説明

カメラモジュールとその駆動用ピエゾ素子モジュール及びこのカメラモジュールを備えた携帯端末

【課題】 オートフォーカス(AF)機能やズーム機能を組み込んでも、小型で軽量に構成できるカメラモジュールとその駆動用ピエゾ素子モジュール及びこのカメラモジュールを備えた携帯端末を提供することが課題である。
【解決手段】 カメラモジュールを、少なくとも1以上の光学レンズを保持するレンズ保持部と、光軸と略平行に配置される第1軸部材(モータ軸)が挿通可能で、且つ、該第1軸部材と摺動可能な当接部と、光軸と略平行に配置され、前記第1軸部材の光軸に対して略対称な位置に設けられた第2軸部材(ガイド軸)と摺動可能なガイド用当接部と、端部に前記第1軸部材の側面と当接可能な作動部を有するピエゾ素子と、前記作動部を前記被当接部に押圧する方向に付勢する第1の弾性部材と、前記第1の弾性部材が押圧する方向と略直交する方向に付勢する第2の弾性部材とを設けて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラモジュールとその駆動用ピエゾ素子モジュール及びこのカメラモジュールを備えた携帯端末に関し、特に、小型軽量に構成したカメラモジュールとその駆動用ピエゾ素子モジュール及びこのカメラモジュールを備えた携帯端末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近の携帯電話などの携帯端末に使われるカメラモジュールは、撮像素子(CCD)の高画素化に伴ない、通常の電子カメラ(デジカメ)と同様な、高速、高精度なオートフォーカス(AF)機能や焦点距離の変化(ズーム)機能が要求され、さらに携帯端末そのものの小型化、軽量化によって、必然的にカメラモジュールも小型化、軽量化が望まれている。
【0003】
このようなカメラモジュールに於けるオートフォーカスや焦点距離の変化(ズーム)のためには、レンズ群を光軸方向に移動させることが必要であり、そのため従来では、例えば特許文献1に示されているように、光学系の側面に配置された一つの円筒カムをモータで駆動し、ズームレンズ枠とAFレンズ枠とを駆動するようにしたものや、同じくレンズ枠に隣接して配置した円筒カムをモータにより駆動し、それによってオートフォーカス用レンズ枠とズームレンズ枠とを移動させて、テレとマクロの2点切換をするようにした機構などが用いられている。
【0004】
又円筒カムだけでなく、オートフォーカス用レンズ枠やズーム用レンズ枠をそれぞれに対応したオートフォーカス用リードスクリューやズーム用リードスクリューで駆動するよう構成し、最も被写体側のレンズをケース前面に固定すると共に、これらのリードスクリューをケースにおける一辺の隅に設ける、ケースにレンズ枠のガイド支持部を設ける、さらに、光軸周りの第1象限にズーム用リードスクリューを、第2象限にフォーカス用リードスクリューを、第3象限にレンズ枠のガイドシャフトを配置する、などの構成としたカメラモジュールや、ヘリコイド機構を用いてレンズ群を光軸方向に移動させる機構を有したカメラモジュールなどが存在する。
【0005】
しかしながら、こういった円筒カム、リードスクリュー、ヘリコイドなどを用いた従来のカメラモジュールでは、その駆動源として一般的に回転子を有する電磁モータやパルスモータが用いられているが、こういった回転子を用いた電磁モータは、回転子とその周囲に電磁石や永久磁石が必要であって軸方向長さを短くしたとしても、円柱形状部分が不可欠であるからカメラモジュールを小型化する上でのネックとなり、さらに騒音なども発生する。
【0006】
そこで、こういった電磁モータに於ける欠点を解決するため従来から、レンズ枠を光軸方向へ移動させる駆動源として、電界や磁界の変化に応じて機械的歪みを発生するピエゾ素子(PZT)等の圧電素子で機械振動子を構成し、ロータやスライダをこの機械振動子に接触させて機械振動子の振動を出力として取り出せるようにした摩擦駆動型の駆動源が用いられている。このような摩擦駆動型の駆動源は、低速であるが高トルクで応答性・制御性に優れ、微小な位置決めが可能、無通電時に保持トルク(または保持力)を有する、静粛性に優れる、小型・軽量であるなどの利点を有している。
【0007】
例えば特許文献2には、レンズ枠に圧電素子を配置し、尺取り虫のようにしてレンズを駆動する光学機器が示され、また、特許文献3及び特許文献4には、レンズ枠駆動の送りネジの端部に圧電素子を接触配置し、歩進的回転を与えるようにしたレンズ移動装置が示され、また特許文献5には、電気信号を印加することで振動する電気−機械エネルギー変換素子と接触し、前記変換素子の振動によって回転させられる送りネジによってレンズ枠を移動させたり、特許文献6に示されているように、リニア駆動式振動波アクチュエータ(圧電素子)を用い、圧電素子の当接により、レンズ枠を直接駆動するものなどが提案されている。
【0008】
さらに、レンズ枠又は鏡筒もしくはレンズホルダの何れかに圧電素子を配置し、圧電素子の楕円運動でレンズを駆動するようにしたり、リードスクリュー端部にロータを配置し、ロータの外周面に当接するように圧電素子を配置してロータを回転させ、レンズを移動するように構成したものも提案されており、こういったピエゾ素子(PZT)などを用いた摩擦駆動型の駆動源としては、例えば特許文献7乃至特許文献12などに詳細に示されている。
【0009】
【特許文献1】特開平7−63970号公報
【特許文献2】特開平5−107440号公報
【特許文献3】特開平4−212913号公報
【特許文献4】特開平4−212910号公報
【特許文献5】特開平8−47273号公報
【特許文献6】特開平7−104166号公報
【特許文献7】特開平7−184382号公報
【特許文献8】特許2980541号公報
【特許文献9】特開平9−37575号公報
【特許文献10】特開2000−40313号公報
【特許文献11】特表2002−522637号公報
【特許文献12】特開2003−501988号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら特許文献2乃至特許文献5に示された技術は、通常の大きさのカメラレンズを駆動する機構であり、携帯電話などの携帯端末に使われるカメラモジュールは常に小型化を要求されているので、こういった携帯端末に適用するには大きすぎる。
【0011】
そのため本発明は、オートフォーカス(AF)機能やズーム機能を組み込んでも、小型で軽量に構成できるカメラモジュールとその駆動用ピエゾ素子モジュール及びこのカメラモジュールを備えた携帯端末を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため本発明におけるピエゾ素子モジュールは、
移動体に搭載され、被当接部と当接する作動部の変位により該移動体に駆動力を生じるピエゾ素子モジュールであって、
前記作動部を前記被当接部に押圧する方向に付勢する第1の弾性部材と、前記第1の弾性部材が押圧する方向と略直交する方向に付勢する第2の弾性部材と、を一体的に備えることを特徴とする。
【0013】
このようにピエゾ素子と、ピエゾ素子の作動部を被当接部に付勢する第1の弾性部材と、第1の弾性部材と直交する方向に付勢する第2の弾性部材とでピエゾ素子モジュールを一体的に構成することにより、ピエゾ素子は第2の弾性部材で変形自由に保持されながら作動部が第1の弾性部材で被当接部に当接され、ピエゾ素子を駆動するのに好適なピエゾ素子モジュールを構成できる。
【0014】
また、上記課題を解決するため本発明におけるカメラモジュールは、
少なくとも1以上の光学レンズを保持するレンズ保持部と、
光軸と略平行に配置される第1軸部材が挿通可能で、且つ、該第1軸部材と摺動可能な当接部と、
光軸と略平行に配置され、前記第1軸部材の光軸に対して略対称な位置に設けられた第2軸部材と摺動可能なガイド用当接部と、
端部に前記第1軸部材の側面と当接可能な作動部を有するピエゾ素子と、
前記作動部を前記被当接部に押圧する方向に付勢する第1の弾性部材と、前記第1の弾性部材が押圧する方向と略直交する方向に付勢する第2の弾性部材と、を一体的に備えたことを特徴とする。
【0015】
このようにカメラモジュールを構成することで、ピエゾ素子を駆動すればレンズ保持部は第1軸部材と第2軸部材に沿って上下に移動し、ズーミングや焦点合わせを行うことができ、さらに、第1の弾性部材と第2の弾性部材の存在により、通電により変形して駆動力を生じるピエゾ素子を自由に変形できるようにしながら、最適な押圧力で第1軸部材に押圧して保持することができるから、オートフォーカス(AF)機能やズーム機能を有するカメラモジュールを、小型で軽量に構成できる。
【0016】
そして、前記第1の弾性部材と第2の弾性部材とは、前記レンズ保持部周囲に填め込まれて一辺に設けた切れ込みの延長線上で折り曲げられ、前記ピエゾ素子を前記第1軸部材方向へ付勢する片と、前記一辺と異なる他の辺を前記ピエゾ素子保持部方向に延在し、前記ピエゾ素子を光軸方向に付勢する片とを一体に設けた弾性部材で構成することにより、簡単な構成でピエゾ素子に適度な力で付勢力を加えることができる。
【0017】
また、前記第2の弾性部材と前記ピエゾ素子との間に、絶縁性被膜を有した配線部材を配する、または、前記ピエゾ素子の前記第2の弾性部材の付勢する側と略反対側に、絶縁性被膜を有した配線部材を配したことにより、第2の弾性部材が導電性の場合はピエゾ素子の端子がショートする場合があるが、このように絶縁性被膜を有した配線部材を配したことで、そのショートが防止できる。
【0018】
さらに、前記配線部材を前記ピエゾ素子へ電力を供給する配線部材とし、フレキシブル基板またはフレキシブルケーブルで構成することにより、第2の弾性部材とピエゾ素子のショートを防止する効果の他に、ピエゾ素子への電力供給を行うこともできるから、カメラモジュールをより小型に構成することができる。
【0019】
そして、前記ピエゾ素子は略長方形の板状外形を有し、前記レンズ保持部の外周に長手方向が光軸に対し略直交するように前記ピエゾ素子を保持するピエゾ素子保持部が設けられたことにより、カメラモジュールをより小型に構成することができる。
【0020】
また、前記ピエゾ素子保持部は、内部の光軸方向に前記ピエゾ素子位置を規制する位置規制部を備え、前記第2の弾性部材側規制部は、該第2の弾性部材によって前記ピエゾ素子側に付勢されていることにより、通電により変形して駆動力を生じるピエゾ素子を自由に変形できるように保持することができるから、オートフォーカス(AF)機能やズーム機能を有するカメラモジュールを、小型で軽量に構成できる。
【0021】
さらに、前記レンズ保持部は、光軸方向への移動を規制する、カメラモジュールに設けられた規制部と当接する被規制部を備えたことにより、例えピエゾ素子が暴走しても、レンズ保持枠が一定範囲を超えて移動することがなく、カメラモジュールが壊されるといったことがない。
【0022】
そして上記課題を解決するため、本発明における携帯端末は、
少なくとも1以上の光学レンズを保持するレンズ保持部と、光軸と略平行に配置される第1軸部材が挿通可能で、且つ、該第1軸部材と摺動可能な当接部と、光軸と略平行に配置され、前記第1軸部材の光軸に対して略対称な位置に設けられた第2軸部材と摺動可能なガイド用当接部と、端部に前記第1軸部材の側面と当接可能な作動部を有するピエゾ素子と、前記ピエゾ素子を光軸方向に付勢する第1の弾性部材と、光軸方向と略垂直方向であって前記作動部を前記第1軸部材に当接する方向に付勢する第2の弾性部材と、を備えることを特徴とするレンズ保持枠と、を備えるカメラモジュールと、
操作部材と、表示部材と、バッテリーと、通信部と、前記カメラモジュール、該操作部材、該表示部材、該バッテリー、及び、該通信部を収納する筐体と、を含み、前記筐体の厚さ寸法を略前記カメラモジュールの高さに規制して構成することにより、オートフォーカス(AF)機能やズーム機能を組み込んでも、小型で軽量に構成できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、オートフォーカス(AF)機能やズーム機能を組み込んだ、小型で軽量に構成できるカメラモジュールとその駆動用ピエゾ素子モジュール及びこのカメラモジュールを備えた携帯端末を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して実施形態の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0025】
図1は実施形態のカメラモジュールの、(A)が被写体側レンズ方向から見た外観斜視図、(B)は撮像素子側から見た外観斜視図、図2は、図1における(B)の撮像素子側から見た実施形態のカメラモジュールにおける、(A)が撮像素子モジュールを外した斜視図、(B)がさらにサイドカバーを外した斜視図、図3は撮像素子モジュールの構成を示す分解図、図4は実施形態のカメラモジュールにおける、(A)が撮像素子側下カバーを取り外した斜視図、(B)が第3のレンズ群を保持する第1レンズ保持枠を外した斜視図で、(C)がさらに第2のレンズ群を保持する第2レンズ保持枠を外した斜視図、図5はインダクタやセンサ、及びコンデンサなどの電装部品の取り付け状態を示した斜視図、図6は第1軸部材(モータ軸)と第2軸部材(ガイド軸)、及び被写体側レンズの取り付け状態を示した斜視図、図7は第2のレンズ群を保持する第2レンズ保持枠の分解図、図8は第2のレンズ群を保持する第2レンズ保持枠の、平面図(A)とフレキシブル基板を外してピエゾ素子側から見た斜視図(B)、図9は第2のレンズ群を保持する第2レンズ保持枠の第1軸部材(モータ軸)と第2軸部材(ガイド軸)との関係を示した斜視図(A)と、ピエゾ素子と第1軸部材(モータ軸)の当接状態を示した断面図(B)、図10は第3のレンズ群を保持する第1レンズ保持枠の分解図、図11は実施形態のカメラモジュールにおける光学系を構成するレンズと撮像素子を示し、(A)はレンズが広角(ワイド)側にある状態を、(B)が望遠(テレ)側に有る状態を示した図、図12は実施形態になるカメラモジュールに用いるピエゾ素子の(A)が斜視図、(B)、(C)は動作原理を説明するための図、図13はレンズ保持枠におけるガイド用当接部における、第2軸部材(ガイド軸)に対する面が平型であるローラ2つをV型に配して構成した例で、(A)は断面図、(B)は第2軸部材(ガイド軸)側から見た側面図、(C)は斜視図、図14は実施形態のカメラモジュールが組み込まれた携帯電話機の一例を概略的に示す図である。図中、同一構成要素には同一番号が付してある。
【0026】
図1は、実施形態のカメラモジュール1の、(A)が被写体側レンズ方向から見た外観斜視図、(B)は撮像素子側から見た外観斜視図である。図中2は被写体側の第1のレンズ群、20はCCDなどの撮像素子を搭載した撮像素子モジュール、21はカメラモジュール全体を制御するASIC、22はカメラモジュール1の側面のうち三面を覆う第1のサイドカバー、23は遮光のための第2のサイドカバー、201はCCDなどの撮像素子が撮像した画像を処理するデジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)であり、本実施形態のカメラモジュールは、全体が10×10×20mm程度での大きさに作られる。
【0027】
図2は、図1における(B)の撮像素子側から見た実施形態のカメラモジュール1における、(A)が撮像素子モジュール20を外した斜視図、(B)がさらに第1と第2のサイドカバー22、23を外し、撮像用レンズやレンズ移動機構、各種電装部品を組み込んだカメラモジュール本体24を示した斜視図である。図2(A)に示した撮像素子モジュール20は、この図2(B)に24で示した撮像用レンズやレンズ移動機構、各種電装部品を組み込んで調整を行ったカメラモジュール本体24に、第1と第2のサイドカバー22、23を被せ、図2(A)のようにして、光軸に対する位置とピントを合わせながら装着する。
【0028】
図2(B)におけるカメラモジュール本体24は、撮像素子モジュール20側となる下カバー25、後述する第3のレンズ群を保持する第1レンズ保持枠26、第2のレンズ群を保持する第2レンズ保持枠27、これら第1レンズ保持枠26、第2レンズ保持枠27に組み込まれたピエゾ素子により、第1レンズ保持枠26、第2レンズ保持枠27自体を上下させるための第1軸部(モータ軸)28、この図2(B)では見えないが、第1レンズ保持枠26、第2レンズ保持枠27を回転止めしながらガイドしてゆく第2軸部材(ガイド軸)29、第1のレンズ群を保持する上カバー30、上カバー30から立ち上がって電装部品などを装着している直立部31等で構成される。なお、下カバー25に設けた251は第1レンズ保持枠26、第2レンズ保持枠27の移動領域を規制するための規制部材であり、詳細は後述する。
【0029】
そして撮像素子モジュール20は、図3に分解図を示したように、撮像素子基板202に設けられたCCD等の撮像素子5を撮像素子カバー204で覆い、さらにその上に赤外線カット用などのフィルター205を被せて構成される。
【0030】
以上が本実施形態になるカメラモジュール1の概略構成であり、以下、カメラモジュール1の詳細について説明するが、その前に図11、図12を用い、本実施形態のカメラモジュール1に用いる光学系の構成と、ピエゾ素子の構成と動作原理を説明しておく。
【0031】
図11は、実施形態のカメラモジュール1における光学系を構成するレンズと撮像素子を示した図で、図11(A)はレンズが最も広角(ワイド)側にある状態、(B)は同じく最も望遠(テレ)側に有る状態を示している。この光学系は、最も被写体側となる第1のレンズ群2、その第1のレンズ群2に対して撮像素子5側に配された焦点距離変化用の第2のレンズ群3、さらに撮像素子5側に配された焦点距離を変化させると共に焦点合わせ(合焦)のための第3のレンズ群4で構成される。それぞれのレンズ群は、少なくとも1枚以上の光学レンズで構成され、位置が固定された第1のレンズ群2に対し、(A)のように第2のレンズ群3、第3のレンズ群4がCCDなどを用いた撮像素子5側に移動したときは広角(ワイド)側となり、(B)のように第2のレンズ群3、第3のレンズ群4が第1のレンズ群2側に寄ったときは望遠(テレ)側となって、第2のレンズ群3におけるそれぞれの位置で、第3のレンズ群4が前後に移動してピント合わせが行われる。
【0032】
本誌実施形態のカメラモジュール1は、この第2のレンズ群3、第3のレンズ群4の移動を、それぞれのレンズ群3、4を保持したレンズ保持枠26、27に組み込んだピエゾ素子を用いて行うもので、第2のレンズ群3、第3のレンズ群4を独立して駆動できるため、焦点距離を連続的に変化させながらピントを合わせることができ、通常のズームレンズとしても、また、2焦点のレンズとしても構成できる。なお、以下の説明では、レンズ保持枠が2つの場合を例に説明するが、さらに複数のレンズ枠を設けても良いことは自明である。そして、ピエゾ素子は、上記したように第2のレンズ群3、第3のレンズ群4を保持したレンズ保持枠に組み込まれているが、次に図12を用い、本実施形態に用いるピエゾ素子の構成と動作原理を説明する。
【0033】
図12は、(A)が実施形態になるカメラモジュール1に用いるピエゾ素子の斜視図、(B)がピエゾ素子の構成、(C)が動作原理を説明するための図であり、ここで用いられるピエゾ素子10は、前記特許文献7乃至12に詳細に述べられているように、図12(A)における略長方形の板状外形に形成された圧電セラミック(ピエゾ素子)11の長手方向と短手方向で形成される第1面12に、図12(B)に示したように4つの電極121、122、及び123、124を、その反対側となる第2面13の全面に一つの電極を設けてある。そして、第1面12の電極121、122、123、124は、対角線方向に配置された電極121、122、及び123、124が、それぞれの電極の連結部分近傍に配置されたワイヤ125及び126によって電気的に接続され、第2面13上の電極は接地されていることが好ましい。
【0034】
また、短手方向の第3面14には、比較的堅いセラミックの作動部としてのスペーサ15が例えば接合剤により、好ましくはその辺における中央付近に取り付けられて、相対的に移動させる例えば軸部材や壁面等の当接部物体16に係合するようになっている。さらにこの圧電セラミック(ピエゾ素子)11は、図12(B)に示したように、振動節の位置に、周囲に固定された一対の支持体171、172と、バネなどの弾性部材付きの支持体173、174、175で変形可能に支持する。
【0035】
このように構成された圧電セラミック(ピエゾ素子)11における、電極121、124に正の電圧を、電極122、123に負の電圧を印加すると、圧電セラミック(ピエゾ素子)11は、図12(C)に誇張して示したように図上左側が右側より長くなり、バネ付きの支持体173、174、175で振動節を支持されていることで変形が可能なため、スペーサ15が係合している物体16の右方向に移動する。そして、電圧が印加されなくなると圧電セラミック(ピエゾ素子)11は元に戻るが、このとき、例えば立ち下がり時間が立ち上がり時間より少なくとも4倍程度長い非対称の電圧パルスを電極に印加すると、圧電セラミック(ピエゾ素子)11におけるスペーサ15と物体16の摩擦により、パルスの立ち下がり時にスペーサ15と物体16が係合したままスペーサ15が出発位置に戻り、そのため、パルスの立ち上がり時の変位分、スペーサ15と物体16が相対的に移動する。なお、上記電圧を逆に掛けると、この圧電セラミック(ピエゾ素子)11は逆の方に変形し、従って、スペーサ15と物体16とは相対的に逆の方向に移動する。
【0036】
このように圧電セラミック(ピエゾ素子)11は、連続的に図12(C)に示した変形が生じるような信号電圧を与えることで、スペーサ15と物体16との間の摩擦によって物体16との相対的な位置を変位させていくため、低速ではあるが高トルクで応答性・制御性に優れ、微小な位置決めが可能で、無通電時に保持トルク(または保持力)を有する、静粛性に優れる、小型・軽量であるなどの利点を有する駆動源となる。
【0037】
以上が本実施形態のカメラモジュール1における光学系構成とピエゾ素子の動作原理であり、続いて図4乃至図10を用いて実施形態のカメラモジュール1を更に詳細に説明する。まず図4は、実施形態のカメラモジュール1における、(A)が撮像素子側下カバー25を取り外した斜視図、(B)が第3のレンズ群4を保持する第1レンズ保持枠26を外した斜視図、(C)がさらに第2のレンズ群3を保持する第2レンズ保持枠27を外した斜視図である。
【0038】
カメラモジュール本体24は、図4(A)、(B)、(C)に示したように、第3のレンズ群4を保持する第1レンズ保持枠26と第2のレンズ群3を保持する第2レンズ保持枠27が、第1軸部材(モータ軸)28、第2軸部材(ガイド軸)29に挿通され、さらにその上に下カバー25が被せられて構成される。
【0039】
下カバー25は、これら第1軸部(モータ軸)28、第2軸部材(ガイド軸)29を所定位置に固定すると共に、第1レンズ保持枠26と第2レンズ保持枠27の光軸方向への移動範囲を規制するため、図4(A)に示したように第1レンズ保持部26と第2レンズ保持部27との間まで延在し、第1レンズ保持枠26における第1軸受部261aに設けられた被規制部261k(図4(B)、図10参照)と、第2レンズ保持枠27における第1軸受部271a近傍に設けられた被規制部271k(図4、図7(A)、(D)参照)に当接する、直角に曲げた部位に設けた規制部251a、251bを有する規制部材251が設けられている。そのため、第1レンズ保持枠26は、図2(B)を参照すると明らかなように、撮像素子側を下カバー25で、被写体側をこの規制部材251における規制部251aでその移動範囲が規制され、第2レンズ保持枠27は、撮像素子側を規制部材251における規制部251bで、被写体側を上カバー30でその移動範囲が規制される。従って、これら第1レンズ保持枠26、第2レンズ保持枠27を駆動するに際して駆動源が暴走しても、レンズ保持枠26、27が一定範囲を超えて移動することがなく、カメラモジュール1が壊されるといったことがない。
【0040】
図5は、カメラモジュール1を動作させる電装部品の取り付け状態を説明するための図で、32はコンデンサ、33はインダクタであり、これらコンデンサ32、インダクタ33は、ピエゾ素子の駆動電圧を昇圧するために用いられる。341、342は第1レンズ保持枠26、第2レンズ保持枠27などの光軸方向位置を検出するための位置検出部材であり、これらの電装部品は、カメラモジュール本体24における直立部31に設けられた取り付け孔311、312、313、314、315、316に取り付けられる。
【0041】
図6は、第1軸部材(モータ軸)28と第2軸部材(ガイド軸)29、及び被写体側レンズホルダ36の取り付け状況を示す図であり、第1軸部材(モータ軸)28と第2軸部材(ガイド軸)29は、上カバー30に設けられた軸穴部301、302に圧入され、前記図4(A)に示した下カバー25で撮像素子側が固定される。また、カメラモジュール本体24における直立部31には、第1レンズ保持枠26、第2レンズ保持枠27の位置検出のためのセンサテープが孔317に填め込まれ、第1レンズ群2を一体に保持した第1レンズ群ホルダ36が、上カバーに設けられたレンズ固定孔303に装着される。
【0042】
図7乃至図10は、以上説明してきたカメラモジュール1における第1レンズ保持枠26と第2レンズ保持枠27の詳細であり、後述するようにこれら第1レンズ保持枠26と第2レンズ保持枠27はほぼ同じように構成されている。
【0043】
本実施形態のカメラモジュール1における第2のレンズ群3を保持する第2レンズ保持枠27は、図7にその分解図を示したように、第2レンズ群3を一体に保持し、第2レンズ保持枠の本体271に装着される第2レンズ群ホルダ37、第2レンズ保持枠の本体271に填め込まれるピエゾ素子の付勢用バネ部材272、フレキシブル基板273、この第2レンズ保持枠27の位置を検出するための位置検出用部材274等で構成される。そして、図7(A)と(B)は第2レンズ保持枠27を異なった角度から見た斜視図で、(C)はこの第2レンズ保持枠27から位置検出用部材274を外した斜視図、(D)はさらにピエゾ素子の付勢用バネ部材272、フレキシブル基板273を取り外した分解斜視図、(E)はさらに第2レンズ群ホルダ37を取り外した分解斜視図である。
【0044】
また、図9(A)は、第2レンズ保持枠27から第2レンズ保持枠本体271、フレキシブル基板273を除き、ピエゾ素子10と第1軸部材(モータ軸)28、第2軸部材(ガイド軸)29、第2レンズ群ホルダ37、第2レンズ保持枠27に設けられて第1軸部材28に当接する当接部271h、ピエゾ素子付勢用バネ部材272のみを示したもので、図9(B)は、同じくピエゾ素子10の作動部15と当接部271hが第1軸部材28と当接している状態を示した断面図である。
【0045】
ピエゾ素子付勢用バネ部材272は、図7(D)、図9(A)に示したように、第2レンズ保持枠本体271が保持したピエゾ素子10を光軸方向に対して略直交する方向で、ピエゾ素子10の作動部15が第1軸部材28に当接する方向に付勢する第1の弾性部材272aと、ピエゾ素子10を光軸方向に付勢する第2の弾性部材272b、及び第2の弾性部材272bとピエゾ素子10が接触して導通してしまわないよう、樹脂等を用いた絶縁部材272c、その絶縁部材272cを第2の弾性部材272bに係止するための絶縁部材係止ピン272dなどで構成され、第2の弾性部材262bへの絶縁部材262cの固定は、絶縁部材係止ピン262dを第2の弾性部材262bと絶縁部材262cに設けた穴部を貫通させてカシメ止めするか、これら第2の弾性部材262bと絶縁部材262cをアウトサート成型にて作成する。そして、第1の弾性部材272aは、一辺に設けた切れ込み272eの延長線上で折り曲げられ、ピエゾ素子10を第1軸部材28方向へ付勢する片で形成され、さらに第2の弾性部材272bは、他の辺をピエゾ素子保持部271c方向に延在させ、ピエゾ素子10を光軸方向に付勢する片で形成されて、これら第1の弾性部材272aと第2の弾性部材272bを一体に形成した弾性部材で構成されている。
【0046】
そして、このピエゾ素子付勢用バネ部材272は、レンズ保持枠本体271に設けられたピエゾ素子付勢用バネ部材固定用の第1の爪271m(図7(D)、図8(B)参照)に、第1の弾性部材272aにおけるこの第1の爪への係止部272fが係止され、ピエゾ素子付勢用バネ部材固定用の第2の爪271n(図7(C)参照)に、ピエゾ素子付勢用バネ部材の第2の爪への係止部272gが係止されて、図7(D)に示したように、第2レンズ保持枠本体271へ填め込み式で固定される。なお、図7(D)、図9(A)に示した実施形態では、ピエゾ素子10をピエゾ素子付勢用バネ部材272で図上、上から下に押圧するよう構成した場合を示したが、これは逆方向から押圧するようにしたり、上下とも押圧できるよう構成しても良いことはもちろんである。
【0047】
そしてフレキシブル基板273は、図7(D)に示したように、端部273aがカメラモジュール本体24に固定されて273bの部分が第1レンズ保持枠27の上下に伴って伸縮し、図9(B)の断面図に示したように、273cのU字状になった部分でピエゾ素子付勢用バネ部材272における第2の弾性部材272bの部分を迂回して、ピエゾ素子10における作動部15側にある端子(図示せず)に接続されて電力を供給する。なお、このフレキシブル基板273は配線部材を絶縁性被膜で覆ったものであるから、このようにピエゾ素子10と前記第2の弾性部材272bとの間を通した場合、前記絶縁部材272cを用いる必要がなくなるから、第2の弾性部材272bに直接ピエゾ素子位置規制部271f、271gを設け、絶縁部材272cを用いないようにしても良い。また、このフレキシブル基板273は、ピエゾ素子付勢用バネ部材272側だけでなく、反対側のピエゾ素子固定部271p側に設けても良い。
【0048】
そして第2レンズ保持枠27は、図8(A)に平面図を、図8(B)にフレキシブル基板273を外してピエゾ素子側から見た斜視図を、図9(A)に第1軸部材28(モータ軸)と第2軸部材29(ガイド軸)の関係を示した斜視図を、図9(B)にピエゾ素子10における作動部15と第1軸部材28(モータ軸)の当接状態を断面図として示したように、その本体271に設けられた第1軸受部271aに第1軸部材28(モータ軸)が、そして第1軸受部271aの光軸に対して略対称の位置に設けられた第2軸受部271bに第2軸部材29(ガイド軸)がそれぞれ挿通され、また、図7(E)に示したように第2レンズ群3のホルダ37が挿入されて固定されて、第1軸部材28(モータ軸)にピエゾ素子10における作動部15が当接され、前記図12で説明したように駆動されてこの第1レンズ保持枠27を上下させる。なお、第1軸受部271a、第2軸受部271bは、図上、穴状(第1軸受部271a)と開放した穴状(第2軸受部271b)として示したが、この形状にこだわらないことは自明である。
【0049】
ピエゾ素子10自体は図8(B)、図9(B)に示したように、この第1レンズ保持枠27に設けられ、第1軸部材28(モータ軸)とは逆側が開放されてピエゾ素子10を挿入できるようにされていると共に、その内部で光軸と平行な側面は固定壁にてガイドされ、光軸方向上下の面はピエゾ素子10が前記図12(C)に示したような変形が可能なようにピエゾ素子固定部271pに設けられた振動節の位置を押圧するよう、前記図12に171、172で示した支持体に相当するピエゾ素子位置規制部271d、271eが、他面側に前記図12に173、174で示したバネ付き支持体に相当し、バネを前記第2の弾性部材272bとしたピエゾ素子位置規制部271f、271gが設けられたピエゾ素子保持部271c(図8(B)参照)に収容され、前記した第1の弾性部材272aで光軸方向に対して略直交する方向で、ピエゾ素子10の作動部15が第1軸部材28に当接する方向に付勢し、第2の弾性部材272bで光軸方向に付勢して保持されている。
【0050】
また、このピエゾ素子保持部271cにおける第1軸部(モータ軸)28側には、前記したように第1軸受部271aが設けられ、第1軸部材28が挿通されていると共に、第1軸部材28におけるピエゾ素子10の作動部15が当接している側とは逆側には、フッ素配合のポリカーボネートやPPSなどを用いて低摩擦とした樹脂材料などを用いて形成され、形状がV字形状とされた第1V字型部たる第1当接部271ha、第2V字型部たる第2当接部271hbを有する当接部271hが、軸271hcに支えられて設けられている。
【0051】
この当接部271hにおける第1当接部271ha、第2当接部271hbは、ピエゾ素子10における作動部15に対して第1軸部材28の軸方向に所定距離離して配置され、かつ、作動部15が第1当接部271haと第2当接部271hbの略中間に位置し、さらに、第1レンズ保持枠27の厚みに対し、ピエゾ素子10における作動部15が略中間に位置するようにピエゾ素子保持部271cが形成されている。
【0052】
そのためこの当接部271hは、前記したピエゾ素子付勢用バネ部材272における第1の弾性部材272aで、ピエゾ素子10の作動部15が第1軸部材28に当接する方向に付勢されている反作用でこの第1軸部材28に加圧保持され、さらに、第1軸部材(モータ軸)28とV字型形状部たる当接部271hとは線接触となるから、この当接部271hが低摩擦とした材料を用いて形成されていることと相俟って、第2レンズ保持枠27は滑らかに上下できると共に、ピエゾ素子保持部271cと第2レンズ保持枠27は、第1軸部材28に対して倒れを生じることなく保持され、ピエゾ素子10における作動部15の第1軸部材28への当接が撓みや偏りなく、より確実におこなうことができ、第2レンズ保持枠27を上下させることができる。
【0053】
またこの第2レンズ保持枠27には、図8(A)に示して前記したように、第1軸受部271aの光軸に対して略対称となる位置に、光軸に平行に設けた第2軸部材(ガイド軸)29を挿通させる第2軸受部271bが、フッ素配合のポリカーボネートやPPSなどを用いて低摩擦とした樹脂材料などを用いて設けられ、第2軸部材(ガイド軸)29によって第1レンズ保持枠27が回り止めされると共に、第2レンズ保持枠27の撓みを防止してスムーズに上下できるようにしている。第1軸受部272aとこの第2軸受部271bは、図8(A)に示したように第1軸受部272aの当接部271hが略V字型形状に、第2軸受部271bが第2軸部材(ガイド軸)29の外形に対応した形状としているが、例えば第1軸受部272aの当接部272hと、第2軸受部271bを略V字型形状としたローラを用いて構成したり、図13に示したように、円筒形状の平型ローラ40、41を第1軸部材28、第2軸部材29に対してV型となるように軸受部42に収容するようにして構成してもよい。
【0054】
この図13(A)は、この軸受部42の平面図であり、図13(B)と(C)は、この軸受部42の側面図(C)と斜視図(D)で、平型ローラ40、41は、この軸受部42に設けられたV型の切れこみ43の内部に、U字型に設けられた軸受44で軸部材28、29に対してV型となるように保持されている。このように軸受部42を構成することにより、第1レンズ保持枠26、第2レンズ保持枠27に製造上の誤差が生じ、直交した平型ローラ40、41の各々にスラストガタにより第2軸受部271bの位置が正規の位置とずれてもしまったような場合、平型ローラ40、41を直交させたときに形成されるV字型の谷間にガイド軸部材29を当接させることで、平型ローラ40、41のスラストガタは第1レンズ保持枠26、第2レンズ保持枠27の光軸に影響を与えなくなる。
【0055】
図10は第3のレンズ群を保持する第1レンズ保持枠26の分解図斜視図であり、第1レンズ保持枠26は、第3レンズ群4を一体に保持し、第1レンズ保持枠の本体261に装着される第3レンズ群ホルダ38、第1レンズ保持枠26の本体261に保持されるピエゾ素子の付勢用バネ部材262、フレキシブル基板263、この第1レンズ保持枠26の位置を検出するための位置検出用部材264等で構成され、これらの構成部材は、前記図7に示した第2レンズ保持枠27の構成部材とほぼ同じである。
【0056】
このうち、ピエゾ素子付勢用バネ部材262は、前記第2レンズ保持枠27におけるピエゾ素子付勢用バネ部材272と同様、第1レンズ保持枠の本体261が保持したピエゾ素子10を光軸方向に対して略直交する方向で、ピエゾ素子10の作動部15が第1軸部材28に当接する方向に付勢する第1の弾性部材262aと、ピエゾ素子10を光軸方向に付勢する第2の弾性部材272b、及び第2の弾性部材262bとピエゾ素子10が接触して導通してしまわないよう、樹脂等を用いた絶縁部材262c、その絶縁部材262cを第2の弾性部材262bに係止するための絶縁部材係止ピン262dなどで構成され、第2の弾性部材262bへの絶縁部材262cの固定は、絶縁部材係止ピン262dを第2の弾性部材262bと絶縁部材262cに設けた穴部を貫通させてカシメ止めするか、これら第2の弾性部材262bと絶縁部材262cをアウトサート成型にて作成し、第2レンズ保持枠材本体261へのピエゾ素子付勢用バネ部材262の固定は、前記第2レンズ保持枠27において説明したのと同様にして填め込み式でおこなう。
【0057】
また、その他の構成部品も、前記第2レンズ保持枠27とまったく同様であり、フレキシブル基板263は、端部263aがカメラモジュール本体24に固定されて第2レンズ保持枠27のフレキシブル基板263とは上下が逆に263bの部分が下側となり、第1レンズ保持枠26の上下に伴って伸縮できるようにされ、図9(B)の断面図に示したように、263cのU字状になった部分でピエゾ素子付勢用バネ部材262における第2の弾性部材262bの部分を迂回して、ピエゾ素子10における作動部15側にある端子(図示せず)に接続されて電力を供給する。
【0058】
さらに、第1レンズ保持枠の本体261には、第1軸受部261a、第2軸受部261bが設けられて第1軸部材28(モータ軸)と第2軸部材29(ガイド軸)が挿通され、また、第3レンズ群4のホルダ38が挿入されて固定されている。そして、第1軸部材28(モータ軸)にピエゾ素子10における作動部15を当接させ、前記図12で説明したように駆動してこの第2レンズ保持枠27を上下させる点や、その他のピエゾ素子保持部261c、第1軸受部261a、第2軸受部261b等の構成は、前記した第1レンズ保持枠27とまったく同様である。
【0059】
このように構成した実施形態のカメラモジュール1は、図示していない制御回路によって第1レンズ保持枠26、第2レンズ保持枠27に設けられたピエゾ素子10のそれぞれに駆動信号からなる駆動電流を印加することで、前記したようにスペーサ15が振動して往復運動が励起され、このピエゾ素子10を保持した第1レンズ保持枠26、第2レンズ保持枠27が、上方または下方に移動し、ズーミングを含む焦点距離の変更と、ピント合わせ(合焦)をおこなうことができる。
【0060】
このように第1レンズ保持枠26、第2レンズ保持枠27を共通の第1軸部材(モータ軸)28、第2軸部材(ガイド軸)29に挿通させてカメラモジュール1を構成することにより、カメラモジュール1を小型、軽量に構成できると共に、ピエゾ素子10に信号電流を印加するだけでオートフォーカス(AF)や焦点距離の変化を行うことができ、しかもピエゾ素子10は、前記したように低速ではあるが高トルクで応答性・制御性に優れ、微小な位置決めが可能で小型・軽量であるなどの利点を有するから、小型で軽量、焦点距離変化やピント合わせを短時間で行えるカメラモジュールを提供することができる。
【0061】
図14は、以上説明してきたカメラモジュール1を組み込んだ携帯端末の一例である。この図17に示した携帯端末は、一例として携帯電話機50の場合を示している。図中51は操作部(操作部材)、52はディスプレイ(表示部材)で、この図17はこれら操作部(操作部材)51、ディスプレイ(表示部材)52が見える状態(開状態)で示した平面図であり、図示の携帯電話機50は、操作部51が搭載された第1のケース部53とディスプレイ52が搭載された第2のケース部54とがヒンジ機構55によって連結され、第1及び第2のケース部53及び54は、ヒンジ機構55の回りに回動可能となっている。なお、第1及び第2のケース部53及び54はケース体を構成する。
【0062】
第2のケース54には、図中破線二重丸で示すように、前述したカメラモジュール1が組み込まれており、操作部51の所定のボタンを操作すると、カメラモジュール1によって撮像が行われ、撮像された画像は、例えば、ディスプレイ52上に表示される。なお、カメラモジュール1は、図1(A)に示す上側が第2のケース部54の外側に向けられている。つまり、第2のケース部54には、カメラモジュール1における第1のレンズ群2を露出させる開口部が形成され、また、図示はしないが、第1のケース部53にはバッテリー及び通信部等が収納されており、さらに、第2のケース部54の厚さ寸法は、略カメラモジュール1の高さに規制されている。
【0063】
以上種々述べてきたように本実施形態によれば、オートフォーカス(AF)機能やズーム機能を組み込んだ、小型で軽量に構成できるカメラモジュール及びこのカメラモジュールを備えた携帯端末を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
オートフォーカス(AF)機能やズーム機能を組み込んだカメラモジュールを、小型で軽量に構成することが可能となり、各種の小型携帯端末におけるカメラモジュールとして最適である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施形態のカメラモジュールの、(A)が被写体側レンズ方向から見た外観斜視図、(B)は撮像素子側から見た外観斜視図である。
【図2】図1における(B)の撮像素子側から見た実施形態のカメラモジュールにおける、(A)が撮像素子モジュールを外した斜視図、(B)がさらにサイドカバーを外した斜視図である。
【図3】撮像素子モジュールの構成を示す分解図である。
【図4】実施形態のカメラモジュールにおける、(A)が撮像素子側下カバーを取り外した斜視図、(B)が第3のレンズ群を保持する第1レンズ保持枠を外した斜視図で、(C)がさらに第2のレンズ群を保持する第2レンズ保持枠を外した斜視図である。
【図5】インダクタやセンサ、及びコンデンサなどの電装部品の取り付け状態を示した斜視図である。
【図6】第1軸部材(モータ軸)と第2軸部材(ガイド軸)、及び被写体側レンズの取り付け状態を示した斜視図である。
【図7】第2のレンズ群を保持する第2レンズ保持枠の分解図である。
【図8】第2のレンズ群を保持する第2レンズ保持枠の、平面図(A)とフレキシブル基板を外してピエゾ素子側から見た斜視図(B)である。
【図9】第2のレンズ群を保持する第2レンズ保持枠の第1軸部材(モータ軸)と第2軸部材(ガイド軸)の関係を示した斜視図(A)と、ピエゾ素子と第1軸部材(モータ軸)の当接状態を示した断面図(B)である。
【図10】第3のレンズ群を保持する第1レンズ保持枠の分解図である。
【図11】実施形態のカメラモジュールにおける光学系を構成するレンズと撮像素子を示し、(A)はレンズが広角(ワイド)側にある状態を、(B)が望遠(テレ)側に有る状態を示した図である。
【図12】実施形態になるカメラモジュールに用いるピエゾ素子の(A)が斜視図、(B)、(C)は動作原理を説明するための図である。
【図13】レンズ保持枠におけるガイド用当接部における、第2軸部材(ガイド軸)に対する面が平型であるローラ2つをV型に配して構成した例で、(A)は断面図、(B)は第2軸部材(ガイド軸)側から見た側面図、(C)は斜視図である。
【図14】実施形態のカメラモジュールが組み込まれた携帯電話機の一例を概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0066】
1 カメラモジュール
2 第1のレンズ群
3 第2のレンズ群
4 第3のレンズ群
5 撮像素子
10 ピエゾ素子
15 スペーサ
27 第2のレンズ群を保持する第2レンズ保持枠
271 第2レンズ保持枠本体
271a 第1軸受部
271b 第2軸受部
271c ピエゾ素子保持部
271h 当接部
271ha 第1当接部
271hb 第2当接部
271hc 軸
272 ピエゾ素子付勢用バネ部材
272a 第1の弾性部材
272b 第2の弾性部材
273 フレキシブル基板
274 位置検出用部材
28 第1軸部(モータ軸)
29 第2軸部材(ガイド軸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載され、被当接部と当接する作動部の変位により該移動体に駆動力を生じるピエゾ素子モジュールであって、
前記作動部を前記被当接部に押圧する方向に付勢する第1の弾性部材と、前記第1の弾性部材が押圧する方向と略直交する方向に付勢する第2の弾性部材と、を一体的に備えることを特徴とするピエゾ素子モジュール。
【請求項2】
少なくとも1以上の光学レンズを保持するレンズ保持部と、
光軸と略平行に配置される第1軸部材が挿通可能で、且つ、該第1軸部材と摺動可能な当接部と、
光軸と略平行に配置され、前記第1軸部材と光軸に対して略対称な位置に設けられた第2軸部材と摺動可能なガイド用当接部と、
端部に前記第1軸部材の側面と当接可能な作動部を有するピエゾ素子と、
前記作動部を前記被当接部に押圧する方向に付勢する第1の弾性部材と、前記第1の弾性部材が押圧する方向と略直交する方向に付勢する第2の弾性部材と、を一体的に備えたことを特徴とするカメラモジュール。
【請求項3】
前記第1の弾性部材と第2の弾性部材とは、前記レンズ保持部周囲に填め込まれて一辺に設けた切れ込みの延長線上で折り曲げられ、前記ピエゾ素子を前記第1軸部材方向へ付勢する片と、前記一辺と異なる他の辺を前記ピエゾ素子保持部方向に延在し、前記ピエゾ素子を光軸方向に付勢する片とを一体に設けた弾性部材で構成されていることを特徴とする請求項2に記載したカメラモジュール。
【請求項4】
前記第2の弾性部材と前記ピエゾ素子との間に、絶縁性被膜を有した配線部材を配したことを特徴とする請求項2または3に記載したカメラモジュール。
【請求項5】
前記ピエゾ素子の前記第2の弾性部材の付勢する側と略反対側に、絶縁性被膜を有した配線部材を配したことを特徴とする請求項2または3に記載したカメラモジュール。
【請求項6】
前記配線部材を前記ピエゾ素子へ電力を供給する配線部材とし、フレキシブル基板またはフレキシブルケーブルで構成したことを特徴とする請求項4または5に記載したカメラモジュール。
【請求項7】
前記ピエゾ素子は略長方形の板状外形を有し、前記レンズ保持部の外周に長手方向が光軸に対し略直交するように前記ピエゾ素子を保持するピエゾ素子保持部が設けられていることを特徴とする請求項2乃至6のいずれかに記載したカメラモジュール。
【請求項8】
前記ピエゾ素子保持部は、内部の光軸方向に前記ピエゾ素子位置を規制する位置規制部を備え、前記第2の弾性部材側位置規制部は、該第2の弾性部材によって前記ピエゾ素子側に付勢されていることを特徴とする請求項7に記載したカメラモジュール。
【請求項9】
前記レンズ保持部は、光軸方向への移動を規制する、カメラモジュールに設けられた規制部と当接する被規制部を備えることを特徴とする請求項2乃至8のいずれかに記載したカメラモジュール。
【請求項10】
少なくとも1以上の光学レンズを保持するレンズ保持部と、
光軸と略平行に配置される第1軸部材が挿通可能で、且つ、該第1軸部材と摺動可能な当接部と、
光軸と略平行に配置され、前記第1軸部材の光軸に対して略対称な位置に設けられた第2軸部材と摺動可能なガイド用当接部と、
端部に前記第1軸部材の側面と当接可能な作動部を有するピエゾ素子と、
前記ピエゾ素子を光軸方向に付勢する第1の弾性部材と、光軸方向と略垂直方向であって前記作動部を前記第1軸部材に当接する方向に付勢する第2の弾性部材と、
を備えることを特徴とするレンズ保持枠と、を備えるカメラモジュールと、
操作部材と、表示部材と、バッテリーと、通信部と、
前記カメラモジュール、前記表示部材、前記バッテリー及び前記通信部を収納すると共に厚さ寸法を略前記カメラモジュールの高さに制限した筐体と、を含むことを特徴とする携帯端末。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2006−101611(P2006−101611A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−283190(P2004−283190)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】