説明

カバー用難燃性布帛

【課題】ウレタンフォーム等のクッション材と組み合わせた場合の難燃性を満足させつつ、風合いや通気性等の使用時の快適性や意匠性を損なうことの無い椅子張り地やマットレス、クッション等のカバー用難燃性布帛を提供する。
【解決手段】ガラス成分を含有し、好ましくはアクリロニトリル30〜70重量%、ハロゲン含有ビニルおよび/又はハロゲン含有ビニリデン単量体70〜30重量%、およびそれらと共重合可能なビニル系単量体0〜10重量%からなる重合体から構成され、アンチモン化合物を含有するハロゲン含有繊維繊維15〜85重量%と、ウール繊維およびセルロース系繊維のうち少なくとも1種の繊維85〜15重量%とからなるカバー用難燃性布帛は、クッション材と組み合わせた場合の難燃性を満足させつつ、風合いや通気性等の使用時の快適性や意匠性を損なうことの無いものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバー用難燃性布帛に関する。さらに詳しくは、椅子、マットレス、クッション等の張り地として用いられるカバー用難燃性布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、衣食住の安全性確保の要求が強まり、防炎の観点より難燃素材の必要性が高まってきている。そのような中で椅子やマットレス、クッション等の製品に用いられるカバー用布帛も例外ではなく、使用時の快適性や意匠性だけではなく、難燃性付与の必要性が高まってきている。
【0003】
これら椅子やマットレス、クッション等の製品においては、使用時の快適性のために、クッション材として、極めて易燃性であるウレタンフォーム等が用いられることが多い。
それら製品の防炎性の確保には、カバー用布帛に適当な難燃素材を使用することでウレタンフォーム等への着炎を長時間にわたり防止する高度な難燃性を具備させることが重要である。また、その難燃素材は、椅子やマットレス、クッション等の製品の快適性や意匠性を損なわないものでなければならない。
【0004】
このようなカバー用難燃性布帛に関し、過去様々な難燃性合成繊維や防炎薬剤が検討されてきたが、高度な難燃性とこれら製品に求められる快適性、意匠性を充分に兼ね備えたものは未だ現れていない。
【0005】
例えばウール繊維からなる布帛は、ザプロ加工と呼ばれる難燃加工を施す手法があるが、加工時の安全性やコスト面等に問題があった。
【0006】
また綿や麻等のセルロース系繊維からなる布帛には、難燃剤を布帛に含浸させたり、布帛の裏側に樹脂からなるコーティング材とともにバックコートさせたりする手法があるが、難燃剤の付着の均一化の困難性、該難燃剤の付着やコーティング材による布帛の硬化や通気性の低下、洗濯や経年使用による難燃剤の脱離、難燃剤の安全性等に問題があった。
【0007】
またアラミド繊維に代表される耐熱性繊維からなる布帛は、難燃性は優れているが極めて高価であり、さらに吸湿性や触感の悪さ、そして当該繊維自身が着色している場合もあり、意匠性の高い製品を得るのが難しいという問題があった。
【0008】
更にはクッション材として難燃ウレタンフォームを用いた場合は、従来のウレタンフォームに比較して難燃性は優れているが、高価であるという問題があった。
【0009】
これらの椅子、マットレス、クッション等の製品に使用されるカバー用布帛の欠点を改良し、一般的な特性として要求される優れた風合、吸湿性、触感を有し、かつ、安定した高度な難燃性を有する素材として、アンチモン化合物を難燃剤として使用するアクリル系繊維と他の非難燃性繊維との複合体(例えば、特許文献1参照)や、スズ系難燃剤またはスズ系難燃剤をアンチモン化合物の混合物を含有するハロゲン含有繊維を用いたカバー用難燃性布帛(例えば、特許文献2参照)が提案されているが、難燃性やコスト面に改善の余地がある。
【0010】
【特許文献1】特開平5−106132号公報
【特許文献2】特開平11−001842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記のような従来のカバー用難燃性布帛の現状に鑑み、ウレタンフォーム等のクッション材と組み合わせた場合の難燃性を満足させつつ、風合いや通気性等の使用時の快適性や意匠性を損なうことの無い椅子張り地やマットレス、クッション等のカバー用難燃性布帛を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、ガラス成分、又はガラス成分とアンチモン化合物を含有したハロゲン含有繊維と、ウール繊維やセルロース系繊維からなる布帛を用いることで、風合いや通気性など使用時の快適性や意匠性を損なうこと無く、かつ長時間の炎にも耐え得る難燃性や自己消火性を兼ね備えたカバー用難燃性布帛が得られることを見出した。
【0013】
すなわち本発明は、ガラス成分を含有するハロゲン含有繊維15〜85重量%と、ウール繊維およびセルロース系繊維のうち少なくとも1種の繊維85〜15重量%とからなるカバー用難燃性布帛に関する。
【0014】
ここで、前記ハロゲン含有繊維が、アンチモン化合物を含有することが好ましい。
【0015】
また、前記ハロゲン含有繊維中に含まれるガラス成分含有量が1〜35重量%であることが好ましく、さらに、前記ハロゲン含有繊維中に含まれるアンチモン化合物が35重量%以下であることが好ましい。
【0016】
また、前記ハロゲン含有繊維を構成する重合体中のハロゲン含有量が17〜86重量%であることが好ましく、さらには、前記ハロゲン含有繊維を構成する重合体が、アクリロニトリル30〜70重量%、ハロゲン含有ビニルおよび/又はハロゲン含有ビニリデン単量体70〜30重量%、およびそれらと共重合可能なビニル系単量体0〜10重量%からなることが好ましい。
【0017】
さらに、前記ガラス成分が、200〜700℃にガラス転移温度を有することが好ましく、また、前記ガラス成分が、SiO2−PbO系、SiO2−PbO−ZnO系、SiO2−B23−Na2O系、SiO2−B23−PbO系、SiO2−Al23系、B23−PbO系、B23−ZnO系、B23−Na2O−PbO系、B23−PbO−ZnO系、B23−P25系、B23−Bi23−ZnO系、P25−ZnO系から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のカバー用難燃性布帛は、風合いや通気性等といった、椅子やマットレス、クッション等の製品として用いた場合の快適性や意匠性を損なうこと無く、かつ長時間の炎にも耐え得る高度な難燃性を兼ね備えたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明のカバー用難燃性布帛は、前述のとおり、ガラス成分を含有するハロゲン含有繊維15〜85重量%と、ウール繊維およびセルロース系繊維のうち少なくとも1種の繊維85〜15重量%とからなる。
【0020】
前記ハロゲン含有繊維は、該ハロゲン含有繊維を構成する重合体中のハロゲン含有量が17重量%以上であることが好ましく、20〜86重量%であることがより好ましく、26〜73重量%であることがさらに好ましい。ハロゲン含有量が17重量%未満の場合、布帛を難燃化することが難しくなる傾向にある。一方、ハロゲン原子の含有量の上限については、一般的なハロゲン原子含有単量体の中でも最もハロゲン原子含有量が大きい臭化ビニリデン単独重合体においても、ハロゲン含有量は86重量%であることから、ハロゲン含有重合体中にこれ以上のハロゲンを含有させるためには、さらにモノマー中のハロゲン原子を増やす必要があり、技術的に現実的ではなくなる。
【0021】
前記のごときハロゲン原子を17重量%以上含む重合体としては、たとえばハロゲン原子を含有する単量体の重合体、前記ハロゲン原子を含有する単量体とハロゲン原子を含有しない単量体との共重合体、ハロゲン原子を含有する重合体とハロゲン原子を含有しない重合体とを混合したもの、ハロゲン原子を含有しない単量体もしくは重合体に、重合中乃至重合後に、ハロゲン原子を導入したハロゲン原子含有重合体などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
このようなハロゲン原子を17重量%以上含む重合体の具体例としては、たとえば塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどのハロゲン含有ビニル系またはビニリデン系単量体の単独重合体または2種以上の共重合体;アクリロニトリル−塩化ビニル、アクリロニトリル−塩化ビニリデン、アクリロニトリル−臭化ビニル、アクリロニトリル−フッ化ビニル、アクリロニトリル−塩化ビニル−塩化ビニリデン、アクリロニトリル−塩化ビニル−臭化ビニル、アクリロニトリル−塩化ビニリデン−臭化ビニル、アクリロニトリル−塩化ビニリデン−フッ化ビニリデンなどのハロゲン含有ビニル系またはビニリデン系単量体とアクリロニトリルとの共重合体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどのハロゲン含有ビニル系またはビニリデン系単量体の1種以上とアクリロニトリルおよびこれらと共重合可能なビニル系単量体との共重合体;アクリロニトリル単独重合体にハロゲン含有化合物を添加、重合させた重合体;ハロゲン含有ポリエステル;ビニルアルコールと塩化ビニルの共重合体;ポリエチレンやポリ塩化ビニルなどを塩素付加処理した重合体などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、前記単独重合体や共重合体を適宜混合して使用してもよい。
【0023】
前記ハロゲンを17重量%以上含む重合体が、アクリロニトリル30〜70重量%、ハロゲン含有ビニル系単量体70〜30重量%およびそれらと共重合可能なビニル系単量体0〜10重量%、好ましくはアクリロニトリル40〜60重量%、ハロゲン含有ビニル系単量体60〜40重量%およびそれらと共重合可能なビニル系単量体0〜10重量%からなる重合体の場合には、得られるハロゲン含有繊維からなるカバー用布帛が、難燃性と強度、伸度、耐熱性等を同時に満足させることから特に好ましい。
【0024】
前記アクリロニトリル、ハロゲン含有ビニル系単量体と共重合可能なビニル系単量体としては、たとえばアクリル酸、そのエステル、メタクリル酸、そのエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、ビニルスルホン酸およびその塩、メタリルスルホン酸およびその塩、スチレンスルホン酸およびその塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびその塩などが挙げられ、それらの1種または2種以上が用いられる。また、そのうち少なくとも1種がスルホン酸基含有ビニル系単量体の場合には、染色性が向上するため好ましい。
【0025】
前記アクリロニトリル、ハロゲン含有ビニル系単量体およびそれらと共重合可能なビニル系単量体からなる重合体の具体例としては、例えば塩化ビニル50重量%、アクリロニトリル49重量%、スチレンスルホン酸ソーダ1重量%よりなる共重合体、塩化ビニリデン47重量%、アクリロニトリル51.5重量%、スチレンスルホン酸ソーダ1.5重量%よりなる共重合体、塩化ビニリデン41重量%、アクリロニトリル56重量%、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ソーダ3重量%よりなる共重合体などが挙げられる。これらは、例えば乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法等の既知の重合方法で得ることができる。
【0026】
前述のようなハロゲン含有繊維に含有されるガラス成分のガラス転移温度は、200℃〜700℃であることが好ましく、より好ましくは250〜600℃である。200℃未満だと燃焼時のガラス成分の溶融が早いため、また700℃を超えると燃焼時にガラス成分が溶融しにくくなるため、何れも意図する炭化効果を得ることが難しくなる傾向にある。
【0027】
また、前記ガラス成分は粒子状であることが好ましい。ガラス成分を粒子状とすることで、繊維のしなやかさが失われにくく繊維が脆くなりにくいため、製造工程において糸切れが発生せず、加工性が良好となる。前記ガラス成分が粒子状である場合の平均粒子径としては、3μm以下であることが、ハロゲン含有繊維(A)の製造工程上におけるノズル詰りなどのトラブル回避、繊維の強度向上、繊維中でのガラス成分粒子の分散性などの点から好ましい。さらに前記ガラス成分は、ブロッキング性改善のために粒子表面に化学的修飾を施しても何ら支障はない。
【0028】
また、前記ガラス成分としては、例えばSiO2−PbO系、SiO2−PbO−ZnO系、SiO2−B23−Na2O系、SiO2−B23−PbO系、SiO2−Al23系、B23−PbO系、B23−ZnO系、B23−Na2O−PbO系、B23−PbO−ZnO系、B23−P25系、B23−Bi23−ZnO系、P25−ZnO系などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。またこれらを組み合わせて使用しても何ら支障はない。
【0029】
このようなガラス成分の前記ハロゲン含有繊維中の含有量は、1〜35重量%であることが好ましく、より好ましくは3〜20重量%である。ガラス成分の含有量が1重量%未満であると、燃焼時に炭化層の形態保持効果が得られにくくなり、求める難燃性を得ることが難しくなる傾向にあり、ガラス成分の含有量が35重量%を超えると、十分な難燃性は得られるがハロゲン含有繊維の製造工程において糸切れなどが発生し易くなる傾向がある。
【0030】
前述のようなガラス成分を含有するハロゲン含有繊維には、アンチモン化合物を含有させることが好ましく、アンチモン化合物としては、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン等の酸化アンチモン化合物、アンチモン酸やその塩類、オキシ塩化アンチモン等の無機アンチモン化合物等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。アンチモン化合物の前記ハロゲン含有繊維中の含有量は、35重量%以下であることが好ましく、より好ましくは2〜15重量%である。前記ハロゲン含有繊維中に、アンチモン化合物を全く含有しなくても目的とする難燃性は得られるが、より高度な難燃性を得るために2重量%以上含有することが好ましい。アンチモン化合物の含有量が35重量%を超えるとその効果が飽和する。
【0031】
前記ウール繊維の具体例としては、羊毛、ラクダ毛、山羊毛、絹等が挙げられ、また前記セルロース系繊維の具体例としては、綿、レーヨン、麻等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
本発明のカバー用難燃性布帛は、例えば椅子、ソファー等の他、マットレス、クッション、ピロー等の製品において、内部のクッション材等を包む布帛として用いられるものである。
【0033】
本発明のカバー用難燃性布帛における各繊維の割合としては、ガラス成分を含有するハロゲン含有繊維と、ウール繊維又はセルロース系繊維からなる布帛の場合、ガラス成分を含有するハロゲン含有繊維15〜85重量%、ウール繊維又はセルロース系繊維85〜15重量%から構成される。また、ガラス成分を含有するハロゲン含有繊維と、ウール繊維およびセルロース系繊維からなる布帛の場合、ガラス成分を含有するハロゲン含有繊維15〜50重量%、ウール繊維40〜70重量%、セルロース系繊維10〜20重量%から構成されることが好ましい。何れの場合も、ガラス成分を含有するハロゲン含有繊維が前記の範囲未満だと、風合いや通気性など使用時の快適性や意匠性においては優れるが、ウール繊維、セルロース系繊維の燃焼を抑制することが難しく所望の難燃性を確保することが困難となる。またガラス成分を含有するハロゲン含有繊維が前記範囲を超えると、燃焼で生じた布帛の炭化部分の形態保持が困難となり、内部のクッション材への延焼が起こりやすくなるため所望とする難燃性を確保できなくなる。
【0034】
本発明のカバー用難燃性布帛は、前述のようなガラス成分を含有するハロゲン含有繊維、ウール繊維、セルロース系繊維とを複合することで製造される。
【0035】
前記複合とは、各繊維をさまざまな方法で混ぜ合わせて所定の比率で含有する布帛などを得ることをいい、例えば混綿、紡績、撚糸、織り、編みの段階でそれぞれの繊維や糸を組み合わせることを意味する。
【0036】
具体的には、原綿の状態で前記各繊維を混合し混紡糸とした後、布帛とすることが好ましいが、各繊維を単独で糸状態とし交織として布帛を形成しても良い。糸は、60メートル番手以下、好ましくは40メートル番手以下であり、双糸撚り又は三個撚りとするのが、布帛に強度や磨耗堅牢度等の特性を付与する点で好ましい。
【0037】
本発明のカバー用難燃性布帛が高度に優れた難燃性を示す理由は、以下のように考えられる。本発明の布帛を他の火炎源により燃焼させると、ガラス成分を含有するハロゲン含有繊維中の重合体の成分は燃焼するが、ガラス成分は溶融するのみで燃焼もせず焼失もしない。またアンチモン化合物を含有する場合には、該アンチモン化合物が重合体中のハロゲン原子と反応して不燃性ガスを生成し、これにより酸素が遮断され燃焼が抑制される。これらの単独、複合的効果により重合体及びウール繊維、セルロース系繊維は、完全に焼失、焼損することなく炭化物となる。また燃焼時に溶融したガラス成分は、重合体及びウール繊維、セルロース系繊維の燃焼により生成した炭化物間に入り込み、固化することで強固な炭化層を形成する。これらの結果、本発明の布帛は、燃焼後も崩壊することなく炭化物の状態で形態を保持するので、火炎は遮断されそれ以上の延焼、つまり内部の易燃性であるクッション材への延焼が抑制されることで高度に優れた難燃性を示す。
【実施例1】
【0038】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。なお実施例の記載に先立ち、本明細書の記載におけるハロゲン含有繊維の紡糸性、及び布帛に関しての難燃性の判定方法を以下に示す。
【0039】
(ハロゲン含有繊維の紡糸性評価)
紡糸時に2.5倍以上の延伸が可能なものを○、不可能なものを×とした。○が合格である。
【0040】
(布帛に関しての難燃性評価)
(方法1)クレビスバーナー法
本方法は、日本防炎協会の布張り家具等完成品の難燃性能試験基準である。布帛で覆ったウレタンフォームの座部と背部を直角に配し、その接触部分に炎長24mmのエアミックスバーナーで30秒間接炎し、その後の残炎時間を測定するものである。判定は、速やかに自己消火するものを◎、残炎時間が2分以内のものを○、2分を超えるものを×とした。◎及び○が合格である。
【0041】
(方法2)BS5852Part1法
本方法は、英国における家庭用椅子類を対象とした難燃性能試験基準である。布帛で覆ったウレタンフォームの座部と背部を直角に配し、その接触部分に45ml/分のブタンガスを供給するバーナーで20秒間接炎し、その後の残炎時間を測定するものである。判定は速やかに自己消火するものを◎、残炎時間が2分以内のものを○、2分を超えるものを×とした。◎及び○が合格である。
【0042】
(総合評価)
ハロゲン含有繊維の紡糸性評価及び布帛に関しての難燃性評価(すなわち、前記方法(1)、(2)のうち少なくとも1方)を総合して評価した。これら2種類の評価で判定×が1つもないものを総合評価○とし、これら2種類の評価で1つでも判定×があるもの又は判定不能であるものを総合評価×とした。総合評価○が合格である。
【0043】
(製造例)
アクリロニトリル単量体51重量%、塩化ビニリデン48重量%、p−スチレンスルホン酸ナトリウム1重量%よりなる共重合体を乳化重合法により製造し、アセトンに共重合体濃度が30%になるように溶解させた。次いで後述する所定の繊維中含有率となるようにガラス成分(P25−ZnO系 旭ファイバーグラス(株)製 ZP150 ガラス転移温度約350℃、平均粒子径2μm)、アンチモン化合物(三酸化アンチモン又は五酸化アンチモン)を添加し紡糸原液とした。この紡糸原液をノズル孔径0.10mmおよび孔数1000ホールのノズルを用い、30重量%アセトン水溶液中へ押し出し、水洗したのち150℃で乾燥し、ついで3倍に延伸してから、さらに160℃で3分間熱処理、さらに捲縮、切断することでハロゲン含有繊維を得た。得られた繊維は繊度2.2dtexで、カット長38mmの短繊維とした。
【0044】
(実施例1〜6、比較例1)
前記製造例に従い製造した、ガラス成分、三酸化アンチモン又は五酸化アンチモンを表1の量で含有するハロゲン含有繊維と、ウール繊維との混用重量比が70/30であり、12メートル番手双糸の混紡糸を用い、経糸26本/インチ、緯糸26本/インチの平織り布帛を得た。なお、混紡、撚糸、織りは、公知の方法で実施した。結果を表1に示す。
【0045】
実施例1〜6のハロゲン含有繊維の紡糸性評価結果は良好であり、またクレビスバーナー法による布帛の難燃性評価結果も良好で、布帛内部のウレタンフォームへの延焼は見られず、総合判定で合格となった。また、実施例1〜6の布帛を用いて作製した椅子は、風合いや通気性等が損われておらず、使用時の快適性や意匠性において満足できるものであった。これに対し比較例1では、ガラス成分含有量が不足していたため、クレビスバーナー法による布帛の難燃性評価で不合格となり、総合判定でも不合格となった。
【0046】
【表1】

【0047】
(実施例7〜10、比較例2)
前記製造例に従い製造した、ガラス成分、三酸化アンチモン又は五酸化アンチモンを表2の量で含有するハロゲン含有繊維を経糸に、ウール繊維を緯糸に用い、混用重量比が表2に示すような交織布帛を得た。なお、撚糸、織りは、公知の方法で実施した。結果を表2に示す。
【0048】
実施例7〜10は、クレビスバーナー法による布帛の難燃性評価も良好で布帛内部のウレタンへの延焼は見られず、総合判定で合格となった。また、実施例7〜10の布帛を用いて作製した椅子は、風合いや通気性等が損われておらず、使用時の快適性や意匠性において満足できるものであった。これに対し比較例2では、布帛中のハロゲン含有繊維量が少ないため十分な難燃性を得ることができず、総合判定で不合格となった。
【0049】
【表2】

【0050】
(実施例11〜13、比較例3)
前記製造例に従い製造した、ガラス成分、三酸化アンチモンを表3の量で含有するハロゲン含有繊維を経糸に、綿繊維を緯糸に用い、混用重量比が表3に示すような交織布帛を得た。なお、撚糸、織りは、公知の方法で実施した。結果を表3に示す。
【0051】
実施例11〜13は、BS5852Part1法による布帛の難燃性評価も良好で布帛内部のウレタンへの延焼は見られず、総合判定で合格となった。また、実施例11〜13の布帛を用いて作製した椅子は、風合いや通気性等が損われておらず、使用時の快適性や意匠性において満足できるものであった。これに対し比較例3では、布帛中のハロゲン含有繊維量が少ないため、十分な難燃性を得ることができず、総合判定で不合格となった。
【0052】
【表3】

【0053】
(実施例14、比較例4)
前記製造例に従い製造した、ガラス成分、三酸化アンチモンを表4の量で含有するハロゲン含有繊維と、ウールおよび綿から、混用重量比が表4に示すような12メートル番手双糸の混紡糸を用い、経糸26本/インチ、緯糸26本/インチの平織り布帛を得た。なお、撚糸、織りは、公知の方法で実施した。結果を表4に示す。
【0054】
実施例14は、BS5852Part1法による布帛の難燃性評価も良好で布帛内部のウレタンへの延焼は見られず、総合判定で合格となった。また、実施例14の布帛を用いて作製した椅子は、風合いや通気性等が損われておらず、使用時の快適性や意匠性において満足できるものであった。これに対し比較例4では布帛中のハロゲン含有繊維量が少ないため十分な難燃性を得ることができず、総合判定で不合格となった。
【0055】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス成分を含有するハロゲン含有繊維15〜85重量%と、ウール繊維およびセルロース系繊維のうち少なくとも1種の繊維85〜15重量%とからなるカバー用難燃性布帛。
【請求項2】
前記ハロゲン含有繊維が、アンチモン化合物を含有する請求項1記載のカバー用難燃性布帛。
【請求項3】
前記ハロゲン含有繊維15〜85重量%と、ウール繊維85〜15重量%とからなる請求項1または2記載のカバー用難燃性布帛。
【請求項4】
前記ハロゲン含有繊維15〜85重量%と、セルロース系繊維85〜15重量%とからなる請求項1または2記載のカバー用難燃性布帛。
【請求項5】
前記ハロゲン含有繊維15〜50重量%と、ウール繊維40〜70重量%およびセルロース系繊維10〜20重量%とからなる請求項1または2記載のカバー用難燃性布帛。
【請求項6】
前記ハロゲン含有繊維中に含まれるガラス成分含有量が1〜35重量%である請求項1記載のカバー用難燃性布帛。
【請求項7】
前記ハロゲン含有繊維中に含まれるガラス成分含有量が1〜35重量%、アンチモン化合物含有量が35重量%以下である請求項2記載のカバー用難燃性布帛。
【請求項8】
前記ハロゲン含有繊維を構成する重合体中のハロゲン含有量が17〜86重量%である請求項1または2記載のカバー用難燃性布帛。
【請求項9】
前記ハロゲン含有繊維を構成する重合体が、アクリロニトリル30〜70重量%、ハロゲン含有ビニル系単量体および/又はハロゲン含有ビニリデン系単量体70〜30重量%、およびそれらと共重合可能なビニル系単量体0〜10重量%からなる請求項8記載のカバー用難燃性布帛。
【請求項10】
前記ガラス成分が、200〜700℃にガラス転移温度を有する請求項1または2に記載のカバー用難燃性布帛。
【請求項11】
前記ガラス成分が、SiO2−PbO系、SiO2−PbO−ZnO系、SiO2−B23−Na2O系、SiO2−B23−PbO系、SiO2−Al23系、B23−PbO系、B23−ZnO系、B23−Na2O−PbO系、B23−PbO−ZnO系、B23−P25系、B23−Bi23−ZnO系、P25−ZnO系から選ばれる少なくとも一種である請求項10記載のカバー用難燃性布帛。


【公開番号】特開2007−154338(P2007−154338A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−348885(P2005−348885)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】