説明

カプセル内視鏡

【課題】 弱い誘導磁界によっても撮像システムの姿勢の制御が可能なカプセル内視鏡を提供する。
【解決手段】 体内管腔を観察するための撮像システムを液体が充填した外装カプセル容器内に収納することにより、撮像システムの姿勢変更の制御を容易にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胃及び小腸等の体内管腔内を観察する医療用カプセル内視鏡の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、体内管腔内を観察する手段として、長い可撓性の管により外部機器と接続された内視鏡ではなく、被検者の苦痛を軽減することができるカプセル内視鏡が実用化されている。このカプセル内視鏡は、体内管腔内を撮像するための撮像システムをカプセル型容器内に収納し、撮像した画像情報を無線により体外の画像モニタへ送信するものである。
【0003】
このようなカプセル内視鏡は、体内管腔内を消化器内壁の蠕動運動により移動し、観察方向をコントロールすることができなかった。そこで、カプセル内視鏡の姿勢を誘導磁界により制御する手段(例えば、特許文献1参照)が提案されている。
【0004】
図4に従来のカプセル内視鏡の構成を示す。カプセル内視鏡10Aは、照明源3、撮像素子4、撮像素子4上に画像の焦点を合わせるための撮像光学系2により構成される撮像システムと、撮像システムからの映像信号を送信するための送信器7およびアンテナ8、これらの電気的素子に電力を供給する電源5とを備えている。これらの機器は光窓を備えたカプセル型容器1に収められている。また、磁石6は、誘導磁界に作用してカプセル内視鏡10Aの姿勢制御をおこなうためのものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】再特WO2007/077896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載されている誘導磁界によりカプセル内視鏡の姿勢制御をおこなうためには、強い磁界による誘導磁界を発生させる必要がある。このため、大量のエネルギーが必要となり、また誘導コイルや磁界制御装置が大型化する問題点がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、弱い磁界強度(すなわち少量のエネルギー)によりカプセル内視鏡の向きを変え、所定の観察方向を設定するカプセル内視鏡の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、少なくとも撮像部と姿勢制御部を備えた撮像システムを備えるカプセル内視鏡において、前記撮像システムを外装カプセル容器内に姿勢変更可能な空隙を保持して収納したことを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記撮像システムは、カプセル型容器に収納されており、該カプセル型容器と前記外装カプセル容器との間の前記空隙に前記撮像システムを収納した前記カプセル型容器の比重と等しい液体が充填されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、弱い磁界強度(すなわち少量のエネルギー)によりカプセル内視鏡の姿勢を制御して目的の観察方向を設定することが可能であり、磁界の発生に必要な誘導コイルや磁界制御装置の小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るカプセル内視鏡の構成を示す図である。
【図2】本発明に係るカプセル内視鏡の磁気誘導システムの構成を示す図である。
【図3】本発明に係る撮像光学系の焦点距離を説明する図である。
【図4】従来のカプセル内視鏡の内部構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1乃至図3を参照して本発明の実施例について説明する。なお、以下に説明する部材や数量等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
【0013】
図1に本発明の実施例を示す。カプセル内視鏡10Aは前述した従来のカプセル内視鏡であり、このカプセル内視鏡10Aを透明カプセル12(外装カプセル容器に相当)内に収納し、カプセル内視鏡10Aとの空隙に液体11を充填した構造となっている。
【0014】
透明カプセル12の形状は、従来のカプセル内視鏡10Aが姿勢変更可能な状態で収納可能であり、且つ、食道を経由して消化管に送達可能な大きさと形であれば特に限定されるものではなく、球状、半球状、円筒状(例えば、軸方向外方に半球状に突き出す形状)などでもよい。しかしながら、カプセル内視鏡10Aが、透明カプセル12内において全方向を向くことができるようにするためには透明カプセル12は球状であることが好ましい。
【0015】
液体11は、カプセル内視鏡10Aの方向転換が容易にできるように、粘性が低く、比重がカプセル内視鏡10Aと同じことが好ましい。例えば、安全性を考慮して「かん水」(炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の水溶液)などを用いることができる。
【0016】
次に、本発明に係るカプセル内視鏡における観察方向の制御手段について説明する。本発明に係る撮像システムは、従来のカプセル内視鏡10Aに固定されている撮像システムを使用している。このため、カプセル内視鏡10Aの姿勢を変えることは、撮像システムの観察方向を変えることと同義である。
【0017】
図2に、本発明に係るカプセル内視鏡の誘導システムの構成を示す。本発明のカプセル内視鏡10Bの周囲に誘導コイル群20a、20b、20c、20d、20e、20fを配置し、誘導磁界制御装置21により誘導コイル郡に電流を流すことによりカプセル内視鏡10Bの周囲に磁気勾配を発生させている。カプセル内視鏡10A内の磁石6がこの磁気勾配に反応することによりカプセル内視鏡10Aの姿勢を制御する。
【0018】
本実施例の構成における従来のカプセル内視鏡10Aの動作について次に説明する。従来のカプセル内視鏡では、体内管腔内でカプセル内視鏡10Aの外殻であるカプセル型容器が直接管腔壁面と接触しているため、カプセル内視鏡と体内管腔壁面との接触抵抗が高くなり、カプセル内視鏡の姿勢を制御するために強い磁界を加える必要があった。これに対し本実施例では、従来のカプセル内視鏡10Aの周囲を液体11で充填する構成をとっている。そして液体11を、カプセル内視鏡10Aと同じ比重であり、且つ、粘性の低いものから選択することにより、カプセル内視鏡10Aと液体11間の摩擦係数を小さくすることができる。本実施例の構成をとることにより、誘導磁界がない場合、カプセル内視鏡10Aは、その重心に依存して重力方向に対し常に一定の角度を保持した状態で静止し、誘導磁界が存在する場合には、カプセル内視鏡10Aは、擬似的に無重力状態に浮遊するよう振舞うため、弱い磁界で姿勢制御が可能となる。
【0019】
ところで、本実施例では、図3に示すように、従来のカプセル内視鏡10Aのカプセル型容器1と透明カプセル12との間に新たな隙間(距離C)ができる。このため、従来のカプセル内視鏡10Aの撮像光学系2から撮像素子4までの距離Bを合わせ込む必要がある。つまり、従来のカプセル内視鏡10Aの撮像光学系2から撮像素子4までの距離Bを次の式より求めていた。
1/A+1/B=1/f
(ここでAは撮像光学系2から光窓1までの距離、fは撮像光学系2の焦点距離)
しかしながら、本実施例では、距離Cを考慮して以下の式により距離Bが求められる。
1/(A+C)+1/B=1/f
以上説明したように、従来単体で使用していたカプセル内視鏡を本実施例のような構成として使用する場合には、撮像光学系2と撮像素子4までの距離Bを、再度合わせ込むか、焦点調整機能を備えたカプセル内視鏡10Aを用いることが好ましい。
【符号の説明】
【0020】
1:カプセル型容器
2:撮像光学系
3:照明源
4:撮像素子
5:電源
6:磁石
7:送信器
8:アンテナ(コイル型)
10A:カプセル内視鏡(従来例)
10B:カプセル内視鏡(本発明)
11:液体
12:透明カプセル
20a、20b、20c、20d、20e、20f:誘導コイル
21:誘導磁界制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも撮像部と姿勢制御部を備えた撮像システムを備えるカプセル内視鏡において、
前記撮像システムを外装カプセル容器内に姿勢変更可能な空隙を保持して収納したことを特徴とするカプセル内視鏡
【請求項2】
前記撮像システムは、カプセル型容器に収納されており、該カプセル型容器と前記外装カプセル容器との間の前記空隙に前記撮像システムを収納した前記カプセル型容器の比重と等しい液体が充填されていることを特徴とする請求項1に記載のカプセル内視鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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