説明

カメラシステム、通信装置及びその制御方法、並びにプログラム

【課題】通信装置と発光装置の通信により生じる発光制御の失敗を回避可能なカメラシステム、通信装置及びその制御方法、並びにプログラムを提供する。
【解決手段】カメラシステム300は、撮像装置から撮像準備が開始されたことを通知されると、発光装置と通信中であるか否かを判別し、通信中ではないと判別されたとき、発光装置の充電が完了しているか否かを判別し、発光装置の充電が完了していると判別されたとき、発光装置に対して通信を行わないように指示する通信不可通知を行うとともに、撮像装置に対して、撮像が実行可能であることを示す撮像許可通知を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラシステム、通信装置及びその制御方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のカメラシステムにおいては、光パルス通信によりマスターストロボ(以下、「マスター」という)からスレーブストロボ(以下、「スレーブ」という)への片方向の通信制御がされていた。そのため、スレーブの充完(充電完了)情報等のスレーブ情報を取得することができなかった。スレーブが充完したことは、スレーブ本体部材である充完ランプや、補助光信号を出すなどしてユーザーへ通知されていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、近年は電波による通信機器が普及により、双方向通信が可能となっている。その結果、ストロボに通信機能を搭載した場合、スレーブからの情報を取得できるため、ユーザーはカメラ本体、又は、カメラに装着されているマスターストロボの表示部材で充完を認識することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−73201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電波通信における問題点として、マスターからのレリーズ制御通信とスレーブからのスレーブ情報通信が同時に発生した場合、通信の衝突が生じ、通信の伝播が阻害され適切にスレーブ発光制御を行うことができなくなる恐れがある。
【0006】
本発明の目的は、通信装置と発光装置の通信により生じる発光制御の失敗を回避可能なカメラシステム、通信装置及びその制御方法、並びにプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るカメラシステムは、撮像装置、通信装置及び被写体に対して発光する発光装置を備えたカメラシステムであって、前記通信装置は、前記撮像装置から撮像準備が開始されたことを通知されると、前記発光装置と通信中であるか否かを判別する通信判別手段と、前記通信判別手段により、通信中ではないと判別されたとき、前記発光装置の充電が完了しているか否かを判別する充完判別手段と、前記充完判別手段により、前記発光装置の充電が完了していると判別されたとき、前記発光装置に対して通信を行わないように指示する通信不可通知を行うとともに、前記撮像装置に対して、撮像が実行可能であることを示す撮像許可通知を行う通知手段とを備え、前記撮像装置は、ユーザーにより撮像を実行するための指示が入力されると、前記通信装置から前記撮像許可通知を受信したか否かを判別する撮像許可通知判別手段と、前記撮像許可通知判別手段により、前記撮像許可通知を受信したと判別されたとき、撮像を実行する撮像手段とを備え、前記発光装置は、前記通信装置に充電完了となったことを通知する充完通知手段と、前記通信不可通知を受信すると、前記充完通知手段による通知を禁止する禁止手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、通信装置と発光装置の通信により生じる発光制御の失敗を回避可能なカメラシステム、通信装置及びその制御方法、並びにプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施の形態に係るカメラシステムの概略構成を示す図である。
【図2】図1におけるストロボの概略構成を示す図である。
【図3】図1におけるカメラにより実行されるカメラ制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】図1におけるストロボ(マスター)により実行されるマスター制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】図1におけるストロボ(スレーブ)により実行されるスレーブ制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】図1におけるストロボ(スレーブ)により実行される充完チェック処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0011】
図1は、本実施の形態に係るカメラシステム(多灯制御システム)300の概略構成を示す図である。
【0012】
図1において、カメラシステム300は、被写体に対して発光する複数(図では3つ)の発光装置としてのストロボ100A,100B,100C、及び撮像装置としてのカメラ200で構成される。
【0013】
3つのストロボのうち、1つの発光装置であるストロボ100A(通信装置)は、カメラ200と物理的に接続可能であり、またマスターストロボ(マスター発光装置)でもある。
【0014】
一方、ストロボ100Aを除く他の発光装置であるストロボ100B,100Cは、スレーブストロボである。ストロボ100Aは、ストロボ100B,100Cの各々と双方向通信を行う。また、ストロボ100Aは、カメラ200と通信を行う。以下の説明では、ストロボ100A,100B,100Cに共通する説明を行うときは、ストロボ100と表現する。また、ストロボ100Aをマスター、そしてストロボ100B,100Cをスレーブと表現することがある。なお、スレーブストロボが1つのカメラシステムであても構わない。
【0015】
ストロボ100は、発光に関する各種設定や表示を行うための操作表示部101を備える。また、カメラ200は、レリーズ制御や、カメラ撮像モードの切り替え設定や表示、また、スレーブストロボの情報を表示するための操作表示部201を備える。
【0016】
なお、図1ではスレーブを2台としているが、2台以上の複数台でも構わない。
【0017】
図2は、図1におけるストロボ100の概略構成を示す図である。
【0018】
図2において、ストロボ100は、操作表示部101、発光回路102、ストロボ制御部103、インターフェース104、及び無線通信部105を備える。
【0019】
ストロボ制御部103は、CPU、ROM、RAM等で構成され、ストロボ100全体を制御する。操作表示部101によってストロボ制御部103に対して動作指示が行われることにより、ストロボ100が制御される。
【0020】
発光回路102は、充電や発光制御など発光に関わる制御を行い、ストロボ制御部103からの発光命令を表す信号を受信することで発光する。また、ストロボ制御部103に対して充電完了を表す信号を送信する。インターフェース104は撮像装置(不図示)と物理的に接続するためのインターフェースである。このインターフェース104を介して撮像装置と通信する。
【0021】
無線通信部105は、無線による通信を行うものであり、アンテナ105A、無線制御部105B、発振回路105C、及び水晶発振子105Dを備える。
【0022】
この無線通信部105の形態として、2種類の形態を挙げることができる。1つはストロボ100に内蔵するタイプであり、もう1つは無線通信部105をカード化して、ストロボ100にカードスロットを設けた着脱可能型タイプの2つである。本実施の形態では内蔵タイプとして説明する。
【0023】
アンテナ105Aは、無線通信を用いてデータの送受信を行い、通信相手から受信したデータを無線制御部105Bへ送信する。また、無線制御部105Bからデータを受け取り、通信相手へ送信する。
【0024】
発振回路105Cは、発振回路105Cに接続された水晶発振子105Dから生成されるクロック信号の波形を整形し、整形したクロック信号を無線通信部105での各回路に出力する。このクロック信号により、各回路による同期をとることができる。
【0025】
図3は、図1におけるカメラ200により実行されるカメラ制御処理の手順を示すフローチャートである。
【0026】
この処理は、カメラ200に搭載されたCPUにより実行される。
【0027】
図3において、ユーザーにより操作表示部201の撮像準備開始ボタンが押下されると(ステップS101)、撮像準備開始状態にカメラ200の状態が遷移する。すなわち、ユーザーにより撮像を実行するための指示が入力される。
【0028】
次いで、マスターへ撮像準備開始通知を行う(ステップS102)。これにより、カメラ200の状態は、撮像許可通知を受信するのを待つ状態に遷移する。
【0029】
マスターから撮像許可通知を受信すると(ステップS103でYES)(撮像許可通知判別手段)、カメラ撮像開始ボタンを受け付けるための許可フラグをオンとする(ステップS104)。
【0030】
これにより、カメラ200の状態は、カメラ撮像開始ボタンを受け付け可能な状態に遷移する。
【0031】
次いで、ユーザーにより操作表示部201の撮像開始ボタンが押下され(ステップS105)、マスターから撮像許可通知を受信すると(ステップS106でYES)、撮像を実行し(ステップS107)(撮像手段)、本処理を終了する。このように、撮像許可通知を受信したと判別されたとき、撮像を実行するので、通信の衝突によって生じるストロボの発光制御失敗を防止することができる。
【0032】
図4は、図1におけるストロボ100A(マスター)により実行されるマスター制御処理の手順を示すフローチャートである。
【0033】
この処理は、ストロボ制御部103に搭載されたCPUにより実行される。
【0034】
図4において、カメラ200から撮像準備が開始されたことを示す撮像準備開始通知を受信すると(ステップS201)、スレーブと通信中であるか否か判別する(ステップS202)(通信判別手段)。
【0035】
ステップS202の判別の結果、スレーブと通信中ではないとき(ステップS202でYES)、スレーブが充完しているか否か判別する(ステップS203)(充完判別手段)。スレーブは充完したことを示す充完通知をマスターに定期的に行っている。この通知を受信すると、スレーブが充完したことを示す情報が保持されるので、この情報を用いて上記判別を行うことができる。
【0036】
ステップS203の判別の結果、スレーブが充完していないとき(ステップS203でNO)、スレーブに対して、スレーブ充完情報要求を行い(ステップS204)、上記ステップS202に戻る。
【0037】
一方、ステップS203の判別の結果、スレーブが充完しているとき(ステップS203でYES)、以下の処理を行う。
【0038】
まず、スレーブに対して通信を行わないように指示する通信不可通知を行うとともに、カメラ200に対して、撮像が実行可能であることを示す撮像許可通知を行い(ステップS205)(通知手段)、本処理を終了する。
【0039】
図5は、図1におけるストロボ100B、100C(スレーブ)により実行されるスレーブ制御処理の手順を示すフローチャートである。
【0040】
この処理は、ストロボ制御部103に搭載されたCPUにより実行される。
【0041】
図5において、マスターから通信不可通知を受信すると(ステップS301)、マスターへ充完に関する通信が許可されている否かを示す充完通信許可フラグをオフとし(ステップS302)(禁止手段)、本処理を終了する。
【0042】
これにより、撮像許可された後のマスター、スレーブ間の通信が行われなくなるため、通信の衝突を回避できる。
【0043】
図6は、図1におけるストロボ100B、100C(スレーブ)により実行される充完チェック処理の手順を示すフローチャートである。
【0044】
この処理は、ストロボ制御部103に搭載されたCPUにより実行される。また、この充完チェック処理は、スレーブにおいて定期的に行われる処理である。
【0045】
図6において、充完チェックを行い(ステップS401)、充完状態が変化して充完となったとき(ステップS402)、充完通知許可フラグがオンか否か判別する(ステップS403)。
【0046】
ステップS403の判別の結果、充完通知許可フラグがオフのとき(ステップS403でNO)、そのまま処理を終了する。一方、充完通知許可フラグがオンのとき(ステップS403でYES)、マスターへ充完通知し(ステップS404)(充完通知手段)、本処理を終了する。このように、通信不可通知を受信すると、ステップS404による通知を禁止するようになっている。
【0047】
従って、充完通知許可フラグがオフのときは、マスターへの通信が行われない。その結果、マスター、スレーブ間の通信の衝突を回避できる。
【0048】
上述した実施の形態により、撮像許可時以外はマスター、スレーブ間の双方向通信を行うことができる一方で、撮像許可時は通信を行わないため、通信の衝突が回避できる結果、ストロボの発光制御失敗を防止することができる。
【0049】
本実施の形態により、カメラ200から撮像準備が開始されたことを通知されると、マスターはスレーブと通信中であるか否かを判別する(ステップS202)。そして、通信中ではないと判別されたとき、スレーブの充電が完了しているか否かを判別する(ステップS203)。スレーブの充電が完了していると判別されたとき、スレーブに対して通信を行わないように指示するとともに、カメラ200に対して、撮像が実行可能であることを示す撮像許可通知する(ステップS205)。その結果、発光装置同士の通信により生じる発光制御の失敗を回避可能となる。
【0050】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0051】
例えば、上記の実施の形態では、マスターストロボがカメラの撮像を許可する通知やスレーブストロボからの通信を禁止する通知を行っているが、カメラに接続された、発光回路を有していない通信装置であっても本発明は適用できる。このような構成であれば、通信装置と発光装置の通信により生じる発光制御の失敗を回避可能となる。
【0052】
(他の実施の形態)
本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施の形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)をネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムコードを読み出して実行する処理である。この場合、そのプログラム、及び該プログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【符号の説明】
【0053】
100,100A,100B,100C ストロボ
101,201 操作表示部
103 ストロボ制御部
105 無線通信部
200 カメラ
300 カメラシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置、通信装置及び被写体に対して発光する発光装置を備えたカメラシステムであって、
前記通信装置は、
前記撮像装置から撮像準備が開始されたことを通知されると、前記発光装置と通信中であるか否かを判別する通信判別手段と、
前記通信判別手段により、通信中ではないと判別されたとき、前記発光装置の充電が完了しているか否かを判別する充完判別手段と、
前記充完判別手段により、前記発光装置の充電が完了していると判別されたとき、前記発光装置に対して通信を行わないように指示する通信不可通知を行うとともに、前記撮像装置に対して、撮像が実行可能であることを示す撮像許可通知を行う通知手段とを備え、
前記撮像装置は、
ユーザーにより撮像を実行するための指示が入力されると、前記通信装置から前記撮像許可通知を受信したか否かを判別する撮像許可通知判別手段と、
前記撮像許可通知判別手段により、前記撮像許可通知を受信したと判別されたとき、撮像を実行する撮像手段とを備え、
前記発光装置は、
前記通信装置に充電完了となったことを通知する充完通知手段と、
前記通信不可通知を受信すると、前記充完通知手段による通知を禁止する禁止手段と、
を備えたことを特徴とするカメラシステム。
【請求項2】
撮像装置に接続可能であって、発光装置と通信する通信手段を備えた通信装置であって、
接続された撮像装置から撮像準備が開始されたことを通知されると、前記発光装置と通信中であるか否かを判別する通信判別手段と、
前記通信判別手段により、通信中ではないと判別されたとき、前記発光装置の充電が完了しているか否かを判別する充完判別手段と、
前記充完判別手段により、前記発光装置の充電が完了していると判別されたとき、前記発光装置に対して通信を行わないように指示する通信不可通知を行うとともに、前記撮像装置に対して、撮像が実行可能であることを示す撮像許可通知を行う通知手段と
を備えたことを特徴とする通信装置。
【請求項3】
撮像装置、通信装置及び被写体に対して発光する発光装置を備えたカメラシステムにおける前記通信装置の制御方法であって、
前記撮像装置から撮像準備が開始されたことを通知されると、前記発光装置と通信中であるか否かを判別する通信判別ステップと、
前記通信判別ステップにより、通信中ではないと判別されたとき、前記発光装置の充電が完了しているか否かを判別する充完判別ステップと、
前記充完判別ステップにより、前記発光装置の充電が完了していると判別されたとき、前記発光装置に対して通信を行わないように指示する通信不可通知を行うとともに、前記撮像装置に対して、撮像が実行可能であることを示す撮像許可通知を行う通知ステップと
を備えたことを特徴とする通信装置の制御方法。
【請求項4】
撮像装置、通信装置及び被写体に対して発光する発光装置を備えたカメラシステムにおける前記通信装置の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記制御方法は、
前記撮像装置から撮像準備が開始されたことを通知されると、前記発光装置と通信中であるか否かを判別する通信判別ステップと、
前記通信判別ステップにより、通信中ではないと判別されたとき、前記発光装置の充電が完了しているか否かを判別する充完判別ステップと、
前記充完判別ステップにより、前記発光装置の充電が完了していると判別されたとき、前記発光装置に対して通信を行わないように指示する通信不可通知を行うとともに、前記撮像装置に対して、撮像が実行可能であることを示す撮像許可通知を行う通知ステップと
を備えたことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−109212(P2013−109212A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255053(P2011−255053)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】