説明

カバーテープ

【課題】透明性に優れ、エンボスキャリアテープに低温でかつ、十分な接着が可能であり、適度な収縮によって、エンボスキャリアテープにヒートシールした後も緩みなくタイトなテーピングができ、ヒートシール時に発生する加熱収縮力によって、シール剥離が起こらず、安定した剥離強度を有した省エネルギー型で収納物への熱ダメージの小さいカバーテープを提供すること。
【解決手段】積層される少なくとも2層からなる延伸フィルムであって、融解ピーク温度が100℃未満のエチレン系共重合体からなるシール層(A)と、密度が0.945〜0.970g/cm3の高密度ポリエチレンからなる基材層(B)と、を有するカバーテープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカバーテープに関する。具体的には、本発明は、電子部品包装用のエンボスキャリアテープに熱シールすることができるカバーテープに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子部品の搬送用途にエンボスキャリアテープが用いられている。エンボスキャリアテープは、電子部品の形状に合わせて連続に、凹状に成型されたシートであり、一個一個半導体等を埋め込んで組立工場に持って行き、マウンターと呼ばれる部品組立機械(実装機)にセットして搬送できるように設計されているシートである。
携帯電話、携帯ゲーム機等の電子機器の小型化に伴い、使用される電子部品についても小型化が進んでおり、機器の組立工程においては組立の自動化、高速化が行われ、エンボスキャリアテープ等のパッケージングにも精度が求められている。
【0003】
現在、エンボスキャリアテープのカバーテープとして、PETフィルムにポリエチレンを押出ラミネート、またはPETフィルムにポリエチレンフィルムをドライラミネートして、つくられるカバーテープが主に用いられている。しかしながら、前記のようなカバーテープは、カバーテープ自体の反りや熱シール時の膨張等によって、カバーテープが弛みやすい傾向がある。このようなカバーテープを用いた場合、電子部品の固定が十分にできず、搬送中や輸送中の振動によって、電子部品がエンボスキャリアテープ内で大きく揺られ破損する恐れがある。
【0004】
特許文献1には、基材層として、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン等の二軸延伸フィルムを用いた電子部品包装用カバーテープが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−312489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されたフィルムは基材層の二軸延伸フィルムの収縮温度が高く、ヒートシール時に熱をかけても、カバーテープが収縮せず、ゆるみが生じる場合がある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、透明性に優れ、エンボスキャリアテープに低温でかつ、十分な接着が可能であり、適度な収縮によって、エンボスキャリアテープにヒートシールした後も緩みなくタイトなテーピングができ、ヒートシール時に発生する加熱収縮力によって、シール剥離が起こらず、安定した剥離強度を有した省エネルギー型で収納物への熱ダメージの小さいカバーテープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、積層される少なくとも2層からなり、特定の樹脂からなるシール層および基材層を有する延伸フィルムとすることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は以下のカバーテープを提供する。
[1]
積層される少なくとも2層からなる延伸フィルムであって、
融解ピーク温度が100℃未満のエチレン系共重合体からなるシール層(A)と、密度が0.945〜0.970g/cm3の高密度ポリエチレンからなる基材層(B)と、を有するカバーテープ。
[2]
前記シール層(A)が、前記エチレン系共重合体を40〜99質量%と、スチレン系エラストマーを1〜60質量%と、からなる、[1]に記載のカバーテープ。
[3]
前記エチレン系共重合体がエチレン−酢酸ビニル共重合体である、[1]または[2]に記載のカバーテープ。
[4]
前記シール層(A)と前記基材層(B)との間に、密度が0.945〜0.970g/cm3の高密度ポリエチレンを10〜90質量%と、190℃におけるメルトフローレートが0.1〜10g/10分である高圧法低密度ポリエチレンを90〜10質量%と、からなる中間層(C)を有する、[1]〜[3]のいずれか一項に記載のカバーテープ。
[5]
前記シール層(A)および/または前記基材層(B)が、アイオノマー樹脂、ポリエーテル/ポリオレフィンブロック共重合体、および4級アンモニウム塩タイプ帯電防止剤からなる群から選択される少なくとも1種の高分子型帯電防止剤をさらに含有する、[1]〜[4]のいずれか一項に記載のカバーテープ。
[6]
二軸延伸フィルムである、[1]〜[5]のいずれか一項に記載のカバーテープ。
[7]
前記シール層(A)および前記基材層(B)の少なくとも1層が架橋されている、[1]〜[6]のいずれか一項に記載のカバーテープ。
[8]
120℃における加熱収縮率が1.0〜40.0%であり、120℃における加熱収縮力が0.13〜0.5N/9.5mm巾であり、かつ剥離強度が0.1〜1.3Nである、[1]〜[7]のいずれか一項に記載のカバーテープ。
【発明の効果】
【0010】
本発明のカバーテープを用いれば、透明性に優れ、エンボスキャリアテープに十分な接着が可能であり、ヒートシール時に発生する加熱収縮力によって、シール剥離が起こらず、安定した剥離強度を有し、また適度な収縮によって、エンボスキャリアテープにヒートシール後も緩みなくタイトなテーピングを行うことが可能なカバーテープを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、本実施の形態)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0012】
本実施の形態のカバーテープは、積層される少なくとも2層からなる延伸フィルムであって、融解ピーク温度が100℃未満のエチレン系共重合体からなるシール層(A)と、密度が0.945〜0.970g/cm3の高密度ポリエチレンからなる基材層(B)と、を有する。本実施の形態のカバーテープにおいては、シール層(A)と基材層(B)とが、延伸フィルムにおける少なくとも2層として積層されている。
【0013】
[シール層(A)]
本実施の形態のカバーテープは、融解ピーク温度が100℃未満のエチレン系共重合体からなるシール層(A)(以下、単に(A)と略称する場合がある。)を有する。
融解ピーク温度が100℃未満のエチレン系共重合体をシール層として用いることにより、低温シール性に優れるカバーテープとすることができる。
【0014】
エチレン系共重合体はエチレンと共重合される成分の含有量が多くなる程、融解ピーク温度が低下し、低温シール性を発現することができることからエチレン系共重合体の融解ピーク温度は100℃未満である。エチレン系共重合体の融解ピーク温度は、好ましくは95℃以下、より好ましくは90℃以下である。
保管時のブロッキング防止やベタツキの観点から、エチレン系共重合体の融解ピーク温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは45℃以上、さらに好ましくは50℃以上である。
本実施の形態において、融解ピーク温度は、示差操作熱量計により得られる融解パターンのうち、2回目以降の融解時に得られるピーク値を指す。具体的には「Diamond DSC(商品名:パーキンエルマー社製)」を用いて、0℃から200℃までの温度範囲を10℃/分の速度で昇温後、200℃から0℃までの温度範囲を10℃/分の速度で降温し、更に0℃から200℃まで昇温した際に得られる融解パターンのピーク値である。
【0015】
エチレン系共重合体としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA、EMAA等)、エチレンアクリル酸エステル共重合体(EEA、EMMA、EGMA等)、またエチレンと上記の共重合する各単量体の自由な組み合わせの少なくとも2種からなる多元共重合体(EGMA−VA、EGMA−MA等)から選ばれる少なくとも1種の接着性樹脂が挙げられる。上記エチレン系共重合体の中でも、コストや取扱い性等の観点からEVAやEMMAが好ましい。
【0016】
EVAなどのエチレン系共重合体中の酢酸ビニルなどのエチレン以外の単量体の含有量は、低温シール性の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。エチレン系共重合体中の該単量体の含有量は、原料自体の取扱い性の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
【0017】
エチレン系共重合体の190℃におけるメルトフローレート(MFR)は、0.5〜40g/10分であることが好ましく、より好ましくは1.0〜35g/10分であり、さらに好ましく2.0〜30g/10分である。
本実施の形態において、メルトフローレート(MFR)は、JIS K7210記載の方法により測定することができる。測定条件はコードD(試験温度190℃、荷重2.16kg)又はコードM(試験温度230℃、荷重2.16kg)が採用される。
【0018】
本実施の形態において、シール層(A)にスチレン系エラストマーをブレンドすると、カバーテープの接着性を向上させることができる。シール性向上およびカバーテープのブロッキング防止の観点から、シール層(A)は、融解ピーク温度が100℃未満のエチレン系共重合体を40〜99質量%と、スチレン系エラストマーを1〜60質量%と、からなる層であることが好ましい。
融解ピーク温度が100℃未満のエチレン系共重合体は、シール層(A)全体の40〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは40〜99質量%であり、さらに好ましくは45〜95質量%であり、よりさらに好ましくは50〜90質量%である。
スチレン系エラストマーは、シール層(A)全体の1〜60質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜55質量%であり、さらに好ましくは10〜50質量%である。
【0019】
スチレン系エラストマーとしては、例えば、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのブロック共重合体、およびその誘導体が挙げられる。ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのブロック共重合体としては、スチレンを代表とするビニル芳香族炭化水素を主体とするブロックと、ブタジエン、イソプレン等の共役ジエンを主体とするブロックと、からなるブロック共重合体等が挙げられる。その誘導体としては、該ブロック共重合体の二重結合の少なくとも一部を水素添加処理したもの、またはマレイン酸やアミン、イミンで変性したもの等が挙げられる。中でも、スチレン系エラストマー中のスチレンの含有量(スチレン含有量)が50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。
【0020】
本実施の形態において、ビニル芳香族炭化水素を主体とするブロックとは、ビニル芳香族炭化水素を50質量%以上有するブロックを意味し、共役ジエンを主体とするブロックとは、共役ジエンを、50質量%を超えて有するブロックを意味する。
【0021】
スチレン系エラストマーの230℃におけるメルトフローレート(MFR)は、1.0〜10g/10分であることが好ましく、より好ましくは2.0〜8.0g/10分であり、さらに好ましくは3.0〜6.0g/10分である。
MFRが1.0g/10分以上の場合、押出時の負荷を減少させられるため、押出性の観点で好ましく、10g/10分以下の場合、押出安定性が向上し、原反の厚み精度が向上するため好ましい。
【0022】
シール層(A)にはブロッキング防止のために、シリカ等の無機粒子や環状オレフィンを添加してもよい。特に環状オレフィンはテーピング時に脱落が起こらず、内容物に付着することを防止できる。
【0023】
[基材層(B)]
本実施の形態のカバーテープは、密度が0.945〜0.970g/cm3の高密度ポリエチレンからなる基材層(B)(以下、単に(B)と略称する場合がある。)を有する。
密度が0.945〜0.970g/cm3の高密度ポリエチレンを基材層として用いることで、カバーテープに耐熱性を与えることができ、ヒートシール時にコテにカバーテープが付着するのを防止することができる。また、カバーテープに腰を与えることができ、テーピング時の安定走行性が増す。
【0024】
高密度ポリエチレンの密度が0.945g/cm3以上の場合、剛性に優れるカバーテープとすることができる。高密度ポリエチレンの密度が0.970g/cm3以下の場合、透明性に優れるカバーテープとすることができる。
高密度ポリエチレンの密度は、より好ましくは0.948〜0.969g/cm3であり、さらに好ましくは0.951〜0.968g/cm3である。
本実施の形態において、密度は、JIS K7112記載の密度勾配管を用いたD法等の方法により測定することができる。
【0025】
高密度ポリエチレンの190℃におけるメルトフローレート(MFR)は、0.5〜10g/10分であることが好ましく、より好ましくは0.6〜8.0g/10分であり、さらに好ましくは0.7〜6.0g/10分である。
MFRが0.5g/10分以上の場合、押出時の負荷を減少させられるため、押出性の観点で好ましく、10g/10分以下の場合、押出安定性が向上し、原反の厚み精度が向上するため好ましい。
【0026】
高密度ポリエチレンの融解ピーク温度は、125〜140℃であることが好ましく、より好ましくは128〜139℃であり、さらに好ましくは130〜138℃である。
融解ピーク温度が125℃以上の場合、カバーテープに腰を与えて、剛性を発揮することができるため好ましく、140℃以下の場合、カバーテープの透明性の観点で好ましい。
【0027】
本実施の形態において、基材層(B)に、190℃におけるメルトフローレートが0.
1〜5.0g/10分である高圧法低密度ポリエチレンをブレンドすると、カバーテープの成形時に押出成形性を向上させることができる。
カバーテープの成形性の観点から、基材層(B)は、密度が0.945〜0.970g/cm3の高密度ポリエチレンを基材層(B)全体の60〜99質量%と、190℃におけるメルトフローレートが0.1〜5.0g/10分である高圧法低密度ポリエチレンを1〜40質量%と、からなる層であることが好ましい。
高圧法低密度ポリエチレンの密度は0.915〜0.930g/cm3であることが好
ましく、より好ましくは0.918〜0.928g/cm3である。
【0028】
[中間層(C)]
本実施の形態のカバーテープは、シール層(A)と基材層(B)との間に中間層(C)(以下、(C)と略称する場合がある)を有するフィルムであってもよい。
高密度ポリエチレンと高圧法低密度ポリエチレンの組成物からなる層を中間層(C)として配置することで、カバーテープの成形性を向上させ、カバーテープの剛性を維持することができる。
【0029】
本実施の形態において、高密度ポリエチレンの密度は、0.945〜0.970g/cm3であることが好ましく、より好ましくは0.948〜0.969g/cm3であり、さらに好ましくは0.951〜0.968g/cm3である。
密度が0.945g/cm3以上の場合、カバーテープの剛性が向上するため好ましく、0.970g/cm3以下の場合、カバーテープの透明性の観点から好ましい。
高密度ポリエチレンの融解ピーク温度は、125〜140℃であることが好ましく、より好ましくは128〜139℃であり、さらに好ましくは130〜138℃である。
融解ピーク温度が125℃以上の場合、カバーテープに腰を与えて、剛性を発揮することができるため好ましく、140℃以下の場合、カバーテープの透明性の観点で好ましい。
【0030】
本実施の形態において、基材層(B)および中間層(C)を構成する高密度ポリエチレンは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0031】
本実施の形態において、高圧法低密度ポリエチレンの密度は0.915〜0.930g/cm3であることが好ましく、より好ましくは、0.918〜0.928g/cm3である。
密度が0.915以上の場合、カバーテープに剛性が付与でき、0.930以下の場合、透明性が向上する。
高圧法低密度ポリエチレンの190℃におけるメルトフローレートは0.1〜5.0g/10分であることが好ましく、より好ましくは3.0g/10分以下であり、1.0g/10分以下がさらに好ましい。
【0032】
本実施の形態において、基材層(B)および中間層(C)を構成する高圧法低密度ポリエチレンは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0033】
中間層(C)を構成する高密度ポリエチレンは、カバーテープへの剛性付与の観点から、中間層(C)全体の10〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは20〜85質量%であり、さらに好ましくは30〜80質量%である。
中間層(C)を構成する高圧法低密度ポリエチレンは、押出安定性、延伸安定性等の観点から、中間層(C)全体の90〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは80〜15質量%であり、さらに好ましくは70〜20質量%である。
【0034】
中間層(C)には、高密度ポリエチレンおよび高圧法低密度ポリエチレンに加えて、第3成分として、その他のポリエチレン系樹脂をさらに配合してもよい。中でも、密度が0.915〜0.950g/cm3の線状低密度ポリエチレンを配合すると、カバーテープの剛性を維持したまま、カバーテープの破断強度等を向上させることが可能である。線状低密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.920〜0.945g/cm3である。
【0035】
[カバーテープ]
本実施の形態のカバーテープは、積層される少なくとも2層からなる延伸フィルムであって、前記シール層(A)と、前記基材層(B)と、を有する。
【0036】
本実施の形態のカバーテープは、シール層(A)、基材層(B)、および必要に応じて中間層(C)、さらに配置されるその他の層において、それぞれ本来の特性を損なわない範囲で、各種導電材料、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、石油系樹脂、着色剤、各種界面活性剤、アンチブロック剤、無機フィラー等の任意の添加剤を含んでいてもよいし、別途コーティング処理を行って塗布してもよい。
その他の層としては、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)等のバリア性樹脂による防湿層
等が挙げられる。
【0037】
帯電防止剤として、アイオノマー樹脂、ポリエーテル/ポリオレフィンブロック共重合体、および4級アンモニウム塩タイプ帯電防止剤からなる群から選択される少なくとも1種の高分子型帯電防止剤を用いることで、透明性やシール性を損なわずに、導電性または帯電防止性を付与することが可能となる。
アイオノマー樹脂としては、カリウムやリチウムイオンでカルボキシル基を置換したものがよい。アイオノマー樹脂のブレンド比率としては、帯電防止剤を含む層に対して1〜40質量%が好ましい。
ポリエーテル/ポリオレフィンブロック共重合体としてはリチウム塩を2〜30%含むものを用いるとさらに導電性能が向上するため好ましい。ポリエーテル/ポリオレフィンブロック共重合体のブレンド比率としては、帯電防止剤を含む層に対して10〜40質量%が好ましい。
4級アンモニウム塩タイプ帯電防止剤としては、帯電防止性能の高い4級アンモニウム塩を樹脂の主鎖に組み込んでポリマー化したものが耐久性の向上やブリードの抑制等の観点から、本用途においても好適である。
【0038】
本実施の形態のカバーテープは、架橋されたフィルムであってもよい。
本実施の形態のカバーテープが積層される少なくとも2層からなる延伸フィルムである場合には、シール層(A)および基材層(B)の少なくとも1層が架橋されていてもよく、積層される少なくとも3層からなる延伸フィルムである場合には、シール層(A)、基材層(B)、および中間層(C)、さらに配置されるその他の層の少なくとも1層が架橋されていてもよいが、シール層(A)および基材層(B)の少なくとも1層が架橋されていることが好ましい。
本実施の形態において、シール層(A)および基材層(B)の両方の層が架橋されていてもよく、シール層(A)、基材層(B)、および中間層(C)、さらに配置されるその他の層の少なくとも2層以上が架橋されていてもよく、全ての層が架橋されていてもよい。
【0039】
本実施の形態のカバーテープは、コロナ処理やプラズマ処理が施されていてもよく、必要に応じて、収縮性を阻害しない範囲で、他種フィルムと各種ラミネ−ションを行った多層積層体として用いてもよい。
他種フィルムとしては、延伸ポリプロピレン(O−PP)フィルム、延伸PET(O−PET)フィルム、延伸ナイロン(O−Ny)フィルム等が挙げられる。
【0040】
本実施の形態のカバーテープの厚みは、好ましくは10〜100μmであり、より好ましくは15〜90μmであり、さらに好ましくは20〜80μmである。
カバーテープの厚みが10〜100μmの範囲であれば、エンボスキャリアテープにシールした後も、カバーテープが弛まず、次の工程でカバーテープを剥離する際にもカバーテープ切れを生じにくく有効である。
【0041】
シール層(A)の厚みは、好ましくは0.5〜50μmであり、より好ましくは0.75〜45μmであり、さらに好ましくは1.0〜40μmである。表面層の厚みは、要求されるシール強度によって適宜選択することができる。
【0042】
基材層(B)の厚みは、好ましくは0.5〜50μmであり、より好ましくは0.75〜45μmであり、さらに好ましくは1.0〜40μmである。
【0043】
本実施の形態において、カバーテープ全体に占めるシール層(A)の厚みの層比率は、シール強度の観点から5%以上が好ましく、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは20%以上であり、透明性の観点から50%以下が好ましく、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%以下が好ましい。
カバーテープ全体に占める基材層(B)の厚みの層比率は、5〜95%であることが好ましく、カバーテープの剛性の観点から、8%以上であることがより好ましく、押出成形性、延伸安定性の観点から、90%以下であることがより好ましい。
【0044】
本実施の形態において、シール層(A)と基材層(B)との間に中間層(C)を配置する場合のカバーテープ全体に占める中間層(B)の厚みの層比率は、延伸安定性観点から30〜90%が好ましく、50〜85%がより好ましい。
【0045】
本実施の形態のカバーテープの全光線透過率は85%以上であることが好ましい。85%以上の全光線透過率を有するカバーテープであれば、被挿入物の視認性を低下させずにテーピングすることができるため、テーピング後の目視検査や画像処理による検査にも有効である。より好ましくは88%以上であり、さらに好ましくは89%以上である。
【0046】
本実施の形態のカバーテープは、シュリンクフィルムとして、ヒートシール時に適度に収縮させることで、タイトな包装体とすることができる。タイトな包装体とするために、カバーテープの収縮温度は適宜調整することができる。
例えば、より高温で収縮させたい場合には、基材層(B)により密度の高い高密度ポリエチレンを用いたり、基材層(B)の層比率を増やしたりすることで、収縮性を調節することができる。
【0047】
本実施の形態のカバーテープの120℃における加熱収縮率は1〜40%であることが好ましい。1%以上の加熱収縮率を有するカバーテープであれば、包装後に、カバーテープが緩まずにエンボスキャリアテープにタイトに密着した包装体を得ることができる。また、40%以下の加熱収縮率を有するカバーテープであれば、収縮時におけるシール部への負担を軽減し、シール剥離が起こらず、またテーピング後のエンボスキャリアテープの反りを抑制することができる。より好ましくは3〜35%の範囲である。
本実施の形態において加熱収縮率とはカバーテープのMD(流れ方向)、TD(幅方向)2方向それぞれの加熱収縮率をいう。
【0048】
本実施の形態のカバーテープの100℃における加熱収縮率は、MD方向の加熱収縮率とTD方向の加熱収縮率の平均として、1〜20%であることが好ましい。1%以上の加熱収縮率を有するカバーテープであれば、包装後に、カバーテープが緩まずにエンボスキャリアテープにタイトに密着した包装体を得ることができる。また、20%以下の加熱収縮率を有するカバーテープであれば、収縮時におけるシール部への負担を軽減し、シール剥離が起こらず、またテーピング後のエンボスキャリアテープの反りを抑制することができる。より好ましくは2〜15%の範囲である。
【0049】
本実施の形態のカバーテープの120℃における加熱収縮力は0.13〜0.5N/9.5mm巾であることが好ましい。0.13N/9.5mm巾以上の加熱収縮力を有するカバーテープであれば、包装後に、カバーテープが緩まずにエンボスキャリアテープにタイトに密着した包装体を得ることができる。また、0.5N/9.5mm巾以下の加熱収縮力を有するカバーテープであれば、収縮時におけるシール部への負担を軽減し、シール剥離が起こらず、またテーピング後のエンボスキャリアテープの反りを抑制することができる。より好ましくは0.15〜0.45N/9.5mm巾の範囲である。
本実施の形態において加熱収縮力とはカバーテープのMD方向の加熱収縮力をいう。
【0050】
本実施の形態のカバーテープの剥離強度は0.1〜1.3Nであることが好ましい。0.1N以上の剥離強度を有するカバーテープであれば、テーピング後の輸送時に振動や衝撃を受けてもカバーテープ剥がれが起こらず、内容物を保持することができる。また、1.3N以下の剥離強度を有するカバーテープであれば、実装時の剥離によって、キャリアテープが振動することなく、安定した剥離を行うことができる。より好ましくは0.15〜1.0Nの範囲である。
【0051】
本実施の形態のカバーテープの引張破断強度は、テーピング時、および引き剥がし時の切れ防止の観点で、10N/9.5mm巾以上であることが好ましく、20N/9.5mm巾以上であることがより好ましい。
【0052】
本実施の形態のカバーテープの引張弾性率は、カバーテープの取扱い性の観点で、400N/mm2以上であることが好ましく、500N/mm2以上あることがより好ましい。
【0053】
[カバーテープの製造方法]
本実施の形態のカバーテープは、
シール層(A)、基材層(B)、中間層(C)およびその他の層を構成する樹脂をそれぞれ単独の押出機より、溶融押出して、多層ダイ中で積層し、溶融共押出して急冷し、延伸用原反を得る工程、
未延伸原反を、各樹脂の融解ピーク温度以上まで加熱して、面積延伸倍率5〜60倍に延伸する工程、を含む製造方法により製造することができる。
【0054】
本実施の形態の製造方法においては、シール層(A)と、基材層(B)と、を有する少なくとも2層からなるように溶融共押出する。
共押出しは特に制限されるものではなく、多層のTダイや多層のサーキュラーダイを用いた方法等を用いることができるが、多層のサーキュラーダイを用いた方法が好ましい。
多層のサーキュラーダイを用いると、設備に関しての必要スペースや投資金額の点で有利であり、多品種少量生産に向き、熱収縮性がより得られやすい。
【0055】
本実施の形態におけるカバーテープの製造方法において、急冷に使用する冷媒は通常60℃以下の水が好適に用いられ、溶融樹脂に直接接触させるか、もしくは金属ロールの内部冷媒として間接的に使用される。内部冷媒として用いる場合は水以外にもオイル他、公知のものが使用可能であり、場合によっては冷風の吹き付けと併用することも可能である。
【0056】
本実施の形態におけるカバーテープの製造方法において、得られた延伸用原反を各樹脂の融解ピーク温度以上に加熱し、面積延伸倍率で5〜50倍に延伸する。
延伸は面積延伸倍率で、好ましくは8〜40倍であり、用途に応じて適宜選択されるが、必要に応じて延伸後に熱処理を行ってカバーテープの加熱収縮率や加熱収縮力の調整を行ってもよい。
延伸方法は溶融押出直後のチューブに空気や窒素を吹き込んで、延伸を行うダイレクトインフレーション法によっても収縮するカバーテープが得られることもあるが、本実施の形態のカバーテープのように高収縮性を発現させるためには、一軸に延伸される方法が好ましく、より好ましくは二軸に延伸される方法であり、さらに好ましくは前述のサーキュラーダイで得られた延伸用原反を加熱二軸延伸するチューブラー法(またはダブルバブル法ともいう)である。
本実施の形態においては、二軸延伸するチューブラー法により製造される二軸延伸多層フィルムであることが好ましい。
【0057】
本実施の形態におけるカバーテープの製造方法は、延伸前、または延伸後に架橋処理を行う工程を含んでもよい。
架橋処理を行う場合は、加熱して延伸する前にエネルギー線照射によって架橋処理を行うことがより好ましい。これにより延伸工程における延伸開始から終了までのカバーテープの変動が一層小さくなって安定化し、より高倍率での延伸も可能となり、より薄肉でより高収縮性のカバーテープが得られやすくなる。
延伸した後のカバーテープにエネルギー線照射による架橋処理を行ってもよい。用いるエネルギー線としては紫外線、電子線、X線、γ線等の電離性放射線が挙げられ、好ましくは電子線であり、10〜300KGyの照射量範囲で使用されることが好ましい。カバーテープへの延伸安定性付与やシール時の耐熱性付与等の観点から、より好ましくは50kGy以上、さらに好ましくは80kGy以上である。また低温シール性付与の観点から、より好ましくは280kGy以下、さらに好ましくは250kGy以下である。
【0058】
本実施の形態のカバーテープのゲル分率は、より高倍率での延伸も可能となり、より薄肉でより高収縮性のカバーテープが得られやすくなることから、10%以上であることが好ましく、より好ましくは20%以上であり、さらに好ましくは30%以上である。
【0059】
照射によって架橋する層は目的に応じて任意に選択することが可能であり、各層の表面付近を主に架橋したい場合は、延伸原反の厚みに応じて加速電圧を調整することにより厚み方向での線量分布を調整して照射する方法、アルミ等の遮蔽板使用によって同様に線量分布を調整するマスク照射法、電子線を延伸原反面に対して斜め方向より照射する方法等がある。
【0060】
各層に任意の架橋阻害剤や架橋助剤(架橋促進剤)を添加してもよく、架橋助剤としては、トリアリルイソシアヌレート、トリメタアリルイソシアヌレート、トリメチルプロパントリアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリメタアリルシアヌレート等が挙げられる。
【0061】
本実施の形態における製造方法により得られるカバーテープは、適度な熱収縮特性を有し、シュリンクフィルムとして好適であり、テーピング後にカバーテープにシワ、緩み、弛み等を発生することなくエンボスキャリアテープに密着して固定保持を持続することができる。また、テーピング時にカバーテープに発生する収縮応力が大きくてエンボスキャリアテープから剥離してしまう場合や、エンボスキャリアテープに反りが発生するような場合には、延伸後に熱弛緩処理等を加えて本実施の形態で特定した熱収縮特性の範囲内で自由に調整することができる。
【実施例】
【0062】
以下、本実施の形態を実施例および比較例によりさらに具体的に説明するが、本実施の形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、本実施の形態に用いられる評価方法および測定方法は以下のとおりである。
【0063】
(1)ゲル分率
沸騰パラキシレン中で試料を12時間抽出し、不溶解分の割合を次式により表示したものをゲル分率とし、フィルムの架橋度の尺度として用いた。
ゲル分率(質量%)=(抽出後の試料質量/抽出前の試料質量)×100
【0064】
(2)引張破断強度
(株)島津製作所製のオートグラフを用いて、9.5mm巾にスリットした各フィルムを、サンプル長が50mm、引張速度が200mm/minの条件で引張試験を行い、引張破断強度を求めた。
【0065】
(3)引張弾性率
(株)島津製作所製のオートグラフを用いて、巾が9.5mm、長さが100mmのサイズに切り出した試料を、JIS K 7113に準拠して、引張弾性率の測定を行った。
【0066】
(4)全光線透過率
JIS K7361−1に準拠して、全光線透過率の測定を行った。
【0067】
(5)加熱収縮力
フィルムをMD、TDの各方向に幅9.5mmの短冊状にサンプリングし、それをストレインゲージ付のチャックにチャック間50mmに緩めることなくセットし、測定温度は120℃で測定した。
フィルムを所定温度に加熱したシリコーンオイル中に浸漬し、1分後の収縮力をMDについて各温度で測定し、得られた値を加熱収縮力とし、5回の測定結果の平均値として求めた。
【0068】
(6)加熱収縮率
100mm角のフィルム試料を100℃または120℃の温度に設定したエアーオーブン式恒温槽に入れ、自由に収縮する状態で10分間処理した後、それぞれ向き合う辺の中心点間距離を測定してフィルムの収縮量を求め、元の寸法で割った値の百分比でMDおよびTDそれぞれの収縮率を2回の測定結果の平均値として求めた。
【0069】
(7)剥離強度試験
(株)パルメック製 半自動テーピングマシン PTS−180を用いて、シール時間=0.3sec、送りピッチ=8mm、シール圧力=0.4MPaの条件で、12mm巾のPS製エンボスキャリアテープ((株)住友ベークライト製 スミキャリア(12mm巾))に対し、9.5mm巾にスリットした、各フィルムを120℃でテーピングし、それぞれ3回分の剥離試験用サンプルを得た。
次に、(株)パルメック製 剥離強度テスター PFT−50Sを用いて、剥離速度=300mm/分、剥離角度=170°の条件で、テーピングした剥離試験用サンプルを1時間経過後に、計3回引き剥がして、その平均値より剥離強度を求めた。
【0070】
(8)テーピングサンプルの外観検査
剥離強度測定用に(7)で得られた、パッケージングサンプルのカバーテープの弛みを評価した。
○:弛みがなく、タイトにパッケージングされている。
×:カバーテープに弛みが生じている。
【0071】
(9)表面抵抗
超絶縁計SM−8220(日置電機株式会社製)を用いて、JIS K6911に記載の抵抗率測定法に従い、各フィルムの表面抵抗値を測定した。測定温度は23℃、湿度は45%であった。
【0072】
実施例および比較例で用いた樹脂は以下のとおりである。
[シール層]
EVA1:エチレン−酢酸ビニル共重合体(日本ユニカー(株)製 EVA 3810)、酢酸ビニル含有量=27質量%、MFR(190℃、2.16kgf)=13g/10分、融解ピーク温度=73℃
EVA2:エチレン−酢酸ビニル共重合体(日本ユニカー(株)製 EVA 3460)、酢酸ビニル含有量=20質量%、MFR(190℃、2.16kgf)=20g/10分、融解ピーク温度=75℃
EVA3:エチレン−酢酸ビニル共重合体(日本ユニカー(株)製 EVA 3140N)、酢酸ビニル含有量=10質量%、MFR(190℃、2.16kgf)=20g/10分、融解ピーク温度=92℃
EVA4:エチレン−酢酸ビニル共重合体(日本ユニカー(株)製 EVA 3610)、酢酸ビニル含有量=6質量%、MFR(190℃、2.16kgf)=17g/10分、融解ピーク温度=101℃
EMMA1:エチレン−メチルメタアクリレート共重合体(住友化学(株)製 アクリフトWH206)、MMA含有量=20質量%、MFR(190℃、2.16kgf)=2g/10分、融解ピーク温度=86℃
SEBS1:水添スチレン系熱可塑性エラストマー(旭化成ケミカルズ(株)製 タフテック(登録商標) H1221)、スチレン含有量:12質量%、MFR(230℃、2.16kgf)=4.5g/10分
帯電防止剤1:アイオノマー樹脂(三井・デュポンポリケミカル(株)製)(Entira(登録商標) MK400:MFR=1g/10分、イオン種=カリウム、密度0.965g/cm3)
帯電防止剤2:ポリエーテル−ポリオレフィンブロックポリマー(三光化学(株)製) サンコノールTBX−25
帯電防止剤3:4級アンモニウム塩タイプ帯電防止剤(大成ファインケミカル(株)製)1SX−3000
【0073】
[基材層、中間層]
HD1:高密度ポリエチレン(旭化成ケミカルズ(株)製 サンテックHD(登録商標) J240)、MFR(190℃、2.16kgf)=5.5g/10分、密度=0.966g/cm3、融解ピーク温度=134℃)
HD2:高密度ポリエチレン(旭化成ケミカルズ(株)製 サンテックHD(登録商標) S362)、MFR(190℃、2.16kgf)=0.8g/10分、密度=0.955g/cm3、融解ピーク温度=130℃)
LD1:高圧法低密度ポリエチレン(旭化成ケミカルズ(株)製 サンテックLD(登録商標) M2102)、MFR(190℃、2.16kgf)=0.2g/10分、密度=0.921g/cm3、融解ピーク温度=121℃)
【0074】
[実施例1]
シール層(A)として、EVA1、基材層(B)として、HD1、および中間層(C)として、HD2を65質量%とLD1を35質量%用いて、層配置がA/C/Bで、各層の厚み比率(%)が10/80/10となるように環状3層ダイを用いて押出した後、冷水にて急冷固化して折り幅130mm、厚みが約600μmの各層とも均一な厚み精度のチューブ状延伸用原反を得た。これに、電子線照射(加速電圧=1MV、照射線量=120kGy)を行い、得られた架橋未延伸原反を2対の差動ニップロール間に通し、延伸開始点の加熱温度を約140℃になるようにしてエアー注入してバブルを形成させ、MDに3.3倍、TDに4.6倍延伸(面積延伸倍率で15.2倍)を行い、厚みが40μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0075】
[実施例2および3]
表1に示す層構成に代えた以外は、実施例1と同様の方法、条件で、厚みが40μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0076】
[実施例4および6]
表1に示す層の厚みに代えた以外は、実施例1と同様の方法、条件で、厚みが40μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0077】
[実施例5]
表1に示す層の厚みで、未延伸原反の厚みを800μmに調整し、MDに3.1倍、TDに4.3倍延伸(面積延伸倍率で11.6倍)を行った以外は、実施例1と同様の方法で、厚みが60μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
【0078】
[実施例7]
600μmの未延伸原反への電子線照射条件として、照射線量を200kGyに変えた以外は、実施例1と同様の方法で、厚みが40μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表2に示す。
【0079】
[実施例8]
600μmの未延伸原反への電子線照射条件として、加速電圧を300kVに変えた以外は、実施例1と同様の方法で、厚みが40μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表2に示す。
【0080】
[比較例1]
実施例1と同様の層構成で、環状ダイからの押出し温度を190℃に調整し、ダイレクトインフレーション法によってブローアップ比率5倍で厚みが40μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表3に示す。
【0081】
[比較例2]
実施例1と同様の層構成で、環状ダイからの押出し温度を190℃に調整し、ダイレクトインフレーション法によってブローアップ比率5倍で厚みが40μmのフィルムを得た。得られたフィルムに120kGyの電子線を照射した。得られたフィルムの評価結果を表3に示す。
【0082】
[比較例3]
表3に記載の層組成で、実施例1と同様の条件にて、厚みが40μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表3に示す。
【0083】
[比較例4]
市販のPETフィルム(東レ株式会社製 ルミラー(登録商標)♯12)に、イソシアネート系接着剤をグラビアコート法で塗布し、その塗布面側に比較例1で得られたフィルムの基材層側を張り合わせて、厚みが52μmのフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表3に示す。
【0084】
[実施例9]
帯電防止剤1(アイオノマー樹脂 Entira(登録商標) MK400)を実施例1のシール層組成と基材層組成に対し、各25質量%添加した以外は実施例1と同様の方法で、厚みが40μmのフィルムを得た。
得られたフィルムを用いて、23℃、50%RHの条件で表面抵抗値を測定し、得られた評価結果を表4に示す。
【0085】
[実施例10]
帯電防止剤2(ポリエーテル/ポリオレフィンブロック共重合体 サンコノール(登録商標)TBX−25)を実施例1のシール層組成と基材層組成に対し、各15質量%添加した以外は実施例1と同様の方法で、厚みが40μmのフィルムを得た。
得られたフィルムを用いて、23℃、50%RHの条件で表面抵抗値を測定し、得られた評価結果を表4に示す。
【0086】
[実施例11]
帯電防止剤2(サンコノール(登録商標) TBX−25)の添加量を5質量%に変更した以外は実施例7と同様の方法で、厚みが40μmのフィルムを得た。
得られたフィルムを用いて、23℃、50%RHの条件で表面抵抗値を測定し、得られた評価結果を表4に示す。
【0087】
[実施例12]
実施例1のEVA1をEMMA1に変更し、帯電防止剤3(4級アンモニウム塩タイプ帯電防止剤(大成ファインケミカル(株)製 1SX−3000)をシール層組成に2質量%添加し、基材層組成に対し、帯電防止剤2を5質量%添加した以外は実施例1と同様の方法で、厚みが40μmのフィルムを得た。
得られたフィルムを用いて、23℃、50%RHの条件で表面抵抗値を測定し、得られた評価結果を表4に示す。
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】

【0090】
【表3】

【0091】
【表4】

【0092】
表1および表2の結果から、実施例1〜8のカバーテープは透明性に優れており、エンボスキャリアテープに十分な接着が可能であり、シール時に剥離も起こらなかった。また、ヒートシール時にかかる熱によって、適度に収縮が起こり、緩みのないタイトなテーピングを行うことができた。
表4の結果から、実施例9〜12のカバーテープは、フィルムの透明性を維持したまま、半導体や電子部品等のテーピングを行うために、実用的に十分な導電性、帯電防止性を付与することが可能である結果となった。
一方、表3の結果から、比較例1で得られたフィルムは、架橋処理をしていないため、耐熱性が不十分であり、シールを行う際に、コテにフィルムの基材層側が貼りついてしまい安定したシールが行えなかった。
また、比較例2で得られたフィルムは延伸後に架橋を行っており、耐熱性は問題ないが、ダイレクトインフレーション法により押出および延伸を行っているため、フィルム自体の収縮が起こらず、ヒートシール時にフィルムに緩みが発生する結果となった。
比較例3のフィルムはシール層樹脂の融解ピーク温度が100℃以上であるため、120℃ではシールせず、剥離強度測定用、外観検査用のサンプルが得られなかった。さらに150℃まで、シール温度を上げていったがフィルムの両端が収縮してしまい、剥離強度測定用、外観検査用のサンプルが得られなかった。
比較例4のフィルムはPETフィルムにより、耐熱性は得られているが、収縮性が阻害されており、シール時に収縮が起こらず、フィルムに緩みが発生する結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明のカバーテープは、電子部品包装用のエンボスキャリアテープに熱シールが可能なカバーテープとして好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層される少なくとも2層からなる延伸フィルムであって、
融解ピーク温度が100℃未満のエチレン系共重合体からなるシール層(A)と、密度が0.945〜0.970g/cm3の高密度ポリエチレンからなる基材層(B)と、を有するカバーテープ。
【請求項2】
前記シール層(A)が、前記エチレン系共重合体を40〜99質量%と、スチレン系エラストマーを1〜60質量%と、からなる、請求項1に記載のカバーテープ。
【請求項3】
前記エチレン系共重合体がエチレン−酢酸ビニル共重合体である、請求項1または2に記載のカバーテープ。
【請求項4】
前記シール層(A)と前記基材層(B)との間に、密度が0.945〜0.970g/cm3の高密度ポリエチレンを10〜90質量%と、190℃におけるメルトフローレートが0.1〜10g/10分である高圧法低密度ポリエチレンを90〜10質量%と、からなる中間層(C)を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のカバーテープ。
【請求項5】
前記シール層(A)および/または前記基材層(B)が、アイオノマー樹脂、ポリエーテル/ポリオレフィンブロック共重合体、および4級アンモニウム塩タイプ帯電防止剤からなる群から選択される少なくとも1種の高分子型帯電防止剤をさらに含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のカバーテープ。
【請求項6】
二軸延伸フィルムである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のカバーテープ。
【請求項7】
前記シール層(A)および前記基材層(B)の少なくとも1層が架橋されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載のカバーテープ。
【請求項8】
120℃における加熱収縮率が1.0〜40%であり、120℃における加熱収縮力が0.13〜0.5N/9.5mm巾であり、かつ剥離強度が0.1〜1.3Nである、請求項1〜7のいずれか一項に記載のカバーテープ。

【公開番号】特開2011−162228(P2011−162228A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26512(P2010−26512)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】