説明

カマ錠

【課題】 勢い良く引戸を閉めても施錠されないカマ錠を提供する。
【解決手段】 錠箱1内においてフロント板2に垂直な前後方向に移動可能に案内され、後端部に従動切欠6を形成したデッドボルト3と、上記従動切欠6と係合する作動アーム7を備え、シリンダ錠の内筒及び/又はサムターンに連係されたデッドカム8と、上記デッドボルト3に連係され、その前進に連動して外側に振り出されてストライク孔の開口端縁内面に係止されるカマ5とを有するものにおいて、錠箱内にデッドボルトを後方に付勢するばね部材17を弾装すると共に、デッドカムにおいてその回動中心に関し作動アームと対称的な角度位置に形成された操作端19と、錠箱の側板に植設されたばね掛け支柱22との間に、操作端の施錠角度位置と解錠角度位置との間で付勢方向が切替わる思案ばね23を弾装する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、所謂カマ錠と称される引戸用の錠前に係り、特に、カマを完全に錠箱内に引き込ませない状態で引戸を閉鎖しても施錠状態にならないカマ錠に関する。
【背景技術】
【0002】
或種の引戸用の錠前は、図4乃至図6に示すように、錠箱1内においてフロント板2に垂直な前後方向(図では左右方向)に移動可能に案内されたデッドボルト3を備えている。
【0003】
一方、錠箱1内において、フロント板2及びデッドボルト3の双方に近接した位置に支軸4が植設されており、この支軸4に一端を回動可能に支承されたカマ5を上記デッドボルト3に連結し、デッドボルト3が前方(図で左方)に移動するとカマ5が外側に振り出て図示しないストライク板のストライク孔の開口端縁内面に係止されるように構成されている。
【0004】
なお、通常のデッドボルトと同様に、デッドボルト3の後端部には従動切欠6が形成されており、この従動切欠6と係合するデッドカム8を回動させることにより、図4乃至図6に示す順序でデッドボルト3を前方に駆動し、上記したようにカマ5を振出して引戸を戸枠に錠止する。
【特許文献1】特開平9−279919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したカマ錠は、例えば図5に示すように、デッドボルト3が少しフロント板から突出した状態、換言すれば完全に解錠しないうちに引戸を開け、室内に入った後勢い良く引戸を閉めると、慣性によりデッドボルト3及びカマ5が前方に突出して引戸を施錠してしまう、という不都合が生じる。
【0006】
この場合、例えば倉庫など外側にしか施解錠手段が無い部屋では、室内に入った人が閉じ込められてしまう危険性がある。
【0007】
図示のカマ錠では、カマ錠の施錠状態(図6)及び解錠状態(図4)を安定的に保つため、クリックレバー9をデッドカムに一体的に形成された山形のクリック部材11に弾接させているが、図示のブレーキ機構程度の係止力では衝撃によるデッドボルト3及びカマ5の突出を抑制することができない。
【0008】
そこで、本出願人は、先に、上記特許文献1を以て、係止力が大きいクリック機構を提案したが、このクリック機構は少し構造が複雑でコストも高い、等未だ改良の余地がある。
【0009】
そこで、この発明は、引戸をピシャンと閉めたときでもカマがフロント板から突出しない簡単な機構のクリック機構を備えたカマ錠を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載された発明は、錠箱内においてフロント板に垂直な前後方向に移動可能に案内され、後端部に従動切欠を形成したデッドボルトと、上記従動切欠と係合する作動アームを備え、シリンダ錠の内筒及び/又はサムターンに連係されたデッドカムと、上記デッドボルトに連係され、その前進に連動して外側に振り出されてストライク孔の開口端縁内面に係止されるカマとを有するものにおいて、錠箱内にデッドボルトを後方に付勢するばね部材を弾装すると共に、デッドカムにおいてその回動中心に関し作動アームと対称的な角度位置に形成された操作端と、錠箱の側板に植設されたばね掛け支柱との間に、操作端の施錠角度位置と解錠角度位置との間で付勢方向が切替わる思案ばねを弾装したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記のように構成された請求項1に記載の発明によるカマ錠は、施錠状態においてはばね部材の弾力と思案ばねのそれとが合成されてデッドボルトを後方に押動するので、従来のカマ錠の例えば図5に示すような中途半端の位置を取ることがない。
【0012】
同様の理由により、引戸が勢い良く閉まり、慣性力によりデッドボルトが前方に突出しようとしても、ばね部材及び思案ばねの弾力の和をその慣性力より大きく設定すれば、カマ錠が閉まってしまうことを有効に防止できる。
【0013】
また、ばね部材も思案ばねも構造が簡単であるから、カマ錠の構成も簡単になり、かつ軽量化を図ることができる、等種々の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
従来のカマ錠のクリックレバーを廃し、その代わりにばね部材と思案ばねとを弾装する、という簡単な構成で、引戸を勢い良く閉めるときにカマ錠が自動的に施錠されることを有効に防止できた。
【実施例1】
【0015】
以下、この発明の一実施例を図1乃至図3を参照して説明する。
図1において符号3はデッドボルトを示し、このデッドボルト3は、図4乃至図6に示す従来のカマ錠のそれと同様に、板材をU字形に折り曲げた枠材で、その後端部に形成された水平な案内孔12と錠箱側板に植設されたガイドピン13との係合、及びフロント板2に開口した付番しないデッドボルト開口との係合により、錠箱1内において水平方向に移動可能に案内されている。
【0016】
また、デッドボルト3の近傍にカマ5が揺動可能に設けられ、このカマ5は、上記デッドボルト3のU字形の隙間に嵌まり込む態様で収納されると共に、カマに形成された長穴14とデッドボルト3側に設けられた係合ピン13との係合を介してデッドボルト3に連係されている。
【0017】
そして、デッドボルト3の前進、すなわち、図1におけるデッドボルト3の左方への移動に伴い、図2及び図3に示すように、デッドボルト3に連動してカマ5が外側に振り出され、このようにしてカマ錠が施錠されることは従来のカマ錠と同様である。
【0018】
更にまた、図1及び図3に示すように、デッドボルト3の後端部に形成された従動切欠6とデッドカム8の作動アーム7との係合を介して、デッドカム8の回動に伴ってデッドボルト3が前後方向に駆動されることも従来のカマ錠と同様である。
【0019】
一方、図2に示すように、錠箱の側板に第1ばね掛け支柱16が配設され、これに巻装されたねじりコイルばねとしてのばね部材17の一端がデッドボルト3側に設けられた第1ばね掛けピン18に前方から弾接している。
【0020】
他方、図3に示すように、デッドカム8の回動中心に関し作動アーム7とは対称的な角度位置に操作端19が形成されており、この操作端19には第2ばね掛けピン21が植設されている。
【0021】
また、錠箱1の側板には第2ばね掛け支柱22が配設されており、この第2ばね掛け支柱22と上記第2ばね掛けピン21には、夫々全体の形状が略U字形の思案ばね23の端部が巻き掛けられている。
【0022】
この思案ばね23の弾力の付勢方向は、図1乃至図3から明らかなように、操作端19の施錠角度位置と解錠角度位置との間の角度位置で前後に切替わる。
【0023】
上記のように構成されたこの発明の一実施例によるカマ錠は、デッドボルトの施錠位置ではばね部材17及び思案ばね23の弾力が重畳してデッドボルトに印加される。
【0024】
そのため、従来のカマ錠のように、例えば図5に示すような中途半端な位置にデッドボルトが定座することがないことは前記した通りである。
【0025】
また、ではばね部材17及び思案ばね23の弾力の和を適切に設定しておけば、施錠時引戸を勢い良く閉めた場合でも、デッドボルト3及びカマ5の突出を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の一実施例によるカマ錠の一部断面側面図で、施錠状態を示す。
【図2】この発明の一実施例によるカマ錠の一部断面側面図で、施錠状態から解錠状態に移行する中間の状態を示す。
【図3】この発明の一実施例によるカマ錠の一部断面側面図で、解錠状態を示す。
【図4】従来のカマ錠の一部断面側面図で、施錠状態を示す。
【図5】従来のカマ錠の一部断面側面図で、施錠状態から解錠状態に移行する中間の状態を示す。
【図6】従来のカマ錠の一部断面側面図で、解錠状態を示す。
【符号の説明】
【0027】
1 錠箱
2 フロント板
3 デッドボルト
4 支軸
5 カマ
6 従動切欠
7 作動アーム
8 デッドカム
17 ばね部材
19 操作端
23 思案ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠箱内においてフロント板に垂直な前後方向に移動可能に案内され、後端部に従動切欠を形成したデッドボルトと、上記従動切欠と係合する作動アームを備え、シリンダ錠の内筒及び/又はサムターンに連係されたデッドカムと、上記デッドボルトに連係され、その前進に連動して外側に振り出されてストライク孔の開口端縁内面に係止されるカマとを有するものにおいて、錠箱内にデッドボルトを後方に付勢するばね部材を弾装すると共に、デッドカムにおいてその回動中心に関し作動アームと対称的な角度位置に形成された操作端と、錠箱の側板に植設されたばね掛けピンとの間に、操作端の施錠角度位置と解錠角度位置との間で付勢方向が切替わる思案ばねを弾装したことを特徴とするカマ錠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−19622(P2008−19622A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−192129(P2006−192129)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(390037028)美和ロック株式会社 (868)