説明

カフ付きチューブ

【課題】カテーテルと、多孔質材料よりなるカフとがしっかりと一体化されたカフ付きチューブを提供する。
【解決手段】チューブ1に筒状のカフ2が外嵌され、接着剤によってカフ2がチューブ1に固定されているカフ付きチューブにおいて、該カフ2が連続気孔を有した多孔質材よりなり、前記接着剤は、該チューブ1の外周面に付着すると共に、前記カフ2の気孔に入りこんで硬化していることを特徴とするカフ付きチューブ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体腔内に挿入し生体内に留置される腹腔内留置カテーテルや血液透析用のシャント等の留置カテーテル管として用いられるカフ付きチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
I. 持続的腹膜透析療法または連続的携帯型腹膜透析療法の透析液の注排液等に用いられるカフ付きチューブは、可撓性を有するチューブと、チューブに外嵌した筒状の多孔質カフとを有する(例えば特開平9−638)。
【0003】
この特開平9−638の0026段落には、カフをチューブに対し接着剤で固定することが記載されている。
【0004】
II. 生体皮下組織から細胞が容易に侵入、生着し、毛細血管が構築されることで皮下組織との癒着が頑強に得られ、その結果、創傷部を外界と隔絶し、治癒機転における細菌感染等の増悪因子を防御し、ダウングロースの進行を抑制し、トンネル感染を始めとする各種の感染トラブルの少ないカフ部材として、特開2004−97267に、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂で形成された、平均孔径100〜1,000μmで、見掛け密度が0.01〜0.5g/cmの多孔質セグメント化ポリウレタン樹脂が記載されている。
【0005】
この多孔質材料よりなるカフに対しては、生体組織が入り込んで生着し、強固に癒着する。
【特許文献1】特開平9−638
【特許文献2】特開2004−97267
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カテーテルの構成材料としては、シリコーンゴム、フッ素系エラストマーなどが用いられることが多いが、カテーテルとカフとをしっかりと一体化させることが課題となっている。
【0007】
本発明は、カテーテルと、多孔質材料よりなるカフとがしっかりと一体化されたカフ付きチューブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1のカフ付きチューブは、チューブに筒状のカフが外嵌され、接着剤によってカフがチューブに固定されているカフ付きチューブにおいて、該カフが連続気孔を有した多孔質材よりなり、前記接着剤は、該チューブの外周面に付着すると共に、前記カフの気孔に入り込んで硬化していることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2のカフ付きチューブは、請求項1において、前記カフが多孔質合成樹脂よりなることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3のカフ付きチューブは、請求項2において、該合成樹脂がセグメント化ポリウレタン樹脂であることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4のカフ付きチューブは、請求項2又は3において、前記多孔質合成樹脂は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなる、平均孔径が100〜650μmであり、乾燥状態における見掛け密度が0.01〜0.1g/cmである多孔性三次元網状構造を有することを特徴とするものである。
【0012】
請求項5のカフ付きチューブは、請求項1ないし4のいずれか1項において、前記チューブがシリコーンゴムよりなり、接着剤がオルガノシロキサン系、ウレタン系、アクリル系又はエポキシ系接着剤であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のカフ付きチューブにあっては、接着剤としてチューブとの親和性の高いものを選定することにより、接着剤がチューブに強固に付着するようになる。この接着剤は、多孔質カフに浸透して硬化することにより、カフに対して強固に付着する。即ち、接着剤とカフとの化学的な親和性が低い場合であっても、接着剤はカフと物理的に強固に一体化する。
【0014】
従って、シリコーンゴムのように化学的親和性がマッチする接着剤の種類が少ない材料にてチューブが構成されている場合であっても、チューブの材料との親和性に保たれた接着剤を選定してチューブとカフとの接着に採用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
第1図は実施の形態に係るカフ付きチューブの断面図である。このカフ付きチューブは、カテーテル等のチューブ1と、このチューブ1に外嵌した多孔質材よりなる筒状のカフ2とを有する。チューブ1の内径は約1〜10mm程度であり、チューブの肉厚は約0.1〜3mm程度である。
【0016】
チューブ1の構成材料としては、可撓性を有する材料、例えば、ポリウレタン、軟質ポリ塩化ビニル、ポリアミド、シリコーンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、フッ素エラストマーなどの材料が挙げられるが、中でもシリコーンゴムとポリウレタンが好適である。
【0017】
チューブ1がシリコーンゴムよりなる場合、接着剤としてはオルガノシロキサン系、ウレタン系、アクリル系もしくはエポキシ系のもので、熱硬化型、湿度(水)硬化型もしくは放射線硬化型のものなどが好適である。
【0018】
接着剤の粘度としては、0.01Pa・s〜300Pa・s程度であればよい。この接着剤は、多孔質カフに浸透して硬化することにより、カフに対して強固に付着する。即ち、接着剤とカフとの化学的な親和性が低い場合であっても、接着剤はカフと物理的に強固に一体化する。
【0019】
カフ2は多孔質合成樹脂が好適であり、好ましくは、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなる、連通性を有した、平均孔径が50〜1,000μm特に100〜650μm程度、乾燥状態における見掛け密度が0.01〜0.5g/cm特に0.01〜0.1g/cmの多孔性三次元網状構造を有する。
【0020】
この平均孔径及び見掛け密度の測定方法は次の通りである。
【0021】
[平均孔径の測定]
両刃カミソリで切断した試料の平面(切断面)を電子顕微鏡(トプコン社製、SM200)にて撮影した写真を使用して、同一平面上の個々の孔を三次元網状構造の骨格から包囲された図形として画像処理(画像処理装置はニレコ社のLUZEX APを使用し、画像取り込みCCDカメラはソニー株式会社のLE N50を使用。)し、個々の図形の面積を測定する。これを真円面積とし、対応する円の直径を求め孔径とする。ただし、多孔体形成時の相分離の効果によって、多孔体の骨格部分に穿孔されている微細孔は無視して同一平面上の連通孔のみを測定する。
【0022】
[見掛け密度の測定]
多孔質構造体を約10mm×10mm×3mmの直方体に両刃カミソリで切断し、投影機(Nikon,V−12)にて測定して得た寸法より体積を求め、その重量を体積で除した値から見かけ密度を求める。
【0023】
このような多孔性三次元網状構造を構成する熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポシキ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂及びメタクリル樹脂並びにそれらの誘導体の1種又は2種以上が例示できるが、好ましくはポリウレタン樹脂であり、中でもセグメント化ポリウレタン樹脂が好適である。
【0024】
セグメント化ポリウレタン樹脂は、ポリオール、ジイソシアネート及び鎖延長剤の3成分から合成され、いわゆるハードセグメント部分とソフトセグメント部分を分子内に有するブロックポリマー構造によるエラストマー特性を有するため、このようなセグメント化ポリウレタン樹脂を使用した場合に得られる弾性特性は、患者やカテーテル又はカニューレが動いた場合や、消毒作業時等に刺入部周辺の皮膚を動かした場合に皮下組織とカフ部材の界面に生じる応力を減衰させる効果が期待できる。
【0025】
以下に、カフを構成する熱可塑性ポリウレタン樹脂よりなる多孔性三次元網状構造体の製造方法の一例を説明する。
【0026】
熱可塑性ポリウレタン樹脂よりなる多孔性三次元網状構造体を製造するには、まず、ポリウレタン樹脂と、孔形成剤としての後述の水溶性高分子化合物と、ポリウレタン樹脂の良溶媒である有機溶媒とを混合してポリマードープを製造する。具体的には、ポリウレタン樹脂を有機溶媒に混合して均一溶液とした後、この溶液中に水溶性高分子化合物を混合分散させる。有機溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、テトラヒドロフランなどがあるが、熱可塑性ポリウレタン樹脂を溶解することができればこの限りではなく、また、有機溶媒を減量するか又は使用せずに熱の作用でポリウレタン樹脂を融解し、ここに孔形成剤を混合することも可能である。
【0027】
孔形成剤としての水溶性高分子化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースなどが挙げられるが、熱可塑性樹脂と均質に分散してポリマードープを形成するものであればこの限りではない。また、熱可塑性樹脂の種類によっては、水溶性高分子化合物でなく、フタル酸エステル、パラフィンなどの親油性化合物や塩化リチウム、炭酸カルシウムなどの無機塩類を使用することも可能である。また、高分子用の結晶核剤などを利用して凝固時の二次粒子の生成、即ち、多孔体の骨格形成を助長することも可能である。
【0028】
熱可塑性ポリウレタン樹脂、有機溶媒及び水溶性高分子化合物などより製造されたポリマードープは、次いで熱可塑性ポリウレタン樹脂の貧溶媒を含有する凝固浴中に浸漬し、凝固浴中に有機溶媒及び水溶性高分子化合物を抽出除去する。このように有機溶媒及び水溶性高分子化合物の一部又は全部を除去することにより、ポリウレタン樹脂からなる多孔性三次元網状構造材料を得ることができる。ここで用いる貧溶媒としては、水、低級アルコール、低炭素数のケトン類などが例示できる。凝固したポリウレタン樹脂は、最終的には、水などで洗浄して残留する有機溶媒や孔形成剤を除去すれば良い。
【0029】
さらに多孔質体は、好ましくは、その多孔構造を構築している骨格基材自体にも微細な孔を設けていることが好ましい。特に、平均孔径が100〜650μm、乾燥状態における見かけ密度が0.10g/cm以下の連通性の三次元網状構造を形成しており、かつ、該多孔性三次元網状構造層を構築するポリウレタン樹脂からなる骨格自体が空隙率70%以上の多孔質体であり、かつ、該骨格自体の表層は微細孔が点在する緻密な層であることが好ましい。このような微細孔は、骨格表面を平滑な表面でなく複雑な凹凸のある表面とし、コラーゲンや細胞増殖因子などの保持にも有効であり、結果として細胞の生着性を上げることが可能である。ただし、この場合の微細孔は、本発明でいう多孔性三次元網状構造部の平均孔径の計算の概念に導入されるものではない。
【0030】
図2は、上記のように骨格基材自体にも微細な孔を設けたポリウレタン製多孔体の断面のSEM像であり、図3Aはこのポリウレタン製多孔体の表層のSEM写真、図3Bはその部分拡大像である。図2,3A,3Bより、多孔体を形成する骨格部分に微細孔が点在することが分かる。
【0031】
図3B中の大きい円で囲んだ部分をフェザーカッターで切断し、その断面を観察した写真と同等の条件で撮影されたものが図4である(理解しやすくするために大きい円で囲まれた部分を切断したと記述したが、実際にはランダムに存在する切断面から同等の条件に相当する視野を選択した)。
【0032】
図4より、ポリウレタン製多孔体の骨格の内部は高空隙率の多孔質となっているものの、その表層は緻密層で被覆されており、かつ、点在的に細胞が浸潤し得ない大きさの微細孔(図4の小さい円で囲まれた箇所)を介して骨格の外部と連通していることがわかる。
【0033】
ポリウレタン多孔体の構造的特徴、すなわち『三次元網状構造を構築する骨格自体が高空隙率の多孔質であって、かつ、その骨格自体の表層は緻密層で被覆されており、点在的に穿孔する微細孔を介して外界と連通されている』は、以下のような効果を発現する。即ち、ポリウレタン多孔体の骨格自体が多孔質であるために、ここへコラーゲンなどの細胞外マトリックス、アルブミン、酸素、老廃物、水、電解質などが浸潤し、生体組織との間で拡散・交換がされる。一方、細胞成分は骨格内部には存在せず、つまり、細胞の浸潤は骨格表層の緻密層でバリアされる。このようにして、多孔体の骨格部分もが多孔質であって、かつ、細胞(有形成分)が浸潤し得ないために、骨格内部は目詰まりすることなく、多孔体全体へ酸素、栄養分を補給する機能を維持することができ、この結果、良好な組織の浸潤、生着、成熟、血管新生という生体埋入材料として有用な機能が発現される。
【0034】
このポリウレタン多孔体の骨格部分の空隙率を求めるには、まず、平均孔径の測定を前記の通り行う。即ち、多孔体写真の樹脂部分を白とし、空隙(空気部分)を黒として画像処理法により白部分の面積と黒部分の面積を計算する。画像処理により得られた測定視野総面積と、空隙部分総面積と、JIS K7311によるポリウレタン樹脂の比重より計算上の見掛け密度を求める。この見掛け密度は、一般に実測値よりも約10倍以上大きな値となる。これは骨格部分がポリウレタン樹脂からなる中実構造であると仮定したことにより生じた結果である。そこで、計算上の見掛け密度Aと実測値の見掛け密度Bとを計算式(A−B)/A×100(%)に代入して計算することにより、多孔体の骨格自体の空隙率を求めることが可能となる。計算上の見掛け密度が0.91g/cmであり、実測値の見掛け密度が0.077g/cmの場合、空隙率91.5%の多孔質であると計算される。
【0035】
このポリウレタン多孔体では、骨格の表面に微細孔は存在しているが、これは細胞が浸潤し得るサイズではなく、あくまで細胞の生着の助けになる凹凸程度のものであることは前述の通りである。この骨格の微細孔は、結果的に生着を補助することを目的とした凹凸の意味合い合わせて持つものの、本質的には、細胞の浸潤後に多孔体全体が、所謂、『目詰まり状態』となった後に、高空隙率の、多孔体の、骨格を栄養分、酸素、水の拡散・交換に最大限に寄与させるための出入口として機能するものである。
【0036】
チューブ1とカフ2とを接着するための接着としては、チューブ1に対する親和性が高く、かつカフ2の気孔に浸透しうる粘性のものが採用される。
【0037】
本発明では、カフの多孔性三次元網状構造部に、コラーゲンタイプI、コラーゲンタイプII、コラーゲンタイプIII、コラーゲンタイプIV、アテロ型コラーゲン、フィブロネクチン、ゼラチン、ヒアルロン酸、ヘパリン、ケラタン酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸B、エラスチン、ヘパラン硫酸、ラミニン、トロンボスポンジン、ビトロネクチン、オステオネクチン、エンタクチン、ヒドロキシエチルメタクリレートとジメチルアミノエチルメタクリレートの共重合体、ヒドロキシエチルメタクリレートとメタクリル酸の共重合体、アルギン酸、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド及びポリビニルピロリドンよりなる群から選択される1種又は2種以上が保持されていても良く、更に血小板由来増殖因子、上皮増殖因子、形質転換増殖因子α、インスリン様増殖因子、インスリン様増殖因子結合蛋白、肝細胞増殖因子、血管内皮増殖因子、アンジオポイエチン、神経増殖因子、脳由来神経栄養因子、毛様体神経栄養因子、形質転換増殖因子β、潜在型形質転換増殖因子β、アクチビン、骨形質タンパク、繊維芽細胞増殖因子、腫瘍増殖因子β、二倍体繊維芽細胞増殖因子、ヘパリン結合性上皮増殖因子様増殖因子、シュワノーマ由来増殖因子、アンフィレグリン、ベーターセルリン、エピグレリン、リンホトキシン、エリスロエポイエチン、腫瘍壊死因子α、インターロイキン−1β、インターロイキン−6、インターロイキン−8、インターロイキン−17、インターフェロン、抗ウイルス剤、抗菌剤及び抗生物質よりなる群から選択される1種又は2種以上が保持されていても良く、更に、胚性幹細胞(分化されていても良い。)、血管内皮細胞、中胚葉性細胞、平滑筋細胞、末梢血管細胞、及び中皮細胞よりなる群から選択される1種又は2種以上の細胞が接着されていても良い。
【実施例】
【0038】
<多孔体の成型>
熱可塑性ポリウレタン樹脂(日本ミラクトラン社製、ミラクトランE980PNAT)をN−メチル−2−ピロリジノン(関東化学社製、ペプチド合成用試薬、NMP)にディゾルバー(約2,000rpm)を使用して室温下で溶解して12.5%溶液(重量/重量)を得た。このNMP溶液約1.0kgをプラネタリーミキサー(井上製作所製、2.0L仕込み、PLM−2型)に秤量して入れ、ポリウレタン樹脂の半分重量相当のメチルセルロース(関東化学社製、試薬、50cpグレード)を添加し、60℃で120分間攪拌した。攪拌を継続したまま10分間20mmHg(2.7kPa)まで減圧して脱泡する操作を加え、ポリマードープを得た。
【0039】
別に、円筒形カフを成形するための型枠として、長さ30mm、15mm径のテフロン棒をNC加工機(ローランド社、MDX−650)を使用して9.1mmと5.0mmの同心円を9.1mmは深さ20mmまで5.0mmは30mmを貫通させて切削加工し、治具を作成した。内径9mm、長さ100mmの円筒形濾紙の両末端にこの治具を嵌め込み、型枠とした。この型枠の片側の治具の5.0mmの穴を密栓し、もう一端の治具の5.0mmの穴から前記ポリマードープを注入し、5.0mm径のSUS405C製のピンを差し込んだ。これを還流状態にあるメタノール中へ投入して72時間還流を継続してポリマードープからNMP溶媒を抽出除去することでポリウレタン樹脂を凝固させた。なお、メタノールは還流状態を維持したまま、20分間隔で新液と交換した。
【0040】
72時間後、固化したポリウレタン樹脂を取り出し、日本薬局方精製水中で72時間洗浄することによりメチルセルロース、メタノール及び残留するNMPを抽出除去した。これを、室温下で24時間減圧(20mmHg)乾燥させて、熱可塑性ポリウレタン樹脂製の多孔性三次元網状構造材料を得た。
【0041】
得られた多孔性三次元網状構造材料について、下記方法により平均孔径及び見掛け密度の測定を行った。なお、試料の切断は両刃カミソリ(フェザー社製、ハイステンレス)を使用して室温下で行った。
【0042】
[平均孔径の測定]
両刃カミソリで切断した試料の平面(切断面)を電子顕微鏡(トプコン社製、SM200)にて撮影した写真を使用して、同一平面上の個々の孔を三次元網状構造の骨格から包囲された図形として画像処理(画像処理装置はニレコ社のLUZEX APを使用し、画像取り込みCCDカメラはソニー株式会社のLE N50を使用した。)し、個々の図形の面積を測定した。これを真円面積とし、対応する円の直径を求め孔径とした。ただし、多孔体形成時の相分離の効果によって、多孔体の骨格部分に穿孔されている微細孔は無視して同一平面上の連通孔のみを測定した。同時に、測定した全孔において孔径分布を測定した。更にこの孔径分布測定結果から、孔径150〜400μm孔の寄与率を計測した結果、多孔質構造体の平均孔径は286.1μm、孔径150〜400μm孔の寄与率は87.6%と測定された。
【0043】
[見掛け密度の測定]
多孔質構造体を約10mm×10mm×3mmの直方体に両刃カミソリで切断し、投影機(Nikon,V−12)にて測定して得た寸法より体積を求め、その重量を体積で除した値から見かけ密度を求めた結果、0.118±0.006g/cmであった。
【0044】
このカフの内径は5.1mm、外径は9.0mm、長さは30mmである。
【0045】
カフの内周面に接着剤として湿度硬化性縮合型オルガノシロキン接着剤(信越シリコンKE45)を厚み2mmで均質に塗布した後、シリコーンゴム製チューブ(外径5.0mm)に外嵌させ、24時間室温に設置して接着剤を硬化させた。これにより、カフ2がチューブ1に強固に付着したカフ付きチューブが得られた。
【0046】
なお、チューブ1の軸心を垂直方向にカフ2及びチューブ1を切断し、カフ2とチューブ1との界面を顕微鏡で観察したとする。接着剤はチューブ1の外周面に強固に付着し、またカフ2の気孔に深さ約0.3mm〜0.5mm程度浸透し、更に図3bに示される骨格に穿孔している微細孔にも浸透して硬化していることが認められた。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】カフ付きチューブの断面図である。
【図2】ポリウレタン多孔体の断面のSEM写真である。
【図3】ポリウレタン多孔体の表層のSEM写真である。
【図4】ポリウレタン多孔体の断面のSEM写真である。
【符号の説明】
【0048】
1 カテーテル(チューブ)
2 カフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブに筒状のカフが外嵌され、接着剤によってカフがチューブに固定されているカフ付きチューブにおいて、
該カフが連続気孔を有した多孔質材よりなり、前記接着剤は、該チューブの外周面に付着すると共に、前記カフの気孔に入り込んで硬化していることを特徴とするカフ付きチューブ。
【請求項2】
請求項1において、前記カフが多孔質合成樹脂よりなることを特徴とするカフ付きチューブ。
【請求項3】
請求項2において、該合成樹脂がセグメント化ポリウレタン樹脂であることを特徴とするカフ付きチューブ。
【請求項4】
請求項2又は3において、前記多孔質合成樹脂は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなる、平均孔径が100〜650μmであり、乾燥状態における見掛け密度が0.01〜0.1g/cmである多孔性三次元網状構造を有することを特徴とするカフ付きチューブ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記チューブがシリコーンゴムよりなり、接着剤がオルガノシロキサン系、ウレタン系、アクリル系又はエポキシ系接着剤であることを特徴とするカフ付きチューブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−295546(P2008−295546A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−142088(P2007−142088)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(591108880)国立循環器病センター総長 (159)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】