説明

カメラモジュールの組立方法

【課題】光軸合わせに要する時間を短縮し、組立て時間の短縮を図るとともに、チャート撮像用照明の輝度管理を簡易化し、コストの低減に寄与すること。
【解決手段】組立て用の撮像ユニットに対し、光源により照射されたアライメントマーク付チャートを、所要の光軸位置に調整された基準レンズを介して当該撮像素子で撮像させた後、その撮像画像のマーク位置情報に基づいて、上記の光軸位置に合わせるように当該撮像ユニットの姿勢制御を行う。一方、組立て用のレンズユニットに対し、マーク付チャートを当該レンズを介して、上記の光軸位置に調整された基準撮像素子で撮像させた後、その撮像画像のマーク位置情報に基づいて、上記の光軸位置に合わせるように当該レンズユニットの姿勢制御を行う。そして、姿勢制御がなされた当該レンズユニットと当該撮像ユニットとを合体させ、接着剤により固定する(カメラモジュールの組立て完了)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラモジュールの組立ての技術に係り、より詳細には、レンズユニットと撮像ユニットとの光軸合わせを行ったカメラモジュールの組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の携帯電話機やPDA等の携帯情報端末には、画像処理機能を内蔵させたものが多く提供されており、その1つとして、撮像装置が組み込まれたものがある。この撮像装置は、レンズ及びこれを保持する鏡筒、レンズを通して結像された被写体像を撮像して撮像信号を出力する撮像素子、その撮像信号を入力して信号処理を行う信号処理部等から構成されたカメラモジュールを有している。
【0003】
高解像度を有するカメラモジュールでは、基板にレンズユニット(レンズ及びこれを保持する鏡筒)を搭載する際、レンズユニットの取付け角度を調整しながら行うのが一般的である。これは、レンズユニットと基板上に実装された撮像ユニット(撮像素子及びこれを固定保持するホルダ)のそれぞれに取付け角度誤差が存在するためである。これがいわゆる「あおり」と呼ばれ、これによりレンズユニットの光軸方向と撮像素子における法線方向とが一致しない場合(つまり、レンズの光軸に対して撮像素子の受光面が傾いている場合)に、斜め方向に撮像対象からの光が入射されることになり、撮像素子上に結像する光束に収差が生じ、取り込まれる画像にボケが生じて画像品質が低下してしまう。また、この「あおり」が原因で、焦点深度が浅くなる等の問題が生じ、高画素化を阻害する要因となっている。
【0004】
そのため、カメラモジュールを組み立てる際には、レンズの光軸に対して撮像素子の受光面が正確に直交するように位置決め(以下、「光軸合わせ」ともいう。)を行う必要がある。また、レンズ及び撮像素子が小型化されるほど、レンズの光軸に対する撮像素子の受光面の傾きが画像品質に及ぼす影響はより大きなものとなるため、厳密な光軸合わせが求められる。
【0005】
従来行われている手法として、撮像素子から取り込まれる画像の解像度やコントラスト情報を用いて光軸合わせを行う方法がある。その撮像素子から取り込まれる画像は、所定のパターン(例えば、黒色と白色のチェックのパターン)が配置されたチャートを撮像することによって得られ、その撮像に際し、チャートを照らし出すための光源(照明)が使用される。
【0006】
光軸が理想の位置に合ったかどうかの判断は、上記の解像度やコントラスト情報を評価数値情報として演算し、予め精密なカメラによって撮像された画像データを基に求められた評価数値を基準データとし、この基準値に近づける方法や、画像データから得られた評価数値のピーク位置を探す方法等が採られている。
【0007】
光軸位置を検出するために上記の手法を用いると、取り込んだ1画像の情報では、現在どの方向に(例えば、光軸と平行なZ軸方向であれば、上方向か下方向か、光軸と直交するXY平面に対する傾き(あおり)であれば、右方向か左方向か)どれだけ光軸がずれているか予測ができないため、少なくとも数ポイントの位置での画像情報を取り込む必要がある。つまり、各ポイント毎に取り込んだ画像情報を基に得られた評価数値から、評価数値のピーク位置が出るまでレンズ又は撮像素子を複数回移動させて探すか、あるいは基準の数値になるまでレンズ又は撮像素子を複数回移動させて探すことにより、光軸合わせを行う必要がある。
【0008】
上述した光軸合わせに関連する技術としては、例えば、下記の特許文献1に記載されたカメラモジュール生産方法がある。この方法では、レンズ鏡筒をレンズの光軸が撮像素子の受光面と直交するように位置決めし、位置決めされたレンズ鏡筒の前方に所定のテストパターンを位置させることにより撮像素子でテストパターンを撮像させ、その撮像されたテストパターンの画像に基づいて撮像ユニットのレンズ鏡筒に対する位置調整を行い、その終了後にレンズ鏡筒と撮像ユニットを接着により固定している。
【0009】
また、これに関連する他の技術として、下記の特許文献2には、レンズ系を構成する複数のレンズの一部を固定レンズとし、それ以外のレンズである調整レンズを、固定レンズの光軸に対して垂直方向に移動させることで、固定レンズと調整レンズの光軸を合致させるようにした技術が開示されている。ここに開示されているレンズ光軸調整装置では、さらに、固定レンズに対して光軸と直交する方向に可動の調整レンズ支持部材を設け、この支持部材に、端部の開口部内に上記の調整レンズを嵌合させて支持する筒状の弾性チャック部材を設けている。
【0010】
さらに他の技術として、下記の特許文献3に記載されたカメラモジュールの製造方法がある。この方法では、撮像ホルダ上にオートフォーカス用モータの筺体とキャリアを固定し、レンズユニットをキャリア内で回転できる状態で収容させた後、レンズユニットをキャリア内で回転させながら、撮像素子から取り込まれる画像データ情報に基づいて、撮像素子のチルト角とレンズユニットのチルト角とが相殺されるようにレンズユニットの固定位置を決定し、その固定位置においてレンズユニットをキャリアに接着している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−86659号公報
【特許文献2】特開2003−66302号公報
【特許文献3】特開2007−333987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したように、撮像素子から取り込まれる画像の解像度やコントラスト情報を用いて光軸合わせを行う方法では、撮像素子による複数回の画像取り込みと複数回のレンズ又は撮像素子の位置の移動を必要とし、画像を取り込んだ際に行う画像処理や所要の移動量を求めるための演算が必要となるため、光軸合わせを行うのに相当の時間を必要とする。そのため、光軸合わせをしてからレンズユニットと撮像ユニットを合体し、カメラモジュールとしての組立てを完了するまでに要する時間が長くなるといった課題があった。
【0013】
また、光軸合わせの際に使用するチャートを撮像させるための光源(照明)の輝度が変化すると、撮像画像の解像度やコントラストに影響を与え、求める評価数値が大きく変動するため、その照明の輝度を一定に保つための管理、あるいは輝度調整等の補正が必要となる。そのため、照明の輝度管理が煩雑且つ複雑化し、そのために必要とするコストが増大するといった課題もあった。
【0014】
本発明は、かかる従来技術における課題に鑑み創作されたもので、光軸合わせに要する時間を短縮し、ひいては組立て時間の短縮を図るとともに、チャート撮像用照明の輝度管理を簡易化し、コストの低減に寄与することができるカメラモジュールの組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の従来技術の課題を解決するため、本発明の一形態によれば、レンズ及びこれを保持する鏡筒を有するレンズユニットと、撮像素子及びこれを保持するホルダを有する撮像ユニットとを備えたカメラモジュールの組立方法であって、前記撮像ユニットに対し、光源からの光で照らし出された複数のアライメント用のマークが配置されたマーク付チャートを、所要の光軸位置に調整された基準レンズを介して当該撮像素子で撮像させた後、該撮像された画像のマーク位置情報に基づいて、前記光軸位置に合わせるように当該撮像ユニットの姿勢制御を行い、前記レンズユニットに対し、前記マーク付チャートを当該レンズを介して、前記光軸位置に調整された基準撮像素子で撮像させた後、該撮像された画像のマーク位置情報に基づいて、前記光軸位置に合わせるように当該レンズユニットの姿勢制御を行い、それぞれ姿勢制御がなされた当該レンズユニットの鏡筒と当該撮像ユニットのホルダとを接着により固定する、ことを特徴とするカメラモジュールの組立方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一形態に係るカメラモジュールの組立方法によれば、組立て用の撮像ユニットに対し、所定のチャート(複数のアライメント用のマークが配置されたもの)を、基準レンズを介して当該撮像素子で撮像させ、その撮像された1画像の情報(マーク位置情報)に基づいて、基準レンズの光軸位置に合わせるように当該撮像ユニットの姿勢制御を行っている。同様に、組立て用のレンズユニットに対しても、そのマーク付チャートを当該レンズを介して基準撮像素子で撮像させ、その撮像された1画像の情報(マーク位置情報)に基づいて、基準撮像素子の光軸位置に合わせるように当該レンズユニットの姿勢制御を行っている。
【0017】
このように本発明によれば、撮像素子(もしくは基準撮像素子)による画像取込みが、撮像ユニット及びレンズユニットについてそれぞれ1回で済むため、光軸合わせに要する時間を短縮することができる。これにより、光軸合わせをしてからレンズユニットと撮像ユニットを合体し、カメラモジュールとしての組立てを完了するまでに要する時間(組立て時間)の短縮化を図ることが可能となる。
【0018】
また、撮像素子(もしくは基準撮像素子)で撮像させるチャートには、複数のアライメント用のマークが配置されたものを使用しているので、チャート撮像用の光源(照明)の輝度が変化しても、撮像された画像の解像度やコントラストに影響されることはなく、求める評価数値が大きく変動することもない。これにより、従来技術で必要とされていたような、照明輝度を一定に保つための管理や輝度調整等の補正が不要となるので、照明の輝度管理を簡易化することができ、コストの低減に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係るカメラモジュールの組立方法を実施するための組立装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】図1の組立装置において使用されるアライメントマーク付チャートの一例を示す図である。
【図3】図1の組立装置を用いて行うカメラモジュールの組立方法の一例を処理ステップ順に示すフローチャートである。
【図4】図3に示す「撮像ユニットの姿勢制御」に係る処理(ステップS11〜S17)を補足説明するための図であり、(a)は当該処理を行っているときの装置構成を示す図、(b)は姿勢制御の説明図である。
【図5】図3に示す「レンズユニットの姿勢制御」に係る処理(ステップS21〜S27)を補足説明するための図であり、当該処理を行っているときの装置構成を示す図である。
【図6】図3に示す「組立て」に係る処理(S31〜S37)を補足説明するための図であり、当該処理を行っているときの装置構成を示す図である。
【図7】図3に示す「アライメントマーク付チャートの撮像及びマーク位置の計測」に係る処理(S12,S13、S22,S23)を補足説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係るカメラモジュールの組立方法を実施するための組立装置を側面から見たときの概略構成を示している。
【0022】
本実施形態に係るカメラモジュールの組立方法及びこれを用いた組立装置は、レンズ光軸のセンター位置(光軸と直交するXY平面内での位置)、あおり(レンズのXY平面に対する傾き)及びフォーカス位置(Z軸方向の位置)と、撮像素子のセンター位置(XY平面内での位置)、あおり(撮像素子のXY平面に対する傾き)及び結像位置(Z軸方向の位置)とを合わせて搭載する必要がある製品に適用される。ただし、オートフォーカス機能を有した製品については、Z軸方向の位置合わせを行う必要がない場合がある。
【0023】
先ず、本実施形態の組立装置50によって組み立てられるカメラモジュール10について説明する。組立ての対象となるカメラモジュール10は、図6にその概略構成を示すように、基本的には、レンズ11及びこれを固定保持する鏡筒12(レンズユニット13)と、撮像素子14及びこれを固定保持するホルダ15(撮像ユニット16)とを備えている。さらに、撮像素子14から出力される撮像信号を入力して所定の信号処理を行うDSP(デジタル信号プロセッサ)等の信号処理部(図示せず)を備えている。
【0024】
鏡筒12は円筒状に形成されており、その円筒部の内側に、レンズ11の光軸と円筒部の軸心とが一致するようにレンズ11が固定保持されている。ホルダ15は矩形板状に構成され、鏡筒12(レンズ11)に臨む面側には矩形状の凹部が形成され、この凹部に撮像素子14が収容保持されている。撮像素子14は、CCDセンサやCMOSセンサ等から構成され、凹部に組み込まれた透明なガラスで封止されている。この撮像素子14に電気的に接続される信号処理部は、ホルダ15の凹部が形成されている側と反対側の面に設けられている。
【0025】
また、特に図示はしていないが、レンズユニット13における鏡筒12の端面(撮像ユニット16側に対向する側の面)と、撮像ユニット16におけるホルダ15の端面(レンズユニット13側に対向する側の面)との間には、僅かな間隙が確保された状態で該間隙に接着剤が充填され、これによりレンズユニット13と撮像ユニット16とが固定され、カメラモジュール10が構成されるようになっている。
【0026】
次に、カメラモジュール10を組み立てる組立装置50について説明する。この組立装置50は、図1にその概略構成を示すように、基本的には、レンズユニット13用のアクチュエータ20と、撮像ユニット16用のアクチュエータ25と、後述する複数のアライメントマークが配置されたチャート30及びこれを光照射するための光源32と、各アクチュエータ20,25及び撮像ユニット16と動作可能に接続された制御装置40とを備えている。
【0027】
各アクチュエータ20,25は、それぞれ組立て用のレンズユニット13、撮像ユニット16を機械的に支持するとともに、その支持している位置(姿勢)を複数の方向に移動もしくは回転させる機能を有している。本実施形態では、複数の方向は6方向であり(図4(b)参照)、レンズの光軸と平行なZ軸方向、光軸と直交する平面内で互いに直交するX軸方向及びY軸方向、Z軸、X軸及びY軸をそれぞれ中心として回転するθ方向、ψ方向及びφ方向である。
【0028】
レンズユニット13用のアクチュエータ20は、X軸方向及びY軸方向と平行な面内で固定化されたレール21上に配設された基台22と、この基台22上に連結された姿勢調整機構23(上記の6軸方向にレンズユニット13の姿勢を調整する機構)と、この姿勢調整機構23に機械的に結合され、レンズユニット13を着脱可能に保持する保持部24とを備えている。同様に、撮像ユニット16用のアクチュエータ25は、レール21上に配設された基台26と、この基台26上に連結された姿勢調整機構27(上記の6軸方向に撮像ユニット16の姿勢を調整する機構)と、この姿勢調整機構27の上端部に機械的に結合され、撮像ユニット16を着脱可能に保持する保持部28とを備えている。
【0029】
各アクチュエータ20,25は、それぞれレール21上を移動可能に配設されている。すなわち、各アクチュエータ20,25の基台22,26がそれぞれレール21に沿って移動することにより、それぞれレンズユニット13、撮像ユニット16の姿勢を調整するためのステーション(調整位置)と、各ユニット13,16の組立てを行うためのステーション(組立位置)との間を往復移動可能に構成されている。
【0030】
撮像ユニット16が位置決めされる調整位置には、組立て用のレンズユニット13の代わりに、後述するマスターレンズユニット13M(図4)が配設されている。このマスターレンズユニット13Mの形態及びその配置態様については後で説明する。一方、レンズユニット13が位置決めされる調整位置には、組立て用の撮像ユニット16の代わりに、後述するマスター撮像ユニット16M(図5)が配設されている。このマスター撮像ユニット16Mの形態及びその配置態様についても後で説明する。
【0031】
光源32は、図示のように撮像ユニット16及びレンズユニット13の上方に位置し、その光出射面側に配置されたチャート30を光照射するように配設されている。このチャート30は、光源32の光出射面と平行に配置され、光源32との相対位置関係が固定されるように配置されている。互いの位置関係が固定された光源32及びチャート30は、レンズユニット13の調整位置、撮像ユニット16の調整位置及び組立位置の3箇所にそれぞれ配設するようにしてもよいし、あるいは、各アクチュエータ20,25の往復移動(調整位置と組立位置との間の移動)に連動して移動可能に配設するようにしてもよい。後者の場合、光源32及びチャート30は1組で済むので、コスト面で有利である。
【0032】
光源32からの光で照らし出されるチャート30には、その一例として図2に示すように、5箇所のポイントにアライメントマークA,B,C,D,Eが配置されている。より具体的には、四角形(図示のような方形、もしくは矩形)の基材の一方の面上で、各隅部の近傍にそれぞれ時計回り方向にA,B,D,Cのマークが配置され、中心部(AとDを結ぶ対角線と、BとCを結ぶ対角線が交差する位置)にマークEが配置されている。このアライメントマーク付チャート30は、図示のようにマークAからBに向かう方向が左手系の直交座標におけるX軸、マークAからCに向かう方向がY軸とそれぞれ一致するように配置されている。
【0033】
チャート30の基材には光透過性の材料が用いられる。これにより、光源32(図1)からの光で照らし出されたチャート30のアライメントマークA,B,C,D,Eが、この基材を透過して撮像ユニット16(撮像素子14の受光面)に照射されるようになっている。
【0034】
制御装置40は、各アクチュエータ20,25及び組立て用の撮像ユニット16(もしくはマスター撮像ユニット16M)と協働して、光軸合わせを行うのに必要な処理及びこれに付随する各種の処理を制御するためのものである。光軸合わせを行う際にはアライメントマーク付チャート30の撮像画像を処理する必要があるため、制御装置40には、所要の画像処理機能が搭載されている。かかる画像処理機能を搭載した制御装置40としては、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)を使用することができる。このようなPCには、入力デバイス(キーボードやマウス等)及び出力デバイス(ディスプレイ等)とともに、HDD等の記録媒体(記憶部)が備えられている。
【0035】
制御装置40の記憶部(図示せず)には、予め精密なカメラによって撮像されたアライメントマーク付チャート30の画像データを基に求められたマークA,B,C,D,EのXY平面内での位置に関する情報(以下、「基準データ」という。)が格納されている。この基準データは、後述するように組立て用のレンズユニット13と組立て用の撮像ユニット16についてそれぞれ光軸合わせを行う際に適宜参照される。
【0036】
制御装置40では、撮像素子14(もしくはマスター撮像ユニット16Mの撮像素子)から取り込まれた画像データ(アライメントマーク付チャート30の撮像情報)と、記憶部に格納されている基準データとを比較し、その比較結果に応じて、レンズユニット13の位置(姿勢)、撮像ユニット16の位置(姿勢)が所要の光軸位置に合っているかを判断する。所要の光軸位置に合っていないと判断した場合には、後述するように各アクチュエータ20,25に対し、それぞれレンズユニット13、撮像ユニット16の位置を補正するよう制御する。つまり、6軸(図4(b)に示すX,Y,Z,θ,ψ,φ)の方向に移動もしくは回転させるよう制御する。
【0037】
以下、本実施形態に係るカメラモジュール10の組立方法について、その一例を処理ステップ順に示す図3を参照しながら説明する。併せて、図4〜図7も参照しながら補足説明する。
【0038】
なお、図3に示す各処理ステップのうち、ステップS11〜S17で行う処理と、ステップS21〜S27で行う処理は、同時並行的に行われるものではない。つまり、一方の処理を終了後に他方の処理を行うものであり、その先後の順序は特に限定されない。
【0039】
<撮像ユニット16の姿勢制御…ステップS11〜S17>
図4(a)は、撮像ユニット16の姿勢制御に係る処理を行っているときの装置構成を概略的に示したものである。この装置構成は、制御装置40からの制御に基づいて撮像ユニット16用の6軸アクチュエータ25が「調整位置」に移動し、その位置で撮像ユニット16を支持しているときの構成に対応している。
【0040】
この装置構成では、マスターレンズユニット13Mを使用する。このマスターレンズユニット13Mは、組立て用のレンズユニット13と同様に、マスターレンズ11M及びこれを固定保持する鏡筒12Mを備えている。ただし、マスターレンズ11Mは、予め所要の光軸位置と一致するように調整がなされている。マスターレンズユニット13Mは、X軸方向及びY軸方向と平行な面内で固定化された支持機構(図示せず)により、組立て用のレンズユニット13が保持される位置と同じ位置に固定保持されている。
【0041】
この装置構成において、最初のステップS11では、組立て用の撮像ユニット16が供給される。これは、図示しない装着機構を介して、アクチュエータ25の保持部28(図1)に撮像ユニット16を装着させることによって行われる。
【0042】
次のステップS12では、撮像ユニット16の撮像素子14に、アライメントマーク付チャート30の画像を取り込む。すなわち、光源32からの光で照らし出されたアライメントマーク付チャート30の像を、マスターレンズ11Mを介して撮像素子14の受光面に結像させ、チャート30を撮像する。
【0043】
次のステップS13では、撮像素子14で撮像された画像の情報から、チャート30上の複数のマークA,B,C,D,E(図2)の位置を計測する。つまり、各マークのX座標及びY座標を求める。
【0044】
次のステップS14では、計測された各マークA,B,C,D,Eの位置(X座標、Y座標)とそれぞれの基準位置(制御装置40の記憶部に格納されている基準データ)とを比較し、差分を求める。つまり、各マーク位置のそれぞれの基準位置からのずれ量(撮像素子14の6軸方向(X,Y,Z,θ,ψ,φ)の位置ずれ量)を演算する。
【0045】
この演算処理は、以下の理由から、正規化相関法を用いて行うのが望ましい。従来のように、撮像素子から取り込まれる画像の解像度やコントラスト情報を用いて光軸合わせを行う方法では、撮像画像の濃度変化に対して極めて敏感であるため、求める評価数値が大きく変動してその範囲を定義できないといった不都合が起こり得るが、正規化相関法を用いた場合、濃度変化が発生してもその範囲が正規化されるので、求める評価数値は容易に決定できるからである。
【0046】
本ステップにおいて、ずれ量の演算を行う際、各マーク(A,B,C,D,E)間の距離や角度、各マークを通る円の中心座標等も併せて演算することで、撮像画像の歪み(あおり)、伸縮(Z軸方向)、センターずれ(XY平面内)を認識することができる。
【0047】
例えば、図7(a)に示すような測定結果が得られた場合には、マークAB間の距離とマークCD間の距離、マークAC間の距離とマークBD間の距離、マークAD間の距離とマークBC間の距離を求め、求めた各値を基準値と比較することにより、画像の伸縮(Z軸方向)を検出することができる。
【0048】
また、図7(b),(c)に示すような測定結果が得られた場合には、マークAB間の距離とマークCD間の距離、マークAC間の距離とマークBD間の距離、∠ACDと∠ABD、∠BACと∠BDCを求め、求めた各値を基準値と比較することにより、画像の歪み(この場合、撮像素子14の傾き:あおり)を検出することができる。
【0049】
また、マークA,B,Cを通る円の中心座標、マークB,C,Dを通る円の中心座標、マークC,D,Aを通る円の中心座標、マークD,A,Bを通る円の中心座標を求め、求めた各値を基準値と比較することにより、XY平面上でいずれの方向にずれ(この場合、撮像素子14のセンター位置のずれ)が生じているのかを検出することができる。
【0050】
あるいは、マークAD間を結ぶ線とマークBC間を結ぶ線との交点座標とマークEの位置座標の差異を求め、これを基準値と比較することでも、センターずれを検出することができる。
【0051】
次のステップS15では、演算されたずれ量(X,Y,Z,θ,ψ,φ)を相殺するように当該撮像素子14の位置を補正する。すなわち、その演算されたずれ量を基に、マスターレンズ11Mの光軸位置に合わせるために必要な撮像素子14の位置の移動量を演算して求める。そして、この求めた移動量に基づいて制御装置40により、6軸アクチュエータ25を駆動して撮像素子14の位置を補正する(撮像ユニット16の姿勢制御)。
【0052】
次のステップS16では、ステップS13で行った処理と同様にして、撮像素子14で撮像された画像の情報から各マークA,B,C,D,Eの位置(X座標、Y座標)を計測する。
【0053】
次のステップS17では、制御装置40において、ステップS14で行った処理と同様にして求めた誤差(マーク位置と基準位置とのずれ量)が微小である(YES)か否(NO)かを判定する。判定結果がYESの場合にはステップS31に進み(「撮像ユニット16の姿勢制御」の終了)、判定結果がNOの場合には、ステップS14に戻って上記の処理を繰り返す。
【0054】
<レンズユニット13の姿勢制御…ステップS21〜S27>
図5は、レンズユニット13の姿勢制御に係る処理を行っているときの装置構成を概略的に示したものである。この装置構成は、制御装置40からの制御に基づいてレンズユニット13用の6軸アクチュエータ20が「調整位置」に移動し、その位置でレンズユニット13を支持しているときの構成に対応している。
【0055】
この装置構成では、マスター撮像ユニット16Mを使用する。このマスター撮像ユニット16Mは、組立て用の撮像ユニット16と同様に、マスター撮像素子14M及びこれを固定保持するホルダ15Mを備えている。ただし、マスター撮像素子14Mは、予め所要の光軸位置(その受光面がレンズ光軸と直交する面方向)と一致するように調整がなされている。マスター撮像素子14Mは、X軸方向及びY軸方向と平行な面内で固定化されたマスター撮像ユニット支持機構29により、組立て用の撮像ユニット16が保持される位置と同じ位置に固定保持されている。
【0056】
この装置構成において、最初のステップS21では、組立て用のレンズユニット13が供給される。これは、図示しない装着機構を介して、アクチュエータ20の保持部24(図1)にレンズユニット13を装着させることによって行われる。
【0057】
次のステップS22では、固定化されたマスター撮像素子14Mに、アライメントマーク付チャート30の画像を取り込む。すなわち、光源32からの光で照らし出されたアライメントマーク付チャート30の像を、レンズ11を介してマスター撮像素子14Mの受光面に結像させ、チャート30を撮像する。
【0058】
次のステップS23では、マスター撮像素子14Mで撮像された画像の情報から、チャート30上の複数のマークA,B,C,D,E(図2)の位置(X座標、Y座標)を計測する。
【0059】
次のステップS24では、上記のステップS14で行った処理と同様にして、各マークA,B,C,D,Eの位置のそれぞれの基準位置からのずれ量(この場合、レンズ11の6軸方向(X,Y,Z,θ,ψ,φ)の位置ずれ量)を演算する。この演算処理は、上記の場合と同様に、正規化相関法を用いて行われる。
【0060】
また、撮像画像の歪み(あおり)、伸縮(Z軸方向)、センターずれ(XY平面内)の認識についても、上記の場合と同様である。
【0061】
次のステップS25では、演算されたずれ量(X,Y,Z,θ,ψ,φ)を相殺するように当該レンズ11の位置を補正する。すなわち、その演算されたずれ量を基に、マスター撮像素子14Mの光軸位置に合わせるために必要なレンズ11の位置の移動量を演算して求める。そして、この求めた移動量に基づいて制御装置40により、6軸アクチュエータ20を駆動してレンズ11の位置を補正する(レンズユニット13の姿勢制御)。
【0062】
次のステップS26では、ステップS23で行った処理と同様にして、マスター撮像素子14Mで撮像された画像の情報から各マークA,B,C,D,Eの位置(X座標、Y座標)を計測する。
【0063】
次のステップS27では、制御装置40において、ステップS24で行った処理と同様にして求めた誤差(マーク位置と基準位置とのずれ量)が微小である(YES)か否(NO)かを判定する。判定結果がYESの場合にはステップS31に進み(「レンズユニット13の姿勢制御」の終了)、判定結果がNOの場合には、ステップS24に戻って上記の処理を繰り返す。
【0064】
<レンズユニット13と撮像ユニット16の組立て…ステップS31〜S37>
図6は、レンズユニット13と撮像ユニット16の組立てに係る処理を行っているときの装置構成を概略的に示したものである。この装置構成は、制御装置40からの制御に基づいてレンズユニット13用の6軸アクチュエータ20及び撮像ユニット16用の6軸アクチュエータ25が、それぞれの「調整位置」から「組立位置」に移動し、その組立位置でそれぞれレンズユニット13、撮像ユニット16を支持しているときの構成に対応している。
【0065】
この装置構成において、最初のステップS31では、それぞれ光軸が合った位置に姿勢制御がなされたレンズユニット13と撮像ユニット16を合体させる。すなわち、制御装置40からの制御に基づいて各アクチュエータ20,25を駆動し、それぞれ固定保持されているレンズユニット13、撮像ユニット16をZ軸方向で互いに近づく方向に僅かに移動させる。
【0066】
このとき、レンズユニット13における鏡筒12の端面(撮像ユニット16側に対向する側の面)と、撮像ユニット16におけるホルダ15の端面(レンズユニット13側に対向する側の面)との間に僅かな間隙を確保しつつ、双方に紫外線(UV)硬化型接着剤を未硬化状態で付着させておく。
【0067】
次のステップS32では、上記のステップS13で行った処理と同様にして、撮像素子14で撮像された画像の情報から各マークA,B,C,D,Eの位置(X座標、Y座標)を計測する。
【0068】
次のステップS33では、上記のステップS14で行った処理と同様にして、制御装置40において誤差(マーク位置と基準位置とのずれ量)が微小である(YES)か否(NO)かを判定する。判定結果がYESの場合にはステップS34に進み、判定結果がNOの場合にはステップS35に進む。
【0069】
ステップS34では、レンズユニット13と撮像ユニット16の間に介在された未硬化状態にある接着剤をUV硬化させ、各ユニット13,16を固定する(カメラモジュール10としての組立て完了)。そして、本処理フローは「終了」となる。
【0070】
一方、ステップS35では、上記のステップS14で行った処理と同様にして、各マークA,B,C,D,Eの位置のそれぞれの基準位置からのずれ量(この場合、撮像素子14の位置ずれ量と、レンズ11の位置ずれ量)を演算する。この演算処理は、上記の場合と同様に、正規化相関法を用いて行われる。また、撮像画像の歪み(あおり)、伸縮(Z軸方向)、センターずれ(XY平面内)の認識についても同様である。
【0071】
次のステップS36では、上記のステップS15、S25で行った処理と同様にして、演算されたずれ量(X,Y,Z,θ,ψ,φ)を相殺するように撮像素子14又はレンズ11の位置を補正する。
【0072】
次のステップS37では、ステップS32で行った処理と同様にして、撮像素子14で撮像された画像の情報から各マークA,B,C,D,Eの位置(X座標、Y座標)を計測する。この後、ステップS33に戻って上記の処理を繰り返す。
【0073】
以上説明したように、本実施形態に係るカメラモジュールの組立方法(図3)及びその方法を用いた組立装置50によれば、組立て用の撮像ユニット16に対し、アライメントマーク付チャート30(図2)を、マスターレンズ11Mを介して当該撮像素子14で撮像させ、その撮像された1画像の情報(各マークA,B,C,D,Eの位置情報)に基づいて、所要の光軸位置に合わせるように撮像ユニット16の姿勢制御を行っている。同様に、組立て用のレンズユニット13に対しても、アライメントマーク付チャート30を当該レンズ11を介してマスター撮像素子14Mで撮像させ、その撮像された1画像の情報(各マークA,B,C,D,Eの位置情報)に基づいて、所要の光軸位置に合わせるようにレンズユニット13の姿勢制御を行っている。
【0074】
このように本実施形態によれば、撮像素子14(もしくはマスター撮像素子14M)による画像取込みが、組立て用の撮像ユニット16及び組立て用のレンズユニット13についてそれぞれ1回で済むため、光軸合わせに要する時間を短縮することができる。これにより、光軸合わせをしてからレンズユニット13と撮像ユニット16を合体し、カメラモジュール10としての組立てを完了するまでに要する時間の短縮化を図ることが可能となる。
【0075】
また、撮像素子14(もしくはマスター撮像素子14M)で撮像させるチャート30には、複数のアライメント用マークA,B,C,D,E(図2)が配置されたものを使用しており、さらに、その撮像された画像の情報に基づいて各マーク位置の基準位置からのずれ量を演算する際に正規化相関法を用いている。これにより、チャート撮像用の光源32の照明輝度が変化しても、撮像された画像の解像度やコントラストに影響されることはなく、求める評価数値が大きく変動することもない。その結果、従来技術で必要とされていたような、照明輝度を一定に保つための管理や輝度調整等の補正が不要となり、照明の輝度管理を簡易化することができ、コストの低減化を図ることができる。
【符号の説明】
【0076】
10…カメラモジュール、
13(11,12)…レンズユニット(レンズ、鏡筒)、
13M(11M,12M)…マスターレンズユニット(マスターレンズ、鏡筒)、
16(14,15)…撮像ユニット(撮像素子、ホルダ)、
16M(14M,15M)…マスター撮像ユニット(マスター撮像素子、ホルダ)、
20,25…6軸アクチュエータ(レンズユニット用、撮像ユニット用)、
21…レール、
23,27…姿勢調整機構、
24,28…保持部、
30…アライメントマーク付チャート、
32…光源、
40…制御装置、
50…組立装置、
A,B,C,D,E…アライメント用マーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ及びこれを保持する鏡筒を有するレンズユニットと、撮像素子及びこれを保持するホルダを有する撮像ユニットとを備えたカメラモジュールの組立方法であって、
前記撮像ユニットに対し、光源からの光で照らし出された複数のアライメント用のマークが配置されたマーク付チャートを、所要の光軸位置に調整された基準レンズを介して当該撮像素子で撮像させた後、該撮像された画像のマーク位置情報に基づいて、前記光軸位置に合わせるように当該撮像ユニットの姿勢制御を行い、
前記レンズユニットに対し、前記マーク付チャートを当該レンズを介して、前記光軸位置に調整された基準撮像素子で撮像させた後、該撮像された画像のマーク位置情報に基づいて、前記光軸位置に合わせるように当該レンズユニットの姿勢制御を行い、
それぞれ姿勢制御がなされた当該レンズユニットの鏡筒と当該撮像ユニットのホルダとを接着により固定する、ことを特徴とするカメラモジュールの組立方法。
【請求項2】
前記撮像ユニットの姿勢制御及び前記レンズユニットの姿勢制御は、それぞれ、当該撮像された画像の情報から複数のマーク位置を計測する処理と、該計測された各マーク位置のそれぞれの基準位置からのずれ量を演算する処理と、該演算されたずれ量を相殺するように当該撮像素子又は当該レンズの位置を補正する処理とを含むことを特徴とする請求項1に記載のカメラモジュールの組立方法。
【請求項3】
前記各マーク位置のそれぞれの基準位置からのずれ量を演算する処理は、正規化相関法を用いて行うことを特徴とする請求項2に記載のカメラモジュールの組立方法。
【請求項4】
前記各マーク位置のそれぞれの基準位置からのずれ量を演算する処理は、各マーク間の相対位置関係を求め、求めた各値を基準値と比較することで、撮像画像の歪み、伸縮又はセンター位置のずれを検出する処理を含むことを特徴とする請求項3に記載のカメラモジュールの組立方法。
【請求項5】
前記撮像ユニットの姿勢制御及び前記レンズユニットの姿勢制御は、それぞれ、前記光軸と平行なZ軸方向と、前記光軸と直交する平面内で互いに直交するX軸方向及びY軸方向と、Z軸、X軸及びY軸をそれぞれ中心として回転するθ方向、ψ方向及びφ方向とのうち少なくとも1つの方向について行われることを特徴とする請求項4に記載のカメラモジュールの組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−133509(P2011−133509A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290020(P2009−290020)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】