【0024】
したがって、システムは、各エポックコードの時に、各PRNコードについてフラグを有する重み付けテーブル(図示せず)を作成する。これらのフラグは、データを処理する次のパスにおいて、測定値をどのように使用するかを知らせるためのものである。これらのフラグは、単なる「有効」又は「無効」といったものでもよいし、どの程度の量の測定値から重み付けを除去すべきかを指定するものであってもよい。
【0025】
パス4: 最後の推定位置、及び位置共分散は、このパスにおける浮動不明瞭度フィルタの初期化に使用される(ステップ212)。次にフィルタは、重み付けテーブルを使用して、フィルタが使用する搬送波観測値に重みを割当て、「無効」というフラグが付けられた観測値を前記計算対象から外す。システムは、新たな推定位置、及び位置共分散を生成し(ステップ214)、その後、以下で説明する有効性検証を実施する。
【0026】
パス5及びそれ以降: パス5はパス3と同じで、最後の推定位置を固定位置として使用する(ステップ218)。したがって、二重差搬送波残余は、パス3と同様に計算され、テストされる。そして、対応する観測値の有効、又は無効が再度決定される。次に、新たな重み付けテーブルを作成し、新たな推定位置、及び位置共分散が、パス4と同じ仕方で計算される。次にシステムは、その新たに計算された位置が、最後に計算された位置に対して、所定の閾値を超えて異なるか否かを判定する(ステップ216)。異なっている場合、システムはパス5を繰り返す(ステップ218)。そうでない場合、システムは、新たな推定値を計算上の位置として使用する(ステップ220)。例えば、繰り返される処理間において、高度(大抵の誤差はここで発生する)の変化が0.05メートル未満である場合、解は集束したものとみなされ、処理は終了する。
【0027】
テスト説明
上で述べたプロセスをテストするために、制限が非常に厳しいテスト環境を選択した。テスト場所は、ブリティッシュコロンビア州メイプルリッジにあるカナダ・ブリティッシュコロンビア大学(UBC)のマルコム・クナップ研究森林(Malcolm Knapp Research Forest)である。全部で8個のNovAtel社のOEM4−G2L型レシーバをその森の原生林区画に一列に設置した。この森は、非常に密生していて、高さ50メートルを超える背丈の高い樹木があり、下草も多い。また、テスト期間の大半を通じて雨が降っていたため、湿度レベルも高く、枝葉はたっぷりと水を蓄えていた。ローバGPSアンテナは、地面の直ぐ近くに設置した。これらのGSPアンテナは、螺旋ロッドに取り付けられ、地面から3インチ以内の位置に配置した。22時間分のデータセットを収集した。NovAstel社のOEM4−G2L基地局は、空の眺めが妨げられない状態に設置した。
【0028】
UBCの研究森林は、優れたカバレッジ環境を提供するだけでなく、その中に、FERICによってテスト範囲として決められた既存の測量ネットワークを有している。従来のGPSの能力は非常に貧弱で、特に、枝葉が多い環境では、高度について貧弱であるため、GPSレシーバ位置の独立した基準が必要であった。水平位置判定のための総合ステーションと、垂直成分の判定のための水準器とを使用して、FERICによるテスト範囲の外のポイントで、従来の測量を実施した。FERIC測量ネットワークは、水平方向については10cmの精度を有していると思われるが、高さについては1メートルの精度しか有していないものと思われる。このテストによって実施された水平方向の測量は、FERICネットワークが0.20メートル未満の精度であることに合意した。レベルループは0.017メートル付近であるから、各地点における垂直方向の制御は、0.01メートル未満となるはずである。本明細書に記載されている位置誤差は全て、この地上測量に関するものである。
【0029】
テスト結果
8個のローバGPSレシーバは、樹木の生い茂った渓谷の領域に配置され、大きな樹木や切り株等の近くに配置された。したがって、システムは、マルチパス信号が多数存在し、大半の場所で空の眺めに制限がある環境にGPSレシーバを置いた状態でテストされた。表1は、8個のローバGPSレシーバの位置誤差をまとめたものである。
【0030】
【表1】

【0031】
水平位置の判定結果は、従来の処理技術を使用して達成されるものに比べて良好であるが、垂直位置の判定結果が非常に素晴らしく、平均高度誤差は0.52メートルであった。
【0032】
表2は、高度誤差と、それらの高度誤差を実現するために必要とされるパス数をまとめたものである。
【0033】
【表2】

【0034】
表3に示されているように、高度推定値の集束に関する改善度はパスによって異なることが分かる。
【0035】
【表3】

【0036】
テスト結果から分かるように、本システムは、レシーバが、たとえカバレッジに極めて厳しい制限のある環境を特徴とする位置に置かれた場合であっても、測量や地震計測といった用途に関係する許容誤差範囲内でGPS位置を計算する。所与のレシーバによって得られるデータを処理するためのパス数は、レシーバの置かれた位置における条件によって決まり、したがって、データの信頼性に基づいて決まる。
【0037】
上記の説明は、本発明の特定の実施形態に制限されない。しかしながら、当然ながら、本発明の利点の一部又は全てを維持したまま、本発明に変更や修正を施すことも可能である。例えば、ベースGPSレシーバ観測データは、2以上のGPSレシーバによって得ることもでき、それらのGPSレシーバを合わせて空全体をはっきりと見れるようにしてもよく、位置共分散は、知覚される相対移動等に関する所定の小さな閾値を表わす他の値に固定してもよい。したがって、添付の特許請求の範囲の目的は、そうした変形や修正も全て、本発明の真の思想、及び範囲に含めることにある。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に従って構成されたシステムの機能ブロック図である。
【図2】図1のシステムによって実施されるバッチ処理を示すフロー図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空が良く見えるアンテナを備えたベースGPSレシーバと、
1以上のリモートGPSレシーバと、
複数時間にわたってベースGPSレシーバ、及びリモートGPSレシーバから範囲データを収集し、対応するGPSレシーバの位置を計算するデータ処理サブシステムと
を含み、前記データ処理センターは、浮動不明瞭度フィルタを使用して、前記リモートレシーバから受信したデータを、データを処理する複数のパスにおいてバッチ処理し、第1のパスの後、前回計算された推定位置を使用して前記浮動不明瞭度フィルタが初期化される、GPSシステム。
【請求項2】
データを処理する第2のパスにおいて、前記データ処理センターは、
前回計算された位置共分散を使用して前記浮動不明瞭度フィルタを更に初期化し、
前記範囲データに含まれる搬送波位相測定値を使用して推定位置を計算する、請求項1に記載のGPSシステム。
【請求項3】
前記データ処理センターは、
エポックコードの時に、前記浮動不明瞭度フィルタの前記位置、及び前記位置共分散を更新し、前記エポックコードのときに、前記リモートGPSレシーバは、視野内に2以上のGPS衛星を有し、
サイクルスリップが発生したとき、又は1以下の衛星しか視野内に存在しないときに、少なくとも1つのエポックコードについて前記位置、及び位置共分散を再初期化する、請求項2に記載のGPSシステム。
【請求項4】
前記データ処理センターは、データを処理する後続の1以上のパスにおいて、
前記位置、及び位置共分散を固定し、個々のエポックコードについて範囲データの有効性を判定し、
前記推定位置、及び位置共分散の計算において有効であるものと判定されたデータだけを使用する、請求項2に記載のGPSシステム。
【請求項5】
前記データ処理センターは、1平方メートルの数分の一の要素を持つ対角行列を前記固定された位置共分散として使用する、請求項4に記載のGPSシステム。
【請求項6】
前記データ処理センターは、前記データに重みを割り当てる、請求項4に記載のGPSシステム。
【請求項7】
前記データ処理センターは、前記ベースGPSレシーバによって作成された対応する測定値に対する二重差である搬送波位相測定値の残余の二乗の和に基づいて、前記範囲データが有効であるか否かを判定する、請求項4に記載のGPSシステム。
【請求項8】
前記データ処理センターは、二重差搬送波サイクル不明瞭度を推定し、搬送波サイクルスリップが検出された場合、前記搬送波不明瞭度をリセットする、請求項7に記載のGPSシステム。
【請求項9】
カバレッジに制限のある環境においてGPS位置を計算する方法であって、
1以上のベースGPSレシーバから空の明瞭な眺めに関連する範囲データを受信するステップと、
空の眺めに制限がる1以上のリモートレシーバから範囲データを受信するステップと、
数時間にわたって受信した前記範囲データを、データを処理する複数のパスにおいて、浮動不明瞭度フィルタを使用してバッチ処理することによって所与のリモートレシーバの位置を判定し、データを処理する第1のパスの後、前記データを前回計算された推定位置を使用して初期化するステップと
からなる方法。
【請求項10】
前記バッチ処理するステップは、データを処理する第2のステップにおいて、前回計算された位置共分散を使用して前記浮動不明瞭度フィルタを更に初期化し、前記範囲データに含まれる搬送波位相測定値を使用して前記推定位置を計算する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記バッチ処理するステップは、
エポックコードの時に、前記浮動不明瞭度フィルタの前記位置、及び位置共分散を更新し、該エポックコードの時に、前記リモートGPSレシーバが、視野内に2以上のGPS衛星を有するステップと、
サイクルスリップが発生したとき、又は視野内に1以下の衛星しか存在しないときは常に、少なくとも1つのエポックコードについて前記位置、及び位置共分散を再初期化するステップと
を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記バッチ処理するステップは、データを処理する1以上の後続のパスにおいて、
前記位置、及び位置共分散を固定し、前記エポックコードについてのい前記範囲データの有効性を判定するステップと、
前記推定位置、及び位置共分散の計算において有効であるものと判定されたデータだけを使用するステップと
を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記バッチ処理するステップは、1平方メートルの数分の一の要素を持つ対角行列を前記固定された位置共分散として使用するステップを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記バッチ処理するステップは、前記データに重みを割り当てるステップを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記バッチ処理するステップは、前記1以上のベースGPSレシーバによって作成された対応する測定値に対する二重差である前記搬送波位相測定値の残余の和に基づいて、前記範囲データが有効であるか否かを判定するステップを更に含む,請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記バッチ処理するステップは、二重差搬送波サイクル不明瞭度を推定し、搬送波サイクルスリップが検出されたときに前記搬送波不明瞭度をリセットするステップを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記バッチ処理するステップは、
a)最後のサイクルスリップからの時間が第1の所定の閾値を超え、
b)連続して取得される測定値の1つのインターバルにわたって、前記搬送波測定値の残余の二乗の和が正規化された閾値を下回り、
c)連続して取得される測定値の1つのインターバルにわたって、前記残余の二乗の和の増加率が、第2の所定の閾値を超えていない場合に、
前記範囲データが有効であるものと判断するステップを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記空の明瞭な眺めに関連する範囲データを受信するステップは、あわせて空の明瞭な眺めを有する複数のGPSレシーバから範囲データを受信することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項19】
前記空の明瞭な眺めに関連する範囲データを受信するステップは、空の明瞭な眺めを有するベースGPSレシーバから範囲データを受信することを含む、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−506126(P2008−506126A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520630(P2007−520630)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【国際出願番号】PCT/CA2005/001102
【国際公開番号】WO2006/005193
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(598093381)ノヴァテル・インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】