説明

カメラアングル調整装置

【課題】歩行動作分析のためのカメラを毎回同じアングルに容易に据えられるようにする。
【解決手段】スタジオ5の床面8に、歩行路9の中心軸線9aと平行に基準マーカ2および左右マーカ3を形成し、三脚6に搭載されたカメラ7のアングル調整には、投光器1および校正治具4を用いる。校正治具4は、基準点41からx,y,zの各方向に延びる棒状体43,44,42を組合わせて構成され、基準点41および棒状体42,43の遊端部および後方の連結部材47に反射部材51,52,53,54をそれぞれ有する。一方、カメラ7上の投光器1は、レーザ墨出し器の要領で、上下方向に面状の光72を放射する。エクササイズ等での使用で撤去されていたカメラ7を、歩行状態の解析のために設置する際は、基準マーカ2上に反射部材51が、左右マーカ3上に反射部材53が位置するように校正治具4が設置され、反射部材51,52,54に光72が当るように調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、持ち運び(撤去)可能なカメラを、毎回同じ撮像範囲(アングル)となるように据付けるための調整装置に関し、特にスタジオなどで、歩行状態を撮影するために好適に使用されるもの関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康意識の高まりから、単に歩くだけでなく、如何に姿勢良く綺麗に歩くか、或いは如何にエクササイズ効果を高められるか等の歩き方の解析も行われている。その解析にあたっては、被験者の動きがカメラで撮影される。そのような典型的な従来技術としては、高齢者やリハビリ患者用であるが、特許文献1には、歩行床の左右各側の前後の固定位置に支柱を取付け、その前後の支柱間に渡した手摺りを頼りに被験者が歩行を行う一方、カメラは前記歩行床上を歩行する被験者を撮影し、演算処理によって、支柱に埋込まれた発光体を基準として、被験者の足跡を解析するようにした足跡分析装置が提案されている。
【特許文献1】特開2002−342749号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の従来技術は、歩行床に手摺りおよびカメラは常設のものであり、毎回同じアングルで撮影することができる。しかも被験者が伝い歩きする手摺りの支柱が、基準として画面内に必ず映り込んでいる。
【0004】
しかしながら、前述のように如何に姿勢良く綺麗に歩いているか等を確かめるような場合、手摺りのような基準を設けられないので、それとの相対位置関係で被験者の動きを解析する特許文献1の手法は使用できない。そこで、そのような相対基準が設けられない場合、カメラを固定しておけば、初期調整だけで、毎回正確に解析を行うことができる。すなわち、レンズの歪や、カメラからの距離による被験者像の大きさの違いなどを、画像処理によって予め補正しておくことができる。
【0005】
しかしながら、前記スタジオなどでは、エクササイズが行われたりして、カメラを撤去しなければならないのが実状である。また、会場を借りて出張で歩行姿勢を診断するようなことも多く、カメラを常設しておくことは困難である。
【0006】
本発明の目的は、持ち運び(撤去)可能なカメラを、再現性良く、毎回同じ撮像範囲(アングル)となるように、容易に据付けることができるカメラアングル調整装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のカメラアングル調整装置は、三脚に搭載されて可搬であるカメラを、予め定める撮像空間で同じアングルとなるように据付けるための装置であって、前記三脚に搭載されて、前記カメラの光軸を含む上下方向の面状に光を放射する投光器と、前記撮像空間の床面に敷設され、前記カメラの光軸の前記床面への投影線が通過すべき位置に設けられる基準マーカおよび前記基準マーカの左右の少なくとも一方側に設けられる左右マーカと、基準点から、相互に直交する3方向に延びる板状体または棒状体を組合わせて成り、前記床面から所定の高さに起立する板状体または棒状体を有し、前記基準点が前記基準マーカ上に設置され、左右方向に延びる板状体または棒状体が前記左右マーカを通過するように設置された状態で、前記投光器からの光の面が前記基準点から奥行き方向に延びる板状体または棒状体と平行となることで、前記カメラの光軸が前記基準マーカ上を通過し、かつ前記カメラの撮像面が前記基準マーカと左右マーカとを結ぶ線と平行となるように、前記三脚上に前記カメラを据付け可能とする校正治具とを含むことを特徴とする。
【0008】
上記の構成によれば、固定設置されておらず、三脚に搭載されて持ち運び(撤去)可能なカメラを、予め定める撮像空間で同じアングルとなるように据付けるにあたって、前記撮像空間の床面にマーカを形成するとともに、投光器に校正治具を用いる。そして、前記投光器は、三脚の雲台に直付けされて、或いは雲台上に搭載されたカメラに搭載されて、カメラの光軸を含む上下方向の面状に光を放射する。前記マーカとしては、前記カメラの光軸の床面への投影線が通過すべき位置、すなわち画面中央となるべき位置に基準マーカを設けるとともに、その基準マーカの左右の少なくとも一方側に左右マーカを設けて、左右方向に延びる基準線を形成する。一方、前記校正治具は、基準点から、相互に直交するx,y,zの3方向に延びる板状体または棒状体から成ることで、前記床面から起立する板状体または棒状体を有し、前記基準点、すなわち結節点が前記基準マーカ上に設置され、左右方向に延びる板状体または棒状体が前記左右マーカを通過するように設置される。
【0009】
したがって、基準マーカから規定の距離となる位置で、前記投光器からの光の面が前記基準点から奥行き方向に延びる板状体または棒状体と平行となるように三脚を据付けることで、前記カメラの光軸が前記基準マーカ上を通過し、かつその光軸が前記基準マーカと左右マーカとを結ぶ線と垂直となるように、すなわちパン方向の位置決めを行うことができるとともに、傾き(光軸回りの角度)調整、すなわち左右方向の水平出しを行い、前記カメラを据付けることができる。さらに、前記投光器からの面状の光の上端を、前記基準点から上方に延びる板状体または棒状体の上端と一致させることで、チルト方向の位置決めを行うことができる。
【0010】
こうして、持ち運び(撤去)可能なカメラを、同じ撮像空間に、再現性良く、毎回同じ撮像範囲(アングル)となるように、容易に据付けることができる。
【0011】
また、本発明のカメラアングル調整装置では、前記校正治具は、棒状体を組合わせて成り、前記左右方向に延びる棒状体の遊端部から、前記床面から所定の高さに起立する棒状体をさらに有し、前記投光器は、水平方向の面状にも光を放射することを特徴とする。
【0012】
上記の構成によれば、基準点から起立する棒状体の遊端部と、左右方向に延びる棒状体の遊端部から起立する棒状体の遊端部とを、水平方向の光が通過するように三脚を調整することで、チルト方向の角度合せおよび傾き(光軸回りの角度)調整を、より厳密に行うことができる。
【0013】
さらにまた、本発明のカメラアングル調整装置では、前記カメラからの撮像画像が入力される装置には、前記校正治具の予め定める部分の撮像画像から、大きさが既知であるその部分が何画素に対応するかから、前記撮像画像の分解能を校正する手段を有することを特徴とする。
【0014】
上記の構成によれば、歩行動作分析装置などの前記カメラからの撮像画像が入力され、その撮像画像を解析する装置には、テスト撮影の結果、前記校正治具の予め定める部分の撮像画像から、大きさが既知であるその部分、たとえば板状体の幅や棒状体の長さが、カメラの何画素に対応するかから、前記撮像画像の分解能(1画素当りにおける前記撮像空間の距離)を校正する。
【0015】
したがって、上述のようなアングル調整に加えて、距離に応じた校正を行うことができ、前記装置での解析精度を向上することができる。たとえば、前記歩行動作分析装置の場合には、前記分解能に対応して(校正をかけて)、歩幅や関節角度を正確に検出することができるようになる。
【0016】
また、本発明のカメラアングル調整装置では、前記基準点および各板状体の隅角部または棒状体の遊端部には、前記投光器からの光を反射する反射部材をさらに備えることを特徴とする。
【0017】
上記の構成によれば、投光器からの光が当っているか否かを容易に判定することができる。また、前記のような1画素当りの距離の分解能を、反射部材間の距離から容易に求めることができる。
【0018】
さらにまた、本発明のカメラアングル調整装置では、前記基準マーカおよび左右マーカは、床面に敷設される長尺状の歩行マットに形成されることを特徴とする。
【0019】
上記の構成によれば、歩行状態を撮影するのに、常設のスタジオ等だけでなく、前記カメラ、投光器、三脚および校正治具に、歩行マットも持参すれば、任意の場所で、同じ撮像空間を構成することができる。なお、前記マーカは、前記歩行マットに、印刷、塗装、縫い付け等の任意の形態で形成されればよい。
【0020】
また、本発明のカメラアングル調整装置では、前記基準マーカおよび左右マーカは、前記歩行マットにおいて、被験者の歩行の目安となる中心線から、予め定める間隔だけ、カメラ側にオフセット形成されることを特徴とする。
【0021】
上記の構成によれば、歩行状態を撮影する場合、被験者の脚や腕などにマーカが取付けられ、カメラでそれを撮影するので、前記基準マーカおよび左右マーカを、歩行マットにおいて、被験者の歩行の目安とする中心線から、被験者の体側分手前にオフセット形成しておくことで、実際のマーカの通過位置において、カメラアングルを調整することができる。
【0022】
さらにまた、本発明のカメラアングル調整装置では、前記歩行マットには、伸長または歩幅に合わせた歩行開始マークがさらに形成されていることを特徴とする。
【0023】
上記の構成によれば、被験者の伸長や歩幅に拘わらず、被験者を、歩行状態を解析するのに最適な歩数で、カメラの光軸付近を通過させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のカメラアングル調整装置は、以上のように、固定設置されておらず、三脚に搭載されて持ち運び(撤去)可能なカメラを、予め定める撮像空間で同じアングルとなるように据付けるにあたって、前記撮像空間の床面に、前記カメラの光軸の前記床面への投影線が通過すべき位置に基準マーカを設け、さらに前記基準マーカの左右の少なくとも一方側に左右マーカマーカを形成するとともに、前記三脚には、前記カメラの光軸を含む上下方向の面状に光を放射する投光器を搭載し、その投光器からの上下方向の面状の光を、相互に直交するx,y,zの3方向に延びる板状体または棒状体から成り、その結節点が前記基準マーカ上に設置され、左右方向に延びる板状体または棒状体が前記左右マーカを通過するように設置される校正治具に照射することで、前記三脚の調整を行う。
【0025】
それゆえ、持ち運び(撤去)可能なカメラを、同じ撮像空間に、再現性良く、毎回同じ撮像範囲(アングル)となるように、容易に据付けることができる。
【0026】
また、本発明のカメラアングル調整装置は、以上のように、前記校正治具を、棒状体を組合わせて構成し、さらに左右方向に延びる棒状体の遊端部から起立する棒状体を設けるとともに、前記投光器を、水平方向の面状にも光を放射するように構成する。
【0027】
それゆえ、左右に間隔を開けて起立する相互に長さの等しい2本の棒状体の先端同士を、水平方向の光が通過するように三脚を調整することで、チルト方向の角度合せおよび傾き(光軸回りの角度)調整を、より厳密に行うことができる。
【0028】
さらにまた、本発明のカメラアングル調整装置は、以上のように、歩行動作分析装置などの前記カメラからの撮像画像が入力され、その撮像画像を解析する装置は、テスト撮影の結果、前記校正治具の予め定める部分の撮像画像から、大きさが既知であるその部分がカメラの何画素に対応するかから、前記撮像画像の分解能(1画素当りにおける前記撮像空間の距離)を校正する。
【0029】
それゆえアングル調整に加えて、距離に応じた校正を行うことができ、前記装置での解析精度を向上することができる。
【0030】
また、本発明のカメラアングル調整装置は、以上のように、板状体または棒状体の結節点および各板状体の隅角部または棒状体の遊端部に、前記投光器からの光を反射する反射部材をさらに設ける。
【0031】
それゆえ、投光器からの光が当っているか否かを容易に判定することができる。
【0032】
さらにまた、本発明のカメラアングル調整装置は、以上のように、前記基準マーカおよび左右マーカを、床面に敷設される長尺状の歩行マットに形成する。
【0033】
それゆえ、歩行状態を撮影するのに、常設のスタジオ等だけでなく、前記カメラ、投光器、三脚および校正治具に、歩行マットも持参すれば、任意の場所で、同じ撮像空間を構成することができる。
【0034】
また、本発明のカメラアングル調整装置は、以上のように、前記基準マーカおよび左右マーカを、前記歩行マットにおいて、被験者の歩行の目安となる中心線から、予め定める間隔だけ、カメラ側にオフセット形成する。
【0035】
それゆえ、実際のマーカの通過位置において、カメラアングルを調整することができる。
【0036】
さらにまた、本発明のカメラアングル調整装置は、以上のように、前記歩行マットに、伸長または歩幅に合わせた歩行開始マークをさらに形成する。
【0037】
それゆえ、被験者の伸長や歩幅に拘わらず、被験者を、歩行状態を解析するのに最適な歩数で、カメラの光軸付近を通過させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の第1の形態に係るカメラアングル調整装置の構成を示す斜視図である。本実施の形態のカメラアングル調整装置は、投光器1と、基準マーカ2および左右マーカ3と、校正治具4とを備えて構成される。このカメラアングル調整装置は、撮像空間であるスタジオ5内で、三脚6に搭載されたカメラ7を、毎回同じ撮像範囲(アングル)50となるように据付けるために使用されるものである。そして、据付けられたカメラ7で、床面8に示された歩行路9上を歩行する被験者を撮影し、その被験者の手足の先や関節に付けられたマーカを図示しない解析手段で認識・解析することで、後述するように、歩幅、脚の上がり方、腕の振り幅などの判定が1度に行われるようになっている。このスタジオ5は、エクササイズなどにも使用され、したがってカメラ7はその歩行状態の解析時のみ設置され、それ以外の間は撤去されている。
【0039】
前記歩行路9は、床面8の所定領域に選ばれており、図2(a)でも示すように、その中心には、被験者の歩行の目安となる中心線9aが引かれている。その中心線9aから、予め定める間隔Wだけ、カメラ7側にオフセットして、前記基準マーカ2および左右マーカ3が設置される。したがって、これらの基準マーカ2と左右マーカ3とを結ぶ直線23は、前記中心線9aと平行である。また、基準マーカ2は、該基準マーカ2上を、カメラ7の光軸の床面8への投影線71が通過すべき位置、すなわち前記歩行路9の略中間位置に設けられる。その基準マーカ2および左右マーカ3上に、校正治具4が、撮像範囲(アングル)50の調整の際に設置され、実際の撮影時には該校正治具4は撤去される。
【0040】
前記校正治具4は、基準点41から、相互に直交するx,y,zの3方向に延びる板状体または棒状体(本実施の形態では、以降、棒状体とする)42,43,44を組合わせて構成される。前記基準点41から上方(z方向)に延びる棒状体42は、前記床面8から所定の高さ、たとえば1mの長さで起立している。また、前記基準点41から左右方向(x方向)に延びる棒状体43も、所定の長さ、たとえば1mに形成される。一方、前記基準点41から奥行き方向(y方向)に延びる棒状体44は、任意の長さに形成される。なお、この棒状体44は、手前側(カメラ7側)に形成されてもよい。また、棒状体43も、基準点41の左方に延びて形成されてもよい。各棒状体42,43,44間は、角度にずれを生じないように、適宜連結部材45,46,47によって、相互に直交するように保持されている。そして、前記基準点41および棒状体42,43の遊端部および連結部材47の途中には、反射部材51,52,53,54がそれぞれ取付けられている。
【0041】
前記反射部材51,52,53,54は、前記投光器1からの光を反射する球体から成り、棒状体44が奥行き方向(カメラ7と反対側)に延びて、反射部材54が棒状体42の陰になる場合には、該棒状体42が、透明な材料から成り、或いは相互に平行な2本の棒状体から成り、間にスリットが形成されればよい。また、反射部材54は棒状体44に設けられてもよい。これらの反射部材51,52,53,54は、前記被験者に取付けられるマーカが流用され、図1では、強調して描かれているけれども、たとえば直径が14mmである。
【0042】
前記投光器1は、いわゆるレーザ墨出し器に類似した構成となっており、半導体レーザからの拡散光をコリメータレンズで収束した後、円筒状のロッドレンズに入射して周方向にのみ拡散させることで、図1に示すような帯状の光72を放射するように構成されている(図1の例では、拡散が上下方向で、ロッドレンズは左右方向に配置されていることになる)。なお、この投光器1は、三脚6の雲台(図示せず)に直付けされてもよく、または図1で示すように雲台上に搭載されたカメラ7に搭載されてもよい。或いは、カメラ7およびこの投光器1と雲台とに、ワンタッチの着脱部材が設けられ、雲台に対してカメラ7と投光器1とを交換しても、同じアングルにセットされるようであれば、投光器1は別体とされてもよい。
【0043】
上述のように構成されるカメラアングル調整装置において、調整時は、先ず校正治具4が、その反射部材51(基準点41)および反射部材53が、それぞれ基準マーカ2および左右マーカ3上となるように設置される。これによって、左右方向(x方向)に延びる棒状体43が前記直線23、すなわち前記中心線9aと平行となり、奥行き方向(y方向)に延びる棒状体44が前記直線23、すなわち前記中心線9aと直交する。
【0044】
一方、三脚6の雲台からは、索条61によって重り62が垂下されており、この重り62が該三脚6の中心位置を示す。続いて、その重り62が、前記基準マーカ2(反射部材51)からの距離Lが予め定める長さ、たとえば5mとなる位置に三脚6が設置され、前記投光器1から略上下方向に帯状の光72が放射される。先ずその帯の上端の光73が前記棒状体42の先端に取付けられた反射部材52を照射するように雲台が調整されることで、チルト調整が行われる。なお、三脚6は、各脚63の長さおよび開脚度合いが等しくなるように予め調整されているものとする。
【0045】
さらに、前記帯状の光72の何れかで、基準点41の反射部材51を照射するように、雲台の傾き(光軸回りの)調整が行われることで、前記帯状の光72を、上下方向(z方向)に延びる棒状体42と平行に調整することができる。
【0046】
その後、前記距離Lが所定長さ上の位置で、前記帯状の光72の何れかで、後方の反射部材54を照射するように、三脚6の左右位置が調整されることで、カメラ7の光軸を前記歩行の中心線9aと直交するように、該カメラ7を設置することができる。なお、スタジオ5が常設で、歩行状態の撮影を行う場所(撮像範囲)が決まっている場合には、前記基準マーカ2および左右マーカ3とともに、前記重り62に対応した三脚6の中心位置を示すマーカが、床面8に付されていてもよい。また、前記距離Lは、カメラ7の撮像画像において、反射部材51と反射部材52,53との間の距離、たとえば1mに対して、撮像画像の画素数が、何画素該当するかなどからも求めることができる。
【0047】
このように構成することで、基準マーカ2(基準点41)から規定の距離Lとなる位置で、投光器1からの光72の面が基準マーカ2(基準点41)から奥行き方向に延びる棒状体44(反射部材54)と平行となるように三脚6を据付けることで、カメラ7の光軸が前記基準マーカ2上を通過し、かつその光軸が前記基準マーカ2と左右マーカ3とを結ぶ線23と垂直となるように、すなわちパン方向の位置決めを行うことができるとともに、傾き(光軸回りの角度)調整、すなわち左右方向の水平出しを行い、前記カメラ7を据付けることができる。さらに、前記投光器1からの面状の光72の上端の光73が、前記基準点41から上方に延びる棒状体42の上端(反射部材52)と一致させることで、チルト方向の位置決めを行うことができる。こうして、持ち運び(撤去)可能なカメラ7を、同じ撮像空間に、再現性良く、毎回同じ撮像範囲(アングル)50となるように、容易に据付けることができる。
【0048】
また、前記基準点41および棒状体42,43の遊端部ならびに棒状体47に、反射部材51,52,53,54をそれぞれ設けることで、投光器1からの光72が当っているか否かを容易に判定することができる。
【0049】
一方、図3は、歩行動作分析装置11の電気的構成を示すブロック図である。撮影にあたって、被験者には、一方の側(たとえば、図1の紙面に向って左側から右側へ被験者が歩行する場合、カメラ7で見える右側)において、関節や端部などの注目点にマーカが貼付けられる。前記カメラ7の撮像画像は、歩行動作計測部12に入力されて、そのマーカが抽出され、歩幅や腕の振り幅等の各種のパラメータが計測される。その計測結果は歩行動作分析部13に入力され、所期の目的に沿って分析が行われ、その分析結果が表示部14に表示される。
【0050】
前記歩行動作計測部12には、たとえば図4(a)で示すような2次元のモーションキャプチャなどを用いることができる。図4(b)は、計測結果の一例を示すものであり、1歩毎の歩幅である。図4(a)の場合、右脚外果に装着されたマーカのX座標と、1歩後の左脚外果に装着されたマーカのX座標との差および左脚から右脚の差が求められている。前記歩幅以外に1歩毎に得られる長さのパラメータとしては、ステップ長や歩隔などを用いることができ、時間のパラメータとしては、遊脚時間を用いることができる。また、図5(c)は、1歩毎の上腕の関節角度(図5(a)におけるθ1)を示すものであり、その求め方は、図5(b)で示す2歩分の前記上腕角度θ1の変動から、最大値・最小値を求め、それらの差から求めることができる。
【0051】
したがって、前記基準マーカ2および左右マーカ3を、被験者の歩行の目安となる中心線9aから、予め定める間隔Wだけ、カメラ7側にオフセット形成しておくことで、図2(b)で示すように右側の体側に設けられるマーカ15が実際に通過する位置において、カメラ7のアングルを調整することができる(図2(b)は前記歩行路9を歩行した被験者の足跡16を示すものであり、前記マーカ15は、くるぶしに取付けられているものとする)。ところで、2次元画像を撮影する場合、レンズにおいては奥行き・上下・左右方向に歪があるので、前述のように解析の対象となるマーカ15が実際に通過する位置に応じて校正を行うことで、撮影画像から算出した真値と実測値との間の誤差を小さくすることができる。
【0052】
また、前記歩行動作計測部12では、テスト撮影の結果、前記校正治具4の予め定める部分、たとえば前記反射部材51,53の撮像画像から、大きさが既知であるそれらの間隔(1m)に対して、カメラ7の何画素分が該当するのかによって、その設置位置で、1画素当りの距離の分解能が予め求められており、上述のような実際の計測時には、その分解能に対応して(校正をかけて)、歩幅や関節角度を正確に検出することができるようになっている。具体的には、前記撮像範囲(アングル)50とカメラ7との距離が5mの場合、前記1mの反射部材51,53間の距離に対して、カメラ7上で認識された画素数が、たとえば260画素とすると、100/260=0.3846(cm/pixel)となる。このX方向の距離だけでなく、反射部材52によるY方向の距離が用いられてもよい。
【0053】
このように構成することで、前述のようなアングル調整に加えて、距離に応じた校正を行うことができ、歩行動作分析装置11での解析精度を向上することができる。また、前記反射部材51,53は、被験者に装着されるマーカであるので、前記歩行動作計測部12では、そのマーカを認識するソフトウェアが搭載されており、前記分解能の校正を容易に行うことができる。
【0054】
[実施の形態2]
図6は、本発明の実施の第2の形態に係るカメラアングル調整装置の構成を示す斜視図である。本実施の形態のカメラアングル調整装置は、投光器1’と、前記基準マーカ2および左右マーカ3と、校正治具4’とを備えて構成され、前述の図1の調整装置に類似し、対応する部分には同一の参照符号を付して示し、その説明を省略する。注目すべきは、投光器1’が前記上下方向に帯状の光72(この図6では、図面が煩雑にならないように省略している)を放射するとともに、左右方向にも、帯状の光75を放射するように構成されていることである(この図6の例では、拡散がこの左右方向で、ロッドレンズは上下方向に配置されていることになる)。
【0055】
これに対応して、校正治具4’では、前記校正治具4の構成に加えて、前記左右方向(x方向)に延びる棒状体43の遊端部から上方(z方向)に延びる棒状体48に、その棒状体48を支持する連結部材49が設けられるとともに、前記棒状体48の遊端部に反射部材55が取付けられている。
【0056】
このように構成することで、基準点41から起立する棒状体42の遊端部(反射部材52)と、左右方向に延びる棒状体43の遊端部から起立する棒状体48の遊端部(反射部材55)とを、水平方向の光75が通過するように三脚6を調整することで、チルト方向の角度合せを、より厳密に行うことができる。
【0057】
[実施の形態3]
図7は、本発明の実施の第3の形態に係るカメラアングル調整装置の構成を示す斜視図である。本実施の形態のカメラアングル調整装置で注目すべきは、前述の投光器1または1’(図7では1で示す)と、校正治具4または4’(図7では省略している)と、歩行マット90とを備えて構成されることである。そして、前記基準マーカ2および左右マーカ3が、前記歩行路9を形成し、床面に敷設される長尺状の前記歩行マット90に形成される。前記マーカ2,3は、前記歩行マット90に、印刷、塗装、縫い付け等の任意の形態で形成されればよい。
【0058】
このように構成することで、歩行状態を撮影するのに、常設のスタジオ等だけでなく、前記カメラ7、投光器1,1’、三脚6および校正治具4,4’に、歩行マット90も持参すれば、任意の場所で、同じ撮像空間を構成することができる。
【0059】
[実施の形態4]
図8は、本発明の実施の第4の形態に係るカメラアングル調整装置に用いられる歩行マット91,92の平面図である。これらの歩行マット91,92は、前述の歩行マット90に代えて用いることができる。注目すべきは、図8(a)で示す歩行マット91では、伸長に合わせた複数の歩行開始マーク93がさらに形成されており、図8(b)で示す歩行マット92では、歩幅に合わせた複数の歩行開始マーク94がさらに形成されていることである。これらの歩行開始マーク93,94は、印刷等で形成される。
【0060】
これらの歩行開始マーク93,94の位置から、被験者が歩行を開始することで、歩行動作分析を行うにあたって、被験者の身長や歩幅が違っても、最も好ましい歩数、たとえば4〜6歩目が画面中央(カメラ7の光軸と歩行マット91,92とが交わる部分)に達するように設定することができる。たとえば、歩幅70cmの被験者の場合、5歩で進む距離は3.5mとなり、その場合、画面中央(光軸)から歩行進行方向と逆方向に3.5mの位置に開始マーク(ライン)94を引くようにすればよい。同様にして、歩幅に応じた開始マーク(ライン)94を引くことで、5歩目で画面中央に達するように設定できる。
【0061】
一方、身長に応じた開始マーク(ライン)93を引く場合には、身長に対する歩幅の割合を表す歩幅率を利用する。すなわち、平均的な歩幅率を37%とした場合、身長170cmの被験者の場合は歩幅は62.9cmとなり、前述と同様に計算すれば、容易に開始マーク(ライン)93を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の第1の形態に係るカメラアングル調整装置の構成を示す斜視図である。
【図2】歩行動作分析が行われる歩行路と被験者の足跡とを説明するための図である。
【図3】歩行動作分析装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】歩行動作計測の例として、歩幅の求め方を説明するための図である。
【図5】歩行動作計測の例として、上腕の関節角度の求め方を説明するための図である。
【図6】本発明の実施の第2の形態に係るカメラアングル調整装置の構成を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施の第3の形態に係るカメラアングル調整装置の構成を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施の第4の形態に係るカメラアングル調整装置に用いられる歩行マットの平面図である。
【符号の説明】
【0063】
1,1’ 投光器
2 基準マーカ
3 左右マーカ
4、4’ 校正治具
5 スタジオ
6 三脚
7 カメラ
8 床面
9 歩行路
11 歩行動作分析装置
12 歩行動作計測部
13 歩行動作分析部
14 表示部
15 マーカ
16 足跡
41 基準点
42,43,44,48 棒状体
45,46,47,49 連結部材
50 撮像範囲(アングル)
51,52,53,54,55 反射部材
61 索条
62 重り
63 脚
71 カメラ軸線の床面への投影線
72,75 帯状の光
90,91,92 歩行マット
93,94 歩行開始マーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三脚に搭載されて可搬であるカメラを、予め定める撮像空間で同じアングルとなるように据付けるための装置であって、
前記三脚に搭載されて、前記カメラの光軸を含む上下方向の面状に光を放射する投光器と、
前記撮像空間の床面に敷設され、前記カメラの光軸の前記床面への投影線が通過すべき位置に設けられる基準マーカおよび前記基準マーカの左右の少なくとも一方側に設けられる左右マーカと、
基準点から、相互に直交する3方向に延びる板状体または棒状体を組合わせて成り、前記床面から所定の高さに起立する板状体または棒状体を有し、前記基準点が前記基準マーカ上に設置され、左右方向に延びる板状体または棒状体が前記左右マーカを通過するように設置された状態で、前記投光器からの光の面が前記基準点から奥行き方向に延びる板状体または棒状体と平行となることで、前記カメラの光軸が前記基準マーカ上を通過し、かつ前記カメラの撮像面が前記基準マーカと左右マーカとを結ぶ線と平行となるように、前記三脚上に前記カメラを据付け可能とする校正治具とを含むことを特徴とするカメラアングル調整装置。
【請求項2】
前記校正治具は、棒状体を組合わせて成り、前記左右方向に延びる棒状体の遊端部から、前記床面から所定の高さに起立する棒状体をさらに有し、
前記投光器は、水平方向の面状にも光を放射することを特徴とする請求項1記載のカメラアングル調整装置。
【請求項3】
前記カメラからの撮像画像が入力される装置には、前記校正治具の予め定める部分の撮像画像から、大きさが既知であるその部分が何画素に対応するかから、前記撮像画像の分解能を校正する手段を有することを特徴とする請求項1または2記載のカメラアングル調整装置。
【請求項4】
前記基準点および各板状体の隅角部または棒状体の遊端部には、前記投光器からの光を反射する反射部材をさらに備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のカメラアングル調整装置。
【請求項5】
前記基準マーカおよび左右マーカは、床面に敷設される長尺状の歩行マットに形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のカメラアングル調整装置。
【請求項6】
前記基準マーカおよび左右マーカは、前記歩行マットにおいて、被験者の歩行の目安となる中心線から、予め定める間隔だけ、カメラ側にオフセット形成されることを特徴とする請求項5記載のカメラアングル調整装置。
【請求項7】
前記歩行マットには、伸長または歩幅に合わせた歩行開始マークがさらに形成されていることを特徴とする請求項5または6記載のカメラアングル調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−26235(P2010−26235A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187203(P2008−187203)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】