説明

カプセルトナーおよびその製造方法

【課題】離型剤のブリードアウトが防止されかつ凝集のない、トナー母粒子の表面に離型剤層および樹脂被覆層が順次形成されたカプセルトナーを、優れた生産性で製造し得るカプセルトナーの製造方法、それにより得られたトナーおよびそれとキャリアを含む二成分現像剤を提供することを課題とする。
【解決手段】
トナー母粒子の表面が離型剤粒子からなる離型剤層で被覆された離型剤被覆トナー粒子を形成する工程と、離型剤被覆トナー粒子の表面に樹脂微粒子が付着した複合トナー粒子を形成する工程と、トナー母粒子中の結着樹脂のガラス転移温度以下でかつ離型剤粒子のオンセット温度以下の温度条件下で、複合トナー粒子の表面に揮発性液体を噴霧しつつ複合トナー粒子を撹拌処理に付して、離型剤被覆トナー粒子の表面が樹脂微粒子からなる樹脂層で被覆されたカプセルトナーを形成する工程を含むことを特徴とするカプセルトナー製造方法により、上記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプセルトナーの製造方法、それにより得られたトナーおよびそれとキャリアを含む二成分現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いて画像を形成する画像形成装置は、通常、感光体と、感光体表面を帯電させる帯電手段と、帯電状態にある感光体表面に画像情報に対応する信号光を照射して静電潜像を形成する露光手段と、感光体表面に形成された静電潜像に現像剤中のトナーを供給してトナー像を形成する現像手段と、感光体表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、転写されたトナー像を記録媒体上に定着させて画像を形成する定着手段と、トナー像転写後の感光体表面に残留するトナーをクリーニングブレードで掻取って感光体表面を清浄化するクリーニング手段とを備える。
【0003】
このような画像形成装置では、静電潜像を現像し、画像を形成する現像剤として、トナーを含む一成分現像剤またはトナーとキャリアとを含む二成分現像剤が用いられる。ここで用いられるトナーは、通常、マトリックスであるポリエステル系結着樹脂中に着色剤、離型剤であるワックスなどを分散させて粒状化した樹脂微粒子である。
【0004】
トナーの製造方法としては、従来から混練粉砕法が汎用されている。しかしながら、粉砕トナーはその表面に多くの凹凸を有する不定形状であり、粉砕後の破砕面がそのままトナー粒子表面となるために、表面組成が不均一になり易く、またトナー粒子の表面状態を均一に制御することは難しい。このようにトナー粒子表面が不定形状であると、トナーの流動性が低下したり、トナー組成の不均一性が原因となり、かぶりやトナー飛散が発生するなどの問題が生じる。
【0005】
上記の問題を鑑みて、混練粉砕法に代わるトナーの製造方法として、トナー原料の分散液を混合し、凝集させてトナーを製造する湿式法が種々提案されている。しかしながら、湿式法では、分散安定剤や凝集剤を多用するために、それらの成分の一部がトナー粒子表面または内部に残留して耐湿性の低下や帯電特性の悪化を招き、特に帯電特性が著しく不安定になり易いという問題がある。
【0006】
一方、近年の画像形成装置の高画質化の流れに伴い、トナーの小粒径(微粉)化が進み、二成分現像剤中における小粒径トナーの含有率が増加する傾向にある。
二成分現像剤に含まれる小粒径トナーは、現像装置内でのストレスにより割れや形状変化を起こし易く、これによりキャリアへのトナースペントとそれに伴う現像剤の帯電劣化が生じ、現像や転写プロセスに影響を与え、画質劣化を招く要因となっている。
【0007】
そこで、流動性、転写性などが良好で、帯電性能が均一であり、耐オフセット性に優れ、またその他の様々な機能を有するトナーとして、トナー母粒子の表面を樹脂層により被覆したカプセルトナーが提案されている。
【0008】
しかしながら、樹脂層で被覆されたカプセルトナーは、耐ブロッキング性を向上させるために、一般的にトナー母粒子よりも耐熱性の高い樹脂微粒子が用いられるので、トナー母粒子が溶け出し難くなり、低温オフセットが発生し易くなるという問題がある。また、樹脂被覆層がトナー母粒子内部からの離型剤の染み出しを阻害し、高温オフセットが発生し易くなるため、十分な定着可能温度域(非オフセット温度域)が得られないという問題がある。
【0009】
そこで、低温定着性と、高温オフセット性および貯蔵安定性との両立を図るために、トナー母粒子表面に離型剤層を形成し、さらにその外側に樹脂被覆層を設けた凝集法トナーが提案されている。
特開2006−39515号公報(特許文献1)には、第一の樹脂微粒子と着色剤粒子からなる凝集粒子(コア)の表面に、非イオン界面活性剤で分散させた離型剤を融着させて離型剤付着層を形成し、さらにその表面に第二の樹脂微粒子を融着させて樹脂被覆層を形成した凝集法カプセルトナーが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−39515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載のトナーは、製造工程において加熱処理を行っているために、樹脂被覆層を形成させる際に、コア表面に融着した離型剤がブリードアウトし易く、製造時においてトナー粒子同士が凝集するという問題があった。そこで、離型剤のブリードアウトを防止するために、樹脂被覆層を形成させる際の加熱温度を低くすると、樹脂被覆層を形成する樹脂微粒子の融着が不完全になり、強固な樹脂被覆層が形成されなくなる。
【0012】
本発明は、離型剤のブリードアウトが防止されかつ凝集のない、トナー母粒子の表面に離型剤層および樹脂被覆層が順次形成されたカプセルトナーを、優れた生産性で製造し得るカプセルトナーの製造方法、それにより得られたトナーおよびそれとキャリアを含む二成分現像剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を行った結果、加熱処理を行うことなしに、離型剤層で被覆されたトナー母粒子の表面に樹脂被覆層を形成すること、具体的には、離型剤層が形成されたトナー母粒子の表面に樹脂微粒子を付着させ、これに揮発性液体を噴霧しつつ撹拌処理により衝撃力を負荷することにより、離型剤のブリードアウトが防止されかつ凝集のないカプセルトナーを、優れた生産性で製造し得ることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0014】
かくして、本発明によれば、
少なくとも結着樹脂、着色剤および電荷制御剤を含むトナー母粒子と離型剤粒子とを混合して両者が均一に分散した離型剤混合物を得、次いで前記離型剤混合物を撹拌処理に付し衝撃力を負荷して、前記トナー母粒子の表面が前記離型剤粒子からなる離型剤層で被覆された離型剤被覆トナー粒子を形成する工程と、
前記離型剤被覆トナー粒子と樹脂微粒子とを混合して両者が均一に分散した樹脂微粒子混合物を得、次いで前記樹脂微粒子混合物を撹拌処理に付し衝撃力を負荷して、前記離型剤被覆トナー粒子の表面に前記樹脂微粒子が付着した複合トナー粒子を形成する工程と、
前記トナー母粒子中の結着樹脂のガラス転移温度以下でかつ前記離型剤粒子のオンセット温度以下の温度条件下で、前記複合トナー粒子の表面に揮発性液体を噴霧しつつ前記複合トナー粒子を撹拌処理に付して、前記離型剤被覆トナー粒子の表面が前記樹脂微粒子からなる樹脂層で被覆されたカプセルトナーを形成する工程
を含むことを特徴とするカプセルトナー製造方法が提供される。
【0015】
また、本発明によれば、上記のカプセルトナー製造方法により得られたことを特徴とするカプセルトナーが提供される。
さらに、本発明によれば、少なくとも上記のカプセルトナーとキャリアを含むことを特徴とする二成分現像剤が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、離型剤のブリードアウトが防止されかつ凝集のないカプセルトナーを、優れた生産性で製造することができる。
すなわち、本発明によれば、離型剤層が形成されたトナー母粒子の表面に樹脂微粒子を付着させ、これに揮発性液体を噴霧しながら衝撃力を負荷するので、樹脂微粒子が変形(解砕)、展延して、離型剤層の露出のない均一な樹脂被覆層が形成され、また揮発性液体の蒸発エネルギーにより離型剤が加熱されず、ブリードアウトが抑えられるので、凝集のないカプセルトナーを優れた生産性で製造できるものと考えられる。
ここで、「ブリードアウト」とは、離型剤が加熱されて溶け出す現象を意味する。
【0017】
また、本発明によれば、カプセルトナーを形成する工程における撹拌処理が回転撹拌手段と温度調整手段とを備えた回転撹拌装置の粉体流路内に複合トナー粒子を流動させて、複合トナー粒子に衝撃力を負荷することからなることにより、揮発性液体が粉体供給手段を経由して回転撹拌装置の粉体流路内に供給されることにより、上記の優れた効果がさらに発揮される。
【0018】
さらに、本発明によれば、揮発性液体がエタノールであることにより、トナー母粒子中の結着樹脂がガラス転移温度45〜70℃を有し、離型剤粒子がオンセット温度60〜100℃を有しかつ樹脂微粒子がアクリル樹脂またはスチレン−アクリル共重合体であることにより、上記の優れた効果がさらに発揮される。
【0019】
さらにまた、本発明によれば、複合トナー粒子を形成する工程における撹拌処理が回転撹拌手段と温度調整手段とを備えた回転撹拌装置の粉体流路内に樹脂微粒子混合物を流動させて、樹脂微粒子混合物に衝撃力を負荷することからなり、かつ回転撹拌装置から内容物を回収することなく連続してカプセルトナーを形成する工程における撹拌処理が行われることにより、上記の優れた効果がさらに発揮される。すなわち、回収工程を含まないことにより、回収経路でのトナー付着による収率低下を防ぎ、トナーの生産効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のカプセルトナーの製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【図2】本発明のカプセルトナーの製造方法で用いる樹脂被覆層形成装置201の構成を示す正面図である。
【図3】図2の樹脂被覆層形成装置201における切断面線A200―A200の概略断面図である。
【図4】図2の樹脂被覆層形成装置201における粉体投入部206および粉体回収部207周辺の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のカプセルトナーは、トナー母粒子の表面に離型剤層および樹脂被覆層が順次形成されてなる。
【0022】
1.トナーの製造方法
図1は、本発明のカプセルトナーの製造方法の一実施形態を示す工程図である。
この実施形態におけるカプセルトナーの製造方法は、トナー母粒子作製工程S1、樹脂微粒子調製工程S2、離型剤層形成工程S3、複合粒子形成工程S4および樹脂被覆層形成工程S5を含む。
この実施形態の各工程について以下に詳述するが、これらにより本発明が限定されるものではない。
【0023】
(1)トナー母粒子作製工程S1
トナー母粒子作製工程S1では、離型剤粒子からなる離型剤層および樹脂微粒子からなる樹脂被覆層により順次被覆されるトナー母粒子を作製する。
トナー母粒子は、少なくとも結着樹脂、着色剤および電荷制御剤を含み、その作製方法は特に限定されず、例えば、粉砕法などの乾式法、懸濁重合法、乳化凝集法、分散重合法、溶解懸濁法および溶融乳化法などの湿式法のような公知の方法により作製することができる。
以下、粉砕法によるトナー母粒子を作製方法について説明する。
【0024】
[粉砕法によるトナー母粒子の作製]
粉砕法によるトナー母粒子の作製では、少なくとも結着樹脂、着色剤および電荷制御剤を含むトナー組成物を混合機で乾式混合した後、混練機によって溶融混練し、得られた混練物を冷却固化し、固化物を粉砕機によって粉砕し、その後必要に応じて分級などの粒度調整を行い、トナー母粒子を得る。
【0025】
混合機としては、当該技術分野で常用される公知の装置を使用でき、例えば、ヘンシェルミキサ(商品名、三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサ(商品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)などのヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)などの混合装置が挙げられる。
【0026】
混練機としては、当該技術分野で常用される公知の装置を使用でき、例えば、二軸押出機、三本ロール、ラボブラストミルなどの一般的な混練機が挙げられる。具体的には、例えば、TEM−100B(商品名、東芝機械株式会社製)、PCM−65/87、PCM−30(以上いずれも商品名、株式会社池貝製)などの1軸または2軸のエクストルーダ、ニーデックス(商品名、三井鉱山株式会社製)などのオープンロール方式の混練機が挙げられ、これらの中でもオープンロール方式の混練機が連続生産性の点で好ましい。
【0027】
粉砕機としては、当該技術分野で常用される公知の装置を使用でき、例えば、超音速ジェット気流を利用して粉砕するジェット式粉砕機、高速で回転する回転子(ロータ)と固定子(ライナ)との間に形成される空間に固化物を導入して粉砕する衝撃式粉砕機が挙げられる。
【0028】
分級には、当該技術分野で常用される公知の装置、特に旋回式風力分級機(ロータリー式風力分級機)のような遠心力および風力により過粉砕トナー母粒子を除去できる分級機を使用できる。
【0029】
[トナー組成物]
トナー母粒子の原料となるトナー組成物は、少なくとも結着樹脂、着色剤および電荷制御剤を含む。
[結着樹脂]
本発明のトナー母粒子の結着樹脂としては、明確な融点を有さない非晶性ポリエステル樹脂を好適に用いることができる。非晶性樹脂は一般に抵抗が高く、万一結着樹脂がトナー表面に露出しても、帯電性安定性への影響を小さく抑えることができる。一方、結晶性ポリエステル樹脂のような結晶性樹脂は、融解に必要なエネルギー量が大きく、トナーの定着性を向上させることができず好ましくない。
【0030】
非晶性ポリエステル樹脂は、通常、2価のアルコール成分または3価以上の多価アルコール成分と、2価のカルボン酸または3価以上の多価カルボン酸からなるモノマー組成物を、公知の方法により縮重合反応もしくはエステル化、エステル交換反応により得られる。
縮重合反応における条件は、モノマー成分の反応性により適宜設定すればよく、また重合体が好適な物性になった時点で反応を終了させればよい。例えば、反応温度は170〜250℃程度、反応圧力は5mmHg〜常圧程度である。
【0031】
2価のアルコール成分としては、例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどのビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのジオール類;ビスフェノールA;ビスフェノールAのプロピレン付加物;ビスフェノールAのエチレン付加物;水素添加ビスフェノールAなどが挙げられる。
【0032】
3価以上の多価アルコール成分としては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、シュクロース(蔗糖)、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンなどが挙げられる。
本発明においては、上記の2価のアルコール成分および3価以上の多価アルコール成分の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
2価のカルボン酸として、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、n−ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−オクチルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、イソオクチルコハク酸およびこれらの酸無水物もしくは低級アルキルエステルなどが挙げられる。
【0034】
3価以上の多価カルボン酸としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸およびこれらの酸無水物もしくは低級アルキルエステルなどが挙げられる。
本発明においては、上記の2価のカルボン酸および3価以上の多価カルボン酸の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の優れた効果をより発揮させるために、結着樹脂は、ガラス転移温度45〜70℃を有するのが好ましい。より好ましくは50〜65℃である。
【0035】
[着色剤]
本発明のトナー母粒子の着色剤としては、電子写真分野で常用される有機系および無機系の様々な種類および色の顔料および染料を用いることができ、例えば、黒色、白色、黄色、橙色、赤色、紫色、青色および緑色の着色剤が挙げられる。
【0036】
黒色の着色剤としては、例えば、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭、非磁性フェライト、磁性フェライトおよびマグネタイトなどが挙げられる。
白色の着色剤としては、例えば、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛などが挙げられる。
【0037】
黄色の着色剤としては、例えば、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138などが挙げられる。
【0038】
橙色の着色剤としては、例えば、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43などが挙げられる。
【0039】
赤色の着色剤としては、例えば、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222などが挙げられる。
【0040】
紫色の着色剤としては、例えば、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキなどが挙げられる。
【0041】
青色の着色剤としては、例えば、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60などが挙げられる。
【0042】
緑色の着色剤としては、例えば、クロムグリーン、酸化クロム、ピクメントグリーンB、マイカライトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG、C.I.ピグメントグリーン7などが挙げられる。
【0043】
本発明においては、上記の着色剤の1種を単独でまたは2種を組み合わせて用いることができ、それらの組み合わせは異色であっても同色であってもよい。
また2種以上の着色剤を複合粒子化して用いてもよい。
複合粒子は、例えば、2種以上の着色剤に適量の水、低級アルコールなどを添加し、ハイスピードミルなどの一般的な造粒機で造粒し、乾燥させることによって製造できる。
さらに、結着樹脂中に着色剤を均一に分散させるために、マスターバッチ化して用いてもよい。
複合粒子およびマスターバッチは、乾式混合の際にトナー組成物に混入される。
【0044】
着色剤の配合量は特に限定されないが、結着樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部が好ましく、0.2〜10重量部が特に好ましい。
着色剤の配合量が上記の範囲内であれば、トナーの各種物性を損なうことなしに、高い画像濃度を有し、画質品位の非常に良好な画像を形成することができる。
【0045】
[電荷制御剤]
電荷制御剤としては、当該技術分野で常用される正電荷制御用および負電荷制御用の電荷制御剤を用いることができる。
【0046】
正電荷制御用の電荷制御剤としては、例えば、ニグロシン染料、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、ニグロシン染料およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、アミジン塩などが挙げられる。
負電荷制御用の電荷制御剤としては、例えば、オイルブラック、スピロンブラックなどの油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸およびその誘導体の金属錯体および金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウムなど)、ホウ素化合物、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、樹脂酸石鹸などが挙げられる。
【0047】
本発明においては、上記の電荷制御剤の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
電荷制御剤の配合量は特に限定されないが、結着樹脂100重量部に対して0.5〜3重量部が好ましく、0.5〜1.5重量部が特に好ましい。
電荷制御剤の配合量が上記の範囲内であれば、トナーの各種物性を損なうことなしに、高い画像濃度を有し、画質品位の非常に良好な画像を形成することができる。
また、電荷制御剤は、後述する被覆工程において樹脂微粒子からなる被覆層中に混合して用いてもよい。
【0048】
本発明のトナー母粒子には、結着樹脂、着色剤および電荷制御剤以外に、公知の添加剤が配合されていてもよい。
【0049】
トナー母粒子は、体積平均粒子径3〜10μmであるのが好ましく、より好ましくは5〜8μmである。トナー母粒子の体積平均粒子径が前記の範囲内であれは、長期にわたり高精細な画像を安定して形成することができる。
トナー母粒子の体積平均粒子径が3μm未満であると、高帯電化および低流動化が起こり、感光体にトナーを安定して供給できなくなり、地肌かぶりおよび画像濃度の低下などが発生するおそれがある。一方、トナー母粒子の平均粒子径が10μmを超えると、形成画像の層厚が大きくなり、粒状性の著しい画像となり、高精細な画像を得られないことがあり、また比表面積が減少してトナーの帯電量が小さくなり、トナーが感光体に安定して供給されず、トナー飛散による機内汚染が発生するおそれがある。
【0050】
(2)樹脂微粒子調製工程S2
樹脂微粒子調製工程S2では、樹脂被覆層形成工程S5において、トナー母粒子の最表層を被覆するための乾燥された樹脂微粒子を形成する。
乾燥には、例えば、熱風受熱式乾燥、伝導伝熱式乾燥、遠赤外線乾燥、マイクロ波乾燥などの公知の方法を用いることができる。
樹脂微粒子は、例えば、樹脂微粒子原料である樹脂をホモジナイザーなどで乳化分散させて細粒化することによって得ることができ、また樹脂のモノマー成分の重合によって得ることもできる。
【0051】
樹脂微粒子原料の樹脂としては、当該技術分野で常用される樹脂を用いることができ、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、スチレン−アクリル共重合体などが挙げられる。これらの樹脂の中でも、軽量で高い強度を有し、さらに透明性が高く、安価で、粒子径の揃った材料が得られ易いなど、多くの利点を有することから、アクリル樹脂およびスチレン−アクリル共重合体が好ましい。
【0052】
樹脂微粒子原料の樹脂は、トナー母粒子に含まれる結着樹脂と同じ種類の樹脂であっても異なる種類の樹脂であってもよいが、トナーの表面改質を行う点において、異なる種類の樹脂が用いられることが好ましい。
異なる種類の樹脂を用いる場合、樹脂微粒子原料として用いられる樹脂の軟化温度が、トナー母粒子に含まれる結着樹脂の軟化温度よりも高いことが好ましい。これにより、保存中のトナー同士の融着を防止でき、保存安定性を向上させることができる。
また、樹脂微粒子原料の樹脂の軟化温度は、カプセルトナーが使用される画像形成装置にもよるが、保存安定性と定着性とを兼ね備えたカプセルトナーを得るためには、80〜140℃であるのが好ましい。
【0053】
樹脂微粒子は、トナー母粒子よりも充分に小さいことが必要であり、体積平均粒子径0.05〜1μmであるのが好ましく、より好ましくは0.1〜0.5μmである。
樹脂微粒子の体積平均粒径が上記の範囲内であれば、好適な大きさの突起部が被覆層表面に形成され、クリーニング時にクリーニングブレードに引っ掛かり易くなり、クリーニング性が向上する。
【0054】
樹脂微粒子の添加量は特に限定されないが、離型剤被覆トナー粒子の全表面が被覆される必要があるため、トナー母粒子100重量部に対して1〜30重量部が好ましい。
樹脂微粒子の添加量が上記の範囲内であれば、離型剤被覆トナー粒子の全表面に樹脂微粒子を付着させることができ、樹脂被覆層を形成できるので、離型剤被覆トナー粒子に含まれる低融点成分の浸出により発生するトナーの凝集をより確実に防止できる。
樹脂微粒子の添加量が1重量部未満であると、離型剤被覆トナー粒子の全表面を樹脂で被覆することができず、離型剤被覆トナー粒子に含まれる低融点成分が浸出するおそれがあり、また被覆層の膜厚が薄くなるため、離型剤が染み出し易くなる。一方、樹脂微粒子の添加量が30重量部を超えると、被覆層の膜厚が大きくなり過ぎ、樹脂微粒子の構成材料によっては、トナーの定着性が低下するおそれがある。
【0055】
(3)離型剤層形成工程S3
離型剤層形成工程S3では、トナー母粒子の表面が離型剤粒子からなる離型剤層で被覆された離型剤被覆トナー粒子を形成する。この工程は、離型剤混合粒子調製工程S3aおよび離型剤粒子付着工程S3bからなる。
【0056】
(3−1)離型剤混合粒子調製工程S3a
離型剤混合粒子調製工程S3aでは、トナー母粒子と離型剤粒子とを混合して、両者が均一に分散した樹脂微粒子混合物を得る。
混合には、例えば、V型混合機(株式会社徳寿工作所製)、ダブルコーン型混合機(株式会社ダルトン製)などの公知の装置を用いることができる。
【0057】
[離型剤]
離型剤としては、当該技術分野で常用される離型剤を用いることができ、例えば、パラフィンワックスおよびマイクロクリスタリンワックスならびにそれらの誘導体などの石油系ワックス;フィッシャートロプシュワックス、ポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなど)、低分子量ポリプロピリンワックスおよびポリオレフィン系重合体ワックス(低分子量ポリエチレンワックスなど)ならびにそれらの誘導体などの炭化水素系合成ワックス;カルナバワックス、ライスワックスおよびキャンデリラワックスならびにそれらの誘導体、木蝋などの植物系ワックス;蜜蝋、鯨蝋などの動物系ワックス;脂肪酸アミドおよびフェノール脂肪酸エステルなどの油脂系合成ワックス;長鎖カルボン酸およびその誘導体;長鎖アルコールおよびその誘導体;シリコーン系重合体;高級脂肪酸などが挙げられる。
上記の誘導体には、酸化物、ビニル系モノマーとワックスとのブロック共重合物、ビニル系モノマーとワックスとのグラフト変性物などが含まれる。
本発明においては、上記の離型剤の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
本発明の優れた効果をより発揮させるために、離型剤粒子は、融点70〜110℃およびオンセット温度60〜100℃を有するのが好ましい。より好ましくは融点70〜95℃およびオンセット温度60〜85℃である。
ここで、「オンセット温度」とは、DSC曲線において、融解に相当する吸熱ピークより低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ピークの立ち上がり部分から頂点までの曲線に対して勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度を意味する。その具体的な測定方法については、実施例において詳述する。
離型剤粒子の融点およびオンセット温度が上記の範囲内であれば、トナーの各種物性を損なうことなしに、高い画像濃度を有し、画質品位の非常に良好な画像を形成することができる。
【0059】
離型剤の配合量は特に限定されないが、結着樹脂100重量部に対して0.2〜20重量部が好ましく、0.5〜10重量部が特に好まし1.0〜8.0重量部が特に好ましい。
離型剤の配合量が上記の範囲内であれば、トナーの各種物性を損なうことなしに、高い画像濃度を有し、画質品位の非常に良好な画像を形成することができる。
【0060】
(3−2)離型剤粒子付着工程S3b
離型剤粒子付着工程S3bでは、離型剤混合物を撹拌処理に付し離型剤混合物に衝撃力を負荷して、前記トナー母粒子の表面を前記離型剤層で被覆、すなわちトナー母粒子の表面が離型剤粒子からなる離型剤層で被覆された離型剤被覆トナー粒子を形成する。
【0061】
この工程に使用できる装置としては、例えば、ヘンシェルミキサ(商品名、三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサ(商品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)などのヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)などが挙げられる。
装置の運転条件は、離型剤混合物の材料、装置の種類などにより適宜設定すればよい。
【0062】
(4)複合粒子形成工程S4
複合粒子形成工程S4では、離型剤被覆トナー粒子の表面に樹脂微粒子が付着した複合トナー粒子を形成する。この工程は、樹脂微粒子混合粒子調製工程S4aおよび樹脂微粒子付着工程S4bからなる。
【0063】
(4−1)樹脂微粒子混合粒子調製工程S4a
樹脂微粒子混合粒子調製工程S4aでは、離型剤被覆トナー粒子と樹脂微粒子とを混合して、両者が均一に分散した樹脂微粒子混合物を得る。
混合には、離型剤混合粒子調製工程S3aと同様に、例えば、V型混合機(株式会社徳寿工作所製)、ダブルコーン型混合機(株式会社ダルトン製)などの公知の装置を用いることができる。
【0064】
(4−2)樹脂微粒子付着工程S4b
樹脂微粒子付着工程S4bでは、樹脂微粒子混合物を撹拌処理に付し樹脂微粒子混合物に衝撃力を負荷して、離型剤被覆トナー粒子の表面に樹脂微粒子が付着した複合トナー粒子を形成する。すなわち、樹脂微粒子混合物に衝撃力を加えて、樹脂微粒子を解砕し、離型剤被覆トナー粒子の表面に樹脂微粒子を付着(固定化)させて樹脂微粒子付着トナー(複合トナー粒子)を形成する。
【0065】
この工程に使用できる装置としては、離型剤粒子付着工程S3bと同様に、例えば、ヘンシェルミキサ(商品名、三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサ(商品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)などのヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)などが挙げられる。
装置の運転条件は、離型剤混合物の材料、装置の種類などにより適宜設定すればよい。
【0066】
(5)樹脂被覆層形成工程S5
樹脂被覆層形成工程S5では、トナー母粒子中の結着樹脂のガラス転移温度以下でかつ離型剤粒子のオンセット温度以下の温度条件下で、複合トナー粒子(樹脂微粒子付着トナー)の表面に揮発性液体を噴霧しつつ複合トナー粒子を撹拌処理に付して、離型剤被覆トナー粒子の表面が樹脂微粒子からなる樹脂層で被覆されたカプセルトナーを形成する。すなわち、樹脂微粒子を離型剤被覆トナー粒子の表面で膜化させてカプセルトナー粒子を得る。
上記の撹拌処理は、回転撹拌手段と温度調整手段とを備えた回転撹拌装置の粉体流路内に複合トナー粒子を流動させて、複合トナー粒子に衝撃力を負荷することからなるのが好ましい。
【0067】
樹脂微粒子を膜化材料とする、すなわち離型剤被覆トナー粒子の表面に樹脂微粒子からなる樹脂被覆層を形成することにより、例えば、保存中に離型剤被覆トナー粒子中に含まれる離型剤(ワックス)などの低融点成分の溶融による凝集の発生を防止することができる。また、本発明のカプセルトナーは、樹脂微粒子を分散させた液体を離型剤被覆トナー粒子に噴霧して樹脂微粒子で被覆する従来法の平滑な表面を有するカプセルトナーと比較して、樹脂微粒子の形状がトナー表面に残るので、優れたクリーニング性を有する。
【0068】
この工程に使用できる装置としては、例えば、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、後述する樹脂被覆層形成装置などが挙げられる。
樹脂被覆層形成工程における回転撹拌装置の回転撹拌手段は、回転羽根を周囲に設置した回転盤および回転軸を含むのが好ましい。
カプセルトナーの一連の製造フローにおいて、その生産効率を考慮した場合、回収ロスによる収率低下を抑えることが求められる。したがって、複合トナー粒子を形成する工程における撹拌処理が回転撹拌手段と温度調整手段とを備えた回転撹拌装置の粉体流路内に樹脂微粒子混合物を流動させて、樹脂微粒子混合物に衝撃力を負荷することからなり、かつ回転撹拌装置から内容物を回収することなく連続してカプセルトナーを形成する工程における撹拌処理が行われるのが好ましい。
【0069】
揮発性液体は、トナー母粒子および樹脂微粒子を溶解せず可塑化させる効果があり、その蒸発エネルギーにより離型剤を加熱させず、ブリードアウトを抑え得るものであれば特に限定されない。
揮発性液体としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールおよびイソブチルアルコールなどの低級アルコール類;ジエチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;酢酸メチルおよび酢酸エチルなどのエステル類などが挙げられる。
本発明においては、上記の揮発性液体の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0070】
低級アルコールは、複合トナー粒子(樹脂微粒子付着トナー)のトナー母粒子に対する濡れ性が高く、トナー母粒子の全表面または大部分に樹脂被覆層を形成させることを容易にする。また、低級アルコールにより可塑化された樹脂微粒子付着トナーは、外力によって変形して、トナー母粒子の表面に均一な樹脂被覆層を形成する。また、低級アルコールは、乾燥し易く、樹脂被覆層の形成後に揮発性液体を除去するための乾燥時間を短縮でき、得られたカプセルトナー同士の凝集を抑制できる。
【0071】
また、噴霧される揮発性液体の粘度は、5cP以下であることが好ましい。ここで、「液体の粘度」とは、例えば、コーンプレート型回転式粘度計を用いて25℃において測定される粘度を意味する。
粘度5cP以下の揮発性液体としては、メチルアルコールおよびエチルアルコールなどの低級アルコールが挙げられる。これらの低級アルコールは粘度が小さくかつ蒸発し易いので、噴霧された液滴が粗大化せず、均一でかつ微細な液滴径の揮発性液体の噴霧が可能となる。また、樹脂微粒子付着トナーと揮発性液体の液滴との衝突時には、さらに液滴の微細化を促進できる。これらにより、樹脂微粒子付着トナーの表面を均一に濡らし、馴染ませ、衝突エネルギーとの相乗効果で樹脂微粒子付着トナーを軟化させ、その結果、均一性に優れたカプセルトナーを得ることができる。
したがって、上記の揮発性液体の中でも、低級アルコールが好ましく、エタノールが特に好ましい
揮発性液体は、粉体供給手段を経由して上記の回転撹拌装置の複合トナー粒子が流動する粉体流路内に供給されるのが好ましい。回転撹拌装置については、(樹脂被覆層形成装置)の項で詳述する。
【0072】
上記の処理後、噴霧した揮発性液体を気化させて除去すればよい。
気化には、熱風受熱式乾燥機、伝導伝熱式乾燥機、凍結乾燥機などの公知の乾燥機を用いることができるが、上記の処理後に噴霧する揮発性液体の供給を止め、一定時間攪拌(循環)させながら気化、乾燥させてもよく、上記のハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、後述する樹脂被覆層形成装置が好適に用いられる。
【0073】
(樹脂被覆層形成装置201)
図2〜4は、それぞれ本発明のカプセルトナーの製造方法で用いる樹脂被覆層形成装置201の構成を示す正面図、図2の樹脂被覆層形成装置201における切断面線A200―A200の概略断面図および図2の樹脂被覆層形成装置201における粉体投入部206および粉体回収部207周辺の構成を示す側面図である。
【0074】
図2〜4に示される樹脂被覆層形成装置201は、回転撹拌装置であり、装置内での循環と撹拌の相乗効果による機械的衝撃力で、離型剤被覆トナー粒子の表面に樹脂微粒子からなる樹脂被覆層を形成する。
樹脂被覆層形成装置201は、粉体流路202と、噴霧手段203と、回転撹拌手段204と、図示しない温度調整用ジャケットと、粉体投入部206と、粉体回収部207とを含んで構成され、粉体流路202と回転撹拌手段204とは循環手段を構成する。
【0075】
(粉体流路202)
粉体流路202は、撹拌部208と循環管である粉体流過部209とから構成される。
撹拌部208は、内部空間を有する円筒形状の容器状部材であり、回転撹拌室を構成し、開口部210、211を有する。
開口部210は、撹拌部208の軸線方向一方側の面208aにおける略中央部において、撹拌部208の面208aを含む側壁を厚み方向に貫通するように形成される。また、開口部211は、撹拌部208の前記軸方向片側の面208aに垂直な側面208bにおいて、撹拌部208の側面208bを含む側壁を厚み方向に貫通するよう形成される。
粉体流過部209は、一端が開口部210と接続され、他端が開口部211と接続され、撹拌部208の内部空間と粉体流過部209の内部空間とが連通されて、粉体流路202が形成される。この粉体流動方向が一定となるよう設けられた粉体流路202を、離型剤被覆トナー粒子および気体が流過する。図中の図番214は流動方向を示す矢符である。
【0076】
粉体流路202内の温度は、トナー母粒子中の結着樹脂のガラス転移温度以下でかつ離型剤粒子のオンセット温度以下に設定されるのが好ましく、その下限は30℃以上であるのが好ましい。粉体流路202内の温度がトナー母粒子中の結着樹脂のガラス転移温度または離型剤粒子のオンセット温度を超えると、離型剤被覆トナー粒子が軟化し過ぎ、トナー粒子同士の凝集が発生するおそれがある。一方、粉体流路202内の温度が30℃未満であると、分散液の乾燥速度が遅くなり生産性が低下するおそれがある。
粉体流路202内の温度は、離型剤被覆トナー粒子の流動により、どの部分においてもほぼ均一となる。
したがって、トナー粒子の凝集を防止するために、粉体流路202および後述する回転撹拌手段204の温度をトナー母粒子中の結着樹脂のガラス転移温度以下でかつ離型剤粒子のオンセット温度以下に維持する必要がある。そのため、内径が粉体流路管の外径よりも大きい、温度調整用ジャケットが粉体流路202および回転撹拌手段204の外側の少なくとも一部に配設される。
【0077】
(噴霧手段203)
噴霧手段203は、粉体流路202の外壁に形成される開口に挿通されて設けられ、粉体流過部209において、離型剤被覆トナー粒子の流動方向における開口部211に最も近い側の粉体流過部に設けられる。
噴霧手段203は、揮発性液体とキャリアガスとを混合した混合物(噴霧液体)を、流動する離型剤被覆トナー粒子に向けて噴霧して、離型剤被覆トナー粒子の表面に揮発性液体を展延させる。
したがって、噴霧手段203は、例えば、液体を貯留する液体貯留部と、圧縮エアのようなキャリアガスを供給するキャリアガス供給部と、噴霧液体を噴霧する二流体ノズルと、液体を液体貯留部から二流体ノズルに一定流量で送液する送液ポンプを備える。
【0078】
液体噴霧方向と粉体流動方向とのなす角度(図3の角度θ、「噴霧角度」という)は、揮発性液体が離型剤被覆トナー粒子の表面に均一に噴霧されるように設定すればよく、例えば、噴霧角度θは、好ましくは0〜45°であり、より好ましくは0°(平行)である。図3のΦは噴霧液体の広がり角度を示す。
【0079】
噴霧された揮発性液体は、粉体流路202内が一定のガス濃度になるようにガス化され、貫通孔221を通って粉体流路202外へ排出されることが好ましい。これにより、粉体流路202内のガス化した揮発性液体の濃度を一定に保ち、揮発性液体の乾燥速度を上げることができる。よって未乾燥の揮発性液体が残存する樹脂微粒子付着トナーが他の樹脂微粒子付着トナーまたは形成されたカプセルトナーに付着することを防止し、トナー粒子の凝集を抑制し、樹脂被覆層が均一に形成されたカプセルトナーの収率をより向上させることができる。
【0080】
ガス化された揮発性液体の濃度は、樹脂微粒子付着トナーの3重量%以下程度であることが好ましく、0.1〜3.0重量%であることがさらに好ましい。
ガス濃度が3重量%以下程度であれば、揮発性液体の乾燥速度を充分に大きくでき、未乾燥の揮発性液体が残存する樹脂微粒子付着トナーが他の他の樹脂微粒子付着トナーまたは形成されたカプセルトナーに付着することを防止し、トナー粒子の凝集を抑制し、生産性を低下させることなく、樹脂被覆層が均一に形成されたカプセルトナーの収率をより向上させることができる。
ガス濃度は、例えば、ガス排出部222に設けた濃度センサ(図示せず)により測定することができる。
【0081】
(回転撹拌手段204)
回転撹拌手段204は、回転軸部材218と、円盤状の回転盤219と、複数の撹拌羽根220とから構成される。
回転軸部材218は、撹拌部208の軸線に一致する軸線を有しかつ撹拌部208の軸線方向他方側の面208cに、面208cを含む側壁を厚み方向に貫通するように形成される貫通孔221に挿通されるように設けられ、図示しないモータにより軸線回りに回転する円柱棒状部材である。
回転盤219は、その軸線が回転軸部材218の軸線に一致するように回転軸部材218に支持され、回転軸部材218の回転に伴い回転する円盤状部材である。
複数の撹拌羽根220は、回転盤219の周縁部分により支持され、回転盤219の回転に伴って回転する。
【0082】
回転撹拌手段204の最外周の周速は、離型剤被覆トナー粒子を孤立流動させることができるように適宜設定すればよく、通常30m/秒以上に設定するのが好ましく、50m/秒以上に設定するのがさらに好ましい。回転撹拌手段204の最外周の周速が30m/秒未満では、離型剤被覆トナー粒子を孤立流動させることができず、離型剤被覆トナー粒子の表面を樹脂膜で均一に被覆できないことがある。
回転撹拌手段204の最外周とは、回転撹拌手段204の回転軸部材218が延びる方向に垂直な方向において、回転軸部材218の軸線との距離が最も長い回転撹拌手段204の部分204aである。
離型剤被覆トナー粒子は、円盤状の回転盤219に対して垂直に衝突することが好ましく、これにより、離型剤被覆トナー粒子が充分に撹拌され、離型剤被覆トナー粒子の表面を樹脂膜で均一に被覆でき、本発明のカプセルトナーの収率をより向上させることができる。
【0083】
(温度調整用ジャケット)
温度調整用ジャケット(図示せず)は、粉体流路202内と回転撹拌手段204を、トナー母粒子のガラス転移温度以下でかつ離型剤粒子のオンセット温度以下に維持する温度調整手段であり、粉体流路202と回転撹拌手段204の外側の少なくとも一部に設けられ、温度調整用ジャケット内部の空間に冷却媒または加温媒を通して粉体流路202内と回転撹拌手段204を所定の温度に調整する。また、この温度調整は、離型剤被覆トナー粒子、樹脂微粒子および揮発性液体の温度のばらつきを少なくし、粒子の安定な流動状態を保持することができる。
【0084】
通常、離型剤被覆トナー粒子は粉体流路202内の内壁に何度も衝突し、その際に生じる衝突エネルギーの一部が熱エネルギーに変換され、離型剤被覆トナー粒子および樹脂微粒子に蓄積される。衝突回数の増加と共に、それらの粒子に蓄積される熱エネルギーが増加し、やがて離型剤被覆トナー粒子および樹脂微粒子は軟化して粉体流路202の内壁に付着する。
したがって、温度調整用ジャケットを、粉体流路202の外側全体に設けるのが好ましい。これにより、離型剤被覆トナー粒子および樹脂微粒子の粉体流路202内壁への付着力が低下し、装置内温度の急上昇による粉体流路202内壁に対する離型剤被覆トナー粒子の付着を確実に防止でき、粉体流路202内の閉塞を回避できる。
【0085】
また、噴霧手段203より下流の粉体流過部209内部では、噴霧された液体が乾燥せず残存状態にあり、温度が適正でないと乾燥速度が遅くなり液体が滞留し易くなる。この液体に離型剤被覆トナー粒子が接触すると、粉体流路202内壁に離型剤被覆トナー粒子が付着し易くなり、トナーの凝集発生源となる。さらに、開口部210付近の内壁では、撹拌部208に流入する離型剤被覆トナー粒子と、回転撹拌手段204による撹拌で撹拌部208内を流動する離型剤被覆トナー粒子とが衝突し、衝突した被覆トナー粒子が開口部210付近に付着し易い。
したがってこのような離型剤被覆トナー粒子が付着し易い部分に温度調整用ジャケットを設けることによって、粉体流路202内壁に対する離型剤被覆トナー粒子の付着をより確実に防止できる。
【0086】
樹脂被覆層形成装置201は、上記の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
温度調整用ジャケットは粉体流過部209と撹拌部208との外側の全面に設けられてもよく、粉体流過部209または撹拌部208の外側の一部に設けられてもよい。粉体流過部209と撹拌部208との外側の全面に温度調整用ジャケットを設けた場合には、被覆トナー粒子の粉体流路202内壁への付着をより確実に防止することができる。
【0087】
(粉体投入部206および粉体回収部207)
粉体流路202の粉体流過部209には、粉体投入部206と、粉体回収部207とが接続される(図4参照)。
【0088】
粉体投入部206は、離型剤被覆トナー粒子を供給するホッパ(図示せず)と、ホッパと粉体流路202とを連通する供給管212と、供給管212に設けられる電磁弁213とを備える。
ホッパから供給される離型剤被覆トナー粒子は、電磁弁213によって供給管212内の流路が開放されている状態において、供給管212を介して粉体流路202に供給され、回転撹拌手段204による撹拌により一定の粉体流動方向に流過する。また、電磁弁213によって供給管212内の流路が閉鎖されている状態においては、離型剤被覆トナー粒子は粉体流路202に供給されない。
【0089】
粉体回収部207は、回収タンク215と、回収タンク215と粉体流路202とを連通する回収管216と、回収管216に設けられる電磁弁217とを備える。
電磁弁217によって回収管216内の流路が開放されている状態において、粉体流路202を流過するカプセルトナー粒子は回収管216を介して回収タンク215に回収される。また、電磁弁217によって回収管216内の流路が閉鎖されている状態においては、粉体流路202を流過するトナー粒子は回収されない。
【0090】
この樹脂被覆層形成装置201においては、粉体流路202に樹脂微粒子付着トナーを流動させ、その流動速度が安定した後に、揮発性液体の噴霧を開始するのが好ましい。これにより、樹脂微粒子付着トナーに揮発性液体を均一に噴霧でき、樹脂被覆層が均一に形成されたカプセルトナーの収率を向上させることができる。
【0091】
樹脂被覆層形成工程S5では、離型剤被覆トナー粒子に付着した樹脂微粒子が軟化し膜化するまで、所定温度で回転撹拌手段204の撹拌を継続し、樹脂微粒子付着トナーを流動させて、離型剤被覆トナー粒子の表面に樹脂微粒子を膜化させるのが好ましい。
【0092】
樹脂被覆層形成装置201は、上記の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
例えば、樹脂被覆層形成装置201の代わりに、市販の撹拌装置と噴霧手段とを組合せて構成することもできる。粉体流路および回転撹拌手段を備える市販の撹拌装置としては、例えば、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)などが挙げられる。このような撹拌装置内に液体噴霧ユニットを取付けることによって、樹脂被覆層形成装置として用いることができる。
【0093】
2.カプセルトナー
本発明のカプセルトナーは、本発明のカプセルトナーの製造方法により製造される。
本発明のカプセルトナーは、トナー母粒子の表面に離型剤層と樹脂被覆層とが順次形成され、しかも樹脂被覆層が低温で均一に形成されているので、離型剤のブリードアウトが防止され、トナー凝集がなく、耐オフセット性に優れた広い定着可能温度域を両立できるカプセルトナーである。
【0094】
3.二成分現像剤
本発明の二成分現像剤は、少なくとも本発明のカプセルトナーとキャリアを含む。
キャリアとしては、当該技術分野で常用されるキャリアを用いることができ、例えば、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、マンガン、クロムなどからなる単独または複合フェライトおよびキャリアトナー母粒子を被覆物質で表面被覆した樹脂被覆キャリア、または樹脂に磁性を有する粒子を分散させた樹脂分散型キャリアなどが挙げられる。
【0095】
被覆物質としては、当該技術分野で常用される物質を用いることができ、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン重合体、ポリフッ化ビニリデン、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、ジターシャーリーブチルサリチル酸の金属化合物、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ニグロシン、アミノアクリレート樹脂、塩基性染料、塩基性染料のレーキ物、シリカ微粉末、アルミナ微粉末などが挙げられる。
また、樹脂分散型キャリアに用いられる樹脂は特に限定されないが、例えば、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂およびフェノール樹脂などが挙げられる。
上記の被覆物質および樹脂分散型キャリアに用いられる樹脂は、それぞれ1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができ、トナー成分に応じて選択するのが好ましい。
【0096】
キャリアの形状は特に限定されないが、球形および扁平形状が好ましい。
また、キャリアの粒子径は特に限定されないが、高画質化を考慮すると、好ましくは10〜100μmであり、さらに好ましくは20〜50μmである。
【0097】
キャリアの体積抵抗率は、キャリア粒子を断面積0.50cm2の容器に入れてタッピングした後、容器内に詰められた粒子に1kg/cm2の荷重を掛け、荷重と底面電極との間に1000V/cmの電界が生ずる電圧を印加したときの電流値から得られる値である。体積抵抗率が低いと、現像スリーブにバイアス電圧を印加した場合にキャリアが帯電し、感光体にキャリア粒子が付着し易くなる。またバイアス電圧のブレークダウンが起こり易くなる。好ましいキャリアの体積抵抗率は、1.0×109〜1.0×1013(Ω・cm)である。
【0098】
キャリアの磁化強さ(最大磁化)は、好ましくは10〜60emu/g、より好ましくは15〜40emu/gである。一般的な現像ローラの磁束密度条件下では、10emu/g未満であると磁気的な束縛力が働かず、キャリア飛散の原因となるおそれがある。また、磁化強さが60emu/gを超えると、非接触現像ではキャリアの穂立ちが高くなり過ぎ、像担持体とトナーの非接触状態を保つことが困難になり、接触現像ではトナー像に掃き目が現れ易くなるおそれがある。
【0099】
二成分現像剤におけるトナーとキャリアとの配合割合は特に限定されず、トナーおよびキャリアの種類に応じて適宜選択できる。例えば、樹脂被覆キャリア(密度5〜8g/cm2)と混合する場合、トナーが全現像剤量の2〜30重量%、好ましくは2〜20重量%含まれるようにすればよい。また、トナーによるキャリアの被覆率は、40〜80重量%であることが好ましい。
【実施例】
【0100】
以下に実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。以下の説明において、「部」および「%」は特に断らない限りそれぞれ「重量部」および「重量%」を意味する。
実施例および比較例において、各物性値を以下に示す方法により測定した。
【0101】
[樹脂のガラス転移温度Tg]
示差走査熱量計(セイコー電子工業株式会社(現 セイコーインスツル株式会社)製、型番:DSC220)を用い、日本工業規格(JIS)K7121−1987に準じて、試料1gを昇温速度10℃/分で加熱してDSC曲線を測定する。得られたDSC曲線において、ガラス転移に相当する吸熱ピークより高温側のベースラインを低温側に延長した直線と、ピークの立ち上がり部分から頂点までの曲線に対して勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度をガラス転移温度(Tg)とする。
【0102】
[樹脂の軟化温度Tm]
流動特性評価装置(株式会社島津製作所製、型番:CFT−100C)を用いて、試料1gを昇温速度6℃/分で加熱しながら、荷重20kgf/cm2(9.8×105Pa)を与え、ダイ(ノズル口径1mm、長さ1mm)から試料の半分量が流出したときの温度を軟化温度(Tm)とする。
【0103】
[離型剤微粒子の融点およびオンセット温度]
示差走査熱量計(セイコー電子工業株式会社(現 セイコーインスツル株式会社)製、型番:DSC220)を用いて、試料1gを温度20℃から昇温速度10℃/分で200℃まで加熱し、次いで200℃から20℃に急冷する操作を2回繰返し、DSC曲線を測定する。2回目の操作で測定したDSC曲線の融解に相当する吸熱ピークの温度を離型剤微粒子の融点とする。得られたDSC曲線において、融解に相当する吸熱ピークより低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ピークの立ち上がり部分から頂点までの曲線に対して勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度をオンセット温度とする。
【0104】
[トナー母粒子の体積平均粒子径および変動係数]
電解液(ベックマン・コールター社製、商品名:ISOTON−II)50mlに、試料20mgおよびアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム1mlを加え、超音波分散器(株式会社エスエムテー製、型式:UH−50)を用いて周波数20kHzで3分間分散処理して測定用試料を得る。得られた測定用試料を、粒度分布測定装置(ベックマン・コールター社製、型式:Multisizer3)を用いて、アパーチャ径:100μm、測定粒子数:50000カウントの条件下で測定し、試料粒子の体積粒度分布から体積平均粒子径および体積粒度分布における標準偏差を求める。また、変動係数(CV値、%)を下式に基づいて算出する。
CV値(%)=(体積粒度分布における標準偏差/体積平均粒子径)×100
【0105】
[樹脂微粒子および離型剤微粒子の体積平均粒子径]
レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所製、型式:LA−920)を用いて、体積基準で50%頻度粒子径(メジアン径)を測定する。
【0106】
(実施例1)
[トナー母粒子作製工程S1]
ポリエステル樹脂(ガラス転移温度60℃、軟化温度138℃、花王株式会社製、商品名:タフトン) 100部
着色剤(銅フタロシアニン、C.I.ピグメントブルー15:3) 5部
電荷制御剤(オリエント化学工業株式会社製、商品名:ボントロンE84) 2部
【0107】
上記の原料をヘンシェルミキサ(三井鉱山株式会社製、型式:20B)で3分間混合分散した後、得られた混合物を二軸押出機(株式会社池貝製、型式:PCM−30)を用いて、シリンダ設定温度110℃、バレル回転数300rpm、原料供給速度20kg/時間の条件で溶融混練分散した。
得られた混練物を冷却ベルトで冷却させた後、φ2mmのスクリーンを有するスピードミルで粗粉砕した。次いで、得られた粗粉砕物をジェット式粉砕機(日本ニューマチック工業株式会社製、型式:IDS−2)で微粉砕し、さらにエルボージェット分級機(日鉄鉱業株式会社製、型式:EJ−15−3)で分級して、トナー母粒子(体積平均粒子径:6.9μm、変動係数22)を得た。
【0108】
[樹脂微粒子調製工程S2]
スチレン−アクリル酸−ブチルアクリル酸共重合体樹脂(三洋化成工業株式会社製、商品名:SK540)、界面活性剤ポリオキシエチレンアルキルエーテル(花王株式会社製、商品名:エマルゲン1108)5gおよび蒸留水1985gを、95℃に加熱しながら高圧ホモジナイザーに投入し、樹脂微粒子(体積平均粒子径150nm、ガラス転移温度64℃、軟化温度120℃)の水性分散体(固形分濃度5%)を得た。得られた水性分散体を、乾燥機(藤崎電機株式会社製、型式:マイクロミストドライヤ MDL−050)を用いて脱水乾燥し、樹脂微粒子を得た。
【0109】
[離型剤層形成工程S3]
[離型剤混合粒子調製工程S3a]
トナー母粒子作製工程S1で作製したトナー母粒子100部および離型剤(フィッシャートロプッシュワックス、体積平均粒子径150nm、融点ピーク温度90℃、オンセット温度82℃、日本精▲蝋▼株式会社製、商品名:FNP0090)1部を、ヘンシェルミキサ(三井鉱山株式会社製、型式:20B)に投入し、攪拌羽根の周速度20m/秒で3分間混合し、離型剤混合粒子を得た。
【0110】
[離型剤粒子付着工程S3b]
離型剤混合粒子調製工程S3aで作製した離型剤混合粒子を、図2に示す装置に準ずるハイブリダイゼーションシステム(株式会社奈良機械製作所製、商品名:NHS−1型)に投入し、回転数6400rpmで3分間混合し、離型剤被覆トナー粒子を得た。
【0111】
[複合粒子形成工程S4]
[樹脂微粒子混合粒子調製工程S4a]
離型剤層形成工程S3で作製した離型剤被覆トナー粒子100部および樹脂微粒子調製工程S2で作製した樹脂微粒子7.5部を、ヘンシェルミキサ(三井鉱山株式会社製、型式:20B)に投入し、攪拌羽根の周速度20m/秒で3分間混合し、樹脂微粒子混合粒子を得た。
【0112】
[樹脂微粒子付着工程S4b]
樹脂微粒子混合粒子調製工程S4aで作製した樹脂微粒子混合粒子を、図2に示す装置に準ずるハイブリダイゼーションシステム(株式会社奈良機械製作所製、商品名:NHS−1型)に投入し、回転数8000rpmで5分間混合し、樹脂微粒子付着トナー(複合トナー粒子)を得た。
【0113】
[樹脂被覆層形成工程S5]
樹脂微粒子付着工程S4bに引き続いて、ハイブリダイゼーションシステムの回転数を8000rpmに保持した状態で、樹脂微粒子付着トナーにエタノールを噴霧速度0.5g/分、エア流量5L/分の条件で40分間噴霧し、樹脂微粒子を離型剤被覆トナー粒子の表面に膜化させた。エタノール噴霧を停止した後、撹拌を5分間継続し、カプセルトナー(体積平均粒子径7.0μm、変動係数23)を得た。
【0114】
ハイブリダイゼーションシステムにおいて、粉体流路202(図2の図番、以下同様)には温度センサ(図示せず)を、粉体流過部209および撹拌部208の壁面の全面には温度調整用ジャケット(図示せず)を設け、粉体流過部209および撹拌部208の温度が45℃になるように調整した。また、液体噴霧方向と粉体流動方向とのなす角度(図3の角度θ、「噴霧角度」という)が平行(0°)になるように、噴霧手段(二流体ノズル、図3の図番203)の取付け角度を設定した。
装置内へ送るエア流量を、回転軸部から装置内に送るエア流量を5L/分に調節し、二流体ノズルからのエア流量と合計して10L/分とした。
【0115】
(実施例2)
離型剤層形成工程S3において、トナー母粒子表面に形成する離型剤層に用いる離型剤をカルナウバワックス(体積平均粒子径100nm、融点ピーク温度82℃、オンセット温度70℃、東亜化成株式会社製)としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2のカプセルトナー(体積平均粒子径7.0μm、変動係数23)を得た。
【0116】
(実施例3)
離型剤層形成工程S3において、トナー母粒子表面に形成する離型剤層に用いる離型剤をカルナウバワックス(体積平均粒子径100nm、融点ピーク温度82℃、オンセット温度70℃、東亜化成株式会社製)とし、複合粒子形成工程S4において、離型剤被覆トナー粒子の表面に形成する樹脂被覆層に用いる樹脂微粒子の添加量を5部としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3のカプセルトナー(体積平均粒子径7.0μm、変動係数23)を得た。
【0117】
(実施例4)
離型剤層形成工程S3において、トナー母粒子表面に形成する離型剤層に用いる離型剤をカルナウバワックス(体積平均粒子径100nm、融点ピーク温度82℃、オンセット温度70℃、東亜化成株式会社製)とし、その添加量を1.6部とし、複合粒子形成工程S4において、離型剤被覆トナー粒子の表面に形成する樹脂被覆層に用いる樹脂微粒子の添加量を5部としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4のカプセルトナー(体積平均粒子径7.0μm、変動係数23)を得た。
【0118】
(実施例5)
離型剤層形成工程S3において、トナー母粒子表面に形成する離型剤層に用いる離型剤をカルナウバワックス(体積平均粒子径100nm、融点ピーク温度82℃、オンセット温度70℃、東亜化成株式会社製)とし、その添加量を1.8部とし、複合粒子形成工程S4において、離型剤被覆トナー粒子の表面に形成する樹脂被覆層に用いる樹脂微粒子の添加量を5部としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5のカプセルトナー(体積平均粒子径7.0μm、変動係数23)を得た。
【0119】
(実施例6)
離型剤層形成工程S3において、トナー母粒子表面に形成する離型剤層に用いる離型剤をカルナウバワックス(体積平均粒子径100nm、融点ピーク温度82℃、オンセット温度70℃、東亜化成株式会社製)とし、その添加量を1.6部とし、複合粒子形成工程S4において、離型剤被覆トナー粒子の表面に形成する樹脂被覆層に用いる樹脂微粒子の添加量を2.5部としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例6のカプセルトナー(体積平均粒子径7.0μm、変動係数23)を得た。
【0120】
(実施例7)
離型剤層形成工程S3において、トナー母粒子表面に形成する離型剤層に用いる離型剤をパラフィンワックス(体積平均粒子径100nm、融点ピーク温度72℃、オンセット温度62℃、日本精▲蝋▼株式会社製、商品名:SP−0160)とし、その添加量を1.6部とし、複合粒子形成工程S4において、離型剤被覆トナー粒子の表面に形成する樹脂被覆層に用いる樹脂微粒子の添加量を5部としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例7のカプセルトナー(体積平均粒子径7.0μm、変動係数23)を得た。
【0121】
(実施例8)
離型剤層形成工程S3において、トナー母粒子表面に形成する離型剤層に用いる離型剤をパラフィンワックス(体積平均粒子径100nm、融点ピーク温度72℃、オンセット温度62℃、日本精▲蝋▼株式会社製、商品名:SP−0160)とし、その添加量を1.8部とし、複合粒子形成工程S4において、離型剤被覆トナー粒子の表面に形成する樹脂被覆層に用いる樹脂微粒子の添加量を5部としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例8のカプセルトナー(体積平均粒子径7.0μm、変動係数23)を得た。
【0122】
(実施例9)
離型剤層形成工程S3において、トナー母粒子表面に形成する離型剤層に用いる離型剤をパラフィンワックス(体積平均粒子径100nm、融点ピーク温度72℃、オンセット温度62℃、日本精▲蝋▼株式会社製、商品名:SP−0160)とし、その添加量を1.8部としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例9のカプセルトナー(体積平均粒子径7.0μm、変動係数23)を得た。
【0123】
(実施例10)
離型剤層形成工程S3において、トナー母粒子表面に形成する離型剤層に用いる離型剤をカルナウバワックス(体積平均粒子径100nm、融点ピーク温度82℃、オンセット温度70℃、東亜化成株式会社製)とし、その添加量を1.8部とし、複合粒子形成工程S4において、離型剤被覆トナー粒子の表面に形成する樹脂被覆層に用いる樹脂微粒子の添加量を2.5部としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例10のカプセルトナー(体積平均粒子径7.0μm、変動係数23)を得た。
【0124】
(実施例11)
離型剤層形成工程S3において、トナー母粒子表面に形成する離型剤層に用いる離型剤の添加量を1.8部とし、複合粒子形成工程S4において、離型剤被覆トナー粒子の表面に形成する樹脂被覆層に用いる樹脂微粒子の添加量を2.5部としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例11のカプセルトナー(体積平均粒子径7.0μm、変動係数23)を得た。
【0125】
(実施例12)
離型剤層形成工程S3において、トナー母粒子表面に形成する離型剤層に用いる離型剤をパラフィンワックス(体積平均粒子径100nm、融点ピーク温度72℃、オンセット温度62℃、日本精▲蝋▼株式会社製、商品名:SP−0160)とし、その添加量を1.6部とし、複合粒子形成工程S4において、離型剤被覆トナー粒子の表面に形成する樹脂被覆層に用いる樹脂微粒子の添加量を2.5部としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例12のカプセルトナー(体積平均粒子径7.0μm、変動係数23)を得た。
【0126】
(実施例13)
離型剤層形成工程S3において、トナー母粒子表面に形成する離型剤層に用いる離型剤をパラフィンワックス(体積平均粒子径100nm、融点ピーク温度72℃、オンセット温度62℃、日本精▲蝋▼株式会社製、商品名:SP−0160)とし、複合粒子形成工程S4において、離型剤被覆トナー粒子の表面に形成する樹脂被覆層に用いる樹脂微粒子の添加量を2.5部としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例13のカプセルトナー(体積平均粒子径7.0μm、変動係数23)を得た。
【0127】
(実施例14)
離型剤層形成工程S3において、トナー母粒子表面に形成する離型剤層に用いる離型剤をパラフィンワックス(体積平均粒子径100nm、融点ピーク温度72℃、オンセット温度62℃、日本精▲蝋▼株式会社製、商品名:SP−0160)とし、その添加量を1.8部とし、複合粒子形成工程S4において、離型剤被覆トナー粒子の表面に形成する樹脂被覆層に用いる樹脂微粒子の添加量を2.5部としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例14のカプセルトナー(体積平均粒子径7.0μm、変動係数23)を得た。
【0128】
(比較例1)
樹脂被覆層形成工程S5において、樹脂微粒子付着トナーにエタノールを噴霧しないこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1のカプセルトナー(体積平均粒子径7.0μm、変動係数23)を得た。
【0129】
(比較例2)
離型剤層形成工程S3において、トナー母粒子表面に形成する離型剤層に用いる離型剤の添加量を0.5部とし、複合粒子形成工程S4において、離型剤被覆トナー粒子の表面に形成する樹脂被覆層に用いる樹脂微粒子の添加量を10部とし、樹脂被覆層形成工程S5において、樹脂微粒子付着トナーにエタノールを噴霧しないこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2のカプセルトナー(体積平均粒子径7.0μm、変動係数23)を得た。
【0130】
(比較例3)
離型剤層形成工程S3において、トナー母粒子表面に形成する離型剤層に用いる離型剤をパラフィンワックス(体積平均粒子径100nm、融点ピーク温度72℃、オンセット温度62℃、日本精▲蝋▼株式会社製、商品名:SP−0160)とし、複合粒子形成工程S4および樹脂被覆層形成工程S5を行わないこと以外は、実施例1と同様にして、比較例3のカプセルトナー(体積平均粒子径7.0μm、変動係数23)を得た。
【0131】
得られた実施例1〜14および比較例1〜3のカプセルトナーについて、下式により収率を求めた。
収率[%]=(カプセルトナーの回収重量[g]/原料重量[g])×100
カプセルトナーの回収重量[g]は、樹脂被覆層形成工程後のカプセルトナーの回収重量[g]であり、原料重量[g]は、トナー母粒子重量[g]、離型剤粒子添加量[g]および樹脂微粒子添加量[g]の合計重量[g]である
【0132】
得られた収率を、次の基準により評価した。
◎:非常に良好 (収率90%以上)
○:良好 (収率85%以上90%未満)
△:実用上問題なし(収率80%以上85%未満)
×:不良) (収率80%未満)
得られた収率の結果を、実施例1〜14および比較例1〜3のカプセルトナーの他の評価結果ならびに各粒子の原料および主要物性と共に表1に示す。
【0133】
【表1】

【0134】
実施例1〜4のカプセルトナーは、比較的高い融点の離型剤を用いており、離型剤粒子および樹脂微粒子の添加量が適量であるためか、離型剤のブリードアウトが抑えられ、高い収率が得られた。
実施例5のカプセルトナーは、離型剤粒子の添加量が若干多くなり、複合粒子の流動性が若干低下し、樹脂被覆層の均一性が僅かに悪化したためか、収率が低下したが、十分な生産性が得られた。
【0135】
実施例6のカプセルトナーは、樹脂微粒子の添加量が若干少なくなり、樹脂被覆層の均一性が僅かに悪化したためか、収率が低下したが、十分な生産性が得られた。
実施例7のカプセルトナーは、離型剤の融点が低くなった分、複合粒子の流動性が若干低下し、樹脂被覆層の均一性が僅かに悪化したためか、収率が低下したが、十分な生産性が得られた。
【0136】
実施例8および9のカプセルトナーは、離型剤の融点が低くなり、かつ離型剤粒子の添加量が若干多くなり、複合粒子の流動性が低下し、樹脂被覆層の均一性が悪化したためか収率が低下したが、実用レベルの生産性が得られた。
実施例10および11のカプセルトナーは、離型剤粒子の添加量が若干多くなり、かつ樹脂微粒子の添加量が若干少なくなり、樹脂被覆層の均一性が悪化したためか、収率が低下したが、実用レベルの生産性が得られた。
【0137】
実施例12および13のカプセルトナーは、離型剤の融点が低くなり、かつ樹脂微粒子の添加量が若干少なくなり、樹脂被覆層の均一性が悪化したためか、収率が低下したが、実用レベルの生産性が得られた。
実施例14のカプセルトナーは、離型剤の融点が低くなり、離型剤粒子の添加量が若干多くなり、かつ樹脂微粒子の添加量が若干少なくなり、樹脂被覆層の均一性が悪化したためか、収率が低下したが、実用レベルの生産性が得られた。
また、実施例1〜14のカプセルトナーの定着性を評価したところ、十分な耐オフセット性が得られることが分かった。
【0138】
比較例1のカプセルトナーは、樹脂被覆層形成工程においてエタノールを噴霧しなかったので、樹脂微粒子が十分に変形せず、離型剤層の露出箇所が点在する不均一な樹脂被覆層が形成されているものと考えられる。また、揮発性液体による離型剤の冷却効果が発揮されず、樹脂被覆層形成装置における各部材と複合粒子との衝突エネルギーにより発生する熱エネルギーにより離型剤が加熱され、カプセルトナー表面へのブリードアウトが生じるため、トナー粒子の凝集が発生し、そのため収率が悪化したものと考えられる。
【0139】
比較例2のカプセルトナーは、離型剤の添加量を少なくし、かつ樹脂微粒子の添加量を多くすることにより、カプセルトナー表面への離型剤の露出を低減する試みであった。しかしながら、樹脂被覆層形成工程においてエタノールを噴霧しなかったので、比較例1と同様に、離型剤が加熱されてブリードアウトが発生し、トナー粒子の凝集が発生して収率が悪化したものと考えられる。
比較例3のカプセルトナーは、樹脂被覆層を形成しなかったので、トナー粒子の凝集が発生し、収率が大きく低下したものと考えられる。
【符号の説明】
【0140】
201 樹脂被覆層形成装置
202 粉体流路
203 噴霧手段
204 回転撹拌手段
204a 回転軸部材218の軸線との距離が最も長い回転撹拌手段204の部分
206 粉体投入部
207 粉体回収部
208 撹拌部
208a 撹拌部208の軸線方向一方側の面
208b 撹拌部208の軸方向片側の面208aに垂直な側面
208c 撹拌部208の軸線方向他方側の面
209 粉体流過部
210、211 開口部
212 供給管
213、217 電磁弁
214 矢符
215 回収タンク
216 回収管
218 回転軸部材
219 円盤状の回転盤
220 複数の撹拌羽根
221 貫通孔
222 ガス排出部
A200 切断面線
θ 液体噴霧方向と粉体流動方向とのなす角度
Φ 噴霧液体の広がり角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも結着樹脂、着色剤および電荷制御剤を含むトナー母粒子と離型剤粒子とを混合して両者が均一に分散した離型剤混合物を得、次いで前記離型剤混合物を撹拌処理に付し衝撃力を負荷して、前記トナー母粒子の表面が前記離型剤粒子からなる離型剤層で被覆された離型剤被覆トナー粒子を形成する工程と、
前記離型剤被覆トナー粒子と樹脂微粒子とを混合して両者が均一に分散した樹脂微粒子混合物を得、次いで前記樹脂微粒子混合物を撹拌処理に付し衝撃力を負荷して、前記離型剤被覆トナー粒子の表面に前記樹脂微粒子が付着した複合トナー粒子を形成する工程と、
前記トナー母粒子中の結着樹脂のガラス転移温度以下でかつ前記離型剤粒子のオンセット温度以下の温度条件下で、前記複合トナー粒子の表面に揮発性液体を噴霧しつつ前記複合トナー粒子を撹拌処理に付して、前記離型剤被覆トナー粒子の表面が前記樹脂微粒子からなる樹脂層で被覆されたカプセルトナーを形成する工程
を含むことを特徴とするカプセルトナー製造方法。
【請求項2】
前記カプセルトナーを形成する工程における撹拌処理が、回転撹拌手段と温度調整手段とを備えた回転撹拌装置の粉体流路内に前記複合トナー粒子を流動させて、前記複合トナー粒子に衝撃力を負荷することからなる請求項1に記載のカプセルトナー製造方法。
【請求項3】
前記揮発性液体が、粉体供給手段を経由して前記回転撹拌装置の粉体流路内に供給される請求項2に記載のカプセルトナー製造方法。
【請求項4】
前記揮発性液体が、エタノールである請求項1〜3のいずれか1つに記載のカプセルトナー製造方法。
【請求項5】
前記トナー母粒子中の結着樹脂がガラス転移温度45〜70℃を有し、前記離型剤粒子がオンセット温度60〜100℃を有しかつ前記樹脂微粒子がアクリル樹脂またはスチレン−アクリル共重合体である請求項1〜4のいずれか1つに記載のカプセルトナー製造方法。
【請求項6】
前記複合トナー粒子を形成する工程における撹拌処理が回転撹拌手段と温度調整手段とを備えた回転撹拌装置の粉体流路内に前記樹脂微粒子混合物を流動させて、前記樹脂微粒子混合物に衝撃力を負荷することからなり、かつ前記回転撹拌装置から内容物を回収することなく連続して前記カプセルトナーを形成する工程における撹拌処理が行われる請求項1〜5のいずれか1つに記載のカプセルトナー製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載のカプセルトナーの製造方法により得られたことを特徴とするカプセルトナー。
【請求項8】
少なくとも請求項7に記載のカプセルトナーおよびキャリアを含むことを特徴とする二成分現像剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−83614(P2012−83614A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230787(P2010−230787)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】