説明

カバー部材

【課題】取付対象への取り付け時に変形し難く、かつ耐衝撃性に優れるカバー部材を提供する。
【解決手段】取付対象100の周面に取り付けられるカバー部材1である。このカバー部材1は、質量%で50%以上のMgと、少なくともAlを含む添加元素と、不可避的不純物と、からなるMg合金からなる。そして、カバー部材1は、その上端開口部から下端開口部にかけて形成され、取付対象100へのカバー部材1の取り付け時に拡げられる分離端21A,21Bを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付対象の周面に嵌め込まれるカバー部材に関する。特に、本発明は、Mg合金でできたカバー部材に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器などの外形を形作る筐体は、電気絶縁性や熱絶縁性、軽量化などの観点からプラスチックなどで形成されることがある。その場合、筐体の周面に、合金などからなるカバー部材を取り付けて、筐体を保護することなどが行われている。
【0003】
上記カバー部材としては、例えば、特許文献1に記載のようにAl合金を利用することが一般的である。Al合金は塑性加工性に優れるので、所望の形状のカバー部材を作製するのに都合が良いからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−160273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、Al合金からなるカバー部材は、Al合金の塑性加工性の良さが裏目に出て、筐体などの取付対象に嵌め込む際に変形し易く、そうなると取付対象とカバー部材との間に隙間が形成されてしまうという問題がある。
【0006】
また、Al合金からなるカバー部材は、十分な耐衝撃性を備えていないという問題もある。そのため、Al合金からなるカバー部材では、取付対象を保護するという機能を十分に果たせない恐れもある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、取付対象への取り付け時に変形し難く、かつ耐衝撃性に優れるカバー部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが上記カバー部材について種々検討した結果、Alを含むMg合金が好適であることを見出した。しかも、Alを含むMg合金であれば、取付対象からカバー部材が外れ難くなるような形状にカバー部材を形成することができることを見出した。これらの知見に基づいて本発明を以下に規定する。
【0009】
本発明は、取付対象の周面に嵌め込まれるカバー部材に係る。この本発明カバー部材は、質量%で50%以上のMgと、少なくともAlを含む添加元素と、不可避的不純物と、からなるMg合金からなる。そして、このカバー部材は、取付対象へのカバー部材の取り付け時に、互いに離れる方向に拡げられる一対の分離端を備えることを特徴とする。
【0010】
Alを含むMg合金で形成されたカバー部材であれば、取付対象への取り付けの際に塑性変形し難いため、取付対象にカバー部材を取り付けたときに取付対象とカバー部材との間に隙間が形成され難い。加えて、Alを含むMg合金は耐衝撃性に優れるため、取付対象を効果的に保護することができる。
【0011】
また、Alを含むMg合金でカバー部材を形成することで、取付対象にカバー部材を取り付けるときに拡げられる分離端を備えるカバー部材とすることができる。即ち、取付対象に対してカバー部材を嵌め込むことができる嵌め込み式のカバー部材とすることができる。それは、Alを含むMg合金が、室温において塑性変形し難い(弾性変形し易い)ため、カバー部材を取付対象に嵌め込む際にカバー部材の分離端を拡げて、カバー部材を変形させても、元の形状にカバー部材が戻り易いからである。このように、嵌め込み式のカバー部材とすることで、取付対象に対するカバー部材の密着性が向上するため、取付対象からカバー部材が脱落し難い。しかも取付対象に対してカバー部材がフィットしているため、衝撃によりカバー部材が変形し難く、かつカバー部材により効果的に取付対象を保護することができる。
【0012】
なお、本発明カバー部材は、主として電気機器の筐体の外周に嵌め込まれ、当該筐体を保護する役割を果たすが、カバー部材自身が筐体の一部を兼ねるように利用することもできる。例えば、骨組み状の取付対象にカバー部材を嵌め込むことで、取付対象とカバー部材とにより筐体が完成する構成を挙げることができる。
【0013】
上記本発明カバー部材の一形態として、カバー部材は、概略角筒状の部材とすることができる。この角筒状のカバー部材は、矩形の第一面と、その第一面の一端側に連続する第二面と、第一面の他端側に連続する第三面と、第一面に対向し、前記第二面と第三面とを繋ぐ第四面と、を備える。そして、第四面は、第二面に連続する第二面側分割面と、第三面に連続する第三面側分割面とに分けられ、両分割面の端部により分離端が形成される構成とすると良い。その場合、第二面側分割面の一部と第三面側分割面の一部とが重複する構成とすることが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、取付対象の周面を一周、一つのカバー部材で覆うことができる。そのため、取付対象に対するカバー部材の取り付けを容易に行うことができる。
【0015】
上記角筒状のカバー部材の一形態として、第二面側分割面と第三面側分割面とが重複する重複部において、第二面側分割面および第三面側分割面の少なくとも一方には段差が形成されていても良い。
【0016】
重複部において段差を形成することで、両分割面の一部同士が重複する構成としても、両分割面が湾曲することを抑制することができる。例えば、後述する実施形態1の図1(B),(C)に示すように、重複部31において第三面側分割面14Bに段差を形成しておくと、第三面側分割面14B上に第二面側分割面14Aが乗り上げて、両分割面14A,14Bが湾曲することを抑制できる。そうすることで、両分割面14A,14Bに無用な応力が作用することもないし、両分割面14A,14Bが湾曲することで、両分割面14A,14Bと取付対象との間に隙間が形成されることも抑制できる。
【0017】
本発明カバー部材の一形態として、前記カバー部材は、概略『[』状の部材とすることができる。概略『[』状のカバー部材は、矩形の第一面と、第一面の一端側に連続する第二面と、第一面の他端側に連続する第三面と、を備える。その場合、第二面における第一面とは反端側の端部と、第三面における第一面とは反端側の端部により分離端が形成される。
【0018】
上記構成によれば、分離端間の幅が大きいため、取付対象にカバー部材を取り付ける際に分離端を拡げる量を小さくすることができる。そのため、後述する実施形態2の図2に示すように、取付対象100の側方からカバー部材2を嵌め込むこともできる。
【0019】
概略『[』状のカバー部材とする場合、第二面における第一面とは反対側の端部に、第三面に向かって突出する第二面側突片を形成し、第三面における第一面とは反対側の端部に、第二面に向かって突出する第三面側突片を形成しても良い。その場合、第二面側突片と第三面側突片とは互いに離隔させ、両突片の端部により分離端が形成されるようにする。
【0020】
上記構成によっても、後述する実施形態3の図3に示すように、第二面12と第三面13の分離端23A,23B間の幅が大きいため、取付対象100の側方からカバー部材3を嵌め込むことができる。また、カバー部材3の第二面側突片12Fと、第三面側突片13Fが係合爪のような役割を果たし、取付対象100からカバー部材3を外れ難くできる。
【0021】
本発明カバー部材の一形態として、カバー部材を構成するMg合金は、Alを8.3質量%以上9.5質量%以下、Znを0.5質量%以上1.5質量%以下含有するMg合金であることが好ましい。
【0022】
Alを8.3質量%〜9.5質量%、Znを0.5質量%〜1.5質量%含有するMg−Al系合金は、特に強度に優れることから、高強度であることが望まれるカバー部材の材質に好ましい。上記Mg−Al系合金の代表的な組成として、ASTM規格のAZ91合金が挙げられる。
【発明の効果】
【0023】
本発明カバー部材は、Alを含むMg合金から形成されているため、取付対象への取り付けの際に塑性変形し難い。また、本発明カバー部材は、取付対象への取り付けの際に拡げられる分離端を備えることにより、嵌め込み式のカバー部材とすることができるので、取付対象にフィットし易い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(A)は実施形態1に示すカバー部材を嵌め込んだ取付対象の概略斜視図、(B)はそのカバー部材の概略斜視図、(C)は(B)の点線丸囲み部分の拡大図である。
【図2】(A)は実施形態2に示すカバー部材を嵌め込んだ取付対象の概略斜視図、(B)はそのカバー部材の概略斜視図である。
【図3】(A)は実施形態3に示すカバー部材を嵌め込んだ取付対象の概略斜視図、(B)はそのカバー部材の概略斜視図である。
【図4】実施形態4に示すカバー部材の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ本発明カバー部材の実施形態を説明する。実施形態の説明にあたっては、まずカバー部材の形状について幾つか例示し、その後、カバー部材を構成するMg合金について説明する。
【0026】
<形状に関する実施形態1>
実施形態1では、図1に示すように、概略立方体状の取付対象100の周面の全周を覆うカバー部材1を説明する。当該カバー部材1は、取付対象100の周面にほぼ密着していることが好ましいため、周面の外周寸法とカバー部材1の内周寸法とがほぼ等しくなるように設計されている。このような設計をすると、カバー部材1の上下の開口部(特に、図1(B)参照)から取付対象100を導入することで取付対象100の外周面にカバー部材1を嵌め込むことは難しく、無理に嵌め込みを行えば、取付対象100の外周面やカバー部材1を損傷する恐れがある。そこで、当該カバー部材1には、取付対象100への嵌め込みを容易にするために切込みが形成されている。以下、カバー部材1の詳細な構成を説明する。
【0027】
≪カバー部材≫
本実施形態におけるカバー部材1は、概略角筒状の部材であって、図1(B)に示すように、概略矩形の第一面11、第二面12、第三面13、および第四面14を備える。第二面12は第一面11の一端側の辺に連続し、第三面13は第一面11の他端側の辺(一端側の辺に対向する辺)に連続する。また、第四面14は、第二面12に連続する第二面側分割面14Aと、第三面13に連続する第三面側分割面14Bと、に分けられる。両分割面14A,14Bは分離しており、各分割面14A,14Bには分離端21A,21Bが形成される。なお、カバー部材は、角筒状に限定されるわけではなく、後述する実施形態4の図4に例示するように円筒状であっても良いし、図で例示しないが四角筒以外の多角筒状としてももちろんかまわない。
【0028】
第四面14を構成する第二面側分割面14Aと第三面側分割面14Bとは一部重複しており、分割面14Aの分離端21Aと、分割面14Bの分離端21Bとが第四面14の平面方向にオーバーラップしている。また、分割面14A,14Bの重複部31において分割面14Bには段差が形成されている。この段差は、具体的には、分割面14Bの端部が一旦、第一面11側に屈曲し、再び第一面11から離れる側に屈曲することで形成されている。その結果、分割面14Bの端部が、分割面14Aよりも筒の内側に配置される。もちろん、分割面14Bの端部が、分割面14Aよりも筒の外側に配置されるようにしても良い。その他、重複部31において分割面14Aと分割面14Bの両方に段差を形成しても良い。
【0029】
なお、図1に示すカバー部材1と異なり、重複部31において分割面14A,14Bの厚さを薄くしても良い。つまり、重複部31において分割面14A,14Bが厚みを分け合うようにしても良い。そうすることで、第四面14における重複部31とそれ以外の部分とを面一にすることもできる。
【0030】
また、本実施形態のカバー部材1の重複部31には、両分割面14A,14Bを貫通するネジ孔が形成されており、ネジによって両分割面14A,14Bを強固に連結できるようになっている。
【0031】
その他、カバー部材の一部に窓部を形成し、その窓部から取付対象の一部が露出するようにしても良い。例えば、取付対象の外周面の一部が突出している場合、その突出した部分をカバー部材の窓部に配置することが挙げられる。このようにすれば、取付対象の外周面の一部に突出したところがあっても、当該外周面にカバー部材を密着させることができる。
【0032】
≪取付対象への取り付け≫
以上説明したカバー部材1を取付対象100に取り付けるには、まず図1(B)の白抜き矢印の方向に第二面12と第三面13とを引っ張って、分離端21Aと分離端21Bとを拡げる。そうすることで、カバー部材1の筒内部の空間が拡がる。
【0033】
分離端21A,21Bを拡げた状態で、取付対象100の上面側からカバー部材1を嵌め込み、所望の位置にカバー部材1が配置されたら、分離端21A,21Bを拡げることを止める。そうすると、カバー部材1が、取付対象100への嵌め込み前の形状に戻り、取付対象100の周面に密着した状態で取り付けられる。ここで、分離端21A,21Bを拡げてカバー部材1を変形させたにも拘らず、カバー部材1が元の形状に復帰して取付対象100の周面に密着するのは、カバー部材1がAlを含むMg合金で形成されているためである。Alを含むMg合金については後ほど詳しく説明する。
【0034】
最後に、重複部31をネジ止めし、取付対象100に対してカバー部材1を強固に固定する。その結果、カバー部材1により取付対象100を保護することができる。
【0035】
<形状に関する実施形態2>
実施形態2では、分離端同士が離隔しており、それによって分離端間に大きな隙間が形成されているカバー部材を図2に基づいて説明する。その場合、カバー部材の分離端間の隙間を覆う蓋部材を用い、カバー部材と蓋部材とで、取付対象の周面を全周に亘って覆う。
【0036】
≪カバー部材≫
図2(B)に示すように、実施形態2のカバー部材2は、概略『[』状に形成されている。このカバー部材2は、矩形の第一面11と、第一面11の両端部に連続する第二面12および第三面13とを備える。このカバー部材2では、第二面12と第三面13における第一面11とは反対側の端部により分離端22A,22Bが形成される。また、第二面12と第三面13の分離端22A,22Bには、ネジ止め用のスリットが形成されている。
【0037】
≪蓋部材≫
一方、蓋部材2Lは、カバー部材2の分離端22A,22B間に形成される隙間全体を覆う概略『[』状の部材である。蓋部材2Lの両端部には蓋側突片14F,14Fが形成されており、その蓋側突片14F,14Fにおける上記カバー部材2に形成されるスリットに対応する部分には、蓋部材2Lとカバー部材2とをネジ止めするためのネジ孔が形成されている。この蓋部材2Lは、カバー部材2に取り付けたときに、第一面11に対向する第四面14となる。
【0038】
≪取付対象への取り付け≫
取付対象100にカバー部材2を取り付ける場合、まずカバー部材2の分離端22A,22Bを両側(図2(B)の白抜き矢印の方向)に開き、分離端22A,22B間の隙間を拡げる。隙間を拡げるのは、取付対象100の外周寸法にほぼ一致するカバー部材2を取付対象100に取り付ける際、取付対象100の外周面を傷つけないようにするためである。
【0039】
次いで、カバー部材2を取付対象100の上方、下方、又は側方から取付対象100に嵌め込んで、分離端22A,22B間の隙間を拡げることを止める。そして、両分離端22A,22B間の間を狭め、蓋部材2Lを取付対象100の側方などから取付対象100に嵌め込んで、カバー部材2と蓋部材2Lとをネジ止めする。このとき、蓋部材2Lの蓋側突片14F,14Fは、カバー部材2の外周側に配置される。
【0040】
本実施形態のカバー部材2において分離端22A,22Bに形成される隙間は、取付対象100の横幅よりも少し狭い程度である。そのため、このカバー部材2は取付対象100の周面側から取付対象100に嵌め込むことができる。しかも、その嵌め込みの際に分離端22A,22Bを拡げる量が小さくて済むため、カバー部材2に大きな塑性変形が生じることを避けることができる。
【0041】
<形状に関する実施形態3>
実施形態3では、実施形態2と同様に、離隔した分離端間に大きな隙間が形成されているカバー部材であって、実施形態2とは異なる形状のカバー部材を図3に基づいて説明する。なお、本実施形態も、カバー部材と蓋部材とで、取付対象の周面を全周に亘って覆う構成である。
【0042】
≪カバー部材≫
図3(B)に示すように、実施形態3のカバー部材3は、実施形態2と同様に、矩形の第一面11と、第一面11の両端部に連続する第二面12および第三面13とを備える概略『[』状の部材である。このカバー部材3の第二面12と第三面13にはそれぞれ、第一面11にほぼ平行な方向に延びる第二面側突片12Fと第三面側突片13Fとが形成されている。そのため、両突片12F,13Fの端面である分離端23A,23Bは互いに対向した状態となり、これら突片12F,13Fの分離端23A,23B間に、大きな隙間が形成される。また、突片12F,13Fには、ネジ止め用のネジ孔が形成されている。
【0043】
≪蓋部材≫
一方、蓋部材3Lは、カバー部材3の突片12F,13Fの分離端23A,23B間に形成される隙間全体を覆う平板状の部材である。蓋部材3Lの両端部における上記突片12F,13Fに形成されるネジ孔に対応する部分には、蓋部材3Lとカバー部材3とをネジ止めするためのスリットが形成されている。この蓋部材3Lは、カバー部材3に取り付けたときに、第一面11に対向する第四面14となる。
【0044】
≪取付対象への取り付け≫
取付対象100にカバー部材3を取り付ける場合、まずカバー部材3の分離端23A,23Bを両側(図3(B)の白抜き矢印の方向)に開き、分離端23A,23B間の隙間を拡げる。
【0045】
次いで、カバー部材3を取付対象100の上方、下方、又は側方から取付対象100に嵌め込んで、分離端23A,23B間の隙間を拡げることを止める。そして、両分離端23A,23B間の間を狭め、取付対象100の外周面と、突片12F,13Fの内周面との間に蓋部材3Lを差し込んで、カバー部材3と蓋部材3Lとをネジ止めする。もちろん、蓋部材3Lを配置してから、分離端23A,23Bの間隔を拡げることを止めても良い。
【0046】
本実施形態のカバー部材3においても分離端23A,23Bに形成される隙間が大きいため、このカバー部材3を取付対象100の周面側から取付対象100に嵌め込むことができる。また、このカバー部材3の突片12F,13Fは係合爪の機能を果たし、取付対象100からカバー部材3を外れ難くする効果を発揮する。特に、カバー部材3と蓋部材3Lとをネジ止めする前のカバー部材3の脱落を効果的に防止でき、両者3,3Lのネジ止め作業を容易にすることができる。
【0047】
<形状に関する実施形態4>
実施形態4では、実施形態1〜3とは異なり、円筒状のカバー部材を図4に基づいて簡単に説明する。
【0048】
図4に示すように、本実施形態のカバー部材4は、上面視したとき『C』字状に形成される。この場合、『C』字の端部が分離端24A,24Bとなる。そして、この分離端24A,24B間に形成される隙間は、同じく上面視したとき円弧状の蓋部材4Lにより覆われる。
【0049】
このようなカバー部材4は、円柱状の取付対象(図示せず)の外周に取り付けられ、当該円柱状の取付対象を保護する。また、このカバー部材4を取付対象に取り付けるときは、分離端24A,24Bを白抜き矢印の方向に拡げ、取付対象の上端あるいは下端、もしくは外周からカバー部材4を嵌め込む。そして、分離端24A,24B間の隙間を蓋部材4Lで封止し、カバー部材4と蓋部材4Lとをネジ止めして一体化する。
【0050】
<材質に関する実施形態>
上記形状に関する実施形態1〜4のカバー部材には、Mgに添加元素を含有させた種々の組成のもの(Mg:50質量%以上と、Alを含む添加元素と、不可避的不純物)を利用する。特に、本発明カバー部材の材質には、添加元素に少なくともAlを7.3質量%超12質量%以下含有するMg−Al系合金を用いることが好ましい。Alの含有量が多いほど、強度、耐塑性変形性(剛性)といった機械的特性に優れる上に、耐食性にも優れる傾向にある。但し、Alの含有量が12質量%を超えると塑性加工性の低下を招くことから、上限は12質量%、更に11質量%が好ましい。代表的なMg合金中のAl含有量は、ASTM規格におけるAZ91合金相当の含有量と同じ8.3〜9.5%とすると良い。
【0051】
Al以外の添加元素は、Zn,Mn,Si,Ca,Sr,Y,Cu,Ag,Zr,Ce,Be,Sn,Li,Ni,Au及び希土類元素(Y,Ceを除く)から選択された1種以上の元素が挙げられる。これらの元素を含む場合、その含有量は、合計で好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、各元素の含有量は好ましくは0.01質量%以上10質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上5質量%以下が挙げられる。より具体的なMg−Al系合金は、例えば、ASTM規格におけるAZ系合金(Mg−Al−Zn系合金、Zn:0.2質量%〜1.5質量%)、AM系合金(Mg−Al−Mn系合金、Mn:0.15質量%〜0.5質量%)、Mg−Al−RE(希土類元素)系合金、AX系合金(Mg−Al−Ca系合金、Ca:0.2質量%〜6.0質量%)、AJ系合金(Mg−Al−Sr系合金、Sr:0.2質量%〜7.0質量%)などが挙げられる。不純物は、例えば、Feなどが挙げられる。その他、Y,Ce,Ca,及び希土類元素(Y,Ceを除く)から選択される少なくとも1種の元素を合計0.001質量%以上、好ましくは合計0.1質量%以上5質量%以下含有すると、耐熱性、難燃性に優れる。
【0052】
≪組織≫
本発明カバー部材を構成するMg合金の代表的な組織として、マトリクス相中に微細な析出物の粒子が特定の範囲で分散した組織が挙げられる。析出物は、主として金属間化合物が挙げられる。金属間化合物は、例えば、Mg17Al12といったMg及びAlを含有する化合物、Al(MnFe)といったAlを含有する化合物が挙げられる。
【0053】
上記『微細』とは、平均粒径が0.5μm以下を満たすことを言い、『分散した組織』とは、本発明カバー部材の断面を100面積%とするとき、上記金属間化合物の粒子が合計で11面積%以下存在することを言う。上記面積割合が0面積%超であることで、Mg合金中に上記金属間化合物が十分に存在し、かつ、平均粒径が0.5μm以下であることで、微細な金属間化合物が分散していることによる分散強化の効果を十分に得られる。上記平均粒径が大き過ぎたり、上記面積割合が大き過ぎると、Mg合金中に金属間化合物が過剰に存在したり、5μm以上といった粗大な粒子が存在することで、マトリクス相中のAlの固溶量(Al濃度)が低減されて強度の低下を招く。更に、上述のような粗大な粒子は、衝突時などで割れなどの起点となって、耐衝撃性の低下を招く。加えて、金属間化合物の粒子が粗大で、マトリクス相中に疎らに存在していると、当該粗大な粒子とマトリクス相との間で局部電池を形成し、孔食などの腐食が生じ易くなる。従って、金属間化合物はできるだけ小さい粒子が均一的に分散していることが好ましく、上記平均粒径は、0.3μm以下がより好ましい。上記面積割合は、8面積%以下がより好ましいと考えられる。
【0054】
≪酸化膜≫
Mg合金は活性であるため、一般に、防食処理や塗装を施さないと、その表面に酸化膜が形成される。ダイカスト材などの鋳造材では、上記酸化膜が不均一な厚さで生成されており、このような鋳造材は、耐食性に劣る。これに対し、本発明カバー部材の実質的に表面全面に亘って均一な厚さの酸化膜を形成しても良い(後述する製造方法を参照)。このような均一な厚さの酸化膜を備えるカバー部材は、耐食性に優れる。表面の実質的に全面とは、検査装置の測定限界などにより酸化膜を精度よく確認できない箇所を除いた領域であり、表面積の90%以上、特に95%以上を言う。また、酸化膜は、実質的にマグネシウム酸化物で形成されるが(90質量%以上)、Alなどの不純物を含むことを許容する。
【0055】
≪厚さ≫
本発明カバー部材が、素材板(代表的には圧延が施された板材)にプレス加工といった塑性加工が施されることによって所定の形状に成形された成形部材である場合、代表的には素材板の厚さが実質的に維持されることから、カバー部材の全体に亘って実質的に均一な厚さである。カバー部材の厚さが厚いほど、カバー部材の強度は増すものの、取付対象に嵌め込み難くなるし、分離端を拡げたときにカバー部材(特に、図1〜3のカバー部材1〜3においては第一面11)に塑性変形が生じ易い。そのため、カバー部材の平均厚さは、0.3〜3.0mmとすることが好ましい。平均厚さは、カバー部材における任意の5箇所の厚さを平均することで求められる。本発明カバー部材は、上述のように全体に亘って実質的に均一的な厚さである形態の他、リブや貫通孔を有して、局所的に厚さが異なる箇所を有する形態を許容する。
【0056】
≪表面処理≫
本発明カバー部材の一形態として、カバー部材の表裏面(例えば、板材に塑性加工が施された成形部材の場合、板材の両面)の双方に防食処理が施されていない形態とすることができる。この形態は、従来必須とされていた防食処理を削減でき、カバー部材の生産性を高められる。或いは、本発明の一形態として、カバー部材の表裏面の双方に防食処理が施されておらず、かつ、上記表裏面のいずれか一方の面にのみ塗装層を備える形態とすることができる。この形態は、一方の面に塗装層を備えることで、カバー部材の耐食性を補強できる上に、着色や模様の付与などが可能となるため、装飾性や商品価値をも高められる。
【0057】
その他、本発明カバー部材の一形態として、カバー部材の表裏面の双方に化成処理や陽極酸化といった防食処理が施された形態(防食層を備える形態)、更に、防食層に加えて塗装層を備える形態とすることができる。これらの形態は、カバー部材を構成するMg合金自体の耐食性に加えて、防食処理により耐食性を高められて、耐食性に極めて優れたカバー部材となる。
【0058】
≪製造方法≫
板材に塑性加工を施して本発明カバー部材を製造する場合、例えば、以下の鋳造工程、溶体化工程、圧延工程、及びプレス工程を備える製造方法により、本発明カバー部材を製造することができる。
・鋳造工程:連続鋳造法により、Mgを50質量%以上含有するMg合金からなる鋳造板を製造する工程。
・溶体化工程:上記鋳造板に350℃以上の温度で溶体化処理を施して、固溶板を製造する工程。
・圧延工程:上記固溶板に温間圧延を施し、圧延板を製造する工程。
・プレス工程:上記圧延板にプレス加工を施し、カバー部材を製造する工程。
特に、溶体化工程以降の製造工程において、加工対象である素材板(代表的には圧延板)を150℃以上300℃以下の温度域に保持する総合計時間を0.5時間以上12時間以内とすると共に、300℃超の温度に加熱しないように、上記素材板の熱履歴を制御する。
【0059】
上記製造方法は、更に、上記圧延板に矯正を施す矯正工程を備えることができる。この矯正は、例えば、上記圧延板を100℃以上300℃以下に加熱した状態で矯正を行う温間矯正が挙げられる。上記温間矯正を行う場合、この矯正工程における圧延板を150℃以上300℃以下の温度域に保持する時間が、上記総合計時間に含まれるようにする。その他、上記製造方法は、更に、上記圧延板又は上記矯正工程を経た矯正板に研磨を施す研削工程を備えていても良い。
【0060】
上述のように、鋳造以降、特に溶体化処理以降、最終製品となるまでの製造工程において、Mg合金からなる素材を、金属間化合物が析出され易い温度域(150℃〜300℃)に保持する時間を特定の範囲内とすると共に、当該素材を溶体化処理以降に300℃超の温度に加熱しないことで、金属間化合物などの析出物を析出させつつ、その量を特定の範囲内とすることができる。また、上記特定の温度域に保持する時間を制御することで、金属間化合物などの析出物の過度な成長を抑制して、微細な析出物が分散した組織とすることができる。
【0061】
以下、工程ごとにより詳細に説明する。
[鋳造工程]
上記鋳造板は、双ロール法といった連続鋳造法、特に、WO/2006/003899に記載の鋳造方法で製造した鋳造板を利用することが好ましい。連続鋳造法は、急冷凝固が可能であるため、酸化物や偏析などを低減できる上に、割れの起点になり得る10μm超といった粗大な晶析出物が生成されることを抑制できる。従って、圧延加工性に優れる鋳造板が得られる。鋳造板の厚さは特に問わないが、厚過ぎると偏析が生じ易く、この偏析が圧延時などで割れの原因となるため、10mm以下、特に5mm以下が好ましい。鋳造板の幅は、適宜選択することができる。
【0062】
[溶体化工程]
上記鋳造板に溶体化処理を施して、組成を均質化すると共に、Alといった添加元素を固溶させた固溶板を製造する。溶体化処理は、保持温度を350℃以上、特に、保持温度:380℃〜420℃、保持時間:60分〜2400分(1時間〜40時間)とすることが好ましい。保持時間は、Alの含有量が多いほど長くすることが好ましい。また、上記保持温度からの冷却工程において、水冷や衝風といった強制冷却などを利用して冷却速度を速めると(例えば、50℃/min以上)、粗大な析出物の析出を抑制できて好ましい。上述のように溶体化処理を行うことでMg合金中にAlを十分に固溶させられる。
【0063】
[圧延工程]
上記固溶板に圧延を施すにあたり、素材(固溶板や最終圧延が施されるまでの圧延途中の板)を加熱することで塑性加工性(圧延加工性)を高められる。従って、少なくとも1パスは温間圧延とする。特に、上記素材を300℃超に加熱すると塑性加工性を十分に高められて圧延を行い易い。しかし、上述のように金属間化合物(析出物)の過剰な生成や粗大化による耐衝撃性の低下や耐食性の低下を招いたり、素材の焼き付きが発生したり、素材の結晶粒が粗大化して圧延後に得られた板材の機械的特性が低下したりする。そのため、圧延工程において素材の加熱温度も300℃以下とする。特に、素材の加熱温度は150℃以上280℃以下が好ましい。複数回(多パス)の圧延を施すことで、所望の板厚(例えば、0.3mm〜3.0mm)にできると共に、素材の平均結晶粒径を小さくしたり(例えば、10μm以下、好ましくは5μm以下)、圧延やプレス加工といった塑性加工性を高められる。圧延は、公知の条件、例えば、素材だけでなく圧延ロールも加熱したり、特開2007−98470号公報(参考文献1)に開示される制御圧延などを組み合わせて利用してもよい。また、仕上げ圧延などで圧下率が小さい圧延を行う場合、冷間圧延としてもよい。その他、圧延にあたり、潤滑剤を適宜利用すると、圧延時の摩擦抵抗を低減でき、素材の焼き付きなどを防止して、圧延を施し易い。
【0064】
多パスの圧延を行う場合、上述した150℃〜300℃の温度域の保持時間が上記総合計時間に含まれる範囲で、パス間に中間熱処理を行ってもよい。この中間熱処理により、当該中間熱処理までの塑性加工(主として圧延)により加工対象である素材に導入された歪みや残留応力、集合組織などを除去、軽減することができ、当該中間熱処理後の圧延で不用意な割れや歪み、変形を防止して、より円滑に圧延を行える。中間熱処理を行う場合も、素材の加熱温度を300℃以下とする。好ましい加熱温度は、250℃以上280℃以下である。
【0065】
[矯正工程]
上記圧延工程により得られた圧延板に、参考文献1に記載されるように最終熱処理(最終焼鈍)を施してもよいが、この最終熱処理を施さず、或いは最終熱処理後に上述のように矯正を施すと、プレス加工といった塑性加工性に優れて好ましい。矯正は、WO/2009/001516に記載されるような複数のロールが千鳥状に配置されたロールレベラなどを用い、圧延板を100℃〜300℃、好ましくは150℃以上280℃以下に加熱して行う温間矯正が挙げられる。このような温間矯正を行った矯正板にプレス加工といった塑性加工を施すと、塑性加工時に動的再結晶化が生じることで、塑性加工性に優れる。なお、温間矯正加工を施す素材の厚さにもよるが、薄いものでは、当該温間矯正工程における上記温度域の保持時間を数分程度、更に1分以内と非常に短くすることができる。
【0066】
上記最終熱処理を行った場合、圧延に伴う歪みを除去することができる。最終熱処理の条件は、例えば、素材の加熱温度:100℃以上300℃以下、加熱時間:5分以上60分以下が挙げられる。参考文献1で記載されるように加熱温度を300℃〜340℃とすることもできるが、上述のように金属間化合物の成長をできるだけ抑制するために、加熱温度を高める場合には加熱時間を短くすること、例えば30分未満とすることが望ましい。
【0067】
[素材を特定の温度域に保持する総合計時間]
上述のように金属間化合物が生成され易かったり成長し易かったりする上記温度域(150℃〜300℃)の保持時間を特定の範囲に制御することで、特定量の微細な金属間化合物が分散して存在する組織とすることができる。
【0068】
上記150℃〜300℃の温度域に保持する総合計時間が0.5時間未満では、金属間化合物が十分に析出されず、12時間を超えたり、素材を300℃超に加熱して圧延などすると、平均粒径が1μm以上の粗大な金属間化合物が存在した組織や11面積%超といった過剰に金属間化合物が存在した組織が得られる。好ましくは、温度域:150℃以上280℃以下、総合計時間:1時間以上6時間以下となるように、圧延工程における各パスの加工度や圧延工程の総加工度、中間・最終熱処理時の条件、矯正時の条件などを制御する。また、Alの含有量が多いほど、金属間化合物が析出し易いため、上記総合計時間は、Alの含有量に応じても調整することが好ましい。
【0069】
[プレス工程]
上記圧延板や、上記圧延板に上記最終熱処理を施した熱処理板、上記圧延板に上記矯正を施した矯正板、上記圧延板・熱処理板・矯正板のいずれかに研磨(好ましくは湿式研磨)を施した研磨板に、金型を使った曲げ加工といった塑性加工を施すことで、本発明カバー部材(成形部材)が得られる。上記塑性加工は、200℃以上300℃以下の温間加工とすると、素材の塑性加工性を高められて塑性加工を行い易い。なお、この塑性加工時において素材を200℃〜300℃に保持する時間は非常に短く、例えば、曲げ加工によっては60秒以内の場合がある。従って、この曲げ加工では、上述したような金属間化合物の粗大化などの不具合は実質的に生じないと考えられる。
【0070】
上記塑性加工後に熱処理を施して、塑性加工により導入された歪みや残留応力の除去、機械的特性の向上を図ることができる。この熱処理条件は、加熱温度:100℃〜300℃、加熱時間:5分〜60分程度が挙げられる。但し、この熱処理においても150℃〜300℃の温度域の保持時間が上記総合計時間に含まれるようにすることが望ましい。
【0071】
更に、上記塑性加工後、防食処理を施したり、耐食性の向上や機械的保護、装飾(商品価値の向上)などを目的として、上述のように塗装層を設けたりすることができる。
【0072】
<試験例>
以下、実施形態1に示すカバー部材1と同様のカバー部材を作製し、そのカバー部材を取付対象に嵌め込んで、カバー部材と取付対象との隙間の形成具合を調べた。
【0073】
この試験では、以下のようにして作製したMg合金からなる板材を用意した。まず、AZ91合金相当の組成(8.9%Al−0.7%Zn−0.2%Mn(全て質量%)、残部Mgと不可避的不純物)を有するMg合金の溶湯を用いて、双ロール連続鋳造法により長尺な鋳造板(厚さ4mm)を作製してコイル状に巻き取り、鋳造コイル材を作製した。この鋳造コイル材をバッチ炉に装入して400℃×24時間の溶体化処理を施した。得られた固溶コイル材を巻き戻して、以下の条件で複数パスの圧延を施して巻き取り、厚さ約0.8mmの圧延コイル材を作製した。
(圧延条件)
圧下率:5%/パス〜40%/パス
素材の加熱温度:250℃〜280℃
ロール温度:100℃〜250℃
【0074】
得られた圧延コイル材を巻き戻して、素材板を200℃に加熱した状態で温間矯正し、Mg合金の板材を作製した。温間矯正は、素材板(圧延板)を加熱可能な加熱炉と、加熱された素材板に連続的に曲げ(歪)を付与する複数のロールを有するロール部とを備えるロールレベラ装置を用いて行う。上記ロール部は、上下に対向して千鳥状に配置された複数のロールを備える。上記ロールレベラ装置により、素材板は、上記加熱炉内で加熱されながら上記ロール部に送られ、ロール部の上下のロール間を通過するごとに、これらのロールにより順次曲げが付与され、平板状に矯正される。
【0075】
得られた矯正板を、トリミング金型で所望の寸法に切断する。同時に、矯正板にネジ止め孔を空けた。これらの加工は室温で行った。
【0076】
次に、帯状の矯正板の一端側で、ネジ止め孔を含む重複部の段差を形成した。段差の形成には金型を用いた。金型の温度は、250〜300℃とした。
【0077】
次に、帯状の矯正板の四か所を曲げ加工することで、図1のカバー部材1を完成させた。曲げ加工には金型を用い、金型の温度は、200〜270℃とした。
【0078】
以上のようにして作製したカバー部材1の分離端21A,21Bを紙面白抜き矢印の方向に拡げ、取付対象100の上面側からカバー部材1を嵌め込んだ。そして、カバー部材1の重複部31をネジ止めした後、カバー部材1の第一面11と取付対象100との間にできる隙間を測定した。測定位置は、第一面11の中間部であって、その結果は0.5mm以下であり、取付対象100とカバー部材1との密着性は良好であった。
【0079】
次に、比較例として、実施例のカバー部材と同じ寸法、同じ形状であるが、Al合金(A5052)からなるカバー部材を作製した。なお、板の状態のAl合金を、図1のカバー部材1の形状にする曲げ加工は、全て室温で行った。
【0080】
以上説明したAl合金製のカバー部材1の分離端21A,21Bを拡げて、取付対象100にカバー部材1を嵌め込んだ場合、カバー部材1の第一面11と取付対象100との間にできる隙間は約1〜2mmあり、取付対象100とカバー部材1との密着性は十分とは言い難かった。これは、Al合金製のカバー部材1の分離端21A,21Bを拡げたときに、第一面11に塑性変形が生じたからと推察される。
【0081】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるわけではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。例えば、実施形態の分離端は、筒の軸方向に沿った直線状の分離端であったが、当該軸方向に対して傾いた分離端であっても良い。その他、ジグザグ状の分離端であってもかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明カバー部材は、電気機器の筐体などの取付対象の外周面を保護することに好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0083】
100 取付対象
1,2,3,4 カバー部材
2L,3L,4L 蓋部材
21A,21B,22A,22B,23A,23B,24A,24B 分離端
31 重複部
11 第一面 12 第二面 13 第三面 14 第四面
14A 第二面側分割面 14B 第三面側分割面
12F 第二面側突片 13F 第三面側突片
14F 蓋側突片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付対象の周面に嵌め込まれるカバー部材であって、
質量%で50%以上のMgと、少なくともAlを含む添加元素と、不可避的不純物と、からなるMg合金からなり、
前記取付対象へのカバー部材の取り付け時に、互いに離れる方向に拡げられる一対の分離端を備えることを特徴とするカバー部材。
【請求項2】
前記カバー部材は、概略角筒状の部材であり、
矩形の第一面と、
前記第一面の一端側に連続する第二面と、
前記第一面の他端側に連続する第三面と、
前記第一面に対向し、前記第二面と第三面とを繋ぐ第四面と、を備え、
前記第四面は、第二面に連続する第二面側分割面と、第三面に連続する第三面側分割面とに分けられ、両分割面の端部により前記分離端が形成されており、
かつ、前記第二面側分割面の一部と第三面側分割面の一部とが重複していることを特徴とする請求項1に記載のカバー部材。
【請求項3】
前記第二面側分割面と第三面側分割面とが重複する重複部において、前記第二面側分割面および第三面側分割面の少なくとも一方には段差が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のカバー部材。
【請求項4】
前記カバー部材は、
矩形の第一面と、
前記第一面の一端側に連続する第二面と、
前記第一面の他端側に連続する第三面と、
前記第二面における第一面とは反端側の端部と、前記第三面における第一面とは反端側の端部により前記分離端が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のカバー部材。
【請求項5】
前記第二面における第一面とは反対側の端部に形成され、前記第三面に向かって突出する第二面側突片と、
前記第三面における第一面とは反対側の端部に形成され、前記第二面に向かって突出する第三面側突片と、を備え、
両突片の端部により前記分離端が形成されており、
かつ、両突片間が離隔していることを特徴とする請求項4に記載のカバー部材。
【請求項6】
前記Mg合金は、質量%で8.3〜9.5%のAlと、0.5〜1.5%のZnを添加元素として含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のカバー部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−227218(P2012−227218A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91162(P2011−91162)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】