説明

カメラ洗浄装置

【課題】監視カメラ等のカメラ装置における被洗浄面に対して、視界を妨げる等の撮像結果への悪影響を排しつつ、当該被洗浄面の汚れの払拭を適切に行えるようにする。
【解決手段】カメラレンズ1cまたは当該カメラレンズ1cの前面側を覆う透明板1dを被洗浄面とし、当該被洗浄面に対して洗浄液を噴射する洗浄液噴射ノズル2bと、前記被洗浄面に対して圧縮空気を噴射するエアー噴射ノズル2bとを備えるカメラ洗浄装置において、前記洗浄液噴射ノズル2bおよび前記エアー噴射ノズル2bを前記カメラレンズ1cによる撮像範囲の外側に配設するとともに、少なくとも前記エアー噴射ノズル2bを前記被洗浄面に対して斜め上方から圧縮空気を噴射する位置に配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視カメラ等に適用して好適なカメラ洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、監視カメラ等のように屋外で使用されるカメラ装置が広く普及しつつある。このようなカメラ装置については、そのカメラ装置におけるカメラレンズまたは当該カメラレンズの前面側を覆う透明板(例えば保護ガラス板)が雨、雪、挨等の影響で汚れてしまうことから、カメラレンズまたはその前面の透明板を定期的に洗浄して、撮像する画像の品質を確保する必要がある。
【0003】
カメラレンズまたはその前面の透明板に対する洗浄は、例えば、作業者がカメラ装置の設置箇所まで赴いて手作業で直接行ったり、カメラレンズ前面の透明板表面に摺接しつつ往復移動するワイパーを用いて行ったりすることが考えられる。また、カメラ装置が旋回可能に支持されている場合であれば、撮像方向と正対する向きにカメラレンズを向け、その状態でカメラレンズに対して洗浄液や圧縮空気を噴射して、これにより汚れを払拭することも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−169219号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の洗浄手法には、以下に述べるような難点がある。
例えば、作業者の手作業による洗浄では、高所、屋外、高温または低温等の環境条件下では作業に危険を伴うことになり、また頻繁に作業を行うことも困難である。
ワイパーによる洗浄であれば遠隔操作を行うことが可能になるが、当該ワイパーの摺接を伴うので、硬い砂粒の咬み込み等によって被洗浄面に傷が発生してしまうおそれがある。また、遠隔操作が可能であっても、ワイパーの形成材料(例えばゴム材)の劣化を考慮すると、定期的な交換作業が必要となる。さらには、ワイパーの動作中は当該ワイパーがカメラレンズによる撮像範囲に入り込むことになり、カメラ装置での撮像結果に対して視界を妨げる等の悪影響を及ぼしてしまう。
一方、上述した特許文献1に開示されているように、洗浄液や圧縮空気の噴射により汚れを払拭すれば、遠隔操作が可能となり、しかも傷発生や部材劣化等のおそれがなくなる。ところが、カメラレンズの正面側から洗浄液や圧縮空気を噴射するため、カメラ装置を旋回させることが必須になってしまう。つまり、カメラ装置を旋回させずに汚れを払拭しようとすると、洗浄液や圧縮空気を噴射するノズルがカメラレンズによる撮像範囲に入り込んでしまい、カメラ装置での撮像結果に対して視界を妨げる等の悪影響を及ぼすことになる。したがって、汚れを払拭するために、カメラ装置の旋回機構が必要となり、装置全体の大型化や高コスト化が避けられず、また旋回を要する分だけ洗浄処理の迅速さが損なわれることが考えられる。さらに、正面側からの噴射では、汚れの払拭を適切に行えないことも考えられる。例えば、カメラレンズ表面に雨滴が付着した場合に、これを正面から吹き飛ばそうとしても、カメラレンズの上方側に追い遣られた雨滴については当該雨滴の自重で垂れてきてしまい、再度カメラレンズ表面への付着状態が構成され得るからである。
【0006】
そこで、本発明は、被洗浄面への傷発生や洗浄部材劣化等が生じることなく遠隔操作での洗浄を行うことが可能であり、しかも視界を妨げる等の撮像結果への悪影響を排しつつ被洗浄面の汚れの払拭を適切に行うことができ、装置大型化や高コスト化等の抑制および迅速な洗浄処理の推進についても実現可能であるカメラ洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために案出されたカメラ洗浄装置である。すなわち、カメラレンズまたは当該カメラレンズの前面側を覆う透明板を被洗浄面とし、当該被洗浄面に対して洗浄液を噴射する洗浄液噴射ノズルと、前記被洗浄面に対して圧縮空気を噴射するエアー噴射ノズルとを備えるカメラ洗浄装置であって、前記洗浄液噴射ノズルおよび前記エアー噴射ノズルは、前記カメラレンズによる撮像範囲の外側に配設されているとともに、少なくとも前記エアー噴射ノズルは、前記被洗浄面に対して斜め上方から圧縮空気を噴射する位置に配設されていることを特徴とする。
【0008】
上記構成のカメラ洗浄装置では、カメラレンズによる撮像範囲の外側に洗浄液噴射ノズルおよびエアー噴射ノズルが配設されているので、これら洗浄液噴射ノズルおよびエアー噴射ノズルが当該カメラレンズで撮影する画像に写り込むことがなく、当該カメラレンズが装着されたカメラ装置での撮像の妨げとなることがない。また、エアー噴射ノズルが斜め上方から圧縮空気を噴射するので、被洗浄面に洗浄液や雨滴等の水滴が付着しても、上方側に追い遣られて残留してしまう水滴が生じることがない。すなわち、水滴の吹き残しが発生することなく、被洗浄面に付着した全ての水滴が、その上端から下方に向けて吹き流されることになる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るカメラ洗浄装置によれば、洗浄液および圧縮空気の噴射によりカメラレンズまたは透明板の洗浄を行うので、遠隔操作での洗浄処理を行うことが可能となり、作業者の危険を排除しつつ頻繁に洗浄を行うことが実現可能となる。また、洗浄液および圧縮空気の噴射を利用するので、被洗浄面の傷つけてしまうことがない。さらには、例えばワイパーを用いた場合のような形成材料の定期的な交換作業も不要となるので、当該交換作業が必要な場合に比べてメンテナンス作業の間隔を大幅に延ばすことが可能となる。
また、本発明に係るカメラ洗浄装置によれば、洗浄液噴射ノズルおよびエアー噴射ノズルがカメラレンズによる撮像範囲の外側にあるので、当該カメラレンズに装着されたカメラ装置での撮像結果に対して視界を妨げる等の悪影響が及ぶのを排除することができる。さらには、エアー噴射ノズルが斜め上方から圧縮空気を噴射するので、カメラレンズまたは透明板に洗浄液や雨滴等の水滴が付着しても、当該水滴の吹き残しが発生することなく、また上方に追い遣られた水滴が垂れてくることもないので、被洗浄面の汚れの払拭を適切に、かつ、効率的に行うことができる。
さらに、本発明に係るカメラ洗浄装置によれば、視界を妨げる等の撮像結果への悪影響を排しつつ被洗浄面の汚れの払拭を適切かつ効率的に行うことができるので、必ずしもカメラ装置の旋回機構を必要としない。すなわち、旋回機構を有した旋回式のカメラ装置であっても、旋回機構を有さない固定式のカメラ装置であっても、いずれの場合も適用が可能であり、旋回機構を必要とする従来方式に比べて高い汎用性を確保することができる。しかも、高い汎用性を確保し得ることから、既存のカメラ装置への適用も非常に実現容易となる。また、旋回機構を有さない固定式のカメラ装置に適用した場合であれば、当該カメラ装置の旋回が不要であるが故に、装置大型化や高コスト化等の抑制が実現可能であり、迅速な洗浄処理の推進についても実現が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に基づき本発明に係るカメラ洗浄装置について説明する。
【0011】
図1は、カメラ装置およびカメラ洗浄装置を含むシステム構成例を示す説明図である。
カメラ洗浄装置は、監視カメラ等のように屋外で使用されるカメラ装置1に付設されて用いられるもので、当該カメラ装置1におけるカメラレンズまたは当該カメラレンズの前面側を覆う保護ガラス板等の透明板を定期的に洗浄して、当該カメラ装置1で撮像する画像の品質を確保するためのものである。つまり、カメラ洗浄装置は、カメラ装置1におけるカメラレンズまたは当該カメラレンズの前面側を覆う透明板を被洗浄面(ただし不図示)とし、その被洗浄面に対する洗浄を行って当該被洗浄面上の汚れを払拭するものである。なお、カメラ装置1は、その撮像方式、形状、大きさ等が、特に限定されるものではない。
【0012】
被洗浄面に対する洗浄を行うために、カメラ洗浄装置は、噴射ノズル部2と、洗浄液供給部3と、エアタンク部4と、制御ボックス5と、制御コンピュータ6と、を備えて構成されている。
【0013】
噴射ノズル部2は、被洗浄面に対する洗浄液の噴射と当該被洗浄面に対する圧縮空気の噴射とを行うものである。そのために、噴射ノズル部2は、洗浄液を噴射する洗浄液噴射ノズルと圧縮空気を噴射するエアー噴射ノズルと(ただし、いずれも不図示)を備えて構成されている。なお、洗浄液としては、水や洗剤溶液等を用いることが考えられるが、被洗浄面の洗浄に有効なものであれば、特に限定されるものではない。また、圧縮空気についても同様であり、特に限定されるものではない。
【0014】
洗浄液供給部3は、噴射ノズル部2への洗浄液の供給を行うものである。そのために、洗浄液供給部3は、洗浄液を貯留するタンクおよび当該タンク内の洗浄液を吐出するポンプを備えて構成されており、噴射ノズル部2との間が洗浄液チューブ11によって接続されている。
【0015】
エアタンク部4は、噴射ノズル部2へ供給する圧縮空気を貯留しておくものである。なお、エアタンク部4には、図示せぬエアー供給源から圧縮空気が供給され、常に所定圧以上の圧縮空気が貯留されているものとする。そして、後述する制御ボックス5の電磁弁を介して、噴射ノズル部2との間がエアーチューブ12a,12bによって接続されている。
【0016】
制御ボックス5は、噴射ノズル部2での噴射動作有無を切り換えるものである。さらに具体的には、制御ボックス5は、洗浄液供給部3におけるポンプの動作を制御する信号によりON/OFFする作動リレーを搭載しているとともに、当該洗浄液供給部3との間がポンプ制御ケーブル13aおよびポンプ電源ケーブル13bによって接続されており、当該作動リレーがONしている期間だけ洗浄液供給部3が噴射ノズル部2に洗浄液を供給して当該噴射ノズル部2から噴射させるように構成されている。また、制御ボックス5は、制御信号とリレーにより開閉が可能な電磁弁を搭載しているとともに、当該電磁弁を介してエアタンク部4と噴射ノズル部2とがエアーチューブ12a,12bによって接続されており、当該電磁弁が開いている期間だけエアタンク部4内の圧縮空気を噴射ノズル部2から噴射させるように構成されている。なお、制御ボックス5は、外部からの電源供給をうけるための電源ケーブル14と、カメラ装置1との間に介在するカメラ制御ケーブル15aおよびカメラ電源ケーブル15bとが接続されており、噴射ノズル部2での噴射動作有無切り換えの他に、電源分配や制御信号分配等を行うものであってもよい。
【0017】
制御コンピュータ6は、制御ボックス5と通信ケーブル16を介して接続されており、予めインストールされている動作プログラムの実行によって、当該制御ボックス5に対して動作指示を与えるものである。さらに具体的には、圧縮空気用の電磁弁の開閉、および、洗浄液用のポンプの作動リレーのON/OFFを制御する信号を、制御ボックス5に対して与えることで、当該制御ボックス5における切り換え動作を制御するように構成されている。なお、制御コンピュータ6は、カメラ装置1における撮像動作を制御したり、当該カメラ装置1がレンズ旋回型のものであればその旋回位置制御したり、当該カメラ装置1からの映像を配信するために配設されたコンピュータ装置と共用しても構わない。
【0018】
続いて、以上のような構成のカメラ洗浄装置が付設されるカメラ装置1、当該カメラ洗浄装置における噴射ノズル部2の配設態様、および、当該カメラ洗浄装置に対する制御フローについて、具体例を挙げてさらに詳しく説明する。
【0019】
図2は、噴射ノズル部2の第一の設置例を示す説明図である。図例は、カメラ装置1による撮像方向が旋回移動しない、いわゆるレンズ固定型カメラに適用した場合を示している。
図例に示すレンズ固定型カメラの場合、カメラ装置1は、カメラ本体1aと、そのカメラ本体1aを収納するカメラハウジング1bと、を備えて構成されている。そして、カメラ本体1aに装着されたカメラレンズ1cの前面側(撮像方向側)には、保護ガラス板等の透明板1dが配されており、その透明板1dがカメラハウジング1bの一部を構成している。
また、カメラハウジング1bには固定金具2aが装着されており、さらにその固定金具2aの先端近傍には噴射ノズル部2が装着されている。
このような構成によって、カメラレンズの前面側を覆う透明板1dは、噴射ノズル部2からの噴射動作によって洗浄される被洗浄面となるのである。つまり、図例の構成では、カメラ装置1が旋回移動せず固定した状態で用いられることから、被洗浄面である透明板1dと噴射ノズル部2との位置関係も可変せずに固定されたままの状態となる。
【0020】
図3は、上述した第一の設置例における制御フローを示すフローチャートである。
制御コンピュータ6は、オペレータ操作によりマニュアルでの洗浄コマンド入力があると、または予め設定されたタイミング(例えば、所定時間毎または所定日数毎)でシーケンシャルに洗浄コマンド入力があると、その制御コマンドが圧縮空気のみの噴射を要求するものであるか、あるいは洗浄液の噴射および当該噴射後の圧縮空気の噴射の両方を要求するものであるかを判断する(ステップ101、以下ステップを「S」と略す。)。
この判断の結果、制御コマンドが洗浄液と圧縮空気との両方の噴射を要求するものであれば、制御コンピュータ6は、制御ボックス5に対して、以下に述べるような動作指示を与える。すなわち、先ず、制御ボックス5の作動リレーをONにして、噴射ノズル部2から被洗浄面である透明板1dに対して洗浄液を噴射させる(S102)。そして、洗浄液噴射時間として予め設定された時間(例えばm秒)が経過すると、制御ボックス5の作動リレーをOFFにして、噴射ノズル部2からの洗浄液の噴射を停止させる(S103)。洗浄液の噴射停止後は、続いて、制御ボックス5の電磁弁を開状態にして、噴射ノズル部2から被洗浄面である透明板1dに対して圧縮空気を噴射させる(S104)。そして、エアー噴射時間として予め設定された時間(例えばn秒)が経過すると、制御ボックス5の電磁弁を閉状態にして、噴射ノズル部2からの圧縮空気の噴射を停止させる(S105)。
一方、制御コマンドが圧縮空気のみの噴射を要求するものである場合には、制御コンピュータ6は、制御ボックス5に対して、以下に述べるような動作指示を与える。すなわち、作動リレーの切り換え(洗浄液の噴射)を行わずに、制御ボックス5の電磁弁を開状態にして、噴射ノズル部2から被洗浄面である透明板1dに対して圧縮空気を噴射させる(S106)。そして、エアー噴射時間として予め設定された時間(例えばn秒)が経過すると、制御ボックス5の電磁弁を閉状態にして、噴射ノズル部2からの圧縮空気の噴射を停止させる(S107)。
このように、透明板1dに対する洗浄は、洗浄コマンドを相違させることによって、圧縮空気のみを噴射する場合と、洗浄液の噴射後に圧縮空気を噴射する場合との、いずれかを選択することが可能である。ただし、この選択は必須ではなく、常に洗浄液の噴射と圧縮空気の噴射との両方を行うようにしても構わない。
また、洗浄液噴射時間およびエアー噴射時間については、利用者や保守員等が任意に設定することが考えられ、その時間長が特に限定されることはない。
【0021】
図4は、噴射ノズル部2の第二の設置例を示す説明図である。図例は、カメラ装置1による撮像方向が旋回する、いわゆるレンズ旋回型カメラに適用した場合を示している。
図例に示すレンズ旋回型カメラの場合も、カメラ装置1は、カメラ本体(ただし不図示)と、そのカメラ本体を収納するカメラハウジング1bと、を備えて構成されている。そして、カメラ本体に装着されたカメラレンズ(ただし不図示)の前面側(撮像方向側)には、保護ガラス板等の透明板1dが配されており、その透明板1dがカメラハウジング1bの一部を構成している。
また、カメラハウジング1bは、図示せぬモータ等の駆動源と連動するステージ1e上に搭載されている。これにより、カメラハウジング1bおよびその内部に収納されるカメラ本体およびカメラレンズは、撮像方向が遠隔操作で旋回するようになっている。
一方、ステージ1eの近傍の非可動箇所には、カメラハウジング1bの旋回範囲と干渉しない位置に、固定金具2aが装着されており、さらにその固定金具2aの先端近傍には、噴射ノズル部2が装着されている。
このような構成によって、カメラハウジング1bが旋回し、これに伴い透明板1dが移動すると、当該透明板1dと噴射ノズル部2との位置関係が可変することになる。ただし、透明板1dの移動範囲には、噴射ノズル部2との対向位置が含まれているものとする。つまり、図4(a)に示すように撮像時には透明板1dと噴射ノズル部2とが対向しない位置関係にあっても、洗浄時には図4(b)に示すように透明板1dと噴射ノズル部2とが対向する位置までカメラハウジング1bが旋回するようになっている(図中矢印A参照)。この旋回により、カメラレンズの前面側を覆う透明板1dは、噴射ノズル部2からの噴射動作によって洗浄される被洗浄面となり得るのである。
【0022】
図5は、上述した第二の設置例における制御フローを示すフローチャートである。
制御コンピュータ6は、オペレータ操作によりマニュアルでの洗浄コマンド入力があると、または予め設定されたタイミング(例えば、所定時間毎または所定日数毎)でシーケンシャルに洗浄コマンド入力があると、その制御コマンドが圧縮空気のみの噴射を要求するものであるか、あるいは洗浄液の噴射および当該噴射後の圧縮空気の噴射の両方を要求するものであるかを判断する(S201)。
この判断の結果、制御コマンドが洗浄液と圧縮空気との両方の噴射を要求するものであれば、制御コンピュータ6は、制御ボックス5に対して、以下に述べるような動作指示を与える。すなわち、先ず、カメラハウジング1bを旋回させる駆動源を動作させて、当該カメラハウジング1bの透明板1dを噴射ノズル部2と対向する位置(以下「洗浄ポジション」という。)まで移動させる(S202)。洗浄ポジションへの移動後は、続いて、制御ボックス5の作動リレーをONにして、噴射ノズル部2から被洗浄面である透明板1dに対して洗浄液を噴射させる(S203)。そして、洗浄液噴射時間として予め設定された時間(例えばm秒)が経過すると、制御ボックス5の作動リレーをOFFにして、噴射ノズル部2からの洗浄液の噴射を停止させる(S204)。洗浄液の噴射停止後は、続いて、制御ボックス5の電磁弁を開状態にして、噴射ノズル部2から被洗浄面である透明板1dに対して圧縮空気を噴射させる(S205)。そして、エアー噴射時間として予め設定された時間(例えばn秒)が経過すると、制御ボックス5の電磁弁を閉状態にして、噴射ノズル部2からの圧縮空気の噴射を停止させる(S206)。圧縮空気の噴射停止後は、カメラハウジング1bを旋回させる駆動源を動作させて、当該カメラハウジング1bが洗浄前のポジションに戻るまで移動させる(S207)。
一方、制御コマンドが圧縮空気のみの噴射を要求するものである場合には、制御コンピュータ6は、制御ボックス5に対して、以下に述べるような動作指示を与える。すなわち、先ず、カメラハウジング1bを旋回させる駆動源を動作させて、当該カメラハウジング1bの透明板1dを洗浄ポジションまで移動させる(S208)。洗浄ポジションへの移動後は、続いて、作動リレーの切り換え(洗浄液の噴射)を行わずに、制御ボックス5の電磁弁を開状態にして、噴射ノズル部2から被洗浄面である透明板1dに対して圧縮空気を噴射させる(S209)。そして、エアー噴射時間として予め設定された時間(例えばn秒)が経過すると、制御ボックス5の電磁弁を閉状態にして、噴射ノズル部2からの圧縮空気の噴射を停止させる(S210)。圧縮空気の噴射停止後は、カメラハウジング1bを旋回させる駆動源を動作させて、当該カメラハウジング1bが洗浄前のポジションに戻るまで移動させる(S207)。
このように、透明板1dに対する洗浄は、レンズ旋回型カメラの場合も、洗浄コマンドを相違させることによって、圧縮空気のみを噴射する場合と、洗浄液の噴射後に圧縮空気を噴射する場合との、いずれかを選択することが可能である。ただし、この選択は必須ではなく、常に洗浄液の噴射と圧縮空気の噴射との両方を行うようにしても構わない。
また、洗浄液噴射時間およびエアー噴射時間については、利用者や保守員等が任意に設定することが考えられ、その時間長が特に限定されることはない。
【0023】
次に、本実施形態におけるカメラ洗浄装置の特徴的な構成について、さらに詳しくは噴射ノズル部2と被洗浄面との位置関係について、具体例を挙げて説明する。なお、以下に説明する噴射ノズル部2と被洗浄面との位置関係は、上述した第一の設置例の場合(レンズ固定型カメラに適用した場合)も、また第二の設置例の場合(レンズ旋回型カメラに適用した場合)も、いずれの場合も共通であるものとする。
【0024】
図6は、本発明に係るカメラ洗浄装置の要部構成例を示す説明図である。
ここでは、噴射ノズル部2として、洗浄液を噴射する洗浄液噴射ノズルと、圧縮空気を噴射するエアー噴射ノズルとが、隣り合うように並設されている場合を例に挙げる。以下、これら洗浄液噴射ノズルおよびエアー噴射ノズルを、単に「ノズル」と総称する。
【0025】
図例のように、カメラ装置におけるカメラレンズ1cの前面側(撮像方向側)には、保護ガラス板等の透明板1dが配されており、その透明板1dがカメラハウジング1bの一部を構成している。そして、その透明板1dと対向する位置には噴射ノズル部2のノズル2bが配設されており、そのノズル2bから圧縮空気のみ、または洗浄液と圧縮空気との両方が、透明板1dに向けて噴射されるようになっている。
【0026】
ただし、ノズル2bは、カメラレンズ1cによる撮像範囲の外側に配設されているとともに、被洗浄面である透明板1dに対して斜め上方から圧縮空気および洗浄液を噴射する位置に配設されているものとする。
【0027】
ここでいう「撮像範囲」は、カメラレンズ1cによって特定されるものをいい、具体的には、ノズル2bが透明板1dの斜め上方からの噴射を行うことから、特に当該カメラレンズ1cの垂直方向における画角のことをいう。画角とは、カメラレンズ1cが映し出す画像の中で、実際に写る範囲を角度で示したものである。
なお、カメラ本体に複数種類のカメラレンズ1cが装着され得る場合には、当該複数種類の中で最も撮像範囲の広いカメラレンズ1cに対応して、その撮像範囲の外側に位置するように、ノズル2bが配設されるものとする。
【0028】
このようなノズル2bの配置を実現する場合における、当該ノズル2bの設置角度θ、および、当該ノズル2bの透明板1dからの距離dについては、透明板1dに付着した洗浄液や雨滴等を効率よく除去できる位置条件を満たすべく、以下に述べるように設定することが考えられる。
設置角度θについては、その値が小さ過ぎると透明板1dの上端近傍に雨滴が残留し易くなり、またその値が大き過ぎると透明板1dの上端近傍に雨滴が残留し易くなるおそれがある。さらに、設置角度θの値を大きくし過ぎると、カメラレンズ1cによる撮像範囲内にノズル2bが侵入してしまうおそれもある。したがって、設置角度θは、45°±10°程度とすることが適切であると考えられる。
距離dについては、その値が小さ過ぎると、ノズル2bから噴出する圧縮空気や洗浄液等の拡散性が悪くなり、透明板1dの全域に十分に行き渡らなくなってしまい、当該透明板1d上に汚れや雨滴等が残留し易くなるおそれがある。一方、距離dの値が大き過ぎると、ノズル2bから噴出する圧縮空気や洗浄液等の勢いが透明板1dに到達するまでの間に減衰してしまうため、洗浄効率が低下してしまい、また風等の外乱の影響も受け易くなってしまう。したがって、距離dは、10cm±5cm程度とすることが適切であると考えられる。
【0029】
以上のようにノズル2bが配置されてなる噴射ノズル部2を備えたカメラ洗浄装置では、当該ノズル2bがカメラレンズ1cによる撮像範囲の外側に配設されているので、当該ノズル2bがカメラレンズ1cで撮影する画像に写り込むことがなく、当該カメラレンズ1cが装着されたカメラ装置1での撮像の妨げとなることがない。
【0030】
また、ノズル2bが透明板1dに対して斜め上方から洗浄液を噴射することで、当該洗浄液は、その自重で下方に向かって流れ、広い透明板1dであっても効率よく全域に拡散することになる。
しかも、ノズル2bが透明板1dに対して斜め上方から圧縮空気を噴射するので、当該透明板1dに洗浄液や雨滴等の水滴20が付着しても、当該水滴20が透明板1dの上端近傍に追い遣られて残留してしまうことがない。すなわち、水滴20の吹き残しが発生することなく、透明板1dに付着した全ての水滴20が、その上端から下方に向けて吹き流されることになる(図中矢印B参照。)。さらには、下方に吹き流される水滴20は、圧縮空気の勢いによって押し遣られる際に、透明板1dの全域に広がっていたものが集められて合体し、一滴あたりの大きさが大きくなってその重さも重くなるので、下方に向けて流れ易くなる。この点によっても、透明板1d上への水滴20の残留を効果的に防止することができる。
【0031】
したがって、本実施形態で説明したカメラ洗浄装置によれば、カメラ装置1の被洗浄面である透明板1dに対して、傷発生や洗浄部材劣化等が生じることなく、遠隔操作での洗浄を行うことを可能にする場合であっても、カメラ装置1での撮像結果に対して視界を妨げる等の悪影響が及ぶのを排除することができ、また透明板1d上への水滴20の残留を防止して、当該透明板1dの汚れの払拭を適切に、かつ、効率的に行うことができる。
【0032】
さらに、本実施形態で説明したカメラ洗浄装置によれば、視界を妨げる等の撮像結果への悪影響を排しつつ透明板1dの汚れの払拭を適切かつ効率的に行うことができるので、必ずしもカメラ装置1の旋回機構を必要としない。すなわち、レンズ固定型カメラであっても、レンズ旋回型カメラであっても、いずれの場合も適用が可能であり、旋回機構を必要とする従来方式に比べて高い汎用性を確保することができる。しかも、高い汎用性を確保し得ることから、既存のカメラ装置への適用も非常に実現容易となる。また、レンズ固定型カメラに適用した場合であれば、旋回が不要であるが故に、装置大型化や高コスト化等の抑制が実現可能であり、迅速な洗浄処理の推進についても実現が可能となる。
【0033】
なお、本実施形態では、本発明の好適な実施具体例を説明したが、本発明はその内容に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0034】
例えば、本実施形態では、カメラレンズ1cの前面側を覆う保護ガラス板等の透明板1dが被洗浄面となる場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、当該カメラレンズ1cの表面を被洗浄面とすることも考えられる。すなわち、カメラレンズ1cが透明板1dによって覆われていない構成の場合に、当該カメラレンズ1cに対して直接洗浄液や圧縮空気等を噴射することで、当該カメラレンズ1cの表面を洗浄することが考えられる。
【0035】
また、本実施形態では、噴射ノズル部2として、洗浄液を噴射する洗浄液噴射ノズルと、圧縮空気を噴射するエアー噴射ノズルとが、隣り合うように並設されている場合を例に挙げて説明したが、少なくともエアー噴射ノズルが被洗浄面に対して斜め上方から圧縮空気を噴射する位置に配設されていれば、洗浄液噴射ノズルについては例えば被洗浄面に対して斜め下方から洗浄液を噴射する位置に配設されていてもよい。これは、水滴の自重を利用しつつ当該水滴を効率的かつ適切に下方に吹き流すために、圧縮空気については斜め上方から噴射すべきであるが、洗浄液については、後に圧縮空気が噴射されることを考慮すると、ある程度の勢いがあれば、斜め下方から噴射しても、被洗浄面上の汚れの払拭が可能だからである。つまり、洗浄液噴射ノズルについては、カメラレンズ1cによる撮像範囲の外側に配設されていれば、斜め上方からの噴射を行うものでなくともよい。
ただし、噴射ノズル部2の構成簡素化(例えば固定金具の兼用化)や小型化、チューブ類の取り回し等を考慮すると、洗浄液噴射ノズルおよびエアー噴射ノズルのいずれもが被洗浄面に対して斜め上方から噴射を行う位置に、互いに隣り合うように近接して並設されていることが望ましい。
【0036】
また、本実施形態では、レンズ固定型カメラとレンズ旋回型カメラとのいずれにも適用可能であり、特にレンズ旋回型カメラに適用するときには、当該カメラが洗浄ポジションへ移動した後に噴射ノズル部2が洗浄液や圧縮空気等を噴射する場合、すなわち噴射ノズル部2が当該カメラの旋回とは連動せずに固定されている場合を例に挙げたが、本発明は、噴射ノズル部2が当該カメラの視界を妨げる等の事態が生じることがないことから、レンズ旋回型カメラに適用するときであっても、レンズ固定型カメラの場合と同様に、噴射ノズル部2をカメラハウジング1bに固定して、その旋回と連動させるようにしても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】カメラ装置およびカメラ洗浄装置を含むシステム構成例を示す説明図である。
【図2】カメラ洗浄装置における噴射ノズル部の第一の設置例を示す説明図である。
【図3】図2に示した第一の設置例における制御フローを示すフローチャートである。
【図4】カメラ洗浄装置における噴射ノズル部の第二の設置例を示す説明図である。
【図5】図4に示した第二の設置例における制御フローを示すフローチャートである。
【図6】本発明に係るカメラ洗浄装置の要部構成例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0038】
1…カメラ装置、1a…カメラ本体、1b…カメラハウジング、1c…カメラレンズ、1d…透明板、1e…ステージ、2…噴射ノズル部、2a…固定金具、2b…ノズル、3…洗浄液供給部、4…エアタンク部、5…制御ボックス、6…制御コンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラレンズまたは当該カメラレンズの前面側を覆う透明板を被洗浄面とし、当該被洗浄面に対して洗浄液を噴射する洗浄液噴射ノズルと、前記被洗浄面に対して圧縮空気を噴射するエアー噴射ノズルとを備えるカメラ洗浄装置であって、
前記洗浄液噴射ノズルおよび前記エアー噴射ノズルは、前記カメラレンズによる撮像範囲の外側に配設されているとともに、
少なくとも前記エアー噴射ノズルは、前記被洗浄面に対して斜め上方から圧縮空気を噴射する位置に配設されている
ことを特徴とするカメラ洗浄装置。
【請求項2】
前記洗浄液噴射ノズルについても、前記被洗浄面に対して斜め上方から洗浄液を噴射する位置に配設されている
ことを特徴とする請求項1記載のカメラ洗浄装置。
【請求項3】
前記被洗浄面と、前記洗浄液噴射ノズルおよび前記エアー噴射ノズルとの位置関係が、可変せずに固定されている
ことを特徴とする請求項1記載のカメラ洗浄装置。
【請求項4】
前記被洗浄面の移動により当該被洗浄面と前記洗浄液噴射ノズルおよび前記エアー噴射ノズルとの位置関係が可変するように構成されているとともに、前記被洗浄面の移動範囲に前記洗浄液噴射ノズルおよび前記エアー噴射ノズルとの対向位置が含まれている
ことを特徴とする請求項1記載のカメラ洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−81765(P2009−81765A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−250650(P2007−250650)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】